(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096936
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】強制開放型ゲートの油圧制御装置
(51)【国際特許分類】
E02B 7/20 20060101AFI20230630BHJP
E02B 7/44 20060101ALN20230630BHJP
【FI】
E02B7/20 109
E02B7/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213009
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】594148645
【氏名又は名称】株式会社協和製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 道博
【テーマコード(参考)】
2D019
【Fターム(参考)】
2D019AA60
(57)【要約】 (修正有)
【課題】強制開放型ゲートの油圧制御装置において、扉体が開放する場合には抵抗を最小限として円滑に開放作動させ、扉体が自重で閉鎖状態となる場合には波浪による扉体のバタツキ等を抑える。
【解決手段】前方油口3aと後方油口3bとロッド8等を有する両ロッド式油圧シリンダ3、ロッド8の動きに連動して開閉する扉体1、前方油口3aと後方油口3bとを連通し逆止弁11を有する第1連通管10、逆止弁11の前方側と後方側とを連通しフロート弁4bと流量制御弁13を有する第2連通管12、作動油を供給する油圧ポンプ17、供給用逆止弁15aと油圧検知装置22を有する作動油供給管14、排出用パイロット付逆止弁15bを有する作動油排出管16、水位検知装置21及び水位検知装置21からの水位信号と油圧検知装置22からの油圧信号に基づいて、油圧ポンプ17を作動・停止させる油圧ポンプ制御装置23を備える油圧制御装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自重により閉鎖状態となる強制開放型ゲートの油圧制御装置であって、
作動油の移動に連動して動くロッド、前方油口及び後方油口を有する両ロッド式油圧シリンダと、
前記ロッドが前記前方油口の有る側に移動すると閉じる方向に動き、前記ロッドが前記後方油口の有る側に移動すると開く方向に動く扉体と、
前記前方油口と前記後方油口とを連通する第1連通管と、
前記第1連通管に設けられ、前記後方油口から前記前方油口の方向にのみ作動油が流れることを許容する逆止弁と、
前記第1連通管における前記逆止弁の前方側と後方側とを連通する第2連通管と、
前記第2連通管に設けられ、前記強制開放型ゲートより下流側の下流側水位が所定水位以上となった時に開状態となるフロート弁及び作動油の流量が所定流量以上にならないように調整する流量制御弁と、
作動油を貯留する油圧タンクと、
前記油圧タンクから前記両ロッド式油圧シリンダへ作動油を供給する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプの作動油出口と前記第1連通管の前記逆止弁より前記前方油口側又は前記作動油出口と前記第2連通管の前記フロート弁及び前記流量制御弁より前記前方油口側を接続する作動油供給管と、
前記作動油供給管に設けられた供給用逆止弁と、
前記油圧タンクと前記第1連通管の前記逆止弁より前記後方油口側又は前記油圧タンクと前記第2連通管の前記フロート弁及び前記流量制御弁より前記後方油口側を接続する作動油排出管と、
前記作動油排出管に設けられた排出用パイロット付逆止弁と、
前記下流側水位が特定水位以下か否かを検知する水位検知装置と、
前記作動油供給管内の供給管油圧が所定圧力未満か否かを検知する油圧検知装置と、
前記水位検知装置により前記下流側水位が前記特定水位以下と検知され、かつ、前記油圧検知装置により前記供給管油圧が前記所定圧力未満と検知されているときに前記油圧ポンプを作動させ、前記水位検知装置により前記下流側水位が前記特定水位以下でないと検知され、又は、前記油圧検知装置により前記供給管油圧が前記所定圧力未満でないと検知されているときに前記油圧ポンプを停止させる油圧ポンプ制御装置と、を備え、
前記油圧タンクから前記油圧ポンプ、前記作動油供給管、前記供給用逆止弁、前記第1連通管及び前記前方油口を介して前記両ロッド式油圧シリンダへ作動油が供給されると、前記両ロッド式油圧シリンダから前記後方油口、前記第1連通管、前記作動油排出管及び前記排出用パイロット付逆止弁を介して前記油圧タンクへ作動油が排出される
ことを特徴とする油圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の油圧制御装置において、前記油圧検知装置を、前記扉体の開放度が所定開放度未満か否かを検知する扉体開放度検知装置に代え、
前記油圧ポンプ制御装置は、前記水位検知装置により前記下流側水位が前記特定水位以下と検知され、かつ、前記扉体開放度検知装置により前記扉体の開放度が前記所定開放度未満と検知されているときに、前記油圧ポンプを作動させ、前記水位検知装置により前記下流側水位が前記特定水位以下でないと検知され、又は、前記扉体開放度検知装置により前記扉体の開放度が前記所定開放度未満でないと検知されているときに、前記油圧ポンプを停止させる
ことを特徴とする油圧制御装置。
【請求項3】
前記作動油供給管における前記供給用逆止弁と前記油圧ポンプとの間と、前記作動油排出管における前記排出用パイロット付逆止弁と前記油圧タンクとの間とを連通する第3連通管と、
前記第3連通管に設けられ、前記第3連通管内の連通管油圧が前記所定圧力以上となったときに、前記作動油供給管から前記作動油排出管の方向に作動油が流れることを許容するリリーフ弁と、をさらに備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の油圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樋門又は流水路の出口に逆流防止を目的として設置される強制開放型ゲートの開閉を適切に制御するための油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般的な樋門又は流水路の出口には下流側からの逆流防止を目的としてフラップゲート等が設置されている。
しかしながら、従来のフラップゲートは扉体が吊り金物に懸垂された状態で設置されることから、通常時は通水部を閉鎖しているため排水性能が低い、塵芥等が挟まり易く不完全閉鎖障害が発生するといった問題点や、波浪等により下流側水位が激しく変動した場合に、扉体が水位変動に同調して激しく開閉を繰り返し、扉体と戸当金物との激しい衝突が長時間繰返され、騒音や損傷が発生するといった問題点があった。
【0003】
そこで、本出願人は、特許文献1(特開2019-112860号公報、特に段落0020~0021及び
図4、5を参照)に記載されているように、通常は扉体を開放状態に保持して高い排水性能が得られるようにするとともに、下流側が所定水位以上になった時にはフロート弁が閉扉位置に切り換わることで、扉体が自重により閉鎖状態となって確実に止水することのできる強制開放型ゲートの油圧制御装置を開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されている強制開放型ゲートの油圧制御装置では、扉体が自動で開閉作動する場合(
図5及び
図6の状態)においては、作動油の移動速度が流量制御弁(11)によって設定され、扉体の開閉速度は常に所定速度以下となるため、特に上流側からの排水流の水圧のみによって扉体が開放する場合(
図6の状態)には、迅速に開放作動しないという問題があった。
また、設備規模が大きい場合には、扉体の重量が重くなり、比較的大きな開放作動力が必要となるため、少量の排水水量では確実な開放作動が行われないという問題も生じていた。そして、上流側からの排水水量が少量の場合、閉鎖した扉体より上流側の水路に貯留する形で緩やかに上流側水位が上昇し、上昇した水位の水圧によって扉体が僅かに開放作動するが、扉体の上流側に一定水位の貯留水(死に水)が発生するため、土砂や流草木、塵芥等の堆積が発生し易い。
さらに、フラップゲートの強制開操作を行う場合には、
図6の状態から
図7の状態にするため、第1のストップ弁(12)を閉め、第2のストップ弁(13)を開ける操作が必要であり、強制開操作終了後には、その逆の操作をする必要があったため、河川水位が上昇する毎に管理操作を行うことは負担が大きいという問題があった。
特に、海岸部のフラップゲート設備の場合、満潮時の潮位上昇により一日に2回自動閉作動が行われるので、上流側からの排水水量が少ない設備においては、干潮になる度に管理操作して強制開操作を行う必要があった。
本発明は、これらの問題点を解決し、上流側からの排水流の水圧等によって扉体が開放する場合には、抵抗を最小限として円滑に開放作動させることができ、下流側が所定水位以上になりフロート弁が閉扉位置に切り換わって扉体が自重で閉鎖状態となる場合等には、閉作動を緩やかな作動速度とすることにより、波浪による扉体のバタツキ等を抑えることができる油圧制御装置を提供することを第1の課題としている。
また、自動閉作動が行われた後に下流側水位が十分に低下し、かつ、上流側からの排水水量が少ない時に、管理操作を行うことなく自動的に油圧ポンプを作動させてゲートの強制開操作が行われる油圧制御装置を提供することを第2の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、
自重により閉鎖状態となる強制開放型ゲートの油圧制御装置であって、
作動油の移動に連動して動くロッド(8)、前方油口(3a)及び後方油口(3b)を有する両ロッド式油圧シリンダ(3)と、
前記ロッド(8)が前記前方油口(3a)の有る側に移動すると閉じる方向に動き、前記ロッド(8)が前記後方油口(3b)の有る側に移動すると開く方向に動く扉体(1)と、
前記前方油口(3a)と前記後方油口(3b)とを連通する第1連通管(10)と、
前記第1連通管(10)に設けられ、前記後方油口(3b)から前記前方油口(3a)の方向にのみ作動油が流れることを許容する逆止弁(11)と、
前記第1連通管(10)における前記逆止弁(11)の前方側と後方側とを連通する第2連通管(12)と、
前記第2連通管(12)に設けられ、前記強制開放型ゲートより下流側の下流側水位(19b)が所定水位以上となった時に開状態となるフロート弁(4b)及び作動油の流量が所定流量以上にならないように調整する流量制御弁(13)と、
作動油を貯留する油圧タンク(18)と、
前記油圧タンク(18)から前記両ロッド式油圧シリンダ(3)へ作動油を供給する油圧ポンプ(17)と、
前記油圧ポンプ(17)の作動油出口と前記第1連通管(10)の前記逆止弁(11)より前記前方油口(3a)側又は前記作動油出口と前記第2連通管(12)の前記フロート弁(4b)及び前記流量制御弁(13)より前記前方油口(3a)側を接続する作動油供給管(14)と、
前記作動油供給管(14)に設けられた供給用逆止弁(15a)と、
前記油圧タンク(18)と前記第1連通管(10)の前記逆止弁(11)より前記後方油口(3b)側又は前記油圧タンク(18)と前記第2連通管(12)の前記フロート弁(4b)及び前記流量制御弁(13)より前記後方油口(3b)側を接続する作動油排出管(16)と、
前記作動油排出管(16)に設けられた排出用パイロット付逆止弁(15b)と、
前記下流側水位(19b)が特定水位以下か否かを検知する水位検知装置(21)と、
前記作動油供給管(14)内の供給管油圧が所定圧力未満か否かを検知する油圧検知装置(22)と、
前記水位検知装置(21)により前記下流側水位(19b)が前記特定水位以下と検知され、かつ、前記油圧検知装置(22)により前記供給管油圧が前記所定圧力未満と検知されているときに前記油圧ポンプ(17)を作動させ、前記水位検知装置(21)により前記下流側水位(19b)が前記特定水位以下でないと検知され、又は、前記油圧検知装置(22)により前記供給管油圧が前記所定圧力未満でないと検知されているときに前記油圧ポンプ(17)を停止させる油圧ポンプ制御装置(23)と、を備え、
前記油圧タンク(18)から前記油圧ポンプ(17)、前記作動油供給管(14) 、前記供給用逆止弁(15a)、前記第1連通管(10)及び前記前方油口(3a)を介して前記両ロッド式油圧シリンダ(3)へ作動油が供給されると、前記両ロッド式油圧シリンダ(3)から前記後方油口(3b)、前記第1連通管(10)、前記作動油排出管(16)及び前記排出用パイロット付逆止弁(15b)を介して前記油圧タンク(18)へ作動油が排出されることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、
請求項1に記載の油圧制御装置において、前記油圧検知装置(22)を、前記扉体(1)の開放度が所定開放度未満か否かを検知する扉体開放度検知装置(24)に代え、
前記油圧ポンプ制御装置(23)は、前記水位検知装置(21)により前記下流側水位(19b)が前記特定水位以下と検知され、かつ、前記扉体開放度検知装置(24)により前記扉体(1)の開放度が前記所定開放度未満と検知されているときに、前記油圧ポンプ(17)を作動させ、前記水位検知装置(21)により前記下流側水位(19b)が前記特定水位以下でないと検知され、又は、前記扉体開放度検知装置(24)により前記扉体(1)の開放度が前記所定開放度未満でないと検知されているときに、前記油圧ポンプ(17)を停止させることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の油圧制御装置において、
前記作動油供給管(14)における前記供給用逆止弁(15a)と前記油圧ポンプ(17)との間と、前記作動油排出管(16)における前記排出用パイロット付逆止弁(15b)と前記油圧タンク(18)との間とを連通する第3連通管(25)と、
前記第3連通管(25)に設けられ、前記第3連通管(25)内の連通管油圧が前記所定圧力以上となったときに、前記作動油供給管(14)から前記作動油排出管(16)の方向に作動油が流れることを許容するリリーフ弁(26)と、をさらに備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明によれば、両ロッド式油圧シリンダ(3)の前方油口(3a)と後方油口(3b)とを連通する第1連通管(10)、第1連通管(10)に設けられ後方油口(3b)から前方油口(3a)の方向にのみ作動油が流れることを許容する逆止弁(11)、逆止弁(11)の前方側と後方側とを連通する第2連通管(12)、第2連通管(12)に設けられゲートより下流側の水位(19b)が所定水位以上となった時に開状態となるフロート弁(4b)及び作動油の流量が所定流量以上にならないように調整する流量制御弁(13)を備えているので、フロート弁(4b)が閉鎖している時には後方油口(3b)から前方油口(3a)の方向へ抵抗なく作動油が流れ、上流側からの排水流の水圧等によって扉体(1)がスムーズに開放される。そして、この時には前方油口(3a)から後方油口(3b)の方向へ作動油が流れないので、扉体(1)が一旦開放されると、その開放状態を保持することができる。
また、フロート弁(4b)が開状態の時には前方油口(3a)から後方油口(3b)の方向へ流量制御弁(13)を介して作動油が流れるので、扉体(1)は自重で閉鎖方向に移動可能となるが、流量制御弁(13)の作用によって緩やかな作動速度となり、波浪による扉体(1)のバタツキ等を抑えることができる。
さらに、請求項1に係る発明は、油圧タンク(18)、油圧ポンプ(17)、作動油供給管(14)、作動油供給管(14)に設けられた供給用逆止弁(15a)、作動油排出管(16)、作動油排出管(16)に設けられた排出用パイロット付逆止弁(15b)、下流側水位(19b)が特定水位以下か否かを検知する水位検知装置(21)、作動油供給管(14)内の供給管油圧が所定圧力未満か否かを検知する油圧検知装置(22)及び油圧ポンプ制御装置(23)を備え、油圧ポンプ制御装置(23)は、水位検知装置(21)により下流側水位(19b)が特定水位以下と検知され、かつ、油圧検知装置(22)により供給管油圧が所定圧力未満と検知されているときに油圧ポンプ(17)を作動させ、水位検知装置(21)により下流側水位(19b)が特定水位以下でないと検知され、又は、油圧検知装置(22)により供給管油圧が所定圧力未満でないと検知されているときに油圧ポンプ(17)を停止させる。
そのため、ゲートの自動閉作動が行われた後に下流側水位が十分に低下し、上流側からの排水水量が少なくなった時に、管理操作を行うことなく油圧ポンプを自動的に作動させることができ、かつ、適切なタイミングで油圧ポンプを停止させることができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、請求項1に記載の油圧制御装置において、油圧検知装置(22)を、扉体(1)の開放度が所定開放度未満か否かを検知する扉体開放度検知装置(24)に代え、油圧ポンプ制御装置(23)は、水位検知装置(21)により下流側水位(19b)が特定水位以下と検知され、かつ、扉体開放度検知装置(24)により扉体(1)の開放度が所定開放度未満と検知されているときに油圧ポンプ(17)を作動させ、水位検知装置(21)により下流側水位(19b)が特定水位以下でないと検知され、又は、扉体開放度検知装置(24)により扉体(1)の開放度が所定開放度未満でないと検知されているときに油圧ポンプ(17)を停止させるので、油圧検知装置(22)を用いることなく簡易な装置によって、請求項1に係る発明と同様、ゲートの自動閉作動が行われた後に下流側水位(19b)が十分に低下し、上流側からの排水水量が少なくなった時に、管理操作を行うことなく油圧ポンプ(17)を自動的に作動させ、適切なタイミングで停止させることができる。
【0011】
請求項3に係る発明によれば、請求項1又は2に係る発明による効果に加えて、作動油供給管(14)と作動油排出管(16)との間とを連通する第3連通管(25)と、第3連通管(25)に設けられ、連通管油圧が所定圧力以上となったときに作動油供給管(14)から作動油排出管(16)の方向に作動油が流れることを許容するリリーフ弁(26)と、をさらに備えているので、油圧検知装置(22)又は扉体開放度検知装置(24)等にトラブルが生じ、油圧ポンプ(17)の停止に問題が発生した場合に、扉体(1)が上限を超えて開放作動することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1に係る上ヒンジ式フラップゲートの斜視図。
【
図2】実施例1に係る油圧操作装置等の構成を示す図。
【
図3】実施例1に係る油圧操作装置等の状態を示す図(開放後の自動開放作動時)。
【
図4】実施例1における作動油の流れを説明する図(自動閉作動時)。
【
図5】実施例1に係る油圧操作装置等の状態を示す図(閉鎖時)。
【
図6】実施例1に係る油圧操作装置等の状態を示す図(閉鎖後の自動開放作動時)。
【
図7】実施例1における作動油の流れを説明する図(強制開放開始時)。
【
図8】実施例1に係る油圧操作装置等の状態を示す図(強制開放終了時)。
【
図10】扉体(1)の開放度と供給管油圧(p)との関係を説明する図。
【
図11】実施例2に係る油圧操作装置等の構成を示す図。
【
図12】実施例3に係る油圧操作装置等の構成を示す図。
【
図13】実施例4に係る油圧操作装置等の構成を示す図。
【
図14】実施例1の変形例に係る油圧操作装置等の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施例によって本発明の実施形態を説明する。
【実施例0014】
図1は実施例1に係る上ヒンジ式フラップゲートの斜視図である。
実施例1に係る上ヒンジ式フラップゲートは、
図1に示すように扉体1が上流側の水路と下流側の水路との境界部にヒンジ金物6によって回動自在に懸垂されており、外力が働かない状態においては、自重により上流側の水路の出口を閉鎖するようになっている。
また、扉体1の上部には扉体駆動アーム1aが設けてあり、両ロッド式油圧シリンダ3のロッド8の先端に設けてある先端金物9とヒンジ接続されており、扉体1の開閉作動と両ロッド式油圧シリンダ3のロッド伸縮作動が常に同調する。
そして、両ロッド式油圧シリンダ3はトラニオン式軸受7に揺動自在に取り付けられ、扉体1が開放作動するとロッド8は縮作動し、扉体1が閉鎖作動するとロッド8は伸作動する。反対にロッド8が縮作動をすると扉体1は開放作動し、ロッド8が伸作動をすると扉体1は閉鎖作動する。
さらに、フロート装置収納箱4cの内部には、後述するフロート4a、フロート弁4b及び水位検知装置21が収納されており、上流側の水路の出口の周囲には戸当金物5が設けてある。
【0015】
図2は実施例1に係る油圧操作装置等の構成を示す図である。
両ロッド式油圧シリンダ3の前方油口3aと後方油口3bは、第1連通管10によって連通されており、第1連通管10には後方油口3bから前方油口3aの方向にのみ作動油が流れることを許容する逆止弁11が設けられている。
そして、両ロッド式油圧シリンダ3は、ロッド8が伸縮作動してもシリンダ内部の作動油量が変化しない特性により、前方油口3aと後方油口3b間を作動油が自由に流れる状態とすることで、外力によってロッド8を自在に伸縮作動できる特性を有している。
また、第1連通管10における逆止弁11の前方側(前方油口3aに近い側)と後方側(後方油口3bに近い側)は、第2連通管12によって連通されており、第2連通管12には、ゲートより下流側の水路2bにおける下流側水位が所定水位以上となった時に開状態となるフロート弁4b及び作動油の流量が所定流量以上にならないように調整する流量制御弁13が設けられている。
次に、第1連通管10の逆止弁11より前方側と油圧タンク18とは作動油供給管14により接続され、第1連通管10の逆止弁11より後方側と油圧タンク18とは作動油排出管16により接続されている。また、作動油供給管14には、油圧タンク18から両ロッド式油圧シリンダ3へ作動油を供給する油圧ポンプ17、供給用逆止弁15a及び作動油供給管14内の油圧(供給管油圧)が所定圧力未満か否かを検知する油圧検知装置22が設けてあり、作動油排出管16には、油圧ポンプ17によって油圧タンク18から作動油を供給するとき以外は、後方油口3bから油圧タンク18への作動油の流れを阻止する排出用パイロット付逆止弁15bが設けてある。
さらに、下流側水位が所定水位より低い特定水位以下か否かを検知し、特定水位以下であることを示す水位信号を出力する水位検知装置21、作動油供給管14内の供給管油圧が所定圧力未満か否かを検知し、所定圧力未満であることを示す油圧信号を出力する油圧検知装置22及び水位検知装置21からの水位信号と油圧検知装置22からの油圧信号を受信すると油圧ポンプ17を作動させ、水位信号及び油圧信号のいずれかを受信しなくなると油圧ポンプ17を停止させる油圧ポンプ制御装置23を備えている。
【0016】
図3は扉体1が開放した後の自動開放作動時における実施例1に係る油圧操作装置等の状態を示す図である。
図3のように下流側水位19bが所定水位より低いとき、すなわちフロート弁4bが閉鎖して第2連通管12が閉鎖状態となっている場合、作動油は後方油口3bから前方油口3aの方向にのみ移動できるので、両ロッド式油圧シリンダ3のロッド8は縮作動のみが可能である。なお、フロート弁4bの閉鎖及び第2連通管12の閉鎖状態には、作動油が両方向に移動できない状態と、
図3に示すような後方油口3bから前方油口3aの方向(
図3の右から左の方向)にのみ作動油が流れることを許容する状態が含まれる。
この状態において、ゲートより上流側の水路2aにおける上流側水位19aが上昇し、上流側からの水圧力によって扉体1が排水方向へ押されると、作動油は第1連通管10内を後方油口3bから前方油口3aの方向に流れて自動開放作動が行われる。そして、その後上流側水位が下がって水圧力が小さくなってもロッド8は伸作動できないため、扉体1の開放状態が保持される。また、
図3の状態において油圧ポンプ17は作動しない。
【0017】
図4は自動閉作動時の実施例1における作動油の流れを説明する図であり、
図5は扉体1が閉鎖した状態における実施例1に係る油圧操作装置等の状態を示す図である。
図3の状態から下流側水位19bが上昇し、フロート4aが上昇してフロート弁4bが開いた状態になると、作動油は前方油口3aから第1連通管10、第2連通管12、フロート弁4b、流量制御弁13及び第1連通管10を経由して後方油口3bへと移動できるようになるので、両ロッド式油圧シリンダ3のロッド8は、縮作動だけでなく伸作動も可能となる。そのため、この状態においては、扉体1は上流側水位19aと下流側水位19bの変動に対応した自動開閉作動を行うことができる。
すなわち、上流側水位19aの方が下流側水位19bより高く、上流側水位19aの排水方向への水圧力が下流側水位19bによる水圧力と扉体1の自重による圧力より大きい場合には、自動開作動が行われゲート上流側から下流方向へ排水される。
逆に、上流側水位19aが下流側水位19bより低いか同程度で、上流側水位19aの排水方向への水圧力が下流側水位19bによる水圧力と扉体1の自重による圧力より小さい場合には、
図4に示すように、扉体1は下流側水位19bによる水圧力と扉体1の自重によって閉方向に回転作動しようとし、ロッド8は黒い矢印の方向へ移動しようとする。
そうすると、作動油は第1連通管10内及び第2連通管12内を白い矢印で示すように前方油口3aから後方油口3bの方向に流れるので、扉体1は閉鎖方向に移動して自動閉作動が行われ、最終的に
図5の状態となる。
このとき、第2の連通管12内を流れる作動油の流量は、流量制御弁13の作用によって所定流量以上にはならないため、ロッド8の伸作動速度が制限され、扉体1の自動閉作動速度は緩やかなものとなる。そのため、扉体1が高速で閉作動して戸当金物5と激しい衝突を起こすことを回避でき、騒音の発生や損傷の発生を防止することができる。
【0018】
図6は扉体1が閉鎖した後の自動開放作動時における実施例1に係る油圧操作装置等の状態を示す図、
図7は強制開放開始時の実施例1における作動油の流れを説明する図、
図8は強制開放終了時の実施例1に係る油圧操作装置等の状態を示す図である。
図5に示した自動閉作動時におけるゲート閉鎖状態から下流側水位19bが低下し、フロート弁4bが閉鎖して自動開放作動可能な状態になっても、
図6のように上流側水位19aと下流側水位19bの水位差が小さく、上流側からの水圧力が扉体1の自重による圧力より小さい場合にはゲート閉鎖状態が続く。
特に、自動閉作動時において上流側水位19aがかなり低かった場合、
図7のように下流側水位19bが下がってもゲート閉鎖状態が続き、上流側からの水圧力が扉体1の自重による圧力より大きくなったとしても排水量に応じたわずかな開放度となるため、ゲートの上流側に流草木、土砂又は塵芥の堆積が発生し易いという問題があった。
そこで、本実施例では下流側水位19bが特定水位以下、かつ、扉体1の開放度が所定角度未満である時に油圧ポンプ17を作動させるようにしている。
そして、油圧ポンプ17を作動させると、
図7に白い矢印で示すように、作動油は作動油供給管14、供給用逆止弁15a、作動油供給管14、第1連通管10、前方油口3aを経由して両ロッド式油圧シリンダ3の前方油室に流入し、それに伴って後方油室内の作動油は後方油口3b、第1連通管10、作動油排出管16、排出用パイロット付逆止弁15b及び作動油排出管16を経由して油圧タンク18に排出されるので、ロッド8は
図7の黒い矢印の方向へ移動し、扉体1は開放方向に回転作動する。
その後、扉体1の開放度が所定角度となった時に油圧ポンプ17を停止させると
図8の状態となるが、
図8の状態になる前に下流側水位19bが上昇して特定水位以上となった場合にも油圧ポンプ17は停止するようになっている。
図8に示す状態となった後においては、上流側水位19aと下流側水位19bは同じ高さとなり、上流側からの排水はスムーズに下流側に流れていく。
【0019】
図9は水位検知装置21の動作を説明する図である。
実施例1の水位検知装置21は、検出電極21a、アース電極21b、検出電極21aと電気的に接続されている電線21c及びアース電極21bと電気的に接続されている電線21d等で構成されている。
検出電極21a及びアース電極21bの下端は、特定水位の高さに配置されており、アース電極と検出電極間には交流電圧が印加されている。
そして、
図9(A)のように下流側水位19bが特定水位より高いときには、検出電極21a及びアース電極21bは、ともに水没した状態となるので両電極間に電流が流れ、
図9(B)のように下流側水位19bが特定水位以下になると、両電極が水に接触しない状態となるので両電極間には電流が流れなくなる。
この両電極間に流れる電流値を検出することによって、下流側水位19bが特定水位以下であることを示す水位信号の出力を制御する。
なお、特定水位はフロート弁4bが開状態となる所定水位より低く下流側水位19bの最低水位より高ければ良いが、通常は扉体1が十分に開放している状態における下流側水位19bの定常水位又は平均水位より若干高い位置とする。
【0020】
図10は扉体1の開放度と供給管油圧p(MPa)との関係を説明する図である。
扉体1の開放度は
図10(A)に示す角度θ(°)で表す。すなわち、θは扉体1が全閉状態時から何度回転したかを意味する数値である。
図10(B)は扉体1の開放度θと供給管油圧p(強制開放時における操作圧又は自動開放作動時における保持圧)との関係を示すグラフである。
図10(B)のグラフから分かるように、θが増加するとpも単調増加するため、ゲート設備毎に予め任意の開放度θaに対する供給管油圧paの値を測定し記憶しておけば、供給管油圧pを検知することにより、扉体1の開放度θを特定することができる。
そのため、油圧検知装置22で作動油供給管14内の供給管油圧が所定圧力未満か否かを検知すれば、扉体1の開放度が所定角度未満か否かを検知できるので、所定圧力に対応する所定角度を扉体1の最大開放角度の90%程度以下にしておけば、下流側水位19bが低く扉体1の開放度が不十分であるときに、確実に油圧ポンプ17を作動させて扉体1を強制開放し、全開状態となる前に油圧ポンプ17を停止させて扉体1の開放状態を無理なく保持することができる。
なお、扉体1の開放度が小さい状態を回避し、ゲートの上流側に流草木、土砂又は塵芥が堆積することを防止するためには、所定角度を最大開放角度の30%以上に設定すれば十分であるが、開放度の低下を考慮して40%以上とした方が良い。