IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-タンクへの管挿抜装置 図1
  • 特開-タンクへの管挿抜装置 図2
  • 特開-タンクへの管挿抜装置 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096972
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】タンクへの管挿抜装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20230630BHJP
   B65D 90/00 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
F17C13/00 302C
B65D90/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213061
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】鹿谷 剛
(72)【発明者】
【氏名】前田 剛志
(72)【発明者】
【氏名】小野 淳
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 理孝
【テーマコード(参考)】
3E170
3E172
【Fターム(参考)】
3E170AA08
3E170AB29
3E170BA03
3E170GB05
3E170GB16
3E170JA04
3E170JA09
3E170KC06
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB04
3E172AB05
3E172AB11
3E172BA06
3E172BB04
3E172BB12
3E172BB17
3E172CA02
3E172DA28
3E172DA29
3E172JA08
3E172KA11
(57)【要約】
【課題】タンクに残留している気体収容物の漏出を阻止しつつ、タンクに管を挿抜する技術を提供する。
【解決手段】管挿抜装置は気体が収容されたタンクに管を挿抜するために、タンクの内外を連通可能なタンク開口の開口縁に取り付けられる。管挿抜装置は、管が遊挿される第1開口を有し、タンク開口の開口縁に着脱可能に接続される第1チャンバーと、第1開口の開口縁と当該第1開口に通される管との間隙を封止する第1封止部とを備える。第1封止部は、管が摺動可能に通される第1挿通孔を有し、気密性及び弾性を有する素材から成るシール板と、シール板を板厚方向に挟み込む押圧板と、シール板を板厚方向に加圧しその加圧度合が調整可能な加圧装置とを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体が収容されたタンクに管を挿抜するために、前記タンクの内外を連通可能なタンク開口の開口縁に取り付けられる管挿抜装置であって、
前記管が遊挿される第1開口を有し、前記タンク開口の開口縁に着脱可能に接続される第1チャンバーと、
前記第1開口の開口縁と当該第1開口に通される前記管との間隙を封止する第1封止部とを備え、
前記第1封止部は、前記管が摺動可能に通される第1挿通孔を有し、気密性及び弾性を有する素材から成るシール板と、前記シール板を板厚方向に挟み込む押圧板と、前記シール板を前記板厚方向に加圧しその加圧度合が調整可能な加圧装置とを有する、
管挿抜装置。
【請求項2】
前記加圧装置は、前記シール板及び前記押圧板の積層体が収容されたケース本体と、前記ケース本体と螺合する蓋体とを有し、前記ケース本体と前記蓋体の螺合を緩めたり締めたりすることによって前記シール板の前記板厚方向への加圧度合を調整可能である、
請求項1に記載の管挿抜装置。
【請求項3】
前記第1チャンバーは、第1給気ポート及び第1排気ポートを有し、前記第1給気ポートから前記第1チャンバーへ不活性ガスが供給される、
請求項1又は2に記載の管挿抜装置。
【請求項4】
前記第1チャンバーに前記第1封止部を介して接続され、前記管が遊挿される第2開口を有する第2チャンバーと、
前記第2開口の開口縁と当該第2開口に通される前記管との間隙を封止する第2封止部とを、更に備え、
前記第2封止部は、前記第2開口に嵌め込まれ、前記管が摺動可能に通される第2挿通孔を有し、気密性及び弾性を有する素材から成るテーパ形状のパッキンを有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の管挿抜装置。
【請求項5】
前記第2チャンバーは、第2給気ポート及び第2排気ポートを有し、前記第2給気ポートから前記第2チャンバーへ不活性ガスが供給される、
請求項4に記載の管挿抜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タンク外への気体状収容物の漏出を阻止しつつ、タンクに管を挿抜する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タンクの保守点検作業の際に、タンクに残留している気体収容物の漏出を阻止しながら、タンク内へ部品を挿入したりタンク内から部品を取り出したりする技術が提案されている。
【0003】
特許文献1では、タンクを鉛直方向に貫くガイド管内に収容された液面センサを取り出す方法が開示されている。ガイド管の上部を囲うようにタンク屋根に上部開放の筒状シール装置が取り付けられ、筒状シール装置の上部開口は上蓋で気密に閉じられ、ガイド管と筒状シール装置との間はシール部材で閉じられ、筒状シール装置内にはタンク内圧よりも高圧となるように不活性ガスが供給される。液面センサは筒状シール装置内においてワイヤロープで吊り上げられる。ワイヤロープは筒状シール装置の上蓋に設けられたワイヤシールを通って外部へ引き出されている。一般に、ワイヤシールは、シリコンラバー等のゴム素材で構成され、ワイヤロープが通される貫通孔を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平1-23392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タンクの保守点検作業において、タンク内に気体収容物が残留している状態で、タンクからの気体収容物の漏出を阻止しながら、タンク壁を通じて管を挿抜することの要求がある。特許文献1では、ワイヤシールによって筒状シール装置の上蓋に対するワイヤロープの移動を許容しつつ上蓋の貫通部とワイヤロープとの間が封止されている。管はワイヤロープと比較して太いことから、特許文献1のワイヤシールと同様のシール構造では、管の移動を許容しつつ管と貫通部の間を封止することは難しい。
【0006】
本開示は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、タンクに残留している気体収容物の漏出を阻止しつつ、タンクに管を挿抜する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る管挿抜装置は、気体が収容されたタンクに管を挿抜するために、前記タンクの内外を連通可能なタンク開口の開口縁に取り付けられる管挿抜装置であって、
前記管が遊挿される第1開口を有し、前記タンク開口の開口縁に着脱可能に接続される第1チャンバーと、
前記第1開口の開口縁と当該第1開口に通される前記管との間隙を封止する第1封止部 とを備え、
前記第1封止部は、前記管が摺動可能に通される第1挿通孔を有し、気密性及び弾性を有する素材から成るシール板と、前記シール板を板厚方向に挟み込む押圧板と、前記シール板を前記板厚方向に加圧しその加圧度合が調整可能な加圧装置とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、タンクに残留している気体収容物の漏出を阻止しつつ、タンクに管を挿抜する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示に係る管挿抜装置が適用されたタンクの概略構成を示す図である。
図2図2は、仮設管としてのサクション管の仮設に利用される管挿抜装置を示す図である。
図3図3は、仮設管としてのサンプリング管の仮設に利用される管挿抜装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して本開示の一実施形態を説明する。図1は本開示に係る管挿抜装置10が適用されたタンク3の概略構成を示す図である。本実施形態に係るタンク3は、液化天然ガス(LNG)を貯蔵するLNGタンクである。LNGタンクは、例えば、二重殻タンクであってよい。但し、タンク3の用途は本実施形態に限定されない。
【0011】
図1では、保守点検作業中のタンク3が示されている。タンク3の内部はLNGの気化ガスで満たされている。タンク3の底部には、プロパンやブタンなどの重質成分を多く含む残液が僅かに存在することもある。タンク3の保守点検のために、タンク3に複数の仮設管30が設けられる。仮設管30は、保守点検のためにタンク3に一時的に備えられる管である。本実施形態に係る仮設管30は、サクション管31とサンプリング管32とを含む。但し、仮設管30の用途は本実施形態に限定されない。
【0012】
サクション管31は、タンク3の底部から気体を吸引するためのものである。サクション管31は、タンク屋根からタンク3内に挿入され、下端部がタンク3内の底部に位置する。サクション管31は、フレキシブルメタルホースの途中に表面が滑らかな鋼管が挿入されたものである。フレキシブルホースと鋼管は接続されている。サクション管31のうち少なくともフレキシブルメタルホースの部分は、フレキシブルメタルホースの外周が熱収縮チューブで覆われている。フレキシブルメタルホースは外表面がメタル繊維で被覆されているため外表面に凹凸を有するが、この凹凸は熱収縮チューブで覆われることによって低減されて、サクション管31の外表面は滑らかとなっている。
【0013】
サンプリング管32は、タンク3内の気体をサンプリングするためのものである。本実施形態では、タンク3内の高さの異なる複数の位置から気体をサンプリングするために、複数のサンプリング管32がタンク屋根からタンク3内に挿入されている。サンプリング管32は、銅チューブからなる。
【0014】
上記の仮設管30をタンク3に対し仮設する際には、管挿抜装置10が用いられる。以下、管挿抜装置10の構造について説明する。
【0015】
タンク3の屋根には、上方へ突出する既設管51が設けられている。この既設管51はタンク3の屋根を貫いてタンク3の内部と外部と連通可能であって、既設管51には連通と遮断とを切り替える開閉弁52が設けられている。開閉弁52は、例えば、ボール弁であってよい。本実施形態では、既設管51の開口を仮設管30が挿抜される「タンク開口50」としている。但し、タンク開口50は本実施形態に限定されない。
【0016】
図2は、仮設管30としてのサクション管31の仮設に用いられる管挿抜装置10を示す図である。図1及び図2に示すように、管挿抜装置10は、仮設管30の挿抜方向に並ぶ、第1チャンバー64、第1封止部41、第2チャンバー63、及び第2封止部42を有する。仮設管30は、これらの要素に挿通される。第1封止部41は、仮設管30のタンク3に対する挿抜方向の移動を許容しつつ、仮設管30とタンク3との間隙を気体収容物が殆ど漏出しないように封止することができる。第2封止部42は、仮設管30のタンク3に対する移動は想定されておらず、仮設管30とタンク3との間隙を気体収容物が漏出しないように封止することができる。
【0017】
第1チャンバー64は、本実施形態では円筒形状を呈し、既設管51の開口縁と着脱可能に接続される。なお、本実施形態では、第1チャンバー64は第1筒部材641と、第1筒部材641と締結された第2筒部材642と、第2筒部材642と接合されたケース本体61の一部分との、複数の部材により形成されている。第1チャンバー64の内部はタンク開口50と連通されている。
【0018】
第1チャンバー64は、第1給気ポート643及び第1排気ポート644を有する。第1給気ポート643には、窒素などの不活性ガス源が接続されており、第1給気ポート643を通じて第1チャンバー64内に不活性ガスが供給される。第1チャンバー64内の気体は第1排気ポート644を通じて外部へ排出される。
【0019】
第1チャンバー64は、仮設管30が遊挿される第1開口611を有する。本実施形態では、第1開口611はケース本体61の底面に開口している。第1開口611の径は仮設管30の外径よりも大きく、第1開口611の縁と第1開口611に挿通された仮設管30との間には間隙(以下、第1間隙G1)が生じる。第1封止部41は、この第1間隙G1を封止する。第1封止部41は、1又は複数枚のシール板47と、複数の押圧板48と、加圧装置6とによって構成されている。
【0020】
加圧装置6は、ケース本体61と、蓋体62とを備える。ケース本体61は、底面を有し上向きに開放した円筒形状を呈する。蓋体62は、天面を有し下向きに開放した円筒形状を呈する。蓋体62の天面には、中心部分に仮設管30を通すための第3開口622が開口している。第3開口622の径は、仮設管30の外径よりも大きい。
【0021】
蓋体62の下部はケース本体61の上部に嵌められている。ケース本体61の外周面に外ネジが設けられ、蓋体62の内周面に内ネジが設けられ、これらが噛合することによってケース本体61と蓋体62とが螺合している。ケース本体61の外ネジと蓋体62の内ネジの間にはガスケットが介在しており、更に、ケース本体61と蓋体62の下端縁とがシール材で封止されている。蓋体62には、ケース本体61に対して蓋体62を回転させるために利用するハンドル621が設けられている。
【0022】
ケース本体61に、押圧板48とシール板47の積層体が収容されている。積層体はケース本体61の底面の上に配置されている。シール板47は、中心部に第1挿通孔471を有する薄板である。シール板47は、シリコンゴムスポンジなどの独立気泡ゴムスポンジから成る。独立気泡ゴムスポンジは、気密性と弾性を有する。加圧されていない状態のシール板47の第1挿通孔471の径は、仮設管30の外径と同じである、又は、外径よりも僅かに大きい。押圧板48は、金属製であって、中心開口を有するドーナツ状の薄板である。押圧板48の中心開口の径は、シール板47の第1挿通孔471の径よりも大きい。
【0023】
押圧板48とシール板47の積層体では、最上層及び最下層に押圧板48が配置され、これらの間にシール板47が配置される。各シール板47が押圧板48に挟まれるように、シール板47同士の間にも押圧板48が配置される。例えば、本実施形態のように3枚のシール板47を備える場合には、押圧板48、シール板47、押圧板48、シール板47、押圧板48、シール板47、及び押圧板48の順に積層される。
【0024】
シール板47と押圧板48は、ケース本体61に設けられた位置決めピン612が通されることによって、ケース本体61に対して位置決めされている。ケース本体61の第1開口611、シール板47の第1挿通孔471、及び、押圧板48の中心開口は、同心となるように配置され、これらに仮設管30が通される。
【0025】
最上層の押圧板48と蓋体62の天面との間にはスペーサ49が配置されている。本実施形態に係るスペーサ49は、最上層の押圧板48と結合された二重管である。スペーサ49と蓋体62の天面との間には、両者の摩擦を軽減するためのフッ素樹脂シート46が配置されている。ケース本体61に対する蓋体62の回転位置によって、ケース本体61の底面と蓋体62の天面との距離が変化する。ケース本体61の底面と蓋体62の天面との距離が小さくなるほど、シール板47はより強く板厚方向に加圧される。板厚方向に加圧されたシール板47は、板厚方向に押しつぶされて板厚方向と平行に延びて、第1挿通孔471の径が縮まる。シール板47の第1挿通孔471に仮設管30が挿通されている状態では、シール板47の第1挿通孔471の縮径によって、シール板47の第1挿通孔471の縁が仮設管30に圧接される。
【0026】
蓋体62には、第2チャンバー63が接続されている。第2チャンバー63は、蓋体62の第3開口622を覆い、本実施形態では円筒形状を呈する。第2チャンバー63の内部は第3開口622を通じて蓋体62の内部と連通されている。第2チャンバー63には、仮設管30が遊挿される第2開口631が開口している。第2開口631の径は、仮設管30の外径よりも大きい。第2開口631は、蓋体62の第3開口622と同心状に配置されている。また、第2チャンバー63は、第2給気ポート632及び第2排気ポート633を有する。第2給気ポート632には、窒素などの不活性ガス源が接続されており、第2給気ポート632を通じて第2チャンバー63内に不活性ガスが供給される。第2チャンバー63内の気体は第2排気ポート633を通じて外部へ排出される。
【0027】
第2封止部42は、第2チャンバー63の第2開口631に着脱可能に嵌め込まれるパッキン55を備える。パッキン55は、第2チャンバー63と結合された押さえ板56によって、第2チャンバー63へ進入する方向に押さえつけられて、第2開口631から抜け止めされる。パッキン55は、例えばシリコンゴムなどの気密性及び弾性を有する素材から成る。パッキン55は、先細りのテーパ形状を有し、仮設管30を挿通するための第2挿通孔551を有する。パッキン55の第2開口631への嵌め込み度合、換言すれば、第2チャンバー63への進入量によって、パッキン55の第2挿通孔551に挿通された仮設管30の締め付け度合が変化する。パッキン55の嵌め込み度合が大きいほど、パッキン55に挿通された仮設管30の締め付け度合が大きくなる。
【0028】
〔サクション管31の仮設及び撤去方法〕
ここで、上記構成の管挿抜装置10を用いた仮設管30の仮設及び撤去方法を説明する。先ず、仮設管30としてのサクション管31の仮設方法から説明する。
【0029】
先ず、開閉弁52が閉止された状態で、既設管51と第1チャンバー64とが結合される。第1チャンバー64とケース本体61、ケース本体61と蓋体62、蓋体62と第2チャンバー63が、それぞれ順に結合されて管挿抜装置10が組み上げられる。仮設管30はパッキン55の第2挿通孔551に予め通されているが、パッキン55は第2チャンバー63の第2開口631に取り付けられていない。仮設管30は、第2チャンバー63の第2開口631、蓋体62の第3開口622、シール板47の第1挿通孔471、及び、ケース本体61の第1開口611を順に通されて、仮設管30の先端部は第1チャンバー64内へ到達した状態とされる。
【0030】
ケース本体61の外ネジと蓋体62の内ネジの各々には液状ガスケットが予め塗布されている。そして、ケース本体61に対して蓋体62を回転させることにより、ケース本体61と蓋体62が螺合されるとともに、シール板47が加圧される。これにより、シール板47の第1挿通孔471の縁が仮設管30に押し付けられて、シール板47と仮設管30との間が封止される。そして、シール板47の加圧度合は、シール板47が仮設管30に圧接されるが、仮設管30はシール板47を摺動しながら挿抜方向への移動が許容されるような状態に調整される。シール板47がこのような加圧度合に到達したら、ケース本体61と蓋体62の下端部との間がシール材で埋められる。
【0031】
上記のように第1封止部41においてシール板47と仮設管30との間が封止されることによって、第1チャンバー64の内部空間がほぼ密閉される。この状態で、第1チャンバー64の第1給気ポート643から不活性ガスが供給されるとともに、第1排気ポート644から排気されて、第1チャンバー64内が不活性ガスで置換される。
【0032】
第1チャンバー64の不活性ガス置換が終了したあとで、開閉弁52が開放されて、第1チャンバー64内とタンク3内とが連通される。ここで、第1チャンバー64内がタンク内圧以上に保たれるように、第1チャンバー64への不活性ガスの給気が継続されてもよい。第1封止部41では厳密に封止することは難しく、シール板47と仮設管30との僅かな隙間から微量の気体収容物が漏出する可能性がある。そこで、上記のように、仮設管30の挿抜作業時には第1チャンバー64内に不活性ガスが供給されることによって、タンク3内から管挿抜装置10への気体残留物の流出が抑制され、可燃性ガスの外部への漏出が防止される。
【0033】
仮設管30の先端がタンク3内の所定位置へ至るまで、仮設管30は管挿抜装置10へ挿入方向に押し込まれる。仮設管30がサクション管31である場合、仮設管30の先端がタンク3の底部に到達するまで仮設管30が管挿抜装置10へ押し込まれる。仮設管30の先端が所定位置に到達すると、第2チャンバー63の第2開口631にパッキン55が嵌め込まれ、押さえ板56が第2チャンバー63と結合されてパッキン55が抜け止めされる。
【0034】
パッキン55によって、第2チャンバー63の第2開口631と仮設管30との間隙(第2間隙G2)が封止される。パッキン55によって第2チャンバー63が密閉された状態で、第2給気ポート632から不活性ガスが供給されるとともに、第2排気ポート633から排気されて、第2チャンバー63内が不活性ガスで置換される。
【0035】
以上の工程により、タンク3に仮設管30としてのサクション管31が仮設される。仮設された仮設管30を撤去する場合には、仮設の工程を遡ればよい。
【0036】
〔サンプリング管32の仮設及び撤去方法〕
図3は、仮設管30としてのサンプリング管32の仮設に利用される管挿抜装置10を示す図である。図3に示すように、本実施形態では5本のサンプリング管32がタンク3に仮設される。サンプリング管32の仮設に利用される管挿抜装置10と、サクション管31の仮設に利用される管挿抜装置10(図2、参照)と対比すると、第1封止部41のシール板47にはサンプリング管32の本数に合わせた複数の第1挿通孔471が設けられている点、及び、管挿抜装置10の第2封止部42においてパッキン55にはサンプリング管32の本数に合わせた複数の第2挿通孔551が設けられている点において相違し、余の構成は実質的に同一である。前述の管挿抜装置10と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。
【0037】
ここで、上記構成の管挿抜装置10を用いた、仮設管30としてのサンプリング管32の仮設及び撤去方法を説明する。
【0038】
先ず、開閉弁52が閉止された状態で、既設管51と第1チャンバー64とが結合される。第1チャンバー64とケース本体61、ケース本体61と蓋体62、蓋体62と第2チャンバー63が、それぞれ順に結合されて管挿抜装置10が組み上げられる。加圧装置6によるシール板47の加圧は緩められている。パッキン55は第2チャンバー63の第2開口631に嵌め込まれている。
【0039】
仮設管30は、パッキン55の第2挿通孔551、第2チャンバー63の第2開口631、蓋体62の第3開口622、シール板47の第1挿通孔471、及び、ケース本体61の第1開口611を順に通されて、仮設管30の先端部が第1チャンバー64内へ到達した状態とされる。パッキン55は、第2開口631及び第2挿通孔551を通じた気体の流通を抑制しつつ、仮設管30がパッキン55の第2挿通孔551を摺動できる状態となるように、第2開口631への嵌め込み度合が調整されている。
【0040】
上記のように第2封止部42において第2開口631と仮設管30との間が封止されることによって、第2チャンバー63及び第1チャンバー64の内部空間が密閉される。この状態で、第1チャンバー64の第1給気ポート643から不活性ガスが供給されるとともに、第1排気ポート644から排気されて、第1チャンバー64内が不活性ガスで置換される。同様に、第2チャンバー63の第2給気ポート632から不活性ガスが供給されるとともに、第2排気ポート633から排気されて、第1チャンバー64内が不活性ガスで置換される。
【0041】
チャンバー63,64の不活性ガス置換が終了したあとで、開閉弁52が開放されて、チャンバー63,64内とタンク3内とが連通される。ここで、チャンバー63,64内がタンク内圧以上に保たれるように、各チャンバー63,64の給気及び排気が継続されてもよい。
【0042】
仮設管30の先端がタンク3内の所定位置へ至るまで仮設管30は管挿抜装置10へ挿入方向に押し込まれる。仮設管30が複数のサンプリング管32である場合、複数のサンプリング管32の先端の高さ位置が相違するように、仮設管30が管挿抜装置10へ押し込まれる。仮設管30の先端が所定位置に到達すると、パッキン55が第2チャンバー63の第2開口631へ更に押し込まれて、パッキン55による仮設管30の締め付け具合が大きくなって仮設管30が位置保持される。なお、仮設管30の先端が所定位置に到達した時点でパッキン55により第2チャンバー63の第2開口631が十分に封止されている場合には、パッキン55を更に押し込む作業は省略されてよい。
【0043】
以上の工程により、タンク3に仮設管30としてのサンプリング管32が仮設される。仮設された仮設管30を撤去する場合には、仮設の工程を遡ればよい。
【0044】
〔総括〕
以上に説明した通り、本実施形態に係る管挿抜装置10は、気体が収容されたタンク3内へ管(仮設管30)を挿抜するために、タンク3の内外を連通可能なタンク開口50の開口縁に取り付けられる管挿抜装置10であって、
管30が遊挿される第1開口611を有し、タンク開口50の開口縁に着脱可能に接続される第1チャンバー64と、
第1開口611の開口縁と当該第1開口611に通される管30との間隙(第1間隙G1)を封止する第1封止部41とを備え、
第1封止部41は、管30が摺動可能に通される第1挿通孔471を有し、気密性及び弾性を有する素材から成るシール板47と、シール板47を板厚方向に挟み込む押圧板48と、シール板47を板厚方向に加圧しその加圧度合が調整可能な加圧装置6とを有することを特徴としている。
【0045】
上記構成の管挿抜装置10は、タンク3に管30を仮設する際にタンク開口50の開口縁に接続され、第1チャンバー64はタンク開口50と連通される。管30は、シール板47の第1挿通孔471及び第1チャンバー64の第1開口611を通じて第1チャンバー64内に導入され、更に、タンク開口50を通じてタンク3の内部まで導入される。第1封止部41では、加圧装置6でシール板47の加圧度合を調整することによって、シール板47の第1挿通孔471の縁と管30との圧接度合を調整することができる。管30に対するシール板47の圧接度合は、管30の挿抜方向への移動が許容される程度に調整される。これにより、第1封止部41は、管30の挿抜方向への移動を許容しつつ、タンク3に残留している気体収容物の漏出を阻止することができる。よって、上記構成の管挿抜装置10を用いることによって、タンク3に残留している気体収容物の漏出を阻止しつつ、タンク3に管30を挿抜することができる。
【0046】
上記構成の管挿抜装置10において、加圧装置6は、シール板47及び押圧板48の積層体が収容されたケース本体61と、ケース本体61と螺合する蓋体62とを有し、ケース本体61と蓋体62の螺合を緩めたり締めたりすることによってシール板47の板厚方向への加圧度合を調整可能に構成されていてよい。
【0047】
このような加圧装置6によれば、シール板47の加圧度合を調整するために機械的動力や電力を要しない。よって、気体収容物が可燃性ガスである場合にも、確実且つ安全に加圧装置6を作動することができる。
【0048】
上記構成の管挿抜装置10において、第1チャンバー64は第1給気ポート643及び第1排気ポート644を有し、第1給気ポート643から第1チャンバー64へ不活性ガスが供給されてよい。このように、第1チャンバー64内に不活性ガスが供給されることによって、タンク開口50から第1チャンバー64へ流入する気体収容物の流れを抑制することができる。また、タンク開口50を通じて第1チャンバー64へ流入した気体収容物を不活性ガスで希釈して排出することができる。
【0049】
上記構成の管挿抜装置10が、第1チャンバー64に第1封止部41を介して接続され、管30が遊挿される第2開口631を有する第2チャンバー63と、第2開口631の開口縁と当該第2開口631に通される管30との間隙(第2間隙G2)を封止する第2封止部42とを更に備えていてよい。ここで、第2封止部42は、第2開口631に嵌め込まれ、管30が摺動可能に通される第2挿通孔551を有し、気密性及び弾性を有する素材から成るテーパ形状のパッキン55を有していてよい。
【0050】
上記構成の管挿抜装置10によれば、パッキン55の第2開口631への嵌め込み度合、換言すれば、第2チャンバー63への進入度合によって、パッキン55の第2挿通孔551に挿通された管30の締め付け度合が変化する。そして、パッキン55による管30の締め付け度合を調整することによって、第2開口631を通じた気体の流通を抑制しつつ、管30がパッキン55の第2挿通孔551を摺動できる状態とすることができる。よって、上記構成の管挿抜装置10を用いることによって、タンク3に残留している気体収容物の漏出を阻止しつつ、タンク3に管30を挿入したり、タンク3から管30を抜いたりすることができる。
【0051】
また、第1封止部41と第2封止部42の二重の封止部を設けることで、仮に第1封止部41のシール板47と管30との第1間隙G1の封止が解除されても、第2封止部42のパッキン55と管30との第2間隙G2の封止を継続することで、既設管51及び管挿抜装置10を通じた気体収容物の漏出を抑えることができる。
【0052】
上記構成の管挿抜装置10において、第2チャンバー63は第2給気ポート632及び第2排気ポート633を有し、第2給気ポート632から前記第2チャンバー63へ不活性ガスが供給されてよい。このように、第2チャンバー63に不活性ガスが供給されることによって、第2チャンバー63へ流入する気体収容物の流れを抑制することができる。また、第2チャンバー63へ流入した気体収容物を不活性ガスで希釈して排出できる。
【0053】
本開示の前述の議論は、例示及び説明の目的で提示されたものであり、本開示を本明細書に開示される形態に限定することを意図するものではない。例えば、前述の詳細な説明では、本開示の様々な特徴は、本開示を合理化する目的で1つの実施形態にまとめられている。但し、本開示に含まれる複数の特徴は、上記で論じたもの以外の代替の実施形態、構成、又は態様に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0054】
3 :タンク
6 :加圧装置
10 :管挿抜装置
30 :管(仮設管)
31 :サクション管
32 :サンプリング管
41 :第1封止部
42 :第2封止部
47 :シール板
48 :押圧板
49 :スペーサ
50 :タンク開口
51 :既設管
52 :開閉弁
55 :パッキン
56 :押さえ板
61 :ケース本体
62 :蓋体
63 :第2チャンバー
63 :チャンバー
64 :チャンバー
64 :第1チャンバー
471 :第1挿通孔
551 :第2挿通孔
611 :第1開口
631 :第2開口
632 :第2給気ポート
633 :第2排気ポート
643 :第1給気ポート
644 :第1排気ポート
図1
図2
図3