(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096986
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】ズームレンズ及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 15/20 20060101AFI20230630BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20230630BHJP
【FI】
G02B15/20
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213091
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 允基
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA02
2H087KA03
2H087MA15
2H087PA08
2H087PA10
2H087PA11
2H087PA18
2H087PA19
2H087PA20
2H087PB11
2H087PB12
2H087PB13
2H087QA02
2H087QA03
2H087QA07
2H087QA17
2H087QA18
2H087QA21
2H087QA25
2H087QA26
2H087QA34
2H087QA42
2H087QA45
2H087QA46
2H087RA04
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087RA42
2H087RA43
2H087RA44
2H087SA24
2H087SA26
2H087SA30
2H087SA32
2H087SA44
2H087SA46
2H087SA50
2H087SA52
2H087SA55
2H087SA56
2H087SA63
2H087SA64
2H087SA65
2H087SA72
2H087SA76
2H087SB02
2H087SB12
2H087SB13
2H087SB24
2H087SB25
2H087SB35
2H087SB36
2H087SB37
2H087SB42
2H087SB43
(57)【要約】
【課題】 高い光学性能を有し、広角で小型、高倍率なズームレンズを備えた撮像装置を提供する。
【解決手段】 物体側から像側へ順に、負の屈折力を有する第1レンズ群(G1)と、正の屈折力を有する第2レンズ群(G2)と、負の屈折力を有する第3レンズ群(G3)と、正の屈折力を有する第4レンズ群(G4)とを有し、広角端から望遠端への変倍に際し、第1レンズ群(G1)は固定され、少なくとも第2レンズ群(G2)及び第3レンズ群(G3)及び第4レンズ群(G4)を光軸に沿って移動し、前記各レンズ群の光軸上の間隔が変化するズームレンズにおいて、所定の式を満足するズームレンズ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側へ順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群とを少なくとも有し、広角端から望遠端への変倍に際し、前記第1レンズ群は固定され、少なくとも前記第2レンズ群及び前記第3レンズ群及び前記第4レンズ群は光軸に沿って移動し、隣り合う各レンズ群の光軸上の間隔が変化するズームレンズにおいて、以下の式を満足するズームレンズ。
0.1 ≦ β23w/tan(ωw)≦ 0.5・・・・・・・・・・・(1)
1.0 ≦ f2/√(fw×ft)≦ 3.25・・・・・・・・・・・(2)
0.15 ≦ (β23t/β23w)/(ft/fw)≦ 0.98・・(3)
但し、
fw:広角端における無限遠合焦時の当該ズームレンズの焦点距離
ft:望遠端における無限遠合焦時の当該ズームレンズの焦点距離
f2:前記第2レンズ群の焦点距離
ωw:広角端における最軸外光線の半画角
β23w:広角端における無限遠合焦時の前記第2レンズ群と前記第3レンズ群の合成横倍率
β23t:望遠端における無限遠合焦時の前記第2レンズ群と前記第3レンズ群の合成横倍率
【請求項2】
以下の式を満足する請求項1に記載のズームレンズ。
5.0 ≦ |f1/fw| ≦ 20.0・・・(4)
但し、
f1:前記第1レンズ群の焦点距離
【請求項3】
前記第2レンズ群は、2枚以下の正レンズで構成される請求項1又は請求項2に記載のズームレンズ。
【請求項4】
前記第1レンズ群は、1枚の負レンズで構成される請求項1から3いずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項5】
以下の式を満足する請求項1から4のいずれか一項に記載のズームレンズ。
0.5 ≦ |f1/f2| ≦ 4.0・・・(5)
【請求項6】
以下の式を満足する請求項1から5のいずれか一項に記載のズームレンズ。
0.5 ≦ |f12t/ft| ≦ 3.0・・・(6)
但し、
f12t:望遠端における無限遠合焦時の前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の合成焦点距離
【請求項7】
以下の式を満足する請求項1から6のいずれか一項に記載のズームレンズ。
0.3 ≦ |X3|/√(fw×ft) ≦ 2.0・・・(7)
但し、
X3:広角端から望遠端への変倍における前記第3レンズ群の光軸方向への移動量
【請求項8】
以下の式を満足する請求項1から7のいずれか一項に記載のズームレンズ。
1.5 ≦ |f2/f3| ≦ 6.0・・・(8)
f3:前記第3レンズ群の焦点距離
【請求項9】
以下の式を満足する請求項1から8のいずれか一項に記載のズームレンズ。
ν2p_max ≦ 70・・・(9)
但し、
ν2p_max:前記第2レンズ群内の正レンズのアッベ数の最大値
【請求項10】
開口絞りは、前記第3レンズ群と前記第4レンズ群の間に配置され、広角端から望遠端への変倍時及び無限遠から近距離への合焦時には固定される請求項1から9のいずれか一項に記載のズームレンズ。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のズームレンズと、当該光学系の像側に当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えた撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、ズームレンズ及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルスチルカメラの等の固体撮像素子を用いた撮影装置が普及している。それに伴い、ズームレンズの高性能化、小型化が進み、小型の撮像装置システムが急速に普及してきている。従来のレンズにおいて、特に全長が短く小型なズームレンズが望まれる監視用レンズ、ビデオカメラ用レンズ、デジタルスチルカメラ用レンズ、一眼レフレックスカメラ用レンズ、ミラーレス一眼カメラ用レンズ等では、高い光学性能を有しながら、1台のカメラで広い範囲を撮影できる(広画角化)とともに、高倍率を有しながら、また、レンズ自体も小型、軽量化することが課題となる。
【0003】
特許文献1に記載のズームレンズは、負の屈折力を有する第1レンズ群、正の屈折力を有する第2レンズ群、負の屈折力を有する第3レンズ群、正の屈折力を有する第4レンズ群からなるズームレンズが開示されている。しかしながら、ズーム倍率が~3倍程度となっており、小型で高倍率化が困難である。
【0004】
特許文献2に記載のズームレンズは、負の屈折力を有する第1レンズ群、正の屈折力を有する第2レンズ群、負の屈折力を有する第3レンズ群、第3レンズ群より像面側に1つ以上のレンズ群を含む後群から成り、小型で高倍率であるとともに、広角端において広画角化を達成した広角ズームレンズが開示されている。しかしながら、第1レンズ群の負の屈折力に対して第2レンズの正の屈折力が弱いため、広角端で歪曲収差を大きく発生させることで広い画角を確保しており、高解像化が困難である。
【0005】
特許文献3に記載のズームレンズは、負の屈折力を有する第1レンズ群、正の屈折力を有する第2レンズ群、負の屈折力を有する第3レンズ群、正の屈折力を有する第4レンズ群からなるズームレンズが開示されている。このズームレンズは、第1レンズ群に物体側から順に、像側に凹面を向けた負メニスカスレンズを2枚配置することで広角化を達成しつつ、ズーミングに際して少なくとも第1レンズ群から第3レンズ群を光軸に沿って移動させることで高ズーム比を達成しようとしている。しかしながら、ズーム倍率が~6倍程度であり、小型で高倍率化が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-135552号公報
【特許文献2】特許6711436号公報
【特許文献3】特許6543815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本件発明の課題は、高い光学性能を有しながら、広角で小型、高倍率なズームレンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
物体側から像側へ順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群とを少なくとも有し、広角端から望遠端への変倍に際し、前記第1レンズ群は固定され、少なくとも前記第2レンズ群及び前記第3レンズ群及び前記第4レンズ群は光軸に沿って移動し、隣り合う各レンズ群の光軸上の間隔が変化するズームレンズにおいて、以下の式を満足するズームレンズ。
0.1 ≦ β23w/tan(ωw)≦ 0.5・・・・・・・・・・・(1)
1.0 ≦ f2/√(fw×ft)≦ 3.25・・・・・・・・・・・(2)
0.15 ≦ (β23t/β23w)/(ft/fw)≦ 0.98・・(3)
但し、
fw:広角端における無限遠合焦時の当該ズームレンズの焦点距離
ft:望遠端における無限遠合焦時の当該ズームレンズの焦点距離
f2:前記第2レンズ群の焦点距離
ωw:広角端における最軸外光線の半画角
β23w:広角端における無限遠合焦時の前記第2レンズ群と前記第3レンズ群の合成横倍率
β23t:望遠端における無限遠合焦時の前記第2レンズ群と前記第3レンズ群の合成横倍率
【0009】
また、上記課題を解決するために本件発明に係る撮像装置は、上記ズームレンズと、当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換にする撮像素子とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本件発明によれば、高倍率を有しながら、広角で小型なズームレンズを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】実施例1のズームレンズの広角端における縦収差図である。
【
図3】実施例1のズームレンズの望遠端における縦収差図である。
【
図5】実施例2のズームレンズの広角端における収差図である。
【
図6】実施例2のズームレンズの望遠端における収差図である。
【
図8】実施例3のズームレンズの広角端における収差図である。
【
図9】実施例3のズームレンズの望遠端における収差図である。
【
図11】実施例4のズームレンズの広角端における収差図である。
【
図12】実施例4のズームレンズの望遠端における収差図である。
【
図14】実施例5のズームレンズの広角端における収差図である。
【
図15】実施例5のズームレンズの望遠端における収差図である。
【
図17】実施例6のズームレンズの広角端における収差図である。
【
図18】実施例6のズームレンズの望遠端における収差図である。
【
図20】実施例7のズームレンズの広角端における収差図である。
【
図21】実施例7のズームレンズの望遠端における収差図である。
【
図22】本発明の一実施形態に係る撮像装置の構成の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置の実施の形態を説明する。但し、以下に説明するズームレンズ及び撮像装置は、本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置の一態様であって、本件発明に係るズームレンズ及び撮像装置は以下の態様に限定されるものではない。
【0013】
1.ズームレンズ
1-1.光学構成
本件発明に係るズームレンズは物体側から像側へ順に、負の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、負の屈折力を有する第3レンズ群と、正の屈折力を有する第4レンズ群とを少なくとも有して構成される。この構成によって、広角化と小型化が容易となる。また、より高性能化する上では、第4レンズ群の像側に第5レンズ群を有することが好ましい。
【0014】
(1)第1レンズ群
第1レンズ群は、負の屈折力を有し、変倍の際に像面に対して固定されるレンズ群である限り、その具体的な構成は特に限定されるものではない。第1レンズ群は、1枚のメニスカスレンズから構成することによって、広角化と小型化が容易となる。
【0015】
ここで、「レンズ群」とは、1枚又は互いに隣接する複数枚のレンズから構成され、変倍もしくは合焦の際に光軸に沿って隣り合うレンズ群間の間隔が変化する。一つのレンズ群が複数枚のレンズから構成される場合、その一つのレンズ群に含まれる各レンズ間の光軸上の距離は変倍もしくは合焦の際には変化しないものとする。
【0016】
(2)第2レンズ群
第2レンズ群は、正の屈折力を有し、変倍の際に光軸に沿って移動するレンズ群である限り、その具体的な構成は特に限定されるものではない。第2レンズ群は、変倍の際に高速に光軸上を移動する上で、2枚以下の正レンズからなることが好ましい。また第2レンズ群は、両凸レンズを有することが好ましい。この構成によって、収差補正をしつつ、小型化が容易となる。
【0017】
(3)第3レンズ群
第3レンズ群は、負の屈折力を有し、変倍の際に光軸に沿って移動するレンズ群である限り、その具体的な構成は特に限定されるものではない。第3レンズ群は、2枚以下の負レンズを有する構成とすることが好ましい。また、第3レンズ群に含まれる正レンズは1枚のみとすることが好ましい。また、第3レンズ群は、物体側から像側にむかって、負レンズ、負レンズ、正レンズの構成からなることが好ましい。この構成によって、収差補正をしつつ、小型化が容易となる。
【0018】
(4)第4レンズ群
第4レンズ群は、正の屈折力を有し、変倍の際に光軸に沿って移動するレンズ群である限り、その具体的な構成は特に限定されるものではない。第4レンズ群は、最も物体側に正レンズを有することが好ましい。また、第4レンズ群は、物体側から像側にむかって、正レンズ、負レンズ、正レンズ、負レンズの構成からなることが好ましい。この構成によって、収差補正をしつつ、小型化が容易となる。
【0019】
(5)第5レンズ群
第5レンズ群は、正または負の屈折力を有し、変倍の際に像面に対して固定されるレンズ群である限り、その具体的な構成は特に限定されるものではない。第5レンズ群は、物体側から像側にむかって、負レンズ、正レンズのみからなることが好ましい。この構成によって、収差補正をしつつ、小型化が容易となる。
【0020】
(6)開口絞り
当該ズームレンズにおいて、開口絞りの配置は特に限定されるものではない。開口絞りを第3レンズ群と第4レンズ群の間に配置することにより、開口絞りの前後において収差を効率よく打ち消し合うことができ、光学性能の高いズームレンズを得る上で好ましい。
【0021】
1-2.動作
(1)変倍
当該ズームレンズは、広角端から望遠端への変倍に際し、第1レンズ群を光軸上に固定し、第2レンズ群と、第3レンズ群と、第4レンズ群が光軸上を移動する限り、その具体的な動作は特に限定されるものではない。
【0022】
(2)合焦
当該ズームレンズは、無限遠から近距離への合焦に際し、第4レンズ群が光軸上を移動する限り、その具体的な動作は特に限定されるものではない。また、無限遠から近距離への合焦に際し、第4レンズ群が光軸上を物体側へ移動することが好ましい。
【0023】
1-3. 式
当該ズームレンズは、上述した構成を採用すると共に、次に説明する式を少なくとも1つ以上満足することが望ましい。
【0024】
1-3-1.式(1)
0.1 ≦ β23w/tan(ωw)≦ 0.5・・・・・・・・・・・(1)
但し、
β23w:広角端における無限遠合焦時の第2レンズ群と第3レンズ群の合成横倍率
ωw:広角端における最軸外光線の半画角
【0025】
式(1)は、広角端における第2レンズ群と第3レンズ群の合成横倍率と、広角端における最軸外光線の半画角の比を規定するための式である。式(1)を満足させることで、高倍率で、広角端において画角を広くすることが容易となる。
【0026】
式(1)の下限値を下回ると、広角端において画角を広げることは容易となるが、広角端における像面湾曲や歪曲収差の補正が困難になる。一方、式(1)の上限値を超えると、広角端において変倍比を維持したまま画角を広げることが困難になる。
【0027】
上記効果を得る上で、式(1)の下限値は0.13であることが好ましく、0.15であることがより好ましい。また、式(1)の上限値は0.45であることが好ましく、0.40であることがより好ましい。なお、これらの好ましい下限値又は上限値を採用する場合、式(1)において等号付不等号(≦)を不等号(<)に置換してもよい。他の式についても原則として同様である。
【0028】
1-3-2.式(2)
1.0 ≦ f2/√(fw×ft)≦ 3.25・・・・・・・・・・・(2)
但し、
fw:広角端における無限遠合焦時のズームレンズの焦点距離
ft:望遠端における無限遠合焦時のズームレンズの焦点距離
f2:第2レンズ群の焦点距離
【0029】
式(2)は、第2レンズ群の焦点距離と、広角端における無限遠合焦時のズームレンズの焦点距離と望遠端における無限遠合焦時のズームレンズの焦点距離の積の平方根の比を規定するための式である。式(2)を満足することで、第1レンズ群で発生した像面湾曲や歪曲収差、色収差を適切に補正することができ、小型化が容易となる。
【0030】
式(2)の下限値を下回ると、第2レンズ群の焦点距離が短くなりすぎ、広角端での像面湾曲や歪曲収差、倍率色収差の補正ができず、収差補正のために必要となるレンズ枚数が増加するため、小型化が困難となる。一方、式(2)の上限値を超えると、第2レンズ群の焦点距離が長くなり、第1レンズ群で発生した像面湾曲や歪曲収差、色収差が補正不足になる。また、広角端から望遠端の変倍時の第2レンズ群の移動量が増加し、小型化が困難となる。
【0031】
上記効果を得る上で、式(2)の下限値は1.10であることが好ましく、1.20であることがより好ましい。また、式(2)の上限値は2.80であることが好ましく、2.60であることがより好ましい。
【0032】
1-3-3.式(3)
0.15 ≦ (β23t/β23w)/(ft/fw)≦ 0.98・・(3)
但し、
β23t:望遠端における無限遠合焦時の第2レンズ群と第3レンズ群の合成横倍率
【0033】
式(3)は、第2レンズ群と第3レンズ群のズーム倍率に寄与する割合を規定するための式である。式(3)を満足することで、第2レンズ群と第3レンズ群のズーム倍率に寄与する割合を適切にし、高倍率化と小型化が容易となる。
【0034】
式(3)の下限値を下回ると、第2レンズ群と第3レンズ群のズーム倍率に寄与する割合が小さくなるため、高倍率化が困難となる。一方、式(3)の上限値を超えると、第2レンズ群と第3レンズ群のズーム倍率に寄与する割合が大きくなるため、広角端から望遠端の変倍中の収差発生量を少なくするために必要となるレンズ枚数が増加し、小型化が困難となる。
【0035】
上記効果を得る上で、式(3)の下限値は0.30であることが好ましく、0.40であることがより好ましい。また、条式(3)の上限値は0.97であることが好ましく、0.95であることがより好ましい。
【0036】
1-3-4.式(4)
5.0 ≦ |f1/fw| ≦ 20.0・・・(4)
但し、
f1:第1レンズ群の焦点距離
【0037】
式(4)は、第1レンズ群の焦点距離と、広角端における無限遠合焦時のズームレンズの焦点距離との比の絶対値を規定するための式である。式(4)を満足させることで、広角端に置いて像面湾曲や歪曲収差を補正しつつ画角を広げることができ、小型化が容易となる。
【0038】
式(4)の下限値を下回ると、第1レンズ群の焦点距離が短くなり、第1レンズ群で発生する像面湾曲や歪曲収差が増大し、第1レンズより像側の群でそれらの収差を補正するために必要となるレンズ枚数が増加し、小型化が困難となる。一方、式(4)の上限値を超えると、第1レンズ群の焦点距離が長くなりすぎ、広角端に置いて像面湾曲が補正不足となり、良好な光学性能を得ることが困難となる。また、広角端において画角を広げることが困難となる。
【0039】
上記効果を得る上で、式(4)の下限値は5.5であることが好ましく、6.0であることがより好ましい。また、式(4)の上限値は18.0であることが好ましく、17.0であることがより好ましい。
【0040】
1-3-5.式(5)
0.5 ≦ |f1/f2| ≦ 4.0・・・(5)
【0041】
式(5)は、第2レンズ群の焦点距離と第1レンズ群の焦点距離の比の絶対値を規定するための式である。式(5)を満足することで、像面湾曲や歪曲収差を適切に補正しつつ、広角端で画角を広げることができ、高い光学性能を得ることが容易となる。
【0042】
式(5)の下限値を下回ると、第1レンズ群の焦点距離が第2レンズ群の焦点距離に対して短くなり、広角端において像面湾曲や歪曲収差が増大し、高い光学性能が困難となる。一方、式(5)の上限値を超えると、第1レンズ群の焦点距離が第2レンズ群の焦点距離に対して長くなり、負の屈折力が弱くなるため、広角端において画角を広げることが困難となる。
【0043】
上記効果を得る上で、式(5)の下限値は0.70であることが好ましく、1.00であることがより好ましい。また、式(5)の上限値は3.70であることが好ましく、35.0であることがより好ましい。
【0044】
1-3-6.式(6)
0.5 ≦ |f12t/ft| ≦ 3.0・・・(6)
但し、
f12t:望遠端における無限遠合焦時の第1レンズ群と第2レンズ群の合成焦点距離
【0045】
式(6)は、望遠端における無限遠合焦時のズームレンズの焦点距離と、望遠端における第1レンズ群と第2レンズ群の合成焦点距離の比を規定するための式である。式(6)を満足することで、望遠端において第1レンズ群と第2レンズ群で発生する球面収差、非点収差、軸上色収差を適切に補正しつつ、高い光学性能を得ることや小型化が容易となる。
【0046】
式(6)の下限値を下回ると、望遠端における第1レンズ群記第2ンズ群の合成焦点距離が短くなり、球面収差や非点収差、軸上色収差が増大し、高い光学性能を得ることが困難となる。一方、式(6)の上限値を超えると、望遠端における第1レンズ群と第2レンズ群の合成焦点距離が長くなり、球面収差や非点収差、軸上色収差が補正不足になるとともに、光学系の小型化が困難となる。
【0047】
上記効果を得る上で、式(6)の下限値は0.55であることが好ましく、0.60であることがより好ましい。また、式(6)の上限値は2.70であることが好ましく、2.50であることがより好ましい。
【0048】
1-3-7. 式(7)
0.3 ≦ |X3|/√(fw×ft) ≦ 2.0・・・(7)
但し、
X3:広角端から望遠端への変倍における第3レンズ群の光軸方向への移動量
【0049】
式(7)は、広角端から望遠端への変倍に際し、第3レンズ群の移動量と広角端における無限遠合焦時のズームレンズの焦点距離と望遠端における無限遠合焦時のズームレンズの焦点距離の積の平方根の比を規定するための式である。式(7)を満足することで、広角端から望遠端への変倍に際し、第3レンズ群の移動量を適切に設定し、球面収差を補正しつつ、高倍率化と小型化が容易となる。
【0050】
式(7)の下限値を下回ると、広角端から望遠端への変倍に際し、第3レンズ群の移動量が短くなり、光学系の高倍率化を達成することが困難となる。一方、式(7)の上限値を超えると、広角端から望遠端への変倍に際し、第3レンズ群の移動量が長くなり、小型化を実現することが困難となる。
【0051】
上記効果を得る上で、式(7)の下限値は0.35であることが好ましく、0.40であることがより好ましい。また、式(7)の上限値は1.90であることが好ましく、1.80であることがより好ましい。
【0052】
1-3-8. 式(8)
1.5 ≦ |f2/f3| ≦ 6.0・・・(8)
【0053】
式(8)は、第2レンズ群の焦点距離と、第3レンズ群の焦点距離の比を規定するための式である。式(8)を満足することで、広角端から望遠端への変倍に際し、第2レンズ群や第3レンズ群で発生する球面収差や像面湾曲を良好に補正しつつ、高い光学性能を得ることや小型化が容易となる。
【0054】
式(8)の下限値を下回ると、第2レンズ群の焦点距離が第3レンズ群の焦点距離に対して短くなり、広角端から望遠端において球面収差が補正過剰となるとともに像面湾曲を補正できず、高い光学性能を得ることが困難となる。一方、式(8)の上限値を超えると、広角端から望遠端において球面収差を補正ができず、小型化が困難となる。
【0055】
上記効果を得る上で、式(8)の下限値は1.70であることが好ましく、2.00であることがより好ましい。また、式(8)の上限値は5.50であることが好ましく、5.00であることがより好ましい。
【0056】
1-3-9. 式(9)
ν2p_max ≦ 70・・・(9)
但し、
ν2p_max:第2レンズ群内の正レンズのアッベ数の最大値
【0057】
式(9)は、第2レンズ群内の正レンズのアッベ数を規定するための式である。式(9)を満足することで、広角端から望遠端に至る軸上色収差や倍率色収差を補正することができ、高い光学性能を得ることが容易となる。
【0058】
式(9)の上限値を超えると、広角端から望遠端に至る軸上色収差や倍率色収差を補正できず、高い光学性能を得ることが困難となる。
【0059】
上記効果を得る上で、式(9)の下限値は40.0であることが好ましく、45.0であることがより好ましい。また、式(9)の上限値は68.0であることが好ましく、67.0であることがより好ましい。
【0060】
2.撮像装置
次に、本件発明に係る撮像装置について説明する。本件発明に係る撮像装置は、上記本件発明に係るズームレンズと、当該ズームレンズによって形成された光学像を電気的信号に変換する撮像素子とを備えたことを特徴とする。なお、撮像素子はズームレンズの像側に設けられることが好ましい。
【0061】
ここで、撮像素子等に特に限定はなく、CCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの固体撮像素子等も用いることができる。本件発明に係る撮像装置は、デジタルカメラやビデオカメラ等のこれらの固体撮像素子を用いた撮像装置に好適である。また、当該撮像装置は、一眼レフカメラ、ミラーレス一眼カメラ、デジタルスチルカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ドローン搭載用カメラ等の種々の撮像装置に適用することができる。また、これらの撮像装置はレンズ交換式の撮像装置であってもよいし、レンズが筐体に固定されたレンズ固定式の撮像装置であってもよい。特に本発明に係るズームレンズはフルサイズ等のサイズの大きな撮像素子を搭載した撮像装置のズームレンズに好適である。当該ズームレンズは全体的に小型で軽量、且つ、高い光学性能を有するため、このような撮像装置用のズームレンズとしたときにも高画質な撮像画像を得ることができる。
【0062】
図22は、本実施形態に係る撮像装置の構成の一例を模式的に示す図である。
図21に示されるように、カメラ1は、本体2及び本体2に着脱可能な鏡筒3を有している。カメラ1は、撮像装置の一態様である。
【0063】
本体2は、撮像素子としてのCCDセンサ21及びカバーガラス22を有している。CCDセンサ21は、本体2中における、本体2に装着された鏡筒3内のズームレンズ30の光軸が中心軸となる位置に配置されている。本体2は、カバーガラス22の代わりに、IRカットフィルター等を有していてもよい。
【0064】
次に、実施例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0065】
(1)光学構成
図1は、本件発明に係る実施例1のズームレンズの無限遠合焦時の広角端及び望遠端の断面図である。当該ズームレンズは、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズ群G1、正の屈折力を有する第2レンズ群G2、負の屈折力を有する第3レンズ群G3、正の屈折力を有する第4レンズ群G4、負の屈折力を有する第5レンズ群G5から構成されている。
【0066】
広角端から望遠端の変倍の際、光軸に沿って、第2レンズ群G2が像面側に凸軌跡で物体側へ移動し、第3レンズ群G3が像側から物体側へ移動し、第4レンズ群G4が物体側に凸軌跡で物体側へ移動する。
【0067】
無限遠物体から近接物体への合焦の際、第4レンズ群G4が光軸に沿って像側から物体側へ移動する。
【0068】
第1レンズ群G1は、物体側が凸面の負メニスカスレンズから構成されている。
【0069】
第2レンズ群G2は、物体側から順に、両凸レンズと、両凸レンズとから構成されている。
【0070】
第3レンズ群G3は、物体側から順に、両凹レンズと、両凹レンズと、両凸レンズとから構成されている。
【0071】
第4レンズ群G4は、物体側から順に、両凸レンズと、負メニスカスレンズと、両凸レンズと負メニスカスレンズが接合された接合レンズとから構成されている。
【0072】
第5レンズ群G5は、物体側から順に、負メニスカスレンズと、両凸レンズとから構成されている。
【0073】
開口絞りSは、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4の間にあり、広角端から望遠端の変倍の際、及び無限遠物体から近接物体への合焦の際、像面IMGに対して固定である。
【0074】
なお、
図1において、「IMG」は像面であり、具体的には、CCDセンサやCMOSセンサなどの固体撮像素子の撮像面、或いは、銀塩フィルムのフィルム面等を示す。また、像面IMGの物体側にはカバーガラスCGを備える。この点は、他の実施例で示す各レンズ断面図においても同様であるため、以後説明を省略する。
【0075】
(2)数値実施例
次に、当該ズームレンズの具体的数値を適用した数値実施例について説明する。以下に、「レンズデータ」、「諸元表」、「可変間隔」、「非球面係数」、「各レンズ群の焦点距離」を示す。また、各式の値(表1)は実施例7の後にまとめて示す。なお、以下の各数値実施例において、長さの単位が記載されていない数値の単位は全て「mm」であり、角度の単位は全て「°」である。「INF」は、無限大を意味する。
【0076】
(レンズデータ)において、「面NO.」は物体側から数えたレンズ面の順番、「r」はレンズ面の曲率半径、「D」は光軸上のレンズ肉厚又は空気間隔、「Nd」はd線(波長λ=587.56nm)における屈折率、「vd」はd線におけるアッベ数を示す。また、「面NO.」の欄において数字の次に付した「*」はそのレンズ面が非球面であることを示し、「S」はその面が開口絞りであることを示す。「D」の欄において、「D(7)」、「D(10)」等と示すのは、当該レンズ面の光軸上の間隔が変倍時または合焦時に変化する可変間隔であることを意味する。また、「BF」はバックフォーカスを示す。
【0077】
(諸元表)において、「f」は当該ズームレンズの焦点距離、「Fno.」はFナンバー、「ω」は半画角、「Y」は像高、「L」はレンズ全長である。それぞれ広角端、中間、望遠端の無限遠合焦時における値を示す。
【0078】
(可変間隔)において、広角端、中間、望遠端の無限遠合焦時及び有限距離合焦時の値をそれぞれ示す。
【0079】
(非球面係数)は、次のようにして非球面形状を定義したときの非球面係数を示す。但し、xは光軸方向の基準面からの変位量、rは近軸曲率半径、Hは光軸に垂直な方向の光軸からの高さ、Kは円錐係数、Anはn次の非球面係数とする。また「非球面係数」の表において「E±XX」は指数表記を表し「×10±XX」を意味する。
【0080】
【0081】
これらの各数値実施例における事項は他の実施例においても同様であるため、以後説明を省略する。
【0082】
また、
図2、
図3に当該ズームレンズの広角端及び望遠端の無限遠物体合焦時における縦収差図を示す。各図に示す縦収差図は、図面に向かって左側から順に、それぞれ球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)である。球面収差図は実線がd線(波長587.56nm)、短破線がg線(波長435.84nm)、長破線がC線(波長656.28nm)における球面収差をそれぞれ示す。非点収差図は縦軸が半画角(ω)、横軸がデフォーカスであり、実線がd線のサジタル像面を示し、破線がd線のメリディオナル像面をそれぞれ示す。歪曲収差図は、縦軸が半画角(ω)、横軸が歪曲収差である。これらの事項は、他の実施例において示す各収差図においても同じであるため、以後説明を省略する。
【0083】
(レンズデータ)
面NO. r D Nd vd
1 152.469 1.100 1.79999 29.84
2 25.610 D(2)
3 42.712 4.100 1.60300 65.44
4 -79.438 0.150
5 22.379 4.300 1.61799 63.4
6 -268.591 D(6)
7 -148.152 0.500 1.95375 32.32
8 10.486 2.170
9 -11.948 0.500 1.91082 35.25
10 14.890 0.380
11 17.550 2.401 1.98613 16.48
12 -32.183 D(12)
13S INF D(13)
14* 7.136 3.785 1.55332 71.68
15* -37.444 1.250
16 8.506 0.600 1.79360 37.09
17 5.461 0.762
18 6.519 3.880 1.59282 68.62
19 -5.691 0.500 2.00100 29.13
20 -14.215 D(20)
21 359.787 0.500 2.00100 29.13
22 5.905 1.607
23* 21.301 2.226 1.63973 23.53
24* -10.833 3.200
25 INF 0.800 1.51633 64.14
26 INF BF
【0084】
(諸元表)
広角端 中間 望遠端
f 4.465 13.703 44.388
Fno. 1.838 2.507 3.596
ω 41.188 12.783 3.975
Y 3.300 3.300 3.300
L 66.000 66.000 66.000
【0085】
(可変間隔)
広角端 中間 望遠端
撮影距離 INF INF INF
D(2) 6.445 5.956 3.296
D(6) 1.100 12.397 22.578
D(12) 19.328 8.520 1.000
D(13) 2.315 0.759 1.346
D(20) 1.100 2.656 2.069
BF 1.000 1.000 1.000
広角端 中間 望遠端
撮影距離 0.3m 1.0m 1.2m
D(13) 2.290 0.672 0.598
D(20) 1.125 2.743 2.816
【0086】
(非球面係数)
面NO. K A4 A6 A8 A10
14 0.0000E+00 -1.6033E-04 -2.5593E-06 8.1019E-09 -2.1009E-09
15 0.0000E+00 2.2852E-04 -5.3631E-07 -9.8586E-08 1.5727E-09
23 0.0000E+00 -6.7519E-05 5.5632E-06 1.3150E-06 -9.7898E-08
24 0.0000E+00 -6.3664E-06 6.4237E-06 -9.8230E-07 1.4817E-08
【0087】
(各レンズ群の焦点距離)
群 面NO. 焦点距離
G1 1-2 -38.625
G2 3-6 20.048
G3 7-12 -7.055
G4 14-20 8.827
G5 21-24 -23.029
広角端から望遠端の変倍の際、光軸に沿って、第2レンズ群G2が像面側に凸軌跡で物体側へ移動し、第3レンズ群G3が像側から物体側へ移動し、第4レンズ群G4が物体側に凸軌跡で物体側へ移動する。
開口絞りSは、第3レンズ群G3と第4レンズ群G4の間にあり、広角端から望遠端の変倍の際、及び無限遠物体から近接物体への合焦の際、像面IMGに対して固定である。