(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096990
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20230630BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20230630BHJP
C08K 5/548 20060101ALI20230630BHJP
C08K 5/5419 20060101ALI20230630BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/36
C08K5/548
C08K5/5419
B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213098
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 竜也
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA02
3D131AA06
3D131AA14
3D131AA15
3D131BA02
3D131BA05
3D131BA07
3D131BA08
3D131BA18
3D131BA20
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC01
3D131BC02
3D131BC31
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002BB151
4J002BB181
4J002DA040
4J002DE100
4J002DJ016
4J002EF050
4J002EX038
4J002EX087
4J002FD016
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD207
4J002FD208
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】低燃費性を維持しつつ、耐久性に優れたゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【解決手段】 ジエン系ゴムにシリカと、硫黄含有シランカップリング剤と、アルキルアルコキシシランを含有するゴム組成物であって、原子間力顕微鏡のフォースカーブ測定により、上記ゴム組成物を加硫した試料を200%伸長させたときの上記試料におけるゴム成分の変形量を求め、その加重平均値よりも変形量の少ないゴム成分の割合が、ゴム成分中65vol%以上である、ゴム組成物とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムにシリカと、硫黄含有シランカップリング剤と、アルキルアルコキシシランを含有するゴム組成物であって、
原子間力顕微鏡のフォースカーブ測定により、前記ゴム組成物を加硫した試料を200%伸長させたときの前記試料におけるゴム成分の変形量を求め、その加重平均値よりも変形量の少ないゴム成分の割合が、ゴム成分中65vol%以上である、ゴム組成物。
【請求項2】
前記シリカの含有量が、ジエン系ゴム100質量部に対して5~150質量部であり、
前記硫黄含有シランカップリング剤の含有量が、シリカの含有量に対して、2~15質量%であり、
前記アルキルアルコキシシランの含有量が、硫黄含有シランカップリング剤に対して、10~700モル%である、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記硫黄含有シランカップリング剤がスルフィド基を有する、請求項1又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記アルキルアルコキシシランが、式(1)で表される化合物である、請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【化1】
ただし、式(1)において、R
1は炭素数3~20のアルキル基を示す。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いて作製した、空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、タイヤなどのゴム製品では、耐久性のさらなる向上が求められている。このような課題に対して、例えば、特許文献1には、特定のシランカップリング剤を用いることで、耐久性が向上することが記載されている。
【0003】
特許文献2には、シリカおよび2種以上のシランカップリング剤を配合し、一方のシランカップリング剤の主鎖骨格がポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールであって末端にアルコキシシリル基をもつ化合物であることにより、低電気抵抗、低転がり抵抗性能(低燃費性)、ウェットグリップ性能、機械的強度、および加工性にバランスよく優れたタイヤトレッド用ゴム組成物が得られることが記載されている。
【0004】
しかしながら、耐久性についてさらなる改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許5212782号公報
【特許文献2】特許3908368号公報
【特許文献3】特開2010-260920号公報
【特許文献4】特許4930661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、耐久性を改善するために、ゴム組成物の柔軟性を向上させた場合、低燃費性が悪化するおそれがあった。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、低燃費性を維持しつつ、耐久性に優れたゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【0008】
なお、特許文献3には、特定のシランカップリング剤を用いることで、優れた低発熱性と耐摩耗性とウェットグリップ性能が得られることが記載され、特許文献4には、硫黄含有シランカップリング剤とアルキルトリエトキシシランとを併用することで、シリカの凝集や粘度上昇を抑制し、ウェット性能および転がり抵抗に優れたタイヤを作製できることが記載されているが、耐久性については評価されていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るゴム組成物は、ジエン系ゴムにシリカと、硫黄含有シランカップリング剤と、アルキルアルコキシシランを含有するゴム組成物であって、原子間力顕微鏡のフォースカーブ測定により、上記ゴム組成物を加硫した試料を200%伸長させたときの上記試料におけるゴム成分の変形量を求め、その加重平均値よりも変形量の少ないゴム成分の割合が、ゴム成分中65vol%以上であるものとする。
【0010】
上記シリカの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して5~150質量部であり、上記硫黄含有シランカップリング剤の含有量は、シリカの含有量に対して、2~15質量%であり、上記アルキルアルコキシシランの含有量は、硫黄含有シランカップリング剤に対して、10~700モル%であるものとすることができる。
【0011】
上記硫黄含有シランカップリング剤はスルフィド基を有するものとすることができる。
【0012】
上記アルキルアルコキシシランは、式(1)で表される化合物であるものとすることができる。
【化1】
ただし、式(1)において、R
1は炭素数3~20のアルキル基を示す。
【0013】
本発明に係る空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて作製したものとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のゴム組成物によれば、低燃費性を維持しつつ、優れた耐久性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1について原子間力顕微鏡の測定を行い、得られたゴム成分の変形量のヒストグラム。
【
図2】比較例1について原子間力顕微鏡の測定を行い、得られたゴム成分の変形量のヒストグラム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0017】
本実施形態に係るゴム組成物は、ジエン系ゴムに、シリカと、硫黄含有シランカップリング剤と、アルキルアルコキシシランを含有するものとする。
【0018】
本実施形態に係るジエン系ゴムは、特に限定されないが、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)などが挙げられる。なお、ジエン系ゴムには、必要に応じて末端や主鎖を変性したもの(例えば、末端変性SBR)や、所望の特性を付与するべく改質したもの(例えば、改質NR)も、その概念に包含される。
【0019】
一実施形態において、ジエン系ゴムは、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、及びブタジエンゴムからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。より好ましくは、ジエン系ゴムは、スチレンブタジエンゴムを含むことである。例えば、ジエン系ゴム100質量部は、スチレンブタジエンゴムを50質量部以上含むことが好ましく、より好ましくはスチレンブタジエンゴムを70質量部以上含むことであり、スチレンブタジエンゴム単独でもよい。
【0020】
スチレンブタジエンゴムとしては、例えば、溶液重合スチレンブタジエンゴム(SSBR)でもよく、乳化重合スチレンブタジエンゴム(ESBR)でもよい。スチレンブタジエンゴムとしては、必要に応じて末端や主鎖が変性された変性スチレンブタジエンゴム(例えば、アミン変性SBRやスズ変性SBR)が用いられてもよい。
【0021】
本実施形態に係るシリカとしては、特に限定されないが、湿式沈降法シリカや湿式ゲル法シリカなどの湿式シリカが好ましく用いられる。シリカの含有量は、ジエン系ゴム100質量部に対して、5~150質量部であることが好ましく、30~100質量部であることがより好ましい。
【0022】
本実施形態に係る硫黄含有シランカップリング剤とは、分子中に硫黄原子を含むシランカップリング剤であり、ゴム組成物においてシリカとともに配合される各種の硫黄含有シランカップリング剤を用いることができる。
【0023】
硫黄含有シランカップリング剤の具体例としては、
ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエキトシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィドなどのスルフィドシラン(ビスシラン系スルフィドシランカップリング剤);
3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、メルカプトエチルトリエトキシシラン、式:HS-(CH2)3-Si(OC2H5)m(O(C2H4O)k-C13H27)nで表されるエボニック・デグサ社製「VP Si363」(式中、m=平均1、n=平均2、k=平均5)などのメルカプトシラン;
3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン(式:CH3(CH2)6C(=O)S-(CH2)3-Si(OC2H5)3)、3-プロピオニルチオプロピルトリメトキシシランなどの保護化メルカプトシラン(即ち、メルカプト基がアシル基で保護されたチオールエステル構造を持つシラン化合物)などが挙げられる。これらの硫黄含有シランカップリング剤は、いずれか1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0024】
これらの中でも、硫黄含有シランカップリング剤としては、スルフィド基を持つスルフィドシランが好ましく、より好ましくはジスルフィド基を持つものである。
【0025】
硫黄含有シランカップリング剤の含有量は、シリカの含有量に対して、2~15質量%であることが好ましく、2~10質量%であることがより好ましく、2~8質量%であることがさらに好ましい。すなわち、硫黄含有シランカップリング剤の合計量はシリカ100質量部に対して2~15質量部であることが好ましく、2~10質量部であることがより好ましく、2~8質量部であることがさらに好ましい。
【0026】
本実施形態に係るアルキルアルコキシシランとしては、アルキルジアルコキシシランでもよいが、アルキルトリアルコキシシランが好ましい。アルキルアルコキシシランとしては、炭素数が3~20であるアルキル基を持つものが好ましく、具体的には、下記式(1)で表されるアルキルトリエトキシシランが好ましく用いられる。式(1)中、R
1は炭素数3~20のアルキル基を示す。
【化2】
【0027】
アルキルアルコキシシランの含有量は、硫黄含有シランカップリング剤の含有量に対して、10~700モル%であることが好ましく、15~300モル%であることがより好ましい。
【0028】
本実施形態に係るゴム組成物には、上記した各成分に加え、通常のゴム工業で使用されている補強性充填剤、プロセスオイル、軟化剤、可塑剤、ワックス、老化防止剤、硫黄、加硫促進剤などの配合薬品類を通常の範囲内で適宜配合することができる。
【0029】
補強性充填剤としては、シリカに加えて、カーボンブラックを配合するものであってもよい。すなわち、補強性充填剤は、シリカ単独でも、カーボンブラックとシリカの併用でもよい。補強性充填剤の含有量は、特に限定されず、例えばジエン系ゴム100質量部に対して5~150質量部であることが好ましく、より好ましくは30~100質量部であり、さらに好ましくは30~80質量部である。好ましくは、補強性充填剤はシリカを主成分とすることであり、カーボンブラックの含有量はジエン系ゴム100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、より好ましくは5質量部以下である。
【0030】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練し作製することができる。好ましい実施形態としては、第一混合段階で、ジエン系ゴムに対し、アルキルアルコキシシランと加硫剤と加硫促進剤を除く他の添加剤を添加して80~120℃で3~7分間混合し、次いで、得られた混合物に、第二混合段階として、アルキルアルコキシシランを添加して80~120℃で2~5分間混合し、得られた混合物に、最終混合段階として加硫剤と加硫促進剤を添加混合してゴム組成物を調製することができる。アルキルアルコキシシランを第二混合段階で添加混合する場合、変形量の多い(柔軟な)ゴム成分の割合が大きくなりやすい。
【0031】
本実施形態に係るゴム組成物は、原子間力顕微鏡のフォースカーブ測定により、上記ゴム組成物を加硫した試料を200%伸長させたときの上記試料におけるゴム成分の変形量を求め、その加重平均値よりも変形量の少ないゴム成分の割合が、ゴム成分中65vol%以上であるものとする。換言すると、変形量の多い(柔軟な)ゴム成分の割合が増えたことにより、加重平均値が変形量の多い側にシフトする。従って、ゴム組成物全体として、柔軟性が増し、優れた耐久性が得られやすい。加重平均値よりも変形量の少ないゴム成分の割合の上限値は、特に限定されないが、90vol%以下であることが好ましく、85vol%以下であることがより好ましく、80vol%以下であることがさらに好ましい。
【0032】
原子間力顕微鏡のフォースカーブ測定をする際のゴム組成物の条件、及び測定条件は後述する実施例に記載する。
【0033】
このようにして得られたゴム組成物は、乗用車用タイヤ、トラックやバスの大型タイヤなど、各種用途・各種サイズの空気入りタイヤのトレッド、サイドウォールなどタイヤの各部位に適用することができる。すなわち、該ゴム組成物は、常法に従い、例えば、押出加工によって所定の形状に成形され、他の部品と組み合わせてグリーンタイヤを作製した後、例えば140℃~180℃でグリーンタイヤを加硫成形することにより、空気入りタイヤを製造することができる。これらの中でも、タイヤのトレッド用配合として用いることが特に好ましい。
【実施例0034】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
表1~3に記載の配合(質量部)に従い、ダイハン製ラボミキサー(300cc)を用いて、ゴム成分を100℃で30秒間、素練りした後、シリカ、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸を投入し、100℃で240秒間混練した後に排出した。次に、排出されたゴム組成物とアルキルアルコキシシランをラボミキサーに投入し100℃で180秒間混練した後に排出した。さらに、排出されたゴム組成物と硫黄と加硫促進剤をラボミキサーに投入し100℃で60秒間混練し排出した。2本ロールを用いて、得られた未加硫ゴム組成物の厚さが2mmになるようにシーティングを行った後に、160℃で20分間加硫プレスを行い、加硫サンプルを得た。
【0036】
表1~3中の各成分の詳細は以下の通りである。
・S-SBR1:旭化成(株)製「タフデン2000」、未変性S-SBR
・S-SBR2:JSR(株)製「HPR350」、末端アミン変性S-SBR
・シリカ:東ソー(株)製「ニップシールAQ」
・硫黄含有シランカップリング剤1:エボニックジャパン(株)製「Si75」
・硫黄含有シランカップリング剤2:エボニックジャパン(株)製「VP Si363」
・アルキルアルコキシシラン1:東京化成(株)製「プロピルトリエトキシシラン」
・アルキルアルコキシシラン2:東京化成(株)製「オクタデシルトリエトキシシラン」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「酸化亜鉛3号」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS-20」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」
・加硫促進剤1:住友化学(株)製「ソクシノールCZ」
・加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製「ノクセラーD」
【0037】
得られた加硫サンプルについて、原子間力顕微鏡のフォースカーブ測定を行った。具体的には、加硫ゴムサンプルを200%に伸長させてカンチレバーAC-240TS-R3(ばね定数:1.7N/m)を用いて、次の測定条件で、フォースカーブを3μm×3μm四方で128点×128点測定することで、各点で力が加わった際の変形のしやすさを計測した。
<測定条件>
測定周波数:10Hz
押込み力:2nN
【0038】
なお、フィラーはほとんど変形しないため、変形量の少ない部分から順にフィラーの体積分率分引くことで、ゴム成分の変形量を算出することができる。
図1,2に示すように、ゴム成分の変形量のヒストグラムを作成した。
【0039】
また、次に示す式により、変形量の加重平均値を求め、加重平均値よりも変形量の少ない成分の割合を算出し、ゴム成分の変形余裕度とした。
加重平均値:(各変形量×頻度)/全頻度
【0040】
図1,2において、加重平均値より変形量の少ないものを黒色の棒線で示し、加重平均値よりも変形量の多いものを灰色の棒線で示した。変形量は正規分布とならないため、柔軟で変形に対して良く追従する実施例1のようなゴム組成物は、加重平均値が図の右側(変形量の多い側)にシフトし、加重平均値よりも変形量の少ない成分の割合が増加する。
【0041】
また、得られたゴム組成物について、耐久性(抗張積とモジュラス変化度)と発熱性能を評価し、結果を表1~3に示した。各評価の測定方法は次に示す通りである。
【0042】
・抗張積:得られたゴム組成物を用いて厚さ1mmのゴムシートを作成し、160℃で20分間加硫した。島津製オートグラフを用いてJIS K 6251に従い引張試験(ダンベル状3号形)を実施して引張強さを測定した。切断時引張強さTb(MPa)と切断時伸びEb(%)を算出し、抗張積(Tb×Eb÷100)を求め、表1においては比較例1-1の値を、表2においては比較例2-1の値を、表3においては比較例3-1の値を100とした指数で表した。値が大きいほどモジュラスが高いことを示し、耐久性に優れていることを示す。
【0043】
・モジュラス変化度:得られたゴム組成物を用いて厚さ1mmのゴムシートを作成し、160℃で20分間加硫した。得られた加硫ゴムシートを、旧JISダンベル状4号形で打抜いてサンプルとした。得られたサンプルと、50%伸長で100万サイクル疲労させた後のサンプルについて引張強さ試験を行い、100%伸長時のモジュラスを計測した。疲労前のモジュラスを100とし、疲労後のモジュラスを算出し、疲労前のモジュラスから疲労後のモジュラスを引いた値をモジュラス変化度とした。
【0044】
表1においては比較例1-1、表2においては比較例2-1、表3においては比較例3-1を基準とし、抗張積がより大きく、かつ、モジュラス変化度の絶対値が小さくなっているものを耐久性が良いものとして「〇」、これらの条件を満たしていないものを耐久性が劣るとして「×」とした。
【0045】
・発熱性能:得られたゴム組成物を160℃で20分間加硫したサンプルについて、島製作所製の粘弾性試験機を使用し、周波数10Hz、静歪10%、動歪1%、温度60℃で損失係数tanδを測定した。表1においては比較例1-1の値を、表2においては比較例2-1の値を、表3においては比較例3-1の値を100とした指数で表した。値が小さいものほど、低燃費性に優れていることを示す。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
結果は、表1~3に示す通りであり、各配合において、実施例は基準となる比較例と比較し、耐久性に優れていた。
【0050】
また、表1,2の配合では、基準となる比較例と比較し発熱性能を維持することができ、表3の配合では、基準となる比較例よりも発熱性能に優れていた。