(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000097
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】電動機およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 3/50 20060101AFI20221222BHJP
H02K 15/04 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
H02K3/50 A
H02K15/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100716
(22)【出願日】2021-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 哲也
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 有範
【テーマコード(参考)】
5H604
5H615
【Fターム(参考)】
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC13
5H604DB01
5H604PB03
5H604QA04
5H604QB03
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP14
5H615PP15
5H615SS09
(57)【要約】
【課題】導電線の短絡や断線等の不具合を生じることなく組み立て性を向上させる。
【解決手段】切欠底部152a,152bが、インシュレータ43の周方向において端子収容箱100a,100bと並んで設けられ、かつ端子収容箱100a,100bの内部における一対のコイル端44aの引き回し方向を、平型オス端子T1,T2の挿入方向と交差する方向に向ける。これにより、平型オス端子T1,T2の端子収容箱100a,100bへの挿入時において、一対のコイル端44aに無理な力が掛かることが抑えられ、ひいては一対のコイル端44aが断線する等の不具合の発生を防止することができる。また、一対のコイル端44aを、切欠底部152a,152bを介してインシュレータ43に整然と引き回すことが可能となり、ひいては他の相のコイル44と短絡すること等を防止することができる。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導電線が巻装されたステータと、
前記ステータに対して回転するロータと、
前記ステータを保持するホルダ部材と、
を備えた電動機であって、
前記ホルダ部材の径方向外側に設けられ、前記導電線が挿通される端子収容箱と、
前記導電線と交差する方向から前記端子収容箱に挿入され、複数の前記導電線を互いに電気的に接続する接続端子と、
前記ホルダ部材の周方向において前記端子収容箱と並んで設けられ、前記端子収容箱の内部における前記導電線の引き回し方向を、前記接続端子の挿入方向と交差する方向に向ける第1導電線規制部と、
を有することを特徴とする、
電動機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動機において、
前記導電線の基端側部が、前記ホルダ部材の軸方向一側に配置され、
前記導電線の先端側部,前記端子収容箱,前記第1導電線規制部が、前記ホルダ部材の軸方向他側に配置されていることを特徴とする、
電動機。
【請求項3】
請求項2に記載の電動機において、
前記ホルダ部材の軸方向一側において、前記ホルダ部材の周方向における前記第1導電線規制部の前記端子収容箱側とは反対側に設けられ、前記導電線を前記ホルダ部材の周方向に沿わせる第2導電線規制部を有することを特徴とする、
電動機。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電動機において、
前記端子収容箱には、前記導電線の挿通方向入口側および挿通方向出口側に、前記導電線が載置される載置部がそれぞれ設けられ、
前記第1導電線規制部に引っ掛けられた前記導電線が、それぞれの前記載置部に載置されていることを特徴とする、
電動機。
【請求項5】
複数の導電線が巻装されたステータと、
前記ステータに対して回転するロータと、
前記ステータを保持するホルダ部材と、
を備えた電動機の製造方法であって、
前記ホルダ部材の軸方向一側において前記ホルダ部材の周方向に前記導電線を沿わせる第1工程と、
前記ホルダ部材の軸方向他側に前記導電線を引き回し、前記導電線を前記ホルダ部材の軸方向他側に配置された第1導電線規制部に引っ掛ける第2工程と、
前記第1導電線規制部に引っ掛けられた前記導電線を、前記ホルダ部材の周方向において前記第1導電線規制部と並んで設けられた端子収容箱に挿通し、前記端子収容箱の内部における前記導電線の引き回し方向を、前記端子収容箱に挿入される接続端子の挿入方向と交差する方向に向ける第3工程と、
前記接続端子を前記導電線と交差する方向から前記端子収容箱に挿入し、複数の前記導電線を互いに電気的に接続する第4工程と、
を有することを特徴とする、
電動機の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電動機の製造方法において、
前記ホルダ部材の軸方向一側において、前記ホルダ部材の周方向における前記第1導電線規制部の前記端子収容箱側とは反対側に、前記導電線を前記ホルダ部材の周方向に沿わせる第2導電線規制部が設けられ、
前記第1工程と前記第2工程との間に、前記導電線を前記第2導電線規制部に引っ掛ける引っ掛け工程が設けられていることを特徴とする、
電動機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の導電線が巻装されたステータと、ステータに対して回転するロータと、ステータを保持するホルダ部材と、を備えた電動機およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ステータコア(ステータ)に巻装された複数のコイル(導電線)の端部が、それぞれ個別に複数のターミナル(接続端子)に対して半田付けにより電気的に接続された電動機(ブラシレスモータ)が記載されている。そして、コイルが電気的に接続されたターミナルは、それぞれ個別に制御基板に対して半田付けにより電気的に接続されている。
【0003】
また、特許文献2には、スリットを有する端子部材(接続端子)を、巻線(導電線)の端部がセットされたケースに対して押圧して装着することで、巻線の端部がスリットに入り込み、これにより巻線と端子部材とが電気的に接続可能される導線接続用端子部材が記載されている。特許文献2に記載された導線接続用端子部材を用いれば、半田付けによる電気的な接続作業が不要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-073860号公報
【特許文献2】特開2000-266083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブラシレスモータの組み立て性を向上させるためには、U相,V相,W相の導電線にそれぞれ駆動電流を供給する3つの接続端子を、ブラシレスモータを形成するケースの径方向一側に集約させるのが望ましい。また、半田付けを用いることなく接続端子と導電線とを電気的に接続するのが望ましい。このような要望に応えるためには、ステータから引き出された導電線を、ケースの周方向に引き回して所定箇所(接続端子の集約箇所)に配置し、当該部分において接続端子を押圧して接続端子とこれに対応した導電線とを電気的に接続する必要がある。
【0006】
しかしながら、ステータから引き出された導電線を、単に所定箇所に引き回して配置し、当該部分において接続端子を押圧して接続端子とこれに対応した導電線とを電気的に接続したのでは、例えば、V相の導電線とU相に対応した接続端子とが短絡したり、接続端子の押圧時に導電線に無理な力が掛かり、導電線が断線したりする等の不具合が生じ得る。
【0007】
本発明の目的は、導電線の短絡や断線等の不具合を生じることなく組み立て性を向上させることができる電動機およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電動機では、複数の導電線が巻装されたステータと、前記ステータに対して回転するロータと、前記ステータを保持するホルダ部材と、を備えた電動機であって、前記ホルダ部材の径方向外側に設けられ、前記導電線が挿通される端子収容箱と、前記導電線と交差する方向から前記端子収容箱に挿入され、複数の前記導電線を互いに電気的に接続する接続端子と、前記ホルダ部材の周方向において前記端子収容箱と並んで設けられ、前記端子収容箱の内部における前記導電線の引き回し方向を、前記接続端子の挿入方向と交差する方向に向ける第1導電線規制部と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の電動機の製造方法では、複数の導電線が巻装されたステータと、前記ステータに対して回転するロータと、前記ステータを保持するホルダ部材と、を備えた電動機の製造方法であって、前記ホルダ部材の軸方向一側において前記ホルダ部材の周方向に前記導電線を沿わせる第1工程と、前記ホルダ部材の軸方向他側に前記導電線を引き回し、前記導電線を前記ホルダ部材の軸方向他側に配置された第1導電線規制部に引っ掛ける第2工程と、前記第1導電線規制部に引っ掛けられた前記導電線を、前記ホルダ部材の周方向において前記第1導電線規制部と並んで設けられた端子収容箱に挿通し、前記端子収容箱の内部における前記導電線の引き回し方向を、前記端子収容箱に挿入される接続端子の挿入方向と交差する方向に向ける第3工程と、前記接続端子を前記導電線と交差する方向から前記端子収容箱に挿入し、複数の前記導電線を互いに電気的に接続する第4工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1導電線規制部が、ホルダ部材の周方向において端子収容箱と並んで設けられ、かつ端子収容箱の内部における導電線の引き回し方向を、接続端子の挿入方向と交差する方向に向ける。これにより、接続端子の端子収容箱への挿入時において、導電線に無理な力が掛かることが抑えられ、ひいては導電線が断線する等の不具合の発生を防止することができる。また、導電線を、第1導電線規制部を介してホルダ部材に整然と引き回すことが可能となり、ひいては他の相の導電線と短絡すること等を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図5】カバー内の構造を説明する分解斜視図である。
【
図6】ステータコアを平型オス端子側から見た斜視図である。
【
図7】端子収容箱のコイル端の延在方向に沿う断面図である。
【
図8】(a)は
図7のB-B線に沿う断面図、(b)は
図7のC-C線に沿う断面図である。
【
図9】(a),(b)は、平型オス端子の詳細構造を説明する斜視図である。
【
図10】端子収容箱の詳細構造を説明する斜視図である。
【
図11】W相用およびU相用の端子収容箱の部分を拡大した斜視図である。
【
図12】V相用の端子収容箱の部分を拡大した斜視図である。
【
図13】U相用の端子収容箱における第1工程および第2工程の前段(第5工程有り)を説明する説明図である。
【
図14】U相用の端子収容箱における第2工程の後段を説明する説明図である。
【
図15】U相用の端子収容箱における第3工程および第4工程を説明する説明図である。
【
図16】V相用の端子収容箱における第1工程および第2工程の前段(第5工程無し)を説明する説明図である。
【
図17】V相用の端子収容箱における第2工程の後段を説明する説明図である。
【
図18】V相用の端子収容箱における第3工程および第4工程を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
図1は電動機の出力回転体側を示す斜視図を、
図2は電動機の出力回転体側を示す平面図を、
図3は
図2のA-A線に沿う断面図を、
図4は電動機のカバー側を示す分解斜視図を、
図5はカバー内の構造を説明する分解斜視図を、
図6はステータコアを平型オス端子側から見た斜視図を、
図7は端子収容箱のコイル端の延在方向に沿う断面図を、
図8(a)は
図7のB-B線に沿う断面図、(b)は
図7のC-C線に沿う断面図を、
図9(a),(b)は平型オス端子の詳細構造を説明する斜視図を、
図10は端子収容箱の詳細構造を説明する斜視図を、
図11はW相用およびU相用の端子収容箱の部分を拡大した斜視図を、
図12はV相用の端子収容箱の部分を拡大した斜視図をそれぞれ示している。
【0014】
また、
図13はU相用の端子収容箱における第1工程および第2工程の前段(第5工程有り)を説明する説明図を、
図14はU相用の端子収容箱における第2工程の後段を説明する説明図を、
図15はU相用の端子収容箱における第3工程および第4工程を説明する説明図を、
図16はV相用の端子収容箱における第1工程および第2工程の前段(第5工程無し)を説明する説明図を、
図17はV相用の端子収容箱における第2工程の後段を説明する説明図を、
図18はV相用の端子収容箱における第3工程および第4工程を説明する説明図をそれぞれ示している。
【0015】
図1に示される電動機10は、収穫された農作物等を運搬する電動運搬車の車輪(図示せず)を駆動するものであり、比較的高出力のモータ装置となっている。電動機10は、操作スイッチ等(図示せず)の操作により、バッテリ等から駆動電流が供給され、これにより所定の回転速度で正方向または逆方向に回転駆動される。
【0016】
図1ないし
図3に示されるように、電動機10は、略円盤状の扁平形状に形成され、これにより小型軽量化が図られている。電動機10は、その外郭を形成するケース20およびカバー30を備え、ケース20およびカバー30は、互いに突き合わされた状態で合計5つの固定ねじSC1によって固定されている。
【0017】
図3に示されるように、ケース20およびカバー30の内部には、モータ収容室MSが形成され、モータ収容室MSの内部には、ブラシレスモータである扁平モータ40が収容されている。また、モータ収容室MSの内部には、扁平モータ40(ロータ42)の回転状態を検出する3つのホールセンサ(磁気センサ)HS(
図5参照)が設けられたセンサ基板50が収容されている。
【0018】
図3に示されるように、ケース20は、アルミ材料等を鋳造成形することで段付きの略椀状に形成され、大径筒部21と小径筒部22とを備えている。大径筒部21は、ケース20の軸方向においてカバー30側(図中下側)に配置され、小径筒部22は、ケース20の軸方向においてカバー30側とは反対側(図中上側)に配置されている。
【0019】
ケース20の軸方向における大径筒部21と小径筒部22との間には、略円盤状に形成された仕切壁23が一体に設けられている。仕切壁23は、大径筒部21と共に、モータ収容室MSを形成している。また、仕切壁23は、小径筒部22と共に、減速機収容室RSを形成している。すなわち、仕切壁23は、モータ収容室MSと減速機収容室RSとを仕切っている。
【0020】
仕切壁23の中心部分には、ロータ軸45が貫通する貫通孔23aが設けられている。また、貫通孔23aの径方向内側には、ロータ軸45の軸本体45aを回転自在に支持する第1ボールベアリングB1が装着されている。
【0021】
モータ収容室MSの内部に収容された扁平モータ40は、その直径寸法よりも厚み寸法の方が小さくされ、これにより扁平形となっている。扁平モータ40は、インナーロータ型のブラシレスモータであり、複数の鋼板を積層してなる環状のステータコア(ステータ)41と、ステータコア41の径方向内側に所定のエアギャップを介して回転自在に設けられたロータ42と、を備えている。ステータコア41は、合計3つの固定ねじSC2(
図4参照)によって仕切壁23に固定され、これによりロータ42は、ステータコア41に対して回転される。
【0022】
ステータコア41には、プラスチック等の絶縁材料からなるインシュレータ43が装着されている。インシュレータ43は、本発明におけるホルダ部材に相当し、ステータコア41を保持している。インシュレータ43は、ステータコア41の形状に合わせて略環状に形成され、複数のティースTH(
図6参照)を含むステータコア41の略全体を覆っている。そして、インシュレータ43のティースTHに対応する部分には、複数のコイル(導電線)44がそれぞれ集中巻きで巻装されている。つまり、コイル44は、インシュレータ43を介して、ステータコア41のそれぞれのティースTHに巻装されている。
【0023】
ロータ42は、鋼板をプレス加工等することで略椀状に形成された本体部42aを備えている。本体部42aの径方向外側には、筒状に形成された永久磁石42bが固定されている。永久磁石42bは、ロータ42の周方向にN極およびS極が交互に出現するように着磁されている。また、本体部42aの径方向内側の回転中心には、ロータ軸45の軸本体45aが固定され、ロータ軸45はロータ42の回転に伴い回転される。
【0024】
ロータ軸45は、軸本体45a,第1軸部45b,第2軸部45c,小径部45dを備え、第1軸部45bの軸心は、軸本体45aの軸心から所定量オフセット(偏心)した位置に設けられている。これに対し、第2軸部45cおよび小径部45dの軸心は、軸本体45aの軸心と一致している。軸本体45aは、第1ボールベアリングB1を介してケース20に回転自在に支持され、ロータ42は、ロータ軸45を介してケース20に回転自在に支持されている。
【0025】
減速機収容室RSの内部には、減速機構であるハイポサイクロイド減速機60が収容されている。ハイポサイクロイド減速機60は、扁平モータ40(ロータ軸45)の回転を減速して外部に出力するものであり、アウターギヤ61およびインナーギヤ62を備えている。
【0026】
アウターギヤ61は環状に形成され、かつ小径筒部22の軸方向において扁平モータ40寄りに配置されている。そして、アウターギヤ61の径方向外側が小径筒部22の径方向内側に固定され、アウターギヤ61の径方向内側には、平歯からなる歯部61aが形成されている。
【0027】
インナーギヤ62は、アウターギヤ61の径方向内側に設けられ、その外径寸法はアウターギヤ61の内径寸法よりも小さくなっている。インナーギヤ62の径方向外側には、平歯からなる第1歯部62aが形成され、インナーギヤ62の第1歯部62aは、アウターギヤ61の歯部61aに噛み合わされている。つまり、インナーギヤ62はアウターギヤ61の内側を滑ることなく転動される。
【0028】
インナーギヤ62の回転中心は、一対の第2ボールベアリングB2を介して、ロータ軸45の第1軸部45bに回転自在に支持されている。これにより、第1軸部45bがアウターギヤ61の径方向内側で回転すると、一対の第2ボールベアリングB2に回転自在に支持されたインナーギヤ62は、アウターギヤ61の径方向内側においてロータ軸45よりも低速で回転される。
【0029】
また、インナーギヤ62の第1歯部62aの径方向内側には、平歯からなる第2歯部62bが形成されている。そして、第2歯部62bには、出力回転体63の平歯からなる歯部63aが噛み合わされている。具体的には、出力回転体63の歯部63aは、インナーギヤ62の第2歯部62bの径方向内側に配置され、その外径寸法はインナーギヤ62の第2歯部62bの内径寸法よりも小さくなっている。これにより、出力回転体63は、インナーギヤ62における第2歯部62bの径方向内側を滑ることなく転動され、インナーギヤ62よりも低速で回転される。
【0030】
ここで、出力回転体63は、その径方向内側が第2軸部45cに設けられた第3ボールベアリングB3に回転自在に支持され、径方向外側が蓋部材64に設けられた第4ボールベアリングB4に回転自在に支持されている。これにより、特に大きな負荷が掛かる出力回転体63を、長期に亘ってスムーズに回転可能としている。そして、出力回転体63には、電動運搬車の車輪(図示せず)が固定される。よって、ハイポサイクロイド減速機60により減速された扁平モータ40の回転が、高トルク化された状態で電動運搬車の車輪に伝達される。
【0031】
なお、蓋部材64は、ケース20の減速機収容室RSを閉塞するものであり、
図1および
図2に示されるように、合計4つの固定ねじSC3により、ケース20の小径筒部22に固定されている。
【0032】
また、
図3に示されるように、ハイポサイクロイド減速機60は扁平形状であり、かつ比較的大きな減速比(1/90)を得ることが可能となっている。よって、扁平形状の電動機10に採用することで、当該電動機10のさらなる扁平化(薄型化)にも容易に対応可能となっている。ここで言う「減速比(1/90)」とは、高速で回転するロータ軸45が90回転すると、漸く出力回転体63が高トルク化された状態で1回転することを意味する。
【0033】
図3ないし
図5に示されるように、カバー30は、プラスチック等の樹脂材料を射出成形することで略椀状に形成されている。カバー30は、円盤状に形成された底壁部31と、当該底壁部31の外周部分に一体に設けられた筒状の側壁部32と、を備えている。そして、側壁部32には、3本の給電線70u,70v,70wおよび1本のセンサケーブル80(
図5参照)が、シール部材として機能するグロメット33(
図3参照)を介してそれぞれ挿通されている。これにより、カバー30の内部に雨水や埃等が進入することが防止される。
【0034】
また、側壁部32の外側でかつグロメット33の部分には、当該グロメット33の脱落を防止する固定プレート34(
図1および
図3参照)が設けられている。固定プレート34は、一対の固定ねじSC4により、側壁部32に固定されている。
【0035】
ここで、
図5に示されるように、カバー30の径方向において、当該カバー30の中心部分と、側壁部32の周方向におけるグロメット33の中央部分と、を結ぶ線分をCTとする。また、線分CTを境界に、カバー30の径方向一側(
図5の上側)を第1カバー部C1とし、カバー30の径方向他側(
図5の下側)を第2カバー部C2とする。
【0036】
図5に示されるように、側壁部32の内側でかつ第1カバー部C1側には、合計3つの端子ホルダ35a,35b,35cが設けられている。これらの端子ホルダ35a,35b,35cは、それぞれ中空の箱形状に形成され、その内部には、W相用給電線70wの基端部にカシメ固定された平型メス端子M1,U相用給電線70uの基端部にカシメ固定された平型メス端子M2,V相用給電線70vの基端部にカシメ固定された平型メス端子M3がそれぞれ装着されている。
【0037】
また、側壁部32の内側でかつ第1カバー部C1側および第2カバー部C2側には、それぞれ棒状に形成された係合凸部36a,36bが設けられている。これらの係合凸部36a,36bは、カバー30の側壁部32を越える高さ寸法で突出され、カバー30のケース20(
図4参照)への装着を案内する機能を有する。具体的には、カバー30をケース20に装着する際に、最初にこれらの係合凸部36a,36bが、ケース20の係合凹部(図示せず)に差し込まれる。
【0038】
これにより、カバー30がケース20に対して、精度良く位置決めされつつ、互いに確実に装着可能となっている。なお、カバー30をケース20に装着するだけで、それぞれの平型メス端子M1,M2,M3に対して、ケース20側の平型オス端子T1,T2,T3(
図4および
図6参照)が、精度良く電気的に接続される。
【0039】
ここで、平型メス端子M1(W相用)に接続される平型オス端子T1はW相に対応したコイル44に電気的に接続され、平型メス端子M2(U相用)に接続される平型オス端子T2はU相に対応したコイル44に電気的に接続され、平型メス端子M3(V相用)に接続される平型オス端子T3はV相に対応したコイル44に電気的に接続されている。
【0040】
これにより、それぞれの給電線70u,70v,70wに対して所定のタイミングで駆動電流を供給することで、U相,V相,W相に対応したコイル44(
図4および
図6参照)に対してそれぞれ給電が行われ、ステータコア41(
図4および
図6参照)に電磁力が発生する。よって、ロータ42(
図3および
図4参照)が、所定の回転速度で正方向または逆方向に回転駆動される。
【0041】
さらに、
図5に示されるように、カバー30の内部には、センサ基板50および脱落防止プレート90が収容されている。脱落防止プレート90は、カバー30の内側に装着されたそれぞれの給電線70u,70v,70wおよびセンサケーブル80が、カバー30からの脱落するのを防止するものである。
【0042】
カバー30の底壁部31における第1カバー部C1側には、それぞれの給電線70u,70v,70wをそれぞれ個別に保持する3つの第1保持溝G1が設けられている。これにより、それぞれの給電線70u,70v,70wを互いに干渉させたり交差させたりせずに、カバー30の内側に容易に配策可能としている。
【0043】
また、カバー30の底壁部31における第2カバー部C2側には、センサケーブル80を保持する単一の第2保持溝G2が設けられている。ここで、センサケーブル80は、それぞれの給電線70u,70v,70wよりも太くなっている。よって、第2保持溝G2の幅寸法は、第1保持溝G1の幅寸法よりも大きくなっている。
【0044】
さらに、カバー30の第2カバー部C2側でかつ第2保持溝G2の近傍には、センサケーブル80を収容する比較的大きな収容スペースSPが設けられている。これにより、センサケーブル80を、カバー30の内側で弛みを持たせて大きく湾曲させることが可能となっている。よって、センサ基板50と第2保持溝G2との間で、センサケーブル80を無理に折り曲げることなく配策可能となっている。
【0045】
このように、カバー30を分断する線分CTを中心として、径方向一側の第1カバー部C1にU相用,V相用,W相用給電線70u,70v,70wが配置され、径方向他側の第2カバー部C2にセンサケーブル80が配置されている。これにより、カバー30の内側で、それぞれの給電線70u,70v,70wとセンサケーブル80とが、互いに接触したり交差したりすることがない。
【0046】
よって、それぞれの給電線70u,70v,70wとセンサケーブル80とが短絡すること等が確実に抑えられ、電動機10の信頼性向上が図られている。さらには、それぞれの給電線70u,70v,70wおよびセンサケーブル80をカバー30に対して容易に配策することができ、ひいては電動機10の組み立て作業性の向上も図られている。
【0047】
ここで、センサ基板50は、線分CTを跨ぐようにしてカバー30の内側に固定されている。具体的には、センサ基板50は、一対の固定ねじSC5(
図5参照)により、カバー30の内側に固定されている。また、センサ基板50は、3つのホールセンサHSを含む複数の電子部品が半田付けされ、電子回路として機能するプリント回路板(Printed Circuit Board)となっている。
【0048】
センサ基板50に設けられた3つのホールセンサHSは、センサ基板50の長手方向に所定間隔で並んでいる。これらのホールセンサHSは、ロータ42の回転状態(回転速度等)を検出するものであり、ロータ42(
図3および
図4参照)の軸方向において、永久磁石42bと対向している。これにより、3つのホールセンサHSは、ロータ42の回転に伴う永久磁石42bのN極およびS極の切り替わりによりスイッチング動作し、それぞれ所定のタイミングで矩形波信号を出力する。
【0049】
なお、センサ基板50には、センサケーブル80が電気的に接続され、3つのホールセンサHSからの矩形波信号は、センサケーブル80を流れるようになっている。ここで、センサケーブル80のセンサ基板50との接続部分は、半田付けにより固定される部分であり、比較的剛性が低くなっている。よって、センサケーブル80に大きな引っ張り力が作用すると、半田クラック(導通不良)が発生する虞がある。そこで、本実施の形態では、半田クラックの発生を抑えるべく、
図5に示されるように、センサケーブル80を収容スペースSPにおいて、弛みを持たせて大きく湾曲させている。
【0050】
また、
図1,
図2,
図4,
図5に示されるように、それぞれの給電線70u,70v,70wのカバー30の外部に引き出された部分には、電源用の外部コネクタ(図示せず)が接続される第1コネクタ接続部CN1が設けられている。さらに、センサケーブル80のカバー30の外部に引き出された部分には、制御用の外部コネクタ(図示せず)が接続される第2コネクタ接続部CN2が設けられている。
【0051】
このように、電源系統のケーブル(給電線70u,70v,70w)と、制御系統のケーブル(センサケーブル80)とを分けることで、電源系統のケーブルから放散される電気ノイズ等が、制御系統のケーブルに悪影響を与えること等を抑制している。
【0052】
図5に示されるように、脱落防止プレート90は、プラスチック等の樹脂材料により略円盤状に形成されている。脱落防止プレート90には、略矩形形状に切り欠かれた矩形状切欠部93が設けられ、当該矩形状切欠部93の部分には、センサ基板50が配置される。これにより、脱落防止プレート90とセンサ基板50とをカバー30の軸方向に重ねずに済み、ひいては電動機10の厚み寸法の増大を抑えている。
【0053】
さらに、脱落防止プレート90の径方向外側の部分には、その周方向に並ぶようにして合計5つのねじ穴96が設けられている。これらのねじ穴96には、それぞれ固定ねじSC6(合計5つ)が挿通され、これにより脱落防止プレート90は、カバー30の内側にがたつくことなく固定される。
【0054】
また、脱落防止プレート90の径方向外側の部分には、その周方向に並ぶようにして合計3つの支持突起97が一体に設けられている。これらの支持突起97は、カバー30の径方向において端子ホルダ35a,35b,35cとそれぞれ対向する部分であり、平型メス端子M1,M2,M3の側方を支持している(詳細図示せず)。
【0055】
これにより、ケース20側の平型オス端子T1,T2,T3(
図4および
図6参照)の平型メス端子M1,M2,M3への接続時において、平型メス端子M1,M2,M3の傾動が防止される。よって、平型オス端子T1,T2,T3を平型メス端子M1,M2,M3に対して確実に電気的に接続可能となっている。
【0056】
図6に示されるように、ステータコア41を保持するインシュレータ43の径方向外側には、合計3つの端子収容箱100a,100b,100cが一体に設けられている。すなわち、これらの端子収容箱100a,100b,100cにおいても、それぞれプラスチック等の絶縁材料により形成されている。そして、これらの端子収容箱100a,100b,100cは、電動機10を組み立てた状態で、カバー30に設けられたそれぞれの端子ホルダ35a,35b,35c(
図5参照)に対して、電動機10の軸方向から対向するようになっている。
【0057】
3つの端子収容箱100a,100b,100cは、それぞれこの順番でW相用,U相用,V相用となっており、かつ互いに略同じ形状に形成されている。よって、以下、W相用の端子収容箱100aを代表して、その詳細構造について説明する。ただし、説明の便宜上、
図7,
図8,
図10では、端子収容箱の符号を単に「100」としている。
【0058】
また、それぞれの端子収容箱100a,100b,100cには、W相用,U相用,V相用の平型オス端子T1,T2,T3がそれぞれ挿入されている。これらの平型オス端子T1,T2,T3においても、それぞれ略同じ形状に形成されている。よって、以下、W相用の平型オス端子T1を代表して、その詳細構造について説明する。ただし、説明の便宜上、
図7ないし
図9では、平型オス端子の符号を単に「200」としている。
【0059】
図7および
図8に示されるように、ティースTH(
図6参照)に巻装されたコイル44の一対のコイル端44a(ここではW相用の一対のコイル端)は、端子収容箱100の部分において、平型オス端子200により互いに電気的に接続されている。具体的には、端子収容箱100の収容室101に平型オス端子200を収容(挿入)することで、当該平型オス端子200によりそれぞれのコイル端44aの表面に塗布されたエナメル塗料(図示せず)が削がれる。よって、一対のコイル端44aが平型オス端子200を介して互いに電気的に接続される。
【0060】
まず、平型オス端子200の構造について、図面を用いて詳細に説明する。平型オス端子200は、本発明における接続端子に相当する。平型オス端子200は、導電性に優れた黄銅板等をプレス加工および屈曲加工することで、
図7ないし
図9に示されるような立体形状に形成されている。具体的には、平型オス端子200は、平型メス端子M1(
図5参照)に差し込まれる平板状の端子接続部201と、端子収容箱100の収容室101に差し込まれる端子本体部202と、を備えている。
【0061】
端子接続部201は、平型オス端子200を端子収容箱100の収容室101に固定した状態で、電動機10の軸方向カバー30側に向けて起立している。これにより、電動機10の組み立て時において、端子接続部201が平型メス端子M1に差し込まれて、両者は互いに電気的に接続される。
【0062】
図9に示されるように、端子本体部202は、中空の略箱形状に形成され、端子収容箱100の収容室101に挿入される。
【0063】
また、端子本体部202の収容室101に対する挿入方向先端側には、収容室101の収容室底面103と対向する端子先端部202aが設けられている。また、端子本体部202の収容室101に対する挿入方向基端側には、電動機10の軸方向カバー30側に向けられる端子基端部202bが設けられている。
【0064】
さらに、平型オス端子200の端子接続部201と端子本体部202との間には、端子接続部201よりも幅広となった幅広部203が一体に設けられている。
【0065】
端子本体部202には、単一のスリット204が設けられている。このスリット204には、
図7および
図8に示されるように、一対のコイル端44aが差し込まれている。すなわち、スリット204は、一対のコイル端44a(コイル44)を、端子本体部202の収容室101に対する挿入方向において、重なるように並べて保持するようになっている。
【0066】
スリット204は、端子先端部202a側が開口され、かつ端子基端部202bに向けて所定の深さ寸法で切り欠かれている。そして、スリット204の開口側(
図7ないし
図9の下側)には、コイル入口部204aが設けられ、スリット204の開口側とは反対側(
図7ないし
図9の上側)には、略円弧形状に形成されたスリット底部204bが設けられている。
【0067】
そして、スリット204の長手方向におけるコイル入口部204aとスリット底部204bとの間に、一対のコイル端44aが配置されている。なお、スリット204の長手方向におけるコイル入口部204aとスリット底部204bとの間の開口幅は、コイル端44aの直径よりも小さくなっている。これにより、コイル端44aの表面に塗布されたエナメル塗料が確実に削がれて、ひいては一対のコイル端44aが、平型オス端子200を介して互いに確実に電気的に接続される。
【0068】
ただし、スリット204の開口幅は、コイル端44aの直径の略半分(約1/2)とするのが望ましい。これにより、エナメル塗料を確実に削ぎつつ、一対のコイル端44aの平型オス端子200に対する抜け強度が十分に確保される。さらに、一対のコイル端44aが、スリット204により断線されることが確実に防止される。
【0069】
なお、端子本体部202には、一対のコイル端44aの挿入方向に延びるスリット204が1つだけ設けられるので、
図8に示されるように、端子本体部202の幅方向(図中左右方向)寸法の増大が抑えられる。これは、
図6を見ても判るように、ステータコア41を保持するインシュレータ43の径方向外側への寸法増大が抑えられ、ひいては電動機10の径方向外側への寸法増大が抑えられることを意味する。
【0070】
さらには、端子本体部202の幅方向寸法の増大が抑えられるので、平型オス端子200を、
図8に示されるように、縦に細長い縦長形状にすることができる。これにより、平型オス端子200を端子収容箱100に対して真っ直ぐに容易に挿入可能となっている。よって、端子収容箱100の損傷が抑えられ、ひいては不良品の発生が抑えられる。
【0071】
図8および
図9に示されるように、スリット204のコイル入口部204aよりも端子先端部202a側には、当該端子先端部202a側(図中下側)に向かうに連れて徐々に開口幅が大きくなった案内開口部205が設けられている。案内開口部205は、一対のコイル端44aを、スリット204に案内(誘導)する機能を有する。具体的には、案内開口部205の最も端子先端部202a寄りの開口幅は、コイル端44aの直径よりも大きくなっている。これにより、収容室101の内部にセットされ、かつ端子収容箱100の外部から見ることができない一対のコイル端44aを、それぞれスリット204に対して容易かつ確実に差し込み可能となっている。
【0072】
また、端子本体部202には、収容室101に収容された端子本体部202の抜け止めを行う複数の抜け止め突起206が設けられている。具体的には、抜け止め突起206は、
図8に示されるように、端子本体部202の両側(図中左右側)に配置され、かつその断面は略三角形形状に形成されている。そして、これらの抜け止め突起206の先端側の角部は、収容室101を形成する収容室側壁104に向けて突出され、かつ収容室側壁104に食い込んで引っ掛かっている。
【0073】
次に、端子収容箱100の構造について、図面を用いて詳細に説明する。
図7,
図8,
図10に示されるように、端子収容箱100は略直方体形状に形成されている。端子収容箱100の内部には、平型オス端子200の端子本体部202(
図9参照)を収容する収容室101が形成されている。
【0074】
また、端子収容箱100は、収容室101の開口側(
図10の手前側)に設けられる収容箱端面102と、収容室101の開口側とは反対側(
図10の奥側)に設けられる収容室底面103と、を備えている。そして、収容室底面103からは、端子収容箱100の開口側に向けて収容室側壁104が起立して設けられている。つまり、収容室101は、収容室底面103および収容室側壁104により囲まれている。
【0075】
さらに、端子収容箱100の内部には、平型オス端子200の幅広部203(
図9参照)が挿入される一対の挿入規制凹部105が設けられている。これらの挿入規制凹部105は、収容室101の一部を形成し、収容箱端面102からの深さが収容室101よりも浅くなっている。具体的には、挿入規制凹部105の深さ寸法は、収容室101の深さ寸法の略1/4の深さとなっている(
図8(b)参照)。
【0076】
そして、収容室101および挿入規制凹部105の開口側には、平型オス端子200の端子本体部202および幅広部203の挿入を案内する第1傾斜壁部106が設けられている。具体的には、第1傾斜壁部106は、収容室101および挿入規制凹部105の開口側の全周に亘って設けられている。これにより、平型オス端子200を端子収容箱100の内部に容易に挿入可能となっている。
【0077】
また、端子収容箱100の収容室底面103における略中央部分には、一対のコイル端44a(
図7および
図8(a)参照)を支持する支持突起107が設けられている。具体的には、支持突起107は、収容室底面103から収容室101の開口側に向けて突出し、一対のコイル端44aを、支持突起107の突出方向に重ねた状態で支持する。そして、支持突起107の収容室底面103からの突出高さは、収容室101の深さ寸法の略1/3の高さとなっている(
図8(a)参照)。
【0078】
ここで、支持突起107は、端子本体部202を収容室101に差し込んだ状態で、端子本体部202の内部に入り込む。これにより、平型オス端子200の端子収容箱100への差し込み動作に伴い、支持突起107に支持された一対のコイル端44aが、スリット204の規定位置(圧接有効範囲)に配置される。
【0079】
さらに、
図7および
図10に示されるように、端子収容箱100には、一対の位置決め凹溝108が設けられている。これらの位置決め凹溝108は、一対のコイル端44aの延在方向において互いに対向した対向壁部109にそれぞれ設けられ、収容箱端面102から収容室底面103に向けて窪んでいる。つまり、一対の位置決め凹溝108は、インシュレータ43(
図6参照)の軸方向に延びている。具体的には、それぞれの位置決め凹溝108の深さ寸法は、収容室101の深さ寸法の略2/3の深さとなっている(
図8(b)参照)。言い換えれば、位置決め凹溝108の深さ寸法は、支持突起107の先端部分に到達する深さ寸法となっている。
【0080】
なお、一対の位置決め凹溝108の開口幅は、一対のコイル端44aの直径よりも若干大きくなっている。よって、位置決め凹溝108に入り込んだ一対のコイル端44aは、平型オス端子200の端子収容箱100に対する挿入方向に重ねられる。
【0081】
また、一対の位置決め凹溝108の開口側とは反対側には、溝底部108aがそれぞれ設けられている。位置決め凹溝108に入り込んだ一対のコイル端44aは、これらの溝底部108aに載置される。一対の溝底部108aは、端子収容箱100におけるコイル端44aの挿通方向入口側(
図7の右側)および挿通方向出口側(
図7の左側)に配置され、本発明における載置部に相当する。
【0082】
このように、端子収容箱100におけるコイル端44aの挿通方向入口側および挿通方向出口側において、一対のコイル端44aを一対の溝底部108aにそれぞれ載置することで、一対のコイル端44aは、端子収容箱100の内部において、平型オス端子200の端子収容箱100への挿入方向と直交(交差)する方向に引き回される。
【0083】
したがって、平型オス端子200の端子収容箱100への挿入時に、支持突起107の先端部分に載置され、かつ支持突起107の突出方向に重ねられた一対のコイル端44aの真横から、平型オス端子200のスリット204を臨ませることができる。よって、一対のコイル端44aに無理な引っ張り力が作用することが抑えられ、ひいてはコイル端44a(コイル44)の断線等が防止される。
【0084】
なお、一対の位置決め凹溝108の開口側には、一対のコイル端44aの一対の位置決め凹溝108への挿入を案内する第2傾斜壁部110が設けられている。これにより、一対のコイル端44aをそれぞれの位置決め凹溝108に対して容易に挿入(配策)可能となっている。
【0085】
図6,
図11,
図12に示されるように、W相用,U相用,V相用の端子収容箱100a,100b,100cの近傍には、インシュレータ43の軸方向に延びるようにして、第1柱部150a,150b,150cがそれぞれ設けられている。これらの第1柱部150a,150b,150cは、インシュレータ43に一体に設けられ、第1柱部150a,150b,150cにおいても、それぞれプラスチック等の絶縁材料により形成されている。なお、合計3つの第1柱部150a,150b,150cは、それぞれこの順番でW相用,U相用,V相用となっている。
【0086】
図11に示されるように、W相用,U相用の第1柱部150a,150bは、それぞれW相用,U相用の端子収容箱100a,100bに対して、コイル44の引き回し方向における基端側(
図11の右側)に配置されている。具体的には、W相用,U相用の第1柱部150a,150bは、W相用,U相用の端子収容箱100a,100bに対して、離間距離P1を空けて配置されている。この離間距離P1は、ステータコア41の周方向において隣り合うティースTH(
図6参照)の間の距離に略等しい。
【0087】
第1柱部150a,150bには、それぞれ切欠部151a,151bが設けられている。これらの切欠部151a,151bは、インシュレータ43の軸方向他側から軸方向一側に向けて所定深さで切り欠かれている。そして、切欠部151a,151bの切欠底部152a,152bに一対のコイル端44aが引っ掛けられている。また、切欠部151a,151bの開口幅は、一対の位置決め凹溝108(
図10参照)の開口幅と略同じ開口幅となっている。これにより、切欠部151a,151bに入り込んで、かつ切欠底部152a,152bに引っ掛けられた一対のコイル端44aは、インシュレータ43の軸方向、つまり、
図8に示されるように平型オス端子200の端子収容箱100に対する挿入方向に重ねられる。
【0088】
図13に示されるように、切欠部151a,151bの深さ寸法Dは、一対のコイル端44aを重ねた幅寸法W(コイル端44aの直径×2(本数))と、一対のコイル端44aを切欠底部152a,152bに引っ掛けた際の弛み量SC(
図14参照)との「和」以上とするのが望ましい。具体的には、「D≧W+SC」を満たすようにするのが望ましい。この条件を満たすようにすることで、一対のコイル端44aをインシュレータ43に配策する際に、切欠部151a,151bから一対のコイル端44aが脱落するのを防止できる。言い換えれば、「D≧W+SC」で規定する条件は、一対のコイル端44aの切欠部151a,151bに対する配策作業を容易にするための条件となっている。
【0089】
ここで、
図13に示されるように、切欠部151a,151bの開口方向および端子収容箱100a,100bの開口方向は、インシュレータ43の軸方向において互いに逆向きとなっている。具体的には、端子収容箱100a,100bの開口方向は、インシュレータ43の軸方向一側(
図13の上側)となっており、切欠部151a,151bの開口方向は、インシュレータ43の軸方向他側(
図13の下側)となっている。
【0090】
なお、一対のコイル端44aが引っ掛けられる切欠底部152a,152bは、それぞれ本発明における第1導電線規制部に相当する。そして、
図11に示されるように、切欠底部152a,152bおよび端子収容箱100a,100bは、インシュレータ43の軸方向他側に配置されている。
【0091】
また、
図6,
図11,
図12に示されるように、コイル44の引き回し方向におけるステータコア41寄りの部分で、かつインシュレータ43の軸方向一側に配置される部分は、コイル基部(基端側部)44bとなっており、コイル44の引き回し方向におけるコイル基部44b側とは反対側の部分で、かつインシュレータ43の軸方向他側に配置される部分は、コイル端(先端側部)44aとなっている。
【0092】
このように、切欠底部152a,152bは、インシュレータ43の周方向において端子収容箱100a,100bと並んで設けられている。そして、切欠底部152a,152bは、インシュレータ43の軸方向一側から軸方向他側に引き回された一対のコイル端44aを、それぞれ端子収容箱100a,100bの内部において、平型オス端子T1,T2の端子収容箱100a,100bへの挿入方向と交差する方向に向ける(引き回す)機能を有している。
【0093】
また、
図13に示されるように、インシュレータ43の軸方向他側の端面S1からの切欠底部152a,152bまでの高さ寸法H1は、端面S1から端子収容箱100a,100bの溝底部108a(
図10および
図13参照)までの高さ寸法H2よりも大きくなっている(H1>H2)。そして、高さ寸法H1と高さ寸法H2との高低差H3(H3=H1-H2)は、一対のコイル端44aを重ねた幅寸法Wと、一対のコイル端44aを切欠底部152a,152bに引っ掛けた際に生じる弛み量SC(
図14参照)と、の「和」以下とするのが望ましい。具体的には、「H3≦W+SC」を満たすようにするのが望ましい。この条件を満たすようにすることで、切欠底部152a,152bに引っ掛けられた一対のコイル端44aを、端子収容箱100に設けられた一対の溝底部108a(
図7参照)に対して、それぞれ確実に載置可能となる。言い換えれば、「H3≦W+SC」で規定する条件は、一対のコイル端44aに無理な引っ張り力を作用させないようにして、一対のコイル端44aが断線等することを防止するための条件となっている。
【0094】
さらに、
図6,
図11,
図12に示されるように、W相用,U相用,V相用の端子収容箱100a,100b,100cの近傍で、かつインシュレータ43の周方向における第1柱部150a,150b,150cの端子収容箱100a,100b,100c側とは反対側には、インシュレータ43の軸方向に延びるようにして、第2柱部153a,153b,153cがそれぞれ設けられている。これらの第2柱部153a,153b,153cにおいても、インシュレータ43に一体に設けられ、それぞれプラスチック等の絶縁材料により形成されている。なお、合計3つの第2柱部153a,153b,153cは、それぞれこの順番でW相用,U相用,V相用となっている。
【0095】
図11に示されるように、W相用,U相用の第2柱部153a,153bは、それぞれW相用,U相用の第1柱部150a,150bに対して、コイル44の引き回し方向におけるステータコア41側(
図11の右側)に配置されている。具体的には、W相用,U相用の第2柱部153a,153bは、W相用,U相用の第1柱部150a,150bに対して、離間距離P2を空けて配置されている。この離間距離P2は、上述した離間距離P1と略同じ距離となっている(P2≒P1)。
【0096】
第2柱部153a,153bには、それぞれ凸部154a,154bが設けられている。これらの凸部154a,154bは、インシュレータ43の軸方向一側に所定高さで突出され、凸部154a,154bには、インシュレータ43の軸方向一側に配置されたコイル基部44bのコイル端44a寄りの部分が引っ掛けられている。なお、凸部154a,154bの突出高さは、一対のコイル端44aを重ねた幅寸法W(
図13参照)と略同じ寸法となっている。これにより、凸部154a,154bに引っ掛けられた一対のコイル基部44bが、これらの凸部154a,154bから脱落することが防止される。
【0097】
ここで、一対の凸部154a,154bは、インシュレータ43の軸方向一側にそれぞれ設けられ、本発明における第2導電線規制部に相当する。そして、
図11の例えば凸部154bの部分に示されるように、凸部154bに一対のコイル基部44bのコイル端44a寄りの部分を引っ掛けることで、コイル44の引き回し方向におけるコイル基部44bの凸部154bに対する引っ掛け部分よりもステータコア41寄りの部分を、インシュレータ43の周方向に沿わせることが可能となっている。
【0098】
これにより、凸部154b(U相用)と第1柱部150a(W相用)との間に配置された平型オス端子T1(W相用)に対して、インシュレータ43の軸方向一側に配置され、かつ凸部154bに向けて延びるコイル基部44bが短絡することを、効果的に防止可能となっている。このように、凸部154a,154bは、いずれもコイル基部44bをインシュレータ43の軸方向一側において、インシュレータ43の周方向に沿わせる機能を有している。
【0099】
ここで、
図12に示されるように、V相用の端子収容箱100c,V相用の第1柱部150c,V相用の第2柱部153cにおいては、W相用,U相用の端子収容箱100a,100b,W相用,U相用の第1柱部150a,150b,W相用,U相用の第2柱部153a,153bに対して、インシュレータ43の周方向における配置位置が逆になっている。
【0100】
具体的には、V相用の第1柱部150cは、V相用の端子収容箱100cに対して、コイル44の引き回し方向におけるステータコア41側とは反対側(
図12の左側)に配置されている。また、V相用の第2柱部153cは、インシュレータ43の周方向におけるV相用の第1柱部150cのV相用の端子収容箱100c側とは反対側(
図12の左側)に配置されている。
【0101】
ただし、V相用の端子収容箱100c,V相用の第1柱部150c,V相用の第2柱部153cのインシュレータ43の周方向における離間寸法や、V相用の第1柱部150cの切欠部151cや切欠底部152c(第1導電線規制部)の構造やその機能、さらにはV相用の第2柱部153cの凸部154c(第2導電線規制部)の構造やその機能は、それぞれ上述したW相用およびU相用と同じである。よって、上述と重複するV相用の端子収容箱100c,V相用の第1柱部150c,V相用の第2柱部153cの詳細な説明は省略する。
【0102】
なお、V相用の第1柱部150cが、「D≧W+SC」および「H3≦W+SC」を満たすようにするのが望ましい点については、W相用およびU相用と同じである(
図16参照)。また、V相用の端子収容箱100c,V相用の第1柱部150c,V相用の第2柱部153cにおいては、これらの配置位置とコイル44の引き回し方向とが、上述したW相用およびU相用に比して逆になっているので、第2柱部153c(凸部154c)は、コイル44(コイル基部44bおよびコイル端44a)の配策作業時に不使用となっている(
図12参照)。
【0103】
次に、以上のように形成された電動機10の製造方法、特に、一対のコイル端44aの端子収容箱100a,100b,100cにおける平型オス端子T1,T2,T3による電気的な接続方法について、図面を用いて詳細に説明する。なお、端子収容箱100a,100bの部分は、それぞれ略同様であるため、
図13,
図14,
図15を用い、U相用の端子収容箱100bおよび平型オス端子T2の部分のみについて説明する。
【0104】
[第1配策工程(U相用)]
まず、
図13の矢印(1)に示されるように、インシュレータ43の軸方向一側(図中上側)において、コイル44のステータコア41から引き出された部分(コイル基部44b)を、所定のテンションで引っ張りながらインシュレータ43の周方向に沿わせる。このとき、第2柱部153a,153bの凸部154a,154bの内側(インシュレータ43の径方向内側)に沿わせるようにする。これにより、第1配策工程が終了する。なお、第1配策工程が、本発明における第1工程に相当する。
【0105】
[第1引っ掛け工程(U相用)]
次に、
図13の矢印(2)に示されるように、インシュレータ43の軸方向一側に配置されたコイル基部44bのコイル端44a寄りの部分を、インシュレータ43の軸方向他側(図中下側)に向けて引き回す。このとき、U相用の凸部154bに引っ掛けるようにする。これにより、第1引っ掛け工程が終了する。なお、第1引っ掛け工程が、本発明における引っ掛け工程に相当する。
【0106】
[第2引っ掛け工程(U相用)]
その後、
図14の矢印(3)に示されるように、インシュレータ43の軸方向他側(図中下側)に引き回された一対のコイル端44aを、インシュレータ43の軸方向一側(図中上側)に向けて、180度折り返すようにしつつ、第1柱部150bの切欠部151bにおける切欠底部152bに引っ掛ける。このとき、矢印(4)の方向に比較的大きなテンションで引っ張るのが望ましい。これにより、弛み量SCを少なくして、一対のコイル端44aの切欠部151bからの脱落を確実に防止できる。ただし、コイル44の損傷や断線等を防止するために、コイル基部44b側の状態を見ながら適度なテンションで引っ張るようにする。これにより、第2引っ掛け工程が終了する。なお、第2引っ掛け工程が、本発明における第2工程に相当する。
【0107】
[第2配策工程(U相用)]
次に、
図15の矢印(5)に示されるように、第1柱部150bの切欠底部152bに引っ掛けられた一対のコイル端44aを、インシュレータ43の周方向に並べられた端子収容箱100bに挿通する。このとき、一対のコイル端44aに所定のテンションを付加しつつ、端子収容箱100bの開口側から、一対の位置決め凹溝108(
図10参照)に差し込むようにする。これにより、一対のコイル端44aの余計な弛みが除去され、かつ端子収容箱100bの内部における一対のコイル端44aの引き回し方向が、インシュレータ43の周方向に真っ直ぐに向けられる。つまり、一対のコイル端44aの引き回し方向が、端子収容箱100bに挿入される平型オス端子T2の挿入方向と交差する方向に向けられる。よって、一対のコイル端44aは、一対の位置決め凹溝108の溝底部108a(
図7参照)にそれぞれ載置される。これにより、第2配策工程が終了する。なお、第2配策工程が、本発明における第3工程に相当する。
【0108】
[端子接続工程(U相用)]
次いで、
図15の矢印(6)に示されるように、一対のコイル端44aを、位置決め凹溝108の溝底部108aに載置された状態で所定のテンションで引っ張りつつ、矢印(7)に示されるように、端子収容箱100bに平型オス端子T2を挿入する。このとき、平型オス端子T2を端子収容箱100bに対して、インシュレータ43の軸方向一側から、つまり一対のコイル端44aと交差する方向から、真っ直ぐに移動させる。そして、平型オス端子T2を端子収容箱100bに対して所定圧で押圧する。これにより、支持突起107(
図7参照)に支持された一対のコイル端44aが、スリット204(
図7参照)の規定位置(圧接有効範囲)に配置され、互いに電気的に接続される。このとき、一対のコイル端44aは、一対の位置決め凹溝108の溝底部108a(
図7参照)にそれぞれ載置されているので、平型オス端子T2の端子収容箱100bへの押圧時に、一対のコイル端44aに無理な引っ張り力が作用することが抑えられる。よって、コイル端44a(コイル44)の断線等が確実に防止される。これにより、端子接続工程が終了する。なお、端子接続工程が、本発明における第4工程に相当する。
【0109】
さらに、V相用の端子収容箱100cおよび平型オス端子T3の部分においては、
図16,
図17,
図18に示されるようにして、一対のコイル端44aの配策作業および電気的な接続作業が行われる。
【0110】
[第1配策工程(V相用)]
まず、
図16の矢印(8)に示されるように、インシュレータ43の軸方向一側(図中上側)において、コイル44のステータコア41から引き出された部分(コイル基部44b)を、所定のテンションで引っ張りながらインシュレータ43の周方向に沿わせる。このとき、第1柱部150cの内側(インシュレータ43の径方向内側)に沿わせるようにする。これにより、第1配策工程(第1工程)が終了する。
【0111】
[引っ掛け工程(V相用)]
次に、
図16の矢印(9)に示されるように、インシュレータ43の軸方向一側に配置されたコイル基部44bのコイル端44a寄りの部分を、インシュレータ43の軸方向他側(図中下側)に向けて引き回す。このとき、インシュレータ43の周方向において、第1柱部150cの端子収容箱100c側とは反対側から、インシュレータ43の軸方向他側(図中下側)に向けて引き回す。その後、
図17の矢印(10)に示されるように、インシュレータ43の軸方向他側(図中下側)に引き回された一対のコイル端44aを、インシュレータ43の軸方向一側(図中上側)に向けて、180度折り返すようにしつつ、第1柱部150cの切欠部151cにおける切欠底部152cに引っ掛ける。このとき、矢印(11)の方向に比較的大きなテンションで引っ張るのが望ましい。これにより、上述と同様に、切欠底部152cに対する弛み量を少なくして、一対のコイル端44aの切欠部151cからの脱落を確実に防止できる。ただし、コイル44の損傷や断線等を防止するために、コイル基部44b側の状態を見ながら適度なテンションで引っ張るようにする。よって、引っ掛け工程(第2工程)が終了する。
【0112】
[第2配策工程(V相用)]
次に、
図18の矢印(12)に示されるように、第1柱部150cの切欠底部152cに引っ掛けられた一対のコイル端44aを、インシュレータ43の周方向に並べられた端子収容箱100cに挿通する。このとき、一対のコイル端44aに所定のテンションを付加しつつ、端子収容箱100cの開口側から、一対の位置決め凹溝108(
図10参照)に差し込むようにする。これにより、一対のコイル端44aの余計な弛みが除去され、かつ端子収容箱100cの内部における一対のコイル端44aの引き回し方向が、インシュレータ43の周方向に真っ直ぐに向けられる。つまり、一対のコイル端44aの引き回し方向が、端子収容箱100cに挿入される平型オス端子T3の挿入方向と交差する方向に向けられる。よって、一対のコイル端44aは、一対の位置決め凹溝108の溝底部108a(
図7参照)にそれぞれ載置される。これにより、第2配策工程(第3工程)が終了する。
【0113】
[端子接続工程(V相用)]
次いで、
図18の矢印(13)に示されるように、一対のコイル端44aを、位置決め凹溝108の溝底部108aに載置された状態で所定のテンションで引っ張りつつ、矢印(14)に示されるように、端子収容箱100cに平型オス端子T3を挿入する。このとき、平型オス端子T3を端子収容箱100cに対して、インシュレータ43の軸方向一側から、つまり一対のコイル端44aと交差する方向から、真っ直ぐに移動させる。そして、平型オス端子T3を端子収容箱100cに対して所定圧で押圧する。これにより、支持突起107(
図7参照)に支持された一対のコイル端44aが、スリット204(
図7参照)の規定位置(圧接有効範囲)に配置され、互いに電気的に接続される。このとき、一対のコイル端44aは、一対の位置決め凹溝108の溝底部108a(
図7参照)にそれぞれ載置されているので、平型オス端子T3の端子収容箱100cへの押圧時に、一対のコイル端44aに無理な引っ張り力が作用することが抑えられる。よって、コイル端44aの断線等が確実に防止される。これにより、端子接続工程(第4工程)が終了する。
【0114】
このように、V相用の端子収容箱100cおよび平型オス端子T3の部分においては、U相用の部分で行っていた[第1引っ掛け工程]が不要となっている。つまり、
図16,
図17,
図18に示されるように、本実施の形態に係るコイル44の引き回し方向では、第2柱部153c(凸部154c)が不使用となっている。ただし、V相用の端子収容箱100cおよび平型オス端子T3の部分で、コイル44の引き回し方向が本実施の形態とは逆の場合には、第2柱部153c(凸部154c)を使用するようにする。
【0115】
以上詳述したように、本実施の形態によれば、切欠底部152a,152b,152cが、インシュレータ43の周方向において端子収容箱100a,100b,100cと並んで設けられ、かつ端子収容箱100a,100b,100cの内部における一対のコイル端44aの引き回し方向を、平型オス端子T1,T2,T3の挿入方向と交差する方向に向ける。これにより、平型オス端子T1,T2,T3の端子収容箱100a,100b,100cへの挿入時において、一対のコイル端44aに無理な力が掛かることが抑えられ、ひいては一対のコイル端44aが断線する等の不具合の発生を防止することができる。また、一対のコイル端44aを、切欠底部152a,152b,152cを介してインシュレータ43に整然と引き回すことが可能となり、ひいては他の相のコイル44と短絡すること等を防止することができる。
【0116】
また、本実施の形態によれば、コイル44のコイル基部44bが、インシュレータ43の軸方向一側に配置され、コイル44のコイル端44a,端子収容箱100a,100b,100c,切欠底部152a,152b,152cが、インシュレータ43の軸方向他側に配置されている。これにより、ステータコア41(インシュレータ43)の軸方向寸法の増大を抑えることができ、ひいては電動機10をさらに扁平化(薄型化)することが可能となる。
【0117】
さらに、本実施の形態によれば、インシュレータ43の軸方向一側において、インシュレータ43の周方向における切欠底部152a,152b,152cの端子収容箱100a,100b,100c側とは反対側に設けられ、コイル基部44bのコイル端44a寄りの部分をインシュレータ43の周方向に沿わせる凸部154a,154b,154cを有する。これにより、一の相のコイル44と、近傍に配置される他の相のコイル44とが、互いに短絡すること等を確実に防止することができる。
【0118】
また、本実施の形態によれば、端子収容箱100a,100b,100cには、一対のコイル端44aの挿通方向入口側および挿通方向出口側に、一対のコイル端44aが載置される一対の溝底部108a(
図10参照)がそれぞれ設けられ、切欠底部152a,152b,152cに引っ掛けられた一対のコイル端44aが、それぞれの一対の溝底部108aに載置されている。これにより、一対のコイル端44aの真横から、平型オス端子200のスリット204を臨ませることが可能となる(
図7参照)。よって、一対のコイル端44aに無理な引っ張り力が作用することが抑えられ、ひいてはコイル端44a(コイル44)の断線等を確実に防止できる。
【0119】
さらに、本実施の形態によれば、半田付けの作業を無くして電動機10の組み立て作業性を向上させ、異相間でのコイル44の短絡やコイル44の断線等の不具合の発生を抑えることができる。これにより、製品のライフサイクルを長くしつつも製造エネルギーの省力化を図ることができる。よって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)において、特に目標7(手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する)および目標13(気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る)に貢献することができる。
【0120】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。上記実施の形態では、電動機10を、収穫された農作物等を運搬する電動運搬車に適用したものを示したが、本発明はこれに限らず、車椅子装置等の福祉機器の駆動源に適用する等、他の用途の装置にも適用することができる。
【0121】
その他、上記実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0122】
10:電動機,20:ケース,21:大径筒部,22:小径筒部,23:仕切壁,23a:貫通孔,30:カバー,31:底壁部,32:側壁部,33:グロメット,34:固定プレート,35a~35c:端子ホルダ,36a,36b:係合凸部,40:扁平モータ,41:ステータコア(ステータ),42:ロータ,42a:本体部,42b:永久磁石,43:インシュレータ(ホルダ部材),44:コイル(導電線),44a:コイル端(先端側部),44b:コイル基部(基端側部),45:ロータ軸,45a:軸本体,45b:第1軸部,45c:第2軸部,45d:小径部,50:センサ基板,60:ハイポサイクロイド減速機,61:アウターギヤ,61a:歯部,62:インナーギヤ,62a:第1歯部,62b:第2歯部,63:出力回転体,63a:歯部,64:蓋部材,70u:U相用給電線,70v:V相用給電線,70w:W相用給電線,80:センサケーブル,90:脱落防止プレート,93:矩形状切欠部,96:ねじ穴,97:支持突起,100:端子収容箱,100a~100c:端子収容箱(W相用~V相用),101:収容室,102:収容箱端面,103:収容室底面,104:収容室側壁,105:挿入規制凹部,106:第1傾斜壁部,107:支持突起,108:位置決め凹溝,108a:溝底部(載置部),109:対向壁部,110:第2傾斜壁部,150a~150c:第1柱部(W相用~V相用),151a~151c:切欠部(W相用~V相用),152a~152c:切欠底部(第1導電線規制部,W相用~V相用),153a~153c:第2柱部(W相用~V相用),154a~154c:凸部(第2導電線規制部,W相用~V相用),200:平型オス端子(接続端子),201:端子接続部,202:端子本体部,202a:端子先端部,202b:端子基端部,203:幅広部,204:スリット,204a:コイル入口部,204b:スリット底部,205:案内開口部,206:抜け止め突起,B1:第1ボールベアリング,B2:第2ボールベアリング,B3:第3ボールベアリング,B4:第4ボールベアリング,C1:第1カバー部,C2:第2カバー部,CN1:第1コネクタ接続部,CN2:第2コネクタ接続部,G1:第1保持溝,G2:第2保持溝,HS:ホールセンサ,M1~M3:平型メス端子(W相用~V相用),MS:モータ収容室,RS:減速機収容室,S1:端面,SP:収容スペース,T1~T3:平型オス端子(接続端子,W相用~V相用),TH:ティース