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特開2023-97043ワークハンドリングシートおよびデバイス製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097043
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】ワークハンドリングシートおよびデバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20230630BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20230630BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20230630BHJP
   B23K 26/57 20140101ALI20230630BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/78 Y
H01L21/68 N
H01L21/52 C
B23K26/57
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213171
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100176407
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 理啓
(72)【発明者】
【氏名】古野 健太
(72)【発明者】
【氏名】福元 彰朗
(72)【発明者】
【氏名】若山 洋司
【テーマコード(参考)】
4E168
5F047
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
4E168AD18
4E168AE05
4E168DA32
4E168JB01
5F047AA17
5F047FA01
5F063AA01
5F063AA18
5F063AA41
5F063AA43
5F063BA31
5F063BA32
5F063BA33
5F063BA48
5F063EE02
5F063EE04
5F063EE05
5F063EE07
5F063EE08
5F063EE13
5F063EE22
5F063EE23
5F063EE27
5F063EE29
5F063EE43
5F063EE44
5F063EE46
5F131AA02
5F131AA04
5F131BA52
5F131BA53
5F131CA21
5F131EC32
5F131EC33
5F131EC53
5F131EC54
5F131EC55
5F131EC62
5F131EC67
5F131EC73
(57)【要約】
【課題】比較的大きなワーク小片であっても良好に取り扱うことが可能なワークハンドリングシート、および当該ワークハンドリングシートを用いたデバイス製造方法を提供する。
【解決手段】基材12と、基材12における片面側に積層され、ワーク小片を保持可能であるとともに、レーザー光の照射によって界面アブレーションする界面アブレーション層11とを備えるワークハンドリングシート1であって、界面アブレーション層11における基材12と反対側の面が、凹凸を有する凹凸面であるワークハンドリングシート1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材における片面側に積層され、ワーク小片を保持可能であるとともに、レーザー光の照射によって界面アブレーションする界面アブレーション層と
を備えるワークハンドリングシートであって、
前記界面アブレーション層における前記基材と反対側の面が、凹凸を有する凹凸面である
ことを特徴とするワークハンドリングシート。
【請求項2】
前記凹凸面は、マット面であることを特徴とする請求項1に記載のワークハンドリングシート。
【請求項3】
前記マット面の算術平均粗さRaに対する最大山高さRpの比(Rp/Ra)は、5以上であることを特徴とする請求項2に記載のワークハンドリングシート。
【請求項4】
前記凹凸面は、格子状に形成された複数の溝を有する表面であることを特徴とする請求項1に記載のワークハンドリングシート。
【請求項5】
前記溝の幅は、10μm以上、120μm以下であり、
前記溝の深さは、5μm以上、50μm以下であり、
平行に並ぶ前記溝の群における、隣接する2つの前記溝の中心間距離は、50μm以上、700μm以下である
ことを特徴とする請求項4に記載のワークハンドリングシート。
【請求項6】
前記ワークハンドリングシートは、前記界面アブレーション層における前記基材と反対の面に積層された剥離シートを備え、
前記剥離シートにおける前記界面アブレーション層側の面は、前記界面アブレーション層が有する前記凹凸面に対応した凹凸を有する
ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項7】
前記界面アブレーション層は、粘着剤層であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項8】
前記界面アブレーション層は、紫外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項9】
前記レーザー光は、紫外域の波長を有するものであることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項10】
前記界面アブレーション層に界面アブレーションを生じさせたときに、当該界面アブレーションが生じた位置においてブリスターが形成されることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項11】
前記界面アブレーション層において局所的に生じさせた界面アブレーションによって、前記界面アブレーション層における前記基材とは反対の面上に保持された複数のワーク小片のうちの任意のワーク小片を、前記界面アブレーション層から選択的に分離するために使用されるものであることを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載のワークハンドリングシート。
【請求項12】
前記ワーク小片は、前記界面アブレーション層における前記基材とは反対の面上に保持されたワークを当該面上において個片化することで得られたものであることを特徴とする請求項11に記載のワークハンドリングシート。
【請求項13】
基材と、前記基材における片面側に積層され、前記基材と反対側の面が凹凸を有する凹凸面である界面アブレーション層とを備えるワークハンドリングシートにおける、前記界面アブレーション層側の面上に複数のワーク小片が保持されてなる積層体を準備する準備工程と、
前記ワーク小片を受容可能な対象物に対して、前記積層体における前記ワーク小片側の面が向かい合うように前記積層体を配置する配置工程と、
前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、レーザー光を照射して、前記界面アブレーション層における前記照射された位置において界面アブレーションを生じさせることで、当該界面アブレーションが生じた位置に存在する前記ワーク小片を前記ワークハンドリングシートから分離し、前記ワーク小片を前記対象物上に載置する分離工程と
を備えることを特徴とするデバイス製造方法。
【請求項14】
前記準備工程においては、前記界面アブレーション層における前記基材とは反対の面上に保持されたワークを当該面上において個片化することで、前記ワーク小片を得ることを特徴とする請求項13に記載のデバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体部品や半導体装置等のワーク小片を取り扱うために使用可能なワークハンドリングシート、および当該ワークハンドリングシートを用いたデバイス製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコン、ガリウムヒ素などの半導体ウエハおよび各種パッケージ類は、大径の状態で製造され、これらは素子小片(半導体チップ)に切断分離(ダイシング)されるとともに個々に剥離(ピックアップ)された後に、次の工程であるマウント工程に移される。この際、半導体ウエハ等の被加工物は、基材および粘着剤層を備える半導体加工用シートに貼着された状態で、バックグラインド、ダイシング、洗浄、乾燥、エキスパンド、ピックアップ、マウンティング等の加工が行われる。
【0003】
上述したピックアップおよびマウンティングの工程では、半導体加工用シート上における半導体チップを、吸引コレットを用いて個々に取り上げ、所定の位置に配置することが行われる。このとき、半導体加工用シートの裏面から、ニードルを用いて半導体チップを突き上げたり、半導体加工用シートをエキスパンドさせて、半導体チップ同士を離間させることも行われる。
【0004】
ところで、近年、マイクロ発光ダイオードを用いたディスプレイの開発において、個々のマイクロ発光ダイオードの基板への配置のために、レーザー光の照射を利用することが検討されている。例えば、特許文献1には、複数のマイクロ発光ダイオードを、所定の層を介して支持体に保持した後、当該層に対してレーザー光を照射することで、その照射した位置において当該層のアブレーションを生じさせ、それによって支持体から分離(レーザーリフトオフ)したマイクロ発光ダイオードを配線基板に載置する方法が検討されている。レーザー光は、指向性および収束性に優れているため、照射する位置を制御しやすく、選択的な載置を良好に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6546278号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、半導体ウエハをダイシングして得られる半導体チップは、マイクロ発光ダイオードに比べてサイズが大きいものとなっている。そのため、上述したレーザーリフトオフの手法を、半導体ウエハのピックアップおよびマウンティングの代替として使用しようとしても、半導体チップを良好に分離できないといった問題があった。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、比較的大きなワーク小片であっても良好に取り扱うことが可能なワークハンドリングシート、および当該ワークハンドリングシートを用いたデバイス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、基材と、前記基材における片面側に積層され、ワーク小片を保持可能であるとともに、レーザー光の照射によって界面アブレーションする界面アブレーション層とを備えるワークハンドリングシートであって、前記界面アブレーション層における前記基材と反対側の面が、凹凸を有する凹凸面であることを特徴とするワークハンドリングシートを提供する(発明1)。
【0009】
上記発明(発明1)に係るワークハンドリングシートは、界面アブレーション層の表面が凹凸面となっていることにより、界面アブレーションの際に、当該凹凸面の凹凸が、ワーク小片が分離する際の起点として作用し、比較的大きなワーク小片であっても良好な分離が可能となる。
【0010】
上記発明(発明1)において、前記凹凸面は、マット面であることが好ましい(発明2)。
【0011】
上記発明(発明2)において、前記マット面の算術平均粗さRaに対する最大山高さRpの比(Rp/Ra)は、5以上であることが好ましい(発明3)。
【0012】
上記発明(発明1)において、前記凹凸面は、格子状に形成された複数の溝を有する表面であることが好ましい(発明4)。
【0013】
上記発明(発明4)において、前記溝の幅は、10μm以上、120μm以下であり、前記溝の深さは、5μm以上、50μm以下であり、平行に並ぶ前記溝の群における、隣接する2つの前記溝の中心間距離は、50μm以上、700μm以下であることが好ましい(発明5)。
【0014】
上記発明(発明1~5)において、前記ワークハンドリングシートは、前記界面アブレーション層における前記基材と反対の面に積層された剥離シートを備え、前記剥離シートにおける前記界面アブレーション層側の面は、前記界面アブレーション層が有する前記凹凸面に対応した凹凸を有することが好ましい(発明6)。
【0015】
上記発明(発明1~6)において、前記界面アブレーション層は、粘着剤層であることが好ましい(発明7)。
【0016】
上記発明(発明1~7)において、前記界面アブレーション層は、紫外線吸収剤を含有することが好ましい(発明8)。
【0017】
上記発明(発明1~8)において、前記レーザー光は、紫外域の波長を有するものであることが好ましい(発明9)。
【0018】
上記発明(発明1~9)において、前記界面アブレーション層に界面アブレーションを生じさせたときに、当該界面アブレーションが生じた位置においてブリスターが形成されることが好ましい(発明10)。
【0019】
上記発明(発明1~10)において、前記界面アブレーション層において局所的に生じさせた界面アブレーションによって、前記界面アブレーション層における前記基材とは反対の面上に保持された複数のワーク小片のうちの任意のワーク小片を、前記界面アブレーション層から選択的に分離するために使用されるものであることが好ましい(発明11)。
【0020】
上記発明(発明11)において、前記ワーク小片は、前記界面アブレーション層における前記基材とは反対の面上に保持されたワークを当該面上において個片化することで得られたものであることが好ましい(発明12)。
【0021】
第2に本発明は、基材と、前記基材における片面側に積層され、前記基材と反対側の面が凹凸を有する凹凸面である界面アブレーション層とを備えるワークハンドリングシートにおける、前記界面アブレーション層側の面上に複数のワーク小片が保持されてなる積層体を準備する準備工程と、前記ワーク小片を受容可能な対象物に対して、前記積層体における前記ワーク小片側の面が向かい合うように前記積層体を配置する配置工程と、前記積層体における前記界面アブレーション層における、少なくとも1つの前記ワーク小片が貼付されている位置に対し、レーザー光を照射して、前記界面アブレーション層における前記照射された位置において界面アブレーションを生じさせることで、当該界面アブレーションが生じた位置に存在する前記ワーク小片を前記ワークハンドリングシートから分離し、前記ワーク小片を前記対象物上に載置する分離工程とを備えることを特徴とするデバイス製造方法を提供する(発明13)。
【0022】
上記発明(発明13)において、前記準備工程においては、前記界面アブレーション層における前記基材とは反対の面上に保持されたワークを当該面上において個片化することで、前記ワーク小片を得ることが好ましい(発明14)。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係るワークハンドリングシートは、比較的大きなワーク小片であっても良好に取り扱うことができ、また、本発明に係るデバイス製造方法によれば、優れた性能を有するデバイスを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係るワークハンドリングシートの断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るワークハンドリングシートを使用したデバイス製造方法を説明する断面図である。
図3】レーザー光の照射により生じたブリスターおよび反応領域の状態を説明する断面図である。
図4】界面アブレーションによって、ワーク小片がワークハンドリングシートから分離する際の様子を拡大して表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1には、一実施形態に係るワークハンドリングシートの断面図が示される。図1に示されるワークハンドリングシート1は、基材12と、基材12における片面側に積層された界面アブレーション層11とを備える。
【0026】
本実施形態に係るワークハンドリングシート1においては、界面アブレーション層11が、ワーク小片を保持可能である。すなわち、本実施形態に係るワークハンドリングシート1は、界面アブレーション層11における基材12とは反対の面上に積層されたワーク小片を、その状態のまま保持することができる。
【0027】
上記保持の具体的な態様は限定されないものの、好ましい例としては、界面アブレーション層11がワーク小片に対する粘着性を発揮することで保持することが挙げられる。この場合、界面アブレーション層11は、後述する通り、それを構成する成分の1つとして粘着剤を含むこと、すなわち粘着剤層であることが好ましい。
【0028】
また、本実施形態における界面アブレーション層11は、レーザー光の照射によって界面アブレーションするものである。すなわち、界面アブレーション層11は、上記レーザー光の照射を受けた領域において、局所的に界面アブレーションするものである。なお、上記レーザー光としては、界面アブレーションを生じさせることが可能であれば特に限定されず、紫外域、可視光域および赤外域のいずれの波長を有するレーザー光であってよく、中でも、紫外域の波長を有するレーザー光が好ましい。
【0029】
本明細書において、界面アブレーションとは、上記レーザー光のエネルギーによって界面アブレーション層11を構成する成分の一部が蒸発または揮発し、それによって生じたガスが界面アブレーション層11と基材12との界面に溜まって空隙(ブリスター)が生じることを指す。この場合、ブリスターによって界面アブレーション層11の形状が変化し、ワーク小片が界面アブレーション層11から剥がれ落ちて、ワーク小片が分離することとなる。
【0030】
そして、本実施形態に係るワークハンドリングシート1では、界面アブレーション層11における基材12と反対側の面が、凹凸を有する凹凸面となっている。図1には、凹凸の一例として、複数の溝13が、界面アブレーション層11における基材12と反対側の面に設けられている様子が描かれている。本実施形態に係るワークハンドリングシート1は、ワーク小片と接する面が凹凸面となっていることにより、界面アブレーションを生じさせた際における、ワーク小片の分離を良好に行うことができる。
【0031】
このように、凹凸面であることによりワーク小片の分離が良好となる理由としては、以下のことが考えられる。但し、以下の理由以外の可能性を排除するものではない。ワーク小片と接する面が凹凸面であると、図4(a)に示されるように、ワーク小片の端部(図4(a)では、紙面左側の端部)が凹凸面の凹凸(図4(a)では、溝13)と重なって位置する可能性が高くなる。このように凹凸と重なっている端部は、ワーク小片と界面アブレーション層11との密着性が局所的に低くなっていると考えられる。そして、この状態において、界面アブレーションを生じさせて、ワーク小片を引き離す力を生じさせると、図4(b)に示される通り、凹凸と重なっている端部が優先的にワーク小片から分離し、これをきっかけとしてワーク小片全体の分離が促される。
【0032】
一般的に、ワーク小片のサイズが大きいほど、ワーク小片と界面アブレーション層11との接触面積が大きくなり、それに起因して、界面アブレーションによるワーク小片の分離が生じ難くなる傾向がある。しかしながら、本実施形態に係るワークハンドリングシート1では、上記の通り凹凸面を有していることにより、凹凸と重なっている端部からのワーク小片の分離が効果的に生じる。そのため、本実施形態に係るワークハンドリングシート1では、ワーク小片が比較的大きい場合であっても、良好な分離が可能となる。
【0033】
1.界面アブレーション層
本実施形態における界面アブレーション層11は、ワーク小片を保持可能であるとともに、レーザー光の照射によって界面アブレーションするという性質を有し、且つ、基材12と反対側の面が凹凸を有する凹凸面となっている限り、その具体的な構成や組成は特に限定されない。
【0034】
(1)凹凸
上記凹凸面における凹凸は、規則的なものであっても、不規則的なものであってもよい。凹凸面の例としては、マット仕上げにより形成されたマット面、複数の溝13を有する表面等が挙げられる。複数の溝13を有する表面の例としては、格子状に形成された複数の溝13を有する表面が挙げられる。
【0035】
上記凹凸面がマット面である場合、その算術平均粗さRaに対する最大山高さRpの比(Rp/Ra)は、5以上であることが好ましく、特に6以上であることが好ましい。上記比(Rp/Ra)が5以上であることで、界面アブレーションによるワーク小片の分離をより効果的に行い易くなる。また、上記比(Rp/Ra)は、10以下であることが好ましく、特に8以下であることが好ましく、さらには7以下であることが好ましい。上記比(Rp/Ra)が10以下であることで、界面アブレーション層11とワーク小片とがより密着性し易いものとなり、意図しない段階でのワーク小片の分離を抑制し易いものとなる。なお、上記算術平均粗さRaおよび最大山高さRpの測定方法の詳細は、後述する実施例の欄に記載の通りである。
【0036】
上記算術平均粗さRaは、0.04μm以上であることが好ましく、特に0.05μm以上であることが好ましく、さらには0.06μm以上であることが好ましい。また、上記算術平均粗さRaは、0.3μm以下であることが好ましく、特に0.15μm以下であることが好ましく、さらには0.1μm以下であることが好ましい。算術平均粗さRaが上記範囲であることで、上述した比(Rp/Ra)の範囲を満たし易いものとなる。
【0037】
上記最大山高さRpは、0.1μm以上であることが好ましく、特に0.3μm以上であることが好ましい。また、上記最大山高さRp、1.0μm以下であることが好ましく、特に0.8μm以下であることが好ましい。最大山高さRpが上記範囲であることで、上述した比(Rp/Ra)の範囲を満たし易いものとなる。
【0038】
上記凹凸面が複数の溝13を有する表面である場合、当該溝13の幅は、10μm以上であることが好ましく、特に20μm以上であることが好ましい。また、当該溝13の幅は、120μm以下であることが好ましく、特に50μm以下であることが好ましい。
【0039】
また、上記溝13の深さは、5μm以上であることが好ましく、特に10μm以上であることが好ましい。また、当該溝13の深さは、50μm以下であることが好ましく、特に30μm以下であることが好ましい。
【0040】
さらに、上述した複数の溝13を有する表面が、格子状に形成された複数の溝13を有する表面である場合、平行に並ぶ溝13の群における、隣接する2つの溝13の中心間距離は、50μm以上であることが好ましく、特に100μm以上であることが好ましい。また、上記中心間距離は、700μm以下であることが好ましく、特に300μm以下であることが好ましい。
【0041】
溝13の幅および深さ、並びに、隣接する2つの溝13の中心間距離が、上記範囲であることにより、界面アブレーションによるワーク小片の分離をより効果的に行い易くなる。なお、上述した幅、深さおよび中心間距離の測定方法の詳細は、後述する実施例の欄に記載の通りである。
【0042】
また、溝13の断面形状は、図1に示される逆三角形に限定されず、矩形や半円形等であってもよい。
【0043】
(2)粘着剤
界面アブレーション層11の組成に関し、ワーク小片を保持可能であるという性質を良好に発揮しやすいという観点からは、前述した通り、それを構成する成分の1つとして粘着剤を含むことが好ましい。
【0044】
上記粘着剤としては、ワーク小片等の被着体に対する十分な保持力(粘着力)を発揮することができる限り、特に限定されない。上記粘着剤の例としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、所望の粘着力を発揮し易いという観点から、アクリル系粘着剤を使用することが好ましい。
【0045】
上記アクリル系粘着剤としては、アクリル系重合体(A)をベースポリマーとするアクリル系粘着剤が挙げられる。アクリル系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、1万以上であることが好ましく、特に10万以上であることが好ましい。また、当該重量平均分子量(Mw)は、200万以下であることが好ましく、特に150万以下であることがより好ましい。アクリル系重合体(A)の重量平均分子量が1万以上であることで、得られる粘着力の凝集力を高め易くなり、分離したワーク小片への粘着剤残りを抑制し易くなる。また、重量平均分子量が200万以下であることで、安定した界面アブレーション層の塗膜を得易くなる。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0046】
また、アクリル系重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、-70℃以上であることが好ましく、特に-60℃以上であることが好ましい。また、当該ガラス転移温度(Tg)は、20℃以下であることが好ましく、特に10℃以下であることが好ましい。アクリル系重合体(A)のガラス転移温度(Tg)が、上記範囲であることで、所望の凝集力を達成しながらも、所望の粘着力を実現し易くなる。
【0047】
上記アクリル系重合体(A)は、構成モノマーとして、少なくとも、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含有することが好ましく、また、後述する架橋剤(B)の官能基と反応し得る官能基(以下、「反応性官能基」ともいう)を有することが好ましい。
【0048】
上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル基の炭素数が1~18のアルキル(メタ)アクリレート;シクロアルキル基の炭素数が1~18程度のシクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートなどの環状骨格を有する(メタ)アクリレート;ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレート、3-エポキシシクロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0049】
また、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、N-メチロールアクリルアミド等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー以外のモノマーが共重合されていてもよい。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
アクリル系重合体(A)は、反応性官能基を含有することにより、後述する架橋剤(B)の官能基と反応して三次元網目構造を形成し界面アブレーション層の凝集性を高め易くなる。アクリル系重合体(A)の反応性官能基としては、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、水酸基等が挙げられるが、後述するように架橋剤として好ましく使用される有機多価イソシアネート化合物と選択的に反応させやすいことから、水酸基を含むことが好ましい。
【0051】
反応性官能基は、上述した水酸基含有(メタ)アクリレートやアクリル酸等の反応性官能基を有する単量体を用いてアクリル系重合体(A)を構成することで、アクリル系重合体(A)に導入できる。
【0052】
反応性官能基を有するモノマー(以下、反応基含有モノマーともいう。)のアクリル系重合体(A)の全構成モノマー中の割合は、0.3質量%以上であることが好ましく、特に0.5質量%以上であることが好ましい。また、上記割合は、40質量%以下であることが好ましく、特に20質量%以下であることが好ましい。反応基含有モノマーをこの範囲で含有することで、所望の凝集力を達成しながらも、所望の粘着力を実現し易くなる。
【0053】
また、アクリル系重合体(A)は、構成モノマーとして、上記したアルキル(メタ)アクリレートを含有することが好ましく、より好ましくはアルキル基の炭素数が1~10のアルキル(メタ)アクリレート、特に好ましくはアルキル基の炭素数が4~8のアルキル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。アクリル系重合体(A)が上記したアルキル(メタ)アクリレートを含有する場合、アルキル(メタ)アクリレートのアクリル系重合体(A)の全構成モノマー中の割合は、30質量%以上であることが好ましく、特に35質量%以上であることが好ましい。また、上記割合は、99質量%以下であることが好ましく、特に95質量%以下であることが好ましい。アルキル(メタ)アクリレートをこの範囲で含有することで、所望の凝集力を達成しながらも、所望の粘着力を実現し易くなる。
【0054】
架橋剤(B)の使用は、界面アブレーション層11の貯蔵弾性率を所望の範囲に調整し易いという観点から好ましい。架橋剤(B)としては、アクリル系重合体(A)等が有する反応性官能基との反応性を有する多官能性化合物を用いることができる。このような多官能性化合物の例としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物、金属アルコキシド化合物、金属キレート化合物、金属塩、アンモニウム塩、反応性フェノール樹脂等を挙げることができる。
【0055】
架橋剤(B)の配合量は、アクリル系重合体(A)100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、特に0.1質量部以上であることが好ましく、さらには0.2質量部以上であることが好ましい。また、架橋剤(B)の配合量は、アクリル系重合体(A)100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、特に10質量部以下であることが好ましく、さらには5質量部以下であることが好ましい。
【0056】
なお、界面アブレーション層11を構成する粘着剤は、活性エネルギー線硬化性を有する粘着剤であってもよい。このような活性エネルギー線硬化性粘着剤としては、公知のものを使用することができ、例えば国際公開第2018/084021号に開示されるものを使用することができる。
【0057】
(3)紫外線吸収剤
界面アブレーション層11は、紫外線吸収剤を含有することも好ましい。界面アブレーション層11中に紫外線吸収剤が存在することで、界面アブレーション層11が、レーザー光からエネルギーを受け取る効率が向上する。これにより、効果的に界面アブレーションが生じ、保持したワーク小片を界面アブレーション層11からより良好に分離し易くなる。特に、ワーク小片の十分な分離を生じさせるために必要となるレーザー光の照射量が低減し、レーザー光の照射装置の稼働コストを低減できるとともに、ターゲットとするワーク小片のみを良好に分離し易くなって精度が向上し、さらには、過度なレーザー光照射による装置等の損傷を防ぐこともできる。
【0058】
界面アブレーション層11が上述した粘着剤とともに紫外線吸収剤を含む場合、当該界面アブレーション層11は、紫外線吸収剤を含有する粘着性組成物からなるものであることが好ましい。
【0059】
本実施形態における紫外線吸収剤の種類は特に限定されない。本実施形態における紫外線吸収剤は、有機化合物であってもよく、無機化合物であってもよいが、良好な界面アブレーションを生じさせ易いという観点からは有機化合物であることが好ましい。
【0060】
紫外線吸収剤が有機化合物である場合、当該紫外線吸収剤の好ましい例としては、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤、フェニルサリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、ハイドロキノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、シュウ酸系紫外線吸収剤等の化合物が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
上述した紫外線吸収剤の中でも、YAGの第三次高調波(355nm)において良好な吸収性を有し、且つ良好な界面アブレーションを生じさせ易いという観点から、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤およびベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の少なくとも1種を使用することが好ましく、とりわけヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤を使用することが好ましい。
【0062】
本実施形態における界面アブレーション層11中における紫外線吸収剤の含有量は、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、特に3質量%以上であることが好ましく、さらには5質量%以上であることが好ましい。紫外線吸収剤の含有量が1質量%以上であることで、界面アブレーション層11がレーザー光を効率的に吸収し、それによって良好に界面アブレーションし易いものとなる。また、本実施形態における界面アブレーション層11中における紫外線吸収剤の含有量は、75質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、特に50質量%以下であることが好ましく、さらには20質量%以下であることが好ましい。紫外線吸収剤の含有量が75質量%以下であることで、界面アブレーション層11形成のための材料の粘度が適度なものとなり、良好な造膜性を確保し易くなる。
【0063】
また、本実施形態における界面アブレーション層11が後述する粘着性組成物から形成される場合、紫外線吸収剤はこの粘着性組成物中に配合されてもよい。その場合、当該粘着性組成物中における紫外線吸収剤の配合量は、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましく、特に3質量%以上であることが好ましく、さらには5質量%以上であることが好ましい。紫外線吸収剤の配合量が1質量%以上であることで、界面アブレーション層11がレーザー光を効率的に吸収し、それによって良好に界面アブレーションし易いものとなる。また、上記粘着性組成物中における紫外線吸収剤の配合量は、75質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましく、特に50質量%以下であることが好ましく、さらには20質量%以下であることが好ましい。紫外線吸収剤の配合量が75質量%以下であることで、得られる粘着剤が所望の粘着力を発揮し易いものとなる。
【0064】
(4)光重合開始剤
界面アブレーション層11は、光重合開始剤を含有することも好ましい。界面アブレーション層11中に光重合開始剤が存在することによっても、界面アブレーション層11が、レーザー光からエネルギーを受け取る効率が向上する。これにより、効果的に界面アブレーションが生じ、保持したワーク小片を界面アブレーション層11からより良好に分離し易くなる。特に、ワーク小片の十分な分離を生じさせるために必要となるレーザー光の照射量が低減し、レーザー光の照射装置の稼働コストを低減できるとともに、ターゲットとするワーク小片のみを良好に分離し易くなって精度が向上し、さらには、過度なレーザー光照射による装置等の損傷を防ぐこともできる。
【0065】
界面アブレーション層11が上述した粘着剤とともに光重合開始剤を含む場合、当該界面アブレーション層11は、光重合開始剤を含有する粘着性組成物からなるものであることが好ましい。
【0066】
本実施形態における光重合開始剤の種類は特に限定されない。好ましい光重合開始剤の例としては、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノ-フェニル)ブタン-1-オン、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンの少なくとも1種を使用することが好ましい。
【0067】
本実施形態における界面アブレーション層11中における光重合開始剤の含有量は、1.8質量%以上であることが好ましく、特に3.0質量%以上であることが好ましく、さらには5.0質量%以上であることが好ましい。光重合開始剤の含有量が1.8質量%以上であることで、界面アブレーション層11がレーザー光を効率的に吸収し、それによって良好に界面アブレーションし易いものとなる。また、本実施形態における界面アブレーション層11中における光重合開始剤の含有量は、40.0質量%以下であることが好ましく、特に30.0質量%以下であることが好ましく、さらには25.0質量%以下であることが好ましい。光重合開始剤の含有量が40.0質量%以下であることで、界面アブレーション層11形成のための材料の粘度が適度なものとなり、良好な造膜性を確保し易くなる。
【0068】
また、本実施形態における界面アブレーション層11が後述する粘着性組成物から形成される場合、光重合開始剤はこの粘着性組成物中に配合されてもよい。その場合、当該粘着性組成物中における光重合開始剤の配合量は、1.8質量%以上であることが好ましく、特に3.0質量%以上であることが好ましく、さらには5.0質量%以上であることが好ましい。光重合開始剤の配合量が1.8質量%以上であることで、界面アブレーション層11がレーザー光を効率的に吸収し、それによって良好に界面アブレーションし易いものとなる。また、上記粘着性組成物中における光重合開始剤の配合量は、40.0質量%以下であることが好ましく、特に30.0質量%以下であることが好ましく、さらには25.0質量%以下であることが好ましい。光重合開始剤の配合量が40.0質量%以下であることで、得られる粘着剤が所望の粘着力を発揮し易いものとなる。
【0069】
(5)界面アブレーション層の厚さ
本実施形態における界面アブレーション層11の厚さは、3μm以上であることが好ましく、特に20μm以上であることが好ましく、さらには25μm以上が好ましい。界面アブレーション層11の厚さが3μm以上であることで、界面アブレーションを生じさせた際に、ブリスターによる界面アブレーション層13の破裂や破断等を抑制し易くなり、良好なワーク小片の分離を行い易くなる。また、界面アブレーション層11の厚さは、100μm以下であることが好ましく、特に50μm以下であることが好ましく、さらには40μm以下であることが好ましい。界面アブレーション層11の厚さが100μm以下であることで、界面アブレーションを生じさせた際の界面アブレーション層11の変形が良好に生じ易くなり、その結果として、良好なワーク小片の分離を行い易くなる。
【0070】
2.基材
本実施形態における基材12は、その組成や物性について特に限定されない。ワークハンドリングシート1が所望の機能を発揮し易いという観点からは、基材12は、樹脂から構成されることが好ましい。基材12が樹脂から構成される場合、当該樹脂の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン-ノルボルネン共重合体、ノルボルネン樹脂等のポリオレフィン系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体;エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、その他のエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等のポリ塩化ビニル系樹脂;(メタ)アクリル酸エステル共重合体;ポリウレタン;ポリイミド;ポリスチレン;ポリカーボネート;フッ素樹脂などが挙げられる。また、基材12を構成する樹脂は、上述した樹脂を架橋したものや、上述した樹脂のアイオノマーといった変性したものであってもよい。また、基材12は、上述した樹脂からなる単層のフィルムであってもよく、あるいは、当該フィルムが複数積層されてなる積層フィルムであってもよい。この積層フィルムにおいて、各層を構成する材料は同種であってもよく、異種であってもよい。
【0071】
本実施形態における基材12の表面には、界面アブレーション層11に対する密着性を向上させる目的で、酸化法や凹凸化法などによる表面処理、あるいはプライマー処理を施してもよい。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸化処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶射処理法などが挙げられる。
【0072】
本実施形態における基材12は、着色剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、フィラー等の各種添加剤を含有してもよい。また、界面アブレーション層11が、活性エネルギー線により硬化する材料を含む場合、基材12は活性エネルギー線に対する透過性を有することが好ましい。
【0073】
本実施形態における基材12の製造方法は、樹脂から基材12を製造するものである限り特に限定されない。例えば、Tダイ法、丸ダイ法等の溶融押出法;カレンダー法;乾式法、湿式法等の溶液法等によって、樹脂をシート状に成形することで製造することができる。
【0074】
本実施形態における基材12の厚さは、10μm以上であることが好ましく、特に30μm以上であることが好ましく、さらには50μm以上であることが好ましい。また、基材12厚さは、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましく、特に200μm以下であることが好ましく、さらには150μm以下であることが好ましく、100μm以下であることが最も好ましい。基材12の厚さが上記範囲であることで、ワークハンドリングシート1が剛性と柔軟性とを所定のバランスで備えるものとなり、ワーク小片の良好なハンドリングを行い易いものとなる。
【0075】
3.剥離シート
本実施形態に係るワークハンドリングシート1は、界面アブレーション層11における基材12と反対の面に積層された剥離シートを備えていてもよい。特に、界面アブレーション層11が、それを構成する成分の1つとして粘着剤を含む場合には、界面アブレーション層11をワーク小片に貼付するまでの間保護する目的で、剥離シートが積層されていることが好ましい。
【0076】
本実施形態に係るワークハンドリングシート1が剥離シートを備える場合、当該剥離シートにおける界面アブレーション層11側の面は、界面アブレーション層11が有する上述した凹凸面に対応した凹凸を有することが好ましい。これにより、界面アブレーション層11に対してワーク小片が積層されるまでの間、界面アブレーション層11の凹凸面の形状を良好に維持することが可能となる。また、後述する通り、界面アブレーション層11を剥離シート上で形成する場合には、剥離シートが有する凹凸形状を利用して、界面アブレーション層11の凹凸面を形成することも可能となる。
【0077】
上記剥離シートの構成は任意であり、紙やプラスチックフィルムを剥離剤等により剥離処理したものが例示される。当該プラスチックフィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、およびポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンフィルムが挙げられる。上記剥離剤としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系等を用いることができ、これらの中でも、安価で安定した性能が得られるシリコーン系が好ましい。
【0078】
剥離シートが有する凹凸は、公知の方法で形成することができる。例えば、紙やプラスチックフィルムの表面に、樹脂を溶融押出ラミネートした後、表面に凹凸を有する冷却ロールに通すことにより、上記樹脂が硬化してなる樹脂層の表面に、冷却ロールの凹凸を転写することができる。このようにして得られた、表面凹凸を有する基材に対し、必要に応じて上述した剥離処理を施すことで、剥離シートとすることができる。
【0079】
また、所定の基材に剥離処理を施した後、さらにエンボス処理を施すことで、凹凸を有する剥離シートを得ることもできる。
【0080】
上記剥離シートの厚さについては特に制限はなく、例えば、20μm以上、250μm以下であってよい。
【0081】
4.その他の構成
本実施形態に係るワークハンドリングシート1では、界面アブレーション層11における基材12とは反対側の面に接着剤層が積層されていてもよい。当該シートでは、接着剤層における界面アブレーション層11とは反対側の面にワークを貼付し、当該ワークとともに接着剤層をダイシングすることで、個片化された接着剤層が積層されたワーク小片を得ることができる。当該チップは、この個片化された接着剤層によって、当該ワーク小片が搭載される対象に対して容易に固定することが可能となる。上述した接着剤層を構成する材料としては、熱可塑性樹脂と低分子量の熱硬化性接着成分とを含有するものや、Bステージ(半硬化状)の熱硬化型接着成分を含有するもの等を用いることが好ましい。
【0082】
また、本実施形態に係るワークハンドリングシート1では、界面アブレーション層11における基材12とは反対側の面に保護膜形成層が積層されていてもよい。このようなシートでは、保護膜形成層における界面アブレーション層11とは反対側の面にワークを貼付し、当該ワークとともに保護膜形成層をダイシングすることで、個片化された保護膜形成層が積層されたワーク小片を得ることができる。当該ワークとしては、片面に回路が形成されたものが使用されることが好ましく、この場合、通常、当該回路が形成された面とは反対側の面に保護膜形成層が積層される。個片化された保護膜形成層は、所定のタイミングで硬化させることで、十分な耐久性を有する保護膜をワーク小片に形成することができる。保護膜形成層は、未硬化の硬化性接着剤からなることが好ましい。
【0083】
5.ワークハンドリングシートの製造方法
本実施形態に係るワークハンドリングシート1の製造方法は特に限定されない。例えば、基材12上に界面アブレーション層11を直接形成してもよく、あるいは、剥離シートや工程シート上で界面アブレーション層11を形成した後、当該界面アブレーション層11を基材12上に転写してもよい。しかしながら、界面アブレーション層11における凹凸面を形成し易いという観点から、当該凹凸面に対応した凹凸を有する剥離シートや工程シート上にて界面アブレーション層11を形成し、当該界面アブレーション層11を基材12に転写することが好ましい。
【0084】
界面アブレーション層11が、それを構成する成分の1つとして粘着剤を含む場合、当該界面アブレーション層11の形成は、公知の方法により行うことができる。例えば、界面アブレーション層11を形成するための粘着性組成物、および所望によりさらに溶媒または分散媒を含有する塗布液を調製する。そして、基材の片面または剥離シートの剥離性を有する面(以下、「剥離面」という場合がある。)に上記塗布液を塗布する。続いて、得られた塗膜を乾燥させることで、界面アブレーション層11を形成することができる。
【0085】
上述した塗布液の塗布は公知の方法により行うことができ、例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等により行うことができる。なお、塗布液は、塗布を行うことが可能であればその性状は特に限定されず、界面アブレーション層11を形成するための成分を溶質として含有する場合もあれば、分散質として含有する場合もある。また、剥離シート上に界面アブレーション層11を形成した場合、当該剥離シートは工程材料として剥離してもよいし、被着体に貼付するまでの間、界面アブレーション層11を保護していてもよい。
【0086】
界面アブレーション層11を形成するための粘着性組成物が前述した架橋剤を含有する場合には、上記の乾燥の条件(温度、時間など)を変えることにより、または加熱処理を別途設けることにより、塗膜内のポリマー成分と架橋剤との架橋反応を進行させ、界面アブレーション層11内に所望の存在密度で架橋構造を形成することが好ましい。さらに、上述した架橋反応を十分に進行させるために、ワークハンドリングシート1の完成後、例えば23℃、相対湿度50%の環境に数日間静置するといった養生を行ってもよい。
【0087】
6.ワークハンドリングシートの使用方法
本実施形態に係るワークハンドリングシート1は、ワーク小片の取り扱いのために好適に使用することができる。前述した通り、本実施形態に係るワークハンドリングシート1では、界面アブレーション層11が、レーザー光の照射によって効率的に界面アブレーションするものであるため、界面アブレーション層11上に保持されたワーク小片を高い精度で所定の位置に向けて分離することができる。
【0088】
本実施形態に係るワークハンドリングシート1の使用方法の一例としては、界面アブレーション層11において局所的に生じさせた界面アブレーションによって、界面アブレーション層11における基材12とは反対の面上に保持された複数のワーク小片のうちの任意のワーク小片を、界面アブレーション層11から選択的に分離するという使用方法が挙げられる。
【0089】
上記使用方法において、界面アブレーション層11上に保持された複数のワーク小片は、界面アブレーション層11における基材12とは反対の面上に保持されたワーク(ワーク小片の材料となるもの)を当該面上において個片化することで得られたものであってもよい。すなわち、ワーク小片は、界面アブレーション層11上にてワークをダイシングすることで得られたものであってもよい。あるいは、ワーク小片は、本実施形態に係るワークハンドリングシート1とは独立して形成されたものを、界面アブレーション層11上に載置されたものであってもよい。
【0090】
なお、本実施形態に係るワークハンドリングシート1が前述した接着剤層や保護膜形成層を備える場合には、これらの層とワークとを界面アブレーション層11上にてダイシングすることが好ましい。これにより、これらの層が個片化されてなるものが積層されたワーク小片を得ることができる。
【0091】
本実施形態におけるワーク小片の形状やサイズについては特に限定されないものの、サイズに関し、ワーク小片は、平面視したときにおける面積が0.025mm以上であることが好ましく、特に0.01mm以上であることが好ましい。また、ワーク小片は、平面視したときにおける面積が10000mm以下であることが好ましく、特に2000mm以下であることが好ましい。また、ワーク小片の寸法としては、ワーク小片が矩形である場合、ワーク小片の最小の一辺が、25μm以上であることが好ましく、特に30μm以上であることが好ましく、さらには50μm以上であることが好ましい。また、上記最小の一辺は、100mm以下であることが好ましく、特に90mm以下であることが好ましい。矩形のワーク小片の寸法の具体例としては、20mm×50mm、10mm×10mm、5mm×5mm、、1mm×1mm等が挙げられる。
【0092】
本実施形態に係るワークハンドリングシート1は、前述した通り、界面アブレーション層11の表面が凹凸面となっていることにより、上述したような比較的大きなサイズのワーク小片であっても、良好に分離を行うことができる。
【0093】
ワーク小片の例としては、半導体ウエハ、半導体パッケージ等の半導体部材、ガラス板等のガラス部材が挙げられる。また、ワーク小片は、マイクロ発光ダイオード、ミニ発光ダイオード、パワーデバイス、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、コントローラチップといった半導体部品や半導体装置等であってもよい。
【0094】
以下に、ワークハンドリングシート1の具体的な使用例として、デバイス製造方法を図2に基づいて説明する。当該デバイス製造方法は、準備工程(図2(a))、配置工程(図2(b))および分離工程(図2(c)および(d))という3つの工程を少なくとも備える。
【0095】
準備工程においては、図2(a)に示すように、本実施形態に係るワークハンドリングシート1における、界面アブレーション層12側の面上に複数のワーク小片2が保持されてなる積層体を準備する。当該積層体は、別途作製したワーク小片2をワークハンドリングシート1上に載置することで準備してもよく、あるいは、界面アブレーション層11側の面上に保持されたワークを当該面上において個片化すること(すなわちダイシングすること)で準備してもよい。当該ダイシングは、公知の方法で行うことができる。
【0096】
ワーク小片2の形状やサイズは、前述した通り、特に限定はなく、好ましいサイズも前述した通りである。ワーク小片2の具体例についても、前述したものが挙げられ、特に、半導体ウエハ、半導体パッケージ等の半導体部材が挙げられる。
【0097】
続く配置工程においては、図2(b)に示すように、ワーク小片2を受容可能な対象物3に対して、上記積層体におけるワーク小片2側の面が向かい合うように上記積層体を配置する。対象物3の例は、製造するデバイスに応じて適宜決定されるものの、ワーク小片2が発光ダイオードである場合には、対象物3の具体例としては、基板、シート、リール等が挙げられ、特に配線が設けられた配線基板が好適に使用される。
【0098】
その後、分離工程において、まず図2(c)に示すように、上記積層体における界面アブレーション層11における、少なくとも1つのワーク小片2が貼付されている位置に対し、レーザー光を照射する。当該照射は、ワーク小片2が貼付されている複数の位置に対して同時に行ってもよく、あるいはそれらの位置に対して順次行ってもよい。レーザー光の照射条件としては、界面アブレーションを生じさせることが可能である限り限定されない。照射のための装置としては、公知のものを使用することができる。
【0099】
上記照射により、図2(d)に示されるように、界面アブレーション層11における照射された位置において界面アブレーションを生じさせることができる。具体的には、レーザー光の照射によって、界面アブレーション層11における基材12に近位な領域において、当該領域を構成していた成分が蒸発または揮発し、反応領域14となる。そして、上記蒸発または揮発によって生じたガスが基材11と反応領域14との間に溜まり、ブリスター5が形成される。当該ブリスター5の形成によって、ワーク小片2’の位置において局所的に界面アブレーション層11が変形し、界面アブレーション層11から剥がされるようにワーク小片2’が分離する。以上により、当該界面アブレーションが生じた位置に存在するワーク小片2’を、対象物3上に載置することができる。
【0100】
なお、レーザー光の照射によって生じた反応領域14およびブリスター5は、通常、ワーク小片2’の分離した後も残ったままとなる。図3には、順次レーザー光を照射してワーク小片2の分離を行っていく様子が示されており、特に、分離後の状態(左2つ)、分離中の状態(中央)、および分離前の状態(右2つ)が示されている。図示されるように、通常、分離後のブリスター5は、分離中のブリスター5に比べて、多少しぼんだ状態となる。
【0101】
界面アブレーション層11がそれを構成する成分の1つとして活性エネルギー線硬化性粘着剤を含有する場合には、当該界面アブレーション層11が、上述したレーザー光の照射によって硬化してもよい。そして、当該硬化によって、界面アブレーション層11のワーク小片2に対する粘着力が低下し、上述した界面アブレーションによる作用と相まって、ワーク小片2’の良好な分離が生じるものとなってもよい。あるいは、上記界面アブレーション層11に対して、上述したレーザー光の照射とは異なる活性エネルギー線照射を行い、それによってワーク小片2に対する粘着力を低下させてもよい。このような活性エネルギー線照射は、レーザー光の照射の前後のいずれに行ってもよい。また、当該活性エネルギー線照射は、界面アブレーション層11に対して局所的に行うものであってもよく、または、界面アブレーション層11の全面に対して行うものであってもよい。上述した活性エネルギー線照射の照射条件や照射装置は特に限定されず、公知の条件および公知の装置を用いることができる。
【0102】
以上説明したデバイス製造方法によれば、使用するワーク小片2や対象物3を適宜選択することで様々なデバイスを製造することができる。
【0103】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0104】
例えば、本実施形態に係るワークハンドリングシート1における界面アブレーション層11と基材12との間、または基材12における界面アブレーション層11とは反対側の面には、他の層が積層されていてもよい。当該他の層の具体例としては、粘着剤層が挙げられる。この場合、当該粘着剤層側の面を支持台(ガラス板等の透明基板)に貼付した状態で、上述した分離工程等を行うことができる。
【実施例0105】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0106】
〔調製例1〕
アクリル酸2-エチルヘキシル80質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル20質量部とを、溶液重合法により重合させて、アクリル系重合体を得た。このアクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)を後述の方法によって測定したところ、60万であった。なお、当該アクリル系重合体を、アクリル系重合体Aとする。
【0107】
〔調製例2〕
アクリル酸2-エチルヘキシル80質量部と、アクリル酸2-ヒドロキシエチル20質量部とを、溶液重合法により重合させて、アクリル系重合体を得た。続いて、当該アクリル系重合体を構成するアクリル酸2-ヒドロキシエチルに対して80モル%に相当する量の2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を添加するとともに、スズ含有触媒としてのジブチル錫ジラウレート(DBTDL)を、上記アクリル系重合体100質量部に対して0.025質量部の量で添加した。その後、50℃で24時間反応させることで、側鎖に活性エネルギー線硬化性基が導入されたアクリル系重合体を得た。当該アクリル系重合体の重量平均分子量を前述の方法によって測定したところ、60万であった。当該アクリル系重合体を、アクリル系重合体Bとする。
【0108】
〔実施例1〕
(1)剥離シートの作製
坪量110g/mの上質紙の両面に、ポリエチレン樹脂(東ソー社製,製品名「ペトロセン217」)を溶融押出ラミネートした後、連続して、表面が粗面化された冷却ロールと、表面が平滑な冷却ロールとの間を通すことにより、表面が粗面(マット面)であるポリエチレン層(厚さ30μm)と、上質紙と、表面が平坦なポリエチレン層(厚さ30μm)とが順に積層されてなる積層体を得た。
【0109】
得られた積層体における上記マット面上に、シリコーン系の剥離成分を含有する剥離剤組成物の塗工液を塗工し、塗膜を形成した。次いで、当該塗膜を140℃で1分間加熱することで、厚さ0.5μmの剥離剤層を形成した。これにより、凹凸を有する剥離面(マット面)を備える剥離シートを得た。
【0110】
(2)粘着性組成物の調製
上記調製例1で得られたアクリル系重合体A100質量部(固形分換算,以下同じ)と、架橋剤としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(東ソー社製,商品名「コロネートL」)0.94質量部と、紫外線吸収剤としてのトリス[2,4,6-[2-{4-(オクチル-2-メチルエタノエート)オキシ-2-ヒドロキシフェニル}]-1,3,5-トリアジン(ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤,BASF社製,製品名「Tinuvin477」)2.0質量部とを溶媒中で混合し、粘着性組成物の塗布液を得た。なお、当該粘着性組成物の塗布液を用いて形成される界面アブレーション層(粘着剤層)は、アクリロイル基を含有する成分を含まないため、活性エネルギー線硬化性を有しないものとなる。
【0111】
(3)界面アブレーション層(粘着剤層)の形成
上記工程(1)で作製した剥離シートの剥離面に対して、上記工程(2)で得られた粘着性組成物の塗布液を塗布し、得られた塗膜を加熱により乾燥させた。これにより、塗膜が乾燥してなる厚さ30μmの界面アブレーション層と、剥離シートとが積層されてなる積層体を得た。
【0112】
(4)ワークハンドリングシートの作製
上記工程(3)で得られた積層体における界面アブレーション層側の面と、基材としてのポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製,製品名「T-910 WM19」,厚さ:50μm)の片面とを貼り合わせることで、剥離シートが貼付された状態のワークハンドリングシートを得た。
【0113】
なお、得られたワークハンドリングシートから剥離シートを剥離した場合、露出した界面アブレーション層の露出面は、上述した剥離シートの剥離面に対応したマット面となった。当該マット面の算術平均粗さRa(μm)および最大山高さRp(μm)を、触針型の表面粗さ計(ミツトヨ社製,製品名「サーフテストSV3000」)を用いて測定したところ、それぞれ0.08μmおよび0.50μmであった。そして、これらの測定結果から、算術平均粗さRaに対する最大山高さRpの比(Rp/Ra)を算出したところ、6.25であった。
【0114】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・測定装置:東ソー社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK gel superH-H
TSK gel superHM-H
TSK gel superH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0115】
〔実施例2〕
紫外線吸収剤の含有量を変更した以外は、実施例1と同様にしてワークハンドリングシートを得た。
【0116】
〔実施例3〕
アクリル系重合体A100質量部に対し、光重合開始剤として、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノ-フェニル)ブタン-1-オン(IGM Resins社製,製品名「Omnirad379」)3.0質量部を更に添加することで調製した粘着性組成物の塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にしてワークハンドリングシートを得た。
【0117】
なお、当該粘着性組成物の塗布液を用いて形成される界面アブレーション層(粘着剤層)も、アクリロイル基を含有する成分を含まないため、活性エネルギー線硬化性を有しないものとなる。
【0118】
〔実施例4〕
上記調製例1で得られたアクリル系重合体Aと上記調製例2で得られたアクリル系重合体Bとを固形分質量比で1:2の割合で混合してなる混合物を、アクリル系重合体Aに代えて使用した以外は、実施例1と同様にしてワークハンドリングシートを得た。
【0119】
なお、当該ワークハンドリングシートにおける界面アブレーション層(粘着剤層)は、アクリロイル基を含有する成分(アクリル系重合体B)を含むものの、光重合開始剤を含まないことにより、活性エネルギー線硬化性を有しないものとなる。
【0120】
〔実施例5〕
アクリル系重合体Aとアクリル系重合体Bとの混合物100質量部に対し、光重合開始剤として、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノ-フェニル)ブタン-1-オン(IGM Resins社製,製品名「Omnirad379」)3.0質量部を更に添加することで調製した粘着性組成物の塗布液を用いた以外は、実施例4と同様にしてワークハンドリングシートを得た。
【0121】
なお、当該粘着性組成物の塗布液を用いて形成される界面アブレーション層(粘着剤層)は、アクリロイル基を含有する成分(アクリル系重合体B)および光重合開始剤を含むため、活性エネルギー線硬化性を有するものとなる。
【0122】
〔実施例6〕
上記調製例2で得られたアクリル系重合体Bを、アクリル系重合体Aに代えて使用した以外は、実施例1と同様にしてワークハンドリングシートを得た。
【0123】
なお、当該ワークハンドリングシートにおける界面アブレーション層(粘着剤層)は、アクリロイル基を含有する成分(アクリル系重合体B)を含むものの、光重合開始剤を含まないことにより、活性エネルギー線硬化性を有しないものとなる。
【0124】
〔実施例7〕
アクリル系重合体B100質量部に対し、光重合開始剤として、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチルベンジル)-1-(4-モルフォリノ-フェニル)ブタン-1-オン(IGM Resins社製,製品名「Omnirad379」)3.0質量部を更に添加することで調製した粘着性組成物の塗布液を用いた以外は、実施例6と同様にしてワークハンドリングシートを得た。
【0125】
なお、当該粘着性組成物の塗布液を用いて形成される界面アブレーション層(粘着剤層)は、アクリロイル基を含有する成分(アクリル系重合体B)および光重合開始剤を含むため、活性エネルギー線硬化性を有するものとなる。
【0126】
〔実施例8〕
紫外線吸収剤を使用しなかったこと以外は、実施例3と同様にしてワークハンドリングシートを得た。
【0127】
なお、当該粘着性組成物の塗布液を用いて形成される界面アブレーション層(粘着剤層)は、アクリロイル基を含有する成分を含まないため、活性エネルギー線硬化性を有しないものとなる。
【0128】
〔実施例9〕
紫外線吸収剤を使用しなかったこと以外は、実施例5と同様にしてワークハンドリングシートを得た。
【0129】
なお、当該粘着性組成物の塗布液を用いて形成される界面アブレーション層(粘着剤層)は、アクリロイル基を含有する成分(アクリル系重合体B)および光重合開始剤を含むため、活性エネルギー線硬化性を有するものとなる。
【0130】
〔実施例10〕
紫外線吸収剤を使用しなかったこと以外は、実施例8と同様にしてワークハンドリングシートを得た。
【0131】
なお、当該粘着性組成物の塗布液を用いて形成される界面アブレーション層(粘着剤層)は、アクリロイル基を含有する成分(アクリル系重合体B)および光重合開始剤を含むため、活性エネルギー線硬化性を有するものとなる。
【0132】
〔実施例11~20〕
プラスチックフィルムの片面に、格子状に形成された複数の凸部が形成されてなり、当該面が剥離面として機能する剥離シート(浙江道明新材料社製,製品名「透明網紋離型膜P1S1」,厚さ:50μm)を使用した以外は、実施例1~10と同様にして、それぞれ実施例11~20に係るワークハンドリングシートを得た。
【0133】
なお、当該ワークハンドリングシートから剥離シートを剥離した場合、露出した界面アブレーション層の露出面は、上述した剥離シートの剥離面に対応した表面、すなわち、格子状に形成された複数の溝を有する表面となった。当該溝の幅は100μmであり、当該溝の深さは20μmであった。また、平行に並ぶ溝の群における、隣接する2つの溝の中心間距離は、600μmであった。これら幅、深さおよび距離の測定は、デジタル顕微鏡(キーエンス社製,製品名「VHX-7000」)を用いて測定した。
【0134】
〔実施例21~30〕
坪量110g/mの上質紙の片面に、ポリエチレン樹脂(東ソー社製,製品名「ペトロセン217」)を溶融押出ラミネートした後、表面が平滑な冷却ロールと押圧ロールとの間を通すことにより、ポリエチレン層(厚さ30μm)を形成した。さらに、当該ポリエチレン層側の面上に、シリコーン系の剥離成分を含有する剥離剤組成物の塗工液を塗工して塗膜を形成した後、当該塗膜を140℃で1分間加熱することで、厚さ0.5μmの剥離剤層を形成した。これにより、上質紙と、ポリエチレン層と、剥離剤層とが順に積層されてなる積層体を得た。続いて、得られた積層体にエンボス処理を施すことにより、格子状に形成された複数の凸部を剥離面に有する剥離シートを得た。
【0135】
上記剥離シートを使用した以外は、実施例1~10と同様にして、それぞれ実施例21~30に係るワークハンドリングシートを得た。
【0136】
なお、当該ワークハンドリングシートから剥離シートを剥離した場合、露出した界面アブレーション層の露出面は、上述した剥離シートの剥離面に対応した表面、すなわち、格子状に形成された複数の溝を有する表面となった。当該溝の幅は35μmであり、当該溝の深さは17μmであった。また、平行に並ぶ溝の群における、隣接する2つの溝の中心間距離は、200μmであった。これら幅、深さおよび距離の測定は、デジタル顕微鏡(キーエンス社製,製品名「VHX-7000」)を用いて測定した。
【0137】
〔比較例1〕
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET381031」,剥離面が凹凸面となっていない)を使用した以外は、実施例1と同様にしてワークハンドリングシートを得た。
【0138】
なお、得られたワークハンドリングシートから剥離シートを剥離した場合、露出した界面アブレーション層の露出面について、算術平均粗さRa(μm)および最大山高さRp(μm)を触針型の表面粗さ計(ミツトヨ社製,製品名「サーフテストSV3000」)を用いて測定したところ、それぞれ0.03μmおよび0.05μmであった。そして、これらの測定結果から、算術平均粗さRaに対する最大山高さRpの比(Rp/Ra)を算出したところ、1.67であった。
【0139】
〔比較例2〕
比較例1で使用した剥離シートを使用した以外は、実施例3と同様にしてワークハンドリングシートを得た。
【0140】
〔比較例3〕
比較例1で使用した剥離シートを使用した以外は、実施例9と同様にしてワークハンドリングシートを得た。
【0141】
〔比較例4〕
比較例1で使用した剥離シートを使用した以外は、実施例10と同様にしてワークハンドリングシートを得た。
【0142】
〔比較例5〕
比較例1で使用した剥離シートを使用した以外は、実施例8と同様にしてワークハンドリングシートを得た。
【0143】
なお、得られたワークハンドリングシートから剥離シートを剥離した場合、露出した界面アブレーション層の露出面について、算術平均粗さRa(μm)および最大山高さRp(μm)を触針型の表面粗さ計(ミツトヨ社製,製品名「サーフテストSV3000」)を用いて測定したところ、それぞれ0.03μmおよび0.1μmであった。そして、これらの測定結果から、算術平均粗さRaに対する最大山高さRpの比(Rp/Ra)を算出したところ、3.33であった。
【0144】
〔試験例1〕(レーザーリフトオフ適性の評価)
(1)ワークハンドリングシート上におけるチップの準備(準備工程)
シリコンウエハ(#2000,厚さ:350μm)の片面に、ダイシングシート(リンテック社製,製品名「D-485H」)の粘着面を貼付した。続いて、当該ダイシングシートにおける上記粘着面の周縁部(シリコンウエハとは重ならない位置)に、ダイシング用リングフレームを付着させた。さらに、リングフレームの外径に合わせてダイシングシートを裁断した。その後、ダイシング装置(ディスコ社製,製品名「DFD6362」)を用いて、シリコンウエハを、2500μm×2500μmのサイズを有するチップにダイシングした。その後、ダイシングシートに対して、紫外線(照度230mW/cm,光量190mJ/cm)を照射した。これにより、ダイシングシート上に複数のチップが設けられてなる積層体を得た。
【0145】
続いて、実施例および比較例で製造したワークハンドリングシートから剥離シートを剥離し、それにより露出した露出面と、上記の通り得られた積層体における複数のチップが存在する面とを貼り合わせた。その後、複数のチップからダイシングシートを剥離した。これにより、複数のチップをダイシングシートからワークハンドリングシートに転写し、ワークハンドリングシート上に複数のチップが設けられてなる積層体を得た。
【0146】
(2)レーザー光照射によるチップの分離(分離工程)
上記工程(1)にて得られた、ワークハンドリングシート上に複数のチップが設けられてなる積層体について、レーザー光照射装置を用いて、ワークハンドリングシート越しにチップに対してレーザー光を照射した。
【0147】
具体的には、レーザー光照射装置(キーエンス社製,製品名「MD-U1000C」)を用いてワークハンドリングシート越しにチップに対してレーザー光を照射した。当該照射は、チップ中央の2000μm×2000μmの領域を塗りつぶすように照射することで行った。このとき、レーザー光スポットの直径は25μmとし、照射の軌跡として生じるリングの内径が65μmとなるように行った。照射は、複数のチップの中から10個のチップ(縦10個x横1個のチップのまとまり)を選択し、それらに対して行った。
【0148】
そして、上記照射は、周波数:80kHz、スキャン速度:1000mm/s、照射量:25μJ/shotの条件にて行った。
【0149】
(3)ブリスターおよびチップ分離の確認
以上の照射を行ったワークハンドリングシートおよびチップについて、ワークハンドリングシートにおける基材と界面アブレーション層との界面におけるブリスターの発生の有無、およびワークハンドリングシートからのチップの脱離の有無を確認し、以下の基準に基づいて、レーザーリフトオフ適性を評価した。その結果を、「UV照射無し」の結果として表1~4に示す。
○…ブリスターの発生および脱離が生じたチップの数が、8個以上であった。
×…ブリスターの発生および脱離が生じたチップの数が、8個未満であった。
【0150】
(4)先UV照射
実施例および比較例で製造したワークハンドリングシートのうち、活性エネルギー線硬化性を有するものについては、以下の評価も行った。
【0151】
まず、ワークハンドリングシート単独に対し、その基材側の面から紫外線を照射した(照度230mW/cm,光量190mJ/cm)。そして、当該ワークハンドリングシートを用いて、上記工程(1)~(3)と同様にレーザーリフトオフ適性を評価した。その結果を、「先UV照射」の結果として表1~4に示す。
【0152】
(5)後UV照射
実施例および比較例で製造したワークハンドリングシートのうち、活性エネルギー線硬化性を有するものについては、以下の評価も行った。
【0153】
まず、上記工程(1)および(2)と同様に積層体を取得するとともに、レーザー光照射を行った。その後、ワークハンドリングシートの基材側の面から紫外線を照射した(照度230mW/cm,光量190mJ/cm)。続いて、上記工程(3)と同様に、レーザーリフトオフ適性を評価した。その結果を、「後UV照射」の結果として表1~4に示す。
【0154】
【表1】
【0155】
【表2】
【0156】
【表3】
【0157】
【表4】
【0158】
表1~4から明らかなように、実施例で製造したワークハンドリングシートは、レーザーリフトオフ適性に優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明のワークハンドリングシートは、半導体部材の取り扱いのために好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0160】
1…ワークハンドリングシート
11…界面アブレーション層
12…基材
13…溝
14…反応領域
2,2’…ワーク小片
3…対象物
4…レーザー光
5…ブリスター
6…レーザー光照射点
図1
図2
図3
図4