(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097052
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】粉末食品組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 7/10 20160101AFI20230630BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20230630BHJP
A23L 2/39 20060101ALI20230630BHJP
A23L 23/10 20160101ALI20230630BHJP
A23L 2/38 20210101ALI20230630BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
A23L7/10 Z
A23L29/00
A23L2/00 Q
A23L23/10
A23L2/38 J
A23L2/52
A23L7/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213181
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】野村 雅之
(72)【発明者】
【氏名】稲場 由美
【テーマコード(参考)】
4B023
4B035
4B036
4B117
【Fターム(参考)】
4B023LC02
4B023LE08
4B023LE30
4B023LG01
4B023LG05
4B023LG10
4B023LK12
4B023LP20
4B035LC02
4B035LG32
4B035LG36
4B035LK11
4B035LP21
4B036LC04
4B036LE01
4B036LF01
4B036LH24
4B036LH29
4B117LC15
4B117LE01
4B117LG07
4B117LG15
(57)【要約】
【課題】米糠が含有する油分における酸化の進行を低く抑える。
【解決手段】米糠と野菜粉末を含有する粉末食品組成物であって、米糠と野菜粉末の含有割合の合計を100質量部とすると、野菜粉末を3質量部以上含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
米糠と野菜粉末を含有する粉末食品組成物であって、
前記米糠と前記野菜粉末の含有割合の合計を100質量部とすると、前記野菜粉末を3質量部以上含有することを特徴とする粉末食品組成物。
【請求項2】
前記野菜粉末が、ブロッコリー、ケール、大麦若葉、及び明日菜のうち少なくともいずれか一種である請求項1に記載の粉末食品組成物。
【請求項3】
前記米糠は、粒径35μm以上の粒子の割合が75%以下である請求項1又は2に記載の粉末食品組成物。
【請求項4】
前記粉末食品組成物に含有される酸化防止剤の含有量が、1質量%以下である請求項1~3のいずれか一項に記載の粉末食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、米糠を含有した粉末食品組成物が知られている。
特許文献1には、脱脂米糠、全粒練ゴマ、及び植物性油脂を含有する粉末食品組成物が開示されている。水と混合して飲料に用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、米糠は通常、油分を含有しており、この油分の酸化が過度に進行すると、米糠を含有する粉末食品組成物の味が低下する虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための粉末食品組成物は、米糠と野菜粉末を含有する粉末食品組成物であって、前記米糠と前記野菜粉末の含有割合の合計を100質量部とすると、前記野菜粉末を3質量部以上含有することを要旨とする。
【0006】
上記粉末食品組成物について、前記野菜粉末が、ブロッコリー、ケール、大麦若葉、及び明日菜のうち少なくともいずれか一種であることが好ましい。
上記粉末食品組成物について、前記米糠は、粒径35μm以上の粒子の割合が75%以下であることが好ましい。
【0007】
上記粉末食品組成物について、前記粉末食品組成物に含有される酸化防止剤の含有量が、1質量%以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、米糠が含有する油分における酸化の進行を低く抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る粉末食品組成物を具体化した実施形態について説明する。
本実施形態の粉末食品組成物は、米糠と野菜粉末を含有する。米糠と野菜粉末の含有割合の合計を100質量部とすると、野菜粉末を3質量部以上含有する。
【0010】
粉末食品組成物が、米糠と野菜粉末を含有し、野菜粉末の含有割合が上記数値範囲であることによって、米糠が含有する油分における酸化の進行を低く抑えることができる。
以下、粉末食品組成物を構成する各成分について説明する。
【0011】
<米糠>
米糠としては特に制限されず、公知の米糠を使用することができる。公知の米糠としては、例えば玄米の果皮、種皮、外胚乳、澱粉層等、玄米を精白して白米を製造する際に副生するものを使用することができる。
【0012】
米糠は、一般に油分を20質量%程度含有しているため、リパーゼによる油分の酸化が急速に進む虞がある。そのため、精白後のできるだけ早い時期にリパーゼ失活処理を施すことが好ましい。リパーゼ失活処理は、特に制限されないが、例えば米糠を70℃以上130℃以下で加熱処理することにより行われる。加熱処理には、例えばクッキング装置、乾式エクストルーダー、湿式エクストルーダー、水蒸気処理装置等を用いることができる。
【0013】
上記米糠は脱脂米糠であることが好ましい。脱脂米糠は、油分が5~19質量%程度となるように脱脂した米糠を意味するものとする。脱脂米糠は、油分が相対的に少ないため、油分の酸化による影響を小さくすることができる。脱脂米糠としては、予めリパーゼ失活処理が施された市販の脱脂米糠を用いてもよい。
【0014】
米糠の粒度分布は、特に制限されないが、粒径35μm以上の粒子の割合が75%以下であることが好ましく、70%以下がより好ましく、50%以下がさらに好ましく、30%以下がさらにより好ましく、10%以下が最も好ましい。
【0015】
米糠が上記の粒度分布を有することにより、例えば粉末飲料として用いた際に、口当たりを良好にすることができる。
米糠の粒度分布の測定方法は特に制限されず、公知の測定方法を採用することができる。米糠の粒度分布の測定方法については後述する。
【0016】
粉末食品組成物中の米糠の含有割合は特に制限されないが、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。粉末食品組成物中の米糠の含有割合は97質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、80質量%以下であることがさらに好ましい。
【0017】
粉末食品組成物中の米糠の含有割合が上記数値範囲であることにより、米糠の有する栄養素を好適に摂取することが可能になる。
<野菜粉末>
野菜粉末に用いる野菜としては、特に制限されず、公知の野菜を使用することができる。公知の野菜としては、例えばブロッコリー、ケール、人参、ゴーヤ、レンコン、南瓜、桑の葉、キャベツ、ほうれん草、大麦若葉、明日葉、大葉、アスパラガス、白菜、大根葉、セロリ、パセリ等が挙げられる。
【0018】
これらの中でも、緑黄色野菜であることが好ましい。また、緑黄色野菜の中でも、ブロッコリー、ケール、大麦若葉、明日葉であることが好ましい。
上記野菜粉末は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
野菜粉末の粒度は、特に制限されないが、160メッシュ以下であることが好ましく、115メッシュ以下であることがより好ましく、100メッシュ以下であることがさらに好ましく、80メッシュ以下であることがさらにより好ましい。なお、160メッシュ以下とは、160メッシュ以下の篩を通過することができる粒度であり、且つ160メッシュを超える篩を通過しない粒度であることを意味するものとする。通過することができる篩のメッシュ数が大きいほど、粒度が小さいことを意味する。上記メッシュは、JIS規格メッシュである。具体的には、旧JIS Z 8801に規定されている。
【0020】
野菜粉末は、通過することができる篩のメッシュ数が大きいほど、粒度を小さくするための粉砕時間が相対的に長くなる。そのため、作業効率の低下やコストの上昇につながりやすい。粒度が160メッシュ以下程度の野菜粉末を用いることにより、作業効率の向上やコストの低減にも寄与することができる。
【0021】
また、野菜粉末の粒度分布は、D50が1μm以上130μm以下で、D90が5μm以上260μm以下であることが好ましい。野菜粉末は、D50が6μm以上118μm以下で、D90が17μm以上248μm以下であることがより好ましく、D50が11μm以上107μm以下で、D90が29μm以上237μm以下であることがさらに好ましい。
【0022】
なお、D50、D90は、それぞれ、野菜粉末の粒子径に対する累積分布を測定したときにおける、中央粒子径、累積分布の下から90%に該当する粒子の粒子径を意味する。
野菜粉末の粒度分布の測定方法としては、例えば株式会社島津製作所社製のナノ粒子径分布測定装置(SALD-7500)を用いて測定することができる。具体的な測定方法については後述する。
【0023】
粉末食品組成物中の野菜粉末の含有割合は特に制限されないが、3質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましく、30質量%以上であることが最も好ましい。粉末食品組成物中の野菜粉末の含有割合は80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましく、50質量%以下であることが最も好ましい。
【0024】
粉末食品組成物中の野菜粉末の含有割合が上記数値範囲であることにより、野菜粉末の有する栄養素や食物繊維等を好適に摂取することが可能になる。
また、粉末食品組成物は、米糠と野菜粉末の含有割合の合計を100質量部とすると、野菜粉末を3質量部以上含有する。野菜粉末は、10質量部以上含有することが好ましく、20質量部以上含有することがより好ましく、30質量部以上含有することがさらに好ましい。また、80質量部以下含有することが好ましく、70質量部以下含有することがより好ましく、60質量部以下含有することがさらに好ましく、50質量部以下含有することが最も好ましい。野菜粉末の含有割合が上記数値範囲であることにより、米糠が含有する油分における酸化の進行を低く抑えつつ、米糠の有する栄養素を好適に摂取することが可能になる。
【0025】
<その他成分>
粉末食品組成物は、上記の成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その他の成分をさらに含有してもよい。例えば、乳化剤、甘味料、酸化防止剤、着色料、調味料、ビタミン類、ミネラル類、香料、着色料、増粘多糖類等の従来公知の食品添加物等、従来食品に添加される他の成分(食品添加物の他食品も含む)を含んでもよい。
【0026】
乳化剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレンステロール、アルキルグルコシド、リン脂質等の界面活性剤、ゼラチン溶液、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、結晶セルロース、粉末セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、トウモロコシデンプン、アルファー化デンプン、ゼラチン、カラギーナン、トラガント、トラガント末、マクロゴール等の高分子が挙げられる。これらは、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
甘味料としては、例えばサッカリン、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム、ステビアエキス、ステビオサイド、スクラロース、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルチン、ソウマチン、アスパルチルフェニルアラニンメチルエステル、メトキシシンナミックアルデヒド、トレハロース、エリスリトール、ソルビトール、パラチノース、パラチニット、キシリトール、マルトース、ラクチトール、フルクトース、還元パラチノース、グルコース、砂糖、三温糖、和三蜜糖、精製はちみつ、未精製はちみつ、還元麦芽糖水あめ、還元水飴、水飴、異性化糖(ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖)等が挙げられる。これら甘味剤は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
酸化防止剤としては、公知のものを広く使用することが可能であり、具体的にはビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(トコフェロール)、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、コーヒー豆抽出物(クロロゲン酸)、茶抽出物(カテキン)、ローズマリー抽出物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
着色料としては、公知のものを広く使用することが可能であり、具体的にはカラメル色素、クチナシ色素、アントシアニン色素、アナトー色素、パプリカ色素、紅花色素、紅麹色素、フラボノイド色素、コチニール色素、アマランス(赤色2号)、エリスロシン(赤色3号)、アルラレッドAC(赤色40号)、ニューコクシン(赤色102号)、フロキシン(赤色104号)、ローズベンガル(赤色105号)、アシッドレッド(赤色106号)、タートラジン(黄色4号)、サンセットイエローFCF(黄色5号)、ファストグリーンFCF(緑色3号)、ブリリアントブルーFCF(青色1号)、インジゴカルミン(青色2号)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
香料としても、公知のものを広く使用することが可能であり合成品や天然物由来のものを適宜使用すればよく、特に制限はない。
近年の健康志向の高まりから、食品添加物の含有量は小さいことが好ましい。粉末食品組成物中の食品添加物の含有量は、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、実質的に含有しないことがさらに好ましい。例えば、食品添加物としての酸化防止剤の含有量は、1質量%以下であることが好ましい。ここで、実質的に含有しないとは、不純物レベルで含有する態様を許容することを意味するものとする。
【0031】
<粉末食品組成物の形態>
粉末食品組成物の形態としては特に制限されず、例えば粉末状、フレーク状、顆粒状等が挙げられる。ここで、「粉末」とは、粒径が5mm以下の粉状の形態を意味するものとする。そのため、上記フレーク状や顆粒状の形態であっても、粒径が5mm以下であるものは粉末に含まれるものとする。すなわち、本発明の粉末食品組成物は、各成分の粒子が粉末状のまま混合された態様に限定されず、各成分の粒子がフレーク状や顆粒状に成形された態様を含むものとする。言い換えれば、粉末食品組成物には、フレーク状や顆粒状の形態も含まれるものとする。
【0032】
粉末食品組成物がフレーク状や顆粒状であることにより、各成分の混合状態を維持しやすくなる。また、粉末食品組成物の取り扱い性が向上する。
なお、フレーク状や顆粒状等に成形する際には、適宜、公知のバインダー等を使用してもよい。
【0033】
<粉末食品組成物の用途>
本実施形態の粉末食品組成物の用途としては、特に制限されず、一般食品や保健機能食品、特別用途食品等に使用することができる。また、保健機能食品としては、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等に使用することができる。
【0034】
粉末食品組成物の具体的な用途としては、例えば粉末飲料、粉末スープ等が挙げられる。粉末食品組成物を水等の液体に分散させることによって、飲料やスープとすることができる。
【0035】
粉末飲料としては、例えば青汁飲料、茶系飲料、スポーツ飲料、美容飲料、果汁飲料、炭酸飲料、アルコール飲料、清涼飲料等に使用することができる。
また、粉末食品組成物を、タブレット菓子、ゼリー類、スナック類、焼き菓子、揚げ菓子、ケーキ類、チョコレート、ガム、飴、グミ等の菓子類、スープ類、めん類、米飯類、シリアル等の原料に使用してもよい。
【0036】
<粉末食品組成物の作用及び効果>
本実施形態の粉末食品組成物の作用及び効果について説明する。
(1)米糠と野菜粉末の含有割合の合計を100質量部とすると、野菜粉末を3質量部以上含有する。野菜粉末を上記の割合で含有することにより、米糠が含有する油分における酸化の進行を低く抑えることができる。一般に、油分の酸化の進行を抑制するためには、酸化防止剤を添加することが考えられる。しかし、本実施形態の粉末食品組成物によれば、酸化防止剤の添加に比べて、油分の酸化の進行をより好適に抑えることができる。さらに、酸化防止剤の含有量を小さくする、もしくは酸化防止剤を含有しないようにすることができるため、酸化防止剤の含有量が大きいことに起因する味の低下を避けることができる。また、野菜粉末が有する栄養素や食物繊維等を摂取することが可能になる。
【0037】
(2)野菜粉末が、ブロッコリー、ケール、大麦若葉、及び明日菜のうち少なくともいずれか一種である。したがって、米糠が含有する油分における酸化の進行を好適に抑えることができる。
【0038】
(3)米糠は、粒径35μm以上の粒子の割合が75%以下である。したがって、粉末食品組成物を粉末飲料として用いた際に、口当たりを良好にすることができる。また、米糠の粒度分布が上記数値範囲であると、粒度分布が相対的に小さいため、米糠の表面積が相対的に大きくなって、米糠の油分は酸化されやすくなる虞がある。本実施形態の粉末食品組成物によれば、上記粒度分布の米糠においても酸化の進行を低く抑えることができる。
【0039】
(4)粉末食品組成物に含有される酸化防止剤の含有量が、1質量%以下である。したがって、酸化防止剤の含有量が大きいことに起因する味の低下を避けることができる。また、健康志向のニーズに適した粉末食品組成物を提供することが可能になる。
【0040】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0041】
・本実施形態の粉末食品組成物の用途は、食品に限定されない。例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品としても使用することができる。
・本実施形態において、粉末食品組成物を分散させるのは水に限定されない。例えばアルコール等、水以外の液体に分散させてもよい。
【実施例0042】
以下、本発明の構成、及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。
まず、米糠における油分の酸化状態を評価するために、加速試験を行った。加速試験の条件は、以下の方法により決定した。
【0043】
(加速試験の条件)
表1に示すように、米糠として、油分15質量%以下、粒径35μm以上の粒子の割合が10%以下の脱脂米糠A-1、及び油分15質量%以下、粒径35μm以上の粒子の割合が72%の脱脂米糠A-2を用意した。この脱脂米糠A-1、A-2をそれぞれ、複数のアルミパウチに一定量ずつ入れて密封し、55℃の条件でインキュベーターにて静置した。静置直後、1週間後、2週間後、3週間後の脱脂米糠A-1、A-2を、それぞれ参考例1~8として、過酸化物価(以下、POVともいう。)を測定した。なお、アルミパウチとは、アルミニウム箔層を有する包装材を意味する。アルミパウチとしては、例えばアルミラミネートパウチ、アルミ蒸着パウチ等を用いることができる。表1において、脱脂米糠A-1、A-2の右側の数字は、含有量(質量%)を意味する。
【0044】
【表1】
表1において、POVは、油脂中の過酸化脂質量を意味し、油脂1kg中の過酸化物によりヨウ化カリウムから遊離されるヨウ素量のミリ当量数で表される。米糠の油分の酸化が進行していると、POVが大きくなるため、POVを測定することによって、油分の酸化状態を評価することができる。
【0045】
POVの測定は、日本油化学会制定「基準油脂分析試験法(II)参考資料2.4-1996過酸化物価(クロロホルム法)」に基づいて行った。各脱脂米糠A-1、A-2をクロロホルムと酢酸(2:3)の滴定溶剤に溶かしたものを試料とし、窒素ガスを試料中に流して溶存酸素を追い出しながらヨウ化カリウム溶液を加えた。電位差滴定法により0.01mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液で遊離したヨウ素を滴定し、チオ硫酸ナトリウム溶液の滴定量からPOVを算出した。
【0046】
また、脱脂米糠A-1、A-2の粒径35μm以上の粒子の割合の測定は、レーザー回折・散乱式粒度分布計((株)セイシン企業社製、LMS-3000)を用いて、分散媒としてイソプロピルアルコールを使用し、レーザー回折・散乱法により測定した。
【0047】
表1の結果より、参考例4、8において、POVが最も大きくなっていた。そのため、加速試験の条件は、参考例4、8の条件、すなわち、試料をアルミパウチに一定量入れて密封し、55℃の条件でインキュベーターにて3週間静置することとした。以下では、参考例4を、比較例1とする。
【0048】
(野菜粉末の粒度分布)
野菜粉末の粒度分布は、以下の方法で測定した。
表2に示す野菜粉末B-1~B-6を、それぞれ2gずつ38gの水に分散させて、野菜粉末B-1~B-6の濃度が5質量%である分散液とした。この分散液を、少しずつ分散槽に添加した。株式会社島津製作所社製のナノ粒子径分布測定装置(SALD-7500)を用いて、サンプルの粒度分布を測定した。なお、屈折率は、1.70~0.20iの標準屈折率用を選択した。
【0049】
各野菜粉末B-1~B-6の種類、粒度、及び粒度分布について、表2の「野菜粉末の種類」欄、「粒度(メッシュパス)」欄、「D50(μm)」欄、「D90(μm)」欄にそれぞれ示す。
【0050】
【表2】
表2において、メッシュパスが150であるとは、150メッシュの篩を通過できる粒度を有していることを意味するものとする。
【0051】
表3~5に示す実施例1~15、及び、比較例1~5の粉末食品組成物を常法に従って各成分を混合することによって製造した。脱脂米糠は、表1に示すA-1、A-2を使用した。野菜粉末は、表2に示すB-1~B-6を使用した。なお、表3に示す実施例1の粉末食品組成物は、脱脂米糠A-1を60質量%、及び野菜粉末B-1を40質量%で構成されており、野菜粉末の含有割合は、40質量部である。
【0052】
(野菜粉末の種類、及び粒度分布による評価試験)
表3に示す野菜粉末を用いた実施例1~8の粉末食品組成物について、加速試験を行い、POVを測定した。
【0053】
【表3】
表3に示すように、実施例1~8では、野菜粉末の種類、及び粒度分布に関わらず、比較例1よりもPOVが低く抑えられていた。仮に、実施例1~8において、POVが全て脱脂米糠A-1、A-2に由来すると仮定し、脱脂米糠A-1、A-2の含有量を100質量%に換算したとしても、POVは、比較例1よりも低く抑えられていた。
【0054】
(野菜粉末の含有量による評価試験)
表4に示すように、野菜粉末としてB-1のブロッコリーマイクロパウダーを使用した。野菜粉末の含有量を変化させた実施例1、9~14の粉末食品組成物について、加速試験を行い、POVを測定した。
【0055】
【表4】
表4に示すように、野菜粉末の含有量が2質量%、1質量%である比較例2、3のPOVは、比較例1のPOVである61.2meq/kgよりも大きくなっていた。これに対し、野菜粉末の含有割合が3.3質量%以上である実施例1、9~14のPOVは、61.2meq/kgより小さかった。仮に、脱脂米糠A-1の重量割合を100質量%に換算しても、POVは、比較例1よりも低く抑えられていた。
【0056】
(酸化防止剤との比較試験)
酸化防止剤との比較試験では、各例の粉末食品組成物のスーパーオキシド消去活性(以下、SOSAともいう。)を揃えたうえで、POVを測定した。酸化防止剤は、SOSAの値が大きい材料であることが知られている。そのため、単純に野菜粉末と同程度含有させると、活性酸素が除去されることによって、野菜粉末よりもPOVが低くなることが予想される。しかし、酸化防止剤を野菜粉末と同程度含有させると、酸化防止剤自体の味によって、粉末食品組成物の味が低下する虞がある。また、健康志向のニーズによれば、酸化防止剤の含有量は小さいことが望ましい。そこで、この試験では、各例において、SOSAの値を揃えるように配合量を調整したうえで、POVを測定した。SOSAの測定は、電子スピン共鳴法ともいうESR法により測定することができる。具体的には、ヒポキサンチン(hypoxanthine)/キサンチンオキシダーゼ(xanthine oxidase)系で発生させたスーパーオキシド(O2-)をどの程度消去できるかをESR法で評価した。結果は、スーパーオキシド消去能を有する代表的な酵素であるスーパーオキシド・ディスムターゼ(SOD、superoxide dismutase)を対照とし、1単位のSODに相当するスーパーオキシド消去能を「1SOD単位」として表した。結果を表5に示す。
【0057】
【表5】
表5に示すように、酸化防止剤C-1、C-2としては、比較例4では、チャ抽出物を用いた。具体的には、チャ抽出物30質量%、クエン酸6質量%、その他食品素材64質量%からなる公知のチャ抽出物を使用した。また、比較例5では、L-アスコルビン酸100質量%のビタミンCを使用した。表5に示すように、実施例1、15では、比較例4、5よりもPOVが低く抑えられていた。
【0058】
以上の結果から、本発明の粉末食品組成物によれば、米糠が含有する油分における酸化の進行を低く抑えられることが確認された。また、酸化防止剤を含有していないため、酸化防止剤に起因する味の低下も抑制でき、健康志向のニーズにも適している。