(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009706
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】ポリオレフィン樹脂製網状シートの固定方法
(51)【国際特許分類】
B62B 5/00 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
B62B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113202
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】507109723
【氏名又は名称】株式会社丸石
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 大吾
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA01
3D050BB03
3D050DD03
3D050EE08
3D050EE15
3D050GG01
3D050KK11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】容易にカゴ台車にカバーを取り付け、又は取り外しができ、積載した荷物を簡単に保護できるシート固定方法を提供する。
【解決手段】本発明のシート固定方法は、スリーブと芯材とを備えた締結具1を用いて、ポリオレフィン樹脂製シートとポリオレフィン樹脂製ワイヤーとを積層させて成るポリオレフィン樹脂製網状シート2を挟持し、着脱自在にシートを固定するシート固定方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリーブと芯材とを備えた締結具を用いて、ポリオレフィン樹脂製網状シートを挟持し、着脱自在にシートを固定するシート固定方法。
【請求項2】
ポリオレフィン樹脂製網状シートがカゴ台車用カバーである、請求項1記載のシート固定方法。
【請求項3】
ポリオレフィン樹脂製網状シートが、
ポリエチレン又はポリプロピレンを主たる構成成分とする樹脂組成物から構成され、かつ、ポリオレフィン樹脂製シートの長手方向と略直交する方向にポリオレフィン樹脂製ワイヤーを積層させ、接合した網状シートである請求項1又は2に記載のシート固定方法。
【請求項4】
締結具が、
支持基板上に一列に配列された複数のスリーブと、
他の支持基板上に一列に配列された複数の芯材と、
を備える請求項1から3いずれか1項に記載のシート固定方法。
【請求項5】
請求項1から4いずれか1項に記載のシート固定方法によりシートが固定されたカゴ台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン樹脂を主たる構成成分とする網状シートの固定方法に関する。特に、本発明は、物流倉庫などにおいて多数の荷物を収容して移動させるカゴ台車に用いられるカゴ台車用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、物流の現場においては、多数の荷物の運搬および一時的な保管のためにカゴ台車が用いられている。カゴ台車は、前面は積み卸し用に開放されており、落下防止用にバーが横架される程度であり、また各パネルの格子部分も目が粗いため、作業者が運搬台車から離れた隙に積荷の一部が抜き取られる、又は、カゴ台車から収容している荷物が落下する、荷崩れする、などの問題があった。
【0003】
従来から、上記問題を解決するために、運搬台車の全体を上からスリット部を広げた袋状のカバー本体を被せて下まで引っ張って覆う方法(特許文献1)と、カゴ台車に設けられた各パネルの格子部分を樹脂製のメッシュ生地と補強部材とで覆い、当該メッシュ生地を連結具を用いてカゴ台車に固定し、カゴ台車の格子をカバーする方法(特許文献2)と、が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-218985号公報
【特許文献2】特開2020-059409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたカゴ台車用カバーは、カゴ台車用カバーをカゴ台車の上方から被せて装着する必要が生じるため、荷物の多い少ないに関わらず、カバー装着に手間を要するものである。また、スリット部を固定するために、多数のファスナーを開閉しなければならなかった。
また、上記特許文献2に記載されたカゴ台車用カバーは、台車の格子開口部を樹脂製のメッシュ生地を用いて覆っているものの、金属材や木材などの剛性を有する補強材を使用しており、汎用性に乏しく、より軽量なカバーが求められていた。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、ポリオレフィン樹脂を主たる構成成分とする網状シートの固定方法を提供することを目的とする。本発明に係る当該網状シート固定方法を用いることで、梱包したい物品、柵、カゴ台車などに網状シートを簡単に取り付け又は取り外しを行うことができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]スリーブと芯材とを備えた締結具を用いて、ポリオレフィン樹脂製網状シートを挟持し、着脱自在にシートを固定するシート固定方法。
【0008】
[2]ポリオレフィン樹脂製網状シートが、カゴ台車用カバーである、[1]記載のシート固定方法。
【0009】
[3]ポリオレフィン樹脂製網状シートが、
ポリエチレン又はポリプロピレンを主たる構成成分とする樹脂組成物から構成され、かつ、ポリオレフィン樹脂製シートの長手方向と略直交する方向にポリオレフィン樹脂製ワイヤーを積層させ、接合した網状シートである[1]又は[2]記載のシート固定方法。
【0010】
[4]締結具が、
支持基板上に一列に配列された複数のスリーブと、
他の支持基板上に一列に配列された複数の芯材と、
を備える[1]から[3]いずれか1項に記載のシート固定方法。
【0011】
[5][1]から[4]いずれか1項に記載のシート固定方法によりシートが固定されたカゴ台車。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スリーブと芯材とを備えた締結具を用いて、ポリオレフィン樹脂製網状シートを挟持し、着脱自在にシートを固定することができる。本発明のシート固定方法を用いれば、容易にカゴ台車にカバーを取り付け又は取り外しができ、積載した荷物を簡単に保護できる。
また、ポリオレフィン樹脂製シートとポリオレフィン樹脂製ワイヤーとを積層させて成るポリオレフィン樹脂製網状シートは、従来の樹脂製シートと比較しても極めて軽量である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るシート固定方法の概略図である。
【
図4】ポリオレフィン樹脂製網状シートの断面構造の概略図である。
【
図6】カゴ台車へのシートを固定した際の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るポリオレフィン樹脂製網状シートの固定方法の実施形態を、図面を参照して説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。また、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。
【0015】
(網状シートの固定方法の概要)
本発明に係るシート固定方法は、柵や台車に係る格子の開口部又は開放部を覆うために設置されるポリオレフィン樹脂製網状シートの固定方法である。
図1を参照して、本発明の網状シートの固定方法について説明する。
図1は、本発明に係るシート固定方法の概略図であり、1は締結具、2はポリオレフィン樹脂製網状シート、3は格子枠、を示している。
【0016】
本発明の網状シートの固定方法は、締結具1によりポリオレフィン樹脂製シートとポリオレフィン樹脂製ワイヤーとを積層させて成るポリオレフィン樹脂製網状シート2を挟持し、着脱自在にシートを固定する方法である。
本実施形態においては、ポリオレフィン樹脂製網状シート2を格子枠3に巻き、折り返した後に、締結具1の芯材をポリオレフィン樹脂製網状シート2の開口部23に貫通させ、互いに対向し合うスリーブと嵌合させることにより、複数枚の当該シートを挟持し、固定している。この締結具1は格子枠3の幅方向両端部にそれぞれ設けることができる。
【0017】
上記方法によりシートを固定することにより、シートに穴をあけることなく柵の開口部をシートで覆うことができる。また、シートを格子枠3の距離に応じて加工する必要がない為、現場での作業時間短縮に寄与できる。
【0018】
<締結具1>
図2は、
図1のシート固定方法の概略図におけるリベット締結部分の拡大斜視図であり、11は網状シート固定ユニット、111は締結具に係る芯材、121は締結具に係る貫通孔(スリーブ)、を示している。
締結具1はポリオレフィン樹脂製網状シート2を挟持し、着脱自在にシートを固定するために用いる部品であり、締結具1は少なくとも2つの部材(芯材111、スリーブ121)から構成されている。
【0019】
本発明に係る締結具1は、ポリオレフィン樹脂製網状シート2の開口部23に芯材111を貫通させ、互いに対向し合うスリーブ121と嵌合させることにより、複数枚の当該シートを挟持し、着脱自在にシートを固定することができるものであれば特に限定されず、例えば、リベット、ボルト、ネジなどの公知公用の締結具1を用いることができる。
【0020】
なお、締結具1の素材については、特に限定されるものではないが、軽量化の観点からポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロンなどの樹脂材料を用いることが好ましいが、金属や木材を使用することもできる。
【0021】
また、本発明において、シートを固定するための締結具1を複数用いてポリオレフィン樹脂製網状シート2を挟持して固定することができるが、
図2に示したように、支持基板上に締結具1を一列に複数配置したポリオレフィン樹脂製網状シート固定ユニット11を用いても良い。
締結具1の芯材111を支持基板上に一列になるように配列し、前記芯材111をポリオレフィン樹脂製網状シート2の開口部23に貫通させ、互いに対向し合う一方の支持基板上に設けたスリーブ121と嵌合させることにより、複数の締結具1を使用することなく、ワンステップにより複数枚の当該シートを挟持し、固定できる。
【0022】
ポリオレフィン樹脂製網状シート固定ユニット11に使用する支持基板の材料については、特に限定されるものではないが、樹脂、木材、金属などを用いることができる。
【0023】
<ポリオレフィン樹脂製網状シート2>
図3を参照して、本発明に係るポリオレフィン樹脂製網状シート2の構造について説明する。
図3は、本発明に係るポリオレフィン樹脂製網状シート2の概略図であり、21はポリオレフィン樹脂製シート、22はポリオレフィン樹脂製ワイヤー、23は開口部、を示している。
【0024】
ポリオレフィン樹脂製網状シート2は、ポリオレフィン樹脂製シート21とポリオレフィン樹脂製ワイヤー22とを積層させることにより構成されている。
ポリオレフィン樹脂製網状シート2は、ポリオレフィン樹脂製シート21と、ポリオレフィン樹脂製ワイヤー22と、を配向方向が略直交するように積層し、接着又は溶着させることにより作製できる。
また、ポリオレフィン樹脂製網状シート2は、ポリオレフィン樹脂から成るフラットヤーンを略直行に織込んで作製されたポリオレフィン樹脂製クロスを用いることもできる。
【0025】
このとき、
図3に示すように、複数のポリオレフィン樹脂製シート21を一定の間隔をあけて平行に並べ、それをポリオレフィン樹脂製ワイヤー22の長手方向が略直交するように配置し積層させる。これにより
図3に示すポリオレフィン樹脂製網状シート2を作製することができる。
【0026】
また、ポリオレフィン樹脂製シート21の一部をポリオレフィン樹脂製ワイヤー22と略平行方向に配置し積層させても良い。ポリオレフィン樹脂製シート21の一部をポリオレフィン樹脂製ワイヤー22と平行に配置することにより、ポリオレフィン樹脂製網状シート2の縦及び横方向に対する引張強度を飛躍的に向上させることができるとともに、ポリオレフィン樹脂製網状シート2の耐久性を向上させることができる。
【0027】
ポリオレフィン樹脂製ワイヤー22のみで網状シートを構成した場合には、拡幅方向に対する引張強度が低いために、網状シートの強度が低下してしまう。したがって、本発明に係るポリオレフィン樹脂製網状シート2は、ポリオレフィン樹脂製ワイヤー22とポリオレフィン樹脂製シート21とを積層させ組み合わせることにより、拡幅方向に対する引張強度を向上させることができ、柵やカゴ台車の格子部分のカバーに使用できる耐久性を確保することができる。
【0028】
ポリオレフィン樹脂製シート21とポリオレフィン樹脂製ワイヤー22とを接着する方法としては、ポリオレフィン樹脂用接着剤、熱プレス、熱ラミネートなど公知公用の方法を用いることができる。
【0029】
以下に、
図4を参照して、ポリオレフィン樹脂製網状シート2の層構成について説明する。
図4は、ポリオレフィン樹脂製網状シート2の断面構造を模式的に表した図面であり、21はポリオレフィン樹脂製シート、21aは第1のポリオレフィン樹脂製シート、21bは第2のポリオレフィン樹脂製シート、22はポリオレフィン樹脂製ワイヤー、23は開口部、を示している。
【0030】
(ポリオレフィン樹脂製シート21)
ポリオレフィン樹脂製シート21は、ポリオレフィン樹脂から成るフラットヤーンを織り込んだ後、織り込まれフラットヤーンを積層し、接着又は溶着することにより作製される。ポリオレフィン樹脂製シート21を構成する前記フラットヤーンの、厚さや幅については特に限定されないが、シートの強度を向上させ、緻密なシートを得るためには厚さ1mm以下、幅5mm以下である事が好ましい。
【0031】
本発明に係るポリオレフィン樹脂製網状シート2を作製するために、ポリオレフィン樹脂製シート21は幅1mm以上30mm以下に裁断し使用する。
【0032】
ポリオレフィン樹脂シートの材料としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどを用いることができる。また、ポリオレフィン樹脂シートには、合成繊維を絡み合わせた素材を使用することもでき、絡み合わせる合成繊維の種類や長さなどによって当該シートの強度を向上させることができる。例えば、合成繊維を構成する樹脂として、ポリエチレンやポリエステルなどのポリオレフィン系樹脂、ポリアミド、およびこれらの重合体等を用いることができる。例えば、紡糸性の高いポリプロピレン、ポリプロピレンとα-オレフィンとの共重合体、ポリエチレンレテフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン6、或いはナイロン66等を用いると好適である。
【0033】
ここでポリオレフィン樹脂シートは、複数枚を積層させて用いることができる。例えば、第1のポリオレフィン樹脂シートの上に、ポリオレフィン樹脂製ワイヤー22を積層させ、さらにその上に第2のポリオレフィン樹脂シートを積層させることができる。当該積層構造を用いることにより、中間層のポリオレフィン樹脂製ワイヤー22をより強固にシートに固定することができるため、ポリオレフィン樹脂シート全体の強度を向上させることができる。
【0034】
第2のポリオレフィン樹脂シートの材料としては、第1のポリオレフィン樹脂シートと同一の材料を用いることが好ましいが、異種の材料を選択することもできる。
【0035】
(ポリオレフィン樹脂製ワイヤー22)
ポリオレフィン樹脂製ワイヤー22は、ポリオレフィン製の延伸フィルムを一方向に割繊し、かつ、拡幅させることにより作製する。
割繊され拡幅された一軸配向ポリオレフィン樹脂製フィルムとポリオレフィン樹脂製シート21と、を配向方向が略直交するように積層させることによりポリオレフィン樹脂製網状シート2を得ることができる。
ポリオレフィン樹脂製ワイヤー22の線幅は、割繊する密度を変更することにより任意の線幅に調整することができるが、強度を確保する観点から0.5mm以上3mm以下の線幅が好ましい。また、ポリオレフィン樹脂製ワイヤー22の厚さは、特に限定されるものではないが、強度を確保する観点から0.1mm以上3mm以下の厚さが好ましい。
【0036】
<カゴ台車>
図5を参照して、本発明に係るカゴ台車について説明する。なお、
図5に示すカゴ台車は、カゴ台車の一例を示すものであり、カゴ台車の構造を限定するものではない。
図5は、カゴ台車を示した図面であり、Rはカゴ台車、51はキャスタ、52は底板、53は後部側柵、54は側柵、55はベルト、56はヒンジ部、57は縦材、58は横材、を示している。
【0037】
カゴ台車Rは、底面にキャスタ51を有する底板52に、後部側柵53と一対の側柵54とが設けられ、開放側には側柵54が設けられておらず、ベルト55により固定されている。
【0038】
カゴ台車Rの後部側柵53と一対の側柵54とは、ヒンジ部56を介して鉛直軸心廻りに枢動自在に連結されており、平面視においてコ字状となる。後部側柵53と一対の側柵54は、外側枠体の中に、それぞれ縦材57と横材58を交差させて縦横に延びる格子枠3が一体に固定された公知構成からなっている。
【0039】
<網状シートのカゴ台車Rへの固定方法>
図6を参照して、本発明に係るポリオレフィン樹脂製網状シート2を台車へ固定するための方法について説明する。本発明に係る網状シートの固定方法は、基本的には
図1及び
図2を用いて説明した方法と同じである。
なお、
図6に示す固定方法はシートの取り付け方法の一例を示すものであり、当該取り付け箇所に限定されるものではなく、後部側柵53や側柵54に当該シートを固定することもできる。
【0040】
図6は、ポリオレフィン樹脂製網状シート2を用いて、カゴ台車Rの開放側を覆う取り付け方法を例示している。
開放側に位置する側柵の枠54a、54bにポリオレフィン樹脂製網状シート2を巻き、折り返した後に、締結具1の芯材111をポリオレフィン樹脂製網状シート2の開口部23に貫通させ、互いに対向し合うスリーブ121と嵌合させることにより、複数枚の当該シートを挟持し、固定する。
【0041】
上記方法によりシートを固定することにより、ポリオレフィン樹脂製網状シート2に穴をあけることなくカゴ台車Rの開放側をシートで覆うことができる。
【符号の説明】
【0042】
1 締結具
2 ポリオレフィン樹脂製網状シート
3 格子枠
11 網状シート固定ユニット
21 ポリオレフィン樹脂製シート
21a 第1のポリオレフィン樹脂製シート
21b 第2のポリオレフィン樹脂製シート
22 ポリオレフィン樹脂製ワイヤー
23 開口部
51 キャスタ
52 底板
53 後部側柵
54 側柵
54a、54b 開放側に位置する側柵の枠
55 ベルト
56 ヒンジ部
57 縦材
58 横材
111 芯材
121 スリーブ
R カゴ台車