(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097081
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】スイッチ装置
(51)【国際特許分類】
H01H 1/60 20060101AFI20230630BHJP
H01H 1/36 20060101ALI20230630BHJP
H01H 13/12 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
H01H1/60
H01H1/36 Z
H01H13/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213232
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000222934
【氏名又は名称】東洋電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】高野 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】武井 勇佐
(72)【発明者】
【氏名】中川 暁
【テーマコード(参考)】
5G051
5G206
【Fターム(参考)】
5G051JA13
5G051QA01
5G206AS19K
5G206AS27K
5G206FS15K
5G206HW14
5G206HW33
5G206JU64
5G206KS24
5G206KS33
5G206KS38
5G206KS41
5G206KU47
(57)【要約】
【課題】摺動する可動接点を有するスイッチ装置において潤滑剤が不足すること。
【解決手段】本発明のスイッチ装置は、固定配置され、摺動面を有する固定接点12と、摺動面に対して往復摺動する可動接点22と、可動接点22の往復摺動に伴い可動接点22の摺動方向に沿って可動接点22と共に固定接点12上を往復移動する移動部材23と、を備え、移動部材23は、可動接点22から離間して設けられ、摺動面に対して近接して配置され、固定接点12上の塗布された潤滑剤を均すよう構成されている。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定配置され、摺動面を有する固定接点と、
前記摺動面に対して往復摺動する可動接点と、
前記可動接点の往復摺動に伴い、当該可動接点の摺動方向に沿って当該可動接点と共に前記固定接点上を往復移動する移動部材と、を備え、
前記移動部材は、前記可動接点から離間して設けられ、前記摺動面に対して近接して配置され、前記固定接点上に塗布された潤滑剤を均すよう構成されている、
スイッチ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチ装置であって、
前記移動部材は、前記可動接点の前記摺動方向上とは異なる位置を移動するよう配置されている、
スイッチ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のスイッチ装置であって、
前記移動部材は、その移動軌跡の一部が、前記可動接点の摺動軌跡上及び当該摺動軌跡の延長線上に対して重なるよう配置されている、
スイッチ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のスイッチ装置であって、
前記可動接点は、前記摺動方向に対して直交する方向に複数が並列に配置されており、
前記移動部材は、並列方向に相互に隣り合って配置された各前記可動接点の前記摺動方向上の間の位置を移動するよう配置されている、
スイッチ装置。
【請求項5】
請求項3に記載のスイッチ装置であって、
前記移動部材は、前記可動接点の前記摺動方向上を相互に挟む位置をそれぞれ移動するよう配置されている、
スイッチ装置。
【請求項6】
請求項2に記載のスイッチ装置であって、
前記移動部材は、前記移動部材と前記可動接点との距離が前記可動接点の移動距離よりも短くなるように配置されている、
スイッチ装置。
【請求項7】
請求項2に記載のスイッチ装置であって、
前記移動部材は、移動方向側に位置する面のうち前記可動接点側とは反対側に位置する面に、前記移動部材の前記移動方向に対して傾斜した傾斜面を有する、
スイッチ装置。
【請求項8】
請求項7に記載のスイッチ装置であって、
前記移動部材は、前記移動方向側に位置する面のうち前記可動接点側とは反対側に位置する面に、当該移動部材の前記移動方向に対して前記可動接点が隣接している側にのみ前記傾斜面を有する、
スイッチ装置。
【請求項9】
請求項4に記載のスイッチ装置であって、
前記移動部材は、移動方向側に位置する面のうち前記可動接点側とは反対側に位置する面が、前記移動方向に直交する方向の中央側が最も突出した凸状に形成されている、
スイッチ装置。
【請求項10】
請求項2に記載のスイッチ装置であって、
前記移動部材は、移動方向側に位置する面のうち前記可動接点側に位置する面に、移動方向に対して略直交する平坦面を有する、
スイッチ装置。
【請求項11】
請求項2に記載のスイッチ装置であって、
前記固定接点の端部に壁面が形成されており、
前記移動部材は、往復移動することにより、移動方向側に位置する面のうち前記可動接点側とは反対側に位置する面が、前記壁面に近接あるいは当接するよう構成されている、
スイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動接点を有するスイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両や電気機器など様々な装置に搭載されるスイッチ装置として、固定接点に対して可動接点が摺動することで接触する構造のものがある。このようなスイッチ装置では、固定接点と可動接点との間にグリスを塗布する必要がある。例えば、特許文献1に記載のスイッチ装置では、可動接点の接点部にグリスを貯蔵するグリス溜を設けると共に、当該グリス溜にグリスを外部に染み出させる孔部を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載のスイッチ装置では、可動接点の接点部に形成した孔部から適切な量のグリスが染み出るかが不明であり、また、染み出た後のグリスが可動接点の摺動により固定接点上から排除されるおそれがある。その結果、摺動する可動接点を有するスイッチ装置においてグリスが不足する、という問題が生じる。
【0005】
このため、本発明の目的は、上述した課題である、摺動する可動接点を有するスイッチ装置において潤滑剤が不足する、ということを解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態であるスイッチ装置は、
固定配置され、摺動面を有する固定接点と、
前記摺動面に対して往復摺動する可動接点と、
前記可動接点の往復摺動に伴い、当該可動接点の摺動方向に沿って当該可動接点と共に前記固定接点上を往復移動する移動部材と、を備え、
前記移動部材は、前記可動接点から離間して設けられ、前記摺動面に対して近接して配置され、前記固定接点上に塗布された潤滑剤を均すよう構成されている、
という構成をとる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上のように構成されることにより、摺動する可動接点を有するスイッチ装置において潤滑剤の不足を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1の実施形態におけるスイッチ装置の構成を示す断面図である。
【
図2A】
図1に開示したスイッチ装置の接点構造を示す拡大図である。
【
図2B】
図1に開示したスイッチ装置の接点構造を示す拡大図である。
【
図3】
図1に開示したスイッチ装置の可動部の構成を示す図である。
【
図4】
図1に開示したスイッチ装置の動作を示す図である。
【
図5】
図1に開示したスイッチ装置の動作を示す図である。
【
図6】
図1に開示したスイッチ装置の接点構造の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<実施形態1>
本発明の第1の実施形態を、
図1乃至
図6を参照して説明する。
図1乃至
図3は、スイッチ装置の構成を説明するための図であり、
図4乃至
図5は、スイッチ装置の動作を説明するための図である。
図6は、スイッチ装置の変形例を示す図である。
【0010】
[構成]
本発明におけるスイッチ装置は、所定の機器のオンオフを行うためのスイッチ装置である。例えば、本実施形態では、車両に搭載されたブレーキランプをオンオフするためのスイッチ装置を一例に挙げて説明する。この場合、スイッチ装置は、操作者によりブレーキペダルが踏まれると、非接触状態である可動接点が摺動することで固定接点に対して接触状態となり、これによりスイッチ装置がオン状態となり、ブレーキランプが点灯される。但し、スイッチ装置は、車両に搭載されるスイッチ装置に限らず、いかなるスイッチ装置であってもよい。
【0011】
図1は、スイッチ装置の全体構成を示す図であり、スイッチ装置の一部を切除した断面図である。この図に示すように、スイッチ装置は、固定部10と可動部20とを有しており、可動部20が固定部10に対して、
図1の左右方向に対応する摺動方向に往復移動することで、スイッチがオンオフとなるよう構成されている。
【0012】
図2は、
図1に示した固定部10と可動部20からなるスイッチ装置の接点構造の拡大図である。この図に示すように、まず、スイッチ装置の固定部10は、固定基部11と、固定接点12と、固定壁部13と、を備える。固定基部11は平面形状であり、表面は非接点面で形成されている。そして、この固定基部11とほぼ同一平面上に位置する当該固定基部11の延長上には、平面形状の固定接点12が形成されており、表面は接点面で形成されている。なお、以下では、固定基部11から固定接点12に向かう方向、つまり
図2における左側から右側に向かう矢印Y1で示す方向をスイッチがオンとなる方向として「オン方向」と呼び、固定接点12から固定基部11に向かう方向、つまり
図2における右側から左側に向かう矢印Y2に示す方向をスイッチがオフとなる方向として「オフ方向」と呼ぶこととする。そして、固定壁部13は、固定接点12のオン方向Y1の端部に位置し、固定接点12の接点面と略直交して立設する壁面で形成されている。
【0013】
なお、固定基部11と固定接点12とで形成される表面は、後述するように可動接点22がオン方向Y1及びオフ方向Y2に往復摺動することとなる。このため、固定基部11と固定接点12との表面を、摺動面と呼ぶこととする。また、固定基部11と固定接点12との表面である摺動面には、後述する
図4の符号Gに示すように、潤滑剤であるグリスGが塗布されることとなる。
【0014】
図2Aに示すように、スイッチ装置の可動部20は、可動基部21と、可動接点22と、移動部材23と、を備える。可動基部21は、上述した固定基部11及び固定接点12の上方に位置して配置されており、固定基部11及び固定接点12の表面に対して所定の距離をあけて、上述したオン方向Y1とオフ方向Y2とに往復移動するよう構成されている。そして、可動基部21は、固定基部11及び固定接点12の表面に対向する面において、可動接点22と移動部材23とを支持して備えている。具体的に、可動基部21は、一端側である固定基部11側の位置で可動接点22を支持し、他端側である固定接点12側の位置で移動部材23を支持している。
【0015】
可動接点22は、所定の長さを有する板バネ部材で形成されており、その一端が、可動基部21の一端側である固定基部11側に連結されており、その他端側に自由端である接点部が形成されている。具体的に、可動接点22は、後述する
図3左図に示すように、一端側が可動基部21に連結される所定の長さの本体部22Aと、当該本体部22Aの他端に位置する接点部22Bと、で構成されており、当該接点部22Bは、固定基部11及び固定接点12を摺動するように配置されている。そして、可動接点22の本体部22Aは、
図2Aの左側から右側に向かうオン方向Y1において、可動基部21に連結された一端から他端に向かうにつれて、上方から下方へと斜めに延びるよう配置されており、他端に位置する接点部22Bは固定基部11及び固定接点12で形成される摺動面に接触することとなる。このため、上述したように可動基部21が往復移動すると、可動接点22の接点部22Bが、固定基部11及び固定接点12の表面である摺動面を往復摺動することとなる。なお、可動接点22の接点部22Bは、略円弧状に形成されており、円弧状の外表面が固定基部11及び固定接点12の摺動面に接触して摺動することとなる。
【0016】
ここで、
図2Aに示す可動部20を下面側から見た図、つまり、固定基部11及び固定接点12と対向する面側から見た図を、
図3に示す。
図3左図は、可動部20の斜視図であり、
図3右図は可動部20の平面図である。なお、
図3右図における上下方向は、可動部20の往復移動方向(往復摺動方向)であるため、上方向矢印はオン方向Y1、下方向矢印はオフ方向Y2を示していることとする。
【0017】
図3に示すように、可動接点22は、可動基部21に複数設けられている。具体的には、可動部20の往復移動(摺動)方向Y1,Y2に対して直交する方向に、複数の可動接点22が並列に配置されている。
図3の例では、4つの可動接点22が設けられており、
図3右図の一点鎖線で示すように、各可動接点22自体が平行に延びるよう配置されている。このため、各可動接点22の摺動方向Y1,Y2つまり摺動軌跡とその延長線は、すべて平行に位置することとなる。なお、
図3においては、全ての可動接点22の本体部22A長さが同一の長さに形成されていることで、接点部22Bが摺動方向Y1,Y2において同一位置に位置して並列に配置されている場合を例示しているが、本体部22Aの長さが異なるなどの理由により各接点部22Bの位置が摺動方向Y1,Y2において異なっていてもよく、この場合、可動接点22全体が並列に配置されていると言える。
【0018】
移動部材23は、
図2A及び
図3に示すように、可動基部21の他端側、つまり、固定接点12側の端部に設けられている。移動部材23は、可動基部21から下方に向かって、つまり、固定基部11及び固定接点12で形成される摺動面に向かって突出する突出部材にて形成されている。このとき、移動部材23は、固定基部11及び固定接点12で形成される摺動面に対して近接するよう突出して形成されている。但し、移動部材23は、摺動面に接触するまで突出して形成されていてもよい。
【0019】
また、移動部材23は、
図3に示すように、移動部材23は、可動接点22の他端側である接点部から離間して設けられている。つまり、可動接点22は、その他端側である接点部が移動部材23にまで届かず接触しない長さに形成されており、移動(摺動)方向に沿って移動部材23と所定の距離をあけた位置関係となる。具体的に、
図2Bに示すように、移動部材23と可動接点22との距離D1は、可動接点22の接点部22Bが固定基部11及び固定接点12の表面を往復移動する距離D2よりも短くなるよう形成されている。つまり、移動部材23と可動接点22との距離D1は、スイッチ装置の可動部20のストローク量よりも短くなるよう形成されている。そして、移動部材23と可動接点22とは、可動基部21に支持されているため、当該可動基部21の移動により常に一定の距離をあけて移動することとなる。このため、上述したように可動接点22の接点部が固定基部11及び固定接点12で形成される摺動面を往復摺動する際には、当該可動接点22の接点部の位置よりもさらに延伸側であるオン方向Y1において、移動部材23が往復移動することとなる。このとき、移動部材23の突出端は、固定基部11及び固定接点12で形成される摺動面に近接しているため、往復移動により摺動面に塗布されたグリスGを均すこととなる。加えて、移動部材23と固定接点12との間で均されたグリス、および後述するように摺動方向に対して移動部材23の側方に筋状に盛られた状態となったグリスの上を、可動接点22の接点部22Aがより確実に摺動可能となるので、グリス切れ等の不具合を抑制することができる。
【0020】
また、移動部材23は、可動基部21に複数設けられている。具体的には、
図3右図の可動部20の往復移動(摺動)方向Y1,Y2に対して直交する方向に、複数の移動部材23が並列に配置されている。
図3の例では、6つの移動部材23が設けられている。また、各移動部材23は、可動接点22の摺動方向上とは異なる位置を移動するよう配置されている。つまり、各移動部材23は、その移動軌跡の中心線23Lが、可動接点22の摺動軌跡の中心線22L上及び当該摺動軌跡の延長線の中心線22L上とは異なるよう配置されている(摺動軌跡の中心線と摺動軌跡の延長線上の中心線とは重なるため、いずれも22Lとする)。例えば、
図3右図において、並列方向の内部側に位置する符号23bに示す移動部材23は、並列方向に相互に隣り合って配置された符号22a,22bに示す各可動接点22の一点鎖線で示す摺動方向上の間の位置を、二点鎖線で示すように移動するよう配置されている。また、
図3右図において、並列方向において端側に位置する符号23aに示す移動部材23は、並列方向に相互に隣り合って配置された符号23bに示す他の移動部材23と共に、符号22aに示す可動接点22の一点鎖線で示す摺動方向上を相互に挟む位置をそれぞれ移動するよう配置されている。
【0021】
また、
図3に示すように、移動部材23の移動方向側に位置する面は、以下のように形成されている。まず、移動部材23の
図3右図に示す下向きの面、つまり、可動接点22側の面は、移動方向に対して略直交する平坦面を有するよう形成されている。このため、移動部材23がオフ方向Y2つまり可動接点側の方向に移動する際には、後述するように平坦面でグリスGを押し出すよう機能する。
【0022】
一方で、移動部材23の
図3右図に示す上向きの面、つまり、可動接点22側とは反対側の面は、移動方向に対して傾斜する傾斜面を有するよう形成されている。具体的に、
図3右図の符号23bに示すような並列方向の内部側に位置する移動部材23の可動接点側とは反対側の面は、移動方向に直交する幅方向における中央付近が尖った略凸状に形成されている。一例として、
図3右図における並列方向の内部側に位置する移動部材23bを挙げると、二点鎖線が位置する幅方向における中央側が最も尖った略凸状に形成されている。そして、移動部材23bは、二点鎖線で示す移動方向に対して両側方にそれぞれ可動接点22a,22bが隣接しており、当該移動部材23の上向きの面は、幅方向の中央付近を境に、両端側にそれぞれ向かって傾斜した傾斜面が形成されていることとなる。さらに換言すると、移動部材23bの上向きの面は、幅方向において、中央付近から両端側に向かって徐々に幅広となるテーパー形状に形成されている。また、並列方向の端側に位置する移動部材23aは、移動方向に対して一側方にしか可動接点22aが隣接しておらず、当該可動接点22aが隣接している側のみ幅方向の中央付近から端側に向かって傾斜した傾斜面が形成されていることとなる。つまり、移動部材23aの上向きの面は、幅方向における片側のみが、中央付近から端側に向かって徐々に幅広となるテーパー形状に形成されている。移動部材23は、上述したように形成されていることにより、オン方向Y1つまり可動接点22側とは反対方向に移動する際には、後述するように傾斜面でグリスGを掻き分けることとなり、掻き分けられたグリスGが各移動部材23間から可動接点22側に移動されることとなる。
【0023】
また、移動(摺動)方向Y1,Y2に位置する移動部材23の幅は、可動接点22の幅と一部が重なるような幅となっていることが好ましい。つまり、移動部材23の移動軌跡の一部が、可動接点22の摺動軌跡上及び当該摺動軌跡の延長線上に対して重なるよう配置されている。このように、移動部材23の移動軌跡と可動接点22の摺動軌跡とは一部が重なり、一部が重なっていないので、重なっていない部分では移動部材23の移動後に可動接点22側に筋状のグリスが残ることとなり、より確実に可動接点22の接点部22Bがグリス上を摺動可能となる。
【0024】
[動作]
次に、上述したスイッチ装置の動作を、主に
図4乃至
図5を参照して説明する。
図4は、スイッチ装置の固定部10及び可動部20を側方から見た概略図であり、
図5は、可動部20を、摺動面側から見た図である。
【0025】
まず、
図4の符号A1に示すように、固定基部11及び固定接点12で形成される摺動面には、一様にグリスGが塗布されていることとする。そして、
図4の符号A1では、可動接点22の接点部が固定基部11上に位置しており、スイッチ装置はオフ状態である。このとき、可動接点22の接点部よりもオン方向Y1である固定接点12側に位置する移動部材23は、固定接点12上に近接して位置しているため、グリスGを平坦に均すよう機能している。
【0026】
その後、
図4の符号A2に示すように、可動基部21が図の右方向、つまり、オン方向Y1に移動すると、可動接点22の接点部が固定基部11及び固定接点12の表面である摺動面を摺動し、固定接点12上に位置することとなり、スイッチ装置はオン状態となる。そして、可動接点22と共に移動部材23も固定接点12上を近接したまま移動することとなり、摺動面上のグリスGを平坦に均すこととなる。このとき、可動接点22の摺動と移動部材23の移動により、グリスGが移動方向つまりオン方向Y1に押し出される場合もあり、例えば、移動方向側にグリス溜G1が形成される場合もありうる。但し、移動部材23の移動方向側の面、つまり、オン方向Y1側の面には、上述したように傾斜面が形成されているため、かかる傾斜面でグリスGを掻き分けることとなる。すると、
図5左図の矢印Y3に示すように、移動部材23の移動に伴い掻き分けられたグリスGが、各移動部材23間から可動接点22側に逆流することにもなる。このため、摺動面上からグリスGが押し出されることを抑制することができ、摺動面上にグリスGが塗布されたままの状態を維持することができる。
【0027】
その後、
図4の符号A3に示すように、さらに可動基部21が図の右方向、つまり、オン方向Y1に移動し、移動部材23が固定壁部13に近接あるいは当接するまで移動する。すると、可動接点22の接点部が固定接点12上に位置したままとなり、スイッチ装置はオン状態のままである。そして、移動部材23も固定接点12上を近接したまま移動することとなり、移動部材23が摺動面上のグリスGを平坦に均すこととなる。このとき、可動接点22の摺動と移動部材23の移動により、グリスGが移動方向に押し出される場合もあるが、上述したように傾斜面でグリスGを掻き分けることとなる。特に、移動部材23が固定壁部13に近接あるいは当接するまで移動することにより、移動方向に押し出されたグリスG(グリス溜G1)が移動部材23と固定壁部13とに挟まれた状態となり、より移動部材23の傾斜面にてグリスGが掻き分けられて、
図5左図の矢印Y3に示すように、各移動部材23間から可動接点22側に逆流することとなる。このため、摺動面上からグリスGが押し出されることを抑制することができ、摺動面上にグリスGが塗布されたままの状態を維持することができる。
【0028】
可動基部21がオン方向Y1に移動しているときは、移動部材23にて掻き分けられて可動接点22側に逆流したグリスGは、各移動部材23間において筋状に盛られた状態となる。つまり、移動部材23の移動方向において、移動部材23は可動接点22に対してオフセットして配置されているため、筋状のグリスGは可動接点22の摺動軌跡上に位置することになる。よって、各移動部材23間は、効率よくグリスGの塗布を維持することができる。
【0029】
その後、
図4の符号A4に示すように、可動基部21が図の左方向、つまり、オフ方向Y2に移動すると、可動接点22の接点部が摺動面を摺動し、固定接点12上から外れて位置することとなり、スイッチ装置はオフ状態となる。このとき、可動接点22の摺動により、グリスGが移動方向つまりオフ方向Y2に押し出される場合もある。但し、移動部材23の移動方向側の面、この場合はオフ方向Y2側の面には、上述したように移動方向に直交する平坦面が成されているため、
図5右図の矢印Y4に示すように、グリスGを摺動面上に押し戻すこととなる。このため、摺動面上にグリスGが塗布されたままの状態を維持することができる。
【0030】
以上のように、本発明によると、可動接点22から離間した位置に移動部材23を設け、その配置や形状によって摺動面上のグリスGが除去されることを抑制でき、さらには、摺動面上の摺動軌跡上にグリスGが塗布されたままの状態を維持することができる。その結果、スイッチ装置におけるグリス不足を抑制でき、動作の安定性の向上を図ることができる。
【0031】
なお、上記では、固定壁部13は、固定接点12の接点面と略直交して立設する壁面であることを示したが、
図6に示すように、固定壁部13の壁面に、可動接点22側に突出する凸状部13Aを設けてもよい。具体的に、固定壁部13の移動部材23に対向する面に、移動部材23と当接しないように可動接点22の移動軌跡の延長線上に位置する箇所が可動接点側に向かって突出している凸状部13Aを設けてもよい。これにより、オン方向Y1に移動部材23が移動してきた際に、凸状部13Aにてグリスの可動接点側への逆流を促すことができ、グリスをより均すことができる。
【0032】
<付記>
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうる。以下、本発明におけるスイッチ装置の概略を説明する。但し、本発明は、以下の構成に限定されない。
(付記1)
固定配置され、摺動面を有する固定接点と、
前記摺動面に対して往復摺動する可動接点と、
前記可動接点の往復摺動に伴い、当該可動接点の摺動方向に沿って当該可動接点と共に前記固定接点上を往復移動する移動部材と、を備え、
前記移動部材は、前記可動接点から離間して設けられ、前記摺動面に対して近接して配置され、前記固定接点上の塗布された潤滑剤を均すよう構成されている、
スイッチ装置。
(付記2)
付記1に記載のスイッチ装置であって、
前記移動部材は、前記可動接点の前記摺動方向上とは異なる位置を移動するよう配置されている、
スイッチ装置。
(付記3)
付記2に記載のスイッチ装置であって、
前記移動部材は、その移動軌跡の一部が、前記可動接点の摺動軌跡上及び当該摺動軌跡の延長線上に対して重なるよう配置されている、
スイッチ装置。
(付記4)
付記2又は3に記載のスイッチ装置であって、
前記可動接点は、前記摺動方向に対して直交する方向に複数が並列に配置されており、
前記移動部材は、並列方向に相互に隣り合って配置された各前記可動接点の前記摺動方向上の間の位置を移動するよう配置されている、
スイッチ装置。
(付記5)
付記2乃至4のいずれかに記載のスイッチ装置であって、
前記移動部材は、前記可動接点の前記摺動方向上を相互に挟む位置をそれぞれ移動するよう配置されている、
スイッチ装置。
(付記6)
付記2乃至5のいずれかに記載のスイッチ装置であって、
前記移動部材は、前記移動部材と前記可動接点との距離が前記可動接点の移動距離よりも短くなるように配置されている、
スイッチ装置。
(付記7)
付記2乃至6のいずれかに記載のスイッチ装置であって、
前記移動部材は、移動方向側に位置する面のうち前記可動接点側とは反対側に位置する面に、前記移動部材の前記移動方向に対して傾斜した傾斜面を有する、
スイッチ装置。
(付記8)
付記7に記載のスイッチ装置であって、
前記移動部材は、前記移動方向側に位置する面のうち前記可動接点側とは反対側に位置する面に、当該移動部材の前記移動方向に対して前記可動接点が隣接している側にのみ前記傾斜面を有する、
スイッチ装置。
(付記9)
付記2乃至8のいずれかに記載のスイッチ装置であって、
前記移動部材は、移動方向側に位置する面のうち前記可動接点側とは反対側に位置する面が、前記移動方向に直交する方向の中央側が最も突出した凸状に形成されている、
スイッチ装置。
(付記10)
付記2乃至9のいずれかに記載のスイッチ装置であって、
前記移動部材は、移動方向側に位置する面のうち前記可動接点側に位置する面に、移動方向に対して略直交する平坦面を有する、
スイッチ装置。
(付記11)
付記2乃至10のいずれかに記載のスイッチ装置であって、
前記固定接点の端部に壁面が形成されており、
前記移動部材は、往復移動することにより、移動方向側に位置する面のうち前記可動接点側とは反対側に位置する面が、前記壁面に近接あるいは当接するよう構成されている、
スイッチ装置。
【0033】
以上、上記実施形態等を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0034】
10 固定部
11 固定基部
12 固定接点
13 固定壁部
13A 凸状部
20 可動部
21 可動基部
22 可動接点
22A 本体部
22B 接点部
23 移動部材
G グリス