(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097086
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】ボールペン用油性インキ
(51)【国際特許分類】
C09D 11/18 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
C09D11/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213239
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005511
【氏名又は名称】ぺんてる株式会社
(72)【発明者】
【氏名】清水 英明
(72)【発明者】
【氏名】吉川 勝教
(72)【発明者】
【氏名】関口 圭美
(72)【発明者】
【氏名】清水 稜介
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AB02
4J039AD02
4J039AD07
4J039BD02
4J039BE02
4J039CA06
4J039EA42
4J039GA27
(57)【要約】
【目的】 湿度の低い環境下においてもペン先からのインキ洩れ出し抑制が可能なボールペン用油性インキを提供する。
【構成】 シリコーンゴム粒子を、シリコーンレジンにて被覆した構造を有する、シリコーン複合粒子を少なくとも含むことを特徴とするボールペン用油性インキ。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンゴム粒子を、シリコーンレジンにて被覆した構造を有する、シリコーン複合粒子を少なくとも含むことを特徴とするボールペン用油性インキ。
【請求項2】
前記シリコーン複合粒子の平均粒子径が0.1μm以上1.0μm未満である請求項1に記載のボールペン用油性インキ。
【請求項3】
ヒドロキシプロピルセルロースを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のボールペン用油性インキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボールペン用油性インキに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボールペン用油性インキのペン先からのインキ洩れ出し抑制技術として、特許文献1には、球状シリコーン樹脂微粒子を含有してなるボールペン用インキが開示されている。特許文献2には、特定の構造を有する造塩染料と、インキ組成物中の全樹脂の含有量に対して70%以上ポリビニルブチラール樹脂を含有してなる油性ボールペン用インキ組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-134391号公報
【特許文献2】特開2017-110067号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発明では、筆記時にボールと受け座に挟まれた衝撃でシリコーン粒子が破損し粒子の形状が不均一になってしまうことで、インキ流路が細くなる箇所における密集による目止め作用が低下し、湿度の低い乾燥環境下ではペン先において空気中の水分によるインキ成分中の固形物の析出による流動性の低下によるインキ洩れ抑制の支援を受けることが出来ないため、ペン先からインキが洩れ出してしまった。特許文献2に記載の発明では、湿度の高い環境においては空気中の水分の影響でペン先表面に現れたインキ中の固形分が析出したり、ペン先表面のインキが革張りし、ペン先表面に蓋をすることで、インキ洩れ出し防止効果が発揮できていたが、湿度の低い乾燥環境下においては、インキ中の固形分の析出速度が遅く、ペン先表面のインキが革張りしにくいため、インキ洩れ出し防止効果が発揮できていないためペン先からインキが洩れ出してしまった。また、ペン先を収納せずにディスプレイ等に突き当てた状態では、ペン先のボールがボール受け座に押し当てられることでインキ流路が開いた状態になってしまい、ペン先からのインキ洩れ出し防止効果は得られない問題があった。
【0005】
本発明は、湿度の低い環境下においてもペン先からのインキ洩れ出し抑制が可能なボールペン用油性インキを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は、シリコーンゴム粒子を、シリコーンレジンにて被覆した構造を有する、シリコーン複合粒子を少なくとも含むことを特徴とするボールペン用油性インキを第1の要旨とし、前記シリコーン複合粒子の平均粒子径が0.1μm以上1.0μm未満である第1の要旨に記載のボールペン用油性インキを第2の要旨とし、ヒドロキシプロピルセルロースを含むことを特徴とする第1の要旨または第2の要旨に記載のボールペン用油性インキを第3の要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のボールペン用油性インキが含むシリコーン複合粒子は、シリコーンゴム粒子をシリコーンレジンにて被覆した構造を有する。そのため、シリコーン複合粒子を被覆しているシリコーンレジンによる分子間力の低さと粘着性の低さからなる低凝集性と、シリコーン複合粒子内部のシリコーンゴムによる弾性の相乗効果によって、筆記時にボールと受け座に挟まれた衝撃で破損することなく、インキ流路が細くなる箇所において凝集構造を組まずに密集することができるので、優れた目止め効果を奏し、インキ洩れ出しを抑制することが可能になると考察される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明のシリコーンゴム粒子を、シリコーンレジンにて被覆した構造を有する、シリコーン複合粒子は、内部にM単位、D単位のシリコーン骨格構造を持ち、直鎖状のポリマーとなっていることから弾性を有するシリコーンゴム、外部にT単位、Q単位のシリコーン骨格構造を持ち分岐状となっていることから3次元網目状に架橋したシリコーンレジンを有する複合粒子である。
シリコーンのM単位、D単位、T単位、Q単位とは、シリコーンのケイ素に有機置換基がいくつ付いているかを表す用語であり、M単位は有機置換基が3個付いたケイ素、D単位は有機置換基が2個付いたケイ素、T単位は1個付いたケイ素、Q単位は有機置換基が1個もないケイ素を表す。
シリコーンゴム部分のシリコーン骨格の各単位の割合を変化させることでゴム硬度を適宜設定することができる。
ゴム硬度はボールとボール受け座に挟まれた際に変形し、筆記後、受け座とボールとの隙間が広がった際に該シリコーン複合粒子が直ちに復元し、インキ流路へ分散するためにデュロメータータイプAにおいて25以上80以下が好ましく、50以上80以下がさらに好ましい。
該シリコーン複合粒子の粒子径は使用するボールペンチップから吐出可能なものを適宜選択し、0.1μm以上12μm未満のものが好適に使用できる。中でも、1.0μm未満の該シリコーン複合粒子を用いると目止めの際の密集度が一層上昇するためペン先からのインキ洩れ出し抑制効果が一層向上するためさらに好ましい。
尚、該シリコーン複合粒子の粒子径は平均粒子径を表し、平均粒子径の測定はレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(例えば、(株)島津製作所製;SALD-7100〕を用いて測定し、その数値を基に、体積基準の平均粒子径を算出する。
所望の粒子径の該シリコーン複合粒子を得るためにふるい、遠心、ろ過によって粒度分布を調整することも可能である。
【0010】
本発明に使用するボールペン用油性インキにおいて、該シリコーン複合粒子の具体例としては、KMP-600(平均粒子径5μm、ゴム硬度30デュロメータA、真比重0.99g/cm3)、同601(平均粒子径12μm、ゴム硬度30デュロメータA、真比重0.98g/cm3)、同602(平均粒子径30μm、ゴム硬度30デュロメータA、真比重0.98g/cm3)、同605(平均粒子径2μm、ゴム硬度75デュロメータA、真比重0.99g/cm3)、X-52-7030(平均粒子径0.8μm、ゴム硬度75デュロメータA、真比重1.01g/cm3)(以上、信越化学工業(株)製)が挙げられる。
【0011】
該シリコーン複合粒子は単独あるいは組み合わせて使用でき、その使用量は0.01重量%以上10.0重量%以下が好ましく、ペン先インキ洩れの性能や筆記性能を鑑みて0.05重量%以上3.0重量%以下がさらに好ましい。
【0012】
該シリコーン複合粒子をインキ中に添加する際は、直接添加をしても良いし、あらかじめ分散体としたものを添加しても良い。
分散媒としてはボールペン用油性インキに用いられている有機溶剤を用いることができ、特に、安全性や臭気の問題から、アルコール、グリコール、グリコールエーテルが好ましい。
有機溶剤の一例としては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールターシャリブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、3-メチル-3-メトキシ-1-ブチルアセテート等のグリコールエーテル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、3-メチル-1,3ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール等のグリコール類、ベンジルアルコール、β-フェニルエチルアルコール、α-メチルベンジルアルコール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール、3-メチル-3-メトキシペンタノール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソデシルアルコール、イソトリデシルアルコール等のアルコール類、メチルイソプロピルエーテル、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル等のエーテル類、酢酸-2-エチルヘキシル、イソ酪酸イソブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類を挙げることができる。
【0013】
また分散剤としては活性剤や分散樹脂を用いることができ、ノニオン活性剤、アクリルコポリマー、ポリビニルブチラール樹脂、リン酸ポリエステル、リン酸系ポリマー、酸性基を有するコポリマー、酸基を含む共重合物のアルキロールアンモニウム塩、水酸基含有カルボン酸エステル等が挙げられる。
【0014】
分散剤としてはポリビニルブチラールを使用することが好ましく、酸価が100mgKOH/g以上の分散剤を併用することで該シリコーン複合粒子の分散安定性が向上し長期間の保存安定性が付与できるためさらに好ましい。
ポリビニルブチラールの具体例としては、エスレックBL-1、同BL-1H、同BL-2、同BL-2H、同BL-5、同BL-10、同BL-S、同BX-L、同BM-1、同BM-2、同BM-5、同BM-S、同BH-3、同BH-6、同BH-S、同BX-1、同BX-5、同KS-10、同KS-1、同KS-3、同KS-5(以上、積水化学工業(株)製)、Mowital B 14 S 、同B 16 H 、同B 20 H 、同B 30 T 、同B 30 H 、同B 30 HH 、同B 45 H 、同B 60 T 、同B 60 H 、同B 60 HH 、同B 75 H (以上、(株)クラレ製)が挙げられ、酸価が100mgKOH/g以上の分散剤の具体例としては、DISPERBYK-102(酸価129mgKOH/g)、同106(酸価132mgKOH/g、アミン価74mgKOH/g)、同111(酸価129mgKOH/g)、BYK-P104(酸価180mgKOH/g)、同P104S(酸価150mgKOH/g)、同P105(酸価365mgKOH/g)、同220S(酸価100mgKOH/g)(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)が挙げられる。
ここで表記されるアミン価とは、試料1g中に含まれる1級、2級および3級アミンを中和するのに要する塩酸と当量の水酸化カリウム(KOH)のミリグラム(mg)数で示される。
【0015】
また分散剤は単独あるいは組み合わせて使用でき、該シリコーン複合粒子に対して10重量%以上200重量%以下で使用することが好ましい
【0016】
本発明において該シリコーン複合粒子を分散するには通常一般的な方法で可能である。例えば、該シリコーン複合粒子と、溶剤と、分散剤とを混合し、プロペラ撹拌機等で均一に撹拌した後、分散機で該シリコーン複合粒子を分散する。ニーダー、ロールミル、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ヘンシェルミキサー、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、薄膜旋回型高速ミキサー等の分散機はインキの溶剤量や、顔料濃度によって適宜選択する。
中でも高圧ホモジナイザーや薄膜旋回型高速ミキサーを用いた分散は分散体の保存安定性を高める観点でも使用することが好ましい。
【0017】
該シリコーン複合粒子の分散安定性を向上させるためにあらかじめエージング工程を取ったり、インキ中の成分とのソルベントショックによる凝集を防ぐために、該シリコーン複合粒子の分散時にインキ中の成分をあらかじめ添加しておくこともできる。
【0018】
本発明で使用する有機溶剤としては従来ボールペン用油性インキに使用されるものなら特に限定なく使用出来、特に、安全性や臭気の問題から、アルコール、グリコール、グリコールエーテルが好ましい。
【0019】
有機溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールターシャリブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、3-メチル-3-メトキシ-1-ブチルアセテート等のグリコールエーテル類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、3-メチル-1,3ブタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール等のグリコール類、ベンジルアルコール、β-フェニルエチルアルコール、α-メチルベンジルアルコール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール、3-メチル-3-メトキシペンタノール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソデシルアルコール、イソトリデシルアルコール等のアルコール類、メチルイソプロピルエーテル、エチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルブチルエーテル、イソプロピルエーテル、ブチルエーテル、ヘキシルエーテル、2-エチルヘキシルエーテル等のエーテル類、酢酸-2-エチルヘキシル、イソ酪酸イソブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類を挙げることができる。低沸点有機溶剤を一部使用するとインキを低粘度化しやすく、書き味を軽くするために好適である。好適に使用できる低沸点有機溶剤は沸点が140℃以上200℃以下のグリコール、グリコールエーテルから選ばれる有機溶剤であり、具体的には、へキシレングリコール、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテルなどを挙げることができる。
低粘度化による書き味向上とペン先耐乾燥性を考慮して沸点が80℃以上200℃以下のアルコール、グリコール、グリコールエーテルから選ばれる低沸点有機溶剤と沸点が200℃を越える高沸点有機溶剤を併用することが好ましく。重量比で低沸点有機溶剤/高沸点有機溶剤の値が1.0以上30.0以下が好ましく、1.3以上6.0以下がより好ましい。
【0020】
これらの有機溶剤は単独あるいは組み合わせて使用出来、その使用量はボールペン用油性インキ全量に対し10.0重量%以上90.0重量%以下が好ましい。
【0021】
本発明において着色剤は特に制限なく水性染料や油溶性染料、顔料を使用することができる。
水溶性染料として具体的には直接染料、酸性染料、塩基性染料などいずれも用いることができる。直接染料の具体例として、ジャパノールファストブラックDコンク(C.I.ダイレクトブラック17)、ウォーターブラック100L(同19)、ウォーターブラックL-200(同19)、ダイレクトファストブラックB(同22)、ダイレクトファストブラックAB(同32)、ダイレクトディープブラックEX(同38)、ダイレクトファストブラックコンク(同51)、カヤラススプラグレイVGN(同71)、カヤラスダイレクトブリリアントエローG(C.I.ダイレクトエロー4)、ダイレクトファストエロー5GL(同26)、アイゼンプリムラエローGCLH(同44)、ダイレクトファストエローR(同50)、アイゼンダイレクトファストレッドFH(C.I.ダイレクトレッド1)、ニッポンファストスカーレットGSX(同4)、ダイレクトファストスカーレット4BS(同23)、アイゼンダイレクトローデュリンBH(同31)、ダイレクトスカーレットB(同37)、カヤクダイレクトスカーレット3B(同39)、アイゼンプリムラピンク2BLH(同75)、スミライトレッドF3B(同80)、アイゼンプリムラレッド4BH(同81)、カヤラススプラルビンBL(同83)、カヤラスライトレッドF5G(同225)、カヤラスライトレッドF5B(同226)、カヤラスライトローズFR(同227)、ダイレクトスカイブルー6B(C.I.ダイレクトブルー1)、ダイレクトスカイブルー5B(同15)、スミライトスプラブルーBRRコンク(同71)、ダイボーゲンターコイズブルーS(同86)、ウォーターブルー#3(同86)、カヤラスターコイズブルーGL(同86)、カヤラススプラブルーFF2GL(同106)、カヤラススプラターコイズブルーFBL(同199)などが挙げられる。
酸性染料の具体例としてアシッドブルーブラック10B(C.I.アシッドブラック1)、ニグロシン(同2)、スミノールミリングブラック8BX(同24)、カヤノールミリングブラックVLG(同26)、スミノールファストブラックBRコンク(同31)、ミツイナイロンブラックGL(同52)、アイゼンオパールブラックWHエクストラコンク(同52)、スミランブラックWA(同52)、ラニルブラックBGエクストラコンク(同107)、カヤノールミリングブラックTLB(同109)、スミノールミリングブラックB(同109)、カヤノールミリングブラックTLR(同110)、アイゼンオパールブラックニューコンク(同119)、ウォーターブラック187-L(同154)、カヤクアシッドブリリアントフラビンFF(C.I.アシッドエロー7:1)、カヤシルエローGG(同17)、キシレンライトエロー2G140%(同17)、スミノールレベリングエローNR(同19)、ダイワタートラジン(同23)、カヤクタートラジン(同23)、スミノールファストエローR(同25)、ダイアシッドライトエロー2GP(同29)、スミノールミリングエローO(同38)、スミノールミリングエローMR(同42)、ウォーターエロー#6(同42)、カヤノールエローNFG(同49)、スミノールミリングエロー3G(同72)、スミノールファストエローG(同61)、スミノールミリングエローG(同78)、カヤノールエローN5G(同110)、スミノールミリングエロー4G200%(同141)、カヤノールエローNG(同135)、カヤノールミリングエロー5GW(同127)、カヤノールミリングエロー6GW(同142)、スミトモファストスカーレットA(C.I.アシッドレッド8)、カヤクシルクスカーレット(同9)、ソーラールビンエクストラ(同14)、ダイワニューコクシン(同18)、アイゼンボンソーRH(同26)、ダイワ赤色2号(同27)、スミノールレベリングブリリアントレッドS3B(同35)、カヤシルルビノール3GS(同37)、アイゼンエリスロシン(同51)、カヤクアシッドローダミンFB(同52)、スミノールレベリングルビノール3GP(同57)、ダイアシッドアリザリンルビノールF3G200%(同82)、アイゼンエオシンGH(同87)、ウォーターピンク#2(同92)、アイゼンアシッドフロキシンPB(同92)、ローズベンガル(同94)、カヤノールミリングスカーレットFGW(同111)、カヤノールミリングルビン3BW(同129)、スミノオールミリングブリリアントレッド3BNコンク(同131)、スミノールミリングブリリアントレッドBS(同138)、アイゼンオパールピンクBH(同186)、スミノールミリングブリリアントレッドBコンク(同249)、カヤクアシッドブリリアントレッド3BL(同254)、カヤクアシッドブリリドブリリアントレッドBL(同265)、カヤノールミリングレッドGW(同276)、ミツイアシッドバイオレット6BN(C.I.アシッドバイオレット15)、ミツイアシッドバイオレットBN(同17)、スミトモパテントピュアブルーVX(C.I.アシッドブルー1)、ウォーターブルー#106(同1)、パテントブルーAF(同7)、ウォーターブルー#9(同9)、ダイワ青色1号(同9)、スプラノールブルーB(同15)、オリエントソルブルブルーOBC(同22)、スミノールレベリングブルー4GL(同23)、ミツイナイロンファストブルーG(同25)、カヤシルブルーAGG(同40)、カヤシルブルーBR(同41)、ミツイアリザリンサフィロールSE(同43)、スミノールレベリングスカイブルーRエクストラコンク(同62)、ミツイナイロンファストスカイブルーB(同78)、スミトモブリリアントインドシアニン6Bh/c(同83)、サンドランシアニンN-6B350%(同90)、ウォーターブルー#115(同90)、オリエントソルブルブルーOBB(同93)、スミトモブリリアントブルー5G(同103)、カヤノールミリングウルトラスカイSE(同112)、カヤノールミリングシアニン5R(同113)、アイゼンオパールブルー2GLH(同158)、ダイワギニアグリーンB(C.I.アシッドグリーン3)、アシッドブリリアントミリンググリーンB(同9)、ダイワグリーン#70(同16)、カヤノールシアニングリーンG(同25)、スミノールミリンググリーンG(同27)などが挙げられる。
塩基性染料の具体例として、アイゼンカチロンイエロー3GLH(C.I.ベーシックイエロー11)、アイゼンカチロンブリリアントイエロー5GLH(同13)、スミアクリルイエローE-3RD(同15)、マキシロンイエロー2RL(同19)、アストラゾンイエロー7GLL(同21)、カヤクリルゴールデンイエローGL-ED(同28)、アストラゾンイエロー5GL(同51)、アイゼンカチロンオレンジGLH(C.I.ベーシックオレンジ21)、アイゼンカチロンブラウン3GLH(同30)、ローダミン6GCP(C.I.ベーシックレッド1)、アイゼンアストラフロキシン(同12)、スミアクリルブリリアントレッドE-2B(同15)、アストラゾンレッドGTL(同18)、アイゼンカチロンブリリアントピンクBGH(同27)、マキシロンレッドGRL(同46)、アイゼンメチルバイオレット(C.I.ベーシックバイオレット1)、アイゼンクリスタルバイオレット(同3)、アイゼンローダミンB(同10)、アストラゾンブルーG(C.I.ベーシックブルー1)、アストラゾンブルーBG(同3)、メチレンブルー(同9)、マキシロンブルーGRL(同41)、アイゼンカチロンブルーBRLH(同54)、アイゼンダイヤモンドグリーンGH(C.I.ベーシックグリーン1)、アイゼンマラカイトグリーン(同4)、ビスマルクブラウンG(C.I.ベーシックブラウン1)などが挙げられる。これらは単独で用いても複数を混合して用いてもよい。
【0022】
油溶性染料として具体的には、酸性染料、塩基性染料、金属錯塩染料、造塩染料、アジン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、トリフェニルメタン染料などが使用でき、具体例として、ニグロシンベ-スEE、同EEL、同EX、同EXBP、同EB、オイルイエロー101、同107、オイルピンク312、オイルブラウンBB、同GR、オイルグリーンBG、オイルブルー613、オイルスカーレット308、同BOS、オイルブラックHBB、同860、同BS、バリファストイエロー1101、同1105、同1109、同1120、同3104、同3105、同3108、同4120、同AUM、バリファストオレンジ2210、同3209、同3210、バリファストレッド1306、同1308、同1320、同1355、同1360、同2303、同2320、同3304、同3306、同3320、バリファストピンク2310N、バリファストブラウン2402、同3405、バリファストグリーン1501、バリファストブルー1603、同1605、同1607、同1631、同2606、同2610、同2620、バリファストバイオレット1701、同1702、バリファストブラック1802、同1805、同1807、同3804、同3806、同3808、同3810、同3820、同3830、スピリットレッド102、スピリットブラックAB、オスピーイエローRY、ROB-B、MVB3、SPブルー105(以上、オリエント化学工業(株)製)、アイゼンスピロンイエロー3RH、同GRLHスペシャル、同C-2GH、同C-GNH new、アイゼンスピロンオレンジ2RH、同GRHコンクスペシャル、アイゼンスピロンレッドGEH、同BEH、同GRLHスペシャル、同C-GH、同C-BH、アイゼンスピロンバイオレットRH、同C-RH、アイゼンスピロンブラウンBHコンク、同RH、アイゼンスピロンマホガニーRH、アイゼンスピロンブルーGNH、同2BNH、同C-RH、同BPNH、アイゼンスピロングリーンC-GH、同3GNHスペシャル、アイゼンスピロンブラックBNH、同MH、同RLH、同GMHスペシャル、同BHスペシャル、S.B.N.オレンジ703、S.B.N.バイオレット510、同521、S.P.T.オレンジ6、S.P.T.ブルー111、SOTピンク1、SOTブルー4、SOTブラック1、同6、同10、同12、13リキッド、アイゼンローダミンBベース、アイゼンメチルバイオレットベース、アイゼンビクトリアブルーBベース(以上、保土谷化学工業(株)製)、オイルイエローCH、オイルピンク330、オイルブルー8B、オイルブラックS、同FSスペシャルA、同2020、同109、同215、ALイエロー1106D、同3101、ALレッド2308、ネオスーパーイエローC-131、同C-132、同C-134、ネオスーパーオレンジC-233、ネオスーパーレッドC-431、ネオスーパーブルーC-555、ネオスーパーブラウンC-732、同C-733(以上、中央合成化学(株)製)、オレオゾールファストイエロー2G、同GCN、オレオゾールファストオレンジGL、オレオゾールファストレッドBL、同RL(以上、田岡化学工業(株)製)、サビニールイエロー2GLS、同RLS、同2RLS、サビニールオレンジRLS、サビニールファイアレッドGLS、サビニールレッド3BLS、サビニールピンク6BLS、サビニールブルーRN、同GLS、サビニールグリーン2GLS、サビニールブラウンGLS(以上、サンド社製、スイス国)、マゼンタSP247%、クリスタルバイオレット10B250%、マラカイトグリーンクリスタルコンク、ブリリアントグリーンクリスタルH90%、スピリットソルブルレッド64843(以上、ホリディ社製、英国)、ネプチューンレッドベース543、ネプチューンブルーベース634、ネプチューンバイオレットベース604、バソニールレッド540、バソニールバイオレット600、ビクトリアブルーF4R、ニグロシンベースLK(以上、BASF社製、独国)、メチルバイオレット2Bベース(以上、National Anilne Div.社製、米国)などが挙げられる。これらは単独で用いても複数を混合して用いてもよい。
【0023】
顔料として具体的には、ファーネストブラック、コンタクトブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、群青、紺青、コバルトブルー、チタンイエロー、ターコイズ、モリブデートオレンジ、酸化チタン、金粉、銀粉、銅粉、アルミニウム粉、真鍮粉、錫粉、雲母系顔料、C.I.PIGMENT RED 2、同3、同5、同17、同22、同38、同41、同48:2、同48:3、同49、同50:1、同53:1、同57:1、同58:2、同60、同63:1、同63:2、同64:1、同88、同112、同122、同123、同144、同146、同149、同166、同168、同170、同176、同177、同178、同179、同180、同185、同190、同194、同206、同207、同209、同216、同245、C.I.PIGMENT ORANGE 5、同10、同13、同16、同36、同40、同43、C.I.PIGMENT VIOLET 19、同23、同31、同33、同36、同38、同50、C.I.PIGMENT BLUE 2、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:5、同16、同17、同22、同25、同60、同66、C.I.PIGMENT BROWN 25、同26、C.I.PIGMENT YELLOW 1、同3、同12、同13、同24、同93、同94、同95、同97、同99、同108、同109、同110、同117、同120、同139、同153、同166、同167、同173、C.I.PIGMENT GREEN 7、同10、同36などが挙げられる。これらは、1種もしくは2種以上混合して用いることができる。
また、これらの顔料の他に加工顔料も使用可能である。それらの一例を挙げると、Renol Yellow GG-HW30、同HR-HW30、同Orange RL-HW30、同Red HF2B-HW30、同FGR-HW30、同F5RK-HW30、同Carmine FBB-HW30、同Violet RL-HW30、同Blue B2G-HW30、同CF-HW30、同Green GG-HW30、同Brown HFR-HW30、Black R-HW30(以上、クラリアントジャパン(株)製)、UTCO-001エロー、同012エロー、同021オレンジ、同031レッド、同032レッド、同042バイオレット、同051ブルー、同052ブルー、同061グリーン、同591ブラック、同592ブラック(以上、大日精化工業(株)製)、MICROLITH Yellow 4G-A、同MX-A、同2R-A、Brown 5R-A、Scarlet R-A、Red 2C-A、同3R-A、Magenta 2B-A、Violet B-A、Blue 4G-A、Green G-A(以上、チバ・スペシャリティケミカルズ(株)製)等がある。
【0024】
顔料の分散性を良好なものとするために、アニオン、カチオン、ノニオン、両性の界面活性剤や、高分子樹脂を補助的に使用することができる。具体的には、高級脂肪酸、高級アルコール硫酸エステル塩類、脂肪酸硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸類、リン酸エステル類、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル類、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル類、ソルビタン脂肪酸エステル類等のアニオン、ノニオン、カチオン性の界面活性剤や、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、スチレン-アクリル酸樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、などの顔料分散用の樹脂やオリゴマーなどが挙げられる。
これらは単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0025】
インキの粘度調整や筆跡の定着性を目的に、樹脂を適宜調整してインキ中に添加することができる。
具体例を挙げると、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ケトン樹脂、アクリル酸-アクリル酸エステル樹脂、アクリル酸-メタクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸-アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸-メタクリル酸エステル樹脂、スチレン-アクリル酸樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、ロジン、ロジンエステル、変性ロジン、変性ロジンエステル、マレイン化ロジン、マレイン化ロジンエステル、フマル化ロジン、フマル化ロジンエステル、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類、N-ビニルアセトアミド重合架橋物等の合成高分子、無機粘土鉱物などが挙げられる。
これらは単独で用いても良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。
【0026】
本発明においては上記樹脂の中でも、酸性基を有する樹脂を使用することで該シリコーン複合粒子への静電的な吸着により見かけの嵩高さが増すことで該シリコーン複合粒子同士の衝突が妨げられるため分散安定性が向上すると共に、筆記後の再筆記時に目止めとして作用した該シリコーン複合粒子が速やかにほぐされるため書き出し時のカスレ(以下初筆カスレ)が低減される。
樹脂の酸性の度合いは酸価で表され、試料1g中に含まれる全酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウム(KOH)のミリグラム(mg)数で示され、50mgKOH/g以上600mgKOH/g以下が好ましく、150mgKOH/g以上550mgKOH/g以下がさらに好ましい。
また、樹脂中にOH基を含んでいると酸性基との相互作用によってより該シリコーン複合粒子への吸着性が向上するため、潤滑性が良化すため書き味が向上する。
OH基の量はOH価で表され、無水酢酸でアセチル化し、遊離酢酸を水酸化カリウムで定量し、試料1g中に含まれる全酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウム(KOH)のミリグラム(mg)数で示される。
具体例を挙げると、ロジンとして、KR-612(酸価167mgKOH/g)、同614(酸価175mgKOH/g)(以上、荒川化学工業(株)製)が挙げられ、マレイン酸ロジンとして、マルキードNo.31(酸価188mgKOH/g)、同No.32(酸価130mgKOH/g)、同No.33(酸価305mgKOH/g)、同3002(酸価100mgKOH/g)(以上、荒川化学工業(株)製)、ハリマックT-80(酸価185mgKOH/g)(以上、ハリマ化成(株)製)が挙げられ、マレイン化ロジンエステルとして、ハリエスターMSR-4(酸価135mgKOH/g)(以上、ハリマ化成(株)製)が挙げられ、酸変性ロジンとしてKE-604(酸価238mgKOH/g)、KR-120(酸価325mgKOH/g)(以上、荒川化学工業(株)製)が挙げられ、特殊変性ロジンとしてハリタックF-75(酸価145mgKOH/g)、同FG-90(酸価150mgKOH/g)(以上、ハリマ化成(株)製)が挙げられ、スチレン-アクリル酸系樹脂としてJoncryl611(酸価53mgKOH/g)、同586(酸価108mgKOH/g)(以上、BASFジャパン(株)製)が挙げられる。
【0027】
本発明においては上記樹脂の中でも、ヒドロキシプロピルセルロースを用いることが好ましい。ヒドロキシプロピルセルロースの分子ネットワーク中に該シリコーン複合粒子が共存することによって、インキ流路での目止め効果はもとより、ペン先を収納せずにディスプレイ等に突き当てた状態でインキがディスプレイに洩れ出ても、直ちにヒドロキシプロピルセルロースと該シリコーン複合粒子がインキ表面に配向することでインキの洩れ広がりを抑制できると考察される。
具体例を挙げるとNISSO HPC-VH、同H、同M、同L、同SL、同SSL(以上、日本曹達(株)製)、Klucel-H、同M、同G、同J、同L、同E(以上、アシュランド・ジャパン(株)製)が挙げられる。
【0028】
ボール受座摩耗防止や運筆性改良のための潤滑剤として、オレイン酸などの高級脂肪酸、長鎖アルキル基を有するノニオン性界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーンオイル、モノアルキルリン酸、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテルリン酸、ジアルキルリン酸、ポリオキシエチレンジアルキルエーテルリン酸、トリアルキルリン酸、ポリオキシエチレントリアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンモノスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル、パーフルオロアルキル基・リン酸基含有リン酸エステル、或いは、それらの金属塩、アンモニウム塩、アミン塩、アルカノールアミン塩などを該シリコーン複合粒子と併せて使用することで該シリコーン複合粒子表面に潤滑剤分子が吸着して、潤滑剤分子膜に覆われた潤滑粒子が形成されることで、一層のボール受座摩耗防止や運筆性改良が発揮できる。
市販のものとしては、フォスファノールBH-650、同SM-172、同ED-200、同GF-339、同RA-600、同GF199、同ML-200、同ML-220、同ML-240、同RD-510Y、同GF-185、同RS-410、同RS-610、同RS-710、同RL-210、同RL-310、同RB-410、同RP-710、同AK-25、同GF702、同RS-610NA、同SC-6103、同RD-720、同LP-700、同LS-500、同LB400(以上、東邦化学工業(株)製)や、プライサーフA207H、同A208B、同A219B、同A208S、同A212S、同A215C、同AL、同AL12(以上、第一工業製薬(株)製)、NIKKOL DLP-10、同DOP-8NV、同DDP-2、同DDP-4、同DDP-6、同DDP-8、同DDP-10、同TLP-4、同TCP-5、同TOP-0V、同TDP-2、同TDP-6、同TDP-8(以上、日光ケミカルズ(株)製)、メガファック F-510(以上、DIC株式会社製)を挙げることが出来、特に、モノアルキルリン酸、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテルリン酸、ジアルキルリン酸、ポリオキシエチレンジアルキルエーテルリン酸、トリアルキルリン酸、ポリオキシエチレントリアルキルエーテルリン酸、ポリオキシエチレンモノスチレン化フェニルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテルリン酸エステルは該シリコーン複合粒子表面への吸着力が強く、潤滑剤分子膜強度が一層強固になると考察されるためボール受座摩耗防止や運筆性改良効果が向上する。
さらに、リン酸エステルに含まれるアルキル基の炭素数が10以上20以下であると強荷重筆記においてもボールとボール受け座との摩耗が少なく好適である。
さらにボールとボール受け座の摩耗防止を向上させるためにリン酸エステルにエチレンオキサイド基を導入したものを使用したものが好ましい。リン酸エステル構造中にエチレンオキサイド基が1モル以上20モル以下導入されているものが好ましい。
ボールペン用油性インキに用いるためにリン酸エステルのHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)を適切にすることでインキ中においてリン酸エステルが分離しないことで長期にわたりボールとボール受け座の摩耗防止を良好に保つことが可能となる。好適なHLBの範囲としては5以上12以下である。
【0029】
リン酸エステルの使用量はボールペン用油性インキ全量に対し0.05重量%以上20.0重量%以下の使用が好ましく、更に好ましくは0.1重量%以上10.0重量%以下であり、最も好ましいのは0.3重量%以上2.0重量%であり、ボールペンチップと該シリコーン複合粒子への吸着状態が最適化され潤滑成分が大幅に向上する。使用量が0.05重量%よりも少ないと、書き味の向上は十分ではなく、20.0重量%を越えると、インキ中の有機溶媒の含有量が減ってしまい、染料や樹脂などインキ中の固形分の溶解性が不足し、文字掠れが生じやすくなる恐れがある。
【0030】
本発明においてインキのpHを適正範囲に保つことによって金属ボールペンチップや該シリコーン複合粒子への酸性物質の吸着力を高め、筆跡の点線抑制や書き味向上を担保することができる。適正範囲は2.5以上7.0以下であり、より好ましくは4.0以上6.0以下である。
【0031】
さらに本発明のボールペン用油性インキに水を添加することもできる。水はミネラルウォーター、水道水、イオン交換水、精製水、蒸留水、純水等からいずれを選んで用いても良い。中でも、カルシウムやマグネシウムの濃度がインキ中で100ppm以下に抑えることでインキ中の成分と反応して、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、カルシウム-酸化合物、マグネシウム-酸化合物のようなインキに不溶解の析出物が発生しないように、イオン交換水、精製水、蒸留水、純水が好ましい。水の添加によって伝導率が増加しpHによる該シリコーン複合粒子表面への酸性物質の吸着力がより高まるため筆跡の点線抑制や書き味がさらに向上する。その使用量はインキが経時的に不安定にならない範囲で添加出来、ボールペン用油性インキ全量に対し0.1重量%以上15.0重量%以下が好ましい。更に好ましくは0.5重量%以上10.0重量%以下が好ましい。尚、水の添加方法は特に限定されないが、水以外の成分を適宜混合したインキ中に水をそのままの状態で添加しても、着色剤や樹脂などのボールペン用油性インキに用いる成分に予め水分を吸湿や吸水させておいても良い。
【0032】
本発明のボールペン用油性インキのインキ粘度は、特に限定されるものではないが、25℃、筆記時を想定した剪断速度100sec-1におけるインキ粘度が30mPa・s以上、3000mPa・s以下であることが好ましい。30mPa・s未満であると油性インキの潤滑膜強度が低くなり筆記感やボール受け座の摩耗性が低下する恐れがある。3000mPa・sを越えると再筆記した際の筆跡カスレ、すなわち初筆カスレが悪化する恐れがある。インキ粘度を50mPa・s以上、500mPa・s以下にすることで該シリコーン複合粒子の弾性効果を発揮できるインキ膜強度となるため独特な筆記感を得られるようになる。60mPa・s以上200mPa・s以下にすることでさらに独特な筆記感が顕著になる。
【0033】
本発明に用いるボールペンチップのボールの縦軸方向の移動量は、3μmより大きく60μm以下とするのが好ましい。これは、3μm以下であると、濃い筆跡や良好な書き味が得られづらくなり、60μmを越えると、インキの吐出量が多くなりすぎるため筆跡の滲みがひどくなってしまうためである。20μmより大きく55μm以下とすることで、ボールとボール受け座の間に該シリコーン複合粒子を含む多量の油性インキが潤滑作用を奏するため従来のボールペンと比較して大幅に書き味を良化させることができる。
【0034】
上述したボールペン用油性インキをインキ収容管内に直に収容し、筆記部材としてのボールと、このボールを貫通孔であるインキ通孔の先端開口部から一部突出して抱持し、インキ通孔の先端開口部をボールの直径よりも小径に形成すると共にインキ通孔の内壁中腹部分に複数の内方突出部を形成することによってボールの前後移動可能範囲を規定するボールハウス部を形成したボールホルダーとで成るボールペンチップをインキ収容管内の先端に直接、またはチップホルダーを介して装着した油性ボールペンリフィルとする。上記ボールペンチップのボールホルダーは、主にステンレス等の円柱状金属部材にインキ通孔となる貫通孔、及び内方突出部をドリルやブローチなどの切削刃を用いて形成するものであるが、予め貫通孔が形成されたパイプ材を使用することもできる。パイプ材を使用した場合は、パイプ材の外側壁部にピンによる押圧変形加工を施して凹部を形成することによって、該部に対応する内側壁部に凸部を形成し、その凸部が内方突出部となるものである。
【0035】
前記ボールペンチップで使用できるボールとしては、成分が、タングステン(元素記号:W) 75.0重量%以上85.0重量%以下、コバルト(元素記号:Co) 9.0重量%以上14.0重量%以下、クロム(元素記号:Cr) 0.0重量%以上3.0重量%以下、炭素(元素記号:C) 0.0重量%以上6.0重量%以下、Cr3C3 0.0重量%以上5.0重量%以下のものが使用できる。ボール表面粗さはRa 1.0以上20.0以下のものが使用できる。ボールのビッカース硬さ(HV)は1000以上2000以下のものが使用できる。
また、上記の超硬合金以外にも、成分が、炭化ケイ素(分子式:SiC) 0.0重量%以上95.0重量%以下、酸化イットリウム-酸化アルミニウム(分子式:Y2O3-Al2O3) 0.0重量%以上5.0重量%以下でボール表面粗さがRa 0.5nm以上10.0nm以下のものや、成分が、二酸化ジルコニウム(分子式:ZrO2) 0.0重量%以上95.0重量%以下、酸化イットリウム(分子式:Y2O3) 0.0重量%以上5.0重量%以下でボール表面粗さが0.5nm以上10.0nm以下のものや、成分が、酸化アルミニウム(分子式:Al2O3) 0.0重量%以上99.9重量%以下、クロム(元素記号:Cr) 0.0重量%以上0.1重量%以下でボール表面粗さが0.5nm以上10.0nm以下のものなどが挙げられる。
ボール径は、従来公知の0.1mm以上30.0mm以下のいずれを用いても良い。細字の筆跡を得たい場合は0.5mm以下のボール径を使用するのが好ましく、太字の筆跡を得たい場合は1.0mm以上のボール径を使用するのが好ましい。
【0036】
前記ボールペンチップで使用できるボールホルダーの材質として、ステンレスの場合、成分が、クロム(元素記号:Cr) 18.0重量%以上22.0重量%以下、モリブデン(元素記号:Mo) 0.5重量%以上3.0重量%以下、マンガン(元素記号:Mn) 0.0重量%以上2.0重量%以下、珪素(元素記号:Si) 0.0重量%以上1.0重量%以下、硫黄(元素記号:S) 0.0重量%以上0.2重量%以下、リン(元素記号:P) 0.0重量%以上0.1重量%以下、炭素(元素記号:C) 0.0重量%以上0.1重量%以下、鉛(元素記号:Pb) 0.0重量%以上0.5重量%以下、テルル(元素記号:Te) 0.0重量%以上0.1重量%以下、鉄(元素記号:Fe) 0.0重量%以上80.0重量%以下のものが使用できる。ボールホルダーのビッカース硬さ(HV)は150以上300以下のものが使用できる。
ボールホルダーの材質が銅合金の場合、成分が、炭素(元素記号:C) 55.0重量%以上65.0重量%以下、ニッケル(元素記号:Ni) 12.0重量%以上18.0重量%以下、マンガン(元素記号:Mn) 0.0重量%以上1.0重量%以下、鉄(元素記号:Fe) 0.0重量%以上0.5重量%以下、鉛(元素記号:Pb) 0.0重量%以上4.0重量%以下、亜鉛(元素記号:Zn) 0.0重量%以上30.0重量%以下のものが使用できる。ボールホルダーのビッカース硬さ(HV)は150以上300以下のものが使用できる。
その他、ボールホルダーの材質が樹脂や真鍮(黄銅)などの従来公知の材質も使用できる。
【0037】
そして、ボールをボールホルダーの先端開口部の内縁に押し当てることでボールホルダーの密閉性を向上させ、ボールペンチップ先端からのインキのにじみ出しを防止する事を目的としてボールホルダーの内部には複数の内方突出部の中心に形成される中孔部を通じてボールを背面より押圧して前方付勢するコイルスプリングを備えたボールペンチップとすることもできる。コイルスプリングの材質としては主にSUS304などのステンレス鋼線を使用するが、硬鋼線やピアノ線材も使用できる。また、ポリカーボネートやポリエーテルエーテルケトン等の樹脂も使用することができる。ステンレス鋼線、硬鋼線などの表面にニッケル(元素記号:Ni)メッキを施したものも使用できる。
ボールホルダ-内にコイルスプリングを設置した状態におけるボールの押圧荷重は0.01N以上1.50N以下で使用できる。
【0038】
以下実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0039】
実施例中の粘度はMCR302(Anton Paar社製)で、ローター CP50-1にて25℃でせん断速度100s-1時の粘度測定を行った。(単位「mPa・s」)
【0040】
実施例中のpHはPICCOLO plus(ハンナ インスツルメンツ・ジャパン(株)製)にて25℃で測定を行った。
【実施例0041】
表1に示すとおり、実施例1~9、比較例1~6に示した油性インキを作製した。なお、使用した材料は下記の通りである。
顔料(1):プリンテックス35(カーボンブラック、オリオンエンジニアドカーボンズ(株)製))
顔料(2):FUJI FAST RED 8800(C.I.Pigment Red 254、冨士色素(株)製)
顔料(3):CROMOPHTAL Blue A3R(C.I.Pigment Blue 60、BASFジャパン(株)製)
染料(1):SPILON RED C-GH(キサンテン系塩基性染料とアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸との造塩染料、保土ヶ谷化学工業(株)製)
染料(2):VALIFAST RED 1364(C.I.Basic Red 1:1とアルキルベンゼンスルホン酸とアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸との造塩染料、オリヱント化学工業(株)製)
染料(3):VALIFAST YELLOW 1120(塩基性染料と無色有機酸とのオニウム塩、オリヱント化学工業(株)製)
染料(4):SPILON YELLOW C-GNH new(インドリノン系塩基性染料とアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸との造塩染料、保土ヶ谷化学工業(株)製)
染料(5):OIL BLUE 613(C.I.Solvent Blue 5とロジン変性樹脂との混合物、オリヱント化学工業(株)製)
染料(6):VALIFAST BLUE 1631(C.I.Basic Blue 7と無色有機酸との造塩染料、オリヱント化学工業(株)製)
染料(7):VALIFAST VIOLET 1731(C.I.Acid Violet 17とメチン系染料との造塩染料、オリヱント化学工業(株)製)
染料(8):Acid Yellow42とベンゾキソニウムクロリドとの造塩染料
有機溶剤(1):n-プロパノール
有機溶剤(2):エチレングリコールモノイソプロピルエーテル
有機溶剤(3):エチレングリコールモノフェニルエーテル
有機溶剤(4):ベンジルアルコール
リン酸エステル(1):フォスファノール LB-400(ポリオキシエチレン(4)オレイルエーテルのリン酸モノエステルとジエステルとトリエステルの混合物、HLB8.6、東邦化学工業(株)製)
リン酸エステル(2):フォスファノール GF-199(ラウリルエーテルのリン酸モノエステルとジエステルとトリエステルの混合物、HLB5.5、東邦化学工業(株)製)
リン酸エステル(3):フォスファノール LS-500(ポリオキシエチレン(4)トリデシルエーテルのリン酸モノエステルとジエステルとトリエステルの混合物、HLB9.0、東邦化学工業(株)製)
リン酸エステル(4):フォスファノール RP-710(ポリオキシエチレン(6)フェニルエーテルのリン酸モノエステルとジエステルとトリエステルの混合物、HLB11.9、東邦化学工業(株)製)
リン酸エステル(5):NIKKOL DDP-2(ジ(C12-15)パレス-2リン酸、HLB6.5、日光ケミカルズ(株)製)
有機アミン(1):トリイソプロパノールアミン(東京化成工業(株)製)
有機アミン(2):ナイミーンL201(ポリエチレングリコール-1ラウリルアミン、日油(株)
有機アミン(3):トリエタノールアミン(東京化成工業(株)製)
活性剤(1):ソルゲン30(ソルビタンセスキオレート、HLB3.7、第一工業製薬(株)製)
活性剤(2):ペグノールST-7(ポリオキシエチレン(7)アルキル(C12~14)エーテル、HLB12.8、東邦化学工業(株)製)
活性剤(3):NIKKOL HCO-10(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、HLB6.5、日光ケミカルズ(株)製)
活性剤(4):NIKKOL Decaglyn 1-ISV(モノイソステアリン酸デカグリセリル、HLB12.0、日光ケミカルズ(株)製)
活性剤(5):NIKKOL BO-10V(ポリオキシエチレンオレイルエーテル、HLB14.5、日光ケミカルズ(株)製)
シリコーン複合粒子(1):KMP-600(シリコーン複合粒子、平均粒子径5μm、ゴム硬度30デュロメータA、真比重0.99g/cm3、信越化学工業(株)製)
シリコーン複合粒子(2):KMP-605(シリコーン複合粒子、平均粒子径2μm、ゴム硬度75デュロメータA、真比重0.99g/cm3、信越化学工業(株)製)
シリコーン複合粒子(3):X-52-7030(シリコーン複合粒子、平均粒子径0.8μm、ゴム硬度75デュロメータA、真比重1.01g/cm3、信越化学工業(株)製)
シリコーンゴム粒子:KMP-597(シリコーンゴム粒子、平均粒子径5μm、ゴム硬度30デュロメータA、信越化学工業(株)製)
シリコーンレジン粒子:Tospearl 120FL Silicone Beads(シリコーンレジン粒子、平均粒子径2μm、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
酸化チタン粒子:JR-800(酸化チタン粒子、平均粒子径0.27μm、真比重3.9g/cm3、テイカ(株)製)
シリカ粒子:QSG-170(疎水性シリカ球状粒子、平均粒子径0.17μm、真比重1.8g/cm3、信越化学工業(株)製)
樹脂(1):エスレックBL-1(ポリビニルブチラール、積水化学工業(株)製)
樹脂(2):エスレックBH-3(ポリビニルブチラール、積水化学工業(株)製)
樹脂(3):PVPK-90(ポリビニルピロリドン、アシュランド・ジャパン(株)製)
樹脂(4):TEGO Variplus SK(ポリオール樹脂、OH価325mgKOH/g、Tg90℃、エボニックジャパン(株)製)
樹脂(5):TEGO Variplus CA(ケトンアルデヒド縮合樹脂、OH価200mgKOH/g、Tg75℃、エボニックジャパン(株)製)
樹脂(6):マルキード3002(マレイン酸ロジン、酸価100mgKOH/g、Tg175℃、荒川化学工業(株)製)
樹脂(7):ハリマック T-80(マレイン化ロジン、酸価185mgKOH/g、Tg85℃、ハリマ化成(株)製)
樹脂(8):42%アクリル酸-アクリル・メタクリル酸エステルコポリマーのエチレングリコールモノフェニルエーテル溶液(固体換算で酸価510mgKOH/g、OH価130mgKOH/g、Tg80℃)
樹脂(9):42%アクリル酸-スチレン-メタクリル酸エステルコポリマーのエチレングリコールモノフェニルエーテル溶液(固体換算で酸価300mgKOH/g、OH価80mgKOH/g、Tg30℃)
樹脂(10):NISSO HPC-H(ヒドロキシプロピルセルロース、日本曹達(株)製)
分散剤(1):DISPERBYK-102(酸性基を有するコポリマー、酸価101mgKOH/g、ビックケミー・ジャパン(株)製)
分散剤(2):DISPERBYK-111(酸基を含む共重合物、酸価129mgKOH/g、ビックケミー・ジャパン(株)製)
分散剤(3):BYK-P105(低分子量不飽和カルボン酸のポリマー、酸価365mgKOH/g、ビックケミー・ジャパン(株)製)
分散剤(4):DISPERBYK-180(酸基を含む共重合物のアルキロールアンモニウム塩、酸価94mgKOH/g、アミン価94mgKOH/g、ビックケミー・ジャパン(株)製)
分散剤(5):DISPERBYK-108(水酸基含有カルボン酸エステル、アミン価71mgKOH/g、ビックケミー・ジャパン(株)製)
防錆剤:ベンゾトリアゾール(E-CHEM ENTERPRISE CORPORATION製)
作製手順としては、有機溶剤と該シリコーン複合粒子または、シリコーンゴム粒子または、シリコーンレジン粒子または、酸化チタン粒子または、シリカ粒子と分散樹脂のエスレックBL-1と分散剤と場合によって顔料とを60℃で攪拌した後に、薄膜旋回型高速ミキサーを用いて周速30m/sで2分間処理を行った後、その他の添加剤を添加しプロペラで2時間攪拌して油性インキを得た。市販されていないアクリル酸コポリマー溶液においてはフェニルグリコールに任意のモノマー及び重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリルをプロペラ攪拌によって溶解させた後、加熱重合してアクリル酸コポリマー溶液を得た。
【0042】
試験用ボールペンの作製
実施例1~9、比較例1~6の油性インキを、ボールペンペン先を備える水性ボールペン(ノック式エナージェル、製品符号BLN75、ぺんてる(株)製、ペン先の材質:ステンレス、ボールの材質:超硬、ボール径:φ0.5mm、ボールペンチップのボールの縦軸方向の移動量30μm)と同構造のリフィルに1.0mL充填し、ペン先を取りつけ、パッキン(HM200、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂系ホットメルト接着剤)でペン先に封をして遠心した。
【0043】
ペン先インキ洩れ確認試験1
上記の試験用ボールペンを各実施例、比較例あたり3本ずつ用意し、パッキンを外してから、温度25℃、湿度30%の環境下にて、手書きで「国会の年日」を筆記した後、台紙に貼り付けて下向きで3日間静置した後のペン先からのインキ洩れの大きさをデジタルマイクロスコープ((株)キーエンス製、VHX-7000)を用いて50倍にて確認し直径を記録し平均値を求めた。(単位「mm」)。
【0044】
ペン先インキ洩れ確認試験2
上記の試験用ボールペンに50gのおもりを付けたものを各実施例、比較例あたり3本ずつ用意し、パッキンを外してから、温度25℃、湿度30%の環境下にて、手書きで「国会の年日」を筆記した後、アクリル樹脂板に垂直状態でペン先を突き当てた状態で3日間静置した後のペン先からアクリル樹脂板に洩れ出したインキの大きさをデジタルマイクロスコープを用いて20倍にて確認し直径を記録し平均値を求めた。(単位「mm」)。
【0045】
シリコーン複合粒子の分散安定性確認試験
上記の試験用ボールペンを各実施例、比較例あたり1本ずつ用意し、温度70℃、湿度ノンコントロールの環境下にて3日間静置した後、外観を確認した。
〇…外観以上はなく、筆記も問題なし
△…グリス界面または、パイプとボールペンチップ部材のカシメ部分とに発生した段部に該シリコーン複合粒子がわずかに見られる
×…グリス界面または、パイプとボールペンチップ部材のカシメ部分とに発生した段部に該シリコーン複合粒子が激しく見られる
【0046】
初筆カスレ確認試験
上記試験用ボールペン各実施例、比較例あたり3本ずつ用意し、パッキンを外してから、温度25℃、湿度30%の環境下にて手書きで「国会の年日」を筆記した後、横向きで静置後1週間後に再度手書きで「国会の年日」を筆記した際のカスレ距離を測定し平均値を初筆カスレの値とした。(単位「mm」)
【0047】
結果を表1~表3に示す。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
実施例1~9のボールペンは、インキに、シリコーンゴム粒子をシリコーンレジンにて被覆した構造を有するシリコーン複合粒子を含むことから、筆記時にボールと受け座に挟まれた衝撃で破損することなく、インキ流路が細くなる箇所において凝集構造を組まずに密集することができるので、低湿度の環境においても優れた目止め効果を奏し、インキ洩れ出しを抑制することが可能になると考察される。
さらに実施例4~7のボールペンは、インキに1μm未満の該シリコーン複合粒子を含むことから、インキの目止め効果がより一層向上しペン先インキ洩れ確認試験1の効果が向上できたと考察される。
さらに実施例2および、実施例4、5および実施例7~9のボールペンはヒドロキシプロピルセルロースを含むことからアクリル板へ洩れ出たインキの広がりを抑えることが可能になり、ペン先インキ洩れ確認試験2の効果が向上できたと考察される。
インキ洩れ出し抑制効果に加えて、実施例1~8のボールペンにおいては該シリコーン複合粒子とリン酸エステルを併用していることから筆記時の疲労感を感じず今までにない独特な筆記感を得ることが出来る。
また、実施例2および、実施例4~6、実施例8、9のボールペンは該シリコーン複合粒子と酸性基を有する樹脂を併用していることから初筆カスレの距離が改善された。
また、実施例4~6のボールペンにおいては酸価が100mgKOH/g以上の分散剤を併用することから該シリコーン複合粒子の分散安定性が向上し、分散安定性確認試験後のリフィル内に該複合粒子の偏りは確認されなかった。
比較例1のボールペンはインキに該シリコーン複合粒子を含んでいないため、目止め効果が発現されずインキが洩れ出してしまう。比較例2のボールペンはシリコーンゴム粒子を含んでいることから、ゴムパウダーの表面変形により、接触面積が高くなるため凝集が起こりやすく、ボールペンチップ内でのインキ流路の目止め効果が弱くインキが洩れ出してしまう。比較例3のボールペンはシリコーンレジン粒子を含んでいることから、筆記時にボールと受け座に挟まれた衝撃でシリコーンレジン粒子が破損して粒子の形状が均一でなくなるためインキ流路が細くなる箇所において密集する際の構造が乱れるため、目止め効果が十分に発揮されずインキが洩れ出してしまう。比較例4、5のボールペンはシリコーン以外の粒子を含んでいることからインキ流路での粒子同士が凝集したり、破損して粒子の形状が均一でなくなるため目止め効果が十分に発揮されずインキが洩れ出してしまう。比較例6のボールペンは特定の構造を持つ染料とブチラール樹脂が一定以上のインキであるが、低湿度の環境下では目止め効果が十分に発揮されずにインキが洩れ出してしまう。
【0052】
本明細書において、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。