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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097089
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】塗布具
(51)【国際特許分類】
   B43K 8/02 20060101AFI20230630BHJP
   B43K 27/08 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
B43K8/02 100
B43K27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213246
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】390039734
【氏名又は名称】株式会社サクラクレパス
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】柏木 則子
(72)【発明者】
【氏名】中谷 泰範
【テーマコード(参考)】
2C350
2C353
【Fターム(参考)】
2C350GA04
2C350HA15
2C350HC01
2C350NA01
2C353KA02
2C353KA12
2C353KA19
(57)【要約】
【課題】長期間に亘って安定的に二つの線を同時に描画することが可能な塗布具を提供する。
【解決手段】塗布体部3を有し、塗布体部3を塗布対象物に接触させてインク等の塗布液を塗布する塗布具において、塗布体部3の少なくとも一つは、並設された第一塗布体部16と第二塗布体部17を含んで形成されるものとする。そして、第一塗布体部16は、先端面部分30と側面部分の間となる位置にR面形状となる曲面部43が形成されたものとする。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布体部を有し、前記塗布体部を塗布対象物に接触させて塗布液を塗布する塗布具であって、
前記塗布体部の少なくとも一つは、並設された第一塗布体部と第二塗布体部を含んで形成され、
前記第一塗布体部は、先端面部分と側面部分の間にR面形状となる曲面部が形成されていることを特徴とする塗布具。
【請求項2】
前記第一塗布体部は、側面部分の一部に、前記第二塗布体部の少なくとも一部を収容可能な収容溝部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の塗布具。
【請求項3】
前記第一塗布体部は、先端側部分が基端側部分よりも変形し易い部分であることを特徴とする請求項1又は2に記載の塗布具。
【請求項4】
前記第一塗布体部は、前記基端側部分に真っ直ぐに延びた部分を有することを特徴とする請求項3に記載の塗布具。
【請求項5】
前記第一塗布体部の側面部分は、先端側に傾斜面部を有しており、
前記傾斜面部は、先端側から基端側に向かうにつれて外側に離れるように傾斜しており、
前記曲面部は、前記先端面部分と前記傾斜面部の間に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の塗布具。
【請求項6】
前記曲面部は、丸みの半径が0.3mm以上2.5mm以下となることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の塗布具。
【請求項7】
前記第一塗布体部と前記第二塗布体部は、それぞれ第一塗布液と第二塗布液を塗布するものであり、
前記第二塗布液は、実質的に透明であり、前記第一塗布液に触れることで前記第一塗布液を変色させるものであり、
前記第一塗布体部と前記第二塗布体部のそれぞれを塗布対象物に接触させた複数接触状態とし、前記複数接触状態を維持させたままスライド移動させることで、前記第一塗布液と前記第二塗布液が一部重なった状態で塗布される塗布領域を形成可能であり、
前記塗布領域には、前記第二塗布液が実質的に透明な状態で塗布される部分と、前記第一塗布液が前記第二塗布液による変色をせずに塗布される部分と、前記第一塗布液が前記第二塗布液によって変色をした部分とが含まれることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の塗布具。
【請求項8】
前記塗布領域は、前記スライド移動の移動方向における基端位置から終端位置までの間に形成される領域であり、第一塗布液が塗布された第一塗布領域と、第二塗布液が塗布された第二塗布領域を含み、
前記第二塗布領域の基端位置は、前記第一塗布領域の基端位置よりも前記移動方向でより基端側に位置しており、
前記第二塗布領域の一部であり、且つ、前記第一塗布領域の基端位置よりも基端側となる部分では、前記第二塗布液が実質的に透明な状態で塗布されることを特徴とする請求項7に記載の塗布具。
【請求項9】
前記第一塗布体部は、側面部分の一部に、前記第二塗布体部の少なくとも一部を収容可能な収容溝部が形成されており、
前記第一塗布体部と前記第二塗布体部は、それぞれ前記複数接触状態としたときに塗布対象物と接触する第一塗布体側接触部と第二塗布体側接触部を有し、
前記塗布体部の先端側からみた平面視において、前記第二塗布体側接触部の少なくとも一部が、2つの前記第一塗布体側接触部の間の位置に配されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内蔵された塗布液をペン先等の塗布体に供給する塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
所謂マーキングペンのように、フェルトや合成樹脂等で作られたペン先チップを有する塗布具が広く知られている。このような塗布具として、一度の筆運びで(一筆で)二重線を引くことが可能な塗布具がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、別途成形された二つのペン先部を有するマーキングペンが開示されている。このマーキングペンは、幅広線を描画するペン先部(以下、幅広ペン先部とする)と、幅狭線を描画するペン先部(以下、幅狭ペン先部とする)を有する。そして、これら二つのペン先部の先端位置が面一となるように、二つのペン先部が並べて配置されている。
【0004】
このマーキングペンは、幅広ペン先部の先端部分と幅狭ペン先部の先端部分の間に隙間が形成されている(特許文献1の第1図等参照)。このことから、紙面等に描線を引くと、引かれた描線は、間隔を開けて平行に延びた二つの線となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平01-258999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来のマーキングペンは、長期間に渡って使用することで、幅広ペン先部が摩耗してしまったり、変形してしまったりする等の問題があり、長期間に渡って安定して使用するという観点から改良の余地があった。
【0007】
そこで本発明は、長期間に亘って安定的に二つの線を同時に描画することが可能な塗布具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一つの様相は、塗布体部を有し、前記塗布体部を塗布対象物に接触させて塗布液を塗布する塗布具であって、前記塗布体部の少なくとも一つは、並設された第一塗布体部と第二塗布体部を含んで形成され、前記第一塗布体部は、先端面部分と側面部分の間にR面形状となる曲面部が形成されていることを特徴とする塗布具である。
【0009】
本様相によると、長期間使用しても第一塗布体部が摩耗してしまったり、変形してしまったりすることを抑制可能であり、二つの線を同時に描画するとき、安定して規定された線の描画が可能となる。
【0010】
上記した様相は、前記第一塗布体部は、側面部分の一部に、前記第二塗布体部の少なくとも一部を収容可能な収容溝部が形成されていることが好ましい。
【0011】
かかる様相によると、目的とする二重線を描画する際の第二塗布体部の意図しない位置ずれを防止可能となる。
【0012】
上記した様相は、前記第一塗布体部は、先端側部分が基端側部分よりも変形し易い部分であることが好ましい。
【0013】
かかる様相のように、先端側部分を変形し易い部分としても、上記したように第一塗布体の摩耗や変形を抑制することが可能であるため、長期に亘って安定して使用が可能となる。また、基端側部分を比較的変形し難い部分とすることで、第一塗布体部を他の部材に取り付ける作業が容易となり、塗布具の組み立てが容易となる。
【0014】
上記した好ましい様相は、前記第一塗布体部は、前記基端側部分に真っ直ぐに延びた部分を有することがさらに好ましい。
【0015】
かかる様相によると、塗布具の組み立てがさらに容易となる。
【0016】
上記した様相は、前記第一塗布体部の側面部分は、先端側に傾斜面部を有しており、前記傾斜面部は、先端側から基端側に向かうにつれて外側に離れるように傾斜しており、前記曲面部は、前記先端面部分と前記傾斜面部の間に形成されていることが好ましい。
【0017】
かかる様相によると、第一塗布体部を自然な状態で塗布対象物に接触することができ、描画する二重線をより好ましい形状とすることができる。
【0018】
上記した様相は、前記曲面部は、丸みの半径が0.3mm以上2.5mm以下となることが好ましい。
【0019】
上記した様相は、前記第一塗布体部と前記第二塗布体部は、それぞれ第一塗布液と第二塗布液を塗布するものであり、前記第二塗布液は、実質的に透明であり、前記第一塗布液に触れることで前記第一塗布液を変色させるものであり、前記第一塗布体部と前記第二塗布体部のそれぞれを塗布対象物に接触させた複数接触状態とし、前記複数接触状態を維持させたままスライド移動させることで、前記第一塗布液と前記第二塗布液が一部重なった状態で塗布される塗布領域を形成可能であり、前記塗布領域には、前記第二塗布液が実質的に透明な状態で塗布される部分と、前記第一塗布液が前記第二塗布液による変色をせずに塗布される部分と、前記第一塗布液が前記第二塗布液によって変色をした部分とが含まれることが好ましい。
【0020】
かかる様相によると、第一塗布液の一部が変色して二重線となる一方で、本来であれば第二塗布液の塗布によって目立ってしまう部分を目立たなくさせることが可能であるので、整って見える二重線を引くことが可能となる。
【0021】
上記した好ましい様相は、前記塗布領域は、前記スライド移動の移動方向における基端位置から終端位置までの間に形成される領域であり、第一塗布液が塗布された第一塗布領域と、第二塗布液が塗布された第二塗布領域を含み、前記第二塗布領域の基端位置は、前記第一塗布領域の基端位置よりも前記移動方向でより基端側に位置しており、前記第二塗布領域の一部であり、且つ、前記第一塗布領域の基端位置よりも基端側となる部分では、前記第二塗布液が実質的に透明な状態で塗布されることがより好ましい。
【0022】
かかる様相によると、基端部分が整って見える二重線の描画が可能となる。
【0023】
上記した好ましい様相は、前記第一塗布体部は、側面部分の一部に、前記第二塗布体部の少なくとも一部を収容可能な収容溝部が形成されており、前記第一塗布体部と前記第二塗布体部は、それぞれ前記複数接触状態としたときに塗布対象物と接触する第一塗布体側接触部と第二塗布体側接触部を有し、前記塗布体部の先端側からみた平面視において、前記第二塗布体側接触部の少なくとも一部が、2つの前記第一塗布体側接触部の間の位置に配されていることがより好ましい。
【0024】
かかる様相によると、上記した二重線の描画が容易となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、長期間に亘って安定的に二つの線を同時に描画することが可能な塗布具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る塗布具を示す斜視図である。
図2図1の塗布具を示す断面図である。
図3図2の第一ペン先部材を示す斜視図である。
図4図3の第一ペン先部材を異なる方向からみた斜視図である。
図5図3の第一ペン先部材を示す側面図であり、(a)~(c)はそれぞれ異なる方向からみた様子を示す。
図6図3の第一ペン先部材を示す図であり、(a)は、前側からみた正面図であり、(b)は後側からみた背面図である。
図7図5(a)の第一ペン先部材を示す図であり、(a)はA-A断面図であり、(b)はB-B断面図である。
図8図2の第二ペン先部材を示す図であり、(a)は斜視図であり、(b)は側面図である。
図9図2の第一ペン先部の周辺を拡大して示す断面図である。
図10図2の先栓部材を示す図であって、(a)は前方側からみた斜視図であり、(b)は後方側からみた斜視図である。
図11図10の先栓部材を示す断面図である。
図12】(a)は、図10の先栓部材を後方側からみた断面斜視図であり、(b)は、図10の先栓部材を前方側からみた断面斜視図である。
図13】(a)は、図2の第二ペン先部の周辺を示す断面図であり、(b)は、(a)のペン先部材とペン先保持部材を示す分解斜視図である。
図14図2の中子部材を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
図15図2の塗布具を前方からみた正面図である。
図16図2の塗布具の第一ペン先部の周辺を示す斜視図である。
図17図2の塗布具の第一ペン先部の周辺を示す側面図である。
図18図1の塗布具の第一ペン先部を塗布対象物に近づけた様子を示す説明図である。
図19】(a)は、図1の塗布具で塗布対象物に二重線を引く様子を模式的に示す説明図であり、(b)は、図1の塗布具によって描画された二重線を模式的に示す説明図である。
図20図1の塗布具で塗布対象物に二重線を引く際の第一ペン先部の周辺を示す説明図である。
図21】(a)は、図1とは異なる実施形態に係る塗布具で二重線を引く際の第一ペン先部と描線の関係を示す説明図であり、(b)は、(a)で示す塗布具で描画された二重線を模式的に示す説明図である。
図22】(a)は、図1図21とは異なる実施形態に係る塗布具で二重線を引く際の第一ペン先部と描線の関係を示す説明図であり、(b)は、(a)で示す塗布具で描画された二重線を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書における塗布具は、フェルトペン、ラインマーカー、白板マーカー等の筆記具や、インキ等の液状のものを紙面や白板等の任意の対象物に塗り付ける用具を含む。
【0028】
本実施形態の塗布具1は、図1で示されるように、本体筒2と、第一ペン先部3(塗布体部)と、第二ペン先部4(塗布体部)を有する。つまり、この塗布具1は、本体筒2の長手方向の両端それぞれにペン先部分(第一ペン先部3、第二ペン先部4)を有しており、本体筒2の両側が共に使用可能な塗布具1である。つまり、長手方向の両側に設けられたいずれのペン先部分でも塗布液の塗布が可能である。
なお、以下の説明において「前後」の関係は、特に説明のない限り、第一ペン先部3側を前側とし、第二ペン先部4側を後側として説明する。
【0029】
本体筒2の長手方向における片側端部(前側端部)は開放端であり、先栓部材5が取り付けられている。また、塗布具1の内部には、図2で示されるように、第一インキ吸蔵体6(塗布液吸蔵体)と、第二インキ吸蔵体7(塗布液吸蔵体)から構成される2つのインキ吸蔵体が収容されている。さらに、塗布具1の内部には、中子部材8が配されている。
【0030】
本体筒2は、図2で示されるように、概形が略円筒状となる中空の部材であり、ペン軸(本体軸)を形成する軸筒となる。そして、長手方向の全体に亘って内部空間(収容空間)が形成されている。なお、本体筒2の長手方向は、塗布具1の長手方向であり、前後方向でもある。
【0031】
本体筒2は、長手方向の他方側端部、すなわち、先栓部材5が装着される端部とは逆側の端部に狭径部10(詳しくは後述する)を有する。
【0032】
第一ペン先部3は、第一ペン先部材16(第一塗布体部)と、第二ペン先部材17(第二塗布体部)からなる複数のペン先部材によって構成されている。このことから、第一ペン先部3は、平行に延びる二つの線を描くことができる(詳しくは後述する)。
【0033】
第一ペン先部材16は、プラスチック粉末等の粉末に熱をかけて形成した焼結芯(ポーラス体)であり、連続気孔を有する多孔質体である。すなわち、毛細管現象によりインキ(塗布液)を吸い込み、ペン先側(前側)へ移動させることが可能な部材である。
【0034】
本実施形態の第一ペン先部材16は、図3図5(a)で示されるように、ペン先を形成するペン先形成部20(先端側部分)と、その後方側に位置する基端側部21(基端側部分)を有する。そして、ペン先形成部20は、弾性変形可能であり、且つ、後側の部分である基端側部21よりも変形し易くなっている。
具体的には、ペン先形成部20の原料となる焼結用粉末を第一焼結用粉末とし、基端側部21の原料となる焼結用粉末を第二焼結用粉末としたとき、第一焼結用粉末が第二焼結用粉末よりも粒子径が小さい粉末となっている。なお、ここでいう「粒子径が小さい」とは、それぞれから同数(所定数N)だけ無作為に取り出した粒子の平均粒子径が小さいことをいう。
また、ペン先形成部20と基端側部21とでは、原料となる焼結用粉末の疎密度が異なる。なお、ここでいう「疎密度」とは、粒子の疎密状態をいい、例えば、粒子が密集した状態であれば密となり、粒子がまばらな状態であれば疎となる。ペン先形成部20と基端側部21を比較すると、ペン先形成部20が基端側部21に比べて密であり、粒子同士の中心間距離の最大値が小さい。
以上のことから、本実施形態の第一ペン先部材16は、ペン先形成部20が基端側部21よりも変形し易く、柔らかい筆記感となる。
【0035】
なお、本実施形態の第一焼結用粉末は、同じ材料(材質)で粒子径の大きさが異なる複数種類(2~3種類)の粉末を混ぜたものとしている。第二焼結用粉末もまた、同じ材料(材質)であり、粒子径の大きさで分けられる複数種類の粉末を混ぜたものとしている。
ここで、第一焼結用粉末、第二焼結用粉末とは、同じ材料の粉末でもよい。例えば、第一焼結用粉末を粉末α1、粉末α2を混ぜたものとし、粉末α1、粉末α2は、いずれも材料αの粉末であって粒子径が異なるものとする。このとき、第二焼結用粉末もまた、粉末α1、粉末α2を混ぜたものとしてもよい。第一焼結用粉末における粉末α1と粉末α2の割合と、第二焼結用粉末における粉末α1と粉末α2の割合を異なる割合とすることで、全体として異なる粉末とすればよい。
すなわち、焼結用粉末は、1種類の粉末、又は、2種類以上の粉末を混ぜたものでもよい。そして、2種類以上の粉末を混ぜたものとするとき、それぞれの粉末は同じ材料で粒子径の大きさが異なるものでもよい。また、第一焼結用粉末と第二焼結用粉末のそれぞれを構成する粉末の数は、同数であってもよく、異なっていてもよい。例えば、上記のようにそれぞれが2種類の粉末(粉末α1、粉末α2)によって構成されていてもよく、一方が1種類の粉末で構成され、他方が3種類の粉末で構成されていてもよい。
【0036】
また、第一ペン先部材16の全体形状に注目すると、図3で示されるように、第一ペン先部材16は、ペン先側(前側)に位置する部分が、基端側(後方側)に位置する部分よりも太い部分となっている。
すなわち、第一ペン先部材16は、図3図5(a)で示されるように、ペン先側太軸部23と、後方側細軸部24に区画される。ペン先側太軸部23は、上記したペン先形成部20と基端側部21の一部を含んで形成される部分であり、後方側細軸部24は、基端側部21から構成される部分である。
【0037】
ペン先側太軸部23は、図3で示すように、先端面部30(先端面部分)と、第一側面部31、第二側面部32、第三側面部33、第四側面部34から構成される4つの側面部(側面部分)と、後端面部35を有する。
【0038】
先端面部30は、先端側で傾斜面を形成する部分である。すなわち、図5(a)等で示されるように、第二側面部32側の端部が第一側面部31側の端部よりも前方に位置しており、あたかもペン先側太軸部23の先端部分を斜めに切り落としたかのような形状となっている。
また、図6(a)で示されるように、前方からみた平面視において、塗布方向X(図6では左右方向)の長さが、塗布方向Xと直交する方向(図6では上下方向)の長さよりも長くなっている。なお、ここでいう塗布方向Xと直交する方向とは、第一側面部31と第二側面部32の離間方向でもある。
この塗布方向Xは、水平方向のうちの一方向であり、目的とする線(多重線であり、本実施形態では二重線)を描画するときに塗布具1を移動させる方向(図19(a)等参照)である。
【0039】
側面部の一つである第一側面部31には、図3で示されるように、凹溝である収容溝部38が形成されている。
収容溝部38は、ペン先側太軸部23の内側に向かって窪む溝であり、横断面の形状が円弧状(略半円状)となる溝であって、溝壁部分と溝底部分が湾曲面を形成している。また、第一側面部31の前端近傍から後端近傍までの間で略全域に亘って延びている。
【0040】
第二側面部32は、第一側面部31の反対側に位置する側面部分である。図6(a)で示されるように、ペン先側からみた平面視において、外側に凸となる湾曲面を形成する。なお、図3図5(a)で示されるように、第二側面部32の前端部分は、第一側面部31の前端部分よりも前方に位置している。
【0041】
第三側面部33、第四側面部34は、図6(a)で示されるように、塗布方向Xにおいて互いに反対側となる側面部分である。すなわち、いずれも第一側面部31と第二側面部32の間に位置する。
【0042】
第三側面部33と第四側面部34は、図3で示されるように、前側部分に側方傾斜部40(傾斜面部)を有する。側方傾斜部40は、側面部の一部を斜めに切り落としたような形状であり、後方に向かうにつれて外側(塗布方向Xにおける外側)に向かう傾斜面を形成している。
【0043】
さらに、本実施形態のペン先側太軸部23には、先端面部30と第三側面部33の間と、先端面部30と第四側面部34の間のそれぞれに、第一曲面部43(曲面部)が形成されている。詳細には、第一曲面部43は、先端面部30と、第三側面部33、第四側面部34のそれぞれに設けられた側方傾斜部40の間に位置する。
【0044】
第一曲面部43は、湾曲面(R面)であり、丸みを帯びた角部分を形成している。本実施形態では、半径(曲率半径)を一定以上大きくしており、詳細には、丸みの半径(R)が0.3mm以上であって2.5mm以下の曲面としている。
なお、第一ペン先部材16は、図3で示されるように、前後方向に延びるペン先チップであり、第一ペン先部材16を塗布方向X(図6(a)等参照)で二分する仮想面(図示しない)を対称面とする鏡面対称性を有している。
【0045】
さらに本実施形態のペン先側太軸部23には、図3図4で示されるように、第二曲面部44、第三曲面部45、第四曲面部46、第五曲面部47、第六曲面部48、第七曲面部49(図4参照)が形成されている。
【0046】
第二曲面部44は、図3で示されるように、先端面部30、2つの第一曲面部43及び2つの側方傾斜部40のそれぞれと、第二側面部32との間に形成された湾曲面(R面)であり、丸みを帯びた角部分を形成している。
【0047】
第三曲面部45は、図3で示されるように、先端面部30と、収容溝部38のペン先側(前端側)端部との間に形成された湾曲面(R面)であり、丸みを帯びた角部分を形成している。
【0048】
第四曲面部46は、図3で示されるように、第一側面部31の縁部分の一部に形成されている湾曲面(R面)であり、丸みを帯びた角部分を形成する。詳細に説明すると、第四曲面部46の一方は、第一側面部31と第三側面部33の間に大部分が位置しており、もう一方は、第一側面部31と第四側面部34の間に大部分が位置している。
具体的には、一方は、第一側面部31と第三側面部33の間から前方に延び、第一側面部31と第一曲面部43の間、第一側面部31と先端面部30の間、第一側面部31と第三曲面部45の間を経て、第五曲面部47に連なる。また、後端は、第六曲面部48に連なる。もう一方もまた、第一側面部31と第四側面部34の間から前方に延び、上記と同様に各部との間を経て、第五曲面部47に連なる。また、後端が第六曲面部48に連なる。
【0049】
第五曲面部47は、図3で示されるように、収容溝部38と第一側面部31の間に形成されている湾曲面(R面)であり、丸みを帯びた角部分を形成する。第五曲面部47は、塗布方向Xで離れた位置にそれぞれ一つずつ形成されており、前後方向に延びている。
言い換えると、収容溝部38の幅方向の両端部のそれぞれと、第一ペン先部材16の側面部であって収容溝部38の外側に位置する部分(第一側面部31のうちで収容溝部38が形成されていない他の部分)の間に、第五曲面部47が形成されている。
【0050】
第六曲面部48は、図3図4で示されるように、収容溝部38及び4つの側面部と、後端面部35の間に形成されている湾曲面(R面)であり、丸みを帯びた角部分を形成する。第六曲面部48は、環状に連続するように延びている。
【0051】
第七曲面部49は、図4で示されるように、後方側細軸部24の前端側部分(基端側部分)に形成された湾曲面(R面)である。すなわち、後方側細軸部24の前端側部分が、前方に向かうにつれて外側に広がるように湾曲しつつ延びており、この第七曲面部49が形成されている。この第七曲面部49は、後方側細軸部24の内側へ向かって凸となるように湾曲する湾曲面である。
【0052】
ここで、図5(a)で示されるように、塗布方向Xを視線方向とする平面視おいて、第一側面部31、第二側面部32のそれぞれは、互いに平行で直線状に延びる長辺部31a,32aを有する。本実施形態では、長辺部31a,32aは、ペン先側太軸部23の前端よりも後方側に離れた部分から、ペン先側太軸部23の後端までの間に位置する。
また、図5(c)で示されるように、収容溝部38側からみた平面視において、第三側面部33、第四側面部34のそれぞれは、互いに平行で直線状に延びる長辺部33a,34aを有する。長辺部33a,34aは、ペン先側太軸部23の前端よりも後方側に離れた部分から、ペン先側太軸部23の後端までの間に位置する。なお、4つの長辺部31a,32a,33a,34aの前端部分は、前後方向の位置が同一である。
つまり、ペン先側太軸部23は、後方側の部分、すなわち、前端よりも後方側に離れた部分から後端に至るまでの部分が真っ直ぐに延びた部分となっている。この部分は、横断面の面積及び形状が同形又は略同形のまま直線状に延びる部分である。
【0053】
後方側細軸部24は、図4図6(b)で示されるように、後端面部35の周縁部分(第六曲面部48)のいずれの部分からも内側からに離れた位置に形成されている。すなわち、4つの側面部(第一側面部31、第二側面部32、第三側面部33、第四側面部34)及び収容溝部38から内側に離れた位置に形成されている。
より詳細には、第一側面部31から後方側細軸部24までの距離L1が、他の側面部から後方側細軸部24までの距離よりも長くなっている。なお、特に限定されるものではないが、この距離L1を0.8mm以下となるように形成している。
そして、後方側細軸部24は、収容溝部38からも離れた位置に形成されている。すなわち、収容溝部38のうち、最も後方側細軸部24に近い部分(溝底であり、最深部)から後方側細軸部24までが所定距離L2だけ離れるように形成している。
【0054】
また、後方側細軸部24は、図3図4等で示されるように、後端面部35から後方に延びた棒状体である。この後方側細軸部24は、後端側に向かうにつれて細くなるように形成されている。すなわち、後端側に向かうにつれて横断面の面積が小さくなり、後端面の面積が各部の横断面の面積よりも小さい。
なお、図7で示されるように、本実施形態の後方側細軸部24は、前側よりの部分と、後側よりの部分で横断面の形状が異なる。前側よりの部分では、図7(a)で示されるように、角丸の略四角形と半円を組み合わせたような形状となっている。また、図6(b)、図7(b)等で示されるように、後方側細軸部24は、後側に向かうにつれて形状が円形に近づいていき、後端面が円形(略円形)となっている。後方側細軸部24の後端面を直径2.0mmの円形としているが、この直径は2.0mm以上であってもよい。しかしながら、インキ吸蔵体から供給されるインキを安定させるという観点から、後方側細軸部24の後側部分を細くすることが好ましい。すなわち、後側の部分を細くすることで、インキ吸蔵体(中綿)に対して挿入し易くすることができる。また、その際の挿入長さ(差し込まれた部分の長さ)を十分に長くしても、中綿が圧縮され難くなるので好ましい。
また、後方側細軸部24の側面の一部には、前側から後側に向かって延びる後方側曲面部24aが設けられている(図4図5(c)、図6参照)。この後方側曲面部24aは、後側に向かうにつれて細くなる(幅が狭くなる)ように形成されており、各部における丸みの半径(R)が異なる。特に限定されるものではないが、最も前端側の丸みの半径(R)が0.3mmであり、最も後端側の丸みの半径(R)が0mmである。
【0055】
第二ペン先部材17は、図8等で示されるように、棒状のペン先チップである。具体的には、前端側(ペン先側)から順にペン先部53、大径部54、小径部55が並列しており、これらが一体となって形成されている。
ペン先部53は、前側(先端側)の外形が略半球状であり、後側(基端側)の外形が略円錐台状となる部分である。
大径部54と小径部55は、共に略円柱状の部分であり、大径部54が小径部55よりも径が大きな(横断面の面積が大きな)部分となっている。このため、第二ペン先部材17は、長手方向(前後方向)の中途部分であり、大径部54と小径部55の境界となる部分に段差部を有する。なお、小径部55は、後側部分に、後端に向かうにつれて径が小さくなるテーパ状部分55aを有する。
【0056】
なお、本実施形態の第二ペン先部材17は、内部に微細な孔を有する合成樹脂を押出成形して引き伸ばし、これらの孔を残して形成されている。そして、本実施形態では、合成樹脂として、エンジニアリングプラスチック(ポリアセタール樹脂)を採用している。つまり、本実施形態の第二ペン先部材17は、プラスチックチップである。
以上のことから、第二ペン先部材17は、弾性を有し、第一ペン先部材16に比べて耐摩耗性が高い部材なっている。そして、第二ペン先部材17は、図示を省略するが、ペン先部53の前端に位置する半球状の部分のうち、突端周辺にインキの流出口となるスリット(開口)を有しており、小径部55の後端にインキの導入口となるスリットを有する。そして、これら前後のスリットを繋ぐインキ通路を内部に有する。このインキ通路は、毛細管現象によってインキを運ぶ微細な孔である。すなわち、第二ペン先部材17もまた、インキ(塗布液)をペン先側(前側)へ移動させることが可能な部材である。
【0057】
先栓部材5は、図2図9等で示されるように、前側部分が本体筒2の外部に露出し、後側部分が本体筒2の内部に収容された状態で取り付けられる。
この先栓部材5は、図10で示されるように、前側開口部60と後側開口部61を有する。そして、図11で示されるように、前側開口部60と後側開口部61の間に長手方向(前後方向)の全体に亘って内部空間62が形成されている。つまり、先栓部材5は、前端側と後端側で内外が連通する筒状の部材である。
この先栓部材5には、図10図11等で示されるように、前端側(第一ペン先部3の先端側)の部分に支持突起部65が設けられている。また、後端側の部分に第一切欠部66と、第二切欠部67が設けられている。
【0058】
ここで、先栓部材5の内部空間62は、図11で示されるように、前側収容部70と、第一後方収容部71と、第二後方収容部72に区画されている。詳細に説明すると、先栓部材5は、内部に仕切壁部73を有しており、この仕切壁部73によって、内部空間62の後側部分が第一後方収容部71と、第二後方収容部72に区画されている。
なお、後側開口部61もまた、仕切壁部73によって第一後側開口部61aと第二後側開口部61bに区画される。第一後側開口部61aが第一後方収容部71と外部を連通する開口部分であり、第二後側開口部61bが第二後方収容部72と外部を連通する開口部分である。
【0059】
さらに、先栓部材5の内部には、前側収容部70の後方に隣接する位置に、立壁状部75が設けられている。この立壁状部75は、前側収容部70と後方側の空間(第一後方収容部71、第二後方収容部72)とを区画する立壁状の部分である。この立壁状部75には、第一連通孔部79、第二連通孔部80が設けられている。
第一連通孔部79は、前側収容部70と第一後方収容部71を連通する孔であり、立壁状部75の一部を厚さ方向に貫通する。
第二連通孔部80は、前側収容部70と第二後方収容部72を連通する孔であり、立壁状部75の一部を厚さ方向に貫通する。
特に限定されるものではないが、本実施形態では、立壁状部75のうち、前側収容部70と第二後方収容部72の間に位置する部分の厚さ(前後方向の長さ)が、前側収容部70と第一後方収容部71の間に位置する部分の厚さよりも厚くなっている。
なお、第二連通孔部80は、ペン先側部80a(拡径部)、中間部80b、後方部80c(狭径部)を有する。中間部80bは、ペン先側部80aと後方部80cの間に位置し、後方部80cに向かうにつれて細くなる(横断面の面積が小さくなる)部分である。ペン先側部80aは、後方部80cよりも拡径された部分(横断面の面積が大きい部分)となっている。
【0060】
支持突起部65は、図10(a)等で示されるように、前側開口部60と隣接する位置で、先栓部材5の本体部分の前端面から前方に突出する突起部分である。この支持突起部65には、内側向きの面が位置する部分に、支持溝部83が形成されている。支持溝部83は、外向きに窪んだ溝である。
【0061】
前側収容部70には、図11図12で示されるように、支持溝形成部85が設けられている。支持溝形成部85は、前側収容部70の内周面に形成され、外側に向かって窪んだ溝である。支持溝形成部85は、支持溝部83の後方に位置し、支持溝部83と共に一連の溝部分(以下、先栓側溝部87とも称する)を形成する。すなわち、支持溝部83の内側面(溝底や溝壁を形成する面)と支持溝形成部85の内側面とが、一連の面を形成して先栓側溝部87が形成される。
なお、この先栓側溝部87の溝壁部分には、複数(2つ)の支持突起部88が設けられている。支持突起部88は、周囲よりも隆起した部分であり、突端部分が丸みを帯びた形状となっている(図15参照)。この支持突起部88は、先栓側溝部87の前端から後端に至るまでの間で前後方向に延びている。すなわち、先栓側溝部87の全域に亘って延びている。
【0062】
また、前側収容部70には、図11図12(b)等で示されるように、複数の支持リブ部90が設けられている。支持リブ部90は、前側収容部70の内周面から内側に突出する突起部分であり、前後方向に延びている。複数の支持リブ部90は、前側収容部70の周方向で離れた位置にそれぞれ形成されている。
【0063】
なお、第一後方収容部71には、図11図12で示されるように、第一位置決め突起93が設けられている。第一位置決め突起93は、立壁状部75のうち、第一連通孔部79が形成される部分の後方に設けられている。
また、第二後方収容部72には、第二位置決め突起94が設けられている。第二位置決め突起94は、立壁状部75の後方に隣接する位置に形成されている。上記した第二連通孔部80は、立壁状部75と第二位置決め突起94を貫通して延びる孔である。
【0064】
第一切欠部66、第二切欠部67は、図10図11等で示されるように、いずれも先栓部材5の後方側に形成された切り欠き状の部分である。詳細には、先栓部材5の側面部分における後端近傍に形成され、後端から前方に向かって延びている。言い換えると、第一切欠部66、第二切欠部67は、側面部分の一部が欠落して形成される欠落部である。
これら第一切欠部66、第二切欠部67は、先栓部材5の側面部分のうち、仕切壁部73を挟んで互いに逆側(反対側)となる位置にそれぞれ設けられている。
【0065】
また、先栓部材5には、図10(a)等で示されるように、2つの流路形成部98が設けられている。流路形成部98は、塗布具1の内外を連通する空気流路を形成する。詳細には、図11図12(b)等で示されるように、前側収容部70の内周面に形成された流路形成凹部98aと、立壁状部75に形成された流路形成孔部98bと、流路形成孔部98bの後方の空間とが前後方向で連続し、流路形成部98を形成している。なお、ここでいう「流路形成孔部98bの後方の空間」は、第一位置決め突起93と隣接する位置で、第一位置決め突起93に三方を囲まれた空間である。流路形成孔部98bは、第一連通孔部79と隣接する位置で一体に形成された孔であり、第一連通孔部79と同様に立壁状部75を厚さ方向に貫通する。
【0066】
第一インキ吸蔵体6は、図9で示されるように、略円筒状の外郭部材6aと、中綿6b(繊維収束体)を有している。そして、外郭部材6aの内部に中綿6bを詰め込み、詰め込んだ中綿6bにインキを含侵させて形成している。
第二インキ吸蔵体7も同様に、外郭部材7a、中綿7bを有している。そして、外郭部材7a内に詰め込まれた中綿7bにインキを含侵させている。
なお、特に限定されるものではないが、外郭部材6a,7aは、PP(ポリプロピレン)等の適宜な材料によって形成される樹脂製の筒体であり、組み立て前の外形が略円筒状となる部材である。また、中綿6b,7bは、インキを含浸可能な連続気孔を有する繊維収束体である。この中綿6b,7bは、適宜の繊維で構成されており、ポリエステル繊維等の合成繊維であってもよく、綿、パルプ等の植物繊維であってもよく、羊毛、生糸等の動物繊維であってもよい。
【0067】
本実施形態では、第一インキ吸蔵体6と第二インキ吸蔵体7に、それぞれ別のインキが含侵されている。すなわち、第一インキ吸蔵体6に含侵された第一インキ(塗布液)と、第二インキ吸蔵体7に含侵された第二インキ(塗布液)は、色相、彩度、明度の少なくとも一つが異なる。
【0068】
後方側の第二ペン先部4は、図13(a)で示されるように、ペン先部材100(逆側塗布体部)と、ペン先保持部材101とを有する。この第二ペン先部4は、逆側の第一ペン先部3とは異なり、複数線(二重線)の一筆での描画を目的とするものではない。
【0069】
ペン先部材100は、棒状に延びたプラスチックチップである。すなわち、ペン先部材100は、毛細管現象によってインキを吸い込み、ペン先側(後側)へ移動させることが可能な部材である。
具体的には、図13(b)で示されるように、長手方向の一端側(ペン先側)から先端細軸部100a、ペン先側テーパ状部100b、太軸部100c、細軸部100d、挿入側部100eを有している。
【0070】
先端細軸部100aは、ペン先側の端部が丸みを帯びた形状となる棒状部分である。
ペン先側テーパ状部100bは、ペン先側(先端細軸部100a側)に向かうにつれて先細りする部分である。
太軸部100cと細軸部100dは、いずれも丸棒状の部分であり、太軸部100cは細軸部100dよりも太い部分となっている。このため、太軸部100cと細軸部100dの境界部分には段差部が形成されている。
挿入側部100eは、ペン先側から離れるにつれて細くなる部分を有する。詳細には、長手方向の他端側端部(ペン先側とは逆側となる端部)に向かうにつれて細くなっていき、他端側端部が丸みを帯びた形状となっている。
【0071】
ペン先保持部材101は、外形が略円錐台状となる先端側部101aと、外形が円筒状となる挿入筒部101bが一体に形成された部材である。
すなわち、先端側部101aは、側面部分が挿入筒部101b側に向かうにつれて拡径するテーパ面となっており、挿入筒部101b側の端部に段差形成面部102を有する。段差形成面部102は、先端側部101aの側面部分(テーパ面)と挿入筒部101bの外周面を繋ぐように形成される立壁状の面である。
また、ペン先保持部材101は、段差形成面部102から挿入筒部101b側に突出するリブ部103を有する。本実施形態では、複数(4つであり、1つについては図13では図示しない)のリブ部103が設けられており、挿入筒部101bの周方向で間隔を空けて配されている。
【0072】
ペン先保持部材101は、挿通孔部104を有する。挿通孔部104は、ペン先保持部材101を長手方向(先端側部101a、挿入筒部101bの並び方向)に貫通する孔である。すなわち、挿通孔部104の一方の開口が先端側部101aに、他方の開口が挿入筒部101bに形成されている。この挿通孔部104は、長手方向の一方側(先端側部101aの開口側)の部分が長手方向の他端側(挿入筒部101bの開口側)よりも細い部分になっている。つまり、挿通孔部104の内周面には、これらの境界部分に段差部分104a(図13(a)参照)が形成されている。
【0073】
中子部材8は、図14で示されるように、略円筒状の部材である。すなわち、図14(b)で示されるように、ペン先側に位置する第一開口部116と、その逆側(本体筒2の奥側)に位置する第二開口部117を有しており、第一開口部116と第二開口部117の間に中子内部空間118が形成されている。この中子内部空間118は、中子部材8の長手方向(前後方向)の全体に亘って形成される空間であり、第一開口部116、第二開口部117を介して外部と連続している。
【0074】
中子部材8の外側側面のうち、第一開口部116側の部分は、図14(a)で示されるように、第一開口部116側の端部に向うにつれて細くなるテーパ面となっている。また、第二開口部117側の部分に補強リブ119が形成されている。
【0075】
中子内部空間118では、図14(b)で示されるように、第二開口部117の周辺となる部分が、第一開口部116側に向かうにつれて細くなる(横断面の面積が小さくなる)部分となっている。すなわち、第二開口部117は、第一開口部116よりも開口面積が大きい。このことから、組み立ての際、第二インキ吸蔵体7を挿通し易くなっている。
また、第一開口部116の周辺となる部分に複数の保持用突起120が形成されている。保持用突起120は、中子内部空間118の内周面の周方向に離れた位置にそれぞれ形成されている。
【0076】
続いて、本実施形態の塗布具1の構造について説明する。
本実施形態の塗布具1では、図9等で示されるように、第一ペン先部材16と第二ペン先部材17のそれぞれの後側部分と、第一インキ吸蔵体6と第二インキ吸蔵体7のそれぞれの前側部分が先栓部材5に保持される。
【0077】
第一ペン先部材16は、図9で示されるように、ペン先側太軸部23の後側部分が前側収容部70内に位置しており、後方側細軸部24の一部が第一連通孔部79に挿通される。そして、その後方側の部分が、第一後方収容部71内において、第一インキ吸蔵体6に前方側から挿入される。すなわち、第一ペン先部材16の後方側細軸部24は、後側部分の側面と後端面が中綿6bと接触した状態となっている。
本実施形態では、上記したように、ペン先側太軸部23の後側を真っ直ぐに延びた部分とし、且つ、ペン先側に比べて変形し難い部分としている。このため、第一ペン先部材16を先栓部材5に前方から挿入し、ペン先側太軸部23の後端部分を前側収容部70と係合(嵌合)させる作業を行う際、ペン先側太軸部23が差し込み易く、作業が容易である。また、上記したように、第一ペン先部材16の後端部分が細いため、挿入長さを長くしても中綿が圧縮され難い。このため、インキの安定供給が可能である。
【0078】
前側収容部70内では、図15で示されるように、第一側面部31に形成された収容溝部38の溝底部分に第二ペン先部材17の側面部分が密着している。また、第二側面部32、第三側面部33、第四側面部34のそれぞれが前側収容部70に形成された支持リブ部90と接触している。このことから、第一ペン先部材16は、前後方向と交わる方向に位置ずれしない状態となっている。
なお、第一ペン先部材16が前側収容部70よりもやや大きい場合、第一ペン先部材16を前側収容部70に強く押し入れることで、第一ペン先部材16の一部(支持リブ部90と接触する部分及びその周辺)が適度に変形する。このことにより、第一ペン先部材16が先栓部材5に安定して保持された状態となる。したがって、線を描画するとき等においても、第一ペン先部材16が先栓部材5に適切に保持された状態が維持される。
また、このように第一ペン先部材16が収容されることで、第一ペン先部材16が流路形成部98から離れた位置に配され、流路形成部98の内側にペン先部材(第一ペン先部材16、第二ペン先部材17)が位置しない。このことから、塗布具1の先端から、前側収容部70、第一後方収容部71を経て(図9等参照)、本体筒2の内部空間に至る空気流路が形成される。
【0079】
第二ペン先部材17は、図15で示されるように、一部が第一ペン先部材16の収容溝部38の内側に位置しており、他の一部が先栓側溝部87の内側に位置している。ここで、収容溝部38の内側に位置する部分のうち、側面の一部が収容溝部38の溝底部分と接触している。また、先栓側溝部87の内側に位置する部分のうち、側面の一部と他の一部がそれぞれ別の支持突起部88と接触している。つまり、第二ペン先部材17の側面のうち、周方向に離れた3カ所が収容溝部38の溝底部分と、一の支持突起部88の突端部分、他の支持突起部88の突端部分のそれぞれと接触している。
なお、先栓側溝部87の内側部分のうち、支持突起部88が形成されていない部分(溝底や溝壁となる部分)と、第二ペン先部材17の側面の間には隙間が形成される。
つまり、収容溝部38と先栓側溝部87とが向かい合わせに配されることで、図9図15で示されるように、前後方向に延びる空間が形成される。そして、この空間に第二ペン先部材17の大径部54(図9等参照)の大半の部分が配される。
【0080】
具体的に説明すると、第二ペン先部材17は、図9図16で示されるように、前端のペン先部53が収容溝部38の前端よりも前方に位置している。この部分は、収容溝部38や先栓側溝部87に収容されない部分である。また、その後側に位置する大径部54の前側部分は、支持突起部65よりも前方に位置している。この部分は、片側が収容溝部38の内側に収容されると共に、その逆側が先栓側溝部87に収容されていない。そして、その後側に位置する部分が、上記したように、収容溝部38と先栓側溝部87によって周囲(四方)の略全域を囲まれる部分である。
このように、本実施形態では、第二ペン先部材17の少なくとも一部が収容溝部の38内側に配される。また、第二ペン先部材17のうち、収容溝部38の内側に収容される部分は、収容溝部38によって片側の一部が覆われると共に逆側が開放される部分と、収容溝部38と先栓側溝部87の双方に両側から保持される部分とを有する。
【0081】
ここで、図17で示されるように、第二ペン先部材17は、先端面部30と垂直な方向を突出方向X2とすると、第二ペン先部材17のうちで先端面部30と同一平面上となる部分から所定長さL3だけ突出方向X2に突出している。
この所定長さL3は、第二ペン先部材17のうちで先端面部30と同一平面上に位置する部分から、突出方向X2における先端部分までの距離でもある。
【0082】
また、図15で示されるように、前方からみた平面視において、一方の第一曲面部43の一部と、もう一方の第一曲面部43の一部との間に、第二ペン先部材17の一部が位置している。本実施形態では、この平面視で、2つの第一曲面部43の一部分同士の間に、第二ペン先部材17の突端周辺部の一部(インキの流出口となる部分の一部)が位置している。
【0083】
第二ペン先部材17の後方側の部分は、図9で示されるように、第二後方収容部72内において、第二インキ吸蔵体7に前方側から挿入される。すなわち、第二ペン先部材17の後方側部分(小径部55)は、中綿7bと接触している。
【0084】
ここで、図9等で示されるように、第一インキ吸蔵体6の前側部分(前端部)と、第二インキ吸蔵体7の前側部分(前端部)が、仕切壁部73を挟んだ両側にそれぞれ位置する。すなわち、仕切壁部73によって区画された別空間(第一後方収容部71、第二後方収容部72)にそれぞれ収容されている。
【0085】
このとき、第一インキ吸蔵体6の前端部は、第一ペン先部材16と第一インキ吸蔵体6の連結部分となる。また、第二インキ吸蔵体7の前端部は、第二ペン先部材17と第二インキ吸蔵体7の連結部分となる。
なお、ここでいう連結部分とは、塗布体(ペン先部材)をインキ吸蔵体に差し込んだ際、塗布体の差し込み部分のうちの前端(差し込み対象となる中綿の前端)が位置する部分とする。
このように、第一ペン先部材16側の連結部分と、第二ペン先部材17側の連結部分の間に仕切壁部73が配された(介在する)構造によると、第一インキと第二インキの意図しないインキの混ざりを防止できる。
【0086】
また、図13(a)で示されるように、塗布具1の後端側の部分では、ペン先部材100がペン先保持部材101を介して本体筒2に取り付けられている。詳細には、狭径部10に対して挿入筒部101bが外側から挿入され、挿入筒部101bが内嵌された状態となっている。このとき、狭径部10は、内周部分に複数のリブを有している(詳細な図示を省略する)。そして、それぞれのリブは、本体筒2の周方向で間隔を空けて配され、いずれも前後方向に延びている。
この狭径部10の複数のリブは、挿入筒部101bの外周面に外側から接触する。また、一部のリブは、ペン先保持部材101のリブ部103に前方から(図13の左側から)接触する。このことから、ペン先保持部材101のリブ部103間に形成される空隙と、狭径部10のリブ間に形成される空隙により、塗布具1の内外を連通する空気流通路が形成される。
【0087】
また、ペン先保持部材101の挿通孔部104にペン先部材100が挿通された状態となっている。すなわち、ペン先部材100は、ペン先部材100と先端細軸部100aを含む一部分が、ペン先保持部材101よりも後方(図13では右方)に位置し、外部に露出した状態となっている。そして、太軸部100cの一部と細軸部100dの一部を含む一部分が、挿通孔部104の内部に位置する。さらに、他の一部がペン先保持部材101よりも前方(図13では左方)に位置する。このとき、ペン先部材100の長手方向と本体筒2の長手方向は、同方向(前後方向)となっている。また、ペン先保持部材101の内部では、太軸部100cと細軸部100dの境界に形成される段差部が、挿通孔部104の段差部分104aに当接した状態となっている。
【0088】
一方で、第二インキ吸蔵体7の後側部分は、中子部材8に挿通された状態となっている。すなわち、第二インキ吸蔵体7の後側部分は、第二開口部117から挿入され、中子内部空間118の内部を経て、第一開口部116から後方(第二ペン先部4のペン先側)に延びている。すなわち、一部が中子内部空間118に配され、その後方に位置する部分が中子部材8よりも後方に配されている。そして、第二インキ吸蔵体7の後側部分には、ペン先部材100が後方側から挿入されている。詳細には、細軸部100dの一部と挿入側部100eとが挿入された状態となっている。そして、中子部材8は、第二インキ吸蔵体7のうち、ペン先部材100が挿入された部分の大部分を囲むように配される。
【0089】
以上のように、本実施形態の塗布具1は、第一ペン先部3と、第二ペン先部4のそれぞれに空気の流通路を有する。また、第二インキ吸蔵体7には、図2で示されるように、長手方向の両端それぞれにペン先部材(第二ペン先部材17、ペン先部材100)が差し込まれている。すなわち、第二インキ吸蔵体7は、二つのペン先部材にインキを供給する部材である。
【0090】
本実施形態の塗布具1は、上記したように、第一ペン先部3による二重線(複数線)の一筆での描画と、第二ペン先部4による線の描画が可能である。
【0091】
第一ペン先部3によって紙面等の塗布対象物Aに目的とする二重線を引く際には、図18で示されるように、まず、先端面部30を塗布対象物Aに向けた姿勢とする。また、第二ペン先部材17を塗布対象物Aに接触させた状態とする。
ここで、本実施形態の塗布具1は、塗布対象物Aの表面と先端面部30が互いに平行となる姿勢とすると、塗布方向X(図19(a)参照、図18では手前奥方向)を視線方向とする平面視において、塗布具1の全体が所定角度θ1だけ傾斜した状態となる。なお、「塗布対象物Aの表面」は、塗布対象面であり、水平面でもある。
【0092】
すなわち、上記平面視において、本実施形態の塗布具1の中心軸(塗布具1の長手方向に延びる仮想線)と、塗布対象物Aの表面とのなす角が所定角度θ1となる。このなす角は、塗布具1の中心軸と、所定方向X3に延びた仮想線のなす角でもある。
なお、所定方向X3は、水平方向の一方向であり、上方からみた平面視で塗布方向Xと直交する方向である(図19(a)等参照)。ところで、図18の右側には、塗布具1の使用者(図示しない)が位置することとなる。つまり、所定方向X3は、塗布具1の使用者を基準とした前後方向(図18の左右方向)でもある。言い換えると、塗布具1の使用者を基準とした手前奥方向である。したがって、塗布具1が上記した姿勢であるとき、塗布具1は、使用者側(図18では右側)に傾斜する姿勢となる。すなわち、上方に向かうにつれて使用者側に近づくように延びた姿勢となる。
【0093】
また、この姿勢では、第二ペン先部材17のペン先部53が塗布対象物Aに接触する一方で、第一ペン先部材16が塗布対象物Aに接触しない。このことから、この姿勢のまま塗布具1を水平方向に移動させると、第二ペン先部材17によって一つの線が描画できる。つまり、第一ペン先部3は、一筆での二重線の描画の他、第二ペン先部材17による一筆での一つの線の描画が可能である(第二ペン先部材17のみの筆跡を得ることも可能である)。
【0094】
これに対し、目的とする二重線を引くときには、上記した姿勢(図18参照)から、塗布方向Xの進行方向側(図19(a)参照)に塗布具1を傾けていく。このことにより、図20で示されるように、第一ペン先部材16、第二ペン先部材17のそれぞれが塗布対象物Aに接触した状態(複数接触状態)となる。つまり、塗布具1を傾けていくことで、第二ペン先部材17のペン先部53が塗布対象物Aに接触した状態(図18参照)から、第一ペン先部材16の第一曲面部43と第二ペン先部材17のペン先部53が共に塗布対象物Aに接触した状態に移行する(図20参照)。
【0095】
ここで、第一ペン先部材16の第一曲面部43は、目的とする二重線を引くとき、対象物にインキを塗布する塗布面(塗布面部)として機能する。このように、第一曲面部43が塗布対象物Aと接触する塗布面となる構造によると、長期間使用しても第一ペン先部材16が摩耗し難く、且つ、意図しない変形をし難い。
【0096】
このように、第一ペン先部材16、第二ペン先部材17が共に塗布対象物Aに接触した状態では、図20で示されるように、所定方向X3(図20では手前奥方向)を視線方向とした平面視で、塗布具1の全体が所定角度θ2だけ傾斜した状態となる。
つまり、本実施形態の塗布具1では、目的とする二重線を描画するとき、使用者を基準とした前後方向(所定方向X3)と、同左右方向(塗布方向X)のそれぞれで傾斜した姿勢となる。
【0097】
第一ペン先部材16、第二ペン先部材17が共に塗布対象物Aに接触した状態で塗布具1(本体筒2)を塗布方向Xの進行方向に水平移動(スライド移動)させることで、目的とする二重線を描くことができる。
この目的とする二重線は、図19(b)で示されるように、第一ペン先部材16(第一曲面部43)からインキが塗布されることで形成される第一の線200と、第二ペン先部材17からインキが塗布されることで形成される第二の線201から構成される。具体的には、この二重線は、第一の線200が第二の線201よりも太い幅広線であり、第二の線201は第一の線200の線よりも細い幅狭線である。
【0098】
また、目的とする二重線は、塗布方向Xにおいて、第一の線200の基端位置200aと第二の線201の基端位置201aが異なる位置となる。すなわち、第二の線201の基端位置201aがより塗布方向X(塗布具1の移動方向)の基端側に位置する。
同様に、塗布方向Xにおいて、第一の線200の終端位置200bと第二の線201の終端位置201bもまた、異なる位置となる。なお、本実施形態の目的とする二重線は、第一の線200と第二の線201の一部同士が重なって形成される線となっている。
なお、第一ペン先部材16、第二ペン先部材17が共に塗布対象物Aに接触した状態から所定角度θ2をさらに小さくしていくと、第一ペン先部材16が塗布対象物Aに接触し、第二ペン先部材17が塗布対象物Aに接触しない状態へと移行する。この状態で塗布具1をスライド移動させることで、第一ペン先部材16によって一つの線が描画できる。つまり、本実施形態の塗布具1は、第一ペン先部材16による一筆での一つの線の描画も可能である(第一ペン先部材16のみの筆跡を得ることも可能である)。
【0099】
本実施形態の塗布具1では、特に限定されるものではないが、例えば、参考書等の重要な部分にこのような二重線を引くために使用することを想定している。このため、このような基端位置と終端位置がそれぞれわずかにずれた二重線によると、重要な部分が非常に目立つので好ましい。また、この場合、第二インキに第一インキよりも透明性が低い(光の透過率が低い)インキを採用することが好ましい。
【0100】
本実施形態では、上記したように、側面部分に側方傾斜部40が設けられ、第一曲面部43が、側方傾斜部40と隣接している(図20等参照)。このことから、第一曲面部43と第二ペン先部材17の双方を塗布対象物Aと接触させるとき、第一ペン先部材16の幅を一定以上の長さとしつつ、塗布方向Xにおける第二ペン先部材17の塗布対象物Aとの接触部分から、第一曲面部43の塗布対象物Aとの接触部分までの距離を短くできる。すなわち、第一ペン先部材16の強度や組み立て易さを損なうことなく、上記した基端位置200a,201aのずれや、終端位置200b,201bのずれを小さくできる。すなわち、これらのずれが大きくなりすぎず、描画する二重線を好ましい形状とすることができる。
【0101】
上記した実施形態では、第一ペン先部材16のペン先形成部20を基端側部21よりも変形し易い部分とした。しかしながら、本発明はこれに限るものではない。
第一ペン先部材のペン先形成部と基端側部は、同じ原料から形成してもよく、変形のし易さが同じであってもよい。しかしながら、組み立てを容易化するという観点から、上記したように、基端側部21を変形し難くすることが好ましい。
また、第一ペン先部材は、粉末に熱をかけて形成する焼結芯(ポーラス体)とする他、繊維束の熱融着加工体、繊維束の樹脂加工体、フェルトの樹脂加工体等の適宜の繊維束を接合した素材で形成することも考えられる。すなわち、繊維束で形成することも考えられる。この他、第一ペン先部材は、合成樹脂で形成することも考えられる。すなわち、プラスチックチップとすることも考えられる。
【0102】
上記した実施形態では、第二曲面部44乃至第七曲面部49のそれぞれをR面形状としたが、これらをC面形状とすることも考えられる。
【0103】
上記した実施形態では、第一インキ吸蔵体6に含侵された第一インキと、第二インキ吸蔵体7に含侵された第二インキを異なるインキとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、第一インキと第二インキを同じインキとすることも考えられる。
【0104】
上記した実施形態の塗布具1は、二つの線の基端位置200a,201aがずれており、目立つ形の二重線を引くことが可能なものとした。しかしながら、本発明はこれに限るものではない。
例えば、本発明の塗布具は、図21で示されるように、第一の線410(第一塗布領域)と第二の線411(第二塗布領域)の基端位置410a,411aのずれが目立たない二重線(塗布領域)を引くことが可能なものとしてもよい。
以下、この塗布具について説明する。なお、上記した実施形態と同様の部分については、同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0105】
本実施形態の塗布具は、第一ペン先部403(第一ペン先部材416)が上記した実施形態と異なっている。さらに、第一インキ吸蔵体6(図21では図示しない)に含侵される第一インキ(第一塗布液)と、第二インキ吸蔵体7(図21では図示しない)に含侵される第二塗布液が、上記した実施形態と異なっている。
【0106】
本実施形態の第一ペン先部403では、第一ペン先部材416の収容溝部438の深さが、上記した第一ペン先部材16と比べて深くなっている。また、上記した塗布方向Xと直交する方向(図21では上下方向)における第一ペン先部材416の長さが、上記した第一ペン先部材16よりも長く形成されている。
なお、この塗布方向Xと直交する方向(直交方向)は、第一ペン先部材416と第二ペン先部材417の並び方向でもある。すなわち、第一ペン先部403をペン先側からみた平面視において、第一ペン先部材416の中心部分と第二ペン先部材417の中心部分の並び方向(離間方向)でもある。
【0107】
ここで、第二ペン先部材417は、上記した第二ペン先部材17と略同様の部材であり、ペン先の突端周辺の部分に一又は複数のインキの流出口(スリット)が形成されている。つまり、この突端周辺の部分が、インキが流出する領域である吐出領域457(第二塗布体側接触部、図21参照)となる。
詳細に説明すると、第二ペン先部材417は、インキ通路(インキの流通路)が横断面における中心周辺部分に形成され、外皮となる部分に外周を囲まれている。このため、第二ペン先部材417では、横断面の中心周辺部分でインキが流れ、内部の他の部分でインキが流れない構造となっている。つまり、この吐出領域457は、インキを塗布する際にインキが流出する部分(流出部)であると言える。
【0108】
本実施形態の第一ペン先部403では、ペン先側からみた平面視において、一方の第一曲面部443(曲面部、第一塗布体側接触部)と、もう一方の第一曲面部443の間に吐出領域457が位置した状態となっている。具体的には、一方の第一曲面部443における丸みを帯びた角部分と、他方の第一曲面部443における丸みを帯びた角部分の間に吐出領域457の全域が位置している。
【0109】
ここで、第一曲面部443は、二重線を引くときに塗布対象物に接触する部分となる。そして、第二ペン先部材417の吐出領域457もまた、二重線を引くときに塗布対象物に接触する部分となる。すなわち、上記の構造では、二重線を引く際、2つの第一曲面部443の一方と第二ペン先部材417を接触させた状態で塗布具をスライド移動させてもよく、他方の第一曲面部443と第二ペン先部材417を接触させて塗布具をスライド移動させてもよい。言い換えると、水平方向の一方側(例えば、図21(a)の右方)に塗布具をスライド移動させて目的とする二重線を形成することが可能である一方で、その逆側(例えば、図21(a)の左方)に塗布具をスライド移動させて目的とする二重線を形成することも可能である。このことから、上記の構造とすることで、使用者は、目的とする二重線の形成が容易となる。
【0110】
本実施形態の第一インキは、有色のインキである。また、本実施形態の第二塗布液は、第一インキに混ざる(触れる)ことで、第一インキを変色させる透明液体である。すなわち、本実施形態の第二塗布液は、実質的に透明(実質的に不可視)であり、第一インキの色を変色させる成分を含む。
なお、ここでいう「実質的に透明」とは、インキを通してその先にあるもの(例えば、インキを塗布した紙面の模様等)が透けて見えることをいい、完全に無色透明であるものに限らず、有色であるものを含むものとする。
【0111】
なお、第一インキには、特に限定されるものではないが、クリスタルバイオレットラクトン;マラカイトグリーンラクトン;1.3ジメチル-6-ジエチルアミノフルオラン;6-ジエチルアミノ-ベンゾ〔α〕-フルオラン;3-シクロヘキシルメチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン;ベンゾイルロイコメチレンブルー;エチルロイコメチレンブルー;メトキシベンゾイルロイコメチレンブルー;2-(フェニルイミノエタンジリデン)-3.3-トリメチル-インドリン;1.3.3-トリメチル-インドリノ-7′-クロル-β-ナフトスピロピラン;ジ-β-ナフトスピロピラン;N-アセチルオーラミン;N-フェニルオーラミン;ローダミンBラクタム;からなるグループBから選択される1種以上の電子供与性呈色化合物をエタノールを含む無水の溶剤内で溶解することにより形成されるものを含ませてもよい。
【0112】
また、第二塗布液は、特に限定されるものではないが、サリチル酸亜鉛である電子受容性顕色化合物をエタノールを含む無水の溶剤内で溶解することにより形成されるものを含ませてもよい。
これらにより、上記した第一インキの第二塗布液による変色が可能となる。
【0113】
本実施形態の塗布具で目的とする二重線を引く際もまた、上記した実施形態と同様に、第一ペン先部材416と第二ペン先部材417のそれぞれが塗布対象物Aに接触した状態(複数接触状態)とする。そして、塗布具を塗布方向Xの進行方向に水平移動させる。なお、上記したように、複数接触状態とする際に2つの第一曲面部443のいずれを塗布対象物Aと接触させてもよい。この場合、一方の第一曲面部443を接触させた場合と、他方の第一曲面部443を接触させた場合とで進行方向が逆方向となる。
【0114】
このとき、上記した実施形態と同様に、二重線は、第一ペン先部材416からインキが塗布されることで形成される第一の線410と、第二ペン先部材417からインキが塗布されることで形成される第二の線411から構成される。
【0115】
ここで、本実施形態においても、第一の線410の基端位置410aと、第二の線411の基端位置411aとが、塗布方向Xで異なる位置となる。また、第一の線410の終端位置410bと第二の線411の終端位置411bもまた、塗布方向Xで異なる位置となる。すなわち、第二の線411の基端位置411aが第一の線410の基端位置410aよりも塗布方向X(塗布具1の移動方向)の基端側となる位置となる。また、第二の線411の終端位置411bが第一の線410の終端位置410bよりも塗布方向X(塗布具1の移動方向)の基端側となる位置となる。
つまり、二重線の基端位置は、第二の線411の基端位置411aとなり、二重線の終端位置は、第一の線410の終端位置410bとなる。
【0116】
ここで、第二の線411に注目すると、基端位置411aから第一の線410の基端位置410aに至るまでの部分は、第一の線410と重ならない状態となる。この部分では、第二の線411は、実質的に透明(不可視)の線となる。すなわち、第一の線410の基端位置410aより塗布方向Xで基端側となる部分では、第二塗布液が消色状態で塗布されることで、第二の線411が透明となる。
そして、第二の線411のうち、第一の線410の基端位置410a以降となる部分は、第一の線410と重なる状態となる。このことから、第一の線410を構成する第一インキの一部が第二塗布液によって変色する。言い換えると、第一の線410のうち、第二の線411と重なる部分が他の部分とは異なる色となる。
【0117】
以上のことから、本実施形態の塗布具によると、実際の二重線の塗布方向Xにおける基端位置410a,411aのずれは目立たず、あたかも二つの線の基端位置がずれていないかのように見える二重線を引くことが可能となる。すなわち、第一の線410の色の異なる二つ部分で形成されたかのような二重線を描画できる。
【0118】
つまり、塗布具を複数接触状態として塗布方向Xにスライド移動させることで、塗布対象物Aの面上に上記した二重線が形成される。
この二重線は、第一インキが塗布された第一の線410と、第二塗布液が塗布された第二の線411を含む。そして、第一の線410と第二の線411の重なり部分であり、第一インキと第二塗布液とが重ねて塗布された塗布液重量領域を有する。
言い換えると、二重線は、第一インキが塗布され、第二塗布液が塗布されていない領域と、第二塗布液が塗布され、第一インキが塗布されていない領域と、塗布液重量領域によって構成されている。そして、第一インキが塗布され、第二塗布液が塗布されていない領域と、塗布液重量領域とが隙間なく並んだ状態となる
【0119】
ところで、上記した目的とする二重線は、第一の線410の基端位置410a以降となる部分(第一の線410と第二の線411が重なる範囲)で、第二の線411の幅方向の全体が第一の線410と重なる二重線であった。しかしながら、図22で示されるように、目的とする二重線(塗布領域)は、第一の線510(第一塗布領域)の基端位置510a以降となる部分において、第二の線511の幅方向の一部のみが第一の線510と重なる二重線としてもよい。すなわち、第二の線511のうち、第一の線510と重なる範囲では、幅方向の一部のみが第一の線510と重なるものでもよい。
【0120】
本実施形態の塗布具は、収容溝部438の深さが、上記した収容溝部438(図21参照)よりも浅く形成されている。そして、ペン先側からみた平面視において、一方の第一曲面部443の丸みを帯びた角部分と、他方の第一曲面部443の丸みを帯びた角部分の間に吐出領域457の一部が位置する状態となっている。その一方で、これらの角部分の間に吐出領域457の他の一部が位置しない状態となっている。
【0121】
そして、本実施形態の塗布具もまた、複数接触状態として塗布方向Xの進行方向にスライド移動させることで、目的とする二重線を引くことができる。
この二重線もまた、第一の線510と第二の線511から構成される線である。そして、第一の線510の基端位置510aと、第二の線511の基端位置511aとが、塗布方向Xで異なる位置となり、第一の線510の終端位置510bと第二の線511の終端位置511bもまた、塗布方向Xで異なる位置となる。
【0122】
この二重線においても、第二の線511のうち、第一の線510の基端位置510aに至るまでの部分は、第一の線510と重ならない部分となる。その一方で、第二の線511のうち、第一の線510の基端位置510a以降となる部分は、幅方向の一部のみが第一の線510と重なり、他部が第一の線510と重ならない状態となる。
このことにより、第一の線510の基端位置510a以降となる部分では、第一の線510と第二の線511が重なる部分で第一の線510の色が変色し、第一の線510と第二の線511が重なる部分では、第二の線511が無色となる。
すなわち、上記した実施形態(図21参照)と比べて、2つの線の重なり部分の面積を小さくすることが可能であり、2つのインキが混ざって滲んでしまうといった問題の発生を抑制できる。
【0123】
なお、このように基端位置のずれが目立たない二重線を描画する塗布具とする場合、第一ペン先部材416にR面形状となる第一曲面部443を形成しない構造とすることも考えられる。この場合、第一ペン先部材のうちで塗布対象物Aと接触する部分はR面形状の曲面部でなくてもよく、C面形状となる部分や先端面部の一部であってもよい。この場合、第一ペン先部材と第二ペン先部材を塗布対象物に接触させ、塗布具を移動させることで上記の二重線が形成できればよい。
すなわち、描画する線の一部が実質的に目立たない多様な線の描画が可能な塗布具として、塗布体部を有し、前記塗布体部を塗布対象物に接触させて塗布液を塗布する塗布具であって、前記塗布体部の少なくとも一つは、並設された第一塗布体部と第二塗布体部を含んで形成されており、前記第一塗布体部と前記第二塗布体部は、それぞれ第一塗布液と第二塗布液を塗布するものであり、前記第二塗布液は、実質的に透明であり、前記第一塗布液に触れることで前記第一塗布液を変色させるものであり、前記第一塗布体部と前記第二塗布体部のそれぞれを塗布対象物に接触させた複数接触状態とし、前記複数接触状態を維持させたままスライド移動させることで、前記第一塗布液と前記第二塗布液が一部重なった状態で塗布される塗布領域を形成可能であり、前記塗布領域には、前記第二塗布液が実質的に透明な状態で塗布される部分と、前記第一塗布液が前記第二塗布液による変色をせずに塗布される部分と、前記第一塗布液が前記第二塗布液によって変色をした部分とが含まれることを特徴とする塗布具が考えられる。
【符号の説明】
【0124】
1 塗布具
3 第一ペン先部(塗布体部)
4 第二ペン先部(塗布体部)
16 第一ペン先部材(第一塗布体部)
17 第二ペン先部材(第二塗布体部)
20 ペン先形成部(先端側部分)
21 基端側部(基端側部分)
30 先端面部(先端面部分)
31 第一側面部(側面部分)
33 第三側面部(側面部分)
34 第四側面部(側面部分)
38,438 収容溝部
40 側方傾斜部(傾斜面部)
43 第一曲面部(曲面部)
44 第二曲面部
45 第三曲面部
46 第四曲面部
47 第五曲面部
48 第六曲面部
49 第七曲面部
410a,411a,510a,511a 基端位置
410b,510b 終端位置
443 第一曲面部(曲面部、第一塗布体側接触部)
457 吐出領域(第二塗布体側接触部)
A 塗布対象物
図1
図2
図3
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図8
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図10
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