(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000971
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】ソベント継手の再生方法及びこれに用いる挿入プレート。
(51)【国際特許分類】
E03C 1/12 20060101AFI20221222BHJP
B24B 31/00 20060101ALI20221222BHJP
F16L 58/02 20060101ALI20221222BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20221222BHJP
B05D 3/12 20060101ALI20221222BHJP
【FI】
E03C1/12 E
B24B31/00 C
F16L58/02
B05D7/00 K
B05D3/12 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021128222
(22)【出願日】2021-08-04
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2021102086
(32)【優先日】2021-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】509053363
【氏名又は名称】株式会社タイコー
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】米村 直樹
【テーマコード(参考)】
2D061
3C158
3H024
4D075
【Fターム(参考)】
2D061AA04
2D061AA05
2D061AB00
2D061AC07
3C158AA07
3C158CA01
3C158CB03
3C158CB04
3H024EA01
3H024EC01
4D075AE03
4D075BB02X
4D075BB08X
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075DA19
4D075DA23
4D075DA27
4D075DA35
4D075DC05
(57)【要約】
【課題】本発明は、ソベント継手に対しても効果的な再生方法及びこれに用いる挿入プレートを提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の一観点に係るソベント継手の再生方法は、ソベント継手の天板に挿入孔を形成するステップ、挿入孔から挿入プレートを挿入して固定するステップ、挿入孔と挿入プレートの隙間を埋めるステップ、を有する。また、挿入プレートは、ソベント継手内に挿入されるものであって、プレート固定部と、プレート本体部と、を備え、プレート固定部及びプレート本体部の少なくとも一方において、引掛部が形成されたものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソベント継手の再生方法であって、
ソベント継手の天板に挿入孔を形成するステップ、
前記挿入孔から挿入プレートを挿入して固定するステップ、
前記挿入孔と前記挿入プレートの隙間を埋めるステップ、を有するソベント継手の再生方法。
【請求項2】
前記挿入プレートは、プレート固定部と、プレート本体部と、を備え、
前記プレート本体部は、前記挿入孔から前記ソベント継手内部に挿入され、
前記プレート固定部は、前記ソベント継手の前記天板上に突出し、前記ソベント継手のオフセット配管に固定される請求項1記載のソベント継手の再生方法。
【請求項3】
ソベント継手内部を研磨材で研磨するステップ、
前記ソベント継手内部にコーティング材を塗布して乾燥させることによりコーティング層を形成するステップ、を備える請求項1記載のソベント継手の再生方法。
【請求項4】
前記挿入プレートの前記プレート本体部は、挿入前に予めコーティング層が形成されたものである請求項2記載のソベント継手の再生方法。
【請求項5】
ソベント継手内に挿入される挿入プレートであって、
プレート固定部と、プレート本体部と、を備え、
前記プレート固定部及び前記プレート本体部の少なくとも一方において、引掛部が形成された挿入プレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソベント継手の再生方法及びこれに用いる挿入プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
マンション等の集合住宅等の排水設備は、その材質が金属を用いている場合、長期の使用によりその内部が腐食する等の問題が発生しやすい。そのため、定期的な点検と必要に応じた補修(再生)が必要となる。例えばこの技術としては、下記特許文献1に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、マンション等の集合住宅等における排水設備においては、鉛直方向に延びる排水管と水平方向に延びる排水管を接合するが、この接合部分に、効率的に排水を行うための空間を備えたソベント継手が用いられることが多い。
【0005】
このソベント継手は、空間において鉛直方向に延びる排水管により形成される排水の流れと水平方向に延びる排水管により形成される排水の流れを仕切るためのプレートを有する複雑な構造を備えており、この内部の再生は容易ではない。特に、このプレートが長期の使用によって破損している場合は、ソベント継手自体の再生も必要になるといった課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑み、ソベント継手に対しても効果的な再生方法及びこれに用いる挿入プレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の一観点に係るソベント継手の再生方法は、ソベント継手の天板に挿入孔を形成するステップ、挿入孔から挿入プレートを挿入して固定するステップ、挿入孔と挿入プレートの隙間を埋めるステップ、を有する。
【0008】
また、本観点において、限定されるわけではないが、挿入プレートは、プレート固定部と、プレート本体部と、を備え、プレート本体部は、挿入孔からソベント継手内部に挿入され、プレート固定部は、ソベント継手の天板上に突出し、ソベント継手のオフセット配管に固定されることが好ましい。
【0009】
また、本観点において、限定されるわけではないが、ソベント継手内部を研磨材で研磨するステップ、ソベント継手内部にコーティング材を塗布して乾燥させることによりコーティング層を形成するステップ、を備えることが好ましい。
【0010】
また、本観点において、限定されるわけではないが、挿入プレートのプレート本体部は、挿入前に予めコーティング層が形成されたものであることが好ましい。
【0011】
また、本発明の他の一観点に係る挿入プレートは、ソベント継手内部に挿入されるものであって、プレート固定部と、プレート本体部と、を備え、プレート固定部及びプレート本体部の少なくとも一方において、引掛部が形成されたものである。
【発明の効果】
【0012】
以上、本発明によって、ソベント継手に対しても効果的な再生方法及びこれに用いる挿入プレートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係るソベント継手の斜視概略図である。
【
図2】実施形態に係るソベント継手の断面概略図である。
【
図3】実施形態に係る挿入プレートを挿入した場合のソベント継手の斜視概略図である。
【
図4】実施形態に係る挿入プレートを挿入した場合のソベント継手の断面概略図である。
【
図5】実施形態に係る挿入プレートの斜視概略図である。
【
図6】実施形態に係る挿入プレートの断面概略図である。
【
図7】実施形態に係るソベント継手の天板の概略図である。
【
図8】実施形態に係る挿入プレートのプレート固定部が引掛部のみである場合の断面概略図である。
【
図9】実施例におけるソベント継手に挿入孔を開孔した写真図である。
【
図10】実施例における挿入プレートの写真図である。
【
図11】実施例におけるソベント継手内部を研磨しコーティング材を付して再生した写真図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態で言及する具体的な例示に限定されるものではない。
【0015】
図1は、本実施形態に係る再生方法の対象となるソベント継手(以下「本ソベント継手」という。)Sの斜視概略図であり、
図2は本ソベント継手Sの断面概略図である。
【0016】
また
図3は、本ソベント継手Sに本実施形態に係る挿入プレート(以下「本挿入プレート」という。)1を挿入した場合の本ソベント継手Sの斜視概略図であり、
図4は、この場合の本ソベント継手Sの断面概略図である。更に、
図5は本挿入プレート1の斜視概略図であり、
図6はその断面概略図である。
【0017】
上記の図で示すように、本挿入プレート1は、本ソベント継手S内部に挿入されるものであって、プレート固定部2と、プレート本体部3と、を備え、プレート固定部2及びプレート本体部3の少なくとも一方において、引掛部21が形成されたものである。
【0018】
本挿入プレート1の機能については後述の記載から明らかとなるが、本ソベント継手S内部にあるプレートPが破損している場合でもその再生を図ることができる。特に、研磨材を用いた研磨作業によって切削されるとしてもこの本挿入プレート1を用いることで本ソベント継手Sの機能を再生させることが可能となる。
【0019】
以下、本挿入プレート1を用いた本ソベント継手Sの再生方法(以下「本方法」という。)について説明する。
【0020】
本方法は、(S1)本ソベント継手Sの天板に挿入孔Hを形成するステップ、(S2)挿入孔Hから本挿入プレート1を挿入して固定するステップ、(S3)挿入孔Hと本挿入プレート1の隙間を埋めるステップ、を有する。
【0021】
本方法における(S1)本ソベント継手Sの天板に挿入孔Hを形成するステップは、文字通り本ソベント継手Sの天板Cに本挿入プレート1を挿入することができる程度の孔をあけるステップである。
【0022】
この挿入孔Hの大きさや形状については、本挿入プレート1の形状に合わせて適宜調整可能である。本挿入プレート1のプレート本体部3は板状であるため、これが挿入可能となるよう横長の孔、長方形であることが好ましい。なお、この挿入孔Hを設けることで本ソベント継手S内部を直接目視することができるといった利点もある。このステップにより形成される本ソベント継手Sの天板Cのイメージについて
図7に示しておく。
【0023】
また、本方法では、(S2)挿入孔Hから本挿入プレート1を挿入して固定するステップを備える。より具体的に本ステップでは、本挿入プレート1のプレート本体部3を挿入孔Hから挿入する。これにより上記図で示すように、本ソベント継手S内部に挿入プレート1を設置することが可能となる。なお、この場合において、本挿入プレート1の形状は、もともと本ソベント継手Sに設けられたプレートPと同形状、相似形又はこれに近い形であることが好ましい。このようにすることで、予め備えてあるプレートPと本挿入プレート1のプレート本体部3の間を少なくし、本ソベント継手S内部の空間に無駄を少なくすることができる。
【0024】
本実施形態では、プレート本体部3は、板状の部材であって、折れ曲がった2枚の板が接続されたような形状となっていることが好ましい。これはもともとのプレートPの形状が折れ曲っているためである。
【0025】
また、本実施形態では、本挿入プレート1のプレート本体部3は、挿入前に予めコーティング層が形成されたものであることが好ましい。予めコーティング層が形成されたものとすることで、本ソベント継手S内部に対するコーティング処理の段階にかかわらず破損を防止するために挿入が可能となるといった利点がある。
【0026】
また、上記の記載から明らかなように、本挿入プレート1のプレート本体部3は、挿入孔Hから本ソベント継手Sの内部に挿入されるものであり、プレート固定部2は、本ソベント継手Sの天板C上に突出して残り、本ソベント継手Sの鉛直方向に対して接続されるオフセット配管Oに固定されることが好ましい。
【0027】
このオフセット配管Oへの接続については、限定されるわけではないが、金属環22と、この金属環22に接続される接続具23であることが好ましく、この金属環22をオフセット配管Oに設置し、接続具23によりプレート固定部2の本体24に固定することが好ましい。なお本実施形態では接続具23としてボルトの例を示している。ボルトを用いることで簡単に金属環22と本体24とを固定することが可能となる。
【0028】
ところで、上記の通り、プレート固定部2及びプレート本体部3の少なくとも一方において、引掛部21が形成されている。プレート固定部2及びプレート本体部3は互いに接続された状態となっているため、引掛部が無い場合、プレート固定部2も挿入孔Hから本ソベント継手Sの内部に入ってしまう可能性がある。そこで、引掛部21を設けることで、プレート本体部3を挿入させる一方、プレート固定部2を天板に残したままとすることができる。プレート固定部2及びプレート本体部3は接続されているため、引掛部はプレート固定部2及びプレート本体部3のいずれか一方で接続してもよいが、双方に設けてもよい。また、プレート固定部2及びプレート本体部3を一体に設け、これに引掛部を一体に接続させてもよい。
【0029】
なお、本実施形態では、プレート本体部3とプレート固定部2を設け、引掛部を設ける構成としているが、プレート固定部2を限りなく少なくし、引掛部のみがプレート固定部2である場合も可能である。この場合のイメージ図を
図8に示しておく。
【0030】
また、本方法における(S3)挿入孔Hと本挿入プレート1の隙間を埋めるステップは、工事完了後この隙間から排水が漏れ出ないようにするとともに、内部に配管内における破損の原因となる物体が入ってこないようにするために必要な処理のステップである。この隙間を埋めるステップのより具体的な内容としては、例えばコーキング材、シーリング材等で充填することが例示できる。コーキング材、シーリング材などは市販のものを使用することができ限定されるものではない。
【0031】
ところで、本方法では、本挿入プレート1を本ソベント継手S内部に挿入する前に、本ソベント継手S内部を研磨し、コーティング材でコーティングするステップを備えておくことが好ましい。このようにすることで、本ソベント継手S内部を確実に再生させた後で、プレートについても再生が可能となる。
【0032】
より具体的に説明すると、本方法では、(SA)本ソベント継手S内部を研磨材で研磨するステップ、(SB)本ソベント継手S内部にコーティング材を塗布して乾燥させることによりコーティング層を形成するステップ、を備えることが好ましい。
【0033】
本方法において、(SA)本ソベント継手S内部を研磨材で研磨するステップは、本ソベント継手S内部に長期間の使用によって発生した錆等を研磨することで除去するステップである。この研磨については、例えば非特許文献1に記載の研磨材などによる研磨が該当するがこれに限定されるものではない。
【0034】
また、本方法において(SB)本ソベント継手S内部にコーティング材を塗布して乾燥させることによりコーティング層を形成するステップは、コーティング層を設けることでこれ以上の配管の破損を防止するために行うステップであり配管及び本ソベント継手Sの再生において非常に重要である。なお、このステップも、非特許文献1に記載の方法で対応可能であり特に限定されるわけではない。
【0035】
また、本方法における(SA)及び(SB)のステップは、(S1)のステップ前に行ってもよく、また、(S3)の後に行ってもよく、順番は限定されない。ただし、予め挿入孔Hを設けて本ソベント継手S内部を確認してから作業を行うという観点からは、(S1)のステップを行い、(S2)のステップが可能であることを確認したのち、本挿入プレート1を抜いて、一度挿入孔Hを仮塞ぎしてから(SA)ステップ及び(SB)ステップを行い、(S2)のステップ、(S3)のステップを行うこととするのが好ましい。いずれにおいても適宜調整が可能である。
【0036】
以上、本実施形態により、ソベント継手に対しても効果的な再生方法及びこれに用いる挿入プレートを提供することができる。特に、本方法によると、既存のプレートが存在してもその破損を気にせず研磨及びコーティング処理が可能となり、破損部も研磨とコーティングが可能となるため、腐食の進行を防ぐことが可能となる。また、挿入するプレートについても簡便な構成とするものであるため、容易かつ安価であり、しかも脱着容易であるといった効果がある。
【実施例0037】
ここで、実際に本方法の効果を確認するために実際の再生方法を実施した。この結果について以下のように示す。
【0038】
まず、長期間使用したソベント継手に100mm×10mm程度の挿入孔を鉄製キリ及びレシプロソーを用いて開孔した。この開孔の写真図を
図9に示す。
【0039】
また一方で、この天板から挿入するための挿入プレートを作成した。この図を
図10に示しておく。なおこの図では、プレート固定部は折れ曲がった部分の引掛部分だけとした。なおこの後、挿入プレートの周囲にはコーティング剤を塗布した。
【0040】
その後、ソベント継手内部を研磨し、コーティング材を付して再生した。この場合の写真を
図11に示す。
【0041】
そして、ソベント継手内部を再生した後、挿入プレートを挿入孔から挿入し、ソベント継手に対して固定することで完了させた。
【0042】
この結果、確実かつ安定的にソベント継手を再生することができることが確認できた。