IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ファーマフーズの特許一覧 ▶ 株式会社アデランスの特許一覧

特開2023-97105加水分解卵殻膜を含む毛髪の太さ増大用組成物
<>
  • 特開-加水分解卵殻膜を含む毛髪の太さ増大用組成物 図1
  • 特開-加水分解卵殻膜を含む毛髪の太さ増大用組成物 図2
  • 特開-加水分解卵殻膜を含む毛髪の太さ増大用組成物 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097105
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】加水分解卵殻膜を含む毛髪の太さ増大用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/98 20060101AFI20230630BHJP
   A61K 35/57 20150101ALI20230630BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20230630BHJP
   A61Q 7/00 20060101ALI20230630BHJP
   A61K 31/401 20060101ALI20230630BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20230630BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
A61K8/98
A61K35/57
A61P17/14
A61Q7/00
A61K31/401
A61K8/64
A61K8/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213263
(22)【出願日】2021-12-27
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セロテープ
(71)【出願人】
【識別番号】500101243
【氏名又は名称】株式会社ファーマフーズ
(71)【出願人】
【識別番号】000126676
【氏名又は名称】株式会社アデランス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アンガ サンジャヤ
(72)【発明者】
【氏名】金 有宏
(72)【発明者】
【氏名】金 英一
(72)【発明者】
【氏名】山下 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 憲男
(72)【発明者】
【氏名】舘野 恭
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C083AA071
4C083AA072
4C083AC581
4C083AC582
4C083AD411
4C083AD412
4C083BB53
4C083CC33
4C083CC34
4C083CC36
4C083CC37
4C083CC38
4C083DD08
4C083DD17
4C083DD21
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD30
4C083DD31
4C083DD41
4C083EE07
4C083EE22
4C083FF01
4C083FF04
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC07
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA28
4C086MA34
4C086MA43
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA92
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB61
4C087CA03
4C087CA30
4C087CA31
4C087CA38
4C087MA13
4C087MA17
4C087MA22
4C087MA28
4C087MA32
4C087MA34
4C087MA43
4C087MA63
4C087NA14
4C087ZA92
(57)【要約】
【課題】 安全性が高く、かつ毛髪の太さの優れた増大作用を有する頭皮または頭髪用の外用剤を提供すること。
【解決手段】 本発明において、少なくとも約0.5mg/g以上の遊離のプロリンを含む加水分解卵殻膜を含む、毛髪の太さ増大用組成物、および当該組成物を有効成分として含む、毛髪の太さ増大用外用剤が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約0.5mg/g以上の遊離のプロリンを含む加水分解卵殻膜を含む、毛髪の太さ増大用組成物。
【請求項2】
前記加水分解卵殻膜が少なくとも約4000以上の平均分子量を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記加水分解卵殻膜が約0.5mg/g~約2mg/gの遊離のプロリンを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記加水分解卵殻膜が約0.6mg/g~約1.5mg/gの遊離のプロリンを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記加水分解卵殻膜が水酸化ナトリウムによる加水分解物である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物を有効成分として含む、毛髪の太さ増大用外用剤。
【請求項7】
毛髪の先端部分を太くするための、請求項6に記載の外用剤。
【請求項8】
毛髪の根本部分を太くするための、請求項6または7に記載の外用剤。
【請求項9】
頭髪用洗浄剤、ヘアケア剤、育毛剤、発毛剤、カール剤、カラー剤(または着色料)、スタイリング剤、トリートメント剤、頭皮ケア剤およびこれらの任意の組み合わせを含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の外用剤。
【請求項10】
剤形が、固形剤、半固形剤、粉末剤、液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、乳液剤、ゲル剤、貼付剤、フォーム剤、ペースト剤、ジェル剤、油剤およびこれらの任意の組み合わせを含む、請求項6~9のいずれか一項に記載の外用剤。
【請求項11】
医薬品、医薬部外品、または化粧品として用いられる、請求項6~10のいずれか一項に記載の外用剤。
【請求項12】
毛髪の太さ増大用外用剤を製造するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
請求項6~11のいずれか一項に記載の外用剤を毛髪に適用する工程を含む、毛髪の太さを増大する方法。
【請求項14】
卵殻膜の加水分解物を得る工程であって、前記加水分解物は少なくとも約0.5mg/g以上の遊離のプロリンを含む工程
を包含する、毛髪の太さ増大用外用剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は毛髪の太さを増大するための組成物に関する。具体的には、加水分解卵殻膜を含む毛髪の太さ増大用組成物、その組成物を有効成分として含む外用剤、およびそれを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、頭皮または頭髪用の外用剤は広く用いられており、育毛、発毛促進、脱毛防止、頭髪の太さの増大、ハリやコシの改善などを目的としたものなど、様々な外用剤が開発されている。またスカルプケア、育毛、発毛をコンセプトとする製品についても、需要者のニーズは近年多様化しており、安全性の問題から、天然由来の成分を用いる製品への需要は近年大きいものとなっている。
【0003】
このような需要をうけて、近年においては、センブリエキス、イチョウ葉エキス、ノコギリヤシエキスなどの植物由来成分を有効成分とする各種育毛、発毛促進剤が開発されている。
【0004】
しかしながら、このような外用剤における毛髪を太く改善する効果は、化学合成品と比べて十分なものではなく、安全性が高く、かつ毛髪の太さの優れた増大作用を有する頭皮または頭髪用の外用剤の開発が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、加水分解卵殻膜の中でも、一定量以上のプロリンを含有するものについては、毛髪の太さを増大させることができることを見出した。したがって、本願発明では、このような一定量以上のプロリンを含有する加水分解卵殻膜を用いることにより、毛髪の太さを増大するための組成物や、その組成物を含有する外用剤、並びにその製造方法を提供する。
【0006】
したがって、本発明の主要な観点によれば、以下の発明が提供される。
(項目1)
少なくとも約0.5mg/g以上の遊離のプロリンを含む加水分解卵殻膜を含む、毛髪の太さ増大用組成物。
(項目2)
前記加水分解卵殻膜が少なくとも約4000以上の平均分子量を含む、上記項目に記載の組成物。
(項目3)
前記加水分解卵殻膜が約0.5mg/g~約2mg/gの遊離のプロリンを含む、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目4)
前記加水分解卵殻膜が約0.6mg/g~約1.5mg/gの遊離のプロリンを含む、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目5)
前記加水分解卵殻膜が水酸化ナトリウムによる加水分解物である、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目6)
上記項目のいずれか一項に記載の組成物を有効成分として含む、毛髪の太さ増大用外用剤。
(項目7)
毛髪の先端部分を太くするための、上記項目に記載の外用剤。
(項目8)
毛髪の根本部分を太くするための、上記項目のいずれか一項に記載の外用剤。
(項目9)
頭髪用洗浄剤、ヘアケア剤、育毛剤、発毛剤、カール剤、カラー剤(または着色料)、スタイリング剤、トリートメント剤、頭皮ケア剤およびこれらの任意の組み合わせを含む、上記項目のいずれか一項に記載の外用剤。
(項目10)
剤形が、固形剤、半固形剤、粉末剤、液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、乳液剤、ゲル剤、貼付剤、フォーム剤、ペースト剤、ジェル剤、油剤およびこれらの任意の組み合わせを含む、上記項目のいずれか一項に記載の外用剤。
(項目11)
医薬品、医薬部外品、または化粧品として用いられる、上記項目のいずれか一項に記載の外用剤。
(項目12)
毛髪の太さ増大用外用剤を製造するための、上記項目のいずれか一項に記載の組成物の使用。
(項目13)
上記項目のいずれか一項に記載の外用剤を毛髪に適用する工程を含む、毛髪の太さを増大する方法。
(項目14)
卵殻膜の加水分解物を得る工程であって、前記加水分解物は少なくとも約0.5mg/g以上の遊離のプロリンを含む工程
を包含する、毛髪の太さ増大用外用剤の製造方法。
【0007】
本開示において、上記の1つまたは複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得ることが意図される。なお、本開示のさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
【0008】
なお、上記した以外の本開示の特徴及び顕著な作用・効果は、以下の発明の実施形態の項及び図面を参照することで、当業者にとって明確となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の組成物により、毛髪を改善し、特に毛髪の太さを増大させることができる。また、卵殻膜という安全性の高い材料を使用しているため、医薬品、医薬部外品、または化粧品などに配合しても、人体に対して悪影響を及ぼすことなく、安全性に優れ、利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、種々の卵殻膜加水分解物サンプルを毛髪に処理した場合の、処理前後における毛髪の太さの変化について、毛髪の先端部分の毛髪の太さの変化を示すグラフである。
図2図2は、種々の卵殻膜加水分解物サンプルを毛髪に処理した場合の、処理前後における毛髪の太さの変化について、毛髪の根本部分の毛髪の太さの変化を示すグラフである。
図3図3は、種々の卵殻膜加水分解物サンプルを毛髪に処理した場合の、処理前後における毛髪の太さの変化について、毛髪の先端部分および根本部分の毛髪の太さの変化の平均値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本開示の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0012】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
【0013】
本明細書において、「約」とは、後に続く数値の±10%を意味する。
【0014】
本明細書において、「毛髪の太さ」とは、毛髪の一部分における周囲の長さをいい、ある物質による「毛髪の太さの増大」とは、当該物質の適用前と比較して適用後の毛髪における少なくとも一部分における周囲の長さが少なくとも約1μm以上伸びることをいう。また本明細書において、ある物質による「毛髪の太さの増大」とは、毛髪に対して当該物質を適用してから少なくとも約30分経過した後の毛髪における太さの増大をいう。なお、ここでいう毛髪への当該物質の「適用」とは、毛髪に当該物質を塗布し、所定の時間経過して、毛髪への当該物質の塗布が完了したことをいう。
【0015】
本明細書において、「毛髪の先端部分」とは、1本の毛髪を略三等分(すなわち、毛髪の毛先側の部分と中間部分と毛元側の部分とに略三等分)した場合に、毛先側の部分の一部または毛先側部分の全体をいう。
【0016】
本明細書において、「毛髪の根本部分」とは、1本の毛髪を略三等分(すなわち、毛髪の毛先側の部分と中間部分と毛元側の部分とに略三等分)した場合に、毛元側の部分の一部または毛元側部分の全体をいう。
【0017】
本明細書において、「平均分子量」とは、卵殻膜加水分解物を溶媒に溶解させた後、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC法)で測定されるペプチド換算での数平均分子量(Mn)を示す。
【0018】
(好ましい実施形態)
以下に本開示の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本開示のよりよい理解のために提供されるものであり、本開示の範囲は以下の記載に限定されるべきでない。したがって、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本開示の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本開示の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができる。
【0019】
本願発明の一局面において、少なくとも約0.5mg/g以上の遊離のプロリンを含む加水分解卵殻膜を含む、毛髪の太さ増大用組成物が提供される。
【0020】
プロリンはタンパク質を構成するアミノ酸の一つであり、イミノ基を持つ環状アミノ酸である。本願発明の毛髪の太さ増大用組成物において、遊離のプロリンの含有量は少なくとも約0.5mg/g以上であり、好ましくは約0.5mg/g~約2mg/gであり、さらに好ましくは約0.6mg/g~約1.5mg/gである。
【0021】
本願発明の毛髪の太さ増大用組成物は、少なくとも約0.5mg/g以上の遊離のプロリンを含む加水分解卵殻膜を含むものであればよく、卵殻膜の加水分解手段は、本発明の毛髪の太さ増大用組成物を得るために少なくとも約0.5mg/g以上の遊離のプロリンを含むように加水分解することができるものであれば特に限られるものではない。例えば、本願発明の毛髪の太さ増大用組成物に含まれる加水分解卵殻膜は、水酸化ナトリウムによる加水分解物であってもよく、水酸化リチウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属または、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属の水溶液などを用いることもできる。タンパク質を構成するペプチド結合は極めて安定な結合であるため、アルカリを用いて非酵素的に分解するために、高いpHで高温に加熱して分解することもでき、比較的弱アルカリ性のアルカリを用いる場合には、長時間にわたって高温で処理することもできる。
【0022】
他の実施形態において、卵殻膜をペプシン、トリプシン、レニン、パパイン、カスパーゼ、キモトリプシン、プロテアーゼ、ペプチダーゼなどのタンパク質分解酵素や、クエン酸、塩酸、硫酸などの酸を用いて加水分解することもできる。
【0023】
水酸化ナトリウムなどのアルカリによる加水分解の場合、原料として卵殻膜を準備して、この卵殻膜にアルカリを加えて攪拌させる。この際の攪拌条件は原料とアルカリが十分に攪拌され、アルカリが原料におけるペプチド結合を加水分解して本発明に係る加水分解卵殻膜が適切に得られるものであればよく、例えば室温~約100℃で約1~約4時間攪拌させることができ、好ましくは約60℃で約10分~約1時間攪拌させる。またアルカリ水溶液の濃度としては、用いるアルカリの機能を発揮し得る濃度であれば特に限られるものではなく、例えば水酸化ナトリウムを用いる場合には約0.1%~約1%(v/w)、例えば、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、または約1%水酸化ナトリウムなどであってもよい。
【0024】
アルカリ水溶液を加えて攪拌させた後、反応を停止させるため、酸で中和させる。この際の条件は添加したアルカリ水溶液が十分に中和するようなものであればよく、例えば塩酸を用いる場合には約0.1%~約1%(v/w)、例えば、約0.1%、約0.2%、約0.3%、約0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、または約1%塩酸などであってもよい。中和後の溶液を濾過器の形状に合わせた寸法の定性濾紙を用いて濾過し、本発明の毛髪の太さ増大用組成物を得ることができる。
【0025】
本発明の毛髪の太さ増大用組成物に含まれる加水分解卵殻膜の分子量は、本発明の毛髪の太さ増大用組成物の効果を奏することができるものであれば特に制限されず、毛髪の太さ増大用組成物の用途などに応じて、加水分解の時間やアルカリなどの濃度を調整することができる。例えば、本発明の毛髪の太さ増大用組成物に含まれる加水分解卵殻膜は、少なくとも約4000以上の平均分子量を含むものとすることができ、少なくとも約4300以上、約4500以上、約4800以上、約5000以上、約6000以上、約7000以上、約8000以上、または約9000以上とすることができる。一実施形態において、本発明の毛髪の太さ増大用組成物に含まれる加水分解卵殻膜は、約10000以内、約9000以内、約8000以内、約7000以内、約6500以内、約6000以内、または約5500以内とすることができる。
【0026】
一実施形態において、本発明の毛髪の太さ増大用組成物は、少なくとも約4000以上の平均分子量を含むものであって、かつ約0.5mg/g以上の遊離のプロリンを含有するものが好ましい。一実施形態において、本発明の毛髪の太さ増大用組成物は、約4000~約10000の平均分子量を含むものであって、かつ約0.6mg/g~約1.5mg/gの遊離のプロリンを含有するものがさらに好ましい。さらに好ましくは、本発明の毛髪の太さ増大用組成物は、約4000~約8000の平均分子量を含むものであって、かつ約0.6mg/g~約1.5mg/gの遊離のプロリンを含有するものである。
【0027】
本発明の毛髪の太さ増大用組成物の材料となる卵殻膜の由来は特に限られるものではなく、加水分解した際に、少なくとも約0.5mg/g以上の遊離のプロリンを含むようなものであれば特に限られるものではない。例えば、卵殻膜としては、ニワトリ、ウズラ、シチメンチョウ、カモ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、ホロホロチョウ、オナガドリ、チャボ、ハト、コブハクチョウ、エミュー、またはキジなどの家禽鳥類の卵殻膜を用いることができる。本発明の一実施形態においては、入手が容易で、産卵種としても多産であり、卵も大きく大量飼育方法が確立しているという点でニワトリが好ましい。
【0028】
本願発明の他の局面において、上記のような毛髪の太さ増大用組成物を有効成分として含む毛髪の太さ増大用外用剤が提供される。本発明の組成物は、毛髪の太さ増大用外用剤を製造するために使用することができる。
【0029】
本願発明の毛髪の太さ増大用組成物を有効成分として含む毛髪の太さ増大用外用剤は、毛髪用の外用剤として使用される剤形であれば特に限定されることなく使用することができる。例えば、固形剤、半固形剤、粉末剤、液剤、スプレー剤、軟膏剤、クリーム剤、乳液剤、ゲル剤、貼付剤、フォーム剤、ペースト剤、ジェル剤、油剤、水溶液(ウォータータイプ)、ローション、固形スティック剤、顆粒剤など、およびこれらの任意の組み合わせも使用できる。これらは、毛髪に直接塗布だけでなく、水に溶解や分散させてから毛髪に塗布することで使用できる。また、乾いた毛髪に塗布してそのまま放置したり、洗髪前後の毛髪に塗布しその後除去したり、洗髪後の毛髪に塗布してそのまま放置したりするなどの使用方法も採用できる。
【0030】
毛髪への本発明の外用剤の塗布時間は、本発明の外用剤の効果が得られるような時間であれば特に限られないが、例えば、少なくとも約1分以上、約2分以上、約3分以上、約4分以上、約5分以上、約7分以上、約10分以上、約12分以上、約15分以上、約20分以上、約30分以上浸漬することができる。毛髪の本発明の外用剤への塗布時間は、一般的には約1時間以内であり得る。また一実施形態において、本発明の外用剤への毛髪の塗布は、外用剤に毛髪を塗布した後、いったん洗浄して、さらにその洗浄した毛髪を本発明の外用剤に塗布することもできる。本発明の一実施形態において、本発明の外用剤の毛髪への塗布は、本発明の外用剤に毛髪を浸漬することで達成することもできる。
【0031】
本発明の一実施形態においてこれらの各種の形態の外用剤は、頭髪用洗浄剤、ヘアケア剤、育毛剤、発毛剤、カール剤、カラー剤(または着色料)、スタイリング剤、トリートメント剤、頭皮ケア剤およびこれらの任意の組み合わせとして用いることができ、必要に応じて、水、アルコール、溶剤、界面活性剤、油脂成分、防腐剤、安定剤、ゲル化剤、増粘剤、乳化剤、紫外線吸収剤、清涼剤、色素、香料、その他の各種成分を混合することができる。また一実施形態において、これらの外用剤を製造する際には、殺菌または抗菌性成分、抗炎症剤、その他の各種薬用有効成分などを適宜配合することができる。
【0032】
本発明の一実施形態において、本発明の毛髪の太さ増大用組成物を有効成分として含む毛髪の太さ増大用外用剤は、カール剤と混合して毛髪に適用する場合には、種々の機能をもつカール剤と混合することができる。例えば、外用剤に混合するカール剤としては、毛髪におけるS-S結合を切断するためのカール剤(サルファイト系カール剤など)、カール形成成分を毛髪に閉じ込めるためカール剤(ナノ化リン脂質ポリマー系カール剤など)、およびカール形成を強化するためのカール剤(臭素酸ナトリウム系カール剤や酸化固定系カール剤など)などを挙げることができ、その他の機能をもつカール剤を用いることもできる。一実施形態において、本発明の外用剤は、これらのカール剤のいずれかと混合して毛髪に塗布することで毛髪の太さを増大することができる。また他の実施形態においては、これらの各カール剤と混合させた本発明の外用剤をそれぞれ用意し、その複数のカール剤混合外用剤を種々の順番で毛髪に塗布し、さらにインキュベーションを繰り返すことで毛髪の太さを増大させることができる。例えば、毛髪におけるS-S結合を切断するためのカール剤と混合した外用剤を毛髪に塗布し、所定時間インキュベーションし、次にカール形成成分を毛髪に閉じ込めるためカール剤と混合した外用剤を毛髪に塗布し、所定時間インキュベーションし、さらにカール形成を強化するためのカール剤と混合した外用剤を毛髪に塗布し、所定時間インキュベーションすることで毛髪の太さを増大させることができる。各種カール剤混合外用剤の適用順や、適用時間、インキュベーション時間、およびインキュベーション温度は、毛髪の増大に適したものであれば特に限られるものではない。
【0033】
したがって、本発明の一局面において、(1)少なくとも約0.5mg/g以上の遊離のプロリンを含む加水分解卵殻膜を含む、毛髪の太さ増大用組成物、または本発明の毛髪の太さ増大用組成物を有効成分として含む毛髪の太さ増大用外用剤と、(2)毛髪におけるS-S結合を切断するためのカール剤(サルファイト系カール剤など)、カール形成成分を毛髪に閉じ込めるためカール剤(ナノ化リン脂質ポリマー系カール剤など)、および/またはカール形成を強化するためのカール剤(臭素酸ナトリウム系カール剤や酸化固定系カール剤など)とを含む、毛髪の太さ増大用キットが提供される。一実施形態において、本発明のキットには、その他の機能をもつカール剤を含むこともできる。
【0034】
本発明の外用剤は、医薬品、医薬部外品、または化粧品などとして、毛髪改善、育毛、発毛、毛髪の増大などを必要とする対象に適用することができる。対象は、皮膚に毛髪を有する動物であれば特に限定されないが、ヒトが好ましい。適用方法は、外用剤に適した任意の方法であればよく、例えば毛髪に直接塗布や噴霧して適用することができる。
【0035】
本発明の医薬品、医薬部外品、または化粧品として使用される外用剤の投与量は、対象の状態、疾患の有無、性別、年齢などの要因によって変動させることができ、特に限られるものではない。本発明の外用剤は安全性が高いため、対象に効果を認められる量以上であれば、その投与量は特に限られない。また適用期間も特に限られるものではなく、長期にわたって継続的に投与することができ、例えば数週間~数カ月間にわたって連続して投与することできる。
【0036】
本発明の外用剤は、毛髪の太さを増大するものであり、毛髪の先端部分および/または根本部分の太さを増大させることができる。一実施形態において、本発明の外用剤は、1本の毛髪を略三等分(例えば、毛髪の毛先側の部分と中間部分と毛元側の部分とに略三等分)した場合に、毛先側の部分の一部または毛先側部分の全体の太さを増大させることができる。他の実施形態において、本発明の外用剤は、1本の毛髪を略三等分(例えば、毛髪の毛先側の部分と中間部分と毛元側の部分とに略三等分)した場合に、毛元側の部分の一部または毛元側部分の全体の太さを増大させることができる。また一実施形態において、本発明の外用剤は、毛髪への適用直後に、または好ましくは毛髪に適用してから少なくとも約15分経過した後、さらに好ましくは少なくとも約30分経過した後に毛髪の太さを増大することができる。他の実施形態において、本発明の外用剤は、毛髪に適用してから約3時間以内、好ましくは約2時間以内、さらに好ましくは約1時間以内の毛髪の太さを増大することができる。
【0037】
一実施形態において、本願発明の毛髪の太さ増大用組成物を有効成分として含む毛髪の太さ増大用外用剤には、本願発明の効果を損なわない範囲において、通常の毛髪用化粧料に用いられる各種成分、例えば、界面活性剤、加脂剤、毛髪保護剤、保湿剤、高分子類、紫外線吸収剤、金属封鎖剤、溶剤、pH調節剤、ビタミン類、酸化防止剤、酸化防止助剤、防腐剤、香料、油性成分、高級アルコール、脂肪酸、極性脂質、抗菌成分、粘度調整剤、色素などを配合できる。
【0038】
本願発明の他の局面において、上記のような毛髪の太さ増大用外用剤を毛髪に適用する工程を含む、毛髪の太さを増大する方法が提供される。本発明における毛髪の太さを増大する方法では、例えば、本発明の外用剤を毛髪に塗布し、所定時間放置することで、毛髪の太さを増大することができる。
【0039】
本発明の方法では、本発明の外用剤を毛髪に適用後、洗い流す方法で使用しても、洗い流さずに乾燥させる方法で使用してもよい。
【0040】
一実施形態において、本発明の外用剤は、毛髪の先端部分の太さが、外用剤の適用前と比べて、少なくとも約0.5μm以上、約0.8μm以上、約1.0μm以上、約1.2μm以上、約1.4μm以上、約1.6μm以上、約1.8μm以上、約2.0μm以上、約2.4μm以上、約2.8μm以上、約3.0μm以上、約3.4μm以上、約3.8μm以上、約4.0μm以上、約4.4μm以上、約4.8μm以上、約5.0μm以上、約5.4μm以上、約5.8μm以上、約6.0μm以上、約6.5μm以上、または約7.0μm以上増大するような量で適用されるのが好ましい。
【0041】
他の実施形態において、本発明の外用剤は、毛髪の根本部分の太さが、外用剤の適用前と比べて、少なくとも約0.5μm以上、約0.8μm以上、約1.0μm以上、約1.2μm以上、約1.4μm以上、約1.6μm以上、約1.8μm以上、約2.0μm以上、約2.4μm以上、約2.8μm以上、約3.0μm以上、約3.4μm以上、約3.8μm以上、約4.0μm以上、約4.4μm以上、約4.8μm以上、約5.0μm以上、約5.4μm以上、約5.8μm以上、約6.0μm以上、約6.5μm以上、または約7.0μm以上増大するような量で適用されるのが好ましい。
【0042】
他の実施形態において、本発明の外用剤は、毛髪の先端部分および根本部分の平均の太さが、外用剤の適用前と比べて、少なくとも約0.5μm以上、約0.8μm以上、約1.0μm以上、約1.2μm以上、約1.4μm以上、約1.6μm以上、約1.8μm以上、約2.0μm以上、約2.4μm以上、約2.8μm以上、約3.0μm以上、約3.4μm以上、約3.8μm以上、約4.0μm以上、約4.4μm以上、約4.8μm以上、約5.0μm以上、約5.4μm以上、約5.8μm以上、約6.0μm以上、約6.5μm以上、または約7.0μm以上増大するような量で適用されるのが好ましい。
【0043】
本願発明の他の局面において、卵殻膜の加水分解物を得る工程であって、前記加水分解物は少なくとも約0.5mg/g以上の遊離のプロリンを含む工程を包含する、毛髪の太さ増大用外用剤の製造方法が提供される。
【0044】
本発明の毛髪の太さ増大用組成物を含有する外用剤を製造する場合、外用剤における加水分解卵殻膜の含有量は、本発明の外用剤の効果を損なわない限りにおいて任意の値とすることができる。例えば、本発明の加水分解卵殻膜は、外用剤の全重量に対して少なくとも約1重量%、約3重量%、約5重量%、約10重量%、約12重量%、約15重量%、約20重量%、約25重量%、約30重量%、約35重量%、約40重量%、約45重量%、約50重量%とすることができる。
【0045】
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値」の「範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0046】
以上、本開示を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本開示を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本開示を限定する目的で提供したのではない。従って、本開示の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例0047】
(実施例1:卵殻膜の加水分解物の製造)
卵殻膜の加水分解物の製造フローを示す。
まず、ウォーターバス中で加温した水に水酸化ナトリウム(NaOH)を加え、水温が60℃になったら、卵殻膜を加えた。水酸化ナトリウムや卵殻膜の添加量は表1に記載したとおりである。卵殻膜を加えた溶液をプロペラで攪拌し、加水分解反応を開始させた。
所定時間攪拌した後、塩酸(HCl)水溶液を加えて中和させた(反応中止)。ペーパーフィルターを用いて吸引ろ過し、得られたろ液(加水分解液)を凍結乾燥して粉末化した。
【0048】
より詳細には、表1におけるサンプルNO.1の卵殻膜加水分解物は、1Lの水にNaOHを4v/v%となるように加え、60℃まで加温した後、50gの卵殻膜を加えて5時間反応させた。その後、塩酸水溶液を加えて中和させ、吸引ろ過および凍結乾燥により粉末化した。またサンプルNO.2の卵殻膜加水分解物は、乾燥卵殻膜520g(固形物96%)を1.0mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液10L中に分散し、40℃で5時間加水分解反応を行った。次いで2mol/Lの塩酸でpHを8に調整し、濾過により不溶物を除去した。得られた濾液に陰イオン交換樹脂デュオライトA368S(ローム・アンド・ハース社製)を4L投入し、40時間攪拌した。攪拌終了後、濾過にて陰イオン交換樹脂を除き、得られた濾液に2mol/Lの塩酸を添加してpHを8に調整した。その後孔径0.45μmのメンブレンフィルター濾過を行った。得られた濾液を電気透析処理して脱塩し、その後凍結乾燥することにより、粉末状の可溶性卵殻膜を得た。
【0049】
サンプルNO.3の卵殻膜加水分解物は、500mLの水にNaOHを2.5v/v%となるように加え、60℃まで加温した後、25gの卵殻膜を加えて3時間反応させた。その後、塩酸水溶液を加えて中和させ、吸引ろ過および凍結乾燥により粉末化した。またサンプルNO.4の卵殻膜加水分解物は、500mLの水にNaOHを4v/v%となるように加え、60℃まで加温した後、25gの卵殻膜を加えて5時間反応させた。その後、塩酸水溶液を加えて中和させ、吸引ろ過および凍結乾燥により粉末化した。
【0050】
サンプルNO.5の卵殻膜加水分解物は、1Lの水に2.5gのアルカラーゼ(Alcalase)(Novozaymes社)および0.5gの亜硫酸ナトリウム(NaSO)を加え、60℃まで加温した後、50gの卵殻膜を加えて4時間反応させた。その後、吸引ろ過および凍結乾燥により粉末化した。
【0051】
以上のようにして得られた各サンプル粉末の平均分子量/遊離プロリン量を測定し、毛髪の太さへの効果を評価した。
【0052】
(実施例2:遊離L-プロリンおよび平均分子量の分析)
卵殻膜加水分解物中の遊離プロリン含量は、LC-MSを用いて測定した。また平均分子量は、HPLCを用いて測定した。LC-MSおよびHPLCの条件は以下のとおりとした。
【0053】
<LC-MS条件>
・LC Specification: Shimadzu LCMS-8045
・Auto sampler: Shimadzu SIL-40C Xs
・System controller: Shimadzu SCL-40
・Column Oven: Shimadzu CTO-40S
・Detector: SPD-M40 Photo diode array detector
・LC-40D Xs Solvent delivery module
・DGU-40S Degassing unit
・Column: Waters AccQ.Tag Ultra
・Eluent: A (AccQ.Tag Ultra A 50mL+ Ultrapure water 950 mL) +B(AccQ.Tag Ultra B).
・Sample concentration 10μg/mL
・L-proline standard 1000 pmol/μL~
【0054】
<HPLC条件>
・LC Specification: Shimadzu LC-10AD
・Auto sampler: Shimadzu SIL-20A
・System controller: Shimadzu SCL-10A
・Detector: SPD-10A
・Column: GE "Superdex peptide 10/300"
・Measurement method: Size exclusion chromatography
・Eluent: 30% acetonitrile-70% water-0.1% trifluoroacetic acid
・Flow rate: 0.5 ml / min
・Column temperature: 25 ° C
・Detector: Ultraviolet absorptiometer (measurement wavelength 214 nm)
・Sample concentration: 10 mg / ml
・Sample injection volume: 20 μL
・Standard: 以下のアミノ酸をスタンダードとして使用した。Aprotinin(6,511), Leucine Enkephaline (555.6), Myoglobin (17600), Ribonuclease (13,700),Cytochrome (12,327), Angiotensin II (1,046.18).
【0055】
(実施例3:毛髪の太さに対する評価)
<毛髪剤の処理方法>
以下に説明する処理方法では、理容室で一般的に使用されるカール剤(カール剤1~3)を用いて、カール剤に対する卵殻膜加水分解物の濃度が最終5%濃度となるように、卵殻膜加水分解物を溶解して調製した処理液1~3を毛髪に処理した。毛髪の太さの評価は、処理前後の変化量で算出した。また毛髪は市販の毛髪を用いた。処理液への毛髪の浸漬は、いずれも、20mLのビーカーに各処理液を5mL入れ、その中に毛髪を浸漬して行った。
【0056】
まず、毛髪5本を毛先と毛元をそろえてセロテープで固定した。その毛髪を約30℃の温水で軽く洗浄し、洗浄後、キムワイプで軽く水分をとり、ドライヤーで乾かした。各卵殻膜加水分解物サンプルを溶かした処理液1(サルファイト系カール剤)に、毛髪を常温で5分間浸漬した。その後、毛髪をアルミ箔に包み、55℃の恒温槽にて15分間静置し、毛髪を約30℃の温水で洗浄した。
【0057】
続いて、各卵殻膜加水分解物サンプルを溶かした処理液2(ナノ化リン脂質ポリマー系カール剤)に、毛髪を5分間浸漬した。キムワイプで軽く水分をとり、各卵殻膜加水分解物サンプルを溶かした処理液3(臭素酸ナトリウム系カール剤)にさらに10分間浸漬した。その後、毛髪を約30℃の温水で洗浄した後、キムワイプで軽く水分を取り、ドライヤーで乾かした。
【0058】
<毛髪の太さの評価方法>
毛髪の太さは、ゲージ(Mitsutoyo社、デジマチックインジケータ)で測定した。測定箇所として、毛髪の両端から各3cmのところを、それぞれ3回ずつ測定し、平均値を算出した。毛先および毛元のそれぞれを測定した。毛髪の太さの評価は、毛髪剤の処理前後の変化量で算出した。
結果を表1に示す。表中「ESM」は卵殻膜を示す。
【表1】
【0059】
表1に示したとおり、平均分子量が約5000という高平均分子量の卵殻膜加水分解物を処理したサンプルでは、毛髪の先端部分(Tip)の太さが増大し、中でも遊離L-Prolin量(mg/g)が約0.8mg/gという中プロリン量の卵殻膜加水分解物を処理したサンプルにおいて、もっとも毛髪の太さが増大した。
【0060】
また図1~3に、それぞれ、各サンプルの処理前後における毛髪の太さの変化を、毛髪の先端部分(図1)、毛髪の根本部分(図2)、および平均(図3)にわけて示した。これらの図からわかるとおり、中プロリン/高平均分子量の卵殻膜加水分解物を毛髪に処理することにより、もっとも毛髪の太さが増大した。
【0061】
(注記)
以上のように、本開示の好ましい実施形態を用いて本開示を例示してきたが、本開示は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願及び他の文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の組成物により、毛髪の太さを増大させることができる。また卵殻膜という安全性の高い材料を使用しているため、頭皮および頭髪に対する悪影響を生じさせることがない。また安全性に優れているため、化粧品、医薬品、及び医薬部外品などの分野において有用である。
図1
図2
図3