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2023-97108立体造形方法、立体造形装置、および立体造形システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097108
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】立体造形方法、立体造形装置、および立体造形システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20230630BHJP
   B29C 64/165 20170101ALI20230630BHJP
   B29C 64/218 20170101ALI20230630BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20230630BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230630BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230630BHJP
   B22F 10/85 20210101ALI20230630BHJP
   B22F 12/90 20210101ALI20230630BHJP
   B22F 10/14 20210101ALI20230630BHJP
   B22F 10/37 20210101ALI20230630BHJP
   B22F 12/60 20210101ALI20230630BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20230630BHJP
   B22F 1/00 20220101ALN20230630BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/165
B29C64/218
B29C64/209
B33Y10/00
B33Y30/00
B22F10/85
B22F12/90
B22F10/14
B22F10/37
B22F12/60
B33Y50/02
B22F1/00 K
B22F1/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213266
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】進藤 秀規
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213AQ01
4F213AR08
4F213AR09
4F213AR12
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL15
4F213WL49
4F213WL67
4F213WL85
4F213WL87
4F213WL96
4K018AA02
4K018AA14
4K018BA01
4K018BA08
(57)【要約】
【課題】造形材料の飛散量を抑えて、造形液の吐出不良が発生したり、造形材料が氷柱状の状態になったりして、完成品である立体造形物の品質に影響を及ぼすことを防止することができる立体造形方法、立体造形装置、および立体造形システムを提供する。
【解決手段】本発明は、造形材料を含む造形層を形成する造形工程と、前記造形層に造形液を付与する造形液付与工程と、前記造形層を平坦化する平坦化工程と、前記造形工程および前記平坦化工程における前記造形材料の飛散状況を監視する監視工程と、前記監視工程による前記飛散状況の監視結果に基づいて、前記造形工程および前記平坦化工程の少なくとも一つを調整する調整工程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形材料を含む造形層を形成する造形工程と、
前記造形層に造形液を付与する造形液付与工程と、
前記造形層を平坦化する平坦化工程と、
前記造形工程および前記平坦化工程における前記造形材料の飛散状況を監視する監視工程と、
前記監視工程による前記飛散状況の監視結果に基づいて、前記造形工程および前記平坦化工程の少なくとも一つを調整する調整工程と、
を含む立体造形方法。
【請求項2】
前記監視工程は、前記造形層全体から前記造形液を付与する造形液付与部の駆動領域までの画像を取得し、前記画像に基づいて前記飛散状況を監視する、請求項1に記載の立体造形方法。
【請求項3】
前記監視工程は、前記造形工程の前記造形液付与部の進行方向に対する前記造形液付与部の通行予定領域を監視する、請求項2に記載の立体造形方法。
【請求項4】
前記調整工程は、前記飛散状況の監視結果に応じて、前記造形工程での前記造形液付与部の移動速度、前記平坦化工程の平坦化速度、および前記平坦化工程における平坦化部の回転速度の少なくとも1つを変更する、請求項2または3に記載の立体造形方法。
【請求項5】
前記調整工程は、前記造形材料の落下速度に基づいて、前記移動速度、前記平坦化速度、および前記回転速度の少なくとも1つを変更する、請求項4に記載の立体造形方法。
【請求項6】
複数の前記造形層の集合体である造形物の造形前に、前記造形工程および前記平坦化工程の少なくとも1つを調整する事前調整工程をさらに含む請求項1から5のいずれか一項に記載の立体造形方法。
【請求項7】
前記事前調整工程は、前記平坦化工程または前記造形工程を監視し、少なくとも種類、粒径、および密度を含む材料パラメータを算出する、請求項6に記載の立体造形方法。
【請求項8】
前記事前調整工程は、前記造形工程を監視し、少なくとも種類および液滴サイズを含む造形液パラメータを算出する、請求項7に記載の立体造形方法。
【請求項9】
前記調整工程は、前記材料パラメータおよび前記造形液パラメータに基づいて、前記造形工程および前記平坦化工程の少なくとも1つを調整する、請求項8に記載の立体造形方法。
【請求項10】
造形材料を含む造形層を形成する造形部と、
前記造形層に造形液を付与する造形液付与部と、
前記造形層を平坦化する平坦化部と、
前記造形部および前記平坦化部における前記造形材料の飛散状況を監視する監視部と、
前記監視部による前記飛散状況の監視結果に基づいて、前記造形部および前記平坦化部の少なくとも一つを調整する調整部と、
を備える立体造形装置。
【請求項11】
造形材料を含む造形層を形成する造形部と、
前記造形層に造形液を付与する造形液付与部と、
前記造形層を平坦化する平坦化部と、
前記造形部および前記平坦化部における前記造形材料の飛散状況を監視する監視部と、
前記監視部による前記飛散状況の監視結果に基づいて、前記造形部および前記平坦化部の少なくとも一つを調整する調整部と、
を備える立体造形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体造形方法、立体造形装置、および立体造形システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の造形層の集合体である造形物を造形する方法として、選択的にレーザを照射するSLS(Selective Laser Sintering)方式、電子線を照射するEBM(Electron Beam Melting)方式、または結合液(造形液)を塗布するBJ(Binder Jetting)方式等が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、造形層に飛散した造形材料は、自由落下で落ちていく。造形材料が飛散した状態でヘッド(造形液付与部の一例)を駆動させると、造形材料がさらに広範囲に飛散して、センサの精度を落ちたり、モータ等の部品の隙間に入り込んで誤動作したりする。特に、ヘッドの吐出口に、造形材料が張り付いてしまうと、造形液の吐出不良が発生したり、造形材料が氷柱状の状態になったりして、造形物の品質に影響を及ぼす。
【0004】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、造形材料の飛散量を抑えて、造形液の吐出不良が発生したり、造形材料が氷柱状の状態になったりして、完成品である立体造形物の品質に影響を及ぼすことを防止することができる立体造形方法、立体造形装置、および立体造形システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、造形材料を含む造形層を形成する造形工程と、前記造形層に造形液を付与する造形液付与工程と、前記造形層を平坦化する平坦化工程と、前記造形工程および前記平坦化工程における前記造形材料の飛散状況を監視する監視工程と、前記監視工程による前記飛散状況の監視結果に基づいて、前記造形工程および前記平坦化工程の少なくとも一つを調整する調整工程と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、造形材料の飛散量を抑えて、造形液の吐出不良が発生したり、造形材料が氷柱状の状態になったりして、完成品である立体造形物の品質に影響を及ぼすことを防止することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本実施の形態にかかる立体造形システムで実行される立体造形方法の一例を説明するための図である。
図2図2は、本実施の形態にかかる立体造形システムで実行される造形工程の詳細の一例を説明するための図である。
図3図3は、本実施の形態にかかる立体造形システムで実行される平坦化工程の詳細の一例を説明するための図である。
図4図4は、本実施の形態にかかる立体造形システムで実行される監視工程の詳細の一例を説明するための図である。
図5図5は、本実施の形態にかかる立体造形システムで実行される監視工程の詳細の一例を説明するための図である。
図6図6は、本実施の形態にかかる立体造形システムで実行される監視工程の流れの一例を示すフローチャートである。
図7図7は、本実施の形態にかかる立体造形システムで実行される監視工程の流れの一例を説明するための図である。
図8図8は、本実施の形態にかかる立体造形システムの監視工程における監視方法の一例を説明するための図である。
図9図9は、本実施の形態にかかる立体造形システムにおける材料の飛散量の制御処理の一例を説明するための図である。
図10図10は、本実施の形態にかかる立体造形システムにおける材料の飛散量の制御処理の一例を説明するための図である。
図11図11は、本実施の形態にかかる立体造形システムにおける材料の飛散量の制御処理の一例を説明するための図である。
図12図12は、本実施の形態にかかる立体造形システムにおける材料の飛散量の制御処理の一例を説明するための図である。
図13図13は、本実施の形態にかかる立体造形システムにおける飛散監視タイミングの初期値の設定処理の一例を説明するための図である。
図14図14は、本実施の形態にかかる立体造形システムにおける最適な材料パラメータの算出処理の一例を説明するための図である。
図15図15は、本実施の形態にかかる立体造形システムにおける最適な材料パラメータの算出処理の一例を説明するための図である。
図16図16は、本実施の形態にかかる立体造形システムにおける最適な材料パラメータの算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図17図17は、本実施の形態にかかる立体造形システムにおける造形液付与部から吐出する造形液の種類および液滴サイズの算出処理の一例を説明するための図である。
図18図18は、本実施の形態にかかる立体造形システムにおける造形液付与部から吐出する造形液の種類および液滴サイズの算出処理の一例を説明するための図である。
図19図19は、本実施の形態にかかる立体造形システムにおける造形液付与部から吐出する造形液の種類および液滴サイズの算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、立体造形方法、立体造形装置、および立体造形システムの実施の形態を詳細に説明する。
【0009】
図1は、本実施の形態にかかる立体造形システムで実行される立体造形方法の一例を説明するための図である。本実施の形態にかかる立体造形方法は、図1に示すように、造形工程、造形液付与工程、平坦化工程、監視工程、調整工程、および事前調整工程を含む。
【0010】
造形工程は、造形材料を含む造形層を形成する工程である。具体的には、造形工程は、供給層のZ(高さ)方向の移動(供給層の上昇移動)、ホッパーを使用した供給層への粉等の造形材料の供給、および、余剰紛受けでの残材料の回収を含む。ここで、供給層は、材料を供給する目的の層である。また、余剰粉受けは、供給層および造形層のリコートで余った余剰紛(残材料)を回収する層である。また、造形層は、薄い材料の層を作り、造形液で固めていく層である。
【0011】
さらに、造形工程は、造形層のZ(高さ)方向の移動(造形層の下降移動)、および、造形液付与部(例えば、ヘッド)の移動および平坦化部(例えば、リコータ)の移動を行う駆動制御を含む。ここで、造形液付与部は、造形層を固める造形液を造形層に吐出(付与)する。また、平坦化部は、ローラ等を含み、供給層および造形層を平坦化する。
【0012】
造形液付与工程は、造形液付与部から造形層に造形液を付与する工程である。具体的には、造形液付与工程は、造形液タンクからの造形液付与部への造形液の補充、造形液付与部からの造形液の吐出、および、造形液付与部からの造形液の吐出量およびタイミングの制御を含む。
【0013】
平担化工程は、平坦化部によって造形層を平坦化する工程である。具体的には、平坦化工程は、平坦化部によって造形層の平担化を行う際の当該平坦化部(リコートローラ)の回転、および、平坦化部の駆動制御を行う。
【0014】
監視工程は、造形工程および平坦化工程における造形材料の飛散状況を監視する工程である。具体的には、監視工程は、カメラ等(監視部の一例)を使用して、粉等の材料の飛散状況(飛散レベル)を監視する。
【0015】
調整工程は、立体造形システムが有する調整部(例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ)によって、造形工程および平坦化工程の少なくとも1つを調整する工程である。これにより、造形液付与部105周辺の造形材料の飛散状況、造形材料の飛散の発生源を監視して、造形材料の落下速度の制御、造形材料のサイズおよび重さの特性を考慮した発生源の制御等を行うことで、造形材料の飛散量を抑えて、造形液の吐出不良が発生したり、造形材料が氷柱状の状態になったりして、完成品である立体造形物の品質に影響を及ぼすことを防止することができる。
【0016】
具体的には、調整工程は、造形材料の飛散状況の監視結果に基づいて、造形工程での造形液付与部105の移動速度、平坦化工程の平坦化速度(例えば、平坦化部の移動速度)、および平坦化工程における平坦化部(ローラ)の回転速度の少なくとも1つを変更する。例えば、調整工程は、造形材料の落下速度(造形材料の飛散状況の一例)に基づいて、造形工程での造形液付与部105の移動速度、平坦化工程の平坦化速度、および平坦化工程における平坦化部(ローラ)の回転速度の少なくとも1つを変更しても良い。
【0017】
事前調整工程は、立体造形システムが有する事前調整部(例えば、CPU等のプロセッサ)によって、複数の造形層の集合体である造形物の造形前に、造形工程および平坦化工程の少なくとも1つを調整する工程である。具体的には、事前調整工程は、平坦化工程または造形工程を監視し、少なくとも種類、粒径、および密度を含む材料パラメータを算出して記憶する。この材料パラメータによって、飛散が少なくなるように事前調整できる。また、事前調整工程は、造形工程を監視し、少なくとも種類および液滴サイズを含む造形液パラメータを算出して記憶する。この造形液パラメータによって、飛散が少なくなるように事前調整できる。この場合、調整工程は、材料パラメータおよび造形液パラメータに基づいて、造形工程および平坦化工程の少なくとも1つを調整する。
【0018】
図2は、本実施の形態にかかる立体造形システムで実行される造形工程の詳細の一例を説明するための図である。立体造形システムが有する層は、主に、3つの役割の層(供給層101、造形層104、余剰粉受け103)に分かれている。供給層101は、材料を供給する目的の層である。造形層104は、平坦化部106によって供給層101から供給される造形材料によって薄い造形材料の層を作り、造形液で固めていく層である。余剰粉受け103は、平坦化部106による供給層101および造形層104のリコートで余った余剰紛(残材料)を回収する層である。
【0019】
造形工程では、まず、ホッパー102から供給層101へ造形材料を供給(提供)する。供給層101への造形材料の提供は、事前に供給層101に造形材料を供給しておく場合、およびホッパー102を通じて供給層101に造形材料を補給していく場合がある。
【0020】
供給層101の一端(造形層104側の端とは反対側の端)には、供給層101、造形層104、および余剰粉受け103のリコートを行う平坦化部106(リコートローラ)が存在する。また、立体造形システムは、造形層104上に、造形液を付与する造形液付与部105が存在している。そして、立体造形システムは、平坦化部106と造形液付与部105が効率的に動作できるように、平坦化部106および造形液付与部105の駆動制御を行う。
【0021】
図3は、本実施の形態にかかる立体造形システムで実行される平坦化工程の詳細の一例を説明するための図である。造形工程では、材料が供給層101に供給されると(ステップS301)、平坦化部106によって、供給層101から造形層104へと造形材料を提供して、造形層104に造形材料を展開する(ステップS302)。すなわち、平坦化部106は、造形層104を形成する造形部の一例としても機能する。
【0022】
次に、平坦化工程では、造形層104において余剰になった造形材料(残材料、余剰紛)を余剰紛受け103に落とす(ステップS303)。そして、平坦化工程では、造形層104に所定の面が形成されるまで、ステップS301~ステップS303を繰り返す。
【0023】
図4および図5は、本実施の形態にかかる立体造形システムで実行される監視工程の詳細の一例を説明するための図である。監視工程は、カメラ107等の監視部によって、造形工程および平担化工程における造形材料の飛散状況を監視する。カメラ107によって、平担化工程を監視する場合、図3のステップS302において造形材料の飛散が発生する可能性がある。そのため、監視工程では、カメラ107によって、平坦化工程全体を監視する。
【0024】
具体的には、監視工程では、符号a,b,cのそれぞれで示す動作ポイントにおける造形材料の飛散の状況(例えば、造形材料の飛散の程度である飛散レベル)を監視する。そして、監視工程では、図5に示すように、造形材料の空間分布の状況、造形液付与部105の駆動によって発生する衝撃波による造形材料の飛散が一定以下になるように制御する。
【0025】
より具体的には、監視工程は、空間画像として、造形層104全体から造形液を付与する造形液付与部105の駆動領域までの画像を取得し、画像に基づいて前記飛散状況を監視する。空間画像は、所定間隔または各工程で連続して取得する。ここで、空間画像は、造形層104全体から造形液付与部105の駆動領域までの画像である。また、ここで、各工程は、造形工程、造形液付与工程、および平坦化工程を含む。そして、監視工程は、空間画像に基づいて、造形材料の飛散状況を監視する。造形液付与部105の駆動領域は、造形工程における造形液付与部105の進行方向に対する当該造形液付与部105の通行予定領域を含む。
【0026】
図6は、本実施の形態にかかる立体造形システムで実行される監視工程の流れの一例を示すフローチャートである。図7は、本実施の形態にかかる立体造形システムで実行される監視工程の流れの一例を説明するための図である。
【0027】
複数の造形層104の集合体である造形物の造形に用いる造形材料の種類の違いによって、造形材料の飛散の解消にかかる時間が異なる。そのため、監視工程では、造形材料の種類、粒径、密度等を材料パラメータとして、飛散監視タイミングを設定する(ステップS601)。ここで、飛散監視タイミングは、造形工程および平坦化工程において、材料の飛散を監視するタイミングである。
【0028】
次いで、監視工程では、飛散監視タイミングにおいて、カメラ107によって材料の飛散状況を監視する(ステップS602)。本実施の形態では、監視工程では、図7に示すように、カメラ107によって、造形液付与部105の駆動範囲を含む監視領域を監視する。
【0029】
次いで、監視工程は、監視した材料の飛散の程度(飛散状況)が所定レベル以下であるか否かを判断する(ステップS603)。ここで、所定レベルは、予め設定される、材料の飛散の程度であり、材料の飛散が収まったと判断する飛散状況の閾値である。そして、飛散状況が所定レベルより高い場合(ステップS603:No)、監視工程では、ステップS601に戻り、再度、材料の飛散を監視する。
【0030】
一方、飛散状況が所定レベル以下である場合(ステップS603:Yes)、監視工程は、次の制御に移る(ステップS604)。
【0031】
図8は、本実施の形態にかかる立体造形システムの監視工程における監視方法の一例を説明するための図である。造形工程および平坦化工程において飛散している造形材料が造形液付与部105の吐出部に付着すると、造形液付与部105からの造形液の吐出不良、および造形液付与部105に対する造形材料の氷柱状の付着等による粉面の破壊等が発生する。そこで、本実施の形態では、カメラ107は、造形液付与部105の駆動範囲を監視可能(撮像可能)に設けられている。
【0032】
図9は、本実施の形態にかかる立体造形システムにおける材料の飛散量の制御処理の一例を説明するための図である。本実施の形態では、立体造形システムは、監視工程において造形材料の飛散を監視した結果、飛散状況が所定レベルより高い場合、造形材料の飛散を減らす。
【0033】
例えば、立体造形システムは、図9(a)に示すように、造形液付与部105の駆動速度(移動速度)を下げることによって、造形材料の飛散量を減らす。また、例えば、立体造形システムは、図9(b)に示すように、平坦化部106の移動速度(平坦化工程の平坦化速度の一例)および平坦化部106の回転速度の少なくとも一方を下げることによって、材料の飛散量を減らしても良い。その際、立体造形システムは、例えば、カメラ107によって、造形液付与部105の駆動範囲である対象領域を撮像した画像に基づいて、対象領域における材料の濃度を監視しても良い。
【0034】
図10~12は、本実施の形態にかかる立体造形システムにおける材料の飛散量の制御処理の一例を説明するための図である。例えば、飛散状況(飛散レベル)が最大の飛散レベル:5となった場合、立体造形システムは、造形材料の飛散量を減らす。具体的には、飛散レベルが飛散レベル:5となった場合、立体造形システムは、図10に示すように、造形材料の飛散量(すなわち、材料の飛散の監視結果)が増加していると判断する。そして、立体造形システムは、図11に示すように、平坦化部106の駆動速度(移動速度)を20mm/sから10mm/sに落とし、平坦化部106の回転速度を5rpmから3rpmに落とし、かつ造形液付与部105の駆動速度(移動速度)を100mm/sから50mm/sに落とす。さらに、立体造形システムは、図12に示すように、飛散監視タイミングの間隔を初期値:3sから5sに長くする。
【0035】
また、例えば、造形材料の飛散レベルが所定レベルより高くかつ飛散レベル:5より低い飛散レベル:4となった場合、立体造形システムは、図10に示すように、造形材料の飛散レベル(造形材料の飛散の監視結果)が所定の範囲以上で増加減していると判断する。そして、立体造形システムは、造形材料の飛散量を減らす。
【0036】
また、造形材料の飛散レベルが所定レベルである飛散レベル:3となった場合、立体造形システムは、図10に示すように、造形材料の飛散レベルが所定の範囲内と判断して、造形材料の飛散量を減らさず、現状を維持する。
【0037】
また、造形材料の飛散レベルが所定レベルより低くかつ飛散レベル:1より高い飛散レベル:2となった場合、立体造形システムは、図10に示すように、造形材料の飛散レベル(造形材料の飛散の監視結果)が所定の範囲以下で増加減していると判断する。そして、立体造形システムは、飛散監視タイミングの間隔を5sから3sに短くしても良い。
【0038】
さらに、造形材料の飛散レベルが最小の飛散レベル:1となった場合、立体造形システムは、図10に示すように、造形材料の飛散レベル(材料の飛散の監視結果)が低レベルであると判断する。そして、立体造形システムは、平坦化部106の駆動速度および平坦化部106の回転速度の少なくとも一方を上げ、かつ飛散監視タイミングの間隔を短くする。
【0039】
本実施の形態では、立体造形システムは、造形材料の種類、粒径、密度等の材料パラメータに基づいて、飛散監視タイミングの初期値を設定する。その後、立体造形システムは、造形工程、および平坦化工程のそれぞれの工程における飛散レベルの監視結果に基づいて、飛散監視タイミングを更新する。
【0040】
図13は、本実施の形態にかかる立体造形システムにおける飛散監視タイミングの初期値の設定処理の一例を説明するための図である。本実施の形態では、立体造形システムは、造形層104の集合体である造形物の造形を開始する前に、造形材料の飛散状況を確認するためのテストチャート(例えば、「R」)を造形して、飛散監視タイミング、平坦化部106の移動速度、および平坦化部106の回転速度の初期値を設定する。その後、立体造形システムは、造形物の造形を開始する。
【0041】
図14および図15は、本実施の形態にかかる立体造形システムにおける最適な材料パラメータの算出処理の一例を説明するための図である。図16は、本実施の形態にかかる立体造形システムにおける最適な材料パラメータの算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0042】
図14に示すように、造形材料の種類、粒径、および密度の少なくとも1つ以上の材料パラメータに違いがある場合、造形物の造形における造形材料の飛散の仕方が異なる。そのため、本実施の形態にかかる立体造形システムでは、図15に示すように、造形材料の種類、粒径、および密度の少なくとも1つの材料パラメータの組み合わせ毎に、平坦化部106の移動速度および回転速度の組合せを実行して、供給層101、造形層104、および余剰粉受け103に対する平坦化部106の移動を繰り返す。そして、本実施の形態にかかる立体造形システムでは、造形材料の飛散レベルを監視して、最適な材料パラメータを算出して、記憶する。
【0043】
具体的には、立体造形システムは、まず、平坦化部106の移動速度および回転速度等の組合せを設定する(ステップS1601)。次に、立体造形システムは、供給層101、造形層104、および余剰粉受け103に対する平坦化部106によるリコートを実行する(ステップS1602)。さらに、立体造形システムは、カメラ107によって、造形材料の飛散状況を監視する(ステップS1603)。
【0044】
次に、立体造形システムは、造形材料の飛散状況が最適か否かを判断する(ステップS1604)。例えば、立体造形システムは、造形材料の飛散状況が所定レベルである場合に、造形材料の飛散状況が最適であると判断する。造形材料の飛散状況が最適である場合(ステップS1604:Yes)、立体造形システムは、最後に設定された材料パラメータを記憶する(ステップS1605)。
【0045】
次に、立体造形システムは、全ての材料パラメータの組合せについて造形が完了したか否かを判断する(ステップS1606)。全ての材料パラメータの組合せについて造形が完了した場合(ステップS1606:Yes)、立体造形システムは、材料パラメータの組合せの設定を終了する。
【0046】
一方、造形材料の飛散状況が最適でない場合(ステップS1604:No)、および全ての材料パラメータの組合せについて造形が完了していない場合(ステップS1606:No)、立体造形システムは、材料パラメータの組合せを変更して(ステップS1607)、ステップS1602~ステップS1606に示す処理を繰り返す。
【0047】
図17および図18は、本実施の形態にかかる立体造形システムにおける造形液付与部から吐出する造形液の種類および液滴サイズの算出処理の一例を説明するための図である。図19は、本実施の形態にかかる立体造形システムにおける造形液付与部から吐出する造形液の種類および液滴サイズの算出処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0048】
造形液の種類および液滴サイズの少なくとも1つ以上の造形液パラメータに違いがある場合、造形物の造形工程における造形材料の飛散の仕方が異なる。そのため、本実施の形態にかかる立体造形システムでは、図17および図18に示すように、造形液の種類および液滴サイズの組合せ毎に造形材料の飛散状況を監視して、造形液の種類および液滴サイズ等の最適な造形液パラメータを算出して記憶する。
【0049】
具体的には、立体造形システムは、まず、造形液の種類および液滴サイズの組合せを設定する(ステップS1901)。次に、立体造形システムは、造形液付与部105から造形液を吐出させる(ステップS1902)。その際、立体造形システムは、カメラ107によって、造形液付与部105の駆動範囲内の造形材料の飛散状況を監視する(ステップS1903)。
【0050】
次に、立体造形システムは、造形材料の飛散状況が最適か否かを判断する(ステップS1904)。例えば、立体造形システムは、造形材料の飛散状況が所定レベルである場合に、造形材料の飛散状況が最適であると判断する。造形材料の飛散状況が最適である場合(ステップS1904:Yes)、立体造形システムは、最後に設定された造形液パラメータの組合せを最適なパラメータの組合せに設定して記憶する(ステップS1905)。
【0051】
次に、立体造形システムは、全ての造形液パラメータの組合せについて飛散状況が最適か否かの判断が完了したか否かを判断する(ステップS1906)。全ての造形液パラメータの組合せについて最適か否かの判断を行った場合(ステップS1906:Yes)、立体造形システムは、造形液パラメータの設定を終了する。
【0052】
一方、造形材料の飛散状況が最適でない場合(ステップS1904:No)、および全ての造形液パラメータの組合せについて最適か否かの判断を行っていない場合(ステップS1906:No)、立体造形システムは、造形液パラメータの組合せを変更して(ステップS1907)、ステップS1902~ステップS1906に示す処理を繰り返す。
【0053】
本実施の形態にかかる立体造形システムによれば、造形液付与部105周辺の造形材料の飛散状況、造形材料の飛散の発生源を監視して、造形材料の落下速度の制御、造形材料のサイズおよび重さの特性を考慮した発生源の制御等を行うことで、造形材料の飛散量を抑えて、造形液の吐出不良が発生したり、造形材料が氷柱状の状態になったりして、完成品である立体造形物の品質に影響を及ぼすことを防止することができる。
【符号の説明】
【0054】
101 供給層
102 ホッパー
103 余剰粉受け
104 造形層
105 造形液付与部
106 平坦化部
107 カメラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】特開2021-20371号公報
【特許文献2】特許第6567948号公報
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