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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097129
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 451
B41J2/01 129
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213302
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】307015301
【氏名又は名称】武藤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鴨田 武
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EB27
2C056EC07
2C056EC11
2C056EC28
2C056EC37
2C056EC77
2C056EE09
2C056FA10
2C056FA15
2C056FC01
2C056FD20
2C056HA44
(57)【要約】
【課題】層間印刷位置の位置合わせを精度よく容易に行う。
【解決手段】印刷装置は、印刷ヘッドと、印刷ヘッドを、記録媒体に対して主走査方向及びこれと交差する副走査方向に相対的に移動させて記録媒体上に第m(mは1以上の整数)の印刷条件に基づいて第mの印刷層の印刷を実行する第m層印刷処理と、印刷ヘッドを、記録媒体に対して主走査方向及び副走査方向に移動させて第mの印刷層が印刷された記録媒体上に第n(nはm以外の整数)の印刷条件に基づいて第nの印刷層の印刷を実行する第n層印刷処理と、を実行する制御部とを備え、制御部は、第mの印刷層と第nの印刷層との間の相対的な印刷位置のずれを確認及び調整するための調整パターンを印刷する調整パターン印刷処理と、設定された調整値に基づいて第mの印刷層と第nの印刷層との間の相対的な印刷位置のずれを調整する印刷位置調整処理とを実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルを有する印刷ヘッドと、
前記印刷ヘッドを、記録媒体に対して主走査方向及びこれと交差する副走査方向に相対的に移動させて前記記録媒体上に第m(mは1以上の整数)の印刷条件に基づいて第mの印刷層の印刷を実行する第m層印刷処理と、前記印刷ヘッドを、前記録媒体に対して前記主走査方向及び前記副走査方向に移動させて前記第mの印刷層が印刷された前記記録媒体上に第n(nはm以外の整数)の印刷条件に基づいて第nの印刷層の印刷を実行する第n層印刷処理と、を実行する制御部と
を備えた印刷装置において、
前記制御部は、
前記第mの印刷層と前記第nの印刷層との間の相対的な印刷位置のずれを確認及び調整するための調整パターンを印刷する調整パターン印刷処理と、
設定された調整値に基づいて前記第mの印刷層と前記第nの印刷層との間の相対的な印刷位置のずれを調整する印刷位置調整処理と
を実行する
印刷装置。
【請求項2】
前記第mの印刷条件及び前記第nの印刷条件は、それぞれ前記印刷ヘッドに供給する駆動波形、及び前記印刷ヘッドの移動速度の少なくとも一つを含み、互いに異なる
請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記調整パターンは、前記第mの印刷層と前記第nの印刷層とで印刷箇所が重ならない第1の調整パターンを含む
請求項1又は2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記調整パターンは、前記第mの印刷層と前記第nの印刷層とで印刷箇所が重なる第2の調整パターンを含む
請求項1又は2記載の印刷装置。
【請求項5】
前記調整パターンは、第1の調整パターン及び第2の調整パターンを含み、
前記第1の調整パターンは、前記第mの印刷層及び前記第nの印刷層の一方に形成された基準線及び他方に形成された調整線を含み、
前記第2の調整パターンは、前記第mの印刷層及び前記第nの印刷層の一方に形成された基準ブロック及び他方に形成された調整ブロックを含み、
前記基準線と前記調整線とは重ならず、
前記基準ブロックと前記調整ブロックとは重なる
請求項1又は2記載の印刷装置。
【請求項6】
前記第1の調整パターンは、前記主走査方向に繰り返し形成され、前記基準線に対する前記調整線の位置が前記主走査方向の一方から他方にかけて徐々にずれるパターンである
請求項5記載の印刷装置。
【請求項7】
前記第2の調整パターンは、前記主走査方向に繰り返し形成され、前記基準ブロックに対する前記調整ブロックの位置が前記主走査方向の一方から他方にかけて徐々にずれるパターンである
請求項5記載の印刷装置。
【請求項8】
前記印刷位置調整処理は、前記第m層印刷処理及び前記第n層印刷処理のいずれか一方における、前記印刷ヘッドに供給する駆動波形の出力タイミングをずらす処理、前記第mの印刷層及び前記第nの印刷層のいずれか一方の印刷データを前記主走査方向にずらす処理、及び前記記録媒体が設置されるテーブルを前記主走査方向にずらす処理の少なくとも一つである
請求項1~7のいずれか1項記載の印刷装置。
【請求項9】
前記インクは反応性硬化型インクである請求項1~8のいずれか1項記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層印刷が可能な印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、印刷ヘッドから記録媒体のドット形成位置にインクを吐出して画像等を印刷する印刷装置において、異なる吐出タイミングで形成されたドット形成位置の位置ずれを抑制する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法では、印刷ヘッドの主走査方向の往動でドットを形成し、ノズルピッチの半分の送り量の副走査方向の移動を行って、主走査方向の復動でドットを形成する。これにより、往復動で形成されたドット列が副走査方向に交互に並ぶテストパターンを印刷する。このテストパターンの直線性に基づき吐出タイミングを調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-130112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示された従来技術の印刷装置では、いわゆる1回の印刷の平面内におけるドット形成層におけるドット形成位置の位置ずれは調整することが可能であるが、インクを記録媒体上に複数回重ねて印刷を行い複数層重ねて印刷するような多層印刷(積層印刷)において、複数回重ねて印刷を行う層毎の印刷位置を調整することは考慮されておらず、印刷位置の位置ずれが生じた場合には、対応することができない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、複数回重ねて印刷を行う積層印刷における層間印刷位置の位置合わせを精度よく容易に行うことができる層間印刷が可能な印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る印刷装置は、インクを吐出するノズルを有する印刷ヘッドと、前記印刷ヘッドを、記録媒体に対して主走査方向及びこれと交差する副走査方向に相対的に移動させて前記記録媒体上に第m(mは1以上の整数)の印刷条件に基づいて第mの印刷層の印刷を実行する第m層印刷処理と、前記印刷ヘッドを、前記記録媒体に対して前記主走査方向及び前記副走査方向に移動させて前記第mの印刷層が印刷された前記記録媒体上に第n(nはm以外の整数)の印刷条件に基づいて第nの印刷層の印刷を実行する第n層印刷処理と、を実行する制御部とを備えた印刷装置において、前記制御部は、前記第mの印刷層と前記第nの印刷層との間の相対的な印刷位置のずれを確認及び調整するための調整パターンを印刷する調整パターン印刷処理と、設定された調整値に基づいて前記第mの印刷層と前記第nの印刷層との間の相対的な印刷位置のずれを調整する印刷位置調整処理とを実行する。
【0007】
本発明の一実施形態において、前記第mの印刷条件及び前記第nの印刷条件は、それぞれ前記印刷ヘッドに供給する駆動波形、及び前記印刷ヘッドの移動速度の少なくとも一つを含み、互いに異なる。
【0008】
本発明の他の実施形態において、前記調整パターンは、前記第mの印刷層と前記第nの印刷層とで印刷箇所が重ならない第1の調整パターンを含む。
【0009】
本発明の更に他の実施形態において、前記調整パターンは、前記第mの印刷層と前記第nの印刷層とで印刷箇所が重なる第2の調整パターンを含む。
【0010】
本発明の更に他の実施形態において、前記調整パターンは、第1の調整パターン及び第2の調整パターンを含み、前記第1の調整パターンは、前記第mの印刷層及び前記第nの印刷層の一方に形成された基準線及び他方に形成された調整線を含み、前記第2の調整パターンは、前記第mの印刷層及び前記第nの印刷層の一方に形成された基準ブロック及び他方に形成された調整ブロックを含み、前記基準線と前記調整線とは重ならず、前記基準ブロックと前記調整ブロックとは重なる。
【0011】
本発明の更に他の実施形態において、前記第1の調整パターンは、前記主走査方向に繰り返し形成され、前記基準線に対する前記調整線の位置が前記主走査方向の一方から他方にかけて徐々にずれるパターンである。
【0012】
本発明の更に他の実施形態において、前記第2の調整パターンは、前記主走査方向に繰り返し形成され、前記基準ブロックに対する前記調整ブロックの位置が前記主走査方向の一方から他方にかけて徐々にずれるパターンである。
【0013】
本発明の更に他の実施形態において、前記印刷位置調整処理は、前記第m層印刷処理及び前記第n層印刷処理のいずれか一方における、前記印刷ヘッドに供給する駆動波形の出力タイミングをずらす処理、前記第mの印刷層及び前記第nの印刷層のいずれか一方の印刷データを前記主走査方向にずらす処理、及び前記記録媒体が設置されるテーブルを前記主走査方向にずらす処理の少なくとも一つである。
【0014】
本発明の更に他の実施形態において、前記インクは反応性硬化型インクである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、積層印刷における層間印刷位置の位置合わせを精度よく容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る印刷装置の概略構成を示す図である。
図2】同印刷装置の機能的構成を概略的に示すブロック図である。
図3】同印刷装置の印刷ヘッドを概略的に示す図である。
図4】同印刷装置のハードウェア構成を概略的に示す構成図である。
図5】積層印刷におけるドットの形成位置とヘッド-着弾位置間距離を示す説明図である。
図6】各印刷層の印刷条件の相違に基づく印刷層間の印刷位置のずれを調整する第1の調整パターンを示す図である。
図7】印刷位置の調整方法における波形を説明するための図である。
図8】同調整方法における未調整状態の波形を説明するための図である。
図9】波形の吐出タイミングを遅らせる調整について説明するための図である。
図10】波形の吐出タイミングを早める調整について説明するための図である。
図11】各印刷層の印刷条件の相違に基づく印刷層間の印刷位置のずれを調整する第1の調整パターンの他の例を示す図である。
図12】本発明の第2の実施形態に係る多層印刷時の各印刷層間の印刷位置の調整方法に使用される第2の調整パターンの第1例を説明するための図である。
図13】同第1例の調整前と調整後のドット形成位置のイメージを説明するための図である。
図14】第2の調整パターンによる印刷位置の調整方法の第2例を説明するための図である。
図15】同第2例の調整前と調整後のドット形成位置のイメージを説明するための図である。
図16】本発明の第3の実施形態に係る多層印刷時の各印刷層間の印刷位置の調整方法に使用される第3の調整パターンを説明するための図である。
図17】同調整方法におけるパターン参照のイメージを説明するための図である。
図18】最適な調整値を選択するための具体的な調整方法を実現する調整処理手順を示すフローチャートである。
図19】粗調整パターンを説明するための図である。
図20】微調整パターンを説明するための図である。
図21】ディスプレイの表示例を示す図である。
図22】ディスプレイの表示例を示す図である。
図23】粗調整パターンと微調整パターンの調整値の関係性を説明するための図である。
図24】確認パターンを説明するための図である。
図25】積層印刷の積層イメージを説明するための図である。
図26】積層印刷の積層イメージを説明するための図である。
図27】ディスプレイの表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態に係る印刷装置を詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、以下の実施形態において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、実施形態においては、各構成要素の配置、縮尺及び寸法等が誇張或いは矮小化されて、実際のものとは一致しない状態で示されている場合、並びに一部の構成要素につき記載が省略されて示されている場合がある。
【0018】
[第1の実施形態]
[印刷装置の構成]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る印刷装置の概略構成を示す図である。図2は、印刷装置の機能的構成を概略的に示すブロック図である。図3は、印刷装置の印刷ヘッドを概略的に示す図である。図4は、印刷装置のハードウェア構成を概略的に示す構成図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態の印刷装置10は、例えば紫外線硬化型インク(UVインク)を、テーブル1上に載置された記録媒体(紙、透明板等)4上に吐出して、複数の印刷層を重ねた多層印刷(積層印刷)が可能な装置である。印刷装置10は、テーブル1と、制御部20と、印刷ヘッド30と、を備える。
【0020】
なお、印刷ヘッド30は、キャリッジ駆動機構2によって、図中矢印で示す主走査方向(CR方向)に移動可能に構成されている。また、テーブル1は、テーブル駆動機構3によって、図中矢印で示す副走査方向(PF方向)に移動可能に構成されている。これにより、印刷ヘッド30は、記録媒体4に対してCR方向及びPF方向に相対的に移動可能に構成される。印刷装置10は、多層印刷を行う場合は、例えば第m(mは1以上の整数)層(例えば、第1層)目の印刷を行った後に、テーブル1をテーブル駆動機構3によって副走査方向に戻した上で、第n(nはm以外の整数)層(例えば、第2層)目以降の印刷をその上に行うように構成される。なお、以降においては、特に明記しない限り第m層、第mの印刷層を第1層、第1の印刷層とし、第n層、第nの印刷層を第2層、第2の印刷層として説明する。本実施形態の印刷装置10はテーブルが移動する構造にて説明を行うが、テーブルが固定され印刷ヘッド30を記録媒体4に対してPF方向に相対的に移動する構造や記録媒体4をベルト搬送の構造や加圧ローラ等により挟んで搬送を行う構造などを用いても良い。
【0021】
本実施形態の印刷装置10は、上記のUVインクを使用した多層印刷(積層印刷)を例に挙げて説明するが、使用されるインクはこれに限定されるものではなく、電子線等を用いた電磁波硬化型インク(EBインク)、その他の化学反応を用いて硬化するインクなど、光、熱、化学反応等を利用した反応性硬化型インクを利用することができる。
【0022】
また、印刷装置10は、図2に示すように、上記印刷ヘッド30及び制御部20の他に、各種の印刷条件及び画像データを含む印刷データを入力する印刷データ入力部11と、表示装置としてのディスプレイ12と、操作部13と、を備える。ディスプレイ12は、印刷装置10の操作部13に含まれていてもよい。
【0023】
さらに、印刷装置10は、キャリッジ駆動機構2を駆動するキャリッジ駆動部14と、テーブル駆動機構3を駆動するテーブル駆動部15と、印刷ヘッド30を駆動するヘッド駆動部16と、記憶部17と、を備える。なお、印刷ヘッド30には、UV-LEDランプ等を有する紫外線(UV)照射装置32が設けられている。
【0024】
印刷データ入力部11は、外部からPDF(Portable Document Format)及びPS(PostScript:登録商標)等の線、文字、図形、写真などを含む画像データと、印刷ヘッド30のヘッド駆動電圧波形(「駆動波形」、以下、単に「波形」と称することもある。)に関する情報を含む印刷条件と、を有する印刷データを入力する。
【0025】
なお、印刷データは、例えば積層印刷の際には、各層毎に異なる印刷条件をそれぞれ有するデータで構成され得る。印刷データの印刷条件は、さらに、印刷ヘッド30のキャリッジ速度、UVインクの粘度、及びUVインクの加熱温度に関する情報の少なくとも一つを含んで構成され得る。
【0026】
印刷データ入力部11によって入力された印刷データには、例えばベクタデータからなる画像データが含まれる。この画像データは、例えばRIP(Raster Image Processor)の機能を有する制御部20によって、ラスタデータからなるTIFF画像等のラスタイメージデータ(CMYKデータ)に変換される。印刷データに含まれる画像データは、外部において予めラスタイメージデータに変換されたものでもよい。
【0027】
制御部20は、例えば色変換処理及びハーフトーン処理等を行って、画像データ(ラスタイメージデータ)に各種変換処理を施して印刷用の画像データを生成する。この画像データは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)の4色に、ホワイト(W)及びバーニッシュ(V)を加えた6色データで構成され得る。制御部20は、また、後述する調整パターン印刷処理と、印刷位置調整処理とを実行する。
【0028】
ディスプレイ12は、各種の情報を表示する表示画面を有する。操作部13は、印刷装置10のユーザによる操作入力を、例えば入力装置28(図4参照)を介して受け付ける。キャリッジ駆動部14、テーブル駆動部15及びヘッド駆動部16は、制御部20からの制御命令によって、印刷条件に基づき画像データを印刷するように、キャリッジ駆動機構2、テーブル駆動機構3及び印刷ヘッド30を動作させる。
【0029】
記憶部17は、各種のプリントプロファイル及び処理テーブル等のデータ、ディスプレイドライバ及びプリンタドライバ等のデータ、印刷位置の調整処理を実行するプログラム及び各種の制御プログラム等のデータ、並びに上述したような各種の画像データを有する印刷データ等の各種の情報を記憶する。
【0030】
[印刷ヘッドの構成]
図3に示すように、印刷ヘッド30は、インクジェット記録ヘッド部31と、紫外線(UV)照射装置32と、を備える。インクジェット記録ヘッド部31は、例えば互いに同一幅の印刷範囲を有する6個の記録ヘッド33を搭載する。主走査方向の図中左に向かう向きを印刷方向とすると、インクジェット記録ヘッド部31は、印刷方向の先頭側から順にホワイト(W)、ホワイト(W)、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)、バーニッシュ(V)及びバーニッシュ(V)のUVインクを吐出する各記録ヘッド33がWWYCMKVVの順で並ぶように配置されている。なお、ここではホワイト(W)とバーニッシュ(V)の記録ヘッド33が、それぞれ2つずつ備えられている例について説明したが、ホワイト(W)とバーニッシュ(V)の記録ヘッド33は、それぞれ1つずつ配置されていても良い。
【0031】
各記録ヘッド33には、PF方向に、例えばピエゾ素子により駆動される多数のインク吐出ノズルが一定のノズルピッチで配列されており、これら多数のインク吐出ノズルがPF方向に延びるノズルアレイを構成している。なお、各記録ヘッド33のノズルアレイは、1列状又は複数列状の構成を採用し得る。
【0032】
紫外線(UV)照射装置32は、インクジェット記録ヘッド部31の印刷方向の後方側に搭載され、制御部20の制御によって、記録媒体4上に吐出されたUVインクに紫外線(UV)を照射する。この紫外線(UV)照射装置32は、双方向印刷を実施する場合には、インクジェット記録ヘッド部31の主走査方向の両側に設けられていても良い。
【0033】
[印刷装置のハードウェア構成]
図4は、印刷装置10のハードウェア構成を示す。印刷装置10は、コンピュータと同様に、CPU21と、RAM22と、ROM23と、HDD(ハードディスクドライブ)24と、SSD(ソリッドステートドライブ)25と、を備える。また、印刷装置10は、入出力I/F(インタフェース)26と、通信I/F(インタフェース)27と、を備える。印刷装置10の各構成部21~27は、それぞれバス9によって互いに通信可能に接続されている。
【0034】
CPU21は、RAM22、ROM23、HDD24、SSD25等に記憶された各種のプログラムを実行することで印刷装置10の全体を制御すると共に、調整処理プログラムを実行することで積層印刷時の層間印刷位置の位置調整機能を実現する。RAM22は、CPU21の作業領域として、例えば各種の画像データの描画・展開処理等、及び各種の印刷条件に基づく演算・算出処理等に使用され得る。
【0035】
ROM23は、上述した各種のプログラムを、例えば読み出し可能に格納する。HDD24及びSSD25は、各種のデータを読み書き可能に記憶し、印刷装置10の記憶部17の機能を実現する。なお、HDD24及びSSD25の他に、印刷装置10に着脱可能な可搬性を有する記憶媒体(メモリカード等)を接続可能なカードスロット部が設けられていてもよい。
【0036】
入出力I/F26には、上記操作部13として機能する、キーボード、マウス及びタッチパネル等(図示せず)の入力装置28が接続されている。入力装置28は、ユーザからの操作入力に伴う情報を受け付ける。また、入出力I/F26には、例えばディスプレイ12が接続されている。ディスプレイ12は、印刷装置10のオペレーションに関する情報を含む各種の情報を表示する。なお、入力装置28としてタッチパネルが用いられる場合は、タッチパネルは、ディスプレイ12上に設けられていてもよい。
【0037】
通信I/F27には、例えばインターネット等のネットワーク18を介して外部機器29が接続され得る。外部機器29は、例えば遠隔地の他の印刷装置、コンピュータ及びワークステーション等の他の制御装置、タブレット端末等の携帯型情報端末装置を含む。このように、印刷装置10は、通信I/F27を介して外部機器29と通信可能に構成される。なお、図示は省略するが、印刷装置10には、さらにカラーセンサや距離センサ等の各種のセンサが備えられていてもよい。
【0038】
[多層印刷時の印刷位置のずれの問題]
例えば、透明なスマホケースにUV(硬化型)インクによる厚盛印刷を行うような場合、下地層としてW(ホワイト)インクを全面印刷し、その上にCMYKインクによる画像を印刷し、更にその上にV(バーニッシュ)インクを使用した厚盛印刷を行うといった、多層印刷をすることがある。このような多層印刷の場合、異なる印刷層で使用されるインクの種類、粘度等が異なるため、印刷ヘッド30に印加される駆動電圧波形、印刷ヘッド30の移動速度等の印刷条件が印刷層毎に異なることがある。例えば、第1の印刷層がCMYKインクを使用した印刷である場合、CMYKインクに適した第1の駆動電圧波形が使用される。また、第2の印刷層がV(バーニッシュ)インクを使用した印刷である場合、Vインクに適した第2の駆動電圧波形が使用される。また、第1の印刷層の印刷と第2の印刷層の印刷とでは、印刷ヘッド30の駆動速度を異ならせることもある。このように、印刷層によって印刷ヘッド30に与えられる駆動電圧波形、駆動速度、インクの粘度、加熱温度等の印刷条件が異なると、印刷層間で印刷ドットの形成位置が微妙にずれてしまうことがある。
【0039】
また、印刷条件の相違の有無にかかわらず、各印刷層のドット形成時に、下の印刷層のドットが形成されている位置に、上の印刷層のドットが重なって形成されると、印刷ヘッド30のノズルとインクの着弾位置との間の距離が変化する。
図5は、積層印刷におけるドットの形成位置とヘッド-着弾位置間距離を示す説明図である。
図5に示すように、印刷ヘッド30を印刷方向に駆動しながらUVインクを吐出すると、印刷ヘッド30の移動方向への移動速度とインクの記録媒体4に向かう吐出速度とで決まる傾斜角度でUVインクが飛翔する。ここで、例えば二層の積層印刷を行う場合、印刷ヘッド30を印刷方向に駆動してUVインクを吐出し、記録媒体4上に一層目のドット6を形成して硬化させ、再度印刷ヘッド30を印刷方向に駆動して一層目のドット6の上にUVインクを吐出し、二層目のドット7を形成して硬化させることが行われる。
【0040】
この場合、一層目の印刷時の印刷ヘッド30のノズル面と記録媒体4の表面(紙面)との間の距離である紙面間距離(以下、「ペーパーギャップ(PG)」と称する。)H1よりも、二層目の印刷時のペーパーギャップ(PG)H2の方が、ドット6の厚み分距離が短くなる。この傾向は、三層目以上の印刷においても続くこととなる。
【0041】
そうすると、UVインクの着弾位置は、例えば一層目の形成時と三層目(以降)の形成時とではずれ量dで示すようなずれが生じる。このように、層毎に着弾距離が変化して徐々にずれが生じることとなるので、層毎のドット6,7の形成時には、UVインクの記録媒体4上の層厚、着弾位置及び着弾距離を考慮しなければ、結果的に印刷精度及び印刷品質が著しく劣ることになってしまう。
【0042】
本実施形態の印刷装置10は、以上の点を考慮して、多層印刷時の各印刷層間の印刷位置の調整が可能となるように構成されている。
【0043】
なお、ここで「一つの印刷層」とは、印刷ヘッド30がCR方向及びPF方向の印刷開始位置(ホームポジション)から印刷終了位置まで印刷した結果得られた印刷層を意味する。したがって、例えばホワイト(W)のUVインク、カラー(CMYK)のUVインク、及びバーニッシュ(V)のUVインクが積層されたような多層構造であっても、それらが、印刷開始位置から印刷終了位置までの1回の移動によって完成された印刷層であれば、「一つの印刷層」に含まれる。例えば印刷ヘッド30を副走査方向に少しずつずらしながら、ホワイト(W)、カラー(CMYK)、バーニッシュ(V)の各UVインクを同時に吐出して、ホワイト(W)のUVインク、カラー(CMYK)のUVインク及びバーニッシュ(V)のUVインクを順次重ねていく多層印刷の場合でも、印刷ヘッド30が印刷開始位置から印刷終了位置まで移動して完成された印刷層であれば、一つの印刷層となる。また「一つの印刷層」は必ずしも全面での印刷が行われるものではないため、インクが吐出されていない部分が存在しても良い。
【0044】
[印刷位置の調整方法]
以下、制御部20が実行する調整パターン印刷処理と、印刷位置調整処理とにより実現される層間における印刷位置の調整方法について説明する。
図6は、各印刷層の印刷条件の相違に基づく印刷層間の印刷位置のずれを調整する第1の調整パターン60を示す図である。この第1の調整パターン60は、制御部20の調整パターン印刷処理によって印刷される。
【0045】
この第1の調整パターン60では、印刷層間でのインク層の重なりによる位置ずれの影響を排除し、印刷条件の相違による影響のみを確認する。まず、印刷装置10が備える印刷ヘッド30の駆動電圧波形の全ての種類の中から、例えば第1の印刷条件(印刷データ1)に含まれるUVインクの着弾位置の調整基準となる波形(基準波形)「波形A」を決定する。そして、第1の印刷条件とは異なる第2の印刷条件に含まれるUVインクの着弾位置の調整対象となる波形(調整波形)「波形B」の調整を行って、着弾位置を補正することが行われる。
【0046】
図6(a)に示すように、まず、一走査目である第1の印刷層において、第1の印刷条件に基づいて印刷ヘッド30を印刷方向に移動させて、「波形A」で所定のUVインクを吐出し、例えば上下に離隔する逆T字状及びT字状の複数の線状パターンからなる基準線61を記録媒体4上に印刷する(第m層印刷処理)。
【0047】
次に、図6(b)に示すように、記録媒体4をテーブル駆動機構3によってフィードせずにPF方向の同じ位置をキープするように制御した上で、二走査目である第2の印刷層において、第2の印刷条件に基づいて印刷ヘッド30を印刷方向(ヘッドの走査方向)に移動させて、「波形B」で所定のUVインクを吐出し、例えばI字状の複数の線状パターンからなる調整線62を記録媒体4上の基準線61間に印刷する(第n層印刷処理)。これら基準線61及び調整線62は、第1の調整パターン60(印刷パターン)を構成する。基準線61及び調整線62は、印刷位置が重ならない。
【0048】
そして、こうして印刷された印刷結果(第1の調整パターン60)における基準線61及び調整線62のUVインクの着弾位置を確認する。第1の調整パターン60においては、基準線61に対して調整線62が向かって左側に位置ずれを起こして印刷されていることが把握され得るので、「波形B」による出力タイミング(以下、「吐出タイミング」とも称する。)が遅れていることが分かる。
【0049】
従って、このような印刷結果の場合、例えば操作部13を介してユーザにより入力された位置ずれのずれ量に応じた調整値によって、制御部20の制御の下、図6(c)に示すように、調整線62の印刷位置が基準線61の印刷位置に合うように、第2の印刷条件の波形Bの吐出タイミングを「早める」補正が行われ、UVインクの着弾位置が調整される。
【0050】
なお、図6に示した例では、「波形B」の吐出タイミングを「早める」ことで調整線62のUVインクの着弾位置を、印刷方向に対して後方側に移動させることで、基準波形(波形A)と調整波形(波形B)の着弾位置を一致させているが、これと逆方向に調整線62の位置ずれが生じていた場合には、「波形B」の吐出タイミングを「遅くする」ことで調整することができる。このように、本実施形態による調整方法によれば、波形を補正することで波形間のUVインクの着弾位置を調整して、印刷位置の調整が行われる。
【0051】
図7は、印刷位置の調整方法における波形を説明するための図である。図8は、調整方法における未調整状態の波形を説明するための図である。また、図9は、波形の吐出タイミングを遅らせる調整について説明するための図であり、図10は、波形の吐出タイミングを早める調整について説明するための図である。
【0052】
ここで、基準波形の「波形A」に対して調整波形の「波形B」をどのように変化させて印刷位置の調整を行うかについて、具体的に説明する。
印刷ヘッド30がUVインクを吐出するために用いられる波形A,Bは、例えば横軸を経過時間とし、縦軸を記録ヘッド33のピエゾ素子に印加する駆動電圧値とすると、図7(a)及び図7(b)に示すように表すことができる。
【0053】
これらの波形A,Bは、記録ヘッド33のインク吐出ノズルから1ドット分のUVインクを吐出する波形に相当している。実際に印刷ヘッド30がCR方向に駆動されて1回分の印刷走査が行われるときは、ヘッド駆動部16から図示のような波形A,Bが印刷するドットの数だけ繰り返して出力される。
【0054】
そして、波形Aに対して波形Bが調整されていない状態(未調整状態)での各波形A,Bの吐出タイミングは、図8に示すようになる。このような未調整状態での波形A,Bの出力開始タイミングは、制御部20及びヘッド駆動部16によって吐出座標単位で管理されているので、両者は完全に同じ開始位置から出力が開始される。
【0055】
この場合において、第1の調整方法では、調整波形である波形Bの出力開始タイミングを、上述したように遅らせたり早めたりすることで、UVインクの着弾タイミングを調整している。なお、1ドットを吐出するための波形A,Bの1周期(吐出周期)は、次のような関係が成り立つ必要がある。
・吐出周期(秒)≦吐出分解能(m)/キャリッジ速度(m/秒)
従って、例えば吐出分解能が360(dpi)=70.6(μm)で、キャリッジ速度が0.5(m/秒)のときは、吐出周期は70.6(μm)/0.5(m/秒)=141(μ秒)以下である必要があるといえる。
【0056】
このような前提のもとに、図9(b)に示すように、第1の調整パターン60において波形Bによる調整線62が基準線61に対して向かって右側に位置ずれを起こして印刷される(UVインクが印刷方向に対して手前側に着弾される)場合は、波形Bの出力開始タイミングが波形Aの出力開始タイミングに対して早いこととなる。
【0057】
このため、図9(a)に示すように、基準波形である波形Aの出力開始タイミングは変更せずに、調整前の波形Bの出力開始タイミングを微小時間ΔT(調整値)だけ遅延させるようにして、調整後の波形B´の出力開始タイミングとなるように補正する。
【0058】
これにより、波形B´の出力開始タイミングでは、UVインクの吐出開始が微小時間ΔT分だけ波形Aに対して遅れるため、その着弾位置を、調整線62が基準線61に対して向かって左側にずれるように(UVインクが印刷方向に対して奥側に着弾されるように)移動させることができる。これにより、調整線62が基準線61に対して位置合わせされて、印刷位置の調整が行われる。
【0059】
一方、図10(b)に示すように、第1の調整パターン60において波形Bによる調整線62が基準線61に対して向かって左側に位置ずれを起こして印刷される(UVインクが印刷方向に対して奥側に着弾される)場合は、波形Bの出力開始タイミングが波形Aの出力開始タイミングに対して遅いこととなる。
【0060】
このため、図10(a)に示すように、基準波形である波形Aの出力開始タイミングは、上記と同様に変更せずに、調整前の波形Bの出力開始タイミングを微小時間ΔT(調整値)だけ先行させるようにして、調整後の波形B´の出力開始タイミングとなるように補正する。
【0061】
これにより、波形B´の出力開始タイミングでは、UVインクの吐出開始が微小時間ΔT分だけ波形Aに対して早まるため、その着弾位置を、調整線62が基準線61に対して向かって右側にずれるように(UVインクが印刷方向に対して手前側に着弾されるように)移動させることができる。これにより、調整線62が基準線61に対して位置合わせされて、印刷位置の調整が行われる。
【0062】
このように、本実施形態による調整方法では、例えば印刷結果の第1の調整パターン60におけるUVインクの着弾位置を確認した上で、基準線61に対する調整線62の位置ずれが最小となるように、波形Bの吐出タイミングを早く又は遅くすることによって、UVインクの着弾位置を各印刷層間において補正して印刷位置を調整することができる。これにより、多層印刷時の各印刷層間における印刷位置の位置合わせを精度よく容易に行うことが可能となる。
【0063】
図11は、各印刷層の印刷条件の相違に基づく印刷層間の印刷位置のずれを調整する第1の調整パターンの他の例を示す図である。
この第1の調整パターン60の他の例では、まず、印刷装置10が備える印刷ヘッド30の駆動電圧波形の全ての種類の中から、例えば第1の印刷条件(印刷データ1)に含まれるUVインクの着弾位置の調整基準となる波形(基準波形)「波形A」を決定する。そして、第1及び第2の印刷条件とは異なる第3の印刷条件に含まれるUVインクの着弾位置の調整対象となる波形(調整波形)「波形C」の調整を行って、着弾位置を補正することが行われる。
【0064】
図11(a)に示すように、まず、一走査目である第1の印刷層において、第1の印刷条件に基づいて印刷ヘッド30を印刷方向に移動させて、「波形A」で所定のUVインクを吐出し、基準線61を記録媒体4上に印刷する(第m層印刷処理)。
【0065】
次に、図6(b)に示すように、記録媒体4をフィードしないように制御した上で、二走査目である第2の印刷層において、第3の印刷条件に基づいて印刷ヘッド30を印刷方向に移動させて、「波形B」で所定のUVインクを吐出し、第1の調整パターン60の調整線62を記録媒体4上の基準線61間に印刷する(第n層印刷処理)。
【0066】
そして、こうして印刷された印刷結果(第1の調整パターン60)における基準線61及び調整線62のUVインクの着弾位置を確認する。第1の調整パターン60においては、基準線61に対して調整線62が向かって左側に位置ずれを起こして印刷されていることが把握され得るので、「波形C」による出力タイミング(以下、「吐出タイミング」とも称する。)が遅れていることが分かる。
【0067】
従って、このような印刷結果の場合、例えば操作部13を介してユーザにより入力された位置ずれのずれ量に応じた調整値によって、制御部20の制御の下、図11(c)に示すように、調整線62の印刷位置が基準線61の印刷位置に合うように、第3の印刷条件の波形Cの吐出タイミングを「早める」補正が行われ、UVインクの着弾位置が調整される。上記説明では二層の積層印刷について説明したが、更に層数が増えた場合(例えば、第3の印刷条件による印刷を三層目以降で実行するような場合)は、印刷層毎に印刷条件を最適なものに設定すれば良い。
【0068】
[第2の実施形態]
[印刷位置の調整方法の第1例]
図12は、本発明の第2の実施形態に係る多層印刷時の各印刷層間の印刷位置の調整方法に使用される第2の調整パターンの第1例を説明するための図である。図13は、第1例の調整前と調整後のドット形成位置のイメージを説明するための図である。なお、図12及び図13を含む以降の説明においては、第1の実施形態及びその変形例と同一の構成要素については同一の符号を付しているので、以下では重複する説明は省略する。
【0069】
ここでは、印刷層間の印刷条件の相違による位置ずれだけでなく、印刷層間でのインクの重なりによる位置ずれも考慮した第2の調整パターン70のうち、第1例の調整パターン70Aを使用する。この調整パターン70Aでは、印刷装置10が備える印刷ヘッド30の駆動電圧波形のうち、第1の印刷条件(印刷データ1)に含まれる基準波形「波形A」で記録媒体4に下塗りをし、第2の印刷条件(印刷データ2)に含まれる調整波形「波形B」で上塗りをするパターンとなる。この調整パターン70Aは、制御部20の調整パターン印刷処理によって印刷される。
【0070】
図12(a)に示すように、まず、一走査目である第1の印刷層において、第1の印刷条件に基づいて印刷ヘッド30を印刷方向に移動させて、「波形A」で所定のUVインクを吐出し、例えば矩形状の複数のブロック状パターンからなる基準ブロック71を記録媒体4上に印刷する(第m層印刷処理)。
【0071】
次に、上述したように記録媒体4をフィードせずに、二走査目である第2の印刷層において、第2の印刷条件に基づいて印刷ヘッド30を印刷方向に移動させて、「波形B」で所定のUVインクを吐出し、基準ブロック71と同様のブロック状パターンからなる調整ブロック72を基準ブロック71上に重ねて印刷する(第n層印刷処理)。これら基準ブロック71及び調整ブロック72は、調整パターン70Aを構成する。
【0072】
そして、こうして印刷された印刷結果(調整パターン70A)における基準ブロック71及び調整ブロック72のUVインクの着弾位置を確認する。上記の例の調整パターン70Aにおいては、基準ブロック71に対して調整ブロック72が向かって右側に位置ずれを起こして印刷されていることが把握され得るので、「波形B」による出力開始タイミングが早まっていることが分かる。
【0073】
従って、このような印刷結果の場合、例えば操作部13を介してユーザにより入力された位置ずれのずれ量に応じた調整値によって、制御部20の制御の下、図12(b)に示すように、調整ブロック72の印刷位置が基準ブロック71の印刷位置の真上に重なるように、第2の印刷条件の波形Bの出力開始タイミングを「遅らせる」補正が行われ、PGでの着弾距離の変化に対応してUVインクの着弾位置が調整される。なお、第2の調整パターン70においては、例えば第1例の調整パターン70Aに着目すると、基準ブロック71を構成する基準色と、調整ブロック72を構成する調整色とが、同色或いは近い色である場合、確認自体が難しくなることがある。このため、積層印刷を行う場合はホワイト(W)のUVインクで下塗り(又は後述する第2例の調整パターン70Bの場合は上塗り)を行うことが多い点を勘案して、基準ブロック71をホワイト(W)のUVインクで印刷し、調整ブロック72をカラー(例えば、マゼンタ(M)等の調整の標準色)のUVインクで印刷するようにすると、確認が容易となる。
【0074】
すなわち、図13に示すように、ノズルの位置合わせ等が予め調整されている印刷ヘッド30を印刷方向に移動させて、第1の印刷層のドット6を記録媒体4上に着弾させた後、図13(a)で示す未調整の状態では第2の印刷層のドット7の着弾位置が第1の印刷層のドット6に対してずれてしまうのに対し、同図(b)に示す調整済みの状態(波形Bを調整値で補正済み)では第2の印刷層のドット7´の着弾位置を第1の印刷層のドット6の真上とすることが可能であり、多層印刷(積層印刷)時の各印刷層間における各層の印刷位置を位置合わせすることができる。
【0075】
[印刷位置の調整方法の第2例]
図14は、第2の調整パターンによる印刷位置の調整方法の第2例を説明するための図である。
積層印刷におけるUVインクの積層方式は適宜変更され得るものであるので、調整パターン70Aを用いた第1例による調整の他に、次のような調整パターン70Bを用いた第2例による調整も可能である。この調整方法では、印刷装置10が備える印刷ヘッド30の駆動電圧波形のうち、第2の印刷条件(印刷データ2)に含まれる調整波形「波形B」で記録媒体4に下塗りをし、第1の印刷条件(印刷データ1)に含まれる基準波形「波形A」で上塗りをする場合の着弾位置の補正が行われる。
【0076】
図14に示すように、まず、一走査目である第1の印刷層において、第2の印刷条件に基づいて印刷ヘッド30を印刷方向に移動させて、「波形B」で所定のUVインクを吐出し、調整ブロック72を記録媒体4上に印刷する。次に、記録媒体4をフィードせずに、二走査目である第2の印刷層において、第1の印刷条件に基づいて印刷ヘッド30を印刷方向に移動させて、「波形A」で所定のUVインクを吐出し、調整ブロック72を基準ブロック71上に重ねて印刷して、調整パターン70Bを形成する。
【0077】
その後、この印刷結果(調整パターン70B)における基準ブロック71及び調整ブロック72のUVインクの着弾位置を確認する。図14の例の調整パターン70Bにおいては、調整ブロック72が基準ブロック71に対して向かって右側に位置ずれを起こして印刷されていることが把握され得るので、上で説明した位置ずれと同様に、「波形B」による出力開始タイミングが早まっていることが分かる。
【0078】
このような印刷結果の場合も、調整値によって、調整ブロック72の印刷位置が基準ブロック71の印刷位置の真下に重なるように、第2の印刷条件の波形Bの出力開始タイミングを「遅らせる」補正が行われ、PGでの着弾距離の変化に対応してUVインクの着弾位置が調整される。
【0079】
すなわち、図15に示すように、ノズルの位置合わせ等が予め調整されている印刷ヘッド30を印刷方向に移動させて、第1の印刷層のドット6を記録媒体4上に着弾させた後、図15(a)で示す未調整の状態では第2の印刷層のドット7の着弾位置に対して第1の印刷層のドット6がずれてしまうのに対し、同図(b)に示す調整済みの状態(波形Bを調整値で補正済み)では第1の印刷層のドット6´の着弾位置を第2の印刷層のドット7の真下とすることが可能であり、多層印刷(積層印刷)時の各印刷層間における各層の印刷位置を位置合わせすることができる。
【0080】
このように、本実施形態による調整方法でも、例えば印刷結果の各調整パターン70A,70BにおけるUVインクの着弾位置を確認した上で、基準ブロック71に対する調整ブロック72の印刷位置が重なるように、波形Bの吐出タイミングを早く又は遅くすることによって、UVインクの着弾位置を積層印刷時の層間において補正して印刷位置を調整することができる。これにより、積層印刷における層間印刷位置の位置合わせを精度よく容易に行うことが可能となる。
【0081】
[第3の実施形態]
[印刷位置の調整方法]
図16は、本発明の第3の実施形態に係る多層印刷時の各印刷層間の印刷位置の調整方法に使用される第3の調整パターンを説明するための図である。図17は、調整方法におけるパターン参照のイメージを説明するための図である。ここでは、上述した調整パターン60と第2の調整パターン70A,70Bとを組み合わせた第3の調整バターン80について説明する。
【0082】
すなわち、図16に示すように、第1の印刷条件及び第2の印刷条件に基づいて印刷ヘッド30を印刷方向に移動させて、調整パターン60,70Aについては「波形A」で所定のUVインクを吐出して基準線61及び基準ブロック71を、調整パターン70Bについては「波形B」で所定のUVインクを吐出して調整ブロック72を、それぞれ記録媒体4上に第1の印刷層として印刷する。
【0083】
次に、第1の印刷条件及び第2の印刷条件に基づいて再度印刷ヘッド30を印刷方向に移動させて、調整パターン60,70Aについては「波形B」で所定のUVインクを吐出して調整線62及び調整ブロック72を、調整パターン70Bについては「波形A」で所定のUVインクを吐出して基準ブロック71を、それぞれ記録媒体4上に第2の印刷層として印刷する。こうして形成された調整パターン60,70A,70Bは、本実施形態の調整パターン80を構成する。
【0084】
この実施形態では、この印刷結果(調整パターン80)における調整パターン60,70A,70BのUVインクの着弾位置を確認し、例えば平均的に位置ずれのずれ量が少ないと把握され得るものを、印刷位置の調整が合っているものと判断し、判断結果に基づく調整値を得て第2の印刷条件の「波形B」を補正して、UVインクの着弾位置を調整する。
【0085】
なお、調整パターン80における調整パターン60と調整パターン70とで位置ずれの傾向が異なる場合(例えば、調整パターン60では合っていると思われるが、調整パターン70A,70Bについては別の調整値に基づき印刷されたものの方が位置ずれが少ないと思われるような場合)は、ユーザが印刷する印刷データに含まれる画像データの印刷傾向に基づいて、以下のような判断基準で参照する調整パターン60,70A,70Bを選択することが可能である。
【0086】
すなわち、図17(a)に示すように、画像データに積層部分が無い又は少ない場合は、調整パターン80のうちの第1の調整パターン60を参照パターン81とする。また、図17(b)に示すように、例えばホワイト(W)のUVインクでべた塗りをした上で、カラー(CMYK)のUVインクで上塗りをするような、基準波形の「波形A」で下塗りする部分が多い場合は、調整パターン80のうちの第2の調整パターン70Aを参照パターン81とする。
【0087】
さらに、図17(c)に示すように、透明アクリル板等の記録媒体4上にカラー(CMYK)のUVインクで下塗りをした上で、バーニッシュ(V)のUVインクで厚塗り印刷をするような、基準波形の「波形A」で上塗りする部分が多い場合は、調整パターン80のうちの第2の調整パターン70Bを参照パターン81とする。
【0088】
[印刷位置の調整処理手順]
図18は、最適な調整値を選択するための具体的な調整方法を実現する、制御部20が実行する調整パターン印刷処理と印刷位置調整処理の手順を示すフローチャートである。図19は、粗調整パターンを説明するための図である。図20は、微調整パターンを説明するための図である。また、図21及び図22は、ディスプレイの表示例を示す図である。
【0089】
次に、本実施形態に係る印刷位置の調整処理手順について説明する。なお、以下の調整処理においては、説明の都合上ユーザによる操作部13を介した操作入力に伴う工程もいくつか含まれているが、これらは全て印刷装置10に備えられた各種のセンサ及び制御部20等の処理によって自動化することも可能である。
【0090】
図18に示すように、まず、印刷装置10において現状設定されている調整値(現在の調整値)での印刷位置の位置ずれを確認するため、操作部13を介したユーザからの操作入力に基づいて(以下、特に明記しない限り記載を省略する。)、確認パターン30A(図24参照)を印刷する(ステップS100)。この確認パターン30Aは、図24に示すように、複数の調整パターン80をCR方向に所定間隔で、記録媒体4の印刷領域の幅一杯に繰り返して印刷したパターンである。
【0091】
次に、ユーザは、印刷された確認パターンを視認して、特に参照パターン81に着目して、現在の調整値(現在値)での印刷状況に基づく印刷層間の位置ずれの発生状況を確認する(ステップS101)。その結果、印刷層毎の印刷位置の位置合わせが完了したか否かを判断し(ステップS102)、完了していないと判断した場合(ステップS102のNo)は、その位置ずれのずれ量を選択する(ステップS103)。一方、完了したと判断した場合(ステップS102のYes)は、本フローチャートによる一連の処理を終了する。
【0092】
そして、位置ずれのずれ量が明らかに大きいと判断される場合又はずれ量の大小が判別できない場合(ステップS103の「大」)は、図19に示すような粗調整パターン40を印刷する(ステップS104)。一方、ずれ量が明らかに小さいと判断される場合(ステップS103の「小」)は、図20に示すような微調整パターン50を印刷する(ステップS106)。
【0093】
ここで、粗調整パターン40について説明する。
印刷位置の調整に関しては、印刷装置10が有する調整分解能は印刷ヘッド30の吐出分解能に対して十分に小さな量である。このため、調整当初から本来の微細な調整分解能で印刷位置の調整を行うと、ずれ量が大きい場合には却って調整効率が悪化してしまうこととなる。
【0094】
そこで、図19に示すように、粗調整パターン40においては、上記のような本来の調整分解能に対して、例えば数倍の分解能となる十分に大きな分解能(粗調整分解能)で、ずれ量が選択された調整パターン80における調整値に基づく複数の調整パターン41を、ずれ量の調整値を変化させながらパターン印刷している。これにより、調整効率の向上を図っている。
【0095】
図19に示す粗調整パターン40は、例えば番号「1」から「11」までの粗調整分解能に基づきずれ量が異なるように調整値が変化させられて印刷された複数の調整パターン41により構成されている。なお、番号「6」の調整パターン41が、ずれ量が選択された調整パターン80における調整値に基づきパターン印刷されたものとなっている。
【0096】
また、番号が「5」、「4」と小さくなるにつれて、第2の印刷条件の調整波形「波形B」の印刷結果による着弾位置が、反原点方向(向かって左側の方向)に位置ずれするように調整値を変化させてパターン印刷されたものとなっている。反対に、番号が「7」、「8」と大きくなるにつれて、第2の印刷条件の調整波形「波形B」の印刷結果による着弾位置が、原点方向(向かって右側の方向)に位置ずれするように調整値を変化させてパターン印刷されたものとなっている。
【0097】
そして、こうして形成された粗調整パターン40において、調整パターン60の調整線62及び調整パターン70A,70Bの調整ブロック72の位置ずれのずれ量が最も少ない調整パターン(の調整値)の選択を受け付ける(ステップS105)。図示の例では、印刷された番号「1」から「11」の調整パターン41のうち、番号「9」で示す調整パターン41が位置ずれのずれ量が最も少ないものであるため、この番号「9」の調整パターン41が選択される。
【0098】
粗調整パターン40における調整パターン41の選択は、例えば図21に示すように、ディスプレイ12上に表示された「ソチョウセイパターンセンタク:(1-11)」との操作メッセージに従って、上記の例ではユーザが番号「9」を選択することにより行われる。
【0099】
次に、微調整パターン50について説明する。
上述した粗調整パターン40は、粗調整分解能に基づいてずれ量の調整値を変化させた複数の調整パターン41により構成されているが、図20に示すように、微調整パターン50は、印刷装置10の本来の調整分解能(絞った高い微調整分解能)で、ずれ量が選択された調整パターン80(又は粗調整パターン40において選択された調整パターン41)における調整値に基づく複数の調整パターン51を、ずれ量の調整値を変化させながらパターン印刷したものである。
【0100】
図20に示す微調整パターン50は、例えば番号「1」から「7」までの微調整分解能に基づきずれ量が異なるように調整値が変化させられて印刷された複数の調整パターン51により構成されている。なお、番号「4」の調整パターン51が、ずれ量が選択された調整パターン80(又は粗調整パターン40において選択された調整パターン41)における調整値に基づきパターン印刷されたものとなっている。
【0101】
また、番号が「3」、「2」と小さくなるにつれて、第2の印刷条件の調整波形「波形B」の印刷結果による着弾位置が、反原点方向(向かって左側の方向)に位置ずれするように調整値を変化させてパターン印刷されたものとなっている。反対に、番号が「5」、「6」と大きくなるにつれて、第2の印刷条件の調整波形「波形B」の印刷結果による着弾位置が、原点方向(向かって右側の方向)に位置ずれするように調整値を変化させてパターン印刷されたものとなっている。
【0102】
そして、こうして形成された微調整パターン50において、調整パターン60の調整線62及び調整パターン70の調整ブロック72の位置ずれのずれ量が最も少ない調整パターン(の調整値)の選択を受け付ける(ステップS107)。図示の例では、印刷された番号「1」から「7」の調整パターン51のうち、番号「2」で示す調整パターン51が位置ずれのずれ量が最も少ないものであるため、この番号「2」の調整パターン51が選択される。
【0103】
微調整パターン50における調整パターン51の選択は、例えば図22に示すように、ディスプレイ12上に表示された「ビチョウセイパターンセンタク:(1-7)」との操作メッセージに従って、上記の例ではユーザが番号「2」を選択することにより行われる。
【0104】
図23は、粗調整パターンと微調整パターンの調整値の関係性を説明するための図である。図23に示すように、上記の粗調整パターン40と微調整パターン50との関係性は、以下のようになっている。
・粗調整:「番号」+1>微調整:番号「7」>現在値>微調整:番号「1」>粗調整:「番号」-1
【0105】
すなわち、粗調整パターン40及び微調整パターン50の番号「4」の調整パターン41,51の調整値を、仮に基準とする現在値とした場合、粗調整パターン40の番号「5」の調整パターン41の調整値と、微調整パターン50の番号「7」の調整パターン51の調整値とは、それぞれ重複しないように設定される。
【0106】
また、粗調整パターン40の番号「3」の調整パターン41の調整値と、微調整パターン50の番号「1」の調整パターン51の調整値とは、それぞれ重複しないように設定される。このようにすることで、粗調整パターン40及び微調整パターン50を用いた印刷位置の調整効率をさらに向上させている。
【0107】
そして、例えば印刷された粗調整パターン40又は微調整パターン50においてステップS107で選択が受け付けられた調整値(現在値)を記憶部17に記憶する(ステップS108)。
【0108】
こうして記憶された調整値に基づいて、調整パターン41,51の調整線62及び調整ブロック72の着弾位置を、調整パターン41,51の基準線61及び基準ブロック71の着弾位置に対して、位置合わせされるように第2の印刷条件を補正し(ステップS109)、上記ステップS100に移行して再度確認パターン30Aを印刷する(ステップS100)。
【0109】
図24は、確認パターンを説明するための図である。
ステップS109において補正された第2の印刷条件と共に第1の印刷条件を用いて、図24に示すように、複数の調整パターン80がパターン印刷された確認パターン30Aを印刷する(ステップS100)。図示の確認パターン30Aは、例えば最もずれ量が少ない微調整パターン50の番号「2」の調整パターン51の調整値に基づき調整波形「波形B」が補正されたものであるため、目視による位置ずれはほぼ確認できないものとなっている。このような場合は、印刷層毎の印刷位置の位置合わせがなされている(完了している)と判断する(ステップS102のYes)。
【0110】
なお、上記の例では、粗調整パターン40の印刷及び調整値の選択の後に、微調整パターン50の印刷及び調整値の選択を連続的に行って、印刷位置の調整を行ったが、粗調整パターン40の印刷(ステップS104)と、微調整パターン50の印刷(ステップS106)のいずれか一方を、ずれ量に基づき選択するようにしてもよい。
【0111】
また、印刷位置の調整は、上述した印刷ヘッド30に対する駆動電圧波形のみならず、印刷条件に含まれる他の情報(印刷ヘッド30のキャリッジ速度、UVインクの粘度、及びUVインクの加熱温度等に関する情報)に基づいて行うようにしてもよい。例えば、第1の印刷条件及び第2の印刷条件に含まれる波形種類が「波形A」、「波形B」及び「波形C」の3種類であり、印刷ヘッド30のキャリッジ速度種類が「速度L(Low)」及び「速度H(High)」の2種類である場合、これら全ての組み合わせは、以下のようになる。
【0112】
[基準層] [調整層]
・波形A-速度L;波形B-速度L
・波形A-速度L;波形B-速度H
・波形A-速度H;波形B-速度L
・波形A-速度H;波形B-速度H
・波形A-速度L;波形C-速度L
・波形A-速度L;波形C-速度H
・波形A-速度H;波形C-速度L
・波形A-速度H;波形C-速度H
・波形B-速度L;波形C-速度L
・波形B-速度L;波形C-速度H
・波形B-速度H;波形C-速度L
・波形B-速度H;波形C-速度H
【0113】
上記の全ての組み合わせについて、上述したように波形を補正して吐出タイミングを調整し、調整値を記憶して複数回重ねて印刷を行うそれぞれの積層印刷に用いるように構成する。このようにすれば、印刷装置10での積層印刷における印刷層毎の層間印刷位置の位置合わせを、精度よく容易に行い、印刷品質を向上させることができる。
【0114】
[他の実施形態]
図25及び図26は、積層印刷の積層イメージを説明するための図である。図27は、ディスプレイの表示例を示す図である。
印刷装置10においては、上記各実施形態で説明したUVインクの着弾位置補正による印刷位置の調整方法に加えて、次のような調整方法を採用することもできる。すなわち、積層印刷においては、記録媒体4上における同じ印刷対象への印刷を繰り返して行うと、UVインクのインク層の層厚が増していくこととなる。このインク層の層厚の変化によって、PGや着弾距離、着弾位置が変化してしまうので、インク積層の調整方法を考慮する必要がある。
【0115】
すなわち、インク積層の調整方法における第1の補正方式は、積層印刷回数による着弾位置補正である。この第1の補正方式では、積層印刷の回数を制御部20においてカウントし、その印刷回数に応じてUVインクの層毎の着弾位置の調整値を、自動的に線形補正して補正値を得る。なお、線形補正の係数は、例えば上述したような各駆動電圧波形毎に実験や計測を繰り返すことで事前に決定して記憶部17に記憶しておく。これにより、印刷装置10のユーザは、積層印刷回数を意識すること無く、積層回数に応じた最適なUVインクの着弾位置にて印刷が可能となる。
【0116】
また、インク積層の調整方法における第2の補正方式は、テーブル1の下降によるPG補正である。この第2の補正方式では、インク積層により増加したインク層の層厚分の厚みを、テーブル1(ワークステージ(記録媒体4の設置面))を下降させることで吸収し、印刷ヘッド30の記録ヘッド33のノズル面からUVインクの着弾面までの距離(ペーパーギャップ:PG)を一定に保つように制御を行う。なお、この場合、印刷装置10には、テーブル1の昇降機構が設けられ、制御部20によって記憶部17に記憶されたファームウェアに基づき、昇降機構を制御することでテーブル1の高さを制御する。
【0117】
そして、インク積層の調整方法では、これら第1の補正方式と第2の補正方式とを組み合わせて、最適な補正値を算出するようにしても良い。例えば、インク積層によって変化するPGが印刷ヘッド30の製品仕様の推奨範囲内であるうちは、第1の補正方式を実施する。一方、インク積層が続けられてPGが印刷ヘッド30の製品仕様の推奨範囲を超えた場合は、第2の補正方式を実施して、PGが適正値となるようにテーブル1を下降させ、この下降により生じたPGの変化に応じて、第1の補正方式で得られた補正値を再計算して補正値として適用する。また、インク積層の調整方法においては、例えば印刷ヘッド30に図示しない昇降機構を設け、記憶部17に記憶されたファームウェアに基づく制御部20による昇降機構の制御によって、印刷ヘッド30の高さ自体を制御するようにしても良い。
【0118】
なお、インク積層においては、図25に示すように、記録媒体4上の印刷領域全体に一層目のドット6、二層目のドット7及び三層目のドット8の色の異なるUVインクを着弾させるような印刷データに含まれる画像データ(1)と、図26に示すように、UVインクの色毎に記録媒体4上の印刷領域を分けて一層目のドット6、二層目のドット7及び三層目のドット8のUVインクを着弾されるような印刷データに含まれる画像データ(2)と、では、積層回数による記録媒体4上のインク層の層厚は大きく異なるものとなる。
【0119】
すなわち、前者の印刷データに含まれる画像データ(1)では、記録媒体4上のインク層の層厚h1は三層分の厚みとなるが、後者の印刷データに含まれる画像データ(2)では、各層の印刷領域は重ならないため、記録媒体4上のインク層の層厚h2は一層分の厚みにしかならない。
【0120】
従って、後者の印刷データに含まれる画像データ(2)を多用して積層印刷を行うような場合には、上述したインク積層の調整方法は却って逆効果となる可能性があるため、そのような場合はインク積層の調整方法を無効化させた方が印刷画質の低下は少なくなる。このため、インク積層の調整方法においては、調整の有効化及び無効化を適宜選択可能に構成している。
【0121】
すなわち、インク積層の調整方法においては、印刷する画像データの傾向により、積層補正の補正強度(補正レベル)を、例えば以下の3段階+OFFの選択肢から選べるように、例えば図27に示すようなディスプレイ12上に表示された「ホセイレベル:(OFF、1-3)」との操作メッセージに従って、選択設定可能に構成する。
【0122】
積層補正レベル設定:
・3 :強
・2 :標準
・1 :弱
・OFF:補正機能無効
【0123】
補正レベルの設定基準は、例えば画像データ(1)のようにUVインクの着弾が各層の印刷領域の全域にわたっているような場合は、「2:標準」又は「3:強」を選択し、画像データ(2)のように各層のUVインクの着弾がそれぞれ重ならないような場合は「OFF:補正機能無効」を選択する。なお、画像データ(1)と画像データ(2)とが混在するような印刷データを用いる場合は、UVインクが積層する部分と積層しない部分がそれぞれ平均的に良好となるように弱めに補正を行う「1:弱」を選択し、いわゆる重ね描き設定をオンにして積層印刷をするような場合は、一層当たりのインク積層量が多くなるために「3:強」を選択すればよい。
【0124】
その他の調整方法としては、例えばカラーセンサを用いた印刷位置の自動調整が挙げられる。この自動調整では、制御部20によって自動的に上述したような調整値を変化させることで、いわゆる濃淡を表現可能な専用の調整パターンを用意し、この調整パターンの印刷状態をカラーセンサで読み取ることで、自動的に補正値を決定し反映する。
【0125】
また、基準となる印刷層に対して調整される印刷層をCR方向にずらす処理としては、上述した駆動電圧波形の出力開始タイミングを調整する他に、次のよう方法を実行するようにしても良い。
【0126】
例えばテーブル1をCR方向に駆動させる調整方法も挙げられる。記録媒体4が載置されるテーブル1は通常、PF方向への駆動のみが可能に構成されているので、CR方向には駆動することはできないが、例えばテーブル1の昇降機構にCR方向への移動機構を備え、制御部20の制御によってテーブル1をCR方向にずらせるように構成する。このCR方向へのテーブル1のずらしは、印刷ヘッド30の吐出分解能に対して十分小さい微小ずらしとすることで、印刷ヘッド30側の吐出タイミングを調整する代わりに、テーブル1側で波形毎にUVインクの着弾位置の調整を行うことが可能となる。なお、この場合、例えば駆動電圧波形が変わる毎にテーブル1のCR方向の位置変更制御が行われる。
【0127】
また、例えばデータずらしを行う調整方法も挙げられる。このデータずらしでは、予め駆動電圧波形毎のずれ量を測定しておき、印刷データの作成時に測定されたずれ量に応じたダミーデータをCR方向に付加することで、印刷分解能単位でのUVインクの着弾位置の調整を行う。なお、CR方向へのダミーデータの付加が前提となる、反原点方向へのデータずらしを実現することができる。従って、印刷装置10が備える全ての駆動電圧波形のUVインクの着弾位置のうち、例えば最も原点寄り印刷される波形をダミーデータを付加しない基準波形とする。このデータずらしは、例えば同一の駆動電圧波形内での各インク色間のUVインクの着弾位置補正に好適である。以上のように、上記各実施形態に係る多層印刷時の各印刷層間の印刷位置の調整方法によれば、積層印刷における層間印刷位置の位置合わせを精度よく容易に行うことが可能となる。
【0128】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0129】
1 テーブル
2 キャリッジ駆動機構
3 テーブル駆動機構
4 記録媒体
10 印刷装置
11 印刷データ入力部
12 ディスプレイ
13 操作部
14 キャリッジ駆動部
15 テーブル駆動部
16 ヘッド駆動部
17 記憶部
20 制御部
30 印刷ヘッド
32 紫外線(UV)照射装置
図1
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