(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097137
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】エアポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 13/00 20060101AFI20230630BHJP
F04B 9/04 20060101ALI20230630BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
F04B13/00 A
F04B9/04 B
F04B39/00 104D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213315
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 優
(72)【発明者】
【氏名】杉坂 賢一
【テーマコード(参考)】
3H003
3H075
【Fターム(参考)】
3H003AA02
3H003AC02
3H003BC03
3H003CB08
3H075AA18
3H075BB03
3H075CC16
3H075CC23
3H075CC25
3H075DA01
3H075DA03
3H075DA04
3H075DA09
3H075DA28
3H075DB03
(57)【要約】
【課題】シール部材の耐久性を向上する。
【解決手段】エアポンプ10では、ピストン26が後側に移動される際に、Oリング38がピストン26の前板32によって後側に移動される。ここで、前板32に通過孔32Aが設けられており、ピストン26が後側に移動される際には、Oリング38が通過孔32Aをシールせずに、シリンダ24とピストン26との間がシールされない。このため、Oリング38の形状を簡単にできて、Oリング38の耐久性を向上できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側に排出孔が設けられるシリンダと、
前記シリンダ内を移動可能にされ、一側の一側部と他側の他側部とが設けられると共に、前記一側部に通過孔が設けられるピストンと、
前記一側部と前記他側部との間に配置されるシール部材と、
前記ピストンを一側に移動させる際に前記シール部材が前記シリンダと前記他側部との間をシールして前記シリンダと前記ピストンとの間がシールされることで前記排出孔からエアが排出されると共に、前記ピストンを他側に移動させる際に前記シール部材が前記通過孔をシールせずに前記シリンダと前記ピストンとの間がシールされない移動装置と、
を備えるエアポンプ。
【請求項2】
前記他側部に設けられ、前記移動装置が前記ピストンを一側に移動させる際に前記シール部材がシールする連通孔を備える請求項1記載のエアポンプ。
【請求項3】
前記一側部の外周が前記シリンダに接触可能にされる請求項1又は請求項2記載のエアポンプ。
【請求項4】
前記他側部の外周が前記シリンダに接触可能にされる請求項1~請求項3の何れか1項記載のエアポンプ。
【請求項5】
前記ピストンに設けられると共に、前記シール部材側に突出され、前記移動装置が前記ピストンを他側に移動させる際に前記ピストンの一側と他側とを連通する連通路を前記シール部材との間に形成する突出部を備える請求項1~請求項4の何れか1項記載のエアポンプ。
【請求項6】
前記シール部材の断面が円状にされる請求項1~請求項5の何れか1項記載のエアポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダの排出孔からエアが排出されるエアポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のポンプでは、プランジャの右側壁と左側壁との間にシール部材が配置されており、シール部材にスリットが設けられる。駆動手段がプランジャを右側に移動させる際には、シール部材がポンプシリンダとプランジャの左側壁との間をシールして、ポンプシリンダとプランジャとの間がシールされることで、ポンプシリンダの液通路から油が排出される。一方、駆動手段がプランジャを左側に移動させる際には、シール部材がスリットによってポンプシリンダとプランジャの右側壁との間をシールせずに、ポンプシリンダとプランジャとの間がシールされない。
【0003】
ここで、このようなポンプにおいて、特にポンプシリンダの液通路からエアが排出される場合には、シール部材の耐久性を向上できるのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、シール部材の耐久性を向上できるエアポンプを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様のエアポンプは、一側に排出孔が設けられるシリンダと、前記シリンダ内を移動可能にされ、一側の一側部と他側の他側部とが設けられると共に、前記一側部に通過孔が設けられるピストンと、前記一側部と前記他側部との間に配置されるシール部材と、前記ピストンを一側に移動させる際に前記シール部材が前記シリンダと前記他側部との間をシールして前記シリンダと前記ピストンとの間がシールされることで前記排出孔からエアが排出されると共に、前記ピストンを他側に移動させる際に前記シール部材が前記通過孔をシールせずに前記シリンダと前記ピストンとの間がシールされない移動装置と、を備える。
【0007】
本発明の第2態様のエアポンプは、本発明の第1態様のエアポンプにおいて、前記他側部に設けられ、前記移動装置が前記ピストンを一側に移動させる際に前記シール部材がシールする連通孔を備える。
【0008】
本発明の第3態様のエアポンプは、本発明の第1態様又は第2態様のエアポンプにおいて、前記一側部の外周が前記シリンダに接触可能にされる。
【0009】
本発明の第4態様のエアポンプは、本発明の第1態様~第3態様の何れか1つのエアポンプにおいて、前記他側部の外周が前記シリンダに接触可能にされる。
【0010】
本発明の第5態様のエアポンプは、本発明の第1態様~第4態様の何れか1つのエアポンプにおいて、前記ピストンに設けられると共に、前記シール部材側に突出され、前記移動装置が前記ピストンを他側に移動させる際に前記ピストンの一側と他側とを連通する連通路を前記シール部材との間に形成する突出部を備える。
【0011】
本発明の第6態様のエアポンプは、本発明の第1態様~第5態様の何れか1つのエアポンプにおいて、前記シール部材の断面が円状にされる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1態様のエアポンプは、シリンダの一側に排出孔が設けられており、シリンダ内をピストンが移動可能にされる。また、ピストンに一側の一側部と他側の他側部とが設けられており、ピストンの一側部と他側部との間にシール部材が配置される。さらに、移動装置がピストンを一側に移動させる際に、シール部材がシリンダとピストンの他側部との間をシールして、シリンダとピストンとの間がシールされることで、シリンダの排出孔からエアが排出される。
【0013】
ここで、ピストンの一側部に通過孔が設けられており、移動装置がピストンを他側に移動させる際に、シール部材が通過孔をシールせずに、シリンダとピストンとの間がシールされない。このため、移動装置がピストンを他側に移動させる際に、ピストンの通過孔によってシリンダとピストンとの間がシールされないため、シール部材の形状を簡単にできて、シール部材の耐久性を向上できる。
【0014】
本発明の第2態様のエアポンプでは、ピストンの他側部に連通孔が設けられており、移動装置がピストンを一側に移動させる際に、シール部材が連通孔をシールする。このため、移動装置がピストンを他側に移動させる際には、ピストンの一側に連通孔を介してエアを効果的に吸入できる。
【0015】
本発明の第3態様のエアポンプでは、ピストンの一側部の外周がシリンダに接触可能にされる。このため、ピストンがシリンダ内を適切に移動できる。
【0016】
本発明の第4態様のエアポンプでは、ピストンの他側部の外周がシリンダに接触可能にされる。このため、ピストンがシリンダ内を適切に移動できる。
【0017】
本発明の第5態様のエアポンプでは、移動装置がピストンを他側に移動させる際にピストンの一側と他側とを連通する連通路の周面をピストンの突出部がシール部材との間に形成しており、突出部がシール部材側に突出される。このため、連通路におけるシール部材とピストンとの距離が急激に変動することを突出部によって抑制でき、ピストンの一側に連通路を介してエアを効果的に吸入できる。
【0018】
本発明の第6態様のエアポンプでは、シール部材の断面が円状にされる。このため、シール部材の形状を効果的に簡単にできて、シール部材の耐久性を効果的に向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係るエアポンプを示す前斜め左方から見た分解斜視図である。
【
図2】(A)及び(B)は、本発明の実施形態に係るエアポンプの内部を示す図であり、(A)は、上方から見た上面図であり、(B)は、後斜め左方から見た斜視図である。
【
図3】(A)~(D)は、本発明の実施形態に係るエアポンプのピストン及びOリングを示す図であり、(A)は、後斜め左方から見た斜視図であり、(B)は、前側から見た斜視図であり、(C)は、前方から見た前面図であり、(D)は、後方から見た後面図である。(E)は、本発明の実施形態に係るエアポンプのロッドを示す左側から見た斜視図である。
【
図4】(A)~(F)は、本発明の実施形態に係るエアポンプの内部を示す上方から見た上面図であり、(A)は、ピストンが上死点に配置される際を示し、(B)は、ピストンが後側に移動される第1段階を示し、(C)は、ピストンが後側に移動される第2段階を示し、(D)は、ピストンが下死点に配置される際を示し、(E)は、ピストンが前側に移動される第1段階を示し、(F)は、ピストンが前側に移動される第2段階を示している。
【
図5】(A)~(C)は、本発明の実施形態に係るエアポンプのシリンダ、ピストン及びOリングを示す左方から見た断面図であり、(A)は、ピストンが後側に移動される際を示し、(B)は、ピストンが後側に移動される際を詳細に示し、(C)は、ピストンが前側に移動される際を詳細に示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には、本発明の実施形態に係るエアポンプ10が前斜め左方から見た分解斜視図にて示されている。さらに、
図2(A)には、エアポンプ10の内部が上方から見た上面図にて示されており、
図2(B)には、エアポンプ10の内部が後斜め左方から見た斜視図にて示されている。なお、図面では、エアポンプ10の前方を矢印FRで示し、エアポンプ10の右方を矢印RHで示し、エアポンプ10の上方を矢印UPで示している。
【0021】
本実施形態に係るエアポンプ10は、例えば、車両(自動車)に設置されており、エアポンプ10は、下記排出孔24Bから排出(圧出)したエアを、チューブを介してチューブ先端のノズルから車両のカメラのレンズ又はミラーに噴射して、レンズ又はミラーを洗浄する。
【0022】
図1、
図2の(A)及び(B)に示す如く、エアポンプ10には、略直方体形箱状のケース12が設けられており、ケース12は、上側の上ケース12Aと下側の下ケース12Bとが組付けられて構成されている。ケース12は、上面視略L字状にされて、後側部分が左側に突出されており、ケース12の左側部分内は、前側に開放されている。
【0023】
ケース12の右側部分内には、移動装置としてのモータ14が固定されており、モータ14の出力軸14Aは、後方に延出されている。出力軸14Aには、第1ギアとしてのウォーム16が同軸上に固定されており、モータ14が駆動されて、出力軸14Aと一体にウォーム16が回転される。ウォーム16の左側には、第2ギアとしてのウォームホイール18が配置されており、ウォームホイール18は、ケース12内に軸方向が上下方向にされて回転可能に支持されている。ウォームホイール18は、ウォーム16に噛合されて、回転を規制されており、ウォーム16が回転されて、ウォームホイール18が回転される。
【0024】
ウォームホイール18の左側には、第3ギア及び駆動部材としてのヘリカルギア20が配置されており、ヘリカルギア20は、ケース12の左側部分内に軸方向が上下方向にされて回転可能に支持されている。ヘリカルギア20は、ウォームホイール18に噛合されており、ウォームホイール18が回転されて、ヘリカルギア20が回転される。ヘリカルギア20の径方向中間部には、円柱状の支持軸20Aが一体に設けられており、支持軸20Aは、ヘリカルギア20から上方に突出されている。
【0025】
ヘリカルギア20の上側には、接続部材としての長尺板状のロッド22(
図3(E)参照)が配置されており、ロッド22の後端部は、ヘリカルギア20の支持軸20Aに回転可能に支持されている。ロッド22の前端部には、円状の接続孔22Aが貫通形成されており、ロッド22の接続孔22Aより後側には、略三角形状の嵌合孔22Bが貫通形成されている。
【0026】
ケース12の左側部分の前側には、略有底円筒状のシリンダ24が組付けられており、シリンダ24の軸方向は、前後方向にされている。シリンダ24内は、後方に開放されており、シリンダ24内は、ケース12の左側部分内に連通されている。シリンダ24の前壁(底壁)には、略円筒状の排出筒24Aが同軸上に一体形成されており、排出筒24Aは、シリンダ24から前方に延出されている。排出筒24A内は、排出孔24Bにされて、シリンダ24内に連通されており、排出筒24Aには、上記チューブが接続されている。
【0027】
シリンダ24内には、略円柱状のピストン26が同軸上に略嵌合されており、ピストン26は、シリンダ24内を前側(一側)及び後側(他側)に移動可能にされると共に、シリンダ24内の前側に加圧室28を形成する。
【0028】
ピストン26の後側には、断面L字状の接続片30(
図3(A)参照)が一体に設けられており、接続片30の下側部分は、ピストン26から後側に突出されている。接続片30の後側部分は、円柱状の接続軸30Aにされており、接続軸30Aは、上方に突出されている。接続軸30Aの上端部には、略三角形板状の係止部30Bが一体形成されており、係止部30Bは、接続軸30Aから左側に突出されている。
【0029】
接続軸30A及び係止部30Bは、それぞれロッド22の接続孔22A及び嵌合孔22Bと嵌合可能にされており、接続孔22A及び嵌合孔22Bが、それぞれ接続軸30A及び係止部30Bに上側から嵌合されて、係止部30Bの下側に移動されることで、接続軸30Aに接続孔22Aが回転可能に嵌合されて、接続軸30Aにロッド22が回転可能に支持されている。このため、ロッド22がヘリカルギア20(支持軸20A)とピストン26(接続軸30A)とを接続しており、ヘリカルギア20が回転されることで、ロッド22が支持軸20A及び接続軸30Aに対し回転されつつ前側及び後側に往復移動されて、ピストン26がシリンダ24内を前側及び後側に往復移動される(
図4の(A)~(F)参照)。なお、ピストン26が最も前側に移動される位置がピストン26の上死点(
図4(A)の位置)にされており、ピストン26が最も後側に移動される位置がピストン26の下死点(
図4(D)の位置)にされている。また、ピストン26がロッド22によって前側及び後側に往復移動される際には、常に、嵌合孔22Bが係止部30Bに嵌合される回転位置に配置されないため、ロッド22の上側への移動が係止部30Bによって係止されて、ロッド22(接続孔22A)のピストン26(接続軸30A)からの脱落が規制される。
【0030】
ピストン26の前端部には、一側部としての略円板状の前板32(
図3の(B)及び(C)参照)が同軸上に設けられており、前板32は、外径がシリンダ24の内径に比し僅かに小さくされると共に、シリンダ24の内周面に接触可能にされている。前板32の外周部には、略長尺矩形状の通過孔32Aが所定数貫通形成されており、所定数の通過孔32Aは、前板32の周方向に等間隔に配置されている。通過孔32Aの長手方向は、前板32の径方向にされており、通過孔32Aは、前板32径方向内側端面が凸状に湾曲されると共に、前板32の径方向外側に開放されている。
【0031】
ピストン26の後端部には、他側部としての略円板状の後板34(
図3の(A)及び(D)参照)が同軸上に設けられており、後板34の外径は、前板32の外径と同一にされている。このため、後板34の外径は、シリンダ24の内径に比し僅かに小さくされており、後板34は、シリンダ24の内周面に接触可能にされている。後板34の外周部には、略半円状の連通孔34Aが所定数貫通形成されており、所定数の連通孔34Aは、後板34の周方向に等間隔に配置されている。連通孔34Aの周面は、凸状に湾曲されており、連通孔34Aは、後板34の径方向外側に開放されている。連通孔34Aの後板34径方向最大寸法は、前板32における通過孔32Aの前板32径方向最大寸法に比し小さくされており、連通孔34Aの後板34周方向最大寸法は、通過孔32Aの前板32周方向最大寸法に比し小さくされている。連通孔34Aの数は、通過孔32Aの数に比し多くされており、連通孔34Aの後板34周方向における配置間隔は、通過孔32Aの前板32周方向における配置間隔に比し小さくされている。
【0032】
ピストン26の前板32と後板34との間には、中間部としての略円柱状の中間軸36(
図5(A)参照)が同軸上に設けられており、中間軸36が前板32及び後板34と一体形成されて、前板32と後板34とが一体的に形成されている。中間軸36の径(最小径)は、通過孔32Aの前板32径方向内側端が配置される位置における前板32の径と同一にされている。中間軸36の外周には、円環状の突出部36Aが同軸上に一体形成されており、突出部36Aは、中間軸36の前端部近傍から後端まで配置されて、後板34と一体にされている。突出部36Aの断面(周方向に垂直な断面)は、略三角形状にされており、突出部36Aの外周面は、後方へ向かうに従い径方向外側へ向かう方向に傾斜されて、突出部36Aの外周面後端は、後板34の連通孔34A近傍における径方向位置に配置されている。突出部36Aの外周面は、中間軸36の軸方向(前後方向)において凹状に湾曲されており、突出部36Aの外周面は、前側(径方向内側)において中間軸36の周面に滑らかに接続されると共に、後側(径方向外側)において後板34の前面に滑らかに接続されている。
【0033】
ピストン26の前板32と後板34との間には、シール部材としての円環状のOリング38が配置されており、Oリング38は、ゴム製にされて弾性及びシール性を有すると共に、断面(周方向に垂直な断面)が円状にされている。Oリング38の内径は、前板32及び後板34の外径に比し小さくされており、Oリング38は、一時的に弾性拡径されて径方向内側を前板32又は後板34が通過されることで、前板32と後板34との間に配置されている。Oリング38の外径(シリンダ24内に配置される前の外径)は、シリンダ24の内径に比し大きくされており、Oリング38は、シリンダ24の内周面に圧接されて、径方向内側に弾性収縮されている。このため、Oリング38が前側及び後側に移動される際には、Oリング38がシリンダ24の内周面に対し摺動される。
【0034】
Oリング38の前後方向寸法(周方向に垂直な断面の径)は、前板32と後板34との前後方向における離間距離に比し小さくされている。ピストン26が前側に移動される際には、Oリング38が後板34に当接されて後板34によってシリンダ24の内周面に対し摺動されつつ前側に移動される(
図5(C)参照)。ピストン26が後側に移動される際には、Oリング38が前板32に当接されて前板32によってシリンダ24の内周面に対し摺動されつつ後側に移動される(
図5(B)参照)。
【0035】
Oリング38の断面(周方向に垂直な断面)の半径は、シリンダ24の内周面と連通孔34Aの後板34径方向内側端との距離に比し大きくされており、ピストン26が前側に移動される際には、Oリング38が、後板34の連通孔34Aより径方向内側に当接されて、シリンダ24と後板34との間(シリンダ24と後板34との隙間及び連通孔34A)をシールする。Oリング38の断面(周方向に垂直な断面)の半径は、シリンダ24の内周面と通過孔32Aの前板32径方向内側端との距離に比し小さくされており、ピストン26が後側に移動される際には、Oリング38が、通過孔32Aの前板32径方向内側端より前板32の径方向外側に当接されて、シリンダ24と前板32との間(通過孔32A)をシールしない。
【0036】
Oリング38の内径は、ピストン26の中間軸36における突出部36Aの最小径(前端の径)に比し大きくされると共に、突出部36Aの最大径(後端の外径)に比し小さくされており、ピストン26が後側に移動される際には、Oリング38と中間軸36の周面(突出部36Aの外周面を含む)及び後板34の前面との間に連通路40が形成される。
【0037】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0038】
以上の構成のエアポンプ10では、モータ14が駆動されて、出力軸14A、ウォーム16、ウォームホイール18及びヘリカルギア20が回転されることで、ロッド22が前側及び後側に往復移動されて、ピストン26がシリンダ24内を前側及び後側に往復移動される(
図4の(A)~(F)参照)。
【0039】
ピストン26が上死点から下死点へ後側に移動される際には、Oリング38がピストン26の前板32に当接されて前板32によってシリンダ24の内周面に対し摺動されつつ後側に移動される(
図4の(A)~(D)及び
図5(B)参照)。また、Oリング38が、ピストン26における通過孔32Aの前板32径方向内側端より前板32の径方向外側に当接されて、シリンダ24と前板32との間(通過孔32A及び前板32とシリンダ24との隙間)をシールしない。このため、ピストン26における後板34の連通孔34A及び後板34とシリンダ24との隙間から連通路40、通過孔32A及び前板32とシリンダ24との隙間を介してシリンダ24の加圧室28(ピストン26より前側)にエアが吸入される。これにより、シリンダ24の排出筒24A内(排出孔24B)から加圧室28にエアが吸入されることが抑制されて、排出孔24Bに逆止弁を設ける必要がなくされることで、部品点数が低減されている。
【0040】
そして、ピストン26が下死点から上死点へ前側に移動される際には、Oリング38がピストン26の後板34に当接されて後板34によってシリンダ24の内周面に対し摺動されつつ前側に移動される(
図4の(D)~(F)及び(A)と
図5(C)参照)。また、Oリング38が、シリンダ24の内周面に対する摺動抵抗と前側及び径方向内側からのエアの圧力とによって、後板34の連通孔34Aより径方向内側及びシリンダ24の内周面に当接(密着)されて、シリンダ24と後板34との間(連通孔34A及びシリンダ24と後板34との隙間)をシールする。このため、加圧室28のエアが、ピストン26における前板32の通過孔32A及び前板32とシリンダ24との隙間を通過しても、シリンダ24と後板34との間からピストン26の後側に流出されないため、加圧室28のエアの圧力が上昇されて、加圧室28のエアがシリンダ24の排出孔24Bから排出(圧出)される。また、上述の如く排出孔24Bに逆止弁が設けられないため、排出孔24Bから排出されるエアに逆止弁による抵抗が作用されない。
【0041】
ここで、ピストン26の前板32に通過孔32Aが設けられており、ピストン26が後側に移動される際には、Oリング38が通過孔32Aをシールせずに、シリンダ24とピストン26との間がシールされない。このため、ピストン26が後側に移動される際に、ピストン26の通過孔32Aによってシリンダ24とピストン26との間がシールされないため、シリンダ24とピストン26との間をシールしないための孔をOリング38に設ける必要をなくすことができ、Oリング38の形状を簡単にできて、Oリング38の耐久性を向上できる。
【0042】
しかも、Oリング38の断面(周方向に垂直な断面)が円状にされて、Oリング38の周面全体が湾曲面にされている。このため、Oリング38の形状を効果的に簡単にできて、Oリング38の耐久性を効果的に向上できる。
【0043】
さらに、ピストン26では、前板32の通過孔32Aの断面(前板32軸直角方向の断面)が後板34の連通孔34Aの断面(後板34軸直角方向の断面)に比し大きくされている。このため、ピストン26が後側に移動される際には、Oリング38が通過孔32Aを適切に開放でき、シリンダ24の加圧室28に通過孔32Aを介してエアを効果的に吸入できる。
【0044】
また、ピストン26の後板34に連通孔34Aが設けられており、ピストン26が前側に移動される際に、Oリング38が連通孔34Aをシールして、シリンダ24と後板34との間をシールする。このため、ピストン26が後側に移動される際には、シリンダ24の加圧室28にシリンダ24と後板34との隙間のみならず連通孔34Aを介してエアを効果的に吸入できる。
【0045】
さらに、ピストン26では、連通孔34Aの数が通過孔32Aの数に比し多くされている。このため、ピストン26が後側に移動される際には、シリンダ24の加圧室28に連通孔34Aを介してエアを一層効果的に吸入できる。
【0046】
また、ピストン26の中間軸36とOリング38との間の連通路40の周面を中間軸36の突出部36Aが形成しており、突出部36AがOリング38側に突出されている。このため、ピストン26が後側に移動される際に、連通路40におけるOリング38と中間軸36との距離が急激に変動することを突出部36Aによって抑制でき、シリンダ24の加圧室28に連通路40を介してエアを効果的に吸入できる。
【0047】
しかも、Oリング38が突出部36A側に凸状に湾曲されると共に、突出部36Aの外周面がOリング38とは反対側へ凹状に湾曲されている。このため、ピストン26が後側に移動される際に、連通路40におけるOリング38と中間軸36との距離が急激に変動することを突出部36Aによって効果的に抑制でき、シリンダ24の加圧室28に連通路40を介してエアを一層効果的に吸入できる。
【0048】
また、ピストン26の前板32の外周がシリンダ24の内周面に接触可能にされている。このため、ピストン26の軸方向がシリンダ24の軸方向に対し傾倒することを抑制でき、ピストン26がシリンダ24内を適切に移動できる。
【0049】
さらに、ピストン26の後板34の外周がシリンダ24の内周面に接触可能にされている。このため、ピストン26の軸方向がシリンダ24の軸方向に対し傾倒することを一層抑制でき、ピストン26がシリンダ24内を一層適切に移動できる。
【0050】
また、ピストン26が上死点から後側に移動されてから前板32がOリング38に当接されるまでの間及びピストン26が下死点から前側に移動されてから後板34がOリング38に当接されるまでの間には、ピストン26(前板32及び後板34)がOリング38をシリンダ24の内周面に対し摺動させない。このため、ピストン26を上死点及び下死点から移動させる際におけるピストン26の移動抵抗を低くできる。
【0051】
なお、本実施形態では、ピストン26における前板32の通過孔32Aが前板32の径方向外側に開放される。しかしながら、前板32の通過孔32Aが前板32の径方向外側に開放されなくてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、ピストン26における後板34の連通孔34Aが後板34の径方向外側に開放される。しかしながら、後板34の連通孔34Aが後板34の径方向外側に開放されなくてもよい。
【0053】
さらに、本実施形態では、後板34に連通孔34Aが設けられる。しかしながら、後板34に連通孔34Aが設けられなくてもよい。この場合、後板34の外径は、Oリング38の内径より大きくされれば、本実施形態に比し小さくされてもよい。
【0054】
また、本実施形態では、Oリング38の断面(周方向に垂直な断面)が円状にされる。しかしながら、Oリング38の断面(周方向に垂直な断面)が楕円状にされてもよく、また、Oリング38の断面(周方向に垂直な断面)の一部又は全部が多角形状にされてもよい。
【0055】
さらに、本実施形態では、シリンダ24の内周形状が円状にされる。しかしながら、シリンダ24の内周形状が楕円状又は矩形状にされてもよい。
【0056】
また、本実施形態では、ピストン26の外周形状が円状にされる。しかしながら、ピストン26の外周形状が楕円状又は矩形状にされてもよい。
【0057】
さらに、本実施形態では、ピストン26の前板32と後板34とが一体にされる。しかしながら、ピストン26の前板32と後板34とが別体にされてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10・・・エアポンプ、14・・・モータ(移動装置)、24・・・シリンダ、24B・・・排出孔、26・・・ピストン、32・・・前板(一側部)、32A・・・通過孔、24・・・後板(他側部)、34A・・・連通孔、36A・・・突出部、38・・・Oリング(シール部材)、40・・・連通路