(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097176
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】コイル形成装置及びコイルの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 41/096 20160101AFI20230630BHJP
H01F 41/069 20160101ALI20230630BHJP
H02K 15/04 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
H01F41/096
H01F41/069
H02K15/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213379
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】山端 達也
【テーマコード(参考)】
5E002
5H615
【Fターム(参考)】
5E002AA10
5E002AA24
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB05
5H615PP13
5H615QQ20
5H615SS10
5H615SS11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】線材が整列していて、膨らみ及び巻き乱れが抑制されたコイルを形成可能な構成を実現するコイル形成装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】線材供給部10から供給される線材200を巻き回すことによって、コイル300を得るコイル形成装置100であって、線材供給部10から供給された線材に接触して線材の供給方向を変える線材ガイド部1と、線材ガイド部を通過した線材が供給される線材繰出部2と、線材繰出部から供給された線材が巻き回される巻芯6と、を有する。線材ガイド部は、線材供給部から線材ガイド部への線材の供給方向である第1供給方向に線材を見て、線材繰出部に線材が供給される位置とは異なる位置で線材に接触する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材供給部から供給される線材を巻き回すことによって、コイルを得るコイル形成装置であって、
前記線材供給部から供給された前記線材に接触して前記線材の供給方向を変える線材ガイド部と、
前記線材ガイド部を通過した前記線材が供給される線材繰出部と、
前記線材繰出部から供給された前記線材が巻き回される巻芯と、を有し、
前記線材ガイド部は、前記線材供給部から前記線材ガイド部への線材の供給方向である第1供給方向に前記線材を見て、前記線材繰出部に前記線材が供給される位置とは異なる位置で前記線材に接触する、コイル形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載のコイル形成装置において、
前記線材が前記巻芯の軸方向に並んだ状態で巻き付けられ、
前記軸方向において、線材繰出部に前記線材が供給される位置は、前記線材ガイド部と前記線材とが接触する位置と異なる、コイル形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコイル形成装置において、
前記線材は、前記線材ガイド部において、前記第1供給方向の一側から他側に向かって供給され、
前記線材ガイド部は、前記線材ガイド部の前記第1供給方向の前記他側の端部に、前記線材と接触して弾性変形する弾性変形部を有する、コイル形成装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のコイル形成装置において、
前記線材は、前記線材ガイド部において、前記第1供給方向の一側から他側に向かって供給され、
前記線材ガイド部は、前記線材ガイド部の前記第1供給方向の前記他側の端部且つ前記線材と接触する部分に、曲面を有する、コイル形成装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1項に記載のコイル形成装置において、
前記線材繰出部は、前記線材ガイド部から前記線材繰出部への線材の供給方向である第2供給方向と異なる方向に前記線材を供給する、コイル形成装置。
【請求項6】
請求項5に記載のコイル形成装置において、
前記線材繰出部は、前記線材ガイド部から供給される前記線材が貫通する貫通孔を有し、
前記貫通孔は、線材の供給方向上流側に向かうに従って内径が大きくなる入口側開口部を有する、コイル形成装置。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載のコイル形成装置において、
前記線材が前記巻芯の前記軸方向に並んだ状態で巻き付けられ、
前記軸方向において、前記線材ガイド部と前記線材とが接触する位置と、線材繰出部に前記線材が供給される位置との距離は、前記線材を前記巻芯に巻き回すことによって得られた前記コイルの前記軸方向の幅よりも大きい、コイル形成装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載のコイル形成装置において、
前記線材供給部は、複数本の前記線材を前記線材ガイド部に供給し、
前記線材ガイド部は、前記線材供給部から供給された複数本の前記線材を前記線材繰出部に供給し、
前記線材繰出部は、前記線材ガイド部から供給された前記複数本の線材を前記巻芯に供給し、
前記巻芯は、前記線材繰出部から供給された前記複数本の線材が巻き回される、コイル形成装置。
【請求項9】
請求項1から8の何れか1項に記載のコイル形成装置において、
前記線材供給部から前記線材ガイド部までの間の前記線材の張力は、前記線材ガイド部から前記線材繰出部までの間の前記線材の張力よりも小さい、コイル形成装置。
【請求項10】
線材を巻芯に巻き回すことにより構成されるコイルの製造方法であって、
線材供給部から線材繰出部に前記線材を供給する線材供給工程と、
前記線材繰出部から供給された前記線材を前記巻芯に巻き回す線材巻き回し工程と、を有し、
前記線材供給工程では、前記線材供給部から線材ガイド部への線材の供給方向である第1供給方向に前記線材を見て、前記線材繰出部に前記線材が供給される位置とは異なる位置で、前記線材ガイド部を前記線材に接触させて前記線材の供給方向を変える、コイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル形成装置及びコイルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線材を巻き回してコイルを得る巻線装置が知られている。このような巻線装置は、例えば、特許文献1に開示されている。具体的に、特許文献1には、回転手段により回転する巻芯に線材を巻取る巻線装置において、前記巻芯が、前記回転手段により回転する内巻芯と、前記内巻芯を包囲して前記内巻芯とともに回転する外巻芯とを有する巻線装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
線材が線材供給用のボビンに巻かれている間に、前記線材に、方向及び強さが不均一なクセが付与される場合がある。特許文献1に記載の巻線装置のように、巻芯に対して回転軸に直交する方向から線材を供給し、前記線材を前記巻芯に巻き回してコイルを得る場合、前記コイルは、前記線材の不均一なクセの影響を受けて、前記線材が整列せずに、膨らんで巻き乱れが生じる可能性がある。
【0005】
上述のように線材が整列せずに、膨らんで巻き乱れが生じたコイルは、ステータのスロット内にスムーズに挿入できない場合がある。このため、線材が整列していて、膨らみ及び巻き乱れが抑制されたコイルを形成可能なコイル形成装置が求められている。
【0006】
本発明の目的は、線材を巻芯に巻き回してコイルを形成可能なコイル形成装置において、線材が整列していて、膨らみ及び巻き乱れが抑制されたコイルを形成可能な構成を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の例示的な一実施形態に係るコイル形成装置は、線材供給部から供給される線材を巻き回すことによって、コイルを得る。前記コイル形成装置は、前記線材供給部から供給された前記線材に接触して前記線材の供給方向を変える線材ガイド部と、前記線材ガイド部を通過した前記線材が供給される線材繰出部と、前記線材繰出部から供給された前記線材が巻き回される巻芯と、を有する。前記線材ガイド部は、前記線材供給部から前記線材ガイド部への線材の供給方向である第1供給方向に前記線材を見て、前記線材繰出部に前記線材が供給される位置とは異なる位置で前記線材に接触する。
【0008】
また、本発明の例示的な一実施形態に係るコイルの製造方法は、線材を巻芯に巻き回すことにより構成されるコイルの製造方法である。前記コイルの製造方法は、線材供給部から線材繰出部に前記線材を供給する線材供給工程と、前記線材繰出部から供給された前記線材を前記巻芯に巻き回す線材巻き回し工程と、を有する。前記線材供給工程では、前記線材を、前記線材供給部から線材ガイド部への線材の供給方向である第1供給方向に見て、前記線材繰出部に前記線材が供給される位置とは異なる位置で、前記線材ガイド部を前記線材に接触させて前記線材の供給方向を変える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の例示的な一実施形態に係るコイル形成装置及びコイルの製造方法によれば、線材が整列していて、膨らみ及び巻き乱れが抑制されたコイルを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係るコイル形成装置の全体構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る線材ガイド部の線材との接触面を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る線材繰出部の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る線材繰出部の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るコイル形成装置の全体構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1変形例に係るコイル形成装置の全体構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の例示的な実施の形態を詳しく説明する。なお、図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。また、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表しているわけではない。
【0012】
なお、以下では、コイル形成装置100の説明において、巻芯6の中心軸Rと平行な方向を「軸方向」と称する。軸方向は、後述する巻芯6において、巻芯6に巻き回された線材200が並ぶ方向でもある。以下の説明では、コイル形成装置100を設置した状態で、軸方向が鉛直方向と平行である例を説明する。ただし、この定義により、コイル形成装置100の使用時の向き及び巻芯6の中心軸Rの方向を鉛直方向に限定する意図はない。巻芯6の中心軸Rの方向は鉛直方向と平行でなくてもよい。
【0013】
また、以下の説明において、“固定”、“接続”及び“取り付ける”等(以下、固定等)の表現は、部材同士が直接、固定等されている場合だけでなく、他の部材を介して固定等されている場合も含む。すなわち、以下の説明において、固定等の表現には、部材同士の直接的及び間接的な固定等の意味が含まれる。
【0014】
(実施形態)
図1~
図5を用いて、実施形態に係るコイル形成装置100の一例を説明する。なお、各図では、線材200の供給方向を、白抜矢印で示している。コイル形成装置100は、線材200を供給し、供給された線材200を巻き回してコイル300を得る装置である。例えば、コイル形成装置100は、モータのステータのスロット挿入用のコイルを得る。なお、コイル形成装置100によって得られるコイルは、ステータのスロット挿入用のコイルに限られない。また、線材200は、例えば、絶縁被膜を有する銅線である。しかし、線材200は、銅線に限られず、コイル形成装置100は導電性を有する材料によって構成された線材を巻き回すことが可能である。
【0015】
(全体構成)
図1は、実施形態に係るコイル形成装置100の全体構成の一例を示す図である。
図1に示すように、コイル形成装置100は、線材供給部10、線材ガイド部1、線材繰出部2、線材巻き回し部3、及び、巻回制御部7を有する。コイル形成装置100において、線材供給部10、線材ガイド部1、線材繰出部2、及び、線材巻き回し部3は、線材200の供給方向の上流から下流に向かって、線材供給部10、線材ガイド部1、線材繰出部2、及び、線材巻き回し部3の順に並んでいる。さらに、コイル形成装置100は、線材ガイド部1を支持するガイド支持部4、及び、線材繰出部2を支持する繰出部支持部5を含む。
【0016】
(線材供給部)
線材供給部10は、複数のボビン10a、線材集合部10b、及び、集合部支持部10cを有する。ボビン10aには、1本の線材200が巻き回されている。それぞれのボビン10aから線材200が繰り出される。その結果、複数本の線材200が同時に、線材ガイド部1、線材繰出部2、及び、線材巻き回し部3に供給される。
【0017】
線材集合部10bは、線材200の供給方向において、ボビン10aと線材ガイド部1との間に位置する。例えば、線材集合部10bは、管状の部材であり、図示しない集合用貫通孔を有する。ボビン10aから繰り出された複数の線材200は、線材集合部10bの前記集合用貫通孔を貫通する。
【0018】
集合部支持部10cは、ボビン10aと線材ガイド部1との間に位置し、線材集合部10bを支持する。
【0019】
(線材ガイド部)
図2は、線材200と接触する線材ガイド部1の一例を示す斜視図である。線材ガイド部1は、線材200の供給方向において、線材集合部10bと線材繰出部2との間に位置する。
図2に示すように、線材ガイド部1は、ガイド本体部11及び弾性変形部12を有する。以下の説明では、線材供給部10から線材ガイド部1への線材200の供給方向を第1供給方向D1と称する。具体的に、線材200は、線材ガイド部1において、第1供給方向D1の一側から他側に向かって、供給される。
【0020】
ガイド本体部11は、板状である。なお、ガイド本体部11は、柱状、筒状でもよく、板状に限られない。本実施形態では、ガイド本体部11は、金属板である。ガイド本体部11は、金属以外の材料によって構成されていてもよい。
【0021】
弾性変形部12は、例えば、シート状又は板状である。弾性変形部12は、ガイド本体部11の一面に取り付けられている。弾性変形部12は、供給される複数の線材200と接触する位置に位置する。弾性変形部12は、第1供給方向D1において、線材ガイド部1の少なくとも他側端部に位置する。
図2に示すように、第1供給方向D1と平行な複数の線材200は、並んだ状態で、線材ガイド部1の弾性変形部12と接触する。
【0022】
弾性変形部12は、線材200と接触して弾性変形する。弾性変形部12は、線材ガイド部1が線材200と接触することによって凹む。弾性変形部12は、例えば、フェルトである。線材200が線材ガイド部1と接触することにより、線材200の供給方向は、線材200が線材集合部10bから線材ガイド部1に供給される方向とは異なる方向に変化する。
【0023】
図1に示すように、ガイド支持部4は、線材200の供給方向において、線材集合部10bと線材繰出部2との間に位置する。ガイド支持部4は、線材ガイド部1を支持している。
【0024】
(線材繰出部)
図3、
図4は、実施形態に係る線材繰出部2の一例を示す図である。線材繰出部2は、線材ガイド部1を通過した線材200を線材巻き回し部3に供給する。以下の説明では、線材ガイド部1と線材繰出部2との間における線材200の供給方向を第2供給方向D2と称する。
【0025】
図1に示すように、線材繰出部2は、線材200の供給方向において、線材ガイド部1と線材巻き回し部3との間に位置する。後述する巻芯6の軸方向において、線材繰出部2に線材200が供給される位置P2は、線材ガイド部1と線材200とが接触する位置P1と異なる。具体的に、
図1の例では、線材200を第1供給方向D1に見て、線材ガイド部1と線材繰出部2の位置が軸方向に異なっている。
【0026】
図3に示すように、線材繰出部2は、繰出本体部21を有する。例えば、繰出本体部21は、柱状である。繰出本体部21は、複数の整列用貫通孔22を有する。複数の整列用貫通孔22は、繰出本体部21の整列用貫通孔22が開口する端面において、前記端面の短手方向の中央に位置し、長手方向に並んでいる。整列用貫通孔22は、軸方向に並んでいる。1つの整列用貫通孔22には、1本の線材200が貫通している。これにより、線材繰出部2に対して、複数の線材200が軸方向に並ぶ。なお、整列用貫通孔22が並ぶ方向は軸方向でなくてもよい。
【0027】
複数の整列用貫通孔22が繰出本体部21を貫通する方向は、同じ、又は、線材繰出部2の製造時の加工による誤差を除いて同じである。線材ガイド部1から線材繰出部2に供給される線材200は、線材繰出部2の整列用貫通孔22を貫通する。
【0028】
図4は、
図3のX-X矢視断面図であり、整列用貫通孔22の断面を含む。
図4に示すように、整列用貫通孔22は、中央部23、入口側開口部24、及び、出口側開口部25を有する。中央部23は、整列用貫通孔22の貫通方向に延びており、内径が一定である。入口側開口部24の一端は、繰出本体部21の一側に開口し、入口側開口部24の他端は、中央部23に接続されている。入口側開口部24の内径は、繰出本体部21の一側に位置する開口に向かうに従って大きい。一方、出口側開口部25の一端は、中央部23と接続され、出口側開口部25の他端は、繰出本体部21の他側に開口している。出口側開口部25の内径は、繰出本体部21の他側に位置する開口に向かうに従って大きい。
【0029】
図1に示すように、繰出部支持部5は、線材200の供給方向において、線材ガイド部1と線材巻き回し部3との間に位置する。繰出部支持部5は、線材繰出部2を支持している。
【0030】
具体的には、繰出部支持部5は、線材繰出部2の整列用貫通孔22の貫通方向が軸方向と直交し、且つ、整列用貫通孔22の貫通方向他側の開口が後述する巻芯6を向く位置に、線材繰出部2を支持している。その結果、線材繰出部2は、巻芯6に対して、第2供給方向D2と異なる方向に線材200を供給する。既述のとおり、整列用貫通孔22の入口側開口部24の内径は、繰出本体部21の一側、すなわち線材200の供給方向上流側に向かうに従って大きい。
【0031】
図1に示すように、繰出部支持部5は、繰出部移動部51を含む。例えば、繰出部移動部51は、移動用モータ52、ボールねじ53、及び、スライドテーブル54を有する。ボールねじ53は、軸方向に延びている。移動用モータ52は、ボールねじ53を回転させる。線材繰出部2は、スライドテーブル54の平面の一面に固定されている。スライドテーブル54は、線材繰出部2が固定される面と反対側の面に図示しないナットを有する。ボールねじ53は、前記ナットの孔に挿入される。
【0032】
移動用モータ52は、正方向、逆方向の両方に回転可能である。移動用モータ52が回転することにより、スライドテーブル54が軸方向に移動する。これにより、スライドテーブル54に固定された線材繰出部2の移動が可能である。
【0033】
(線材巻き回し部)
線材巻き回し部3は、コイル形成装置100において、線材200の供給方向の最も下流側に位置する。線材巻き回し部3は、巻芯6及び巻き回しモータ31を有する。
【0034】
巻芯6は、ベース部61、一対の芯棒62、及び、回転軸部63を有する。ベース部61は、板状又は棒状の部材である。ベース部61は、軸方向と直交する方向に延びている。それぞれの芯棒62の端部が、ベース部61に取り付けられている。なお、芯棒62は、3本以上でもよい。芯棒62は、軸方向に延びている。芯棒62は、軸方向に同一形状で延びてもよい。また、芯棒62は、軸方向一側に向かうに従って径が小さくなる又は大きくなる形状のテーパ部を1又は複数有してもよい。また、芯棒62は、軸方向他側に向かうに従って径が小さくなる又は大きくなる形状のテーパ部を1又は複数有してもよい。線材200の端部は、一方の芯棒62に固定されている。
【0035】
回転軸部63は、軸方向に延びている。回転軸部63の軸方向の一端は、巻芯6のベース部61と接続されている。回転軸部63の軸方向の他端は、巻き回しモータ31と接続されている。巻き回しモータ31が回転することによって、中心軸Rを中心として巻芯6の回転軸部63が回転する。これにより、巻芯6が回転し、線材200が芯棒62に巻き取られる。
【0036】
(巻回制御部)
巻回制御部7は、移動用モータ52及び巻き回しモータ31の動作を制御する。具体的に、コイル300を巻き回す際に、巻回制御部7は、移動用モータ52を回転させ、スライドテーブル54を往復移動させる。また、巻回制御部7は、巻き回しモータ31を回転させ、移動用モータ52を回転させ、巻芯6を回転させる。巻回制御部7は、例えば、制御回路及びメモリーを有する基板である。
【0037】
(コイルの製造)
次に、
図1、
図5を用いて、実施形態に係るコイル形成装置100を用いたコイル300の製造工程の一例を説明する。コイル300の製造工程においては、コイル形成装置100を用いて、線材巻き回し工程及び線材供給工程が実行される。
【0038】
まず、線材巻き回し工程及び線材供給工程の前処理として、複数のボビン10aからそれぞれ線材200が引き出される。引き出された複数の線材200を、線材集合部10bの集合用貫通孔に貫通させる。続いて、集合させた線材200を線材ガイド部1に接触させつつ、線材繰出部2の整列用貫通孔22のそれぞれに、線材200を貫通させる。線材繰出部2を貫通した複数の線材200の端部が巻芯6に取り付けられる。なお、複数のボビン10aから引き出された線材200は、それぞれ、ボビン10aに巻かれている間に付与されたクセを有する。
【0039】
線材巻き回し工程では、巻回制御部7は、巻き回しモータ31を回転させる。これにより、巻芯6及び回転軸部63が回転し、線材200が巻芯6に巻き回される。巻回制御部7は、巻芯6を所定回数、回転させる。必要な巻数のコイル300が構成されると、巻回制御部7は、巻き回しモータ31を停止させる。図示しない切断装置が、線材繰出部2と巻芯6との間の位置で、複数の線材200を切断する。巻芯6からコイル300が取り外される。続けてコイル300を製造する場合、切断された複数の線材200の端部が巻芯6に取り付けられる。
【0040】
巻芯6が線材200を巻き取ることにより、線材200は、巻芯6に向かって搬送される。線材200を巻芯6に巻き回している間、複数の線材200が、継続的に、線材供給部10から線材ガイド部1、線材繰出部2及び巻芯6へと供給される。
【0041】
具体的には、線材供給部10の複数のボビン10aから繰り出された複数本の線材200が線材集合部10bを貫通する。線材集合部10bを貫通する複数本の線材200は、線材集合部10bから線材ガイド部1に向けて、第1供給方向D1に供給される。線材ガイド部1は、線材供給部10から供給された複数本の線材200を線材繰出部2に供給する。線材ガイド部1と線材200とが接触することによって、線材200の供給方向は、第1供給方向D1から第2供給方向D2に変化する。
【0042】
線材200は、線材繰出部2の整列用貫通孔22を貫通して巻芯6に供給される。線材繰出部2において、線材200の供給方向は、第2供給方向D2から巻芯に向かう方向に変化する。線材200は、巻芯6に対して、線材繰出部2における整列用貫通孔22の貫通方向と平行な方向に供給される。線材繰出部2は、線材供給部10から供給された複数本の線材200を巻芯63に供給する。このように、コイル形成装置100では、線材巻き回し工程と並行して、線材供給工程が実行される。
【0043】
図1及び
図5は、線材ガイド部1が線材200と接触する位置P1と線材繰出部2に線材200が供給される位置P2とが、軸方向に異なる例を示す。位置P1と位置P2とが軸方向に異なるので、線材200の供給方向は、第1供給方向D1から第2供給方向D2に変わる。
図1、
図5の例では、第1供給方向D1は、例えば、水平方向と平行である。第2供給方向D2は、線材200の供給方向の下流側に向かうに従って、軸方向の一方に向かう方向である。
図1、
図5の例では、軸方向の一方は、鉛直方向の上方である。
【0044】
線材ガイド部1は、線材200にテンションをかける位置に位置する。これにより、線材200は、線材ガイド部1の弾性変形部12に押し付けられる。そして、線材200は、線材ガイド部1に押し付けられつつ供給される。線材200が線材ガイド部1の第1供給方向D1の他側の端部を通過する際に、線材200には、所定方向に反るクセが付与される。所定方向とは、線材200を第1供給方向D1に見て、線材200の供給方向が変わる方向、すなわち第1供給方向D1から第2供給方向D2に変化する方向である。例えば、線材ガイド部1が線材200と接触する位置P1と線材繰出部2に線材200が供給される位置P2とが、軸方向に異なる場合、前記所定方向に反るクセが線材200に付与される。その結果、ボビン10aに巻かれている間に付与された線材200のクセが除去される。ここで、クセが除去されるとは、クセが弱められていればよい。ボビン10aに巻かれている間に付与された線材200のクセの一部が残っていてもよいし、クセが完全に除去されていてもよい。さらに、線材200の反る方向及び付与されたクセの強さが統一されているので、線材200を巻き回した場合、線材200が並行に並んで整列する。膨らみ及び巻き乱れが抑制されたコイル300が得られる。
【0045】
線材供給工程において、巻回制御部7は、繰出部支持部5の移動用モータ52の回転を制御する。具体的に、巻回制御部7は、線材繰出部2を巻芯6の軸方向に移動させる。
図1及び
図5に示すように、線材200を巻芯6に巻き回す際に、巻回制御部7は、線材繰出部2の位置を変化させる。
【0046】
例えば、線材巻き回し工程の開始から終了までの間、巻回制御部7は、線材繰出部2を軸方向に往復移動させる。例えば、線材200が巻芯6に一周巻き回されるごとに、巻回制御部7は、線材繰出部2を軸方向に予め定められた量だけ、移動させる。
【0047】
ここで、巻芯6の軸方向において、線材ガイド部1と線材200とが接触する位置P1と線材繰出部2に線材200が供給される位置P2との距離L1は、巻芯6に巻き回されたコイル300の軸方向の幅W1よりも大きい。つまり、線材ガイド部1と線材200とが接触する位置P1と線材繰出部2に線材200が供給される位置P2との距離L1は、線材繰出部2の軸方向の移動幅よりも大きい。
【0048】
図5は、線材200を第1供給方向D1に見て、移動した線材繰出部2が線材ガイド部1に最も近づいている位置に位置している状態の一例を示す。
図5に示すように、軸方向に最接近しても、線材200を第1供給方向D1に見て、線材ガイド部1と線材200とが接触する位置P1と、線材繰出部2に線材200が供給される位置P2との距離L1は、コイル300の軸方向の幅W1よりも大きい。
【0049】
線材ガイド部1が線材200と接触する位置P1と線材繰出部2に線材200が供給される位置P2とが異なることによって、第1供給方向D1と第2供給方向D2とが交差する。そして、第1供給方向D1と第2供給方向D2のなす角が10度以上であってもよく、12度以上であってもよい。第1供給方向D1と第2供給方向D2とのなす角度を一定以上の角度にすることにより、線材200にクセを効率良く付与することができる。
【0050】
また、線材供給工程において、線材供給部10から線材ガイド部1までの間の線材200の張力は、線材ガイド部1から線材繰出部2までの間の線材200の張力よりも小さい。コイル形成装置100では、線材供給部10から線材ガイド部1までの間の線材200の張力が抑制される。つまり、線材供給部10から線材ガイド部1までの区間にて、線材200に強いクセが付与されることが抑制される。そのため、線材供給部10から線材ガイド部1までの区間に付与されたクセによるコイル300の膨らみ及び巻き乱れが抑制される。
【0051】
上述のように、実施形態に係るコイル形成装置100は、線材供給部10から供給される線材200を巻き回すことによって、コイル300を得る。コイル形成装置100は、線材供給部10から供給された線材200に接触して線材200の供給方向を変える線材ガイド部1と、線材ガイド部1を通過した線材200が供給される線材繰出部2と、線材繰出部2から供給された線材200が巻き回される巻芯6と、を有する。線材ガイド部1は、線材供給部10から線材ガイド部1への線材200の供給方向である第1供給方向D1に線材200を見て、線材繰出部2に線材200が供給される位置とは異なる位置で線材200に接触する。
【0052】
また、実施形態に係るコイル300の製造方法は、線材200を巻芯6に巻き回すことにより構成されるコイル300の製造方法である。コイル300の製造方法は、線材供給部10から線材繰出部2に線材200を供給する線材供給工程と、線材繰出部2から供給された線材200を巻芯6に巻き回す線材巻き回し工程と、を有する。線材供給工程では、線材供給部10から線材ガイド部1への線材200の供給方向である第1供給方向D1に線材200を見て、線材繰出部2に線材200が供給される位置とは異なる位置で、線材ガイド部1を線材200に接触させて線材200の供給方向を変える。
【0053】
上述のコイル形成装置100及びコイル300の製造方法によれば、線材ガイド部1は、線材200に接触することにより、線材ガイド部1から線材繰出部2への線材200の供給方向を第1供給方向D1と異なる方向に変える。その際、線材200は、線材ガイド部1に押し付けられる。線材200が線材ガイド部1に押し付けられることによって、所定方向に反るクセが線材200に付与される。これにより、線材供給部10がボビン10aの場合には、ボビン10aに巻かれている間に付与された線材200のクセが除去される。
【0054】
また、所定方向に反るクセが巻芯6に巻き取る前の線材200に付与されるので、線材200を巻芯6に巻き回して得られたコイル300では、線材200が並行に並んで整列する。よって、膨らみ及び巻き乱れが抑制されたコイル300を得ることができる。これにより、ステータにコイル300を挿入する場合には、得られたコイル300は線材200が整列しているので、コイル300のステータのスロットへの挿入が容易である。
【0055】
線材200が巻芯6の軸方向に並んだ状態で巻き付けられる。巻芯6の軸方向において、線材繰出部2に線材200が供給される位置P2は、線材ガイド部1と線材200とが接触する位置P1と異なる。
【0056】
巻芯6の軸方向において、線材ガイド部1の位置と線材繰出部2の位置とが異なるので、線材ガイド部1から線材繰出部2までの間では、線材200の線材200の供給方向は、巻芯6の軸方向に変化する。巻芯6の軸方向に反るクセが線材200に付与される。これにより、巻芯6の軸方向において、線材200の位置が整列していて、膨らみ及び巻き乱れが抑制されたコイル300を得ることができる。
【0057】
線材200は、第1供給方向D1の一側から他側に向かって供給される。線材ガイド部1は、第1供給方向D1において線材ガイド部1の他側の端部に、線材200と接触して弾性変形する弾性変形部12を有する。
【0058】
弾性変形部12は、線材200が接触することにより弾性変形する。線材200は、弾性変形部12に接触しつつ線材繰出部2に供給される。線材ガイド部1の第1供給方向D1の他側の端部によって、所定方向に反るクセが、線材200に付与される。このようなクセが付与された線材200を巻き回すことにより、線材200が整列していて、膨らみ及び巻き乱れが抑制されたコイル300を得ることができる。さらに、弾性変形部12は接触した線材200に応じて凹む。線材をガイドする部材の第1供給方向D1の他側端部に角部が位置する場合には線材200は前記角部に強く擦られるが、弾性変形部12が凹むので、線材200へのダメージが抑制される。従って、線材200のダメージが少ないコイル300を効率良く生産することができる。
【0059】
線材繰出部2は、線材ガイド部1から線材繰出部2への線材200の供給方向である第2供給方向D2と異なる方向に線材200を供給する。線材繰出部2は、線材ガイド部1から線材繰出部2への線材200の供給方向である第2供給方向D2に対して、線材繰出部2から巻芯6への線材200の供給方向を変化させる。線材200が線材繰出部2に接触しつつ巻芯6に供給されることにより、線材繰出部2において、巻芯6に巻き取る前の線材200のクセの調整が可能である。よって、線材200が整列していて、膨らみ及び巻き乱れが抑制されたコイル300を得ることができる。
【0060】
線材繰出部2は、線材ガイド部1から供給される線材200が貫通する整列用貫通孔22を有する。整列用貫通孔22は、線材200の供給方向上流側に向かうに従って内径が大きくなる入口側開口部24を有する。
【0061】
線材200は、線材繰出部2の整列用貫通孔22を貫通して整列用貫通孔22の内面に接触しつつ、巻芯6に供給される。これにより、所定方向に反るクセが線材200に付与される。この線材200を巻芯6に巻き回すことにより、膨らみ及び巻き乱れが抑制されたコイル300を得ることができる。また、線材繰出部2への線材200の進入位置に角部が位置する場合には線材200は前記角部に強く擦られるが、整列用貫通孔22の入口側開口部24の内面に沿って線材200が供給されるので、線材200へのダメージが抑制される。従って、線材200のダメージのないコイル300を効率良く生産することができる。
【0062】
線材200は、巻芯6の軸方向に並んだ状態で巻き付けられる。巻芯6の軸方向において、線材ガイド部1と線材200とが接触する位置P1と、線材繰出部2に線材200が供給される位置P2との距離L1は、線材200を巻芯6に巻き回すことによって得られたコイル300の巻芯6の軸方向の幅W1よりも大きい。
【0063】
線材ガイド部1と線材繰出部2との位置の差が小さい場合、線材200のクセ付けが不十分となる可能性がある。線材ガイド部1と線材繰出部2との距離は、コイル300の巻芯6の軸方向の幅よりも大きいので、コイル300の線材200が整列するクセを線材200に付与することができる。よって、膨らみ及び巻き乱れが抑制されたコイル300を得ることができる。
【0064】
線材供給部10は、複数本の線材200を線材ガイド部1に供給する。線材ガイド部1は、線材供給部10から供給された複数本の線材200を線材繰出部2に供給する。線材繰出部2は、線材ガイド部1から供給された複数本の線材200を巻芯6に供給する。巻芯6は、線材繰出部2から供給された複数本の線材200が巻き回される。複数本の線材200が同時に巻芯6に巻き回される。これにより、効率よく複数のコイル300が得られる。
【0065】
線材供給部10から線材ガイド部1までの間の線材200の張力は、線材ガイド部1から線材繰出部2までの間の線材200の張力よりも小さい。線材供給部10から線材ガイド部1までの間で線材200に生じる張力が抑制されているので、線材供給部10から線材ガイド部1までの区間で、線材200に強いクセが付与されない。線材供給部10から線材ガイド部1までの区間に付与されたクセによるコイル300の膨らみ及び巻き乱れが抑制される。線材200が整列していて、膨らみ及び巻き乱れが抑制されたコイル300を得ることができる。
【0066】
(第1変形例)
図6は、実施形態の第1変形例に係るコイル形成装置100Aの一例を示す図である。第1変形例に係るコイル形成装置100Aは、実施形態のコイル形成装置100と、線材ガイド部1以外の構成は同じである。実施形態と同一の構成には、同一の符号を付して、説明を省略する。
【0067】
第1変形例の線材ガイド部1Aは、円筒又は円柱形状である。線材ガイド部1Aは、例えば、プーリである。線材ガイド部1Aは、線材200の供給方向において、線材集合部10bと線材繰出部2との間に位置する。線材200を第1供給方向D1に見て、線材ガイド部1Aと線材200とが接触する位置P1は、線材繰出部2に線材200が供給される位置P2と異なる。なお、線材ガイド部1Aの周面は、弾性部材によって構成されていてもよいし、弾性部材以外の部材によって構成されていてもよい。
【0068】
第1変形例の線材ガイド部1Aは、線材ガイド部1の第1供給方向D1の他側端部で且つ線材200と接触する部分に、曲面を有する。言い換えると、線材ガイド部1Aの円筒又は円柱の周面が、線材200と接触する。
【0069】
(第2変形例)
図3を用いて、実施形態の第2変形例に係るコイル形成装置100の一例を説明する。第2変形例に係るコイル形成装置100は、実施形態のコイル形成装置100と、線材ガイド部1B以外の構成は同じである。実施形態のコイル形成装置100と同一の構成については、説明を省略する。
【0070】
第2変形例に係るコイル形成装置100の線材ガイド部1Bは、線材繰出部2と同じ部材である。第2変形例の線材ガイド部1Bは、複数の整列用貫通孔22を有する。そして、線材ガイド部1Bの出口側開口部25は、線材200の第1供給方向D1の他側に向かうに従って内径が大きくなっている。線材ガイド部1Bを通過する際に、線材200は出口側開口部25の曲面と接触する。
【0071】
第1変形例及び第2変形例によれば、線材ガイド部1A、1Bは、線材ガイド部1A、1Bの第1供給方向D1の他側端部で且つ線材200と接触する部分に、曲面を有する。線材200は、線材ガイド部1A、1Bの曲面に押さえ付けられつつ供給されるので、所定方向に反るクセが、線材200に付与される。この線材200を巻芯6に巻き回すことにより、線材200が整列していて、膨らみ及び巻き乱れが抑制されたコイル300を得ることができる。また、線材をガイドする部材の第1供給方向D1の他側端部に角部が位置する場合には線材200は前記角部に強く擦られるが、曲面に沿って線材200が供給されるので、線材200へのダメージが抑制される。従って、線材200のダメージの少ないコイル300を効率よく生産することができる。
【0072】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0073】
実施形態では、線材200を第1供給方向D1に見て、線材繰出部2に線材200が供給される位置P2は、線材ガイド部1と線材200とが接触する位置P1と、軸方向に異なる。しかし、線材を第1供給方向に見て、線材繰出部に線材が供給される位置は、線材ガイド部と線材とが接触する位置と、軸方向の下方に異なってもよいし、左右方向に異なってもよいし、左上方向、左下方向、右上方向、又は、右下方向に異なってもよい。すなわち、線材繰出部に線材が供給される位置と、線材ガイド部と線材とが接触する位置とは、軸方向以外の方向に異なってもよい。
【0074】
実施形態では、線材ガイド部1と線材200とが接触することによって、線材200の供給方向が、鉛直方向の上方に変わる。しかし、線材ガイド部と線材とが接触することによって、線材の供給方向が、鉛直方向の下方に変わってもよい。また、線材ガイド部と線材とが接触することによって、線材の供給方向が、線材を第1供給方向に見て、左右方向に変わってもよいし、左上方向、左下方向、右上方向、又は、右下方向に変わってもよい。
【0075】
実施形態では、線材ガイド部1は、線材200と接触して弾性変形する弾性変形部12を有する。しかし、線材ガイド部は、弾性変形部12を有さなくてもよい。
【0076】
また、第1変形例及び第2変形例では、線材ガイド部1は、線材ガイド部1の第1供給方向D1の他側の端部且つ線材200と接触する部分に、曲面を有する。しかし、線材ガイド部は、線材ガイド部の第1供給方向の他側の端部で且つ線材と接触する部分に、曲面を有さなくてもよい。
【0077】
実施形態では、線材繰出部2は、第2供給方向D2と異なる方向に線材200を供給する。しかし、線材繰出部は、第2供給方向に線材を供給してもよい。
【0078】
実施形態では、線材繰出部2の整列用貫通孔22は、線材200の供給方向上流側に向かうに従って内径が大きくなる入口側開口部24を有する。しかし、線材繰出部の整列用貫通孔は、線材の供給方向上流側に向かうに従って内径が大きくならなくてもよい。
【0079】
実施形態では、軸方向において、線材ガイド部1と線材200とが接触する位置P1と、線材繰出部2に線材200が供給される位置P2との距離L1は、コイル300の軸方向の幅W1よりも大きい。しかし、線材ガイド部と線材とが接触する位置と、線材繰出部に線材が供給される位置との距離は、コイルの軸方向の幅より小さくてもよい。
【0080】
実施形態では、線材供給部10が複数の線材200を供給し、巻芯6が複数の線材200を同時に巻き回す。しかし、線材供給部が線材を1本のみ供給し、1本の線材のみが巻芯に巻き回されてもよい。
【0081】
実施形態では、線材供給部10から線材ガイド部1までの間の線材200の張力は、線材ガイド部1から線材繰出部2までの間の線材200の張力よりも小さい。しかし、線材供給部から線材ガイド部までの間の線材の張力は、線材ガイド部から線材繰出部までの間の線材の張力以上でもよい。
【0082】
実施形態では、弾性変形部12は、例えば、フェルトである。しかし、弾性変形部は、フェルト以外の布でもよい。また、弾性変形部は、スポンジでもよいし、ゴムでもよく、弾性変形可能な材料によって構成されていれば、布製に限定されない。
【0083】
線材ガイド部1の位置は、調整可能であってもよい。例えば、ガイド支持部は、ガイド位置調整部を有してもよい。ガイド位置調整部は、スライド部、スライドガイド部、及び、ロック部を有する。線材ガイド部はスライド部に固定される。スライドガイド部は、スライド部をスライド可能に支持する。ロック部は、スライド部の位置を固定するロック機構を有する。ロックする機構は、例えば、ネジ止めでもよいが、ネジ止めでなくてもよく、特に制限はない。これらの構成によって、線材の種類、太さにあわせて、線材ガイド部を固定する位置を調整することができる。なお、スライド部、スライドガイド部、及び、ロック部以外の構成によって線材ガイド部の位置は、調整可能であってもよい。
【0084】
前記実施形態では、繰出部支持部5が、移動用モータ52、ボールねじ53、及び、スライドテーブル54を有する。しかし、線材繰出部を移動させる構成は、例えば、ロボットアームでもよい。線材繰出部を移動可能な構成であれば、移動用モータ、ボールねじ、及び、スライドテーブル以外の構成であってもよい。
【0085】
実施形態では、巻芯6が中心軸Rを中心として回転する。しかし、巻芯が中心軸を中心として回転せず、線材繰出部が巻芯の周りを回転してもよい。また、巻芯が回転し、かつ、線材繰出部が巻芯の周りを回転してもよい。なお、線材繰出部が巻芯の周りを回転する場合、軸方向は、線材繰出部の回転軸と平行な方向である。
【0086】
なお、実施形態では、線材繰出部2が軸方向に移動する。しかし、線材繰出部が移動せずに巻芯が軸方向に移動してもよい。この場合、巻芯の軸方向において、線材ガイド部と線材とが接触する位置と線材繰出部に線材が供給される位置との距離は、巻芯の移動幅よりも大きい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、線材を巻き回してコイルを得るコイル形成装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0088】
100、100A コイル形成装置
200 線材
300 コイル
1、1A、1B 線材ガイド部
11 ガイド本体部
12 弾性変形部
2 線材繰出部
21 繰出本体部
22 整列用貫通孔
23 中央部
24 入口側開口部
25 出口側開口部
3 線材巻き回し部
31 巻き回しモータ
4 ガイド支持部
5 繰出部支持部
51 繰出部移動部
52 移動用モータ
53 ボールねじ
54 スライドテーブル
6 巻芯
61 ベース部
62 芯棒
63 回転軸部
7 巻回制御部
10 線材供給部
10a ボビン
10b 線材集合部
10c 集合部支持部
D1 第1供給方向
D2 第2供給方向
P1 位置
P2 位置
R 中心軸