(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097178
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】コイル形成装置
(51)【国際特許分類】
H01F 41/096 20160101AFI20230630BHJP
H01F 41/069 20160101ALI20230630BHJP
H02K 15/04 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
H01F41/096
H01F41/069
H02K15/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213381
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】山端 達也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 歩
【テーマコード(参考)】
5E002
5H615
【Fターム(参考)】
5E002AA10
5E002AA24
5H615AA01
5H615PP01
5H615PP12
5H615QQ02
5H615QQ20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】線材同士を整列した状態で密接させて巻き回すことにより、より寸法精度の高いコイルを得るコイル形成装置を提供する。
【解決手段】コイル形成装置1は、軸線方向に延び、複数本の線材Mが軸線方向に並んだ状態で巻き付けられる巻芯2と、巻芯に対して径方向外方に位置し、巻芯に供給される複数本の線材がそれぞれ通過する複数の貫通孔32を有する線材整列部3と、を有する。巻芯又は線材整列部の一方は、他方に対して巻芯の軸線周りに回転する。複数の貫通孔は、線材整列部を線材の供給方向に見て、巻芯の軸線方向に対して傾斜した方向である第1方向に並んでいる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された複数本の線材を巻回してコイルを形成するコイル形成装置であって、
軸線方向に延び、前記複数本の線材が前記軸線方向に並んだ状態で巻き付けられる巻芯と、
前記巻芯に対して径方向外方に位置し、前記巻芯に供給される前記複数本の線材がそれぞれ通過する複数の貫通孔を有する線材整列部と、
を有し、
前記巻芯または前記線材整列部の一方は、他方に対して前記巻芯の軸線周りに回転し、
前記複数の貫通孔は、前記線材整列部を前記線材の供給方向に見て、前記巻芯の前記軸線方向に対して傾斜した方向である第1方向に並んでいる、
コイル形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載のコイル形成装置において、
前記線材整列部に対する前記複数の貫通孔の貫通方向は、同じ方向である、
コイル形成装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のコイル形成装置において、
前記複数の貫通孔は、開口端部に向かうに従って内径が大きくなる開口部を有する、
コイル形成装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一つに記載のコイル形成装置において、
前記線材整列部を前記巻芯の前記軸線方向と交差する方向に延びる軸線周りに回転させる角度調整部を有する、
コイル形成装置。
【請求項5】
請求項3に記載のコイル形成装置において、
前記第1方向及び前記貫通孔の貫通方向と直交する方向を第2方向としたとき、
前記複数の貫通孔のうち前記第1方向に隣り合う貫通孔の間隔は、前記複数の貫通孔の前記開口部の前記開口端部における前記第2方向の幅よりも小さい、
コイル形成装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一つに記載のコイル形成装置において、
前記線材整列部は、前記第1方向に並ぶ前記複数の貫通孔を含む貫通孔列を複数、有し、
複数の前記貫通孔列は、前記第1方向及び前記貫通孔の貫通方向と直交する第2方向に並んでいる、
コイル形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載のコイル形成装置において、
前記第2方向に隣り合う貫通孔列のうち、一方の貫通孔列に含まれる前記第1方向に並ぶ貫通孔の位置と、他方の貫通孔列に含まれる前記第1方向に並ぶ貫通孔の位置とが、前記第1方向において異なる、
コイル形成装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載のコイル形成装置において、
前記複数の貫通孔は、開口端部に向かうに従って内径が大きくなる開口部を有し、
前記第2方向に隣り合う貫通孔列のうち、一方の貫通孔列に含まれる貫通孔の前記開口端部と、他方の貫通孔列に含まれる貫通孔の前記開口端部とは、前記貫通方向に見て隣接し、各貫通孔列に含まれる隣り合う複数の貫通孔の前記開口端部は、前記第1方向に重なっている、
コイル形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数本の線材を巻芯の周りに巻き回すことによりコイルを形成するコイル形成装置が知られている。例えば、特許文献1には、電線を巻き付けるための巻枠を回転可能に構成してなる巻取り治具と、前記巻枠に対して、複数本の前記電線を並列させた状態で供給する電線供給装置とを有するコイル形成装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、巻芯に複数本の線材が供給されるコイルの形成方法では、前記線材同士を整列した状態で密接させて巻き回すことにより、より寸法精度の高いコイルを得ることができる。また、モータのステータコアのスロット内に挿入されるコイルにおいて、線材同士を整列した状態で密接させて巻き回すことにより、モータの小型化や、スロット内のコイルの占積率を高めることによるモータの高効率化が可能となる。
【0005】
特許文献1のコイル形成装置では、複数本の電線は、ノズル部が有する軸線方向に延びる一つのスリットを通過した後に、前記巻取り治具に供給される。したがって、前記特許文献1のコイル形成装置を用いてコイルを形成した場合、複数本の線材を軸線方向に並べることができる。しかしながら、前記コイル形成装置では、形成されるコイルにおいて電線同士の間隔が前記スリットに挿入される際の複数本の電線の間隔によって決まる。そのため、前記コイル形成装置では、形成されるコイルにおいて電線同士を密接させることは難しい。
【0006】
本発明の目的は、線材同士が密接したコイルを得ることができるコイル形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係るコイル形成装置は、供給された複数本の線材を巻回してコイルを形成するコイル形成装置である。前記コイル形成装置は、軸線方向に延び、前記複数本の線材が前記軸線方向に並んだ状態で巻き付けられる巻芯と、前記巻芯に対して径方向外方に位置し、前記巻芯に供給される前記複数本の線材がそれぞれ通過する複数の貫通孔を有する線材整列部と、を有する。前記巻芯または前記線材整列部の一方は、他方に対して前記巻芯の軸線周りに回転する。前記複数の貫通孔は、前記線材整列部を前記線材の供給方向に見て、前記巻芯の前記軸線方向に対して傾斜した方向である第1方向に並んでいる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施形態に係るコイル形成装置によれば、線材同士が密接したコイルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るコイル形成装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、線材整列部を線材の供給方向に見た平面図である。
【
図5】
図5は、線材整列部を通過した線材が巻芯で軸線方向に整列される様子を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、角度調整部によって、線材整列部が回転される様子を説明する図である。
【
図7】
図7は、実施形態1の変形例に係る線材整列部の
図2相当図である。
【
図8】
図8は、実施形態1の他の変形例に係る線材整列部の
図2相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の例示的な実施の形態を詳しく説明する。なお、図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。また、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表しているわけではない。
【0011】
なお、以下では、コイル形成装置1の説明において、巻芯2の中心軸Pと平行な方向を「軸線方向」と称する。また、中心軸Pに直交する方向を「径方向」、中心軸Pを中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。
【0012】
また、以下の説明において、第1構成要素と第2構成要素の「間隔」は、対象の構成要素を所定の方向に見て、前記第1構成要素の中心位置と第2構成要素の中心位置の間の距離を意味する。
【0013】
また、以下の説明において、「同じ」などの等価であることを示す表現は、厳密に等価な場合だけでなく、公差または同じ機能が得られる程度の差が存在している場合も含む。
【0014】
また、以下の説明において、第1構成要素と第2構成要素とが「隣接する」とは、第1構成要素の外縁と第2構成要素の外縁とが接触している場合と、公差または同じ機能が得られる程度の差を有する状態で接近している場合を含む。
【0015】
また、以下の説明において、“固定”、“接続”及び“取り付ける”等(以下、固定等)の表現は、部材同士が直接、固定等されている場合だけでなく、他の部材を介して固定等されている場合も含む。すなわち、以下の説明において、固定等の表現には、部材同士の直接的及び間接的な固定等の意味が含まれる。
【0016】
(実施形態1)
(全体構成)
図1を参照して、実施形態1に係る例示的なコイル形成装置1の構成について説明をする。コイル形成装置1は、モータのステータコアのスロット内に挿入されるコイルCを形成する装置である。コイルCは、線材Mを巻回することによって形成される。
【0017】
本実施形態に係るコイル形成装置1は、並列に並んだ状態の複数本の線材Mを巻回して、コイルCを形成する。
図1に示すように、コイル形成装置1は、巻芯2と、線材整列部3と、回転機構4と、角度調整部5と、を有する。
【0018】
巻芯2は、線材Mが巻き付けられる部材である。本実施形態では、巻芯2は、軸線方向に延びる円柱状の部材である。巻芯2の外周面2aに、複数本の線材Mが巻き付けられる。
【0019】
巻芯2には、複数本の線材Mが並列に並んだ状態で供給される。複数本の線材Mは、供給方向の上流側に位置する図示しない線材供給部から供給される。巻芯2は、複数本の線材Mが供給された状態で、回転機構4によって、中心軸Pを中心として回転駆動される。これにより、巻芯2に供給された複数本の線材Mが、巻芯2の外周面2a上に巻き付けられてコイルCが形成される。
【0020】
線材整列部3は、巻芯2の径方向外方に位置する。線材整列部3は、線材整列部3を線材Mの供給方向に見て、前記軸線方向に対して傾斜した方向に並ぶ複数の貫通孔32を有している。供給方向上流側から供給される複数本の線材Mは、それぞれ、線材整列部3の複数の貫通孔32を通過することにより、互いに所定の間隔を有した状態に整列される。線材整列部3を通過した複数本の線材Mが、巻芯2に供給される。
【0021】
本実施形態では、線材整列部3は、巻芯2に対して軸線方向に移動可能に構成されている。これにより、複数の貫通孔32を通過した複数本の線材Mを、巻芯2の軸線方向の任意の範囲に巻き付けることができる。
【0022】
本実施形態では、回転機構4は、中心軸Pを中心として巻芯2を回転させる。回転機構4は、例えば、中心軸Pを中心として巻芯2を回転させる図示しないモータを有する。回転機構4によって、中心軸Pを中心として巻芯2が回転することによって、複数本の線材Mが巻芯2の外周面2a上に巻き回される。
【0023】
角度調整部5は、前記軸線方向に対し、線材整列部3における複数の貫通孔32が並ぶ方向の傾斜角度を変更する。角度調整部5によって、巻芯2に供給される線材同士の軸線方向の間隔を調整することができる。
【0024】
(線材整列部)
次に、
図1から
図5を参照して、線材整列部3の詳細な構成について説明する。
図2では、説明のため、貫通孔32のうち、貫通している孔の部分に斜線を付している。
【0025】
図1に示すように、線材整列部3は、巻芯2と対向する端面3bと、その反対側に位置する端面3aと、線材整列部3を貫通して端面3a及び端面3bで開口する複数の貫通孔32を有する。巻芯2に供給される複数本の線材Mは、線材整列部3の端面3a側から複数の貫通孔32内に進入して、端面3b側から巻芯2に向かって送り出される。
【0026】
図2に示すように、複数の貫通孔32は、線材整列部3を線材Mの供給方向に見て、一列に並んでいる。すなわち、線材整列部3は、複数の貫通孔32によって構成される列状の貫通孔列31を有している。前記供給方向に見て貫通孔列31内で複数の貫通孔32が並ぶ方向は、巻芯2の軸線方向に対して傾斜している。以下では、前記供給方向に見て貫通孔32が並ぶ方向を第1方向、前記供給方向に見て前記第1方向と直交する方向を第2方向とする。
【0027】
本実施形態では、複数の貫通孔32は、第1方向に等間隔に並んでいる。すなわち、第1方向に隣り合う貫通孔32の間隔は、D1である。本実施形態では、線材整列部3に対する複数の貫通孔32の貫通方向は、同じ方向である。よって、線材整列部3の端面3aに開口する複数の貫通孔32のうち隣り合う貫通孔32の間隔D1と、線材整列部3の端面3bに開口する複数の貫通孔32のうち隣り合う貫通孔32の間隔D1とは、同じである。
【0028】
図3及び
図4に示すように、貫通孔32は、貫通方向に延びる中央部33と、線材整列部3の端面3aに開口する開口部34と、線材整列部3の端面3bに開口する開口部35とを有する。開口部34は、線材整列部3の端面3aに位置する開口端部34aを有する。開口部35は、線材整列部3の端面3bに位置する開口端部35aを有する。
【0029】
開口部34,35は、中央部33から開口端部34a,34bに向かうに従って内径が大きくなっている。詳しくは、開口部34,35の内面は、貫通孔32の内径が広がる方向に湾曲する曲面で構成されている。すなわち、貫通孔32の内面における中央部33と開口部34,35との境界部分、開口部34と端面3aとの境界部分、及び、開口部35と端面3bとの境界部分は、曲面によって構成されている。これにより、貫通孔32を通過する線材Mが貫通孔と端面3a,3bとの境界部分に接触して線材Mの表面に傷が付くことが抑制される。
【0030】
複数の貫通孔32は、貫通孔列31の両端に位置する貫通孔32aを除いて同じ断面形状を有している。具体的には、貫通孔32,32aの中央部33の断面形状は、中央部33を貫通孔32の貫通方向に見て、円形である。中央部33は、内径L1を有する。
【0031】
図2に示すように、貫通孔32の開口部34における開口端部34aの外縁形状は、前記貫通方向に見て、第2方向の幅L3よりも第1方向の幅L2が小さい。詳しくは、第1方向に隣り合う貫通孔32の開口端部34aが第1方向に重なることにより、開口端部34aの第1方向の幅L2が、第2方向の幅L3よりも小さい。なお、開口端部の外縁形状は、例えば、前記貫通方向に見て、第2方向の幅L3よりも第1方向の幅L2が小さい楕円形であってもよい。
【0032】
第1方向に隣り合う貫通孔32における第1方向の間隔D1は、第1方向に隣り合う貫通孔32の開口端部34aにおける第1方向の幅L2と同じである。このように、第1方向に隣り合う貫通孔32の開口端部34aが第1方向に重なることによって、第1方向に隣り合う貫通孔32の第1方向の間隔D1を小さくすることができる。
【0033】
貫通孔列31の両側に位置する貫通孔32aは、第1方向の一方側にのみ隣り合う貫通孔を有している。これにより、貫通孔32aの開口端部34aの第1方向の幅は、貫通孔32の開口端部34aの第1方向の幅L2よりも、大きい。
【0034】
開口部35の形状は、開口部34と同じであるため、説明を省略する。
【0035】
上述したように、線材整列部3に対する複数の貫通孔32の貫通方向は、同じ方向である。したがって、線材整列部3の複数の貫通孔32を通過した複数本の線材Mは、互いに第1方向に間隔D1を有する状態で、線材整列部3から巻芯2に送られる。よって、本実施形態のコイル形成装置1では、複数本の線材Mを、第1方向に並列に並んだ状態で巻芯2に供給することができる。前記第1方向に並列に並んだ状態で供給された複数本の線材Mは、巻芯2の外周面2aに巻かれる際に、軸線方向に整列される。
【0036】
図5は、第1方向に並ぶ複数本の線材Mを、軸線方向に延びる巻芯2の外周面2aに巻き付ける様子を模式的に示す図である。
図5に示すように、第1方向に間隔D1を空けて並べられた複数本の線材Mは、巻芯2に巻かれる際に軸線方向に並ぶ。これにより、線材M同士の巻芯2の軸線方向の間隔は、狭くなる。すなわち、巻芯2に供給する複数本の線材Mを、線材整列部3の複数の貫通孔32を通過させることにより、線材M同士の間隔が狭いコイルCを形成することができる。
【0037】
本実施形態では、
図2に示すように、複数の貫通孔32のうち第1方向に隣り合う貫通孔の間隔D1は、複数の貫通孔32の開口部34の開口端部34aにおける第2方向の幅L3よりも小さい。すなわち、第1方向に隣り合う貫通孔32をより近づけることができる。これにより、巻芯2に巻かれる際の複数本の線材Mの間隔を、より狭くすることができる。
【0038】
本実施形態では、線材整列部3は、中心軸Q周りに回転可能である。中心軸Qは、巻芯2の軸線方向と交差する方向に延びる軸である。線材整列部3は、角度調整部5によって、中心軸Q周りに回転する。これにより、巻芯2の軸線方向に対する、貫通孔列31が並ぶ第1方向の角度を変更できる。
【0039】
(角度調整部)
次に、
図6を参照して角度調整部5について説明する。
図6では、説明のため、複数の貫通孔32を1つの貫通孔列31として模式的に示している。角度調整部5は、線材整列部3を中心軸Q周りに回転させる。すなわち、コイル形成装置1は、線材整列部3を巻芯2の軸線方向と交差する方向に延びる軸線周りに回転させる角度調整部5を有する。線材整列部3を中心軸Q周りに回転させることで、複数の貫通孔32が並ぶ方向の軸線方向に対する傾斜角度を変更することができる。これにより、巻芯2に巻かれる際の複数本の線材Mの巻芯2の軸線方向の間隔を、調整することができる。
【0040】
例えば、貫通孔列31が、
図6の実線の位置に位置する場合、貫通孔列31の軸線方向の長さはW1である。したがって、巻芯2の軸線方向長さW1の範囲に、貫通孔列31に含まれる貫通孔32の数と同数の線材Mが巻き付けられる。一方、貫通孔列31が、
図6の破線で示す位置に位置する場合、貫通孔列31の軸線方向の長さはW2である。したがって、巻芯2の軸線方向長さW2の範囲に、貫通孔列31に含まれる貫通孔32の数と同数の線材Mが巻き付けられる。すなわち、角度調整部5が、線材整列部3を回転させることにより、巻芯2に巻き付けられる線材M同士の軸線方向の間隔を変更することができる。
【0041】
以上の構成を有するコイル形成装置1では、供給方向の上流側から供給された複数本の線材Mが線材整列部3の複数の貫通孔32を通過した後に、回転機構4によって軸線周りに回転する巻芯2に供給される。線材整列部3は、複数本の線材Mを、巻芯2の軸線方向に対して傾斜した方向である第1方向に並べるとともに、互いに間隔D1を有する状態に整列させる。複数本の線材Mは、巻芯2に巻かれる際に、巻芯2の軸線方向に並ぶ。
【0042】
なお、本実施形態では、回転機構4が、巻芯2を軸線周りに回転させる。しかしながら、回転機構が、巻芯に対して線材整列部を回転させる構成であってもよい。すなわち、前記線材整列部が、前記巻芯の径方向外方で前記巻芯に対して回転する構成であってもよい。
【0043】
以上説明したように、本実施形態に係るコイル形成装置1は、供給された複数本の線材Mを巻回してコイルCを形成するコイル形成装置1である。コイル形成装置1は、軸線方向に延び、複数本の線材Mが前記軸線方向に並んだ状態で巻き付けられる巻芯2と、巻芯2に対して径方向外方に位置し、巻芯2に供給される複数本の線材Mがそれぞれ通過する複数の貫通孔32を有する線材整列部3と、を有する。巻芯2または線材整列部3の一方は、他方に対して巻芯2の軸線周りに回転する。複数の貫通孔32は、線材整列部3を線材Mの供給方向に見て、巻芯2の前記軸線方向に対して傾斜した方向である第1方向に並んでいる。
【0044】
線材整列部3において巻芯2に供給される複数本の線材Mがそれぞれ通過する複数の貫通孔32は、線材整列部3を線材Mの供給方向に見て、巻芯2の軸線方向に対して傾斜した方向に並んでいる。よって、複数の貫通孔が前記軸線方向に並ぶ場合よりも、複数の貫通孔32の前記軸線方向における間隔は小さい。
【0045】
コイル形成装置1では、複数本の線材Mは、線材整列部3の第1方向に並ぶ複数の貫通孔32を通過してから、軸線方向に並んだ状態で巻芯2に供給される。すなわち、線材整列部3は、前記軸線方向において、巻芯2に巻かれる際の線材M同士の間隔を、複数の貫通孔32を通過させる前の線材M同士の間隔よりも狭くする。これにより、複数本の線材Mの間隔が狭いコイルCを形成できる。
【0046】
本実施形態のコイル形成装置1では、複数の貫通孔32は、開口端部34a,35aに向かうに従って内径が大きくなる開口部34,35を有している。
【0047】
貫通孔32を通過した線材Mは、巻芯2に巻かれることによって貫通孔32の貫通方向とは異なる方向に引っ張られて、開口部34,35の開口端部34a,35aに接触する。上述の構成では、貫通孔32の開口部34,35が、開口端部34a,35aに向かうに従って内径が大きくなっている。したがって、線材Mの表面が開口端部34a,35aによって傷付くことを抑制することができる。よって、ダメージが少なく且つ線材M同士の間隔が狭いコイルCを形成可能なコイル形成装置1を提供することができる。
【0048】
(線材整列部の変形例)
上述した線材整列部3は、貫通孔列31を1つ有する。しかしながら、線材整列部103,203は、
図7及び
図8に示すように、第2方向に並ぶ複数の貫通孔列を有してもよい。
【0049】
図7に示す例では、線材整列部103は、第2方向に並ぶ2つの貫通孔列131a,131bを有する。2つの貫通孔列131a,131bにそれぞれ含まれる複数の貫通孔32は、線材整列部103を供給方向に見て、第1方向に並んでいる。
【0050】
すなわち、線材整列部103は、第1方向に並ぶ複数の貫通孔32を含む貫通孔列131を複数、有する。複数の貫通孔列131は、前記第1方向及び貫通孔32の貫通方向と直交する第2方向に並んでいる。
【0051】
このように、線材整列部103は、1つの貫通孔列31を有する線材整列部3よりも、多くの貫通孔32を有している。したがって、線材整列部103では、巻芯2の所定の軸線方向の範囲に、線材整列部3が供給する数の線材Mよりも多い数の線材Mを巻芯2に供給することができる。よって、線材整列部103を有するコイル形成装置では、線材Mがより密接したコイルCを形成することができる。
【0052】
図8に示す例では、線材整列部203は、第2方向に並ぶ2つの貫通孔列231を有する。2つの貫通孔列231にそれぞれ含まれる複数の貫通孔32は、線材整列部203を供給方向に見て、第1方向に並んでいる。
【0053】
各貫通孔列231の構成は、実施形態1の貫通孔列31の構成と同様である。すなわち、各貫通孔列に含まれる複数の貫通孔32は、第1方向に等間隔に並んでいる。各貫通孔列に含まれる隣り合う貫通孔32の間隔は、D1である。第1方向に隣り合う貫通孔32の開口端部34aが第1方向に重なることにより、開口端部34aの第1方向の幅L2が、第2方向の幅L3よりも小さい。
【0054】
線材整列部203では、第2方向に隣り合う貫通孔列231のうち、一方の貫通孔列231aに含まれる前記第1方向に並ぶ貫通孔32の位置と、他方の貫通孔列231bに含まれる前記第1方向に並ぶ貫通孔32の位置とが、前記第1方向において異なる。一方の貫通孔列231aに含まれる貫通孔32の開口端部34aと他方の貫通孔列231bに含まれる貫通孔32の開口端部35aとは、隣接している。すなわち、第2方向に並ぶ一方の貫通孔列231aに含まれる貫通孔32の開口端部34aと、他方の貫通孔列231bに含まれる貫通孔32の開口端部35aとは、第1方向にずれた位置で隣り合っている。これにより、線材整列部203では、隣り合う貫通孔列231を、第2方向に近い位置に位置させることができる。したがって、線材整列部203は、所定の範囲により多くの貫通孔32を有することができるため、より多くの線材Mを巻芯2に対して供給可能に構成することができる。
【0055】
すなわち、本変形例の線材整列部203では、複数の貫通孔32は、開口端部34a,35aに向かうに従って内径が大きくなる開口部34,35を有している。第2方向に隣り合う貫通孔列231のうち、一方の貫通孔列231aに含まれる貫通孔32の開口端部34a,35aと、他方の貫通孔列231bに含まれる貫通孔32の開口端部34a,35aとは、貫通孔32の貫通方向に見て隣接している。また、各貫通孔列に含まれる隣り合う複数の貫通孔32の開口端部34a,35aは、前記第1方向に重なっている。
【0056】
これにより、第1方向に隣り合う貫通孔32を近い位置に位置させることができる。よって、巻芯2に巻き付けられる線材M同士の間隔を、より狭くすることができる。また、第2方向に並ぶ貫通孔列231を近い位置に位置させることができる。よって、より多くの線材Mを巻芯2に対して供給可能に構成することができる。また、貫通孔32は、開口端部34a,35aに向かうに従って内径が大きくなっている。よって、線材Mが開口部34,35の角に接触して、線材Mの表面に傷が付くことを抑制することができる。したがって、線材整列部203を有するコイル形成装置では、ダメージが少なく且つ線材M同士がより密接したコイルCを形成可能なコイル形成装置を提供することができる。
【0057】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0058】
前記各実施形態では、巻芯2は、円柱状である。しかしながら、巻芯は、線材Mを周方向に巻回可能な部材であれば、円柱状以外の形状を有していてもよい。例えば、巻芯は、角柱状であってもよいし、軸線方向に見て楕円形状であってもよい。
【0059】
前記各実施形態では、巻芯2の外周面2aは、軸線方向に延びている。しかしながら、巻芯の外周面は、複数本の線材Mを巻き回すことが可能であれば、軸線方向に対して傾斜する方向に延びるテーパ状であってもよい。
【0060】
前記各実施形態では、巻芯2は、外周面2aに線材Mが巻き付けられる1つの柱状部材である。しかしながら、巻芯は、中心軸Pを中心として回転対称に位置する複数の柱状部材で構成されていてもよい。この場合、線材Mを前記複数の柱状部材に掛け渡して巻き回すことで、コイルCを形成することができる。なお、この場合、前記柱状部材は、軸線方向に延びていてもよいし、複数本の線材Mを巻き回すことが可能であれば、中心軸Pに対して傾斜する方向に延びていてもよい。
【0061】
前記各実施形態では、コイル形成装置1は、角度調整部5を有する。しかしながら、コイル形成装置は、角度調整部を有さなくてもよい。この場合、線材整列部の複数の貫通孔が並ぶ方向は、固定されていてもよい。
【0062】
前記各実施形態では、線材整列部3,103,203は、巻芯2に対して軸線方向に移動可能に構成されている。しかしながら、線材整列部は、軸線方向に移動しない構成であってもよい。巻芯が、線材整列部に対して軸線方向に移動可能に構成されていてもよい。
【0063】
前記各実施形態では、線材整列部3,103,203は、第1方向に等間隔に並ぶ複数の貫通孔32を有している。しかしながら、線材整列部は、第1方向に並ぶ複数の貫通孔を有していればよく、前記複数の貫通孔は、等間隔に並んでいなくてもよい。前記複数の貫通孔は、所定の間隔で並んでいてもよい。
【0064】
前記各実施形態では、線材整列部3,103,203に対する複数の貫通孔32の貫通方向は、同じ方向である。しかしながら、複数の貫通孔の貫通方向は、互いに異なっていてもよい。複数の貫通孔の貫通方向は、一定の規則に従った方向であってもよい。
【0065】
前記各実施形態では、貫通孔32の開口部34,35は、開口端部34a,35aに向かうに従って内径が大きくなる形状を有している。しかしながら、開口部は、全体が中央部よりも内径が大きく構成されていてもよい。この場合、線材整列部は、貫通孔の内面における中央部と開口部との境界部分及び、開口部と線材整列部の端面との境界部分に、線材Mに押された際に押された方向に変形する変形部材を有していてもよい。これにより、貫通孔を通過した線材Mが、貫通孔32の貫通方向とは異なる方向に引っ張られた際に、線材Mの表面に傷が付くことを抑制することができる。
【0066】
前記各実施形態では、貫通孔32の開口端部34a,35aは、第2方向の幅L3よりも第1方向の幅L2が小さい。しかしながら、貫通孔の開口端部は、第2方向の幅と第1方向の幅が同じであってもよい。貫通孔の開口端部は、第2方向の幅よりも第1方向の幅が大きくてもよい。
【0067】
前記実施形態1の各変形例では、線材整列部103,203は、2つの貫通孔列131,231を有する。しかしながら、線材整列部は、3または3より多い数の貫通孔列を有してもよい。
【0068】
前記実施形態1の各変形例では、貫通孔列131a,231aに含まれる貫通孔の数と、貫通孔列131b,231bに含まれる貫通孔の数は同じである。しかしながら、複数の貫通孔列は、それぞれ異なる数の貫通孔を有してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、コイルを形成するコイル形成装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 コイル形成装置
2 巻芯
2a 外周面
3、103、203 線材整列部
3a 端面
3b 端面
4 回転機構
5 角度調整部
31、131、131a、131b、231、231a、231b 貫通孔列
32、32a 貫通孔
33 中央部
34、35 開口部
34a、35a 開口端部
C コイル
D1 第1方向に隣り合う貫通孔の第1方向の間隔
L1 貫通孔の中央部の内径
L2 貫通孔の開口端部の第1方向における幅寸法
L3 貫通孔の開口端部の第2方向における幅寸法
M 線材
P 巻芯の中心軸
Q 線材整列部の中心軸