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特開2023-97187抄紙用フェルト用基布およびこれをつなぎ合わされてなる抄紙用フェルト
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  • 特開-抄紙用フェルト用基布およびこれをつなぎ合わされてなる抄紙用フェルト 図1
  • 特開-抄紙用フェルト用基布およびこれをつなぎ合わされてなる抄紙用フェルト 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097187
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】抄紙用フェルト用基布およびこれをつなぎ合わされてなる抄紙用フェルト
(51)【国際特許分類】
   D21F 7/10 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
D21F7/10
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213400
(22)【出願日】2021-12-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000180597
【氏名又は名称】イチカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 悟士
(72)【発明者】
【氏名】荻原 泰之
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055CE42
4L055EA25
4L055EA40
4L055FA30
(57)【要約】
【課題】 湿紙からの脱水を均一に行うことができ、脱水後の紙におけるシームマークの発生の抑制が可能な抄紙用フェルト用基布を提供する。
【解決手段】 湿紙側面を形成する湿紙側層、ロール側面を形成するロール側層、および、湿紙側層とロール側層とを連結する、内部にCD方向に芯線が通されるシームループ部を両端に有する抄紙用フェルト用基布であって、湿紙側層およびロール側層は、フェルト走行方向(MD方向)のMD糸材およびフェルト横断方向(CD方向)のCD糸材からなり、シームループ部はMD糸材により形成され、抄紙用フェルト用基布は、一方のシームループ部外側近傍であって、かつ、他方のシームループ部内側に、または他方のシームループ部内側と外側に、通される1または2以上の充填糸をさらに含み、充填糸が、親水性の糸である、前記抄紙用フェルト用基布。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿紙側面を形成する湿紙側層、ロール側面を形成するロール側層、および、湿紙側層とロール側層とを連結する、内部にCD方向に芯線が通されるシームループ部を両端に有する抄紙用フェルト用基布であって、
湿紙側層およびロール側層は、フェルト走行方向(MD方向)のMD糸材およびフェルト横断方向(CD方向)のCD糸材からなり、シームループ部はMD糸材により形成され、
抄紙用フェルト用基布は、一方のシームループ部外側近傍であって、かつ、他方のシームループ部内側に、または他方のシームループ部内側と外側に、通される1または2以上の充填糸をさらに含み、
充填糸が、親水性の糸である、
前記抄紙用フェルト用基布。
【請求項2】
親水性の糸が、相対湿度65%、20℃(標準状態)において、水分率6%以上の繊維である、請求項1に記載の抄紙用フェルト用基布。
【請求項3】
親水性の糸が、レーヨンまたは親水処理されたナイロンである、請求項1または2に記載の抄紙用フェルト用基布。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の抄紙用フェルト用基布がつなぎ合わされてなる、抄紙用フェルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙用フェルト用基布およびこれをつなぎ合わされてなる抄紙用フェルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から製紙機械のプレスパートでは、プレスフェルトと一対のプレスロールまたはプレスロールとシュープレスにより湿紙の搾水作業を行っている。このプレスフェルトとしては、図1に示されるシームループを有する有端状のものが知られている。すなわち、フェルトFは有端状に構成されており、それぞれの端部に複数のシームループLが形成されている。フェルトFは、例えば図2に示すように織布による基布Bと、2層のバット層Wとによって構成される。バット層Wは、基布B上に積層された短繊維のウエッブ繊維を、ニードルパンチにより基布Bと共に絡合一体化されている。基布Bは、フェルト走行方向(MD方向)の糸材と、フェルト横断方向(CD方向)糸材を製織した織布により構成される。そして、MD方向の糸材によりシームループLが構成される。シームループLの内部にはCD方向に芯線Sが通される。
【0003】
このようなプレスフェルトとしては、バット繊維の脱毛の防止や芯線挿入抵抗の低下を図るために、周辺に充填糸が挿入されたシームループ部を有するプレスフェルトが知られている(特許文献1~4)。
一方で、シームループ部を有するプレスフェルトにおいては、脱水後の紙においてシート上にマークが発生することがあると報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-232142号公報
【特許文献2】特開2003-239194号公報
【特許文献3】特開2004-285554号公報
【特許文献4】特表平6-504591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、脱水後の紙におけるシームマークの発生の抑制が可能なシームループ部を有する抄紙用フェルト用基布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく鋭意研究する中で、本発明者らは、シームループ部を有する抄紙用フェルト用基布において、一方のシームループ部外側近傍であって、かつ、他方のシームループ部内側に、または他方のシームループ部内側と外側に、1または2以上の親水性の充填糸を挿入することにより、シームマークの発生を抑制できることを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下に関する。
<1> 湿紙側面を形成する湿紙側層、ロール側面を形成するロール側層、および、湿紙側層とロール側層とを連結する、内部にCD方向に芯線が通されるシームループ部を両端に有する抄紙用フェルト用基布であって、
湿紙側層およびロール側層は、フェルト走行方向(MD方向)のMD糸材およびフェルト横断方向(CD方向)のCD糸材からなり、シームループ部はMD糸材により形成され、
抄紙用フェルト用基布は、一方のシームループ部外側近傍であって、かつ、他方のシームループ部内側に、または他方のシームループ部内側と外側に、通される1または2以上の充填糸をさらに含み、
充填糸が、親水性の糸である、
前記抄紙用フェルト用基布。
<2> 親水性の糸が、相対湿度65%、20℃(標準状態)において、水分率6%以上の繊維である、<1>に記載の抄紙用フェルト用基布。
<3> 親水性の糸が、レーヨンまたは親水処理されたナイロンである、<1>または<2>に記載の抄紙用フェルト用基布。
<4> <1>~<3>のいずれか一つに記載の抄紙用フェルト用基布がつなぎ合わされてなる、抄紙用フェルト。
【発明の効果】
【0008】
本発明の抄紙用フェルト用基布を用いることにより、脱水後の紙におけるシームマークの発生を抑制することができる。
脱水後の紙におけるシームマークの発生を抑制できるメカニズムについては、必ずしも明らかではないが、基布とシームループ部とで吸水性に差があり、湿紙から移動した水が均一に脱水されないことがシームマークの発生原因であると考えられるところ、一方のシームループ部外側近傍であって、かつ、他方のシームループ部内側に、または他方のシームループ部内側と外側に、1または2以上の親水性の充填糸を挿入することにより、基布とシームループ部との吸水性の差を補い、湿紙から移動した水を均一に脱水することができ、脱水後の紙におけるシームマークの発生を抑制できることによるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、抄紙用シームフェルトの概略図である。
図2図2は、抄紙用シームフェルトの噛み合わせ作業を示す図である。
図3図3は、本発明の抄紙用フェルト用基布の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の抄紙用フェルト用基布は、湿紙側面を形成する湿紙側層、ロール側面を形成するロール側層、および、湿紙側層とロール側層とを連結する、内部にCD方向に芯線が通されるシームループ部を両端に有し、湿紙側層およびロール側層は、フェルト走行方向(MD方向)のMD糸材およびフェルト横断方向(CD方向)のCD糸材からなり、シームループ部はMD糸材により形成され、抄紙用フェルト用基布は、一方のシームループ部外側近傍であって、かつ、他方のシームループ部内側に、または他方のシームループ部内側と外側に、通される1または2以上の充填糸をさらに含み、充填糸が、親水性の糸である、抄紙用フェルト用基布である(図3)。
【0011】
本発明の抄紙用フェルト用基布は、湿紙側面を形成する湿紙側層、ロール側面を形成するロール側層、および、湿紙側層とロール側層とを連結する、内部にCD方向に芯線が通されるシームループ部を両端に有する。湿紙側層およびロール側層は、フェルト走行方向(MD方向)のMD糸材およびフェルト横断方向(CD方向)のCD糸材からなり、シームループ部はMD糸材により形成される。
【0012】
本発明の抄紙用フェルト用基布は、一方のシームループ部外側近傍であって、かつ、他方のシームループ部内側に、または他方のシームループ部内側と外側に、通される1または2以上の充填糸をさらに含む。
本発明の充填糸は、親水性の糸である。本発明において、「親水性の糸」は、湿紙から抄紙用フェルト用基布に移動した水を効果的に吸収することができる糸を指す。充填糸が親水性の糸である場合、脱水後の紙におけるシームマークの発生を抑制することができる。親水性の糸は、好ましくは、相対湿度65%、20℃(標準状態)において、水分率6%以上、より好ましくは、水分率8%以上、さらに好ましくは、水分率10%以上の繊維である。
他方、充填糸が親水性の糸ではない場合、脱水後の紙においてシームマークが発生する可能性が高い。
【0013】
親水性の糸としては、これに限定されるものではないが、レーヨン(水分率:約11%)、親水処理されたナイロン(水分率:約20%)、羊毛(水分率:約16%)、キュプラ(水分率:約12~14%)、麻(水分率:約7~10%)、絹(水分率:約9%)、綿(水分率:約7%)、などが挙げられる。ここで、「親水処理されたナイロン」とは、親水性の糸ではないナイロンに吸水性樹脂を付着させることにより、水分率を約20%に調整したナイロンを指す。吸水性樹脂は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、またはアミノ基などを有する親水性基を有する樹脂であり、例えば、ウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。親水性の糸としては、シームマークの発生を抑制および耐洗浄性(耐薬品性)を備えた持続性の観点から、レーヨンおよび親水処理されたナイロンが好ましい。
【0014】
充填糸の本数は、1または2以上であってもよく、シームマークの発生を抑制できれば特に限定されない。充填糸は、1本を単独で挿入してもよく、複数本を撚り合わせたものを挿入してもよい。また、複数本を複数箇所に、例えば、1本を1箇所に挿入した後、3本を撚り合わせたものを別の箇所に挿入してもよい。
充填糸は、各々について、一方のシームループ部外側近傍であって、かつ、他方のシームループ部内側に、または他方のシームループ部内側と外側に、CD方向に挿入され、湿紙側層のMD糸材に織り込む態様、湿紙側層とロール側層との中間にストレートに挿入する態様、ロール側層のMD糸材に織り込む態様などが挙げられるが、シームマークの発生を抑制できれば特に限定されない。また、充填糸を湿紙側層またはロール側層のMD糸材に織り込む際の組織は、1/1ヒラ、2/1崩し、3/1崩し、4/1崩し、5/1崩し、6/1崩し、7/1崩しなどが挙げられるが、シームマークの発生を抑制できれば特に限定されない。
【0015】
本発明の抄紙用シームフェルト用基布の製造方法には特に制限がない。典型的には、織機上では緯糸のMD糸と織機上では経糸のCD糸が織機で織られることにより得られ、前記基布端部にてMD糸が芯線に絡むことによってループを形成し、エンドレス状の基布が得られる。
【0016】
本発明は、さらに、上述の抄紙用フェルト用基布がつなぎ合わされてなる抄紙用フェルトにも関する。かかる抄紙用フェルトの好ましい態様は、抄紙用フェルト用基布について述べた態様と同一である。
【実施例0017】
以下、本発明の抄紙用フェルト用基布がつなぎ合わされてなる抄紙用フェルトについて、実施例を用いて詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0018】
[実施例1~7、比較例1~2]
(1)抄紙用フェルト用基布の製造
(a)実施例1の抄紙用フェルト用基布の製造
基布の湿紙側層のMD糸材に530dの糸を3本撚り合わせてなる1590dのレーヨンスパン糸を1/1ヒラの組織で織り込み、基布のロール側層のMD糸材に1500dのナイロンスパン糸を1/1ヒラの組織で織り込んだ。
基布製織後には、ニードリングにより繊維層を積層一体化してフェルトを形成し、さらにニードル用の保護芯線を引き抜き、ループ上部の繊維層をカットして分離することで、実施例1の抄紙用フェルト用基布を得た。
【0019】
(b)実施例2~3および比較例1の抄紙用フェルト用基布の製造
実施例2については、基布の湿紙側層のMD糸材に1500dのナイロンスパン糸を1/1ヒラの組織で織り込み、基布のロール側層のMD糸材に530dの糸を3本撚り合わせてなる1590dのレーヨンスパン糸を1/1ヒラの組織で織り込み、実施例3については、基布の湿紙側層のMD糸材に、吸水性樹脂を付着させて親水処理を施した、具体的にはウレタン系吸水性樹脂を塗布した1500dのナイロンスパン糸を1/1ヒラの組織で織り込み、比較例1については、基布の湿紙側層のMD糸材に、1500dのナイロンスパン糸を1/1ヒラの組織で織り込んだことを除き、実施例1の抄紙用フェルト用基布の製造で述べたことと同様の方法にて実施例2~3および比較例1の抄紙用フェルト用基布を得た。
【0020】
(c)実施例4の抄紙用フェルト用基布の製造
基布の湿紙側層のMD糸材に1500dのナイロンスパン糸を1/1ヒラの組織で織り込み、基布のロール側層のMD糸材に1500dのナイロンスパン糸を1/1ヒラの組織で織り込み、湿紙側層とロール側層との中間に177dの糸を10本撚り合わせてなる1770dのレーヨンスパン糸を、CD糸材にもMD糸材にも絡ませず、ストレートに挿入した。
基布製織後には、ニードリングにより繊維層を積層一体化してフェルトを形成し、さらにニードル用の保護芯線を引き抜き、ループ上部の繊維層をカットして分離することで、実施例4の抄紙用フェルト用基布を得た。
【0021】
(d)実施例5~7および比較例2の抄紙用フェルト用基布の製造
実施例5については、湿紙側層とロール側層との中間に177dの糸を5本撚り合わせてなる885dのレーヨンスパン糸をストレートに挿入し、実施例6については、湿紙側層とロール側層との中間に、吸水性樹脂を付着させて親水処理を施した、具体的にはウレタン系吸水性樹脂を塗布した1500dのナイロンスパン糸をストレートに挿入し、実施例7については、湿紙側層とロール側層との中間に800dの羊毛をストレートに挿入し、比較例2については、湿紙側層とロール側層との中間に800dの無撚糸をストレートに挿入したことを除き、実施例4の抄紙用フェルト用基布の製造で述べたことと同様の方法にて実施例5~7および比較例2の抄紙用フェルト用基布を得た。
【0022】
なお、実施例1~7および比較例1~2において用いたレーヨンスパン糸(相対湿度65%、20℃(標準状態)における水分率が約11%)、親水処理されたナイロンスパン糸(同約20%)、羊毛(同約16%)は、親水性の糸である。一方で、ナイロンスパン糸(同約5%)およびナイロン無撚糸(同約5%)は、親水性の糸ではない。
【0023】
(2)抄紙用フェルトの製造
実施例1~7および比較例1~2の抄紙用フェルト用基布に対して、シーム部に直径0.35mmのモノフィラメントを5本引き揃えた芯線を挿入し、それぞれ、実施例1~7および比較例1~2の抄紙用フェルトを得た。
【0024】
(3)評価用サンプルの製造
実施例1~7および比較例1~2の抄紙用フェルト用基布に対して、シーム部が中心になるように直径70mmの円形状にサンプルを打ち抜き、実施例1~7および比較例1~2の評価用サンプルを得た。
【0025】
(4)サンプル製造および評価
以下の手順に従って、実施例1~7および比較例1~2のサンプルを製造および評価した。
(a)実施例1~7および比較例1~2の抄紙用フェルト用基布に対して、シームループ部が中心になるように直径70mmの円形状に打ち抜き、実施例1~7および比較例1~2のサンプルを得た。サンプルを水に1時間以上浸漬して、十分に水に馴染ませた。試験前にサンプルのフェルトの含水率を約30%に調整した。
(b)LBKP(Leaf bleached kraft pulp)を叩解度が300~400C.S.F.(canadian standard freeness;紙原料の細かさの指標)となるように叩解し、続けてシートフォーマーで坪量220gsmの湿紙を作成した。試験用に60mmの円形状で打ち抜き、試験前に湿紙の含水率を約80%に調整した。
【0026】
(c)機構が自由落下のプレス盤を、加圧の面圧が50kg/cmとなるように落下高さを調整した。
(d)プレス盤にフェルトと湿紙を重ねて置き、所定の高さからプレス盤を自由落下させて、湿紙から脱水およびシームマークを採取した。
【0027】
(e)プレス後の湿紙を、乾燥時に折れ曲がらないようにリングで挟んだ状態で乾燥させた。
(f)シームマーク評価は目視とし、シームマークの太さと明瞭の良し悪しを下記のとおり評価した。評価を表1にまとめる。
◎(非常に良好):シームマークの巾が非常に狭く、目視ではほとんど観察されない。
〇(良好):シームマークの巾が狭く、実用に耐えうる。
×(不良):シームマークの巾が広く、実用面で問題がある。
【0028】
【表1】
【0029】
湿紙側層のMD糸材に親水性の糸であるレーヨンスパン糸または親水処理されたナイロンスパン糸を織り込んだ実施例1および3は、同位置に親水性の糸ではないナイロンスパン糸を織り込んだ比較例1と比べて、シームマークの発生が抑制された。また、ロール側層のMD糸材に親水性の糸であるレーヨンスパン糸を織り込んだ実施例2は、同位置に親水性の糸ではないナイロンスパン糸を織り込んだ比較例1と比べて、シームマークの発生が抑制された。さらに、湿紙側層とロール側層との中間に親水性の糸であるレーヨンスパン糸、親水処理されたナイロンスパン糸、または羊毛を挿入した実施例4~7についても、同位置に親水性の糸ではないナイロンスパン糸を挿入した比較例2と比べて、シームマークの発生が抑制された。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の抄紙用フェルト用基布を用いることにより、脱水後の紙におけるシームマークの発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0031】
F:抄紙用フェルト
L:シームループ
B:基布
W:バット層
S:芯線


図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-04-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿紙側面を形成する湿紙側層、ロール側面を形成するロール側層、および、湿紙側層とロール側層とを連結する、内部にCD方向に芯線が通されるシームループ部を両端に有する抄紙用フェルト用基布であって、
湿紙側層およびロール側層は、フェルト走行方向(MD方向)のMD糸材およびフェルト横断方向(CD方向)のCD糸材からなり、シームループ部はMD糸材により形成され、
抄紙用フェルト用基布は、一方のシームループ部外側近傍であって、かつ、他方のシームループ部内側に、または他方のシームループ部内側と外側に、通される1または2以上の充填糸をさらに含み、
充填糸が、親水性の糸であり、
親水性の糸が、相対湿度65%、20℃(標準状態)において、水分率6%以上の繊維である、
前記抄紙用フェルト用基布。
【請求項2】
親水性の糸が、レーヨンまたは親水処理されたナイロンである、請求項に記載の抄紙用フェルト用基布。
【請求項3】
請求項1または2に記載の抄紙用フェルト用基布がつなぎ合わされてなる、抄紙用フェルト。