(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009719
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】木質構面ユニット
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20230113BHJP
E04B 1/10 20060101ALI20230113BHJP
E04B 5/02 20060101ALI20230113BHJP
E04B 5/48 20060101ALI20230113BHJP
E04B 7/20 20060101ALI20230113BHJP
E04C 2/52 20060101ALI20230113BHJP
E04C 2/38 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
E04B1/58 650A
E04B1/10 C
E04B1/58 601A
E04B5/02 F
E04B5/48
E04B7/20 511
E04C2/52 A
E04C2/38 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113229
(22)【出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593054077
【氏名又は名称】三井ホームコンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】相馬 智明
(72)【発明者】
【氏名】安田 聡
(72)【発明者】
【氏名】松尾 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】梅森 浩
(72)【発明者】
【氏名】大橋 修
(72)【発明者】
【氏名】松尾 和午
【テーマコード(参考)】
2E125
2E162
【Fターム(参考)】
2E125AA15
2E125AA35
2E125AA57
2E125AA62
2E125AB12
2E125AC23
2E125AE16
2E125AG03
2E125AG08
2E125AG12
2E125AG25
2E125AG56
2E125BE10
2E125CA33
2E125CA43
2E125CA77
2E125CA78
2E162BA05
2E162BB08
2E162CC01
(57)【要約】
【課題】配管用スペースを容易に確保でき、かつ長スパン化が可能な、木質構面ユニットを提供する。
【解決手段】木質構面ユニット1Aは、構造物の床7を形成する木質構面ユニット1Aであって、木質板で形成される木質フランジ部11と、木質材により形成され、木質フランジ部11の上面または下面に接合される横架材13と、を備え、横架材13は、単体で、または木質フランジ部11と組み合わせて、トラス構造をなすように構成され、横架材13の一部が木質フランジ部11の欠込み部11kに挿入され、横架材13が木質フランジ部11と嵌合接合されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の屋根または床を形成する木質構面ユニットであって、
木質板で形成される木質フランジ部と、
木質材により形成され、前記木質フランジ部の上面または下面に接合される横架材と、を備え、
前記横架材は、単体で、または前記木質フランジ部と組み合わせて、トラス構造をなすように構成され、
前記横架材の一部が前記木質フランジ部の欠込み部に挿入され、当該横架材が前記木質フランジ部と嵌合接合されていることを特徴とする木質構面ユニット。
【請求項2】
前記横架材が単体でトラス構造をなすように構成される場合には、
前記横架材は、上弦材、下弦材、及び連結材を備え、前記上弦材と前記下弦材が前記連結材により連結されて前記トラス構造が形成され、前記連結材は束材を備え、当該束材の材端部が前記上弦材と前記下弦材の少なくとも一方よりも外方に突出して前記木質フランジ部の欠込み部に挿入され、
前記横架材が前記木質フランジ部と組み合わせてトラス構造をなすように構成される場合には、
前記横架材は、上弦材及び下弦材のうちの一方と、連結材を備え、前記木質フランジ部と、前記上弦材及び前記下弦材のうちの前記一方が、前記連結材により連結されて前記トラス構造が形成され、前記連結材は束材を備え、当該束材の材端部が前記木質フランジ部の欠込み部に挿入されている
ことを特徴とする請求項1に記載の木質構面ユニット。
【請求項3】
前記束材の材端面には、くさび材が打込まれ、当該束材が前記木質フランジ部の前記欠込み部と密着されていることを特徴とする請求項2に記載の木質構面ユニット。
+
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質構面ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、木質の梁に、乾式床パネルとしての床版を備えた構成が開示されている。この構成において、床版は、軽量気泡コンクリートによって形成された板状の部材の上下面に、鋼板をそれぞれ一体に設けたものとなっている。
また、特許文献2には、一対の梁材の間に、平板状の木質パネルと、平板状の床版とを防振材を介して上下方向に間隔をあけて設ける構成が開示されている。
また、特許文献3には、梁の上に架け渡された剛床パネルと、その上に敷設された石膏ボードと、石膏モード上に複数の支持脚を介して設けた矩形木質パネルと、を備える構成が開示されている。
【0003】
特許文献1~3に開示されたような構成では、いずれも、床面を形成する床版やパネルを木質系の材料で形成した場合、その曲げ剛性に限りがあるため、梁の間隔(スパン)を長くするのが難しい。
これに対し、水平面に沿って設置されるパネルからなるフランジ材と、フランジ材に直交して上下方向に延びるウェブ材と、を一体化した木質系のパネルユニット材を用いる構成が提案されている。このようなパネルユニット材は、ウェブ材の上下にそれぞれフランジ材を備える構成とすることもある。このようなパネルユニット材は、ストレストスキンパネル等と称されている。このパネルユニット材において、ウェブ材は、板材等により形成されており、パネルに沿って水平方向に連続するビーム状に設けられている。ウェブ材がフランジ材に接合されることで、フランジ材の曲げ剛性を高められる。このようなパネルユニットを、梁間に架け渡すことで、梁のスパンの長大化を可能としている。
【0004】
しかしながら、上記したようなパネルユニット材では、ウェブ材が、上下方向(せい方向)に長く、延伸方向に延びたビーム状とされている。このようなパネルユニット材を用いて床や屋根を形成すると、パネルユニット材がボックス状に閉じているので、床下や屋根裏に配管や配線を通すときには、ウェブ材に、配管や配線を挿通するための貫通孔を形成しなければならず、配管用スペースを確保するのに手間が掛かる。
配管用スペースを容易に確保でき、かつ、より剛性を高めることで更なる長スパン化が可能な、木質構面ユニットが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-218504号公報
【特許文献2】特開2018-204236号公報
【特許文献3】特開2011-256531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、配管用スペースを容易に確保でき、かつ長スパン化が可能な、木質構面ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、構造物の木質構面構造として、屋根または床面を形成する木質フランジ部と、当該木質フランジ部の下面側または上面側に立設される横架材とを接合させて、木質フランジ部が横架材の上下の少なくとも一方に配置された、木質構面ユニットを開発した。横架材には、木質フランジ部の長手方向に沿って、一様断面を有する木質材を配置するのではなく、木質材でトラス構造を形成し、横架材の一部を木質フランジ部の欠込み部に挿入させて、横架材と木質フランジ部を嵌合接合させることで、軽量でありながら、曲げやせん断に対する優れた剛性を確保して、木質構面ユニットの長スパン化を実現した。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の木質構面ユニットは、構造物の屋根または床を形成する木質構面ユニットであって、木質板で形成される木質フランジ部と、木質材により形成され、前記木質フランジ部の上面または下面に接合される横架材と、を備え、前記横架材は、単体で、または前記木質フランジ部と組み合わせて、トラス構造をなすように構成され、前記横架材の一部が前記木質フランジ部の欠込み部に挿入され、当該横架材が前記木質フランジ部と嵌合接合されていることを特徴とする。
このような構成の木質構面ユニットによれば、木質フランジ部と、木質材により形成される横架材とが接合されている。横架材は、単体で、または木質フランジ部と組み合わせて、トラス構造をなすように構成され、これにより、木質構面ユニットは、木質フランジ部が横架材によって補強されるため、力学的特性(断面二次モーメント)が大きくなり、曲げ剛性が向上する。
さらに、横架材の一部が木質フランジ部の欠込み部に挿入されることで、横架材が木質フランジ部と嵌合接合されている。このため、木質フランジ部と横架材との接合には接着剤を用いる必要がない。なおかつ、木質フランジ部と横架材との間でせん断力を確実に伝達することができる。
以上の要因により、木質構面ユニットを強固に実現できるので、長スパン化を図ることができる。
また、横架材は、単体で、または木質フランジ部と組み合わせて、トラス構造をなすように構成されるので、トラス構造を形成する木質材同士の間に、配管や配線を容易に通すことができる。したがって、配管や配線を挿通させるための貫通孔を形成する必要も無く、施工を容易に行うことができる。
したがって、配管用スペースを容易に確保でき、かつ長スパン化が可能となる。
【0008】
本発明の一態様においては、前記横架材が単体でトラス構造をなすように構成される場合には、前記横架材は、上弦材、下弦材、及び連結材を備え、前記上弦材と前記下弦材が前記連結材により連結されて前記トラス構造が形成され、前記連結材は束材を備え、当該束材の材端部が前記上弦材と前記下弦材の少なくとも一方よりも外方に突出して前記木質フランジ部の欠込み部に挿入され、前記横架材が前記木質フランジ部と組み合わせてトラス構造をなすように構成される場合には、前記横架材は、上弦材及び下弦材のうちの一方と、連結材を備え、前記木質フランジ部と、前記上弦材及び前記下弦材のうちの前記一方が、前記連結材により連結されて前記トラス構造が形成され、前記連結材は束材を備え、当該束材の材端部が前記木質フランジ部の欠込み部に挿入されている。
このような構成によれば、上弦材、下弦材、及び連結材とで、または、上弦材及び下弦材のうちの一方と、連結材、及び木質フランジ部とで、トラス構造が構成される。このように構成された横架材が木質フランジ部に接合されることで、曲げ剛性の高い木質構面ユニットが構成される。いずれの場合においても、横架材の束材の材端部が木質フランジ部の欠込み部に挿入されることで、木質フランジ部と横架材とが容易かつ強固に接合される。束材の材端部が欠込み部に挿入されることで、束材の材端部の側面の支圧剛性によって、木質フランジ部と横架材との間でせん断力が伝達される。
【0009】
本発明の一態様においては、前記束材の材端面には、くさび材が打込まれ、当該束材が前記木質フランジ部の前記欠込み部と密着されている。
このような構成によれば、連結材の束材の材端面にくさび材を打込むことで、束材と木質フランジ部の欠込み部との間に隙間をなくし、束材の材端部の側面を木質フランジ部の欠込み部と支圧接合させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、配管用スペースを容易に確保でき、かつ長スパン化が可能な、木質構面ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る木質構面ユニットの構成を示す斜視図である。
【
図3】
図1の木質構面ユニットを長手方向から見た図である。
【
図5】
図1の木質構面ユニットの束材近傍の斜視図である。
【
図6】
図1の木質構面ユニットの束材の材端部と木質フランジ部との接合部を示す断面図である。
【
図7】
図1の木質構面ユニットに設けられた転び止めパネルの側断面図である。
【
図8】本実施形態における木質構面ユニットの木質フランジ部に設けられた連結金物を示す部分拡大平面図である。
【
図10】本実施形態における木質構面ユニットにおいて、互いに隣り合う木質フランジ部同士の接合部を示す平面図である。
【
図11】本実施形態における木質構面ユニットにおいて、互いに隣り合う木質フランジ部同士の接合部を長手方向、短手方向から視た側面図である。
【
図12】本発明の第一実施形態に係る木質構面ユニットの第1変形例の構成を示す側面である。
【
図13】
図12の木質構面ユニットを長手方向から見た図である。
【
図14】本発明の第一実施形態に係る木質構面ユニットの第2変形例の構成を示す斜視図である。
【
図15】本発明の第一実施形態に係る木質構面ユニットの第3変形例の構成を示す斜視図である。
【
図16】本発明の第二実施形態に係る木質構面ユニットを長手方向から見た図である。
【
図17】本発明の第二実施形態に係る木質構面ユニットの変形例を長手方向から見た図である。
【
図18】本発明の第二実施形態に係る木質構面ユニットの他の変形例の構成を示す図である。
【
図19】本発明の第二実施形態に係る木質構面ユニットのさらに他の変形例の構成を示す図である。
【
図20】本発明の第二実施形態に係る木質構面ユニットのさらに他の変形例の構成を示す図である。
【
図21】本発明の第二実施形態に係る木質構面ユニットのさらに他の変形例の構成を示す図である。
【
図22】本発明の木質構面ユニットについての検討を行った試験装置を示す図である。
【
図23】本発明の木質構面ユニットについての検討結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、木質フランジ部と、トラス構造が形成された横架材とで構成される木質構面ユニットである。具体的には、木質構面ユニットは、木質材からなるトラスで構成される横架材の上端側または下端側の一方のみに木質フランジ部が接合された実施形態と、横架材の上端側及び下端側に、其々木質フランジ部が接合された、木質フランジ部が上下に設置された形態がある。いずれの形態においても、横架材の一部を木質フランジ部の欠込み部に挿入させて、横架材と木質フランジ部が嵌合接合されている。
以下、添付図面を参照して、本発明による木質構面ユニットを実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る木質構面ユニットの構成を示す斜視図を
図1に示す。
図2は、
図1の木質構面ユニットの側面図である。
図3は、
図1の木質構面ユニットを長手方向から見た図である。
図4は、
図1の木質構面ユニットの平面図である。
図1~
図4に示されるように、木質構面ユニット1Aは、木質フランジ部11と、横架材13と、を備えている。このような木質構面ユニット1Aは、構造物の床7を形成する。
木質フランジ部11は、上下方向Dvに直交する水平面に沿った木質板からなる。木質フランジ部11は、上下方向Dvからの平面視で、長方形状をなしている。木質フランジ部11は、その短手方向Dwに、所定の幅を有し、長手方向Daに連続して延びている。
本実施形態においては、木質フランジ部11は、直交集成板(CLT(Cross Laminated Timber))である。CLT材は、ラミナと呼ばれるひき板を水平面内に並べた層(プライ)を、板の繊維方向が直交するように積層、接着した板材である。
木質フランジ部11としては、CLT材が望ましい。しかし、スパンの長さが短い等、CLT材程の強度が必要とされない場合においては、木質フランジ部11に、例えば、単板積層材(LVL)や、通常の合板を用いることも可能である。LVL材は、単板を主としてその繊維方向を互いにほぼ平行にして積層接着した材料である。
【0013】
横架材13は、上方の木質フランジ部11の下側に設けられて、木質フランジ部11の下面に接合されている。横架材13は、木質材により形成されている。横架材13は、横架材13単体で、トラス構造をなすように構成されている。本実施形態において、横架材13は、木質フランジ部11の短手方向Dwの両端部近傍に、より詳細には、当該両端部から短手方向Dwに内側に位置した部分に、それぞれ配置されている。
【0014】
各横架材13は、上弦材14、下弦材15、及び連結材16を備えている。上弦材14と下弦材15とは、上下方向Dvに間隔をあけて互いに平行に配置されている。上弦材14、下弦材15は、それぞれ、長手方向Daに延びている。連結材16は、上弦材14と下弦材15とを連結する。連結材16として、長手方向Daに一定の間隔を空けて配置された複数の束材16aと、長手方向Daで互いに隣り合う束材16a同士の間に設けられた斜材16bと、が設けられている。
本実施形態において、束材16aは、下端部が下弦材15上に接合され、上方の材端部16xは、上弦材14を貫通して上弦材14よりも上方に延びている。つまり、下弦材15は、木質構面ユニット1Aの全長にわたって長手方向Daに連続して延びている。上弦材14は、長手方向Daで隣り合う束材16a同士の間に架設されている。
本実施形態において、横架材13は、いわゆるプラットトラス構造とされている。すなわち、斜材16bは、下方に向かって、横架材13の長手方向Daの中央部側に傾斜して設けられている。横架材13には、上弦材14、下弦材15、及び連結材16の間に、短手方向Dwに貫通する複数の開口17が形成されている。
【0015】
また、
図2、
図3に示すように、上弦材14と上弦材14に接合される連結材16(束材16a、斜材16b)の上端部、及び下弦材15と下弦材15に接合される連結材16(束材16a、斜材16b)の下端部とは、それぞれ、メタルプレートコネクター35を介して接合されている。メタルプレートコネクター35は、上弦材14と連結材16との接合部、下弦材15と連結材16との接合部において、短手方向Dwの少なくとも一方側(両側でもよい)に設けられる。メタルプレートコネクター35は、上弦材14と連結材16、下弦材15と連結材16の側面に沿うメタルプレート35pと、メタルプレート35pから短手方向Dwに突出する複数の突起(図示なし)とを一体に備えている。メタルプレートコネクター35は、複数の突起を、上弦材14と連結材16、下弦材15と連結材16とに、それぞれ打ち込むことで、上弦材14と連結材16、下弦材15と連結材16を接合する。なお、上弦材14と連結材16との接合、下弦材15と連結材16との接合は、メタルプレートコネクター35以外の各種の接合金具を用いてもよいし、メタルプレートコネクター35とこれら各種の接合金具の双方を用いてもよい。
【0016】
図5は、
図1の木質構面ユニットの束材近傍の斜視図である。
上記のような横架材13は、上下方向Dvに所定の高さを有して形成されている。横架材13は、長手方向Daに沿って連続して延びている。
図5に示すように、本実施形態において、上弦材14、下弦材15、連結材16(束材16a、斜材16b)は、それぞれ、短手方向Dwに2つの部材Pを重ねることで構成されている。各部材Pは、例えば2×4材等からなり、その延在方向に直交する断面形状が長方形状とされている。2つの部材Pは、長方形断面の短辺方向を短手方向Dwに沿わせた状態で、互いに重ね合わされて、接合されている。
【0017】
図6は、
図1の木質構面ユニットの束材の材端部と木質フランジ部との接合部を示す断面図である。
図6に示すように、横架材13の一部は、木質フランジ部11の欠込み部11kに挿入されている。欠込み部11kは、横架材13の束材16aに対し、上下方向Dvで対応する位置に形成されている。欠込み部11kは、上下方向Dvからみて矩形状の孔であり、木質フランジ部11を上下方向Dvに貫通している。横架材13の束材16aの材端部16xは、上弦材14よりも外方に突出している。本実施形態において、材端部16xは、上弦材14よりも上下方向Dvの上方に突出している。このように上弦材14よりも上方に突出した、横架材13の一部である束材16aの材端部16xは、欠込み部11kに挿入されることで、横架材13は木質フランジ部11と嵌合接合されている。このようにして、横架材13は、接着剤を用いずに、木質フランジ部11に嵌合接合されている。束材16aの材端部16xと、木質フランジ部11とは、材端部16xを欠込み部11kに嵌合接合されるのに加えて、例えば、ビス等によって接合されていてもよい。
【0018】
図5、
図6に示すように、材端部16xの材端面には、V字状の溝16mが形成されている。溝16mは、材端面に沿って短手方向Dwに連続している。溝16mは、上下方向Dvの上方(上弦材14から離間する方向)から下方(上弦材14に接近する方向)に向かって、長手方向Daにおける溝幅寸法が漸次縮小している。この溝16mには、くさび材50が打ち込まれている。くさび材50は、短手方向Dwに連続している。くさび材50は、短手方向Dwから見て逆三角形状で、上下方向Dvの上方から下方に向かって、長手方向Daにおける厚み寸法が漸次縮小している。くさび材50が溝16mに打ち込まれることで、材端部16xは、溝16mを挟んだ両側が長手方向Daの互いに離間する方向に押し広げられ、その側面16sが木質フランジ部11の欠込み部11kの内面に突き当たる。これにより、束材16aと欠込み部11kとの間に隙間を無くし、束材16aが木質フランジ部11の欠込み部11kと密着されている。このようにして、束材16aの材端部16xの側面16sが、木質フランジ部11の欠込み部11kに支圧接合される。
【0019】
図7は、
図1の木質構面ユニットに設けられた転び止めパネルの側断面図である。
図3、
図4に示すように、短手方向Dwで隣り合う横架材13同士の間には、複数の転び止めパネル55が設けられている。複数の転び止めパネル55は、長手方向Daに間隔をあけて配置されている。各転び止めパネル55は、長手方向Daにおいて束材16aと一致する位置に配置されている。
図3、
図7に示すように、各転び止めパネル55は、枠材56と、補強板材57と、を備えている。
枠材56は、長手方向Daから見て矩形の枠状に組まれている。枠材56は、短手方向Dwに間隔をあけて配置された一対の縦枠材56aと、上下方向Dvに間隔をあけて配置された上枠材56b、および下枠材56cと、を備えている。一対の縦枠材56aは、短手方向Dwの両側の横架材13の束材16aに沿って設けられている。上枠材56bは、短手方向Dwに延びて、一対の縦枠材56aの上端部同士を接合している。上枠材56bは、木質フランジ部11の下面に沿って設けられている。下枠材56cは、短手方向Dwに延びて、一対の縦枠材56aの下端部同士を接合している。本実施形態においては、補強板材57は、枠材56に対して、長手方向Daの一方側に配置されているが、両方側、または混在して配置しても良い。補強板材57は、長手方向Daから見て、枠材55aの四隅に設けられている。各補強板材57は、直角三角形状で、縦枠材56aと、上枠材56bまたは下枠材56cとの接合部に、縦枠材56aと、上枠材56bまたは下枠材56cと、の双方に跨がって設けられて、これらの各々に釘等によって固定されている。
【0020】
図8は、本実施形態における木質構面ユニットの木質フランジ部に設けられた連結金物を示す部分拡大平面図である。
図9は、
図8のII-II部分の断面図である。
図8に示されるように、各木質構面ユニット1Aの上側の木質フランジ部11は、長手方向Daの端部11aに、連結金物20が設けられている。木質フランジ部11の端部11aには、上下方向の中間部に、スリット11hが形成されている。連結金物20は、長手方向Daに延びる金属製の帯板状をなし、その一端部20aが、スリット11h内に挿入されている。連結金物20には、複数の孔20hが形成されている。連結金物20は、木質フランジ部11を通して各孔20hに、ボルト、ビス、ピン等を挿入することで、木質フランジ部11に固定される。
図9においては、連結金物20がドリフトピン30によって固定された形態が示されている。連結金物20の他端部20bは、木質フランジ部11の端部11aから長手方向Daに突出している。連結金物20の他端部20bが、他の木質構面ユニット1Aの木質フランジ部11や、構造物の躯体を構成する壁や柱、梁等に形成されたスリット(図示無し)に挿入・固定されることにより、木質フランジ部11は設置される。
【0021】
図10は、互いに隣り合う木質フランジ部同士の接合部を、上下方向から見た平面図である。
図11(a)、(b)は、それぞれ、幅方向で互いに隣り合う木質フランジ部同士の接合部を、上下方向Dvにそれぞれ直交する長手方向Da、短手方向Dwから視た側面図である。
短手方向Dwで互いに隣り合う木質構面ユニット1Aの木質フランジ部11同士は、例えば、接合具22を用いて接合されている。接合具22は、ビス、釘、またはボルトである。特に本実施形態においては、接合具22は、軸部の表面に全体的にネジが形成された、全ネジ型のビスである。
接合具22は、第1接合具22A、第2接合具22B、第3接合具22C、及び第4接合具22Dを備えている。各接合具22A、22B、22C、22Dは、木質フランジ部11間の接合面JPを跨いで、互いに隣り合う木質フランジ部11に貫入されている。各接合具22A、22B、22C、22Dは、木質フランジ部11の表面11fと、木質フランジ部11同士の接合面JPと、表面11f及び接合面JPの双方に直交する仮想直交平面OPとに対し、それぞれ角度をつけて斜めに延びている。
【0022】
第1接合具22A、及び第3接合具22Cは、接合面JPを挟んだ一方の側の木質フランジ部11Aから木質フランジ部11Aの内部を貫通し、他方の側の木質フランジ部11Bに向かって貫入されている。第1接合具22A、及び第3接合具22Cは、頭部22aが一方の側の木質フランジ部11Aの表面11f近傍に位置し、先端部22eが他方の側の木質フランジ部11B内に位置している。
第2接合具22B、及び第4接合具22Dは、接合面JPを挟んだ他方の側の木質フランジ部11Bから木質フランジ部11Bの内部を貫通し、一方の側の木質フランジ部11Bに向かって貫入されている。第2接合具22B、及び第4接合具22Dは、頭部22aが他方の側の木質フランジ部11Bの表面11f近傍に位置し、先端部22eが一方の側の木質フランジ部11A内に位置している。
第1接合具22Aと、第3接合具22Cとは、先端部22e同士が近傍に位置し、先端部22eからそれぞれの頭部22aに向かうにつれて、互いに離間するように設けられている。また、第2接合具22Bと、第4接合具22Dとは、先端部22e同士が近傍に位置し、先端部22eからそれぞれの頭部22aに向かうにつれて、互いに離間するように設けられている。
【0023】
上記のような接合具22を用いて短手方向Dwで互いに隣り合う木質構面ユニット1Aの他方の側の木質フランジ部11B同士を接合した場合、例えば他方の側の木質フランジ部11Bが一方の側の木質フランジ部11Aに対して、仮想直交平面OPの一方の側OP1側から他方の側OP2側へと向かう第1方向Da1に相対移動するように、接合面JPを境界としてせん断変形が作用した際には、第1接合具22Aと第4接合具22Dに対してこれらが引き抜かれるような力が作用する。これに対しては、第2接合具22Bと第3接合具22Cの圧縮軸力により抵抗可能である。
また、他方の側の木質フランジ部11Bが一方の側の木質フランジ部11Aに対して第1方向Da1とは逆方向の第2方向Da2に相対移動するように、接合面JPを境界としてせん断変形が作用した際には、第2接合具22Bと第3接合具22Cに対してこれらが引き抜かれるような力が作用する。これに対しては、第1接合具22Aと第4接合具22Dの圧縮軸力により抵抗可能である。
同様に、接合面JPを境界としてせん断変形が上下方向Dvに作用した際においても、いずれかの接合具22の圧縮軸力によりこれに抵抗可能である。
さらに、他方の側の木質フランジ部11Bが一方の側の木質フランジ部11Aから短手方向Dwに離間しようとした際には、接合具22A、22B、22C、22Dの各々が接合面JPに直交する短手方向Dwに対して斜めに設けられているため、接合具22の各々がこれに抵抗し得る。
【0024】
上記のように、接合具22は、一方の側の木質フランジ部11Aと他方の側の木質フランジ部11Bとの間に形成される接合面JPと、一方の側の木質フランジ部11Aの表面11fとの、双方に直交する仮想直交平面OPに対して角度をつけて、接合面JPを跨いで貫入される。このため、接合具22の引張軸力と圧縮軸力によって接合面JPでのせん断抵抗力が増大される。したがって、一方の側の木質フランジ部11Aと他方の側の木質フランジ部11Bを強固に接合することができる。
また、第1接合具22Aと第2接合具22Bは、接合面JP近傍で互いに交差するように、一方の側の木質フランジ部11Aと他方の側の木質フランジ部11Bに貫入されている。このため、一方の接合具22が負担する引張軸力に対して、他方の接合具22が圧縮軸力を負担し、接合面JPに沿ったせん断抵抗力を高めることができる。したがって、一方の側の木質フランジ部11Aと他方の側の木質フランジ部11Bを強固に接合することができる。
【0025】
また、第1接合具22Aと第2接合具22Bは、ともに仮想直交平面OPの一方の側OP1から仮想直交平面OPを挟んだ他方の側OP2へ向かうように、第3接合具22Cと第4接合具22Dは、ともに仮想直交平面OPの他方の側OP2から一方の側OP1へ向かうように、一方の側の木質フランジ部11Aと他方の側の木質フランジ部11Bに貫入されている。すなわち、仮想直交平面OPに直交する方向Daにおいては、第1接合具22Aと第2接合具22Bと、第3接合具22Cと第4接合具22Dとが、互いに向かい合うように設けられている。このため、仮想直交平面OPに直交する方向Daにおいて生じ得る面内方向分力、面外方向分力は、第1及び第2接合具22A、22Bと、第3及び第4接合具22C、22Dが組み合わせられることで相殺され、一方の側の木質フランジ部11Aと他方の側の木質フランジ部11Bの分離や、面外の変形を効果的に抑制できる。
さらに、第1接合具22Aと第2接合具22Bと同様に、第3接合具22Cと第4接合具22Dは、接合面JP近傍で互いに交差するように、一方の側の木質フランジ部11Aと他方の側の木質フランジ部11Bに貫入されている。このため、第3接合具22Cと第4接合具22Dは、第1接合具22Aと第2接合具22Bと同様に、一方の接合具22が負担する引張軸力に対して、他方の接合具22が圧縮軸力を負担し、接合面JPに沿ったせん断抵抗力を高めることができる。
以上の効果が相乗し、一方の側の木質フランジ部11Aと他方の側の木質フランジ部11Bを強固に接合することができる。
【0026】
特に本実施形態においては、上下方向Dvから視た際に、4本の接合具22A、22B、22C、22Dが一組となり、これらがそれぞれ異なる方向から、互いに向かい合うように、斜めに貫入されている構造となっている。したがって、様々な方向に生じ得る面内方向分力、面外方向分力を、各接合具22が相殺し、一方の側の木質フランジ部11Aと他方の側の木質フランジ部11Bの離間や、面外の変形を効果的に抑制できる。
【0027】
(作用効果)
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
上述したような木質構面ユニット1Aによれば、構造物の床7を形成する木質構面ユニット1Aであって、木質板で形成される木質フランジ部11と、木質材により形成され、木質フランジ部11の下面に接合される横架材13と、を備え、横架材13は、単体で、トラス構造をなすように構成され、横架材13の一部が木質フランジ部11の欠込み部11kに挿入され、横架材13が木質フランジ部11と嵌合接合されている。
このような構成の木質構面ユニット1Aによれば、木質フランジ部11と、木質材により形成される横架材13とが接合されている。横架材13は、単体で、または木質フランジ部11と組み合わせて、トラス構造をなすように構成され、これにより、木質構面ユニット1Aは、木質フランジ部11が横架材13によって補強されるため、力学的特性(断面二次モーメント)が大きくなり、曲げ剛性が向上する。
さらに、横架材13の一部が木質フランジ部11の欠込み部11kに挿入されることで、横架材13が木質フランジ部11と嵌合接合されている。このため、木質フランジ部11と横架材13との接合には接着剤を用いる必要がない。なおかつ、木質フランジ部11と横架材13との間でせん断力を確実に伝達することができる。
以上の要因により、木質構面ユニット1Aを強固に実現できるので、長スパン化を図ることができる。
また、横架材13は、単体で、トラス構造をなすように構成されるので、トラス構造を形成する木質材同士の間に、配管や配線を容易に通すことができる。したがって、配管や配線を挿通させるための貫通孔を形成する必要も無く、施工を容易に行うことができる。
したがって、配管用スペースを容易に確保でき、かつ長スパン化が可能となる。
【0028】
特に、横架材13がトラス構造ではなく、貫通孔を有さない板材であるような、通常の構造においては、配管のために横架材に貫通孔を設けると、横架材の断面形状、断面積が変化する。このため、貫通孔を設けるたびに、横架材の性能実験を行う必要に迫られる。
これに対し、上記のような木質構面ユニット1Aにおいては、横架材13がトラス構造であるために開口17が予め設けられており、新たに貫通孔を設ける必要がない。すなわち、横架材の性能実験を何度も行わずとも済むため、建築構造物の設計、施工が容易となる。
【0029】
また、本実施形態のような、横架材13が単体でトラス構造をなすように構成される場合には、横架材13は、上弦材14、下弦材15、及び連結材16を備え、上弦材14と下弦材15が連結材16により連結されてトラス構造が形成され、連結材16は束材16aを備え、束材16aの材端部16xが上弦材14と下弦材15の少なくとも一方よりも外方に突出して木質フランジ部11の欠込み部11kに挿入されている。特に本実施形態においては、横架材13の上側に木質フランジ部11が設けられ、これに対応して、束材16aの材端部16xが上弦材14よりも外方に突出して、木質フランジ部11の欠込み部11kに挿入されている。
このような構成によれば、上弦材14、下弦材15、及び連結材16とで、トラス構造が構成される。このように構成された横架材13が木質フランジ部11に接合されることで、曲げ剛性の高い木質構面ユニット1Aが構成される。横架材13の束材16aの材端部16xが上弦材14及び下弦材15の少なくとも一方よりも外方に突出して木質フランジ部11の欠込み部11kに挿入されることで、木質フランジ部11と横架材13とが容易かつ強固に接合される。束材16aの材端部16xが欠込み部11kに挿入されることで、束材16aの材端部16xの側面の支圧剛性によって、木質フランジ部11と横架材13との間でせん断力が伝達される。
【0030】
また、束材16aの材端面には、くさび材50が打込まれ、束材16aが木質フランジ部11の欠込み部11kと密着されている。
このような構成によれば、連結材16の束材16aの材端面にくさび材50を打込むことで、束材16aと木質フランジ部11の欠込み部11kとの間に隙間をなくし、束材16aの材端部16xの側面を木質フランジ部11の欠込み部11kと支圧接合させることができる。
【0031】
(第一実施形態の第1変形例)
なお、本発明の木質構面ユニットは、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、木質構面ユニット1Aが、上側に設けられた木質フランジ部11と、木質フランジ部11の短手方向Dwの両側に設けられた横架材13とを有する形態としたが、これに限らない。
例えば、
図12、
図13に示すように、木質構面ユニット1Bは、複数の木質フランジ部11、12と、横架材13と、を備えている。木質フランジ部11、12は、上下方向Dvに間隔をあけて配置されている。木質フランジ部11、12は、それぞれ上下方向Dvに直交する水平面に沿う木質板からなる。木質フランジ部11、12には、例えば、CLT材を用いるのが好ましい。木質フランジ部11、12には、LVL材や、通常の合板を用いることも可能である。
横架材13は、上方の木質フランジ部11と、下方の木質フランジ部12との間に設けられている。本変形例において、横架材13は、木質フランジ部11、12の短手方向Dwの両端部にそれぞれ配置されている。つまり、木質構面ユニット1Bは、長手方向Daに延びる筒状をなしている。
本変形例の束材16aにおいては、上方の材端部16xは、上弦材14を貫通して上弦材14よりも上方に延びるとともに、下方の材端部16yは、下弦材15を貫通して下弦材15よりも下方に延びている。つまり、上弦材14と下弦材15は、長手方向Daで隣り合う束材16a同士の間に架設されている。
上側に設けられて床面を形成する木質フランジ部11の欠込み部11kには、横架材13を構成し、上弦材14よりも外方に、より詳細には上方に突出する束材16aの材端部16xが挿入されている。下側に設けられた木質フランジ部12の欠込み部12kには、横架材13を構成し、下弦材15よりも外方に、より詳細には下方に突出する束材16aの材端部16yが挿入されている。このようにして、横架材13が上下の木質フランジ部11、12と嵌合接合されている。
束材16aの上側の材端部16xにおいて、材端面には、第一実施形態として
図5を用いて説明したようにくさび材が打込まれ、束材16aが木質フランジ部11の欠込み部11kと密着されている。また、束材16aの下側の材端部16yにおいても、材端面にはくさび材が打込まれ、束材16aが木質フランジ部12の欠込み部12kと密着されている。
【0032】
上記のような木質構面ユニット1Bにおいては、横架材13は、単体でトラス構造をなすように構成され、このような場合において、横架材13は、上弦材14、下弦材15、及び連結材16を備え、上弦材14と下弦材15が連結材16により連結されてトラス構造が形成され、連結材16は束材16aを備え、束材16aの材端部16x、16yが上弦材14及び下弦材15の双方よりも外方に突出して木質フランジ部11、12の欠込み部11k、12kに挿入されている。
このような構成によれば、木質構面ユニット1Bは、複数の木質フランジ部11、12を備えているため、強度を高めることができる。
また、何らかの理由により、複数の木質フランジ部11、12の一方が破損した場合においても、他方と横架材13によりトラス構造が維持されて応力が再配分されるため、木質構面ユニット1Bにより形成される架構体を維持し、脆性的な倒壊を抑制することができる。
【0033】
(第一実施形態の第2変形例)
例えば、
図14に示すように、木質構面ユニット1Cは、木質フランジ部11と、横架材13と、を備えている。横架材13は、上方の木質フランジ部11の欠込み部11kには、横架材13を構成し、上弦材14よりも外方に突出する束材16aの材端部16xが挿入されることで、横架材13が木質フランジ部11と嵌合接合されている。本変形例において、横架材13は、木質フランジ部11の短手方向Dwの中間部に配置されている。つまり、木質構面ユニット1Cは、長手方向Daから見た断面形状が、T字状をなしている。
上側に設けられて床面を形成する木質フランジ部11の欠込み部11kには、横架材13を構成し、上弦材14よりも上方に突出する束材16aの材端部16xが挿入されている。このようにして、横架材13が上側の木質フランジ部11と嵌合接合されている。
【0034】
(第一実施形態の第3変形例)
例えば、
図15に示すように、木質構面ユニット1Dは、複数の木質フランジ部11、12と、横架材13と、を備えている。木質フランジ部11、12は、上下方向Dvに間隔をあけて配置されている。横架材13は、上方の木質フランジ部11と、下方の木質フランジ部12との間に設けられている。本変形例において、横架材13は、木質フランジ部11、12の短手方向Dwの中間部に配置されている。つまり、木質構面ユニット1Dは、長手方向Daから見た断面形状が、H字状をなしている。
上側に設けられて床面を形成する木質フランジ部11の欠込み部11kには、横架材13を構成し、上弦材14よりも上方に突出する束材16aの材端部16xが挿入されている。下側に設けられた木質フランジ部12の欠込み部12kには、横架材13を構成し、下弦材15よりも下方に突出する束材16aの材端部16yが挿入されている。このようにして、横架材13が上下の木質フランジ部11、12と嵌合接合されている。
【0035】
[第二実施形態]
次に、本発明に第二実施形態に係る木質構面ユニットについて説明する。
以下に説明する第二実施形態において、上記第一実施形態との相違点は、上記第一実施形態では、木質構面ユニット1Aを構造物の床7に適用したのに対し、本第二実施形態では、木質構面ユニットを構造物の屋根8に適用する点にある。以下の説明において、上記第一実施形態と共通する構成については、図中に同符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0036】
本発明の第二実施形態に係る木質構面ユニットを長手方向から見た図を
図16に示す。
図16に示されるように、木質構面ユニット1Eは、木質フランジ部11と、横架材13と、を備えている。このような木質構面ユニット1Eは、構造物の屋根8を形成する。
木質フランジ部11は、上下方向Dvに直交する水平面に沿った木質板からなる。木質フランジ部11は、上下方向Dvからの平面視で、長方形状をなしている。木質フランジ部11は、その短手方向Dwに、所定の幅を有し、上下方向Dvと短手方向Dwに直交する長手方向(紙面奥行方向)に連続して延びている。
本実施形態において、木質フランジ部11は、例えば集成材からなる。屋根8を構成する場合、木質フランジ部11を覆うように、屋根材(図示無し)を取り付ける。
【0037】
横架材13は、上方の木質フランジ部11の下側に設けられて、木質フランジ部11の下面に接合されている。横架材13は、木質材により形成されている。横架材13は、横架材13単体で、トラス構造をなすように構成されている。本実施形態において、横架材13は、木質フランジ部11の短手方向Dwの両端部近傍に、より詳細には、当該両端部から短手方向Dwに内側に位置した部分に、それぞれ配置されている。
各横架材13は、上弦材14、下弦材15、及び連結材16を備えている。上弦材14と下弦材15とは、上下方向Dvに間隔をあけて互いに平行に配置されている。上弦材14、下弦材15は、それぞれ、長手方向に延びている。連結材16は、上弦材14と下弦材15とを連結する。連結材16は、長手方向に一定の間隔を空けて配置された複数の束材16aを備えている。
本実施形態において、束材16aは、下端部が下弦材15上に接合され、上方の材端部16xは、上弦材14を貫通して上弦材14よりも上方に延びている。つまり、下弦材15は、木質構面ユニット1Aの全長にわたって長手方向に連続して延びている。上弦材14は、長手方向で隣り合う束材16a同士の間に架設されている。
本実施形態において、横架材13は、第一実施形態同様に、いわゆるプラットトラス構造とされている。
特に本実施形態においては、束材16aの材端部16xが上弦材14よりも外方に突出して木質フランジ部11の欠込み部11kに挿入されることにより、横架材13が木質フランジ部11と嵌合接合されている。また、束材16aの材端面には、第一実施形態として
図5を用いて説明したようにくさび材が打込まれ、束材16aが木質フランジ部11の欠込み部11kと密着されている。
このような木質構面ユニット1Eは、構造物の躯体を構成する柱の上端部間に架設された梁に支持される。木質構面ユニット1Eは、横架材13の長手方向の両端部が、図示しない接合金具等によって梁に接合される。複数本の木質構面ユニット1Eは、短手方向Dwに並べて配置されている。
屋根8を構成する木質構面ユニット1Eの長手方向の両端部には、木質フランジ部11と、短手方向Dw両側の横架材13とに囲まれた開口を閉塞する屋根端板(図示なし)が設けられる。
【0038】
上述したような木質構面ユニット1Eによれば、構造物の屋根8を形成する木質構面ユニット1Eであって、木質板で形成される木質フランジ部11と、木質材により形成され、木質フランジ部11の下面に接合される横架材13と、を備え、横架材13は、単体で、トラス構造をなすように構成され、横架材13の一部が木質フランジ部11の欠込み部11kに挿入され、横架材13が木質フランジ部11と嵌合接合されている。
このような構成の木質構面ユニット1Eによれば、上記第一実施形態と同様、木質フランジ部11が横架材13によって補強されるため、力学的特性(断面二次モーメント)が大きくなり、曲げ剛性が向上する。
さらに、上記第一実施形態と同様、横架材13が木質フランジ部11と嵌合接合されている。このため、木質フランジ部11と横架材13との間でせん断力を確実に伝達することができる。
以上の要因により、木質構面ユニット1Eを強固に実現できるので、長スパン化を図ることができる。
また、横架材13はトラス構造であるので、開口に、配管や配線を容易に通すことができる。したがって、配管や配線を挿通させるための貫通孔を形成する必要も無く、施工を容易に行うことができる。
したがって、配管用スペースを容易に確保でき、かつ長スパン化が可能となる。
【0039】
また、本実施形態のような、横架材13が単体でトラス構造をなすように構成される場合には、横架材13は、上弦材14、下弦材15、及び連結材16を備え、上弦材14と下弦材15が連結材16により連結されてトラス構造が形成され、連結材16は束材16aを備え、束材16aの材端部16xが上弦材14と下弦材15の少なくとも一方よりも外方に突出して木質フランジ部11の欠込み部11kに挿入されている。特に本実施形態においては、横架材13の上側に木質フランジ部11が設けられ、これに対応して、束材16aの材端部16xが上弦材14よりも外方に突出して、木質フランジ部11の欠込み部11kに挿入されている。
このような構成によれば、上弦材14、下弦材15、及び連結材16とで、トラス構造が構成される。このように構成された横架材13が木質フランジ部11に接合されることで、曲げ剛性の高い木質構面ユニット1Eが構成される。横架材13の束材16aの材端部16xが上弦材14及び下弦材15の少なくとも一方よりも外方に突出して木質フランジ部11の欠込み部11kに挿入されることで、木質フランジ部11と横架材13とが容易かつ強固に接合される。束材16aの材端部16xが欠込み部11kに挿入されることで、束材16aの材端部16xの側面の支圧剛性によって、木質フランジ部11と横架材13との間でせん断力が伝達される。
【0040】
また、束材16aの材端面には、くさび材が打込まれ、束材16aが木質フランジ部11の欠込み部11kと密着されている。
このような構成によれば、連結材16の束材16aの材端面にくさび材50を打込むことで、束材16aと木質フランジ部11の欠込み部11kとの間に隙間をなくし、束材16aの材端部16xの側面を木質フランジ部11の欠込み部11kと支圧接合させることができる。
【0041】
(第二実施形態の変形例)
なお、本発明の木質構面ユニットは、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、構造物の屋根8を形成する木質構面ユニット1Eが、上側に設けられた木質フランジ部11と、木質フランジ部11の短手方向Dwの両側に設けられた横架材13とを有する形状としたが、これに限らない。
例えば、
図17に示すように、木質構面ユニット1Fは、複数の木質フランジ部11、12と、横架材13と、を備えている。木質フランジ部11、12は、上下方向Dvに間隔をあけて配置されている。木質フランジ部11、12は、それぞれ上下方向Dvに直交する水平面に沿う木質板からなる。例えば、上側の木質フランジ部11には、集成材を用い、下側の木質フランジ部12には、CLT材を用いるようにしてもよい。さらに、下側の木質フランジ部12により構造物最上階の天井を形成するようにしてもよい。この場合、下側の木質フランジ部12を、表面が燃えても構造耐力上支障のない大断面とする燃えしろ設計(屋根:30分)による、CLTあらわし仕上としてもよい。これにより、45分準耐火の要件に対し、1時間準耐火構造を実現することができる。
【0042】
横架材13は、上方の木質フランジ部11と、下方の木質フランジ部12との間に設けられている。本変形例において、横架材13は、木質フランジ部11、12の短手方向Dwの両端部にそれぞれ配置されている。
本変形例の束材16aにおいては、上方の材端部16xは、上弦材14を貫通して上弦材14よりも上方に延びるとともに、下方の材端部16yは、下弦材15を貫通して下弦材15よりも下方に延びている。つまり、上弦材14と下弦材15は、長手方向(紙面奥行方向)で隣り合う束材16a同士の間に架設されている。
上側に設けられた木質フランジ部11の欠込み部11kには、横架材13を構成し、上弦材14よりも外方に、より詳細には上方に突出する束材16aの材端部16xが挿入されている。下側に設けられた木質フランジ部12の欠込み部12kには、横架材13を構成し、下弦材15よりも外方に、より詳細には下方に突出する束材16aの材端部16yが挿入されている。このようにして、横架材13が上下の木質フランジ部11、12と嵌合接合されている。
束材16aの上側の材端部16xにおいて、材端面には、第一実施形態として
図5を用いて説明したようにくさび材が打込まれ、束材16aが木質フランジ部11の欠込み部11kと密着されている。また、束材16aの下側の材端部16yにおいても、材端面にはくさび材が打込まれ、束材16aが木質フランジ部12の欠込み部12kと密着されている。
【0043】
上記のような木質構面ユニット1Fにおいては、横架材13は、単体でトラス構造をなすように構成され、このような場合において、横架材13は、上弦材14、下弦材15、及び連結材16を備え、上弦材14と下弦材15が連結材16により連結されてトラス構造が形成され、連結材16は束材16aを備え、束材16aの材端部16x、16yが上弦材14及び下弦材15の双方よりも外方に突出して木質フランジ部11、12の欠込み部11k、12kに挿入されている。
このような構成によれば、木質構面ユニット1Fは、複数の木質フランジ部11、12を備えているため、強度を高めることができる。
また、何らかの理由により、複数の木質フランジ部11、12の一方が破損した場合においても、他方と横架材13によりトラス構造が維持されて応力が再配分されるため、木質構面ユニット1Fにより形成される架構体を維持し、脆性的な倒壊を抑制することができる。
【0044】
(その他の変形例)
図18に示すように、構造物の屋根8を形成する木質構面ユニット1Gは、上弦材14及び上側の木質フランジ部11に対し、下弦材15(及び下側の木質フランジ部12)の方が、長手方向Daに長い構成としてもよい。この場合、横架材13の長手方向Da両端部の連結材16を、上弦材14の端部と下弦材15の端部とを接続する斜材16fによって構成する。
この場合も、木質構面ユニット1Gの長手方向Daの両端部に、屋根端板8eが設けられる。
【0045】
また、上記第二実施形態において、横架材13をプラットトラス構造としたが、これに限らない。例えば、
図19に示す木質構面ユニット1Hのように、横架材13の連結材16を、斜材16gが、下方に向かって、横架材13の長手方向Daの中央部側から両端部に傾斜して設けられた、ハウトラス構造としてもよい。
【0046】
また、
図20に示す木質構面ユニット1Kのように、横架材13の連結材16を、下方に向かって横架材13の長手方向Daの一方側に傾斜した斜材16hと、下方に向かって横架材13の長手方向Daの他方側に傾斜した斜材16iとを交互に設けるとともに、斜材16hの端部と斜材16iの端部が接合される部分から上下方向に延びる束材16aを備える、ワーレントラス構造としてもよい。
また、
図21に示す木質構面ユニット1Lのように、横架材13の連結材16としての斜材16kを、下方に向かって、横架材13の長手方向Daの中央部側に傾斜して設けるとともに、長手方向Daの両端部から中央部側に向かって、束材16aの上下方向の長さが漸次長くなる曲弦プラットトラス構造としてもよい。この場合、上側の木質フランジ部11は、長手方向Daに並ぶ複数枚のフランジパネル11pから構成され、各フランジパネル11pが長手方向Daで隣り合う束材16aの上端部間に設置される。なお、本変形例においては、束材16aの上側の材端部は、上側の木質フランジ部11には嵌合接合されておらず、下側の材端部16yのみが、下側の木質フランジ部12の欠込み部12kに挿入されて、嵌合接合されている。
また、木質構面ユニット1E、1F、1G、1H、1K、1Lは、屋根8の傾斜に合わせて、斜めに傾けて設置するようにしてもよい。
また、第二実施形態における木質構面ユニットが、第一実施形態に関連して
図8、
図9を用いて説明したような連結金物を用いて、構造物の躯体を構成する壁等に連結するようにしてもよい。
【0047】
また、上記第一及び第二実施形態では、上側の木質フランジ部11の下面に横架材13が接合されるようにしたが、これに限らない。例えば、木質構面ユニットを、木質板で形成される木質フランジ部12と、木質材により形成され、木質フランジ部12の上面に接合される横架材13と、を備え、横架材13は、単体で、トラス構造をなすように構成され、横架材13の一部が木質フランジ部12の欠込み部12kに挿入され、横架材13が木質フランジ部12と嵌合接合されているように、構成してもよい。
より詳細には、横架材13は、上弦材14、下弦材15、及び連結材16を備え、上弦材14と下弦材15が連結材16により連結されてトラス構造が形成され、連結材16は束材16aを備え、束材16aの材端部16yが下弦材15よりも外方に、すなわち下方に突出して、木質フランジ部12の欠込み部12kに挿入されている。
すなわち、このような場合においては、下側の木質フランジ部12と、その上面に接合した横架材13のみを備え、上側の木質フランジ部11を備えない構成となる。
このような構成の木質構面ユニットにおいても、上記第一及び第二実施形態と同様に、配管用スペースを容易に確保でき、かつ長スパン化が可能となる。
この場合においては、木質構面ユニットを短手方向Dwに並べて設けた後に、並べられた複数の木質構面ユニットの各々の上弦材14の上に、上弦材14間をかけ渡して木質構面ユニットの上側を覆うように、床材や屋根材を敷設する。
【0048】
また、上記第一及び第二実施形態や、既に説明した各変形例においては、横架材13の上方のみ、または下方のみ、或いは上方及び下方の双方に木質フランジ部11、12を設けて、横架材13と木質フランジ部11、12とを嵌合接合していた。この場合において、横架材13は、上弦材14、下弦材15、及び連結材16の各々を備えることで、単体でトラス構造をなすように構成されていた。
これに替えて、例えば横架材13の上方に木質フランジ部11が設けられる場合には、横架材13は、上弦材を設けずに、下弦材15と連結材16のみを設ける構成とし、連結材16の束材16aを、その上側の材端部16xを上方の木質フランジ部11と嵌合接合させて、横架材13が、木質フランジ部11と組み合わせて、トラス構造をなすように構成されてもよい。
あるいは、例えば横架材13の下方に木質フランジ部12が設けられる場合には、横架材13は、下弦材を設けずに、上弦材14と連結材16のみを設ける構成とし、連結材16の束材16aを、その下側の材端部16yを下方の木質フランジ部12と嵌合接合させて、横架材13が、木質フランジ部12と組み合わせて、トラス構造をなすように構成されてもよい。
このような木質構面ユニットによれば、構造物の屋根または床を形成する木質構面ユニットであって、木質板で形成される木質フランジ部と、木質材により形成され、木質フランジ部の上面または下面に接合される横架材と、を備え、横架材は、木質フランジ部と組み合わせて、トラス構造をなすように構成され、横架材の一部が木質フランジ部の欠込み部に挿入され、横架材が木質フランジ部と嵌合接合されている。
さらに、このように横架材が木質フランジ部と組み合わせてトラス構造をなすように構成される場合には、横架材は、上弦材及び下弦材のうちの一方と、連結材を備え、木質フランジ部と、上弦材及び下弦材のうちの前記一方が、連結材により連結されてトラス構造が形成され、連結材は束材を備え、束材の材端部が木質フランジ部の欠込み部に挿入されている。
このような構成においても、既に説明したような、様々な効果を奏することは、言うまでもない。
【0049】
また、上記第一及び第二実施形態では、束材16aの材端部16x、16yが、上弦材14及び下弦材15の少なくとも一方よりも外方に突出して木質フランジ部11、12の欠込み部12kに挿入されることにより、横架材13が木質フランジ部11、12と嵌合接合されていたが、これに限られない。
例えば、第一及び第二実施形態の構成においては、束材16aは、下端部が下弦材15上に接合され、上方の材端部16xは、上弦材14を貫通して上弦材14よりも上方に延びるように設けられていた。また、これに伴い、下弦材15は、木質構面ユニットの全長にわたって長手方向Daに連続して延び、かつ上弦材14は、長手方向Daで隣り合う束材16a同士の間に架設されていた。これに替えて、上弦材14も、下弦材15と同様に、木質構面ユニット1Aの全長にわたって長手方向Daに連続して延びるようにして、束材16aの上方の材端部が上弦材14の下面に接合させ、束材16aが上弦材14よりも上方に突出しないようにする。そのうえで、横架材13の一部として、上弦材14の上面から上方に突出するように、凸部を、上弦材14と一体に設け、当該凸部を木質フランジ部11に嵌合接合してもよい。この場合においても、凸部が上弦材14と一体に設けられているため、木質フランジ部11と横架材13との間でせん断力を確実に伝達することができる。
また、横架材13を構成する束材16aの材端部16x、16yを木質フランジ部11、12の欠込み部12kの板厚さ方向の中間部まで挿入して、横架材13と木質フランジ部11、12とを嵌合接合させてもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0050】
(木質構面ユニットについての検討結果)
上記したような構成について、検討を行ったので、その結果を以下に示す。
試験体は、横架材13の上下に、厚さ90mmの木質フランジ部11、12を接着剤で一体化したものをA仕様、穴加工により形成した木質フランジ部11、12の欠込み部11k、12kに束材16aを差し込む嵌合接合により一体化したものをB仕様とし、それぞれ1体、合計2体とした。試験体の外形寸法は、A,B仕様共通で幅1,800mm、長さ10,669mm、高さ849mmである。木質フランジ部11、12は、それぞれ、幅1,800mm、長さ10,669mm、厚さ90mmとした。
横架材13を構成する上弦材14、下弦材15、及び連結材16には、2×4(ツーバイフォー)用の製材(38mm×89mm)を(一部部材で2×6材(38mm×140mm)を)使用した。横架材13を構成する上弦材14、下弦材15、及び連結材16の接合には、部材交点に表面に突起の付いた厚さ0.95mmの鉄製プレートを掛け渡しプレス機で圧締するメタルプレートコネクター接合を用いた。
横架材13は、高さ580mm、長さ10,669mmである。支持点間距離が10,000mmであるため試験体両端は支持点の外側へ334.5mm張り出す仕様となる。支持点間の束材16aは580mmピッチで配置した。斜材16bは右上がり、左上がりを交互に配置する。またスパン中央部は、束材16aの間隔を720mmとし斜材16bを抜いた。横架材13は、600m間隔で3本配置した。
【0051】
木質フランジ部11、12と横架材13の接合は、接着仕様のA仕様では、木質フランジ部11、12と上弦材14および下弦材15の接触面にウレタン系接着剤をタバコ幅で波状に塗布した。なお本製品は事前に実施した接合部(接着)試験を行い、接着界面で破壊が起こらない(木部が破壊する)ことを確認している。嵌合仕様のB仕様では、横架材13の束材16a、連結材16の割付けはA仕様と同様であるが束材16aを上下弦材15に対し勝たせる仕様とする。木質フランジ部11、12には束材16aの位置60か所(横架材131本あたり20か所×3本)に、76mm×92mmの嵌合用の欠込み部11k、12kを事前に加工した。束材16aの嵌合後、欠込み部11k、12kと束材16aとの隙間には木製のくさび材50を打ち込み、束材16aと木質フランジ部11、12が面タッチするようにした。
なお横架材13の倒れ止めとして横架材13間に転び止めパネル55を4か所取り付けた。
【0052】
図22に示すように、曲げ試験は4点加力とし概ね3等分点となるスパン中央部から左右に1.52mの点(加力点間距離3.04m)とした。なお加力点は、横架材13の束材16aが配置される位置とし、上弦材14には曲げが入らないようにした。
加力には10MNの加力装置100を用いた。加力方法は荷重制御の一方向繰り返し加力とした。繰り返す荷重は、A仕様で75kN、150kN、300kN、B仕様で75kN、150kN、200kN、300kNとし、それぞれ1回繰り返した後、最大荷重を経て、最大荷重の80%まで耐力が低下するまで行った。木質フランジ部11、12の下面のスパン中央部および加力点2点について、上下方向の変位を、木質フランジ部11、12と横架材13、上下弦材15の相対変位、支点近傍の束材16aの上下および水平方向の変位を測定した。また、横架材13については、実験後発生軸力を計算できるよう支点近傍の部材にはひずみゲージを取り付けた。同様に木質フランジ部11、12の曲げ応力を計算できるよう、版の上面にもひずみゲージを取り付けた。
【0053】
A仕様については、下弦材15の破断や継手位置のプレート破断および上弦材14、および下弦材15と、束材16a、連結材16間の水平方向のずれによるプレートの変形等が確認された。B仕様では、加力点で、束材16aと連結材16、上弦材14、および下弦材15の縦方向のずれによるプレートの破断、木質フランジ部11、12と横架材13の水平方向のずれにより束材16aの折損や支圧変形等が確認された。A、B仕様共に、横架材13の接合点数が多いため、ある接合部または部材が破壊に至った場合でも、他の部材へ応力伝達されるため、急激に耐力を失ってパネルが大きく破壊することはなかった。特に、B仕様では高い靭性が確認された。長期設計荷重に対する実験最大荷重は、A仕様で97.2kNに対し436kNであり、長期設計荷重に対する実験最大荷重は4.48倍であった。同様にB仕様では、97.2kNに対し359kNと3.69倍であった。
図23は、実験値と解析値の比較A、B仕様の荷重―変位関係について実験値と解析値を比較したグラフである。この
図23に示すように、A仕様について、剛性は長期設計耐力までは計算値、実験値でほぼ整合する。最大荷重については解析値241kNの1.81倍となる436kNが実験で確認された。B仕様については嵌合接合部の初期のガタの影響か解析値に比べて実験値の剛性は低い。最大荷重については解析値234kNの1.53倍となる359kNが実験で確認された。
【符号の説明】
【0054】
1A~1H、1K、1L 木質構面ユニット 14 上弦材
7 床 15 下弦材
8 屋根 16連結材
11、11A、11B 木質フランジ部 16a 束材
12 木質フランジ部 16x、16y 材端部
11k、12k 欠込み部 50 くさび材
13 横架材