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特開2023-9722メンテナンス判定装置及びメンテナンス判定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009722
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】メンテナンス判定装置及びメンテナンス判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20230113BHJP
   A61G 5/04 20130101ALI20230113BHJP
   G06Q 10/20 20230101ALI20230113BHJP
   A61G 5/10 20060101ALI20230113BHJP
   G01H 17/00 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
G01M17/007 J
A61G5/04 707
G06Q10/00 300
A61G5/10
G01H17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113232
(22)【出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】394013002
【氏名又は名称】三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 明子
(72)【発明者】
【氏名】釜本 真有
(72)【発明者】
【氏名】新藤 雅裕
【テーマコード(参考)】
2G064
5L049
【Fターム(参考)】
2G064AA14
2G064AB02
2G064AB22
2G064BA02
2G064CC29
2G064DD08
2G064DD15
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】電動車椅子の状態がメンテナンスの必要な状態であることを検知できるようにする。
【解決手段】電動車椅子1に搭載されている振動センサ2から、電動車椅子1の振動を示す振動データを収集する振動データ収集部11と、振動データ収集部11により収集された振動データに基づいて、電動車椅子1の劣化度を算出する劣化度算出部12と、劣化度算出部12により算出された劣化度に基づいて、電動車椅子1のメンテナンスが必要であるか否かを判定する判定部13とを備えるように、メンテナンス判定装置10を構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車椅子に搭載されている振動センサから、前記電動車椅子の振動を示す振動データを収集する振動データ収集部と、
前記振動データ収集部により収集された振動データに基づいて、前記電動車椅子の劣化度を算出する劣化度算出部と、
前記劣化度算出部により算出された劣化度に基づいて、前記電動車椅子のメンテナンスが必要であるか否かを判定する判定部と
を備えたメンテナンス判定装置。
【請求項2】
前記電動車椅子に搭載されているGPS(Global Positioning System)センサから、前記電動車椅子の位置を示す位置データを収集する位置データ収集部と、
前記位置データ収集部により収集された位置データに基づいて、前記電動車椅子が監視領域を通過した回数を計数する通過回数計数部とを備え、
前記劣化度算出部は、前記通過回数計数部により計数された回数に基づいて、前記電動車椅子の劣化度を補正することを特徴とする請求項1記載のメンテナンス判定装置。
【請求項3】
前記電動車椅子が使用されているときの天候を示す気象情報を収集する気象情報収集部と、
前記気象情報収集部により収集された気象情報から、前記電動車椅子が使用されているときの天候を特定し、雨天時における前記電動車椅子の使用時間を算出する雨天使用時間算出部とを備え、
前記劣化度算出部は、前記雨天使用時間算出部により算出された使用時間に基づいて、前記電動車椅子の劣化度を補正することを特徴とする請求項1記載のメンテナンス判定装置。
【請求項4】
前記電動車椅子に搭載されているバッテリーセンサから、前記電動車椅子の駆動用バッテリーの状態を示すバッテリーデータを収集するバッテリーデータ収集部を備え、
前記判定部は、前記劣化度算出部により算出された劣化度及び前記バッテリーデータ収集部により収集されたバッテリーデータのそれぞれに基づいて、前記電動車椅子のメンテナンスが必要であるか否かを判定することを特徴とする請求項1記載のメンテナンス判定装置。
【請求項5】
前記判定部の判定結果を送信する判定結果送信部を備えたことを特徴とする請求項1記載のメンテナンス判定装置。
【請求項6】
振動データ収集部が、電動車椅子に搭載されている振動センサから、前記電動車椅子の振動を示す振動データを収集し、
劣化度算出部が、前記振動データ収集部により収集された振動データに基づいて、前記電動車椅子の劣化度を算出し、
判定部が、前記劣化度算出部により算出された劣化度に基づいて、前記電動車椅子のメンテナンスが必要であるか否かを判定する
メンテナンス判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、メンテナンス判定装置及びメンテナンス判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動カートの状況を監視する電動カート監視システムが特許文献1に開示されている。当該電動カート監視システムは、電動カートの車体の異常を検知する検知手段を備えている。検知手段により検知される異常としては、車体の傾斜角度の異常のほか、車体に加わる衝撃負荷の異常がある。検知手段により検知される異常は、電動カートの機械的な異常ではなく、電動カートに搭乗している搭乗者の安全性に影響がある、電動カートの利用状況の異常である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-197569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている電動カート監視システムの検知手段により検知される異常は、上記の通り、電動カートの利用状況の異常である。したがって、当該検知手段は、電動カートの状態がメンテナンスの必要な状態であっても、メンテナンスの必要な状態であることを検知できないという課題があった。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、電動車椅子の状態がメンテナンスの必要な状態であることを検知できるメンテナンス判定装置及びメンテナンス判定方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るメンテナンス判定装置は、電動車椅子に搭載されている振動センサから、電動車椅子の振動を示す振動データを収集する振動データ収集部と、振動データ収集部により収集された振動データに基づいて、電動車椅子の劣化度を算出する劣化度算出部と、劣化度算出部により算出された劣化度に基づいて、電動車椅子のメンテナンスが必要であるか否かを判定する判定部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、電動車椅子の状態がメンテナンスの必要な状態であることを検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係るメンテナンス判定装置10を示す構成図である。
図2】実施の形態1に係るメンテナンス判定装置10のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図3】メンテナンス判定装置10が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合のコンピュータのハードウェア構成図である。
図4】メンテナンス判定装置10の処理手順であるメンテナンス判定方法を示すフローチャートである。
図5】振動センサ2から出力された振動データの一例を示す説明図である。
図6】実施の形態2に係るメンテナンス判定装置10を示す構成図である。
図7】実施の形態2に係るメンテナンス判定装置10のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図8】実施の形態3に係るメンテナンス判定装置10を示す構成図である。
図9】実施の形態3に係るメンテナンス判定装置10のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図10】実施の形態4に係るメンテナンス判定装置10を示す構成図である。
図11】実施の形態4に係るメンテナンス判定装置10のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示をより詳細に説明するために、本開示を実施するための形態について、添付の図面に従って説明する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るメンテナンス判定装置10を示す構成図である。
図2は、実施の形態1に係るメンテナンス判定装置10のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図1に示すメンテナンス判定装置10は、振動データ収集部11、劣化度算出部12、判定部13及び判定結果送信部14を備えている。
【0011】
電動車椅子1は、メンテナンス判定装置10によるメンテナンスの必要性の判定対象である。
振動センサ2は、電動車椅子1に搭載されている。
振動センサ2は、電動車椅子1の振動を計測し、電動車椅子1の振動を示す振動データを送信機3に出力する。
送信機3は、電動車椅子1に搭載されている。
送信機3は、電動車椅子1の識別情報及び振動センサ2から出力された振動データのそれぞれを、ネットワーク4を介して、メンテナンス判定装置10に送信する。
ネットワーク4は、例えば、インターネット、WAN(Wide Area Network) 又は、LAN(Loca Area Network)によって実現される。
【0012】
図1に示すメンテナンス判定装置10では、送信機3が振動データをメンテナンス判定装置10に送信している。しかし、これは一例に過ぎず、例えば、振動センサ2が通信機能を備え、振動センサ2が振動データをメンテナンス判定装置10に送信するようにしてもよい。
【0013】
振動データ収集部11は、例えば、図2に示す振動データ収集回路21によって実現される。
振動データ収集部11は、送信機3から送信された、電動車椅子1の識別情報及び振動データのそれぞれを収集する。
振動データ収集部11は、電動車椅子1の識別情報を判定結果送信部14に出力し、振動データを劣化度算出部12に出力する。
【0014】
劣化度算出部12は、例えば、図2に示す劣化度算出回路22によって実現される。
劣化度算出部12は、振動データ収集部11により収集された振動データに基づいて、電動車椅子1の劣化度を算出する。
劣化度算出部12は、電動車椅子1の劣化度を示す劣化情報を判定部13に出力する。
【0015】
判定部13は、例えば、図2に示す判定回路23によって実現される。
判定部13は、劣化度算出部12により算出された劣化度に基づいて、電動車椅子1のメンテナンスが必要であるか否かを判定する。
判定部13は、判定結果を判定結果送信部14に出力する。
【0016】
判定結果送信部14は、例えば、図2に示す判定結果送信回路24によって実現される。
判定結果送信部14は、振動データ収集部11から電動車椅子1の識別情報を取得し、判定部13から判定結果を取得する。
判定結果送信部14は、電動車椅子1の識別情報と判定部13の判定結果とを含む判定結果信号を、ネットワーク4を介して、例えば、電動車椅子1のレンタル業務を行っているレンタル会社のサーバ装置5に送信する。
【0017】
サーバ装置5は、例えば、電動車椅子1のレンタル業務を行うレンタル会社に設置されている。
サーバ装置5は、レンタル中の電動車椅子1を管理するための装置である。
サーバ装置5は、メンテナンス判定装置10の判定結果送信部14から送信された判定結果信号を受信する。
サーバ装置5は、判定結果信号に含まれている、電動車椅子1の識別情報と判定部13の判定結果とに基づいて、レンタル中の1つ以上の電動車椅子1の中で、メンテナンスが必要な電動車椅子1を特定する。
【0018】
図1では、メンテナンス判定装置10の構成要素である振動データ収集部11、劣化度算出部12、判定部13及び判定結果送信部14のそれぞれが、図2に示すような専用のハードウェアによって実現されるものを想定している。即ち、メンテナンス判定装置10が、振動データ収集回路21、劣化度算出回路22、判定回路23及び判定結果送信回路24によって実現されるものを想定している。
振動データ収集回路21、劣化度算出回路22、判定回路23及び判定結果送信回路24のそれぞれは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
【0019】
メンテナンス判定装置10の構成要素は、専用のハードウェアによって実現されるものに限るものではなく、メンテナンス判定装置10が、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現されるものであってもよい。
ソフトウェア又はファームウェアは、プログラムとして、コンピュータのメモリに格納される。コンピュータは、プログラムを実行するハードウェアを意味し、例えば、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、あるいは、DSP(Digital Signal Processor)が該当する。
【0020】
図3は、メンテナンス判定装置10が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合のコンピュータのハードウェア構成図である。
メンテナンス判定装置10が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合、振動データ収集部11、劣化度算出部12、判定部13及び判定結果送信部14におけるそれぞれの処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムがメモリ31に格納される。そして、コンピュータのプロセッサ32がメモリ31に格納されているプログラムを実行する。
【0021】
また、図2では、メンテナンス判定装置10の構成要素のそれぞれが専用のハードウェアによって実現される例を示し、図3では、メンテナンス判定装置10がソフトウェア又はファームウェア等によって実現される例を示している。しかし、これは一例に過ぎず、メンテナンス判定装置10における一部の構成要素が専用のハードウェアによって実現され、残りの構成要素がソフトウェア又はファームウェア等によって実現されるものであってもよい。
【0022】
次に、図1に示すメンテナンス判定装置10の動作について説明する。
図4は、メンテナンス判定装置10の処理手順であるメンテナンス判定方法を示すフローチャートである。
振動センサ2は、例えば、電動車椅子1の電源が入っている期間中、電動車椅子1の振動を計測する。電動車椅子1の電源が入っている期間は、電動車椅子1が使用されている期間に相当する。
振動センサ2は、電動車椅子1の振動を示す振動データを送信機3に出力する。振動データは、例えば、振動の振幅変化を示す時間波形である。
図5は、振動センサ2から出力された振動データの一例を示す説明図である。
図5において、横軸は時刻を示し、縦軸は振動の振幅を示している。Th1は、第1の振幅閾値であり、Th2は、第2の振幅閾値である。
送信機3は、電動車椅子1の識別情報及び振動センサ2から出力された振動データのそれぞれを、ネットワーク4を介して、メンテナンス判定装置10に送信する。
【0023】
メンテナンス判定装置10の振動データ収集部11は、送信機3から送信された電動車椅子1の識別情報と、送信機3から送信された振動データとを収集する(図4のステップST1)。
振動データ収集部11は、電動車椅子1の識別情報を判定結果送信部14に出力し、振動データを劣化度算出部12に出力する。
【0024】
劣化度算出部12は、振動データ収集部11から、振動データを取得する。
劣化度算出部12は、振動データに基づいて、電動車椅子1の劣化度Dを算出する(図4のステップST2)。
劣化度算出部12は、電動車椅子1の劣化度Dを示す劣化情報を判定部13に出力する。
【0025】
以下、劣化度算出部12による劣化度Dの算出例を具体的に説明する。
例えば、電動車椅子1のタイヤ及び電動車椅子1の駆動伝達系のそれぞれは、電動車椅子1の振動によって劣化が生じる。また、電動車椅子1に生じている振動が大きいほど、大きな劣化が生じる。駆動伝達系には、電動車椅子1の車軸のほか、サスペンション等が含まれる。
【0026】
劣化度算出部12の内部メモリには、複数の振幅閾値が格納されている。
ここでは、説明の便宜上、第1の振幅閾値Th1及び第2の振幅閾値のそれぞれが内部メモリに格納されているものとする。Th1<Th2である。ただし、これは一例に過ぎず、第1の振幅閾値Th1のみが内部メモリに格納されていてもよいし、3つ以上の振幅閾値Thが内部メモリに格納されていてもよい。
第1の振幅閾値Th1及び第2の振幅閾値のそれぞれが内部メモリに格納されている場合、過去に、第1の振幅閾値Th1以上であり、かつ、第2の振幅閾値Th2よりも小さな振幅の振動を生じた回数NT1が内部メモリに格納されている。また、過去に、第2の振幅閾値Th2以上の振幅の振動を生じた回数NT2が内部メモリに格納されている。
回数NT1は、後述する振動の振幅vaが、過去に、Th1≦va<Th2を満足した回数である。回数NT2は、振動の振幅vaが、過去に、Th2≦vaを満足した回数である。
【0027】
劣化度算出部12は、振動データ収集部11から、振動データを取得する毎に、当該振動データを解析して、振幅判定時刻t(n=0,・・・,N-1)における振動の振幅vaを特定する。Nは、2以上の整数である。
振動データ収集部11から取得した振動データが、例えば、計測時間が10分間の振動データであって、N=10であれば、劣化度算出部12は、振動データの計測が開始された時刻である振幅判定時刻tの振動の振幅vaを特定し、計測が開始されてから1分後の振幅判定時刻tの振動の振幅vaを特定する。また、同様に、劣化度算出部12は、計測が開始されてからn(n=2,3,・・・,9)分後の振幅判定時刻tの振動の振幅vaを特定する。したがって、この場合、劣化度算出部12は、振幅判定時刻t(n=0,・・・,9)の振動の振幅vaを特定する。
【0028】
劣化度算出部12は、振動データの解析結果に基づいて、計測時間において、電動車椅子1に生じている振動の振幅が、第1の振幅閾値Th1以上であり、かつ、第2の振幅閾値Th2未満の回数ΔNT1を計数する。即ち、劣化度算出部12は、N個の振動の振幅va~vaN-1の中で、第1の振幅閾値Th1以上であって、第2の振幅閾値Th2未満である振幅の数を回数ΔNT1として計数する。
また、劣化度算出部12は、振動データの解析結果に基づいて、計測時間において、電動車椅子1に生じている振動の振幅が、第2の振幅閾値Th2以上の回数ΔNT2を計数する。即ち、劣化度算出部12は、N個の振動の振幅va~vaN-1の中で、第2の振幅閾値Th2以上である振幅の数を回数ΔNT2として計数する。
【0029】
劣化度算出部12は、以下の式(1)に示すように、計数したΔNT1を内部メモリに格納している回数NT1に加算することで、回数NT1を更新する。
NT1←NT1+ΔNT1 (1)
また、劣化度算出部12は、以下の式(2)に示すように、計数したΔNT2を内部メモリに格納している回数NT2に加算することで、回数NT2を更新する。
NT2←NT2+ΔNT2 (2)
【0030】
劣化度算出部12は、例えば、以下の式(3)に示すように、更新後の回数NT1と、更新後の回数NT2とを用いて、電動車椅子1の劣化度Dを算出する。
D=(K1×NT1)+(K2×NT2) (3)
式(3)において、K1は、第1の劣化係数であり、K2は、第2の劣化係数である。0<K1<K2である。
劣化度算出部12は、電動車椅子1の劣化度Dを示す劣化情報を判定部13に出力する。
【0031】
図1に示すメンテナンス判定装置10では、劣化度算出部12が、式(3)に従って劣化度Dを算出している。しかし、これは一例に過ぎず、振動データと教師データとを取得して、電動車椅子1の劣化度を学習している学習モデルを用意する。教師データは、振動データが示す振動が電動車椅子1に与える劣化の度合を示すデータである。そして、劣化度算出部12が、振動データ収集部11から取得した振動データを学習モデルに与えて、学習モデルから、電動車椅子1の劣化度Dを取得するようにしてもよい。
ここでの学習モデルは、振動データと教師データとを取得して、電動車椅子1の劣化度を学習している。しかし、これは一例に過ぎず、学習モデルは、振動データ及び教師データのほかに、電動車椅子1のメンテナンスデータと、振動の時系列データとを取得して、電動車椅子1の劣化度を学習しているものであってもよい。メンテナンスデータは、実際に電動車椅子1のメンテナンスが行われた際の電動車椅子1の状態を示すデータである。振動の時系列データは、経年劣化によって、電動車椅子1自体の振動が大きくなった場合の電動車椅子1の振動変化を示すデータである。電動車椅子1のメンテナンスデータと、振動の時系列データとが学習モデルに与えられる場合、教師データは、振動データが示す振動と、メンテナンスデータが示す電動車椅子1の状態と、振動の時系列データが示す電動車椅子1自体の振動とが、電動車椅子1に与える劣化の度合を示すデータである。
【0032】
判定部13は、劣化度算出部12から、劣化情報を取得する。
判定部13は、劣化情報が示す劣化度Dに基づいて、電動車椅子1のメンテナンスが必要であるか否かを判定する(図4のステップST3)。
例えば、判定部13は、劣化情報が示す劣化度Dが、劣化度閾値Dth以上であれば、電動車椅子1のメンテナンスが必要であると判定し、劣化情報が示す劣化度Dが、劣化度閾値Dth未満であれば、電動車椅子1のメンテナンスが必要でないと判定する。劣化度閾値Dthは、判定部13の内部メモリに格納されていてもよいし、メンテナンス判定装置10の外部から与えられるものであってもよい。
判定部13は、判定結果を判定結果送信部14に出力する。
なお、判定部13の判定結果は、電動車椅子1のメンテナンスが必要であるか否かを示すものであればよく、メンテナンスが必要であるか否かが、例えば、メンテナンスの必要の度合で表されているものであってもよい。
【0033】
図1に示すメンテナンス判定装置10では、判定部13が、劣化度Dと劣化度閾値Dthとを比較することで、電動車椅子1のメンテナンスが必要であるか否かを判定している。しかし、これは一例に過ぎず、劣化情報と教師データとを取得して、メンテナンスが必要であるか否かを学習している学習モデルを用意する。教師データは、メンテナンスが必要である旨を示すデータ、又は、メンテナンスが必要でない旨を示すデータである。そして、判定部13が、劣化度算出部12から取得した劣化情報を学習モデルに与えて、学習モデルから、メンテナンスが必要であるか否かを示す判定結果を取得するようにしてもよい。
【0034】
判定結果送信部14は、振動データ収集部11から電動車椅子1の識別情報を取得し、判定部13から判定結果を取得する。
判定結果送信部14は、電動車椅子1の識別情報と判定部13の判定結果とを含む判定結果信号を、ネットワーク4を介して、例えば、電動車椅子1のレンタル業務を行っているレンタル会社のサーバ装置5に送信する(図4のステップST4)。
図1に示すメンテナンス判定装置10では、判定結果送信部14が、判定結果信号をレンタル会社のサーバ装置5に送信している。しかし、これは一例に過ぎず、判定結果送信部14が、判定結果信号を、例えば、電動車椅子1の利用者が保持している携帯端末、当該利用者の家族が保持している携帯端末、又は、当該利用者が入居している施設のサーバ装置に送信するようにしてもよい。
【0035】
サーバ装置5は、メンテナンス判定装置10の判定結果送信部14から送信された判定結果信号を受信する。
サーバ装置5は、判定結果信号に含まれている、電動車椅子1の識別情報と判定部13の判定結果とに基づいて、レンタル中の1つ以上の電動車椅子1の中で、メンテナンスが必要な電動車椅子1を特定する。
メンテナンスが必要な電動車椅子1を示す識別情報は、例えば、サーバ装置5のディスプレイに表示される。これにより、レンタル会社の社員等は、レンタル中の1つ以上の電動車椅子1の中で、メンテナンスが必要な電動車椅子1を認識することができる。
レンタル会社は、電動車椅子1のメンテナンス回数に応じて、例えば、次回のレンタル契約更新時における電動車椅子1のレンタル料、あるいは、レンタル契約終了後における電動車椅子1の売却価格を設定することが可能になる。
【0036】
以上の実施の形態1では、電動車椅子1に搭載されている振動センサ2から、電動車椅子1の振動を示す振動データを収集する振動データ収集部11と、振動データ収集部11により収集された振動データに基づいて、電動車椅子1の劣化度を算出する劣化度算出部12と、劣化度算出部12により算出された劣化度に基づいて、電動車椅子1のメンテナンスが必要であるか否かを判定する判定部13とを備えるように、メンテナンス判定装置10を構成した。したがって、メンテナンス判定装置10は、電動車椅子1の状態がメンテナンスの必要な状態であることを検知できる。
【0037】
実施の形態2.
実施の形態2では、位置データ収集部15及び通過回数計数部16を備えているメンテナンス判定装置10について説明する。
【0038】
図6は、実施の形態2に係るメンテナンス判定装置10を示す構成図である。図6において、図1と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
図7は、実施の形態2に係るメンテナンス判定装置10のハードウェアを示すハードウェア構成図である。図7において、図2と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
図6に示すメンテナンス判定装置10は、振動データ収集部11、位置データ収集部15、通過回数計数部16、劣化度算出部17、判定部13及び判定結果送信部14を備えている。
【0039】
GPS(Global Positioning System)センサ6は、電動車椅子1に搭載されている。
GPSセンサ6は、GPS衛星から送信されたGPS信号を受信し、GPS信号に基づいて、電動車椅子1の位置を算出する。
GPSセンサ6は、電動車椅子1の位置を示す位置データを送信機3に出力する。
送信機3は、電動車椅子1の識別情報、振動センサ2から出力された振動データ及びGPSセンサ6から出力された位置データのそれぞれを、ネットワーク4を介して、メンテナンス判定装置10に送信する。
図6に示すメンテナンス判定装置10では、送信機3が位置データをメンテナンス判定装置10に送信している。しかし、これは一例に過ぎず、例えば、GPSセンサ6が通信機能を備え、GPSセンサ6が振動データをメンテナンス判定装置10に送信するようにしてもよい。
【0040】
位置データ収集部15は、例えば、図7に示す位置データ収集回路25によって実現される。
位置データ収集部15は、送信機3から送信された位置データを収集する。
位置データ収集部15は、位置データを通過回数計数部16に出力する。
【0041】
通過回数計数部16は、例えば、図7に示す通過回数計数回路26によって実現される。
通過回数計数部16は、位置データ収集部15により収集された位置データに基づいて、電動車椅子1が監視領域を通過した回数を計数する。監視領域については後述する。
通過回数計数部16は、電動車椅子1が監視領域を通過した回数を劣化度算出部17に出力する。
【0042】
劣化度算出部17は、例えば、図7に示す劣化度算出回路27によって実現される。
劣化度算出部17は、図1に示す劣化度算出部12と同様に、振動データ収集部11により収集された振動データに基づいて、電動車椅子1の劣化度を算出する。
劣化度算出部17は、通過回数計数部16により計数された回数に基づいて、算出した劣化度を補正する。
劣化度算出部17は、補正後の劣化度を示す劣化情報を判定部13に出力する。
【0043】
図6では、メンテナンス判定装置10の構成要素である振動データ収集部11、位置データ収集部15、通過回数計数部16、劣化度算出部17、判定部13及び判定結果送信部14のそれぞれが、図7に示すような専用のハードウェアによって実現されるものを想定している。即ち、メンテナンス判定装置10が、振動データ収集回路21、位置データ収集回路25、通過回数計数回路26、劣化度算出回路27、判定回路23及び判定結果送信回路24によって実現されるものを想定している。
振動データ収集回路21、位置データ収集回路25、通過回数計数回路26、劣化度算出回路27、判定回路23及び判定結果送信回路24のそれぞれは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
【0044】
メンテナンス判定装置10の構成要素は、専用のハードウェアによって実現されるものに限るものではなく、メンテナンス判定装置10が、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現されるものであってもよい。
メンテナンス判定装置10が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合、振動データ収集部11、位置データ収集部15、通過回数計数部16、劣化度算出部17、判定部13及び判定結果送信部14におけるそれぞれの処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムが図3に示すメモリ31に格納される。そして、図3に示すプロセッサ32がメモリ31に格納されているプログラムを実行する。
【0045】
また、図7では、メンテナンス判定装置10の構成要素のそれぞれが専用のハードウェアによって実現される例を示し、図3では、メンテナンス判定装置10がソフトウェア又はファームウェア等によって実現される例を示している。しかし、これは一例に過ぎず、メンテナンス判定装置10における一部の構成要素が専用のハードウェアによって実現され、残りの構成要素がソフトウェア又はファームウェア等によって実現されるものであってもよい。
【0046】
次に、図6に示すメンテナンス判定装置10の動作について説明する。
振動センサ2は、例えば、電動車椅子1の電源が入っている期間中、電動車椅子1の振動を計測する。
振動センサ2は、電動車椅子1の振動を示す振動データを送信機3に出力する。
【0047】
GPSセンサ6は、例えば、電動車椅子1の電源が入っている期間中、GPS衛星から送信されたGPS信号を受信する。
GPSセンサ6は、GPS信号に基づいて、電動車椅子1の位置を算出する。GPS信号に基づく位置の算出処理自体は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
GPSセンサ6は、電動車椅子1の位置を示す位置データを送信機3に出力する。
送信機3は、電動車椅子1の識別情報、振動センサ2から出力された振動データ及びGPSセンサ6から出力された位置データのそれぞれを、ネットワーク4を介して、メンテナンス判定装置10に送信する。
【0048】
メンテナンス判定装置10の振動データ収集部11は、送信機3から送信された電動車椅子1の識別情報と、送信機3から送信された振動データとを収集する。
振動データ収集部11は、電動車椅子1の識別情報を判定結果送信部14に出力し、振動データを劣化度算出部17に出力する。
位置データ収集部15は、送信機3から送信された位置データを収集し、位置データを通過回数計数部16に出力する。
【0049】
通過回数計数部16の内部メモリには、監視領域の範囲を示す地図データが記憶されている。
監視領域は、電動車椅子1が走行した場合、電動車椅子1の振動が大きくなることが想定される領域である。監視領域としては、例えば、アスファルトの舗装がなされていない砂利道のほか、工事中の道路、電動車椅子1が走行できる程度の小さな段差がある道路等が考えられる。
電動車椅子1が監視領域を走行しても、電動車椅子1に生じる振動の振幅が、第1の振幅閾値Th1、あるいは、第2の振幅閾値Th2を上回るとは限らない。しかし、電動車椅子1が監視領域を走行することで、電動車椅子1に大小の振動が生じて、電動車椅子1が劣化することがある。
【0050】
通過回数計数部16は、位置データ収集部15から、位置データを取得する。
通過回数計数部16は、位置データに基づいて、電動車椅子1が監視領域を通過した回数PCを計数する。
即ち、通過回数計数部16は、位置データが示す電動車椅子1の位置が、地図データが示す監視領域の範囲に含まれているか否かを判定する。そして、通過回数計数部16は、電動車椅子1の移動に伴う、判定結果の変化に基づいて、電動車椅子1が監視領域に進入してから、監視領域から電動車椅子1が出た回数を、電動車椅子1が監視領域を通過した回数PCとして計測する。
通過回数計数部16は、電動車椅子1が監視領域を通過した回数PCを劣化度算出部17に出力する。
【0051】
劣化度算出部17は、振動データ収集部11から、振動データを取得する。
劣化度算出部17は、図1に示す劣化度算出部12と同様に、振動データに基づいて、電動車椅子1の劣化度Dを算出する。
劣化度算出部17は、通過回数計数部16から、電動車椅子1が監視領域を通過した回数PCを取得する。
劣化度算出部17は、例えば、以下の式(4)に示すように、電動車椅子1が監視領域を通過した回数PCに基づいて、算出した劣化度Dを補正する。
D’=D+(K3×PC) (4)
式(4)において、K3は、第3の劣化係数であり、0よりも大きい値である。複数の監視領域がある場合、第3の劣化係数K3は、全ての監視領域において、同一の係数であってもよいし、監視領域毎に異なる係数であってもよい。
劣化度算出部17は、補正後の劣化度D’を示す劣化情報を判定部13に出力する。
【0052】
図6に示すメンテナンス判定装置10では、劣化度算出部17が、監視領域を通過した回数PCに基づいて、算出した劣化度Dを補正している。しかし、これは一例に過ぎず、振動データと、監視領域を通過した回数と、教師データとを取得して、電動車椅子1の劣化度を学習している学習モデルを用意する。教師データは、振動データが示す振動及び監視領域を通過した回数のそれぞれが電動車椅子1に与える劣化の度合を示すデータである。そして、劣化度算出部17が、振動データ収集部11から取得した振動データと、通過回数計数部16から取得した回数PCとを学習モデルに与えて、学習モデルから、電動車椅子1の劣化度Dを取得するようにしてもよい。
【0053】
判定部13は、劣化度算出部17から、劣化情報を取得する。
判定部13は、劣化情報が示す劣化度Dに基づいて、電動車椅子1のメンテナンスが必要であるか否かを判定する(図4のステップST3)。
例えば、判定部13は、劣化情報が示す劣化度D’が、劣化度閾値Dth以上であれば、電動車椅子1のメンテナンスが必要であると判定し、劣化情報が示す劣化度D’が、劣化度閾値Dth未満であれば、電動車椅子1のメンテナンスが必要でないと判定する。
判定部13は、判定結果を判定結果送信部14に出力する。
【0054】
判定結果送信部14は、振動データ収集部11から電動車椅子1の識別情報を取得し、判定部13から判定結果を取得する。
判定結果送信部14は、電動車椅子1の識別情報と判定部13の判定結果とを含む判定結果信号を、ネットワーク4を介して、例えば、電動車椅子1のレンタル業務を行っているレンタル会社のサーバ装置5に送信する。
【0055】
図6に示すメンテナンス判定装置10では、判定結果送信部14が、電動車椅子1の識別情報と判定部13の判定結果とを含む判定結果信号をサーバ装置5に送信している。しかし、これは一例に過ぎず、判定結果送信部14は、位置データ収集部15から位置データを取得して、位置データを判定結果信号に含め、電動車椅子1の識別情報と判定部13の判定結果と位置データとを含む判定結果信号をサーバ装置5に送信するようにしてもよい。この場合、サーバ装置5は、判定結果信号に含まれている位置データを参照することで、電動車椅子1が、どのような所を走行しているかを把握することができる。また、電動車椅子1が、どのように使用されているかを把握することができる。また、電動車椅子1の盗難、又は、電動車椅子1の紛失の防止に役立てることができる。
【0056】
以上の実施の形態2では、電動車椅子1に搭載されているGPSセンサ6から、電動車椅子1の位置を示す位置データを収集する位置データ収集部15と、位置データ収集部15により収集された位置データに基づいて、電動車椅子1が監視領域を通過した回数を計数する通過回数計数部16とを備え、劣化度算出部17が、通過回数計数部16により計数された回数に基づいて、電動車椅子1の劣化度を補正するように、図6に示すメンテナンス判定装置10を構成した。したがって、図6に示すメンテナンス判定装置10は、図1に示すメンテナンス判定装置10よりも、電動車椅子1の状態がメンテナンスの必要な状態であることを高精度に検知できる。
【0057】
実施の形態3.
実施の形態3では、気象情報収集部18及び雨天使用時間算出部19を備えているメンテナンス判定装置10について説明する。
【0058】
図8は、実施の形態3に係るメンテナンス判定装置10を示す構成図である。図8において、図1及び図6と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
図9は、実施の形態3に係るメンテナンス判定装置10のハードウェアを示すハードウェア構成図である。図9おいて、図2及び図7と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
図8に示すメンテナンス判定装置10は、振動データ収集部11、気象情報収集部18、雨天使用時間算出部19、劣化度算出部20、判定部13及び判定結果送信部14を備えている。
【0059】
気象情報収集部18は、例えば、図9に示す気象情報収集回路28によって実現される。
気象情報収集部18は、例えば、気象情報を配信している気象サイトから、ネットワーク4を介して、電動車椅子1が使用されているときの天候を示す気象情報を収集する。
気象情報収集部18は、気象情報を雨天使用時間算出部19に出力する。
【0060】
雨天使用時間算出部19は、例えば、図9に示す雨天使用時間算出回路29によって実現される。
雨天使用時間算出部19は、気象情報収集部18により収集された気象情報から、電動車椅子1が使用されているときの天候を特定し、雨天時における電動車椅子1の使用時間を算出する。
雨天使用時間算出部19は、雨天時における電動車椅子1の使用時間を劣化度算出部20に出力する。
【0061】
劣化度算出部20は、例えば、図9に示す劣化度算出回路30によって実現される。
劣化度算出部20は、図1に示す劣化度算出部12と同様に、振動データ収集部11により収集された振動データに基づいて、電動車椅子1の劣化度を算出する。
劣化度算出部20は、雨天使用時間算出部19により算出された使用時間に基づいて、算出した劣化度を補正する。
劣化度算出部20は、補正後の劣化度を示す劣化情報を判定部13に出力する。
【0062】
図8に示すメンテナンス判定装置10では、気象情報収集部18、雨天使用時間算出部19及び劣化度算出部20が、図1に示すメンテナンス判定装置10に適用されている。しかし、これは一例に過ぎず、気象情報収集部18、雨天使用時間算出部19及び劣化度算出部20が、図6に示すメンテナンス判定装置10に適用されているものであってもよい。
【0063】
図8では、メンテナンス判定装置10の構成要素である振動データ収集部11、気象情報収集部18、雨天使用時間算出部19、劣化度算出部20、判定部13及び判定結果送信部14のそれぞれが、図9に示すような専用のハードウェアによって実現されるものを想定している。即ち、メンテナンス判定装置10が、振動データ収集回路21、気象情報収集回路28、雨天使用時間算出回路29、劣化度算出回路30、判定回路23及び判定結果送信回路24によって実現されるものを想定している。
振動データ収集回路21、気象情報収集回路28、雨天使用時間算出回路29、劣化度算出回路30、判定回路23及び判定結果送信回路24のそれぞれは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
【0064】
メンテナンス判定装置10の構成要素は、専用のハードウェアによって実現されるものに限るものではなく、メンテナンス判定装置10が、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現されるものであってもよい。
メンテナンス判定装置10が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合、振動データ収集部11、気象情報収集部18、雨天使用時間算出部19、劣化度算出部20、判定部13及び判定結果送信部14におけるそれぞれの処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムが図3に示すメモリ31に格納される。そして、図3に示すプロセッサ32がメモリ31に格納されているプログラムを実行する。
【0065】
また、図9では、メンテナンス判定装置10の構成要素のそれぞれが専用のハードウェアによって実現される例を示し、図3では、メンテナンス判定装置10がソフトウェア又はファームウェア等によって実現される例を示している。しかし、これは一例に過ぎず、メンテナンス判定装置10における一部の構成要素が専用のハードウェアによって実現され、残りの構成要素がソフトウェア又はファームウェア等によって実現されるものであってもよい。
【0066】
次に、図8に示すメンテナンス判定装置10の動作について説明する。
振動センサ2は、例えば、電動車椅子1の電源が入っている期間中、電動車椅子1の振動を計測する。
振動センサ2は、電動車椅子1の振動を示す振動データを送信機3に出力する。
送信機3は、電動車椅子1の識別情報及び振動センサ2から出力された振動データのそれぞれを、ネットワーク4を介して、メンテナンス判定装置10に送信する。
【0067】
メンテナンス判定装置10の振動データ収集部11は、送信機3から送信された電動車椅子1の識別情報と、送信機3から送信された振動データとを収集する。
振動データ収集部11は、電動車椅子1の識別情報を判定結果送信部14に出力し、振動データを劣化度算出部20に出力する。
気象情報収集部18は、例えば、気象情報を配信している気象サイトから、ネットワーク4を介して、電動車椅子1が使用されているときの天候を示す気象情報を収集する。
電動車椅子1が使用される地域が気象情報収集部18に事前に設定されていれば、気象情報収集部18は、事前に設定されている地域を示すデータを気象サイトに送信することで、気象サイトから、当該地域の天候を示す気象情報を収集する。
図6に示すように、電動車椅子1が、GPSセンサ6を備えており、メンテナンス判定装置10が、位置データ収集部15を備えていれば、気象情報収集部18は、電動車椅子1の位置を示す位置データを気象サイトに送信することで、気象サイトから、電動車椅子1が存在している地域の天候を示す気象情報を収集するようにしてもよい。
気象情報収集部18は、収集した気象情報を雨天使用時間算出部19に出力する。
【0068】
雨天使用時間算出部19は、気象情報収集部18から、気象情報を取得する。
雨天使用時間算出部19は、気象情報に基づいて、電動車椅子1が使用されているときの天候を特定する。
雨天使用時間算出部19は、特定した天候から、雨天時における電動車椅子1の使用時間RTを算出する。雨天時は、雨が降っているときに限るものではなく、雪が降っているとき、霧が発生しているときも、雨天時に含まれるものとしてもよい。
雨天時における電動車椅子1の使用時間RTは、例えば、前回のメンテナンス時から現時点までの累積時間である。
雨天使用時間算出部19は、雨天時における電動車椅子1の使用時間RTを劣化度算出部20に出力する。
【0069】
劣化度算出部20は、振動データ収集部11から、振動データを取得する。
劣化度算出部20は、図1に示す劣化度算出部12と同様に、振動データに基づいて、電動車椅子1の劣化度Dを算出する。
劣化度算出部20は、雨天使用時間算出部19から、雨天時における電動車椅子1の使用時間RTを取得する。
劣化度算出部20は、例えば、以下の式(5)に示すように、雨天時における電動車椅子1の使用時間RTに基づいて、算出した劣化度Dを補正する。
D”=D+(K4×RT) (5)
式(5)において、K4は、第4の劣化係数であり、0よりも大きい値である。第4の劣化係数K4は、雨が降っているときと、雪が降っているときと、霧が発生しているときとで、同じ係数であってもよいし、互いに異なる係数であってもよい。
劣化度算出部20は、補正後の劣化度D”を示す劣化情報を判定部13に出力する。
【0070】
図8示すメンテナンス判定装置10では、劣化度算出部20が、雨天時における電動車椅子1の使用時間RTに基づいて、算出した劣化度Dを補正している。しかし、これは一例に過ぎず、振動データと、雨天時における電動車椅子1の使用時間と、教師データとを取得して、電動車椅子1の劣化度を学習している学習モデルを用意する。教師データは、振動データが示す振動及び雨天時における電動車椅子1の使用時間のそれぞれが電動車椅子1に与える劣化の度合を示すデータである。そして、劣化度算出部20が、振動データ収集部11から取得した振動データと、雨天使用時間算出部19から取得した使用時間RTとを学習モデルに与えて、学習モデルから、電動車椅子1の劣化度Dを取得するようにしてもよい。
【0071】
判定部13は、劣化度算出部20から、劣化情報を取得する。
判定部13は、劣化情報が示す劣化度Dに基づいて、電動車椅子1のメンテナンスが必要であるか否かを判定する。
例えば、判定部13は、劣化情報が示す劣化度D”が、劣化度閾値Dth以上であれば、電動車椅子1のメンテナンスが必要であると判定し、劣化情報が示す劣化度D”が、劣化度閾値Dth未満であれば、電動車椅子1のメンテナンスが必要でないと判定する。
判定部13は、判定結果を判定結果送信部14に出力する。
【0072】
判定結果送信部14は、振動データ収集部11から電動車椅子1の識別情報を取得し、判定部13から判定結果を取得する。
判定結果送信部14は、電動車椅子1の識別情報と判定部13の判定結果とを含む判定結果信号を、ネットワーク4を介して、例えば、電動車椅子1のレンタル業務を行っているレンタル会社のサーバ装置5に送信する。
【0073】
以上の実施の形態3では、電動車椅子1が使用されているときの天候を示す気象情報を収集する気象情報収集部18と、気象情報収集部18により収集された気象情報から、電動車椅子1が使用されているときの天候を特定し、雨天時における電動車椅子1の使用時間を算出する雨天使用時間算出部19とを備え、劣化度算出部20が、雨天使用時間算出部19により算出された使用時間に基づいて、電動車椅子1の劣化度を補正するように、図8に示すメンテナンス判定装置10を構成した。したがって、図8に示すメンテナンス判定装置10は、図1に示すメンテナンス判定装置10よりも、電動車椅子1の状態がメンテナンスの必要な状態であることを高精度に検知できる。
【0074】
実施の形態4.
実施の形態4では、バッテリーデータ収集部41及び判定部42を備えているメンテナンス判定装置10について説明する。
【0075】
図10は、実施の形態4に係るメンテナンス判定装置10を示す構成図である。図10において、図1図6及び図8と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
図11は、実施の形態4に係るメンテナンス判定装置10のハードウェアを示すハードウェア構成図である。図11において、図2図7及び図9と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
図10に示すメンテナンス判定装置10は、振動データ収集部11、劣化度算出部12、バッテリーデータ収集部41、判定部42及び判定結果送信部14を備えている。
【0076】
バッテリーセンサ7は、電動車椅子1に搭載されている。
バッテリーセンサ7は、電動車椅子1の駆動用バッテリーの状態を示すバッテリーデータを送信機3に出力する。
送信機3は、電動車椅子1の識別情報、振動センサ2から出力された振動データ及びバッテリーセンサ7から出力されたバッテリーデータのそれぞれを、ネットワーク4を介して、メンテナンス判定装置10に送信する。
図1に示すメンテナンス判定装置10では、送信機3がバッテリーデータをメンテナンス判定装置10に送信している。しかし、これは一例に過ぎず、例えば、バッテリーセンサ7が通信機能を備え、バッテリーセンサ7がバッテリーデータをメンテナンス判定装置10に送信するようにしてもよい。
【0077】
バッテリーデータ収集部41は、例えば、図11に示すバッテリーデータ収集回路51によって実現される。
バッテリーデータ収集部41は、送信機3から送信されたバッテリーデータを収集する。
バッテリーデータ収集部41は、バッテリーデータを判定部42に出力する。
【0078】
判定部42は、例えば、図11に示す判定回路52によって実現される。
判定部42は、劣化度算出部12により算出された劣化度及びバッテリーデータ収集部41により収集されたバッテリーデータのそれぞれに基づいて、電動車椅子1のメンテナンスが必要であるか否かを判定する。
判定部42は、判定結果を判定結果送信部14に出力する。
【0079】
図10に示すメンテナンス判定装置10では、バッテリーデータ収集部41及び判定部42が、図1に示すメンテナンス判定装置10に適用されている。しかし、これは一例に過ぎず、バッテリーデータ収集部41及び判定部42が、図6に示すメンテナンス判定装置10、又は、図8に示すメンテナンス判定装置10に適用されているものであってもよい。
【0080】
図10では、メンテナンス判定装置10の構成要素である振動データ収集部11、劣化度算出部12、バッテリーデータ収集部41、判定部42及び判定結果送信部14のそれぞれが、図11に示すような専用のハードウェアによって実現されるものを想定している。即ち、メンテナンス判定装置10が、振動データ収集回路21、劣化度算出回路22、バッテリーデータ収集回路51、判定回路52及び判定結果送信回路24によって実現されるものを想定している。
振動データ収集回路21、劣化度算出回路22、バッテリーデータ収集回路51、判定回路52及び判定結果送信回路24のそれぞれは、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又は、これらを組み合わせたものが該当する。
【0081】
メンテナンス判定装置10の構成要素は、専用のハードウェアによって実現されるものに限るものではなく、メンテナンス判定装置10が、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現されるものであってもよい。
メンテナンス判定装置10が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合、振動データ収集部11、劣化度算出部12、バッテリーデータ収集部41、判定部42及び判定結果送信部14におけるそれぞれの処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムが図3に示すメモリ31に格納される。そして、図3に示すプロセッサ32がメモリ31に格納されているプログラムを実行する。
【0082】
また、図11では、メンテナンス判定装置10の構成要素のそれぞれが専用のハードウェアによって実現される例を示し、図3では、メンテナンス判定装置10がソフトウェア又はファームウェア等によって実現される例を示している。しかし、これは一例に過ぎず、メンテナンス判定装置10における一部の構成要素が専用のハードウェアによって実現され、残りの構成要素がソフトウェア又はファームウェア等によって実現されるものであってもよい。
【0083】
次に、図10に示すメンテナンス判定装置10の動作について説明する。
バッテリーデータ収集部41及び判定部42以外は、図1に示すメンテナンス判定装置10と同様であるため、ここでは、主に、バッテリーデータ収集部41及び判定部42の動作について説明する。
【0084】
バッテリーセンサ7は、電動車椅子1の駆動用バッテリーの状態を示すバッテリーデータを送信機3に出力する。バッテリーデータは、駆動用バッテリーの状態として、駆動用バッテリーに充電されている電力量のほか、バッテリー液の残量等を示すデータである。
送信機3は、電動車椅子1の識別情報、振動センサ2から出力された振動データ及びバッテリーセンサ7から出力されたバッテリーデータのそれぞれを、ネットワーク4を介して、メンテナンス判定装置10に送信する。
【0085】
メンテナンス判定装置10のバッテリーデータ収集部41は、送信機3から送信されたバッテリーデータを収集する。
バッテリーデータ収集部41は、バッテリーデータを判定部42に出力する。
【0086】
判定部42は、劣化度算出部12から劣化情報を取得し、バッテリーデータ収集部41からバッテリーデータを取得する。
判定部42は、図1に示す判定部13と同様に、劣化情報が示す劣化度Dに基づいて、電動車椅子1のメンテナンスが必要であるか否かを判定する。
【0087】
また、判定部42は、バッテリーデータが駆動用バッテリーに充電されている電力量Pを示すデータであれば、電力量Pと電力閾値Pthとを比較する。電力閾値Pthは、判定部42の内部メモリに格納されていてもよいし、メンテナンス判定装置10の外部から与えられるものであってもよい。
判定部42は、電力量Pが電力閾値Pth未満であれば、電動車椅子1のメンテナンスが必要であると判定し、電力量Pが電力閾値Pth以上であれば、電動車椅子1のメンテナンスが必要でないと判定する。
ここでは、判定部42が、電力量Pと電力閾値Pthとを比較している。しかし、これは一例に過ぎず、判定部42が、電力量Pの時間当りの減少率ΔPを算出し、減少率ΔPと減少率閾値ΔPthとを比較するようにしてもよい。減少率閾値ΔPthは、判定部42の内部メモリに格納されていてもよいし、メンテナンス判定装置10の外部から与えられるものであってもよい。この場合、判定部42は、減少率ΔPが減少率閾値ΔPth以上であれば、電動車椅子1のメンテナンスが必要であると判定し、減少率ΔPが減少率閾値ΔPth未満であれば、電動車椅子1のメンテナンスが必要でないと判定する。
【0088】
判定部42は、バッテリーデータがバッテリー液の残量Bを示すデータであれば、残量Bと残量閾値Bthとを比較する。残量閾値Bthは、判定部42の内部メモリに格納されていてもよいし、メンテナンス判定装置10の外部から与えられるものであってもよい。
判定部42は、残量Bが残量閾値Bth未満であれば、電動車椅子1のメンテナンスが必要であると判定し、残量Bが残量閾値Bth以上であれば、電動車椅子1のメンテナンスが必要でないと判定する。
判定部42は、判定結果を判定結果送信部14に出力する。
【0089】
判定結果送信部14は、振動データ収集部11から電動車椅子1の識別情報を取得し、判定部42から判定結果を取得する。
判定結果送信部14は、電動車椅子1の識別情報と判定部42の判定結果とを含む判定結果信号を、ネットワーク4を介して、例えば、電動車椅子1のレンタル業務を行っているレンタル会社のサーバ装置5に送信する。
【0090】
サーバ装置5は、メンテナンス判定装置10の判定結果送信部14から送信された判定結果信号を受信する。
サーバ装置5は、判定結果信号に含まれている、電動車椅子1の識別情報と判定部42の判定結果とに基づいて、レンタル中の1つ以上の電動車椅子1の中で、メンテナンスが必要な電動車椅子1を特定する。
メンテナンスが必要な電動車椅子1を示す情報は、例えば、サーバ装置5のディスプレイに表示される。これにより、レンタル会社の社員等は、メンテナンスが必要な電動車椅子1を認識することができる。また、バッテリー交換の必要性を認識することができる。
【0091】
以上の実施の形態4では、電動車椅子1に搭載されているバッテリーセンサ7から、電動車椅子1の駆動用バッテリーの状態を示すバッテリーデータを収集するバッテリーデータ収集部41を備え、判定部42が、劣化度算出部12により算出された劣化度及びバッテリーデータ収集部41により収集されたバッテリーデータのそれぞれに基づいて、電動車椅子1のメンテナンスが必要であるか否かを判定するように、メンテナンス判定装置10を構成した。したがって、メンテナンス判定装置10は、電動車椅子1の状態がメンテナンスの必要な状態であることを検知できる。
【0092】
なお、本開示は、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 電動車椅子、2 振動センサ、3 送信機、4 ネットワーク、5 サーバ装置、6 GPSセンサ、7 バッテリーセンサ、10 メンテナンス判定装置、11 振動データ収集部、12 劣化度算出部、13 判定部、14 判定結果送信部、15 位置データ収集部、16 通過回数計数部、17 劣化度算出部、18 気象情報収集部、19 雨天使用時間算出部、20 劣化度算出部、21 振動データ収集回路、22 劣化度算出回路、23 判定回路、24 判定結果送信回路、25 位置データ収集回路、26 通過回数計数回路、27 劣化度算出回路、28 気象情報収集回路、29 雨天使用時間算出回路、30 劣化度算出回路、31 メモリ、32 プロセッサ、41 バッテリーデータ収集部、42 判定部、51 バッテリーデータ収集回路、52 判定回路。
図1
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