(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097226
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20230630BHJP
B60C 13/00 20060101ALI20230630BHJP
B60C 5/14 20060101ALI20230630BHJP
G06Q 10/20 20230101ALI20230630BHJP
G01N 17/00 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
B60C19/00 G
B60C13/00 C
B60C5/14 Z
G06Q10/00 300
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213473
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】山本 拓
(72)【発明者】
【氏名】森口 昭
【テーマコード(参考)】
2G050
3D131
5L049
【Fターム(参考)】
2G050AA02
2G050BA05
2G050DA01
2G050EB07
3D131BB01
3D131BB18
3D131BC09
3D131CB11
3D131GA01
3D131LA20
3D131LA24
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】劣化状態を高い精度で判定することを可能にするインジケータ機能を有するタイヤが提供される。
【解決手段】タイヤ(30)は、劣化状態を判定するために劣化判定モデル及び色変化データベースを備える劣化状態判定装置によって色成分が抽出されるインジケータ部(31a)と、インジケータ部(31a)が付される本体部(71)と、を備え、インジケータ部(31a)は、劣化因子に対する感度が異なる複数の色が異なる位置に塗布されたカラーパターン及び識別子が印刷される媒体層(37)を備える。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
劣化状態を判定するために劣化判定モデル及び色変化データベースを備える劣化状態判定装置によって色成分が抽出されるインジケータ部と、
前記インジケータ部が付される本体部と、を備え、
前記インジケータ部は、劣化因子に対する感度が異なる複数の色が異なる位置に塗布されたカラーパターン及び識別子が印刷される媒体層を備える、タイヤ。
【請求項2】
前記インジケータ部は、前記媒体層に対して前記本体部から離れた側に設けられ、少なくとも紫外線の透過を抑制する保護層を備える、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記インジケータ部は、前記媒体層と前記本体部との間に設けられ、インクの浸透を防止する浸透防止層を備える、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記カラーパターンは、1つの前記劣化因子に対して異なる変化を示す複数の色成分が含まれるように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記劣化因子は、熱、酸素、水、紫外線及びオゾンの少なくとも1つを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記媒体層は、複数の前記カラーパターンが印刷される、請求項1から5のいずれか一項に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通業界におけるシェアリングエコノミーの発展、リトレッドタイヤの利用拡大等に伴い、タイヤの劣化状態を把握する技術が注目されている。例えば、特許文献1は、表示部が光に曝されると、文字部分と背景部分との変色度合いの違いにより使用限度が明示されるタイヤを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、特許文献1の技術は、あらかじめ刻印されたタイヤの使用期限を表示するものであり、タイヤ及びタイヤを構成するゴム部材の劣化状態を客観的に示す指標とするには精度が不十分であった。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、劣化状態を高い精度で判定することを可能にするインジケータ機能を有するタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係るタイヤは、劣化状態を判定するために劣化判定モデル及び色変化データベースを備える劣化状態判定装置によって色成分が抽出されるインジケータ部と、前記インジケータ部が付される本体部と、を備え、前記インジケータ部は、劣化因子に対する感度が異なる複数の色が異なる位置に塗布されたカラーパターン及び識別子が印刷される媒体層を備える。
この構成により、タイヤの劣化状態を高い精度で判定することが可能になる。
【0007】
本開示の一実施形態として、前記インジケータ部は、前記媒体層に対して前記本体部から離れた側に設けられ、少なくとも紫外線の透過を抑制する保護層を備える。
この構成により、紫外線によって過度の退色が生じないように、紫外線の量を調整することができる。
【0008】
本開示の一実施形態として、前記インジケータ部は、前記媒体層と前記本体部との間に設けられ、インクの浸透を防止する浸透防止層を備える。
この構成により、タイヤ用ゴムに配合される老化防止剤の機能低下を抑制することができる。
【0009】
本開示の一実施形態として、前記カラーパターンは、1つの前記劣化因子に対して異なる変化を示す複数の色成分が含まれるように構成される。
この構成により、劣化因子の量の推定精度が高まり、タイヤの劣化状態のより高い精度の判定が可能になる。
【0010】
本開示の一実施形態として、前記劣化因子は、熱、酸素、水、紫外線及びオゾンの少なくとも1つを含む。
この構成により、屋外で使用されるタイヤの劣化状態判定の精度を高めることが可能になる。
【0011】
本開示の一実施形態として、前記媒体層は、複数の前記カラーパターンが印刷される。
この構成により、一部が汚れなどによって識別不可能になった場合にも、残った色から劣化因子を特定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、劣化状態を高い精度で判定することを可能にするインジケータ機能を有するタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、劣化状態判定装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の劣化状態判定装置を備える劣化状態判定システムの構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、インジケータの構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、
図1の劣化状態判定装置が実行する劣化状態判定方法が含む第1処理の例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、色変化データベースの構成例を示す図である。
【
図6】
図6は、
図1の劣化状態判定装置が実行する劣化状態判定方法が含む第2処理の例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、インジケータデータベースの構成例を示す図である。
【
図8】
図8は、
図1の劣化状態判定装置が実行する劣化状態判定方法が含む第3処理の例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、本開示の一実施形態に係るタイヤの図である。
【
図10】
図10は、本開示の一実施形態に係るタイヤの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、図面を参照してインジケータが説明される。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号が付されている。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。インジケータは、劣化状態判定装置によってインジケータが付された対象物の劣化状態を判定するために用いられる。まず、劣化状態判定装置が説明される。
【0015】
図1は、劣化状態判定装置10の構成例を示す。
図2は、
図1の劣化状態判定装置10を備える劣化状態判定システム1の構成例を示す。劣化状態判定装置10は、劣化状態を判定する対象である対象物に付されたインジケータ31の色に基づいて、対象物の劣化状態を判定する装置である。本実施形態において対象物はタイヤ30であるとして説明されるが、タイヤ30に限定されない。劣化状態判定装置10によって判定されるタイヤ30の劣化状態は、例えばタイヤ30をリトレッドする場合において、ユーザに対して予測される耐用年数、適する加硫方法などを提示するために用いられてよい。タイヤ30の劣化は外観からはわかりにくいもの(一例として硬化)などを含むが、劣化状態判定装置10によって高い精度で判定することができる。ここで、リトレッドは、タイヤ30のトレッドゴムを削ってから新しいゴムを貼り付けて、加硫して再利用することをいう。プレキュアトレッド(PCT:pre-cure tread)が用いられる場合もある。また、ユーザは、リトレッドなどを行うタイヤ30の管理設備61の利用者であるが、特に車両20の運転者又は所有者である。
【0016】
劣化状態判定装置10は、通信部11と、記憶部12と、制御部13と、を備える。制御部13は、データ取得部131と、色変化データベース生成部132と、劣化判定モデル生成部133と、色選択部134と、識別子抽出部135と、色成分抽出部136と、劣化判定部137と、判定結果出力部138と、を備える。劣化状態判定装置10は、ハードウェア構成として、例えばサーバのようなコンピュータであってよい。劣化状態判定装置10の構成要素の詳細については後述する。
【0017】
劣化状態判定装置10は、ネットワーク40で接続される端末装置50、印刷装置51及びサーバ60の少なくとも1つとともに、劣化状態判定システム1を構成してよい。ネットワーク40は、例えばインターネットであるが、LAN(Local Area Network)であってよい。
【0018】
端末装置50は、例えばスマートフォン又はタブレット端末等の汎用の移動端末であるが、撮像機能及び表示機能を備える装置であれば、このような移動端末に限定されない。端末装置50は、タイヤ30の劣化状態が判定される場合等に、管理設備61の管理者又はユーザによって使用される。端末装置50は、撮像機能によってタイヤ30に付されたインジケータ31を撮像し、ネットワーク40を介して、得られた画像を劣化状態判定装置10に送信してよい。撮像機能は、例えば端末装置50が備えるカメラによって実現される。また、端末装置50は、劣化状態判定装置10からの劣化状態の判定結果を、ネットワーク40を介して取得して、表示機能によってユーザに表示してよい。表示機能は、例えば端末装置50が備えるLCDなどのディスプレイによって実現される。ここで、端末装置50はユーザによる接触を検出して、その接触位置を特定するタッチセンサと一体化されたタッチパネルディスプレイを備えてよい。
【0019】
印刷装置51は、例えばカラーインクジェットプリンタであるが、複数の色成分を印刷可能な装置であれば、カラーインクジェットプリンタに限定されない。印刷装置51は、タイヤ30に付されるインジケータ31を作成する場合に、紙、フィルム(膜状の樹脂)又はゴムなどの被印刷媒体に、後述する識別子32及びカラーパターン33(
図3参照)を印刷するために用いられる。本実施形態において、印刷装置51は、劣化状態判定装置10からの印刷データを、ネットワーク40、サーバ60を介して取得して、インジケータ31を作成するための印刷を実行する。ここで、印刷データは、識別子32及びカラーパターン33のデータを含むインジケータデータである。
【0020】
サーバ60は、例えば劣化状態判定装置10とは別のコンピュータである。サーバ60は、例えば管理設備61に設置されており、印刷装置51へのインジケータデータを中継する他に、タイヤ30のリトレッド及び修理の履歴などのデータを管理してよい。
【0021】
管理設備61は、車両20に取付けられたタイヤ30を管理する設備である。本実施形態において、管理設備61では、タイヤ30の修理、交換及びリトレッドなどが行われる。ここで、劣化状態判定システム1は、車両20の位置に関係なく劣化状態判定の処理を実行することが可能であるが、本実施形態において、車両20が管理設備61を訪れている状況で劣化状態判定の処理が実行されるとして説明する。また、端末装置50、印刷装置51及びサーバ60は、管理設備61内にあってよいし、管理設備61から離れた場所にあってよい。
【0022】
ここで、劣化状態判定装置10が実行する劣化状態判定方法の概要について説明する。一般に、カラーインクジェットプリンタなどによって印刷される印刷物は、インクの経年変化によって退色が生じることが知られている。同じ環境下であっても、インクの色によって退色の程度が異なる。また、同じ印刷物であっても、環境における劣化因子(例えば熱、紫外線など)の違いによって退色の程度が異なる。本実施形態では、例えばタイヤ30の交換時に、新しいタイヤ30にインジケータ31が付される(
図2参照)。その後に、劣化状態判定装置10は、インジケータ31の画像を取得して、インジケータ31の色の変化からタイヤ30が使用された環境における劣化因子の量を算出する。そして、劣化状態判定装置10は、算出した劣化因子の量に基づいて、タイヤ30の劣化状態を判定する。
【0023】
図3は、本実施形態に係るインジケータ31の構成を示す図である。インジケータ31は、被印刷媒体に印刷された識別子32及びカラーパターン33を有する。インジケータ31は、印刷装置51による印刷によって安価に作成することができる。本実施形態において、識別子32は2次元コードであるが、インジケータ31を個別に識別可能なものであれば2次元コードに限定されない。また、カラーパターン33は複数の色が異なる位置に塗布されて構成されるパターンである。本実施形態において、カラーパターン33は市松模様に配置されているが、このような配置に限定されない。カラーパターン33の色の変化に基づいて、劣化状態判定装置10はタイヤ30の劣化状態を判定する。カラーパターン33で使用される色の選択等については後述する。
【0024】
図2の例において、インジケータ31がタイヤ30のサイドウォール部に設けられているが、インジケータ31が付される位置は限定されない。別の例として、インジケータ31は、リトレッドされるタイヤ30のインナーライナーの表面に付されてよい。また、別の例として、インジケータ31は、トレッド部の溝の底部に付されてよい。また、インジケータ31は複数であって、複数のインジケータ31のそれぞれがタイヤ30の異なる位置に付されてよい。このとき、一部のインジケータ31が車両20の走行中に欠落したり、識別できない程度に汚れたりしても、残りのインジケータ31によってカラーパターン33の色の変化を把握できる。その他に、複数のインジケータ31を設けることにより、第三者による一部のインジケータ31を意図的に加熱させる劣化があっても、残りのインジケータ31で指標改ざんを防止することもできる。また、複数のインジケータ31を設けることにより、タイヤ30の部材毎の劣化度を独立で推定することが可能となる。そのため、劣化状態判定のロバスト性を高めることができる。
【0025】
ここで、劣化状態判定システム1は
図2に示される構成に限定されない。本実施形態において、印刷装置51はサーバ60を介してネットワーク40に接続されるが、例えば印刷装置51が直接にネットワーク40に接続可能であってよい。このような場合に、劣化状態判定システム1は、サーバ60を省略して、劣化状態判定装置10、端末装置50及び印刷装置51で構成されてよい。
【0026】
以下、劣化状態判定装置10の構成要素の詳細が説明される。通信部11は、ネットワーク40に接続する1つ以上の通信モジュールを含んで構成される。通信部11は、例えば4G(4th Generation)、5G(5th Generation)などの移動体通信規格に対応する通信モジュールを含んでよい。通信部11は、例えば有線のLAN規格(一例として1000BASE-T)に対応する通信モジュールを含んでよい。通信部11は、例えば無線のLAN規格(一例としてIEEE802.11)に対応する通信モジュールを含んでよい。
【0027】
記憶部12は、1つ以上のメモリである。メモリは、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等であるが、これらに限られず任意のメモリとすることができる。記憶部12は、例えば劣化状態判定装置10に内蔵されるが、任意のインターフェースを介して劣化状態判定装置10に外部からアクセスされる構成も可能である。
【0028】
記憶部12は、制御部13が実行する各種の算出において使用される各種のデータを記憶する。また、記憶部12は、制御部13が実行する各種の算出の結果及び中間データを記憶してよい。
【0029】
本実施形態において、記憶部12は、色変化データベース121と、劣化判定モデル122と、インジケータデータベース123と、を含む。色変化データベース121は、インジケータ31の色の変化と、タイヤ30を劣化させる劣化因子の量との関係を示すデータを含んで構成される。劣化判定モデル122は、劣化因子の量からタイヤ30の劣化状態を判定するためのモデルである。劣化判定モデル122は、例えば劣化因子の量を入力して、予測される耐用年数を出力する数理モデルであってよいし、機械学習等によって生成されてよい。インジケータデータベース123は、インジケータ31の識別子32とカラーパターン33の情報を関連付けたデータを含んで構成される。カラーパターン33の情報は、使用されている色、それぞれの色を構成する色成分などを含む。また、カラーパターン33の情報は、それぞれの色の位置、色の配置のパターンの種類(一例として市松模様)などを含んでよい。また、カラーパターン33の情報は、それぞれの色の初期状態を色成分毎の階調で含んでよい。ここで、初期状態はインジケータ31の作成時の状態である。
【0030】
制御部13は、1つ以上のプロセッサである。プロセッサは、例えば汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサであるが、これらに限られず任意のプロセッサとすることができる。制御部13は、劣化状態判定装置10の全体の動作を制御する。
【0031】
ここで、劣化状態判定装置10は、以下のようなソフトウェア構成を有してよい。劣化状態判定装置10の動作の制御に用いられる1つ以上のプログラムが記憶部12に記憶される。記憶部12に記憶されたプログラムは、制御部13のプロセッサによって読み込まれると、制御部13をデータ取得部131、色変化データベース生成部132、劣化判定モデル生成部133、色選択部134、識別子抽出部135、色成分抽出部136、劣化判定部137及び判定結果出力部138として機能させる。
【0032】
データ取得部131は、後述する実験データ、インジケータ31の画像を、ネットワーク40及び通信部11を介して取得する。
【0033】
色変化データベース生成部132は、色変化データベース121を生成し、生成した色変化データベース121を記憶部12に記憶させる。色変化データベース生成部132は、実験データから色の情報及び劣化因子の情報を抽出して、色の変化と劣化因子の量との関係を示すデータを生成することによって、色変化データベース121を生成できる。
【0034】
劣化判定モデル生成部133は、劣化判定モデル122を生成し、生成した劣化判定モデル122を記憶部12に記憶させる。劣化判定モデル122は、劣化因子の量を入力として、タイヤ30の劣化状態の指標を出力とするモデルである。タイヤ30の劣化状態の指標は、例えば耐用年数のような耐久性に係る指標、転がり抵抗及びウェットグリップのような走行性に係る指標であるが、これに限定されない。劣化判定モデル生成部133は、ネットワーク40及び通信部11を介して取得可能なタイヤ30の実際の劣化状態を示す実績データを取得して、実績データに基づいて劣化判定モデル122を生成してよい。実績データは、例えばタイヤ30に特定の劣化因子を特定量だけ与えた場合における劣化状態を示す、車両20の実走行又は実験で得られたデータであってよい。具体例として、実績データは、特定種類の新しいタイヤ30が、温度20~80℃で酸素20~80%の環境下で10~10000時間放置された場合におけるタイヤ30の実際の耐用年数を示すものであってよい。劣化判定モデル生成部133は、実績データを学習用データとして、機械学習によって劣化判定モデル122を生成してよい。
【0035】
色選択部134は、劣化判定部137によって実行される劣化状態判定において劣化因子の量を特定可能なように、インジケータ31に用いられる色を選択する。そして、色選択部134は、選択した色を含むカラーパターン33が印刷装置51によって印刷されるように、インジケータデータ(印刷データ)を出力する。
【0036】
識別子抽出部135は、データ取得部131によって取得されたインジケータ31の画像から、識別子32を抽出する。識別子抽出部135によって抽出された識別子32は、劣化判定部137によって実行される劣化状態判定において、インジケータ31を特定するために用いられる。
【0037】
色成分抽出部136は、データ取得部131によって取得されたインジケータ31の画像から、カラーパターン33に含まれる色の色成分を抽出する。色成分抽出部136によって抽出された色成分は、劣化判定部137によって実行される劣化状態判定において、劣化因子の量を特定するために用いられる。色成分抽出部136は、画像において特定された各インクの位置において、RGB色空間、HSV色空間、Lab色空間の色成分値を抽出して、同色の色成分値間で平均値を算出する処理を実行してよい。
【0038】
劣化判定部137は、劣化判定モデル122を用いて、色変化データベース121及び色成分抽出部136によってインジケータ31の画像から抽出された色成分に基づいて、タイヤ30の劣化状態を判定する。詳細に述べると、劣化判定部137は、インジケータ31の画像から抽出された色成分を、色変化データベース121のデータと比較することによって、タイヤ30が使用環境から影響された劣化因子の量を推定(算出)する。そして、劣化判定部137は、推定した劣化因子の量を劣化判定モデル122に入力し、出力されたタイヤ30の劣化状態の指標を判定結果とする。
【0039】
本実施形態において、劣化判定部137は、インジケータ31の画像から抽出された色成分を、初期状態と比較することによって、色成分変化として算出する。劣化判定部137は、インジケータ31の色成分の初期状態を、インジケータデータベース123から得ることができる。劣化判定部137は、色成分変化を、色変化データベース121のデータと比較することによって、劣化因子の量を推定する。本実施形態では、初期状態との比較によって色成分変化を求めることによって、インジケータ31の作成時の個体差(例えば印刷のばらつき)があっても、正確に色の変化を求められるため、対象物の劣化状態をさらに高い精度で判定することができる。
【0040】
判定結果出力部138は、劣化判定部137によって実行された劣化状態判定の判定結果を出力する。判定結果出力部138によって出力された判定結果は、端末装置50のディスプレイなどに表示される。例えばサーバ60が別のディスプレイと接続される構成である場合に、判定結果は、サーバ60に接続されるディスプレイに表示されてよい。例えば管理設備61の管理者は、判定結果に基づいて、ユーザに対してタイヤ30の交換、修理、リトレッドする場合の耐用予測年数、適する加硫方法などを提示することができる。
【0041】
以下、劣化状態判定装置10が実行する劣化状態判定方法がフローチャートなどを参照しながら説明される。劣化状態判定方法は、第1処理、第2処理及び第3処理を含む。第1処理は、色変化データベース121及び劣化判定モデル122を生成するための処理であって、第2処理及び第3処理よりも前に実行される。第2処理は、タイヤ30に付されるインジケータ31を作成させる(印刷装置51によって印刷させる)ための処理であって、第3処理よりも前に実行される。第3処理は、タイヤ30に付されたインジケータ31の画像を取得して、タイヤ30の劣化状態を判定する処理である。
【0042】
図4は、劣化状態判定方法が含む第1処理の例を示すフローチャートである。
【0043】
データ取得部131は、実験データを受信する(ステップS1)。実験データは、インジケータ31と同様に印刷装置51によって作成された実験用インジケータに対して、劣化因子を実験的に与えて色を退色させて得られたデータである。インジケータ31のカラーパターン33と同様に、実験用インジケータは複数の色を配置したパターンを有する。実験データは、色の情報及び劣化因子の情報を含む。実験データは、撮像された実験用インジケータの画像と文字情報である劣化因子の情報とを含んでよい。劣化因子の情報は、実験的に与えた劣化因子の量を示すものであって、例えば温度20℃で酸素が20%の環境で20時間放置といった情報であってよい。
【0044】
実験データは、例えば端末装置50によって劣化状態判定装置10に送信される。端末装置50にインストールされたアプリケーションによって、実験用インジケータの画像と劣化因子の情報とが関連付けられて、劣化状態判定装置10に実験データとして送信されてよい。ここで、端末装置50は、管理設備61と別の場所(例えば実験設備)にあって、実験データを送信してよい。
【0045】
色変化データベース生成部132は、実験データから色の情報及び劣化因子の情報を抽出する(ステップS2)。
【0046】
色変化データベース生成部132は、色の変化と劣化因子の量との関係を示すデータを生成し、これらを関連付けて色変化データベース121を生成する(ステップS3、色変化データベース生成ステップ)。
【0047】
図5は、色変化データベース121の構成例を示す図である。
図5の例において、色変化データベース121は、温度(Temperature)、酸素(Oxygen)、条件下で放置された時間(Time)、使用された色のインク(Ink)、使用された色の色成分(R、G、B)を関連付けたデータ群で構成される。インクは、例えばシアン(Cyan)、マゼンタ(Magenta)、イエロー(Yellow)などで示される。また、色成分は、赤(R)、緑(G)青(B)毎に0~255の階調で示される。
【0048】
図5の例において、色変化データベース121の第1列と第2列から、色成分としてGが255、Bが255であったシアンが、温度80℃で酸素20%の環境下で10時間放置された場合に、Gが238、Bが228に退色することがわかる。このように、色変化データベース121は、色の変化と劣化因子の量との関係を示す。このような関係を用いて、インジケータ31のカラーパターン33において色の変化(退色)があった場合に、同じ色成分の変化を示す色変化データベース121のデータを探すことによって、退色を生じさせた劣化因子の量を推定することが可能になる。
【0049】
劣化判定モデル生成部133は、劣化判定モデル122を生成する(ステップS4)。上記のように、劣化判定モデル122は、劣化因子の量を入力として、タイヤ30の劣化状態の指標を出力とするモデルである。色変化データベース121に加えて劣化判定モデル122が生成されることによって、推定される劣化因子の量を中間パラメータとして、インジケータ31のカラーパターン33の退色からタイヤ30の劣化状態の指標を出力することが可能になる。
【0050】
ここで、色変化データベース121の項目は
図5の例に限定されない。例えば劣化因子は、熱、酸素、水、紫外線及びオゾンの少なくとも1つを含んでよい。屋外の環境において想定され得るこれらの劣化因子を含むことによって、タイヤ30を含む屋外で使用される対象物の劣化状態判定の精度を高めることが可能になる。
【0051】
図6は、劣化状態判定方法が含む第2処理の例を示すフローチャートである。第2処理は、第1処理の後に実行される。第2処理は、例えば車両20が管理設備61において新たなタイヤ30に交換するタイミングで実行される。
【0052】
色選択部134は、インジケータ31に印刷される識別子32を生成する(ステップS11)。また、識別子32は、インジケータデータベース123において、インジケータ31とカラーパターン33の情報を関連付けるために用いられる。識別子32によって、インジケータ31のそれぞれを特定することができ、初期状態の把握及び個別管理が可能になる。色選択部134は、例えばUUID(Universally Unique Identifier)を用いてよい。
【0053】
色選択部134は、劣化因子の量を特定可能なようにインジケータ31に用いられる色を選択する(ステップS12、色選択ステップ)。上記のように、環境における劣化因子とインクの色によって退色の程度が異なる。色選択部134は、まず、タイヤ30の使用環境において想定される劣化因子によって大きく変化する色(感度が高い色)を選択してよい。色選択部134は、例えば劣化因子として高温(一例として80℃の温度)が想定される場合に、高温によって大きく退色する色(一例としてマゼンタ)を選択してよい。色選択部134は、さらに対比用の色を選択してよい。色選択部134は、例えば有酸素下でのみ高温により退色する色(一例としてイエロー)を対比用として選択してよい。例えば劣化状態判定において、イエローに退色がなく、マゼンタが大きく退色している場合に、劣化因子が酸素ではなく高温であることをより正確に特定することができる。ここで、色選択部134は、色の選択において、色変化データベース121を参照する。色選択部134は、劣化状態判定において正確に劣化因子の量を特定できるように、色変化データベース121のデータに基づいて、選択する色の色成分についても指定する。色選択部134は、例えばRが255、Bが255のマゼンタのように指定する。また、色選択部134は、カラーパターン33における各色の配置についても決定する。各色が配置される位置は、座標によって管理されてよい。
【0054】
また、色選択部134は、後述するコントロール補正のために、退色変化しにくい色成分を有する色を選択して、インジケータデータに含める。
【0055】
本実施形態において、色選択部134は、同じ劣化因子を特定可能な複数の色を選択し、インジケータ31において同じ劣化因子を特定可能な複数の色のそれぞれが異なる位置に塗布されるように、インジケータデータを生成する。このようにカラーパターン33を構成することによって、インジケータ31がタイヤ30に付された後で一部が汚れなどによって識別不可能になった場合にも、残った色から劣化因子を特定することができる。
図3の例のように、色選択部134は、複数のカラーパターン33が異なる位置にあるように、インジケータデータを生成してよい。
【0056】
色選択部134は、識別子32及びカラーパターン33のデータを含むインジケータデータを出力する(ステップS13)。印刷装置51は、劣化状態判定装置10からのインジケータデータを、ネットワーク40、サーバ60を介して印刷データとして取得して、印刷によってインジケータ31を作成する。作成されたインジケータ31は、タイヤ30に付される。本実施形態において、端末装置50によって作成されたインジケータ31が撮像されて、その画像がインジケータ31の初期状態を示すものとして劣化状態判定装置10に送信される。
【0057】
色選択部134は、インジケータデータベース123を更新する(ステップS14)。つまり、色選択部134によって出力されたインジケータデータの情報がインジケータデータベース123に追加される。作成されたインジケータ31に関する情報は、インジケータデータベース123によって管理される。
【0058】
図7は、インジケータデータベース123の構成例を示す図である。
図7の例において、インジケータデータベース123は、識別子32(ID)、撮影日時、初期値フラグ、インク(Ink)、色成分(R、G、B)、色の位置を関連付けたデータ群で構成される。新たに作成されたインジケータ31について、インジケータデータから識別子32、色の位置の情報が抽出されて、初期値フラグを「1」として、データが追加される。上記のように、端末装置50によって作成されたインジケータ31の画像が劣化状態判定装置10に送信される。この画像の撮影日時、インク、色成分が抽出されて、新たに作成されたインジケータ31のデータに追加される。ここで、インク、色成分の抽出は、色成分抽出部136によって実行されて、色選択部134が色成分抽出部136の実行結果を取得してよい。インジケータデータベース123において、初期値フラグを「1」とするデータは、その識別子32を有するインジケータ31の色の初期状態を含む。ここで、初期値フラグを「0」とするデータは、その識別子32を有するインジケータ31がタイヤ30に付された後の色の状態を含み、第3処理によってインジケータデータベース123に追加される。
【0059】
図8は、劣化状態判定方法が含む第3処理の例を示すフローチャートである。第3処理は、第2処理の後に実行される。第3処理は、例えば管理設備61においてタイヤ30のメンテナンスが行われるタイミングで実行される。そのため、第3処理は複数回実行されてよい。
【0060】
データ取得部131は、インジケータ31の画像データを受信する(ステップS21)。
【0061】
識別子抽出部135は、データ取得部131によって取得された画像データから、識別子32を抽出する(ステップS22)。
【0062】
劣化判定部137は、識別子抽出部135によって抽出された識別子32に基づいて、インジケータ31を特定する。劣化判定部137は、インジケータデータベース123を読み出し(ステップS23)、特定したインジケータ31の色の初期状態のデータなどを取得する。
【0063】
色成分抽出部136は、データ取得部131によって取得された画像データについて、シェーディング補正を実行する(ステップS24)。シェーディング補正は、撮影環境によって生じるカラーパターン33内での光量の差異を補正する。
【0064】
色成分抽出部136は、コントロール補正を実行する(ステップS25)。コントロール補正は、インジケータ31の色の初期状態からの変化を正確に測定するために行われる。色成分抽出部136は、カラーパターン33に含まれる退色変化しにくい色成分(一例としてシアンのG成分)を抽出し、その階調を初期状態に合わせる。この処理によって、光量を、作成時のインジケータ31の画像に合わせることができる。
【0065】
色成分抽出部136は、インジケータデータベース123のデータに基づいて、カラーパターン33が有する全てのインク(色)の塗布位置を特定する(ステップS26)。例えば、カラーパターン33に含まれるシアン、マゼンタ、イエロー及びこれらの少なくとも一部の混色について位置が特定される。
【0066】
色成分抽出部136は、位置を特定した各インクの色成分値を抽出する(ステップS27、色成分抽出ステップ)。例えば
図3の例のように、複数のカラーパターン33が含まれる場合に、各インクの色成分値として平均値が用いられてよい。また、一部に汚れの付着などがある場合には、汚れの付着がない領域のカラーパターン33だけを用いて各インクの色成分値が抽出されてよい。抽出した各インクの色成分値そのものを用いて劣化判定が行われてよいが、本実施形態において、初期状態との差分を用いて劣化判定が行われる。そのため、色成分抽出部136は、インジケータデータベース123のデータを用いて、各インクの色成分値の初期状態からの変化を算出する。
【0067】
ここで、色成分抽出部136は、第2処理のステップS14と同様に、インジケータデータベース123を更新する(ステップS28)。インジケータデータベース123に追加されるデータの構成は、初期値フラグが「0」であること以外、第2処理のステップS14の場合と同じである。
【0068】
劣化判定部137は、色変化データベース121を読み出す。また、劣化判定部137は、劣化判定モデル122を読み出す(ステップS29)。
【0069】
劣化判定部137は、劣化判定モデル122を用いて、色変化データベース121及び画像から抽出された色成分に基づいて、タイヤ30の劣化判定を行う(ステップS30、劣化判定ステップ)。
【0070】
まず、劣化判定部137は、色成分値の初期状態からの変化に対応するデータを色変化データベース121から抽出して、タイヤ30が環境から受けた劣化因子の量を推定する。例えば初期状態の色成分としてGが253、Bが253であったシアンが、Gが236、Bが226に退色(変化)した場合に、劣化判定部137は、色成分変化としてGが17、Bが27と算出する。劣化判定部137は、色変化データベース121に基づいて、このような色成分変化に対応するデータを抽出して、劣化因子の量が「温度80℃で酸素20%の環境下で10時間放置」であると推定してよい。劣化判定部137は、色変化データベース121を構成するデータを用いた回帰分析などの公知の手法によって推定を行ってよい。
【0071】
また、劣化判定部137は、1つの劣化因子に対して異なる変化を示す複数の色成分について色成分変化を算出し、複数の色成分変化から劣化因子の量を特定してよい。例えば色変化データベース121が、「温度80℃で酸素20%の環境下で10時間放置」した場合にマゼンタのRが255から220に変化するというデータを含むとする。劣化判定部137は、例えば上記の例のシアンに加えて、マゼンタのRの変化を算出して比較することによって、劣化因子の量の推定精度を高めて、結果的にタイヤ30の劣化状態をより高い精度で判定することができる。
【0072】
劣化判定部137は、劣化因子の量を劣化判定モデル122に入力して、タイヤ30の劣化状態の指標を算出する。劣化判定部137は、耐用年数を含む複数のタイヤ30の劣化状態の指標を算出してよい。
【0073】
判定結果出力部138は、劣化判定部137による判定結果を出力する(ステップS31)。管理設備61の管理者は、判定結果として示されるタイヤ30の劣化状態の指標に基づいて、タイヤ30の交換、修理、リトレッドの方法などをユーザに対して提案してよい。
【0074】
以上のように、インジケータ31は、上記の構成によって、対象物の劣化状態を高い精度で判定することを可能にする。
【0075】
(第2実施形態)
第1実施形態において、インジケータ31はタイヤ30の交換時に作成されて、直ちに新しいタイヤ30に付される。ただし、インジケータ31は、作成されてからある程度の時間が経過した後に対象物に付されてよい。また、インジケータ31は、対象物の製造過程において付されてよい。すなわち、インジケータ31が付された対象物が製造されてよい。このような対象物の流通などにおいても、インジケータ31の初期状態の画像、劣化状態の判定時の画像を例えば端末装置50を用いて劣化状態判定装置10にアップロードすることが可能である。この場合における端末装置50は、劣化状態を知りたいユーザ、対象物の販売者又は製造者が所有する装置であってよい。劣化状態判定装置10による判定結果は、ネットワーク40を介して端末装置50に表示されてよい。端末装置50にインストールされたアプリケーションによって、インジケータ31の画像のアップロードから劣化状態判定装置10による判定結果の表示までが実行されてよい。
【0076】
ここで、インジケータ31が付されて製造される対象物が、交換用又は当初から車両20に装着されるタイヤ30であってよい。本実施形態に係るタイヤ30は、インジケータ31の機能を備えており、第1実施形態と同様に、タイヤ30の劣化状態を判定することを可能にする。重複説明を回避するため、第1実施形態と異なる構成が以下に説明される。
【0077】
図9は、本実施形態に係るタイヤ30の構成を示す図である。タイヤ30は、インジケータ部31aと、本体部71(
図10参照)と、を備える。インジケータ部31aは、第1実施形態におけるインジケータ31と同様に機能し、識別子32及びカラーパターン33を有する。本体部71は、ゴム層、ベルト74、カーカスなどで構成されるタイヤ30の本体の部分であって、インジケータ部31aが付される。本体部71は公知の構成であってよい。また、本体部71が公知の方法で製造された後に、インジケータ部31aが接着剤による接着又は熱による接着によって本体部71に付される工程を経て、タイヤ30が製造されてよい。また、インジケータ部31aは加硫後の状態を初期値として活用することも可能であるため、加硫前の成型工程で付されてよい。接着剤は、例えばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂などを材料とするものがあるが、例示したものに限定されない。
【0078】
図9に示すように、インジケータ部31aはトレッド部73の溝72の底部にあってよい。インジケータ部31aはベルト74の内側部分のカーカスに付されてよい。インジケータ部31aは、ショルダー部75とビード部77とに挟まれたサイドウォール部76の外側部分又は内側部分にあってよい。また、インジケータ部31aが複数であって、これらの位置の少なくとも2か所以上にあってよい。インジケータ部31aが複数であって異なる位置にあることによって、一部が汚れたりしても劣化状態判定ができる。
【0079】
図10は、
図9のタイヤ30のインジケータ部31aの断面図であって、
図3のA-Aのようなカラーパターン33の一部における断面の層構造を示す。本実施形態において、タイヤ30のインジケータ部31aは浸透防止層36と、媒体層37と、保護層38と、を含む。また、タイヤ30の本体部71は、例えば溝72の底部などであり得る。
図10に示される浸透防止層36の底面は、タイヤ30の本体部71に接着される接着面であり得る。
図10に示すように、積層方向について、対象物(本実施形態においてタイヤ30の本体部71)から離れる向きを「上」と、対象物に近付く向きを「下」として、層の位置関係を説明する場合に用いることがある。
【0080】
媒体層37には、劣化因子に対する感度が異なる複数の色が異なる位置に塗布されたカラーパターン33及び識別子32が印刷される。
図10の左図は、印刷装置51が染料インクを用いる場合を示す。染料インクは媒体層37に浸透して定着する。一方、
図10の右図は、印刷装置51が顔料インクを用いる場合を示す。顔料インクは媒体層37の表面に定着する。印刷装置51は染料インクを用いてよいし、顔料インクを用いてよいし、両方を用いてよい。媒体層37は、紙、フィルム又はゴムなどであってよい。
【0081】
保護層38は、媒体層37に対して本体部71から離れた側、すなわち媒体層37の上に設けられ、少なくとも紫外線の透過を抑制する。保護層38は、劣化因子の1つである紫外線によって過度の退色が生じないように、紫外線の量を調整する機能を有する。また、保護層38は、カラーパターン33において隣接する色の間を埋めることによって、複数の色を確実に分離する機能を有してよい。保護層38の色を分離する機能は、顔料インクが用いられる場合に特に有用である。保護層38は透明なアクリル樹脂などであってよい。ここで、インジケータ部31aは保護層38を備えない構成であってよい。
【0082】
ここで、「媒体層37の上に」という表現における「上に」という文言は、媒体層37の直上にあることだけでなく、媒体層37との間に他の層がさらに存在する場合も含む。例えば、保護層38は、媒体層37の直上に存在してよいし、媒体層37の直上に別の層があって、その別の層の上に存在してよい。
【0083】
浸透防止層36は、媒体層37と本体部71との間に設けられ、インクの浸透を防止する。浸透防止層36によって、タイヤ30用ゴムに配合される老化防止剤の機能低下を抑制することができる。浸透防止層36は、インクを吸収する例えばウレタン樹脂などを含んで構成されてよい。ここで、インジケータ部31aは浸透防止層36を備えない構成であってよい。
【0084】
以上のように、本実施形態に係るタイヤ30は、第1実施形態と同様に、劣化状態を高い精度で判定することを可能にするインジケータ機能を有する。
【0085】
本開示の実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行されるプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0086】
上記の実施形態の色成分抽出ステップにおいて色成分の抽出に用いられるインジケータ31の画像は、可視光を照射して撮像される画像に限定されない。例えばインジケータ31の画像データは、UV(ultraviolet)光などの非可視光を照射して撮像される画像であってよい。非可視光を照射した撮像画像において、可視光を照射する場合より特定の劣化因子に対する色の変化(感度)が大きい場合がある。そのため、特定の劣化因子の影響を詳細に調べるような場合に、非可視光を照射した撮像画像が用いられてよい。
【符号の説明】
【0087】
1 劣化状態判定システム
10 劣化状態判定装置
11 通信部
12 記憶部
13 制御部
20 車両
30 タイヤ
31 インジケータ
31a インジケータ部
32 識別子
33 カラーパターン
35 接着層
36 浸透防止層
37 媒体層
38 保護層
40 ネットワーク
50 端末装置
51 印刷装置
60 サーバ
61 管理設備
71 本体部
72 溝
73 トレッド部
74 ベルト
75 ショルダー部
76 サイドウォール部
77 ビード部
121 色変化データベース
122 劣化判定モデル
123 インジケータデータベース
131 データ取得部
132 色変化データベース生成部
133 劣化判定モデル生成部
134 色選択部
135 識別子抽出部
136 色成分抽出部
137 劣化判定部
138 判定結果出力部