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特開2023-97235磁界センサ及び磁界センサヘッドの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097235
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】磁界センサ及び磁界センサヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/032 20060101AFI20230630BHJP
   G01R 15/24 20060101ALI20230630BHJP
   H01F 10/08 20060101ALN20230630BHJP
   H01F 1/00 20060101ALN20230630BHJP
【FI】
G01R33/032
G01R15/24 E
H01F10/08
H01F1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213494
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】関 弘子
(72)【発明者】
【氏名】宮本 光教
(72)【発明者】
【氏名】久保 利哉
(72)【発明者】
【氏名】饗場 哲也
【テーマコード(参考)】
2G017
2G025
5E040
5E049
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AC06
2G017AC08
2G017AD12
2G017AD14
2G017AD15
2G017BA05
2G025AA01
2G025AA05
2G025AB10
2G025AC06
5E040CA20
5E049BA16
(57)【要約】
【課題】本発明は、計測時にセンサヘッドを破損することが無く、微細な電線や小型部品でも正確な磁界測定が可能な磁界センサを提供することを目的とする。
【解決手段】本開示の一実施形態に係る磁界センサは、導体の周囲の磁界を測定するための磁界センサであって、光ファイバと、光ファイバの一方の端面に配置された磁性膜と、磁性膜の前記光ファイバと反対側の面に配置された反射膜と、磁性膜を内在させ、光ファイバを保持する磁界センサヘッドと、を有し、磁界センサヘッドは、導体が伸延する方向と直交する第1主面側から当該第1主面と対向する第2主面まで貫通し、導体を挟み込み可能で、磁性膜に向かって切り欠かれた切り欠き部を有する、ことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体の周囲の磁界を測定するための磁界センサであって、
光ファイバと、
前記光ファイバの一方の端面に配置された磁性膜と、
前記磁性膜の前記光ファイバと反対側の面に配置された反射膜と、
前記磁性膜を内在させ、前記光ファイバを保持する磁界センサヘッドと、を有し、
前記磁界センサヘッドは、導体が伸延する方向と直交する第1主面側から当該第1主面と対向する第2主面まで貫通し、導体を挟み込み可能で、前記磁性膜に向かって切り欠かれた切り欠き部を有する、
ことを特徴とする磁界センサ。
【請求項2】
前記磁性膜の周辺に配置された磁性体をさらに有する、請求項1に記載の磁界センサ。
【請求項3】
前記磁界センサヘッドはシリコンからなる、請求項1または2に記載の磁界センサ。
【請求項4】
前記磁性体を充填するための第1凹部をさらに有する、請求項2に記載の磁界センサ。
【請求項5】
前記磁界センサヘッドは、前記光ファイバの長手方向に延在する第2凹部を有する、請求項4に記載の磁界センサ。
【請求項6】
前記第1凹部は、前記第2凹部よりも深く形成されている、請求項5に記載の磁界センサ。
【請求項7】
前記磁界センサヘッドは、前記光ファイバの中心を通る平面について面対称の2つの部材からなる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の磁界センサ。
【請求項8】
請求項6に記載の磁界センサヘッドの製造方法であって、
シリコン基板の所定の第1領域に深掘反応性イオンエッチングを行って前記第1凹部を形成するステップを有する、
磁界センサヘッドの製造方法。
【請求項9】
第1のシリコン基板の所定の第1領域に深掘反応性イオンエッチングにより第1凹部を形成するステップと、
第2のシリコン基板の前記第1領域と面対称となる領域に深掘反応性イオンエッチングにより第3凹部を形成するステップと、
前記第1のシリコン基板の所定の第2領域をエッチングして第2凹部を形成するステップと、
前記第2のシリコン基板の前記第2領域と面対称となる領域をエッチングして第4凹部を形成するステップと、
前記第1凹部及び前記第3凹部が対向し、かつ、前記第2凹部及び前記第4凹部が対向するようにして、前記第1のシリコン基板及び前記第2のシリコン基板を向かい合わせて接合するステップと、
を有することを特徴とする磁界センサヘッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁界センサ及び磁界センサヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属磁性体のファラデー効果を利用して電流値を測定することが可能な磁界センサ装置が報告されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の磁界センサ装置は、光ファイバと、光ファイバの端面に設けられた、金属磁性体を含む光透過膜と、透過膜上に設けられた反射膜とを有する磁界センサ素子を備えている。
【0003】
従来の磁界センサ装置は、磁界センサ素子の端部に設けられた金属磁性体を含む光透過膜に導体を近づけて、検出した磁界強度から導体に流れる電流を測定するというものである。
【0004】
光ファイバを用いた従来の磁界センサは極めて細径であるため壊れやすいという問題がある。また、磁界センサが小型であるため、電界効果トランジスタ(FET)等のスイッチング素子や、微細な電線の電流を測定するための磁界センサの位置決めが難しいという問題がある。
【0005】
小型電子部品の電流を測定するためには、絶縁性を有し、寸法精度の良いセンサヘッドが求められる。しかしながら、センサヘッドを樹脂により形成した場合には寸法精度が悪くなるという問題がある。一方、センサヘッドを、金属材料を用いて切削加工等により形成することにより、高い精度が得られるが、金属材料は導体であるため、センサヘッドには適さない。さらに、樹脂や金属を用いて形成したセンサヘッドは、高温環境において熱膨張により変形してしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-28499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、計測時にセンサヘッドを破損することが無く、微細な電線や小型部品でも正確な磁界(電流)測定が可能な磁界センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態に係る磁界センサは、導体の周囲の磁界を測定するための磁界センサであって、光ファイバと、光ファイバの一方の端面に配置された磁性膜と、磁性膜の光ファイバと反対側の面に配置された反射膜と、磁性膜を内在させ、光ファイバを保持する磁界センサヘッドと、を有し、磁界センサヘッドは、導体が伸延する方向と直交する第1主面側から当該第1主面と対向する第2主面まで貫通し、導体を挟み込み可能で、磁性膜に向かって切り欠かれた切り欠き部を有する、ことを特徴とする。
【0009】
本開示の一実施形態に係る磁界センサにおいて、磁性膜の周辺に配置された磁性体をさらに有することが好ましい。
【0010】
本開示の一実施形態に係る磁界センサにおいて、磁界センサヘッドはシリコンからなることが好ましい。
【0011】
本開示の一実施形態に係る磁界センサにおいて、磁性体を充填するための第1凹部をさらに有することが好ましい。
【0012】
本開示の一実施形態に係る磁界センサにおいて、光ファイバの長手方向に延在する第2凹部をさらに有することが好ましい。
【0013】
本開示の一実施形態に係る磁界センサにおいて、第1凹部は、第2凹部よりも深く形成されていることが好ましい。
【0014】
本開示の一実施形態に係る磁界センサにおいて、磁界センサヘッドは、光ファイバの中心を通る平面について面対称の2つの部材からなることが好ましい。
【0015】
本開示の一実施形態に係る磁界センサヘッドの製造方法は、シリコン基板の所定の第1領域に深掘反応性イオンエッチングを行って第1凹部を形成するステップを有することを特徴とする。
【0016】
本開示の一実施形態に係る磁界センサヘッドの製造方法は、第1のシリコン基板の所定の第1領域に深掘反応性イオンエッチングにより第1凹部を形成するステップと、第2のシリコン基板の第1領域と面対称となる領域に深掘反応性イオンエッチングにより第3凹部を形成するステップと、第1のシリコン基板の所定の第2領域をエッチングして第2凹部を形成するステップと、第2のシリコン基板の第2領域と面対称となる領域をエッチングして第4凹部を形成するステップと、第1凹部及び第3凹部が対向し、かつ、第2凹部及び第4凹部が対向するようにして、第1のシリコン基板及び第2のシリコン基板を向かい合わせて接合するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本開示の一実施形態に係る磁界センサによれば、計測時にセンサヘッドを破損することが無く、微細な電線や小型部品でも正確な磁界測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の一実施形態に係る磁界センサを用いた磁界センサ装置の構成図である。
図2】本開示の一実施形態に係る磁界センサ装置の信号処理部の回路ブロック図である。
図3】本開示の一実施形態に係る磁界センサの斜視図である。
図4】本開示の一実施形態に係る磁界センサの斜視図であって、導体を係合させた状態を示す図である。
図5】本開示の一実施形態に係る磁界センサを構成する磁界センサヘッドの図4のA-A線における断面図である。
図6】本開示の一実施形態に係る磁界センサを構成する第1部材であって、図4のB-B線で切断した第1部材の斜視図である。
図7】本開示の一実施形態に係る磁界センサを構成する第1部材の図6のC-C線における断面図である。
図8】本開示の一実施形態の変形例に係る磁界センサヘッドの第1部材の平面図である。
図9】(a)~(c)は、それぞれ本開示の一実施形態に係る磁界センサヘッドの製造方法の第1~第3工程を説明するための断面工程図である。
図10】(a)~(c)は、それぞれ本開示の一実施形態に係る磁界センサヘッドの製造方法の第4~第6工程を説明するための断面工程図である。
図11】(a)~(c)は、それぞれ本開示の一実施形態に係る磁界センサヘッドの製造方法の第7~第9工程を説明するための断面工程図である。
図12】本開示の一実施形態の変形例に係る磁界センサヘッドを構成する第1部材及び第2部材の断面図である。
図13】本開示の一実施形態の変形例に係る磁界センサヘッドを構成する第1部材及び第2部材を接合した状態の断面図である。
図14】本開示の一実施形態に係る磁界センサを用いて、電界効果トランジスタ(FET)の端子電流によって生じる磁界強度を測定する状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る磁界センサ及び磁界センサヘッドの製造方法について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0020】
図1に本開示の一実施形態に係る磁界センサを用いた磁界センサ装置1000の構成図を示す。磁界センサ装置1000は、導体200に流れる電流によって生じる導体の周囲の磁界を測定する。測定した磁界から電流を算出することができる。
【0021】
磁界センサ装置1000は、発光部60と、光分岐部80と、磁界センサヘッド101と、検出信号発生部40とを有する。発光部60は、発光素子61と、アイソレータ62と、偏光子63とを有する。
【0022】
発光素子61は、例えば、半導体レーザ又は発光ダイオードである。具体的には、発光素子61として、ファブリペローレーザー、スーパールミネッセンスダイオード等を用いることができる。
【0023】
アイソレータ62は、発光素子61から入射された光を光分岐部80側に透過すると共に、光分岐部80から入射された光を発光素子61側に透過しないようにすることで、発光素子61を保護する。アイソレータ62は、例えば、偏光依存型光アイソレータであり、あるいは、偏光無依存型光アイソレータであってもよい。
【0024】
偏光子63は、発光素子61から出射された光を直線偏波光に偏光するための光学素子であり、その種類は特に限定されない。偏光子63で得られる直線偏波光は、光分岐部80を介して磁界センサヘッド101に入射光L1として入射される。
【0025】
光分岐部80は、発光部60から出射された光を磁界センサヘッド101に透過すると共に、磁界センサヘッド101から出射された戻り光L2を検出信号発生部40に分岐する。光分岐部80は、例えば、ハーフミラーであるが、光ファイバを結合分岐する光カプラ、光を分割するビームスプリッタ、及び光サーキュレータ等の光を分波可能な他の光学素子であってもよい。
【0026】
磁界センサ100は、光ファイバ1と、光ファイバ1の一方の端面に配置された磁性膜11と、磁性膜11の光ファイバ1と反対側の面に配置された反射膜12と、磁性膜11を内在させ、光ファイバ1を保持する磁界センサヘッド101と、を有する。光ファイバ1は、第1偏波保持ファイバと、第2偏波保持ファイバと、GIファイバと、を備えてよい。光ファイバ1が折れ曲がるのを防止するために磁界センサヘッド101の端部に補強部材4を設けることが好ましい。
【0027】
磁界センサヘッド101は、発光部60が出射した直線偏波光が入射光L1として導入されると共に、導入された入射光L1に応じた戻り光L2を導出する。
【0028】
検出信号発生部40は、偏光分離素子41と、第1受光素子42と、第2受光素子43と、信号処理部50とを有し、光ファイバ1から導出された戻り光L2を受光する。偏光分離素子41は、プリズム型、平面型、ウェッジ基板型、及び光導波路型等の偏光ビームスプリッタ(PBS)であり、光ファイバ1から導出された戻り光L2をP偏光成分44とS偏光成分45とに分離する。
【0029】
第1受光素子42及び第2受光素子43のそれぞれは、例えば、PINフォトダイオードである。第1受光素子42はP偏光成分44を受光し、第2受光素子43はS偏光成分45を受光する。第1受光素子42及び第2受光素子43のそれぞれは、受光した光を光電変換して、受光した光の光量に応じた電気信号を出力する。
【0030】
(信号処理回路)
図2に、信号処理部50の回路ブロック図を示す。信号処理部50は、第1増幅回路51と、第2増幅回路52と、第1除算回路53と、第2除算回路54と、差動増幅回路55とを有する。信号処理部50は、第1受光素子42及び第2受光素子43により光電変換された電気信号から2つの偏光成分の強度を差分検出し、検出した数値を電流値に置き換える。
【0031】
第1増幅回路51及び第2増幅回路52は、それぞれオペアンプ及び抵抗素子等により形成されるアナログ増幅回路である。
【0032】
第1増幅回路51は、第1受光素子42からP偏光成分44の光量Lpに応じた第1電気信号Ep1が入力され、入力された第1電気信号Ep1を増幅して第1増幅電気信号Ep2を出力する。第2増幅回路52は、第2受光素子43からS偏光成分45の光量Lsに応じた第2電気信号Es1が入力され、入力された第2電気信号Es1を増幅して第2増幅電気信号Es2を出力する。
【0033】
第1除算回路53及び第2除算回路54は、それぞれオペアンプ及び抵抗素子等により形成されるアナログ除算回路である。
【0034】
第1除算回路53は、第2増幅電気信号Es2で第1増幅電気信号Ep2を除算し、除算した出力値を示す第1アナログ信号(Ep2/Es2)を差動増幅回路55のマイナス入力端子に出力する。第2除算回路54は、第1増幅電気信号Ep2で第2増幅電気信号Es2を除算し、除算した出力値を示す第2アナログ信号(Es2/Ep2)を差動増幅回路55のプラス入力端子に出力する。
【0035】
差動増幅回路55は、例えば、オペアンプであり、第1除算回路53から入力される第1アナログ信号(Ep2/Es2)と第2除算回路54から入力される第2アナログ信号(Es2/Ep2)を差動増幅して検出信号Edを出力する。検出信号は、導体200に電流を流したときの磁性膜11におけるファラデー回転角に比例するため、検出信号Edから、導体200に流れる電流を算出することができる。
【0036】
磁界センサヘッド101は、導体が伸延する方向と直交する第1主面10S側から当該第1主面10Sと対向する第2主面20Sまで貫通し、導体を挟み込み可能で、磁性膜11に向かって切り欠かれた切り欠き部32を有する。ここで、磁界センサヘッド101において、光ファイバ1を保持する部分を保持部2と称し、切り欠き部32が設けられている部分を係合部3と称する。
【0037】
図3に、本開示の一実施形態に係る磁界センサ101の斜視図を示す。図4に、本開示の一実施形態に係る磁界センサ101の斜視図であって、導体200を係合させた状態の斜視図を示す。切り欠き部32に導体200を係合させることにより、磁界センサヘッド101を導体200に正確に位置決めすることができる。
【0038】
切り欠き部32は所定の幅Wのスリットを有する。切り欠き部32は、導体200を挟み込むことができるように、切り欠き部32の幅Wは導体200の直径R以上であることが好ましい。なお、「挟み込む」とは、導体200が切り欠き部32を構成する係合部3の内周面と接している場合に限られず、導体200と係合部3の内周面と離間している場合を含む。
【0039】
図1図4において、切り欠き部32が直線状のスリットである例を示したが、このような例には限られず、切り欠き部32は曲線状のスリットであってもよい。例えば、切り欠き部32を屈曲させることにより、磁界センサヘッド101または導体200の一方が振動した場合であっても、導体200と磁性膜11との相対的な位置の変動を抑制することができる。
【0040】
図4に示すように、導体200の長手方向(z方向)は光ファイバ1の長手方向(x方向)と直交している、その結果、図1に示すように、導体200に電流が流れたときに生じる磁束201は磁性膜11に対して直交する。導体200に電流が流れたときに生じる磁界の大きさに応じて磁性膜11で生じるファラデー回転の角度を検出することにより、導体200に流れる電流の大きさを検出することができる。
【0041】
磁界センサヘッド101は、磁性膜11の周辺に配置された磁性体31(図1参照)を有することが好ましい。磁性体31を磁性膜11の周辺に配置することにより、磁性膜11の周辺における磁束密度を高くすることができる。図1に示すように、導体200に電流が流れたときに、磁性体31における磁束を201a、磁性体31が配置されていない領域における磁束を201bとすると、磁束201aの密度は磁束201bの密度より高い。磁性膜11の近傍には磁性体31が存在するため、磁束201aの影響を受けて、磁性体31が存在しない場合に比べて、磁性膜11における磁束密度を高くすることができる。その結果、磁性体31を設けない場合に比べて、磁界センサの感度を向上させることができる。
【0042】
磁性体31は、樹脂で固められたアモルファス鉄粉を含むことが好ましい。磁性体31をアモルファス鉄粉で構成した場合の比透磁率は20程度である。導体200の周囲に生じた磁束201は、比透磁率が高い磁性体31において密度が高くなるため、磁性膜11の周辺に磁性体31を配置することにより、磁性膜11における磁界強度を高くすることができる。
【0043】
図3及び図4に示すように、磁界センサヘッド101は、光ファイバ1の中心を通る平面について面対称の2つの部材(10、20)からなることが好ましい。磁界センサヘッド101を面対称の2つの部材(10、20)によって構成することにより、磁界センサヘッド101内に光ファイバ1及び磁性体31を配置するための凹部を容易に形成することができる。
【0044】
図5に、本開示の一実施形態に係る磁界センサを構成する磁界センサヘッド101の図4のA-A線における断面図を示す。磁界センサヘッド101は、導体200が伸延する方向と直交する第1主面10S側から当該第1主面10Sと対向する第2主面20Sまで貫通し、導体200を挟み込み可能で、磁性膜11に向かって切り欠かれた切り欠き部32を有する。即ち、導体200はz方向に伸延しており、第1主面10S及び第2主面20Sは、z方向と直交している。ここで、第1主面10S及び第2主面20Sは、磁界センサヘッド101を構成する面のうち最も広い面積を有する面をいう。切り欠き部32は、係合部3の外周部から磁性膜11の近傍まで切り欠かれた構造を有しているため、導体200を容易に磁性膜11に近づけることができ、導体200に流れる電流によって生じる磁界の検出感度を向上させることができる。
【0045】
図6に、本開示の一実施形態に係る磁界センサを構成する第1部材10であって、図4のB-B線で切断した第1部材10の斜視図を示す。磁界センサヘッド101は、磁性体31(図1参照)を充填するための第1凹部33をさらに有することが好ましい。図6においては、第1凹部33に充填する磁性体を省略している。
【0046】
磁界センサヘッド101は、光ファイバ1の長手方向に延在する第2凹部(21~24)をさらに有することが好ましい。第2凹部(21~24)を設けることにより、磁界センサヘッド101の内部に光ファイバ1を保持することができる。
【0047】
図7に、本開示の一実施形態に係る磁界センサ101を構成する第1部材10の図6のC-C線における断面図を示す。第1凹部33は、第2凹部(21~24)よりも深く形成されていることが好ましい。即ち、図7に示すように、第1部材10の表面Sから第1凹部33の底面33Sまでの深さをd1とし、第1部材10の表面Sから第2凹部22の底面22Sまでの深さをd2としたとき、d1はd2より大きいことが好ましい。
【0048】
光ファイバ1の径は100μm程度であるため、第2凹部(21~24)の深さは、50μm程度である。これに対して、磁界センサヘッドを構成する基板の厚さは500μm程度である。また、導体200により生じる磁束密度を高くするためには、磁界センサヘッド101に充填する磁性体31の量が所定量以上あることが好ましい。そこで、第1凹部33を第2凹部(21~24)よりも深く形成して、磁性体31の量を所定量以上とすることが好ましい。
【0049】
磁界センサヘッド101はシリコンからなることが好ましい。磁界センサヘッド101をシリコンで形成することにより、微細な構造を有する磁界センサヘッド101を容易に作製することができる。また、シリコンは熱膨張係数が小さいため、高温環境下においても磁界センサヘッド101の変形を抑制することができる。
【0050】
上記の説明において、磁界センサヘッド101の構造として、半円形状の係合部3を備えた構造を例にとって説明したが、磁界センサヘッド101の形状は、このような形状には限られない。図8に本開示の一実施形態の変形例に係る磁界センサヘッドの第1部材の平面図を示す。図8に示した磁界センサヘッド102は、切り欠き部32の長手方向が光ファイバ1と平行となるように形成されている。また、磁性体31は導体200の周囲を囲むように配置されている。
【0051】
上述したように、磁界センサヘッド101には、光ファイバを配置するための第2凹部(21~24)が形成されている。光ファイバは図8の左側から挿入し、4つの凹部からなら第2凹部(21~24)のうちの3つ目の第2凹部23に磁性膜及び反射膜を配置させる。このとき、磁性膜及び反射膜の位置を所定の位置に配置するために、第2凹部23の近傍の第1凹部33は第2凹部23に向かって狭くなっている。このような構造とすることにより、光ファイバの先端部に配置した磁性膜の位置と導体200との間の距離を所定の範囲内とすることができ、測定データのばらつきを抑制することができる。
【0052】
次に、本開示の実施形態に係る磁界センサヘッドの製造方法について説明する。図9図11に本開示の一実施形態に係る磁界センサヘッド102の製造方法を説明するための断面工程図を示す。図9図11に示した断面図は図8のC-C線における断面図である。
【0053】
まず、図9(a)に示すように、シリコン基板7の裏面にレジスト81を塗布し、マスクを用いて露光した後、現像して、磁界センサヘッド102の外形形状に合わせてパターニングを行う(第1工程)。シリコン基板7の厚さは、例えば625μmである。
【0054】
次に、図9(b)に示すように、深掘反応性イオンエッチング(DRIE)法により、シリコン基板7の裏面を選択的に150~200μmエッチングする(第2工程)。後述するように、シリコン基板7のうち、磁界センサヘッド102の外周部分に相当する領域は、最終的に深さ方向に全て除去するが、このエッチングは表面及び裏面から行う。このように、シリコン基板7の表面及び裏面をエッチングして磁界センサヘッド102の外周部分を除去することにより、磁界センサヘッド102の外形を容易に形成することができる。即ち、シリコン基板7の表面または裏面のみからエッチングを行うと、エッチング時間の長期化によりレジストがダメージを受け、レジストの形状が異常となる恐れがある。これに対して、シリコン基板7の表面及び裏面から所定の深さでエッチングを行うことにより、それぞれのエッチング時間を短縮することができるため、レジストのダメージを抑制することができる。
【0055】
次に、図9(c)に示すように、レジスト81を剥離した後、シリコン基板7の表面及び裏面を含む全面に熱酸化によりシリコン酸化膜(以下、単に「酸化膜」あるいは「熱酸化膜」という)9を形成する(第3工程)。熱酸化膜は、例えば、酸化拡散炉を用いて、900~1100℃程度に加熱した石英管の炉の中にシリコン基板7を載置し、酸素等のガスを導入し酸化させることによって形成することができる。
【0056】
その後、シリコン基板7の表面にレジスト82を塗布し、マスクを用いて露光した後、現像して、磁界センサヘッドの凹部を形成しない領域に合わせてパターニングを行う。
【0057】
次に、図10(a)に示すように、レジスト82を用いて、シリコン基板7の表面に形成した酸化膜をドライエッチングにより選択的に除去して、レジスト82と同一のパターンの酸化膜91を形成する(第4工程)。
【0058】
次に、図10(b)に示すように、レジスト82を剥離する(第5工程)。
【0059】
次に、図10(c)に示すように、シリコン基板7の表面にレジスト83を塗布し、マスクを用いて露光した後、現像して、第1凹部の形状に合わせてパターニングを行う(第6工程)。ここで、シリコン基板7の表面において、レジスト83で覆われていない領域を第1領域71とする。
【0060】
次に、図11(a)に示すように、DRIE法により、シリコン基板7の第1領域71を350~400μmエッチングする(第7工程)。これにより、シリコン基板7に第1凹部33が形成される。なお、図11(a)における破線S1はシリコン基板7のエッチング前の表面の位置を示している。
【0061】
次に、図11(b)に示すように、レジスト83を剥離する(第8工程)。このとき、シリコン基板7の表面には、酸化膜91が残る。ここで、シリコン基板7の表面において、酸化膜91で覆われていない領域を第2領域72とする。
【0062】
次に、図11(c)に示すように、酸化膜91をマスクとして、シリコン基板7を130μm程度ドライエッチングして、第2凹部(21~24)を形成する(第9工程)。上述したように、第1凹部33の深さd1は第2凹部(21~24)の深さd2より大きい。また、このとき、図9(b)に示したようにシリコン基板7の裏面側からエッチングした外周部分を図11(c)に示すように表面側からもエッチングすることにより、磁界センサヘッド102の外周部分を除去することができる。
【0063】
次に、酸化膜9及び91を除去する。以上のようにして、本開示の一実施形態の変形例に係る磁界センサヘッド102を構成する第1部材10を形成することができる。図12に本開示の一実施形態の変形例に係る磁界センサヘッド102を構成する第1部材10及び第2部材20の断面図を示す。図9図11に示した製造工程と同様にして、シリコン基板を用いて、第1部材10と接合する第2部材20を形成する。第2部材20は第1部材10と面S1を基準にして面対称の構造を有する。
【0064】
具体的には、第2部材20は、第1部材10の第1凹部33と対称となるように、第3凹部34を有する。さらに、第2部材20は、第1部材10の第2凹部(21~24)と対称となるように、第4凹部(25~28)を有する。
【0065】
第2部材20の破線S2はシリコン基板のエッチング前の表面の位置を示している。第3凹部34の深さは第1凹部33の深さと同一であってよい。また、第4凹部(25~28)の深さは第2凹部(21~24)の深さと同一であってよい。このようにすることで、第1部材10と第2部材20のエッチング工程を同時に行うことができる。
【0066】
図12に示すように、第1凹部33と第3凹部34が対向し、第2凹部(21~24)と第4凹部(25~28)が対向するように配置し、第1部材10と第2部材20とを接着剤等により接合させる。
【0067】
図12に示した第1部材10と第2部材20の両者を製造するプロセスは以下のとおりである。まず、シリコン基板7(第1のシリコン基板)の所定の第1領域71(図10(c)参照)に深掘反応性イオンエッチングにより第1凹部33を形成する。次に、第2のシリコン基板(図示せず)の第1領域71と面対称となる領域に深掘反応性イオンエッチングにより第3凹部34を形成する。
【0068】
次に、シリコン基板7(第1のシリコン基板)の所定の第2領域72(図11(b)参照)をエッチングして第2凹部(21~24)を形成する。次に、第2のシリコン基板(図示せず)の第2領域72と面対称となる領域をエッチングして第4凹部(25~28)を形成する。
【0069】
次に、第1凹部33及び第3凹部34が対向し、かつ、第2凹部(21~24)及び第4凹部(25~28)が対向するようにして、第1のシリコン基板及び第2のシリコン基板を向かい合わせて接合する。
【0070】
図13に、本開示の一実施形態の変形例に係る磁界センサヘッド102を構成する第1部材10及び第2部材20を接合した状態の断面図を示す。図13には、光ファイバ1を第2凹部(21~24)及び第4凹部(25~28)に配置し、第1凹部33及び第3凹部34に磁性体31を充填した状態を示している。
【0071】
図13において、磁性膜11を第2凹部23と第4凹部27との間に配置した例を示しているがこのような例には限定されない。即ち、磁性膜11を第2凹部22と第4凹部26との間に配置してもよく、磁性膜11を第2凹部24と第4凹部28との間に配置してもよい。即ち、図8に示すように、導体200を切り欠き部32のどの位置に配置するかに応じて、磁性膜11の位置を任意の位置に設定してよい。
【0072】
(FETの測定例)
図14は、本開示の一実施形態に係る磁界センサを用いて、電界効果トランジスタ(FET)の端子電流によって生じる磁界強度を測定する状態を示す斜視図である。FET300が、第1基板401に対して垂直に配置された第2基板402に設けられ、FET300の3つの端子(301~303)が第1基板401に接続されている。このとき、端子302に流れる電流によって生じる磁界強度を測定する際には、端子302に磁界センサヘッド102を端子302に係合させる。
【0073】
磁界センサヘッド102は切り欠き部を有しているため、FET等の小型の電子デバイスの端子に対して容易に係合させることができる。
【0074】
一般的にFET等の電子デバイスの端子は数mm程度であり、また、磁界センサに用いる光ファイバの径も100μm程度であるため、光ファイバの先端に設けた磁性膜を測定対象の端子近傍に近接させることは難しい。しかしながら、本開示の実施形態に係る磁界センサによれば、切り欠き部によって導体を挟み込むことができるため、磁界センサに内在する磁性膜を容易に導体に近接させることができる。
【0075】
以上の説明において、磁界センサヘッドの例として、半円状の係合部に切り欠き部を設けた構造(101)、及び、所謂十手状の構造(102)の例を示したがこれらは一例であって、これらの構造には限定されない。
【符号の説明】
【0076】
1 光ファイバ
2 保持部
3 係合部
7 シリコン基板
10 第1部材
10S 第1主面
11 磁性膜
12 反射膜
20 第2部材
20S 第2主面
21~24 第2凹部
25~28 第4凹部
31 磁性体
32 切り欠き部
33 第1凹部
34 第3凹部
101、102 磁界センサヘッド
200 導体
1000 磁界センサ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14