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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009725
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】外壁施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/56 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
E04B2/56 642F
E04B2/56 642D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113236
(22)【出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】大久保 雅司
(72)【発明者】
【氏名】添田 智美
(72)【発明者】
【氏名】日村 みのり
【テーマコード(参考)】
2E002
【Fターム(参考)】
2E002EA01
2E002EA02
2E002FB08
2E002FB14
2E002GA01
2E002JC02
2E002JD02
2E002MA05
2E002MA07
(57)【要約】
【課題】複数の外壁面材が上下に並べられた外壁を有する建物を効率的に施工でき、また、外壁に設けられた一時開口を屋内側より効率よく閉じることができる外壁施工方法を提供する。
【解決手段】この建物の施工方法は、複数の外壁面材51が上下に並べられ且つ部分的に上記外壁面材51を配置しないことで一時的な開口を形成できる一時開口形成外壁パネル5Aを、建物の躯体7の外壁側に複数枚横並びに取り付けた後に、1枚の外壁面材51の裏面に縦胴縁部材502が配置された単パネル構造体501を、上記開口内に位置させるとともに、上記縦胴縁部材502の下部側に一時的に取り付けたキャスタ900によって、上記単パネル構造体501を上記開口の下辺近傍の耐風梁72上で支持し、当該単パネル構造体501を、横隣の一時開口形成外壁パネル5A′の開口へと移動させる。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の外壁面材が上下に並べられ且つ部分的に上記外壁面材を配置しないことで一時的な開口を形成できる一時開口形成外壁パネルを、建物の躯体の外壁側に複数枚横並びに取り付けた後に、外壁面材の裏面に縦胴縁部材が配置された単パネル構造体を、上記建物の屋内側から、上記一時的な開口の位置に装着する外壁施工方法であって、
上記開口の高さを、上記単パネル構造体の高さよりも高くした状態で、上記単パネル構造体を上記開口内に位置させるとともに、上記縦胴縁部材の下部側に取り付けた脚部材によって、上記単パネル構造体を上記開口の下辺近傍の上記建物上で支持し、当該単パネル構造体を、横隣の一時開口形成外壁パネルの開口へと移動させ、この移動後の位置で上記脚部材を外した上で、上記一時開口形成外壁パネルの上記開口の高さを低くして当該一時開口形成外壁パネルの上記開口に上記単パネル構造体を取り付けることを特徴とする外壁施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の外壁施工方法において、上記脚部材を装着する前に、上記単パネル構造体の上記外壁面材の上縁部に係合するとともに上記開口の上辺をなす外壁面材の下縁部にも係合して上記単パネル構造体の面外方向の倒れを抑制する倒れ抑制具を、取り付けることを特徴とする外壁施工方法。
【請求項3】
請求項2に記載の外壁施工方法において、上記外壁面材はいずれも同じ上縁部形状および下縁部形状を有しており、上記倒れ抑制具の上側部は、上記外壁面材の上縁部の部分形状を有し、下側部は、上記外壁面材の下縁部の部分形状を有することを特徴とする外壁施工方法。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の外壁施工方法において、上記脚部材はキャスタであり、このキャスタの車輪を上記建物の梁上で転がしながら、当該単パネル構造体を、横隣の一時開口形成外壁パネルの開口へと移動することを特徴とする外壁施工方法。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の外壁施工方法において、上記建物の梁はウェブ部を水平に位置させたH形鋼であり、上記脚部材を上記ウェブ部上に位置させることを特徴とする外壁施工方法。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の外壁施工方法において、一時開口形成外壁パネルの屋内側に上記建物の主柱が位置しており、上記単パネル構造体を、上記主柱の屋外側を通して横隣の上記主柱を跨ぐ位置にある一時開口形成外壁パネルの開口へと移動させることを特徴とする外壁施工方法。
【請求項7】
請求項6に記載の外壁施工方法において、上記単パネル構造体の両端側の縦胴縁部材および少なくとも他の1本の縦胴縁部材に上記脚部材を取り付けておき、上記主柱の位置で分断されている上記建物の梁を跨ぐときに、上記単パネル構造体の上記移動の進行方向先端の1個の脚部材を取り外し、上記単パネル構造体の上記移動の進行方向先端が上記主柱を越えた後に、上記取り外した脚部材を再度取り付けることを特徴とする外壁施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の外壁面材が上下に並べられた外壁を施工する外壁施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、大判化外壁パネルおよびこの大判化外壁パネルを建物の躯体に取り付ける構造が開示されている。大判化外壁パネルは、パネルフレームと、このパネルフレームに取付けられた上下に並ぶ複数枚の、断熱材を含む横長形状の外壁面材とを備える。また、上記パネルフレームは、左右の縦フレーム材および上下端の横フレーム材が矩形に組まれた外周フレーム部と、この外周フレーム部に互いに横幅方向に間隔を開けて配置されて上下端が上下の横フレーム材に接合された複数の縦胴縁とからなる。
【0003】
また、特許文献2には、足場を組むことなく、建物開口部毎に設置することによって建物開口部の工事をなし得るようにした養生装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-113839号公報
【特許文献2】特開2006-152695号公報
【特許文献3】特開2020-165245号公報
【特許文献4】特開2020-165246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献はいずれも、複数の外壁面材が上下に並べられた外壁を有する建物の効率的な施工方法を開示するものではない。また、外壁に設けられた一時開口をどう閉じるかについて開示しない。
なお、特許文献2、3には、外壁に設けられた一時開口の閉じ方が開示されているが主柱前の一時開口の方法は開示されていない。
【0006】
この発明は、上記の事情に鑑み、外壁に設けられた一時開口を屋内側より効率よく閉じることができる外壁施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の外壁施工方法は、上記の課題を解決するために、複数の外壁面材が上下に並べられ且つ部分的に上記外壁面材を配置しないことで一時的な開口を形成できる一時開口形成外壁パネルを、建物の躯体の外壁側に複数枚横並びに取り付けた後に、1枚の外壁面材の裏面に縦胴縁部材が配置された単パネル構造体を、上記建物の屋内側から、上記一時的な開口の位置に装着する外壁施工方法であって、
上記開口の高さを、上記単パネル構造体の高さよりも高くした状態で、上記単パネル構造体を上記開口内に位置させるとともに、上記縦胴縁部材の下部側に一時的に取り付けた脚部材によって、上記単パネル構造体を上記開口の下辺近傍の上記建物の梁上で支持し、当該単パネル構造体を、横隣の一時開口形成外壁パネルの開口へと移動させ、この移動後の位置で上記脚部材を外した上で、上記一時開口形成外壁パネルの上記開口の高さを低くして当該一時開口形成外壁パネルの上記開口に上記単パネル構造体を取り付けることを特徴とする。
【0008】
上記の方法であれば、上記建物の屋内側の任意の場所で作製した単パネル構造体を、近くの一時開口形成外壁パネルの開口に位置させ、これを横方向に移動させることで、順次に横隣りの一時開口形成外壁パネルの開口へと運んで取り付けていくことができる。また、上記単パネル構造体を上記開口の下辺近傍の上記建物の梁上で支持するので、この梁に相当する部材を別途設けるのに比べて、簡単かつ迅速に外壁施工を行うことができる。
【0009】
上記脚部材を装着する前に、上記単パネル構造体の上記外壁面材の上縁部に係合するとともに上記開口の上辺をなす外壁面材の下縁部にも係合して上記単パネル構造体の面外方向の倒れを抑制する倒れ抑制具を、取り付けてもよい。これによれば、上記単パネル構造体が上記開口内に位置して横方向に移動する際に面外方向に倒れるのを抑制することができる。
【0010】
上記外壁面材はいずれも同じ上縁部形状および下縁部形状を有しており、上記倒れ抑制具の上側部は、上記外壁面材の上縁部の部分形状を有し、下側部は、上記外壁面材の下縁部の部分形状を有してもよい。これによれば、上記倒れ抑制具を、上側の外壁面材の下縁部と下側の外壁面材の上縁部とに、極力がたつきなく係合させることができる。
【0011】
上記脚部材はキャスタであり、このキャスタの車輪を上記建物の梁上で転がしながら、当該単パネル構造体を、横隣の一時開口形成外壁パネルの開口へと移動させてもよい。これによれば、一時開口形成外壁パネルの開口に位置させた上記単パネル構造体を、小さな押し力で横隣の一時開口形成外壁パネルの開口へ円滑に移動させることができる。
【0012】
上記建物の梁はウェブ部を水平に位置させたH形鋼であり、上記脚部材を上記ウェブ部上に位置させてもよい。これによれば、上記梁の両フランジがガイド壁として機能するので、上記脚部材の上記梁からの脱落を防止することができる。
【0013】
一時開口形成外壁パネルの屋内側に上記建物の主柱が位置しており、上記単パネル構造体を、上記主柱の屋外側を通して横隣の上記主柱を跨ぐ位置にある一時開口形成外壁パネルの開口へと移動させてもよい。これによれば、上記主柱が存在する箇所で屋内側より直接的に上記単パネル構造体を嵌め込むことができない場合でも、上記主柱が存在する箇所に対しても上記単パネル構造体を嵌め込むことができる。
【0014】
上記単パネル構造体の両端側の縦胴縁部材および少なくとも他の1本の縦胴縁部材に上記脚部材を取り付けておき、上記主柱の位置で分断されている上記建物の梁を跨ぐときに、上記単パネル構造体の上記移動の進行方向先端の1個の脚部材を取り外し、上記単パネル構造体の上記移動の進行方向先端が上記主柱を越えた後に、上記取り外した脚部材を再度取り付けてもよい。
【0015】
これによれば、上記単パネル構造体が上記分断された上記梁を跨ぐときに上記脚部材が障害となる場合は、この脚部材を取り外して、上記単パネル構造体の上記移動の進行方向後端側の脚部材と他の縦胴縁部材に取り付けられた脚部材によって、片持ち状に上記単パネル構造体を支持しつつ、上記単パネル構造体を、上記分断箇所を跨いで移動させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明であれば、外壁に設けられた一時開口を屋内側から効率よく閉じることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】発明の実施形態にかかる建物の施工方法で用いられる一時開口形成外壁パネルを示した背面図である。
図2】同図(A)は図1の外壁パネルにおける外壁面材の上部および下部の断面を示した説明図であり、同図(B)は図1の上下に並ぶ外壁面材の嵌め込み箇所を示した説明図である。
図3図1の一時開口形成外壁パネルを地上で組み立てる地組架台の一例を示した正面図である。
図4図1の一時開口形成外壁パネルを建物の躯体に取り付けた状態を示した説明図である。
図5図1の一時開口形成外壁パネルを建物の躯体に取り付けるために天秤で吊り上げている状態を示した説明図である。
図6】実施形態にかかる外壁施工で用いる単パネル構造体を示した平面視、側面視および背面視の説明図である。
図7】仮固定部材を示した平面視、正面視、側面視および斜視の説明図である。
図8図7の仮固定部材の装着状態を示した平面視、正面視および側面視の説明図である。
図9】実施形態にかかる外壁施工における一時開口形成外壁パネルの建物への装着段階(第1段階)を示した外壁部分の背面図および側面断面図である。
図10図9の後段階であって、一時開口形成外壁パネルの開口形成段階(第2段階)を示した外壁部分の背面図および側面断面図である。
図11図10の後段階であって、一時開口形成外壁パネルの開口への単パネル構造体の建て込み段階(第3段階)を示した外壁部分の背面図および側面断面図である。
図12図11の後段階であって、単パネル構造体の脱落防止作業段階(第4段階)を示した外壁部分の背面図および側面断面図である。
図13図12の後段階であって、単パネル構造体を一時開口形成外壁パネルの開口より上側の2枚の外壁面材に一体化する段階(第5段階)を示した外壁部分の背面図および側面断面図である。
図14図13の後段階であって、一体化された3枚の外壁面材を降下させて一時開口形成外壁パネルの開口より下側の部分に固定する段階(第6段階)を示した外壁部分の背面図および側面断面図である。
図15】実施形態にかかる外壁施工における一時開口形成外壁パネルの開口への単パネル構造体の建て込みからキャスタ取付の工程を示した説明図である。
図16図15の後工程であって、単パネル構造体の横移動操作を示した説明図である。
図17図16の後工程であって、単パネル構造体の横移動後のキャスタ取り外し工程を示した説明図である。
図18】実施形態にかかる外壁施工における倒れ抑制具の装着および取り外しを示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、この実施の形態で用いられる一時開口形成外壁パネル5は、複数の横長の外壁面材51を上下に並べて下地材である第1下地材(縦胴縁)52で相互に連結されて一体化された形態で建物の躯体に取り付けられる構造を有する。図1に示す例では、6本の第1下地材52を備えており、各第1下地材52は、リップ溝形鋼等の開放断面鋼材或いは角形鋼管などの閉鎖断面鋼材からなる。
【0019】
上記外壁面材51は、例えば、図2(A)および図2(B)に示すように、不燃断熱材51aを鋼板51b、51cで挟み込んだ金属サンドイッチパネルである。2枚の外壁面材51を上下に並べた場合、下段に位置する外壁面材51の上端面に形成された横幅方向に長い2か所の凹部51dに、上段に位置する外壁面材51の下端面に形成された横幅方向に長い2か所の凸部51eが嵌まり込むことにより、上下の外壁面材51が互いに面外方向に位置ずれしないように組み合わされる。
【0020】
また、例えば、図3に示す地組架台1を用いることにより、上記複数の外壁面材51を上下に並べて第1下地材52で連結した外壁パネルを、当該外壁パネルが取り付けられる建物の躯体の外壁取付箇所とは異なる場所で組み立てることができる。上記地組架台1は、例えば、複数の柱状部材11と梁状部材12とを縦横に組んでなるものであるが、その構造については図3に示すものに限定されない。
【0021】
作業者は、上記第1下地材52を地組架台1にセットした後に、外壁面材51をセットし、このセットした上記外壁面材51の上端部側にビス等をねじ込み、上記外壁面材51を、先にセットした上記第1下地材52に固定する。この作業を繰り返すことで一時開口形成外壁パネル5が作製される。
【0022】
図3に示した一時開口形成外壁パネル5では、例えば、上から2段目の外壁面材51が存在すべき箇所において第1下地材52が分断されて上下に離間しており、最上位置の外壁面材51は上側の第1下地材52に装着され、上から2段目となる外壁面材51および第1下地材52は未装着とされ、上から3段目以下では全ての外壁面材51が下側の第1下地材52に装着されている。すなわち、この例の一時開口形成外壁パネル5は、上から2段目の1段のみ外壁面材51および第1下地材52が存在しない構造を有する。一時開口形成外壁パネル5は、このような構造に限らず、上から3段目の1段のみ外壁面材51および第1下地材52が存在しない等の他の構造でもよい。
【0023】
一時開口形成外壁パネル5は、図1に示したように、所定の縦長さを有する第2下地材53を備えている。第2下地材53は、第1下地材52が不存在の箇所(一時開口となる箇所)を跨いで、上下に位置する第1下地材52と接続される。第2下地材53は、地組架台1を用いて第1下地材52に取り付けることができる。第2下地材53は、第1下地材52に対して着脱自在に取り付けられており、一時開口形成外壁パネル5が建物の躯体7に取り付けられた後で一旦外せるようになっている。
【0024】
第1下地材52は、例えば、2つの対向面部およびこれら対向面部を繋ぐ閉鎖面部を有するリップ溝形鋼からなり、上記対向面部の一方の側において外壁面材51がビス固定されている。
【0025】
また、図4に示すように、一時開口形成外壁パネル5が取り付けられる建物の躯体7は、一例として、屋根7Aが支持される屋根梁71、耐風梁72、床梁73等を備えている。また、屋根梁71には、繋ぎ材71aが所定のピッチで固定されており、また、繋ぎ材71aを貫通させて屋根側の耐風梁72が設けられている。一時開口形成外壁パネル5の建物の躯体7への取り付けにおいては、例えば、リップ溝形鋼である第1下地材52の上記対向面部の他方の側が、上記建物の躯体7における耐風梁72、床梁73等に、Lアングル等の金具、固定ボルト、高さ調整ボルト等を用いて固定される。
【0026】
また、例えば、第2下地材53もリップ溝形鋼であり、この第2下地材53は、その閉鎖面部を上記第1下地材52の閉鎖面部に対面させた状態で上記第1下地材52の横位置に取り付けられる。上記閉鎖面部には、例えば、所定ピッチで挿通孔が形成されており、この挿通孔に縫い通された締結部材(ボルト・ナット等)によって、第2下地材53が第1下地材52に着脱自在に取り付けられる。なお、第1下地材52および第2下地材53が閉鎖断面形状を有する角形鋼管である場合でも、同様のボルトによる取付構造とすることができる。また、上記の着脱自在とするための構造は、ボルトとナットを用いる構造に限らない。
【0027】
また、一時開口形成外壁パネル5は、図5に示すように、例えば、天秤8を用いて吊り上げることができる。この天秤8は、一方の側に固定部81を備え、他方の側にカウンターウェイト82を備える。上記固定部81は、一時開口形成外壁パネル5の第1下地材52、第2下地材53、外壁面材51、或いは、これらに仮固定された部材に固定される。天秤8はクレーン等の吊元83によって吊られる。
【0028】
建物の施工においては、上記のように吊り上げた一時開口形成外壁パネル5を第1下地材52によって建物の躯体7に取り付けていく。例えば、一時開口形成外壁パネル5における上側の第1下地材52を、上側の耐風梁72に固定し、下側の第1下地材52を下側の耐風梁72に固定する。
【0029】
上記のように、外壁面材51における第1下地材52を建物の躯体7に固定した後に、第2下地材53を、第1下地材52から取り外すことができる。第1下地材52は上記のように躯体7側に固定されているので、第2下地材53を第1下地材52から取り外しても、外壁面材51が躯体7から外れることはない。そして、このように第2下地材53を第1下地材52から取り外すことで、外壁面材51の存在しない箇所において第2下地材53も存在しない一時的な開口、すなわち、下地材で遮られない施工時利用が可能な開口を形成する。施工時利用としては、例えば、足場の屋内側からの持出がある。
【0030】
次に、一時開口形成外壁パネル5における一時開口の閉じ施工に用いる単パネル構造体501の一例を、図6に基づいて説明する。この単パネル構造体501は、1枚の外壁面材51の裏面に縦胴縁部材502が当該縦胴縁部材502の上部側のみビス503によってビス留めされており、縦胴縁部材502の下部側が外壁面材51の下部に仮固定部材9によって仮固定された構造を有する。実施形態では、上記1枚の外壁面材51に対して6本の縦胴縁部材502がそれぞれ1本のビス503によってビス留めされている。そして、最も端の2本の縦胴縁部材502としては四角形鋼管が用いられ、中央側の4本の縦胴縁部材502としてはリップ溝形鋼が用いられている。また、単パネル構造体501における外壁面材51は、他の外壁面材51と同一の構造を有する。
【0031】
上記仮固定部材9は、例えば、図7および図8に示すように、縦胴縁部材502に装着される装着部91と、外壁面材51の下部の凹部51dに係合する係合部92とを備える。係合部92は、外壁面材51の2個の凹部51dのうちの例えば屋外側の凹部51dに凹凸係合する凸状部92aを有する。また、係合部92は、凸状部92aから外壁面材51の厚み方向に延びる延長部92bを有する。装着部91は、延長部92bの端部から立ち上がって縦胴縁部材502内に進入できる立上部91aと、この立上部91aに直交し、凸状部92aから遠ざかる方向に当該立上部91aから延設された板部91eと、この板部91eの端から上記立上部91aと平行に垂下する垂下部91fとを有する。
【0032】
立上部91aは、縦胴縁部材502であるリップ溝形鋼における外壁面材51に接する側の対向面部(フランジ部)の内面に対向する。また、上記板部91eは、縦胴縁部材502であるリップ溝形鋼における外壁面材51に接しない側の対向面部(フランジ部)の内面近傍に至る長さを有し、垂下部91fは、当該対向面部(フランジ部)に対向する。
【0033】
垂下部91fには、挿通孔91hが形成されている。そして、当該挿通孔91hが位置する箇所の対向面部(フランジ部)にも挿通孔が形成されており、上記挿通孔を用いて、ボルト・ナット(締結部材)91gを取り付けて、仮固定部材9を縦胴縁部材502に取り付けることができる。なお、仮固定部材9は、縦胴縁部材502である角形鋼管にも装着できる。
【0034】
なお、仮固定部材9に代えて直交する2面を有する山形部材を用い、当該2面を上記縦胴縁部材502と上記外壁面材51のそれぞれに仮ビス留めしてもよい。ただし、これでは、後で仮ビスを外した際に上記外壁面材51に穴あきが生じる。穴あきを生じさせないためには、装着部91と係合部92とを備える仮固定部材9を用いるのがよい。装着部91および係合部92は、図示のものに限定されない。
【0035】
次に、一時開口形成外壁パネル5への単パネル構造体501の配置施工を、図9乃至図14を用いて説明する。なお、以下の説明では、単パネル構造体501は、上記の一時開口形成外壁パネル5とは異なる構造を有する一時開口形成外壁パネル5Aに嵌め込まれることとする。また、外壁面材51の突出量、耐風梁の位置や鋼材形状等は例示であり、また、先に用いた図4および図5における下地材に対する外壁面材の突出量、耐風梁の位置や鋼材形状等も例示である。これらの図において、上記下地材に対する外壁面材の突出量、耐風梁の位置や鋼材形状等は必ずしも同じにはなっていない。また、図9乃至図14においては、単パネル構造体501における一時開口形成外壁パネル5Aの面内水平方向に移動を生じない基本的な施工手順を示している。
【0036】
図9に示す第1段階は、建物の躯体7に一時開口形成外壁パネル5Aが取り付けられている段階であり、第2下地材53は、未だ第1下地材52から取り外されていない。一時開口形成外壁パネル5Aにおける開口より上側は、ファスナー4によって上側の耐風梁72に仮固定される。なお、ファスナー4は、特許文献3等に示されている既知構造のものである。また、一時開口形成外壁パネル5Aにおける開口より下側は、固定部材55によって下側の耐風梁72に固定される。下側の耐風梁72は、ウェブ部を水平に位置させたH形鋼であり、両側フランジ部を鉛直に立てて位置させている。固定部材55は、対抗する2面が繋ぎ部で繋がれた短寸の溝形鋼からなり、当該繋ぎ部と上記第1下地材52との間に耐風梁72のフランジ部の下側を挟み、上記フランジ部の下方に当該フランジ部の板厚と同等の板を介在させ、上記該繋ぎ部と上記板を貫通する締結部材の締め込みで耐風梁72の上記フランジ部に上記第1下地材52を固定できる。
【0037】
図10に示す第2段階では、作業者は、第2下地材53を第1下地材52に固定していた締結部材を外して、第2下地材53を下方へ移動させて、開口より下側の第1下地材52に仮固定する。さらに、作業者は、ファスナー4を操作して、上側2枚の外壁面材51の高さ位置を、設計位置よりも高くし、開口の高さを高くする。第1下地材52は、上記のように躯体7側に固定されているので、第2下地材53を第1下地材52から取り外しても、上記外壁面材51が躯体7から外れることはない。そして、このように第2下地材53を第1下地材52から取り外すことで、外壁面材51の存在しない箇所において第2下地材53も存在しない一時的な開口、すなわち、下地材で遮られない施工時利用が可能な開口を形成する。施工時利用としては、例えば、足場の屋内側からの持出がある。
【0038】
図11に示す第3段階では、上記開口に単パネル構造体501を位置させる。この時の単パネル構造体501の高さ位置を、設計位置よりも高くする。単パネル構造体501の配置の際の当該単パネル構造体501の持ち上げは、例えば、屋内側に配置した揚重機を用いて行うことができる。
【0039】
図12に示す第4段階では、一時開口形成外壁パネル5Aの両端からそれぞれ2本目の第2下地材53を第1下地材52に固定していた締結部材を外し、これら第2下地材53を、それぞれ上方へ移動させて、縦胴縁部材502の下側ボルト挿通孔に締結部材を通して固定する。第2下地材53は、下側の耐風梁72と開口の下側の外壁面材51とに挟まれているので、単パネル構造体501の面外方向への移動は規制され、単パネル構造体501の脱落が防止される。
【0040】
また、図12の第4段階では、次工程の準備として、一時開口形成外壁パネル5Aの両端の第2下地材53を、図9に示した当初位置に戻し、開口より上側の第1下地材52に締結部材で固定する。
【0041】
図13に示す第5段階では、上記のように当初位置に戻した上記両端の第2下地材53に、単パネル構造体501の両端の縦胴縁部材502をそれぞれ締結部材によって固定する。これにより、一時開口形成外壁パネル5Aの開口よりも上側部分と単パネル構造体501とが一体化される。
【0042】
図14に示す第6段階では、上記一体化させた上側3枚の外壁面材51部分の高さ位置を、ファスナー4の操作により、設計位置に戻すとともに、全ての第2下地材53も設計位置に戻し、全ての第2下地材53を締結部材によって第1下地材52および縦胴縁部材502に固定する。
【0043】
次に、図15乃至図17に基づいて、単パネル構造体501の横移動を伴う外壁施工例を示す。図15の(a)に示す状態は、図11に示した第3段階に相当し、上記開口に位置させた単パネル構造体501の高さ位置を、設計位置よりも高くしている。図15の(b)に示す状態では、単パネル構造体501を下げて、この単パネル構造体501の外壁面材51の上端とその上方に位置している外壁面材51との間に隙間を形成する。そして、この隙間から、倒れ抑制具505を挿入し、この倒れ抑制具505を単パネル構造体501の外壁面材51の上縁部の両端側に装着する。
【0044】
倒れ抑制具505は、図18に示すように、単パネル構造体501の外壁面材51の上縁部に係合するとともに上記開口の上辺をなす一時開口形成外壁パネル5Aの外壁面材51の下縁部にも係合して単パネル構造体501の面外方向の倒れを抑制する。上記倒れ抑制具505の上側部505aは、外壁面材51の上縁部の凸部51eと同じ凸形状を有し、下側部505bは、上記外壁面材51の下縁部の凹部51dと同じ凹形状を有する。図15の(b)の状態は、図18の(a)および(b)に示す状態となる。
【0045】
図15の(c)の状態は、単パネル構造体501の縦胴縁部材502の下部側面にキャスタ(脚部材)900の取付部を取り付け、キャスタ900の車輪を耐風梁72上に載置した状態である。この状態は、図18の(c)で示す状態となり、上記倒れ抑制具505による単パネル構造体501の倒れ抑制状態となる。
【0046】
キャスタ900の車輪は、下側の耐風梁72のウェブ部上に位置させる。また、図15乃至図17の施工例では、耐風梁72は、主柱700の位置で分断されている。そして、キャスタ900は、単パネル構造体501の両端側の縦胴縁部材502および単パネル構造体501の移動の進行方向先端から3本目の縦胴縁部材502の3か所に取り付けられている。また、少なくともキャスタ900が取り付けられる縦胴縁部材502に対しては、仮固定部材9を取り付けておく。
【0047】
次に、図16の(a)に示すように、単パネル構造体501を横に押して移動する。一時開口形成外壁パネル5A′の屋内側に上記建物の主柱700が位置しているので、一時開口形成外壁パネル5Aの位置で屋内側から挿入した単パネル構造体501を、主柱700の屋外側を通して横隣の一時開口形成外壁パネル5A′の開口へと移動させる。
【0048】
図16の(b)に示すように、単パネル構造体501が主柱700の位置で分断されている耐風梁72を跨ぐときには、単パネル構造体501の上記移動の進行方向先端の1個のキャスタ900を取り外す。
【0049】
図16の(c)に示すように、作業者は、単パネル構造体501の上記移動の進行方向先端が主柱700を越えた後に、上記取り外したキャスタ900を再度取り付ける。一方、単パネル構造体501の移動の進行方向先端から3本目の縦胴縁部材502に取り付けていたキャスタ900を外す。
【0050】
そして、図17の(a)に示すように、作業者は、単パネル構造体501を、さらに横に押し、横隣の一時開口形成外壁パネル5A′の開口に位置させる。
【0051】
次に、先述した図12に示した第4段階と同様に、単パネル構造体501の脱落防止の作業を行う。すなわち、図17の(b)に示すように、一時開口形成外壁パネル5A′の両端からそれぞれ2本目の第2下地材53を第1下地材52に固定していた締結部材を外し、これら第2下地材53を、それぞれ上方へ移動させて、縦胴縁部材502の下側ボルト挿通孔に締結部材を通して固定する。
【0052】
次に、図17の(c)に示すように、全てのキャスタ900および仮固定部材9を取り外し、単パネル構造体501の高さ位置を下げて、開口より上側の外壁面材51の下縁側との間に隙間を形成し、倒れ抑制具505を取り外す。この状態は、図18の(d)および(e)に示す状態となる。
【0053】
そして、図12の第4段階で説明した次工程の準備として、一時開口形成外壁パネル5Aの両端の各第2下地材53を、図9に示した当初位置に戻し、図13に示す第5段階、図14に示す第6段階に進む。
【0054】
上記の施工方法であれば、建物の屋内側の任意の場所で作製した単パネル構造体501を、近くの一時開口形成外壁パネル5Aの開口に位置させ、これを横方向に移動させることで、順次に他の主柱が前にある一時開口形成外壁パネル5A′の開口へと運んで取り付けていくことができる。また、上記単パネル構造体501を上記開口の下辺近傍の上記建物の梁(例えば、耐風梁72)上で支持するので、この梁に相当する部材を別途設けるのに比べて、簡単かつ迅速に外壁施工を行うことができる。
【0055】
単パネル構造体501の外壁面材51の上縁部に倒れ抑制具505を取り付けると、単パネル構造体501が上記開口内に位置して横方向に移動する際に面外方向に倒れるのを抑制することができる。倒れ抑制具505の上側部505aが外壁面材51の上縁部の部分形状を有し、下側部505bが外壁面材51の下縁部の部分形状を有すると、倒れ抑制具505は、その上側の外壁面材51の下縁部と下側の外壁面材51の上縁部とに、極力がたつきなく係合できる。
【0056】
上記脚部材がキャスタ900であると、一時開口形成外壁パネル5Aの開口に位置させた単パネル構造体501を、小さな押し力で横隣の一時開口形成外壁パネル5A′の開口へ円滑に移動させることができる。なお、上記脚部材が低摩擦係数の板であり、上記脚部材が接触する耐風梁72側にも低摩擦係数の面を有するシートを張り付けた場合も同様に、小さな押し力で横隣の一時開口形成外壁パネル5Aの開口へ円滑に移動させることが可能である。
【0057】
上記脚部材が接触する梁がウェブ部を水平に位置させたH形鋼であり、上記脚部材を上記ウェブ部上に位置させると、上記梁の両フランジがガイド壁として機能するので、上記脚部材の上記梁からの脱落を防止することができる。
【0058】
単パネル構造体501を、主柱700の屋外側を通して横隣の一時開口形成外壁パネル5A′の開口へと移動させることで、主柱700が存在する箇所で屋内側より直接的に単パネル構造体501を嵌め込むことができない場合でも、主柱700が存在する箇所に対して単パネル構造体501を嵌め込むことができる。
【0059】
主柱700の位置で分断されている建物の梁を跨ぐときに、単パネル構造体501の上記移動の進行方向先端の1個の脚部材を取り外し、単パネル構造体501の上記移動の進行方向先端が主柱700を越えた後に、上記取り外した脚部材を再度取り付けると、単パネル構造体501は、上記分断された上記梁を容易に跨ぐことができる。
【0060】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 :地組架台
4 :ファスナー
5 :一時開口形成外壁パネル
5A :一時開口形成外壁パネル
5A′ :一時開口形成外壁パネル(主柱前配置)
7 :躯体
7A :屋根
8 :天秤
9 :仮固定部材
11 :柱状部材
12 :梁状部材
51 :外壁面材
51a :不燃断熱材
51b :鋼板
51c :鋼板
51d :凹部
51e :凸部
52 :第1下地材
53 :第2下地材
55 :固定部材
71 :屋根梁
71a :繋ぎ材
72 :耐風梁
73 :床梁
81 :固定部
82 :カウンターウェイト
83 :吊元
91 :装着部
91a :立上部
91e :板部
91f :垂下部
91h :挿通孔
92 :係合部
92b :延長部
501 :単パネル構造体
502 :縦胴縁部材
503 :ビス
505 :抑制具
505a :上側部
505b :下側部
700 :主柱
900 :キャスタ(脚部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
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図18