(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097275
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】液肥、堆肥及び敷料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C05G 5/20 20200101AFI20230630BHJP
C02F 11/00 20060101ALI20230630BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20230630BHJP
C05F 3/00 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
C05G5/20
C02F11/00 C ZAB
B01D21/01 107A
C05F3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213538
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】306048535
【氏名又は名称】MTアクアポリマー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596001140
【氏名又は名称】株式会社コーンズ・エージー
(71)【出願人】
【識別番号】521568926
【氏名又は名称】道都化学産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100163120
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 嘉弘
(72)【発明者】
【氏名】竹田 健
(72)【発明者】
【氏名】石川 晋也
(72)【発明者】
【氏名】松田 紘子
(72)【発明者】
【氏名】加藤 照彦
(72)【発明者】
【氏名】津村 繁
【テーマコード(参考)】
4D015
4D059
4H061
【Fターム(参考)】
4D015CA11
4D015DB04
4D015DC02
4D015DC07
4D015EA02
4D059AA01
4D059AA07
4D059BE04
4D059BE07
4D059BE08
4D059BE15
4D059BE57
4D059CC01
4D059DB24
4H061CC36
4H061FF01
4H061FF06
4H061GG18
4H061GG48
4H061GG54
(57)【要約】 (修正有)
【課題】液肥として農地に撒くにあたり、土壌や地下水の窒素分濃度の上昇を抑制でき、且つ液量を少なくできる、メタンバイオ発酵消化液から液肥を製造する方法を提供する。
【解決手段】メタンバイオ発酵消化液を固液分離した後、固形物から堆肥や敷料を製造し、ろ液を液肥として利用する場合において、固液分離の際に所定の高分子凝集剤を添加することにより、液肥中に移行する窒素分を少なくすることができ、且つ液肥の液量を少なくすることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜糞尿のメタンバイオ発酵消化液から液肥を製造する方法であって、前記メタンバイオ発酵消化液にカチオン性高分子凝集剤を添加後、固液分離して前記メタンバイオ発酵消化液から固形分を除去することにより、前記メタンバイオ発酵消化液における全窒素分及びアンモニア性窒素分の濃度よりも低い全窒素分及びアンモニア性窒素分の濃度である液肥を得ることを特徴とする、液肥の製造方法。
【請求項2】
前記メタンバイオ発酵消化液の総固形分が1,000~100,000ppmであり、全窒素分が2,000~9,000ppmであり、アンモニア性窒素分が1,000~6,000ppmである、請求項1に記載の液肥の製造方法。
【請求項3】
前記液肥の全窒素分が1,000~5,000ppmであり、アンモニア性窒素分が1,000~4,000ppmである、請求項1又は2に記載の液肥の製造方法。
【請求項4】
前記カチオン性高分子凝集剤が、カチオン性単量体単位として、下記式(1)
【化1】
(但し、上記化学式(1)において、R
1は炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基、R
2及びR
3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~3のアルキル基、Xは酸素原子又はNH、Yは水素原子又はメチル基、Qは炭素数1~4のアルキレン基又は炭素数2~4のヒドロキシアルキレン基、Z
-は対アニオンである。)
で表される(メタ)アクリレート単量体を含む、請求項1乃至3の何れか1項に記載の液肥の製造方法。
【請求項5】
前記カチオン性高分子凝集剤が、ノニオン性単量体単位として、下記式(2)
CH2=CR1-CO-NR2R3・・・化(2)
(但し、上記化学式(2)において、R1は水素原子又はメチル基であり、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~8のアルキル基である。)
で表される(メタ)アクリルアミド系化合物を含む、請求項1乃至4の何れか1項に記載の液肥の製造方法。
【請求項6】
前記カチオン性高分子凝集剤が、ラジカル重合によって製造された共重合体の粉末と、無機塩と、の混合物であって、
前記共重合体におけるカチオン性単量体単位とノニオン性単量体単位との比率(モル比)が1/99~50/50であり、
前記共重合体と前記無機塩とが質量比で9/1~1/9で混合されて成るカチオン性高分子凝集剤である、請求項1乃至5の何れか1項に記載の液肥の製造方法。
【請求項7】
前記カチオン性高分子凝集剤が、塩水分散重合型高分子凝集剤である、請求項1乃至5の何れか1項に記載の液肥の製造方法。
【請求項8】
前記カチオン性高分子凝集剤が、25℃における0.1質量%(重合体換算)塩粘度が1.5~5.5mPa・sであるカチオン性高分子凝集剤である、請求項1乃至7の何れか1項に記載の液肥の製造方法。
【請求項9】
前記カチオン性高分子凝集剤の添加量が、前記メタンバイオ発酵消化液の固形分に対して0.05~5質量%である、請求項1乃至8の何れか1項に記載の液肥の製造方法。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の製造方法によって製造された液肥。
【請求項11】
家畜糞尿のメタンバイオ発酵消化液から堆肥及び/又は敷料を製造する方法であって、前記メタンバイオ発酵消化液にカチオン性高分子凝集剤を添加後、固液分離して前記メタンバイオ発酵消化液から液体分を除去することにより、前記メタンバイオ発酵消化液における全窒素分及びアンモニア性窒素分の濃度よりも高い全窒素分及びアンモニア性窒素分の濃度である堆肥及び/又は敷料を得ることを特徴とする、堆肥及び/又は敷料の製造方法。
【請求項12】
固液分離後の固体分を乾燥及び発酵させる工程をさらに有する、請求項11に記載の堆肥及び/又は敷料の製造方法。
【請求項13】
前記メタンバイオ発酵消化液の総固形分が1,000~100,000ppmであり、全窒素分が2,000~9,000ppmであり、アンモニア性窒素分が1,000~6,000ppmである、請求項11又は12に記載の堆肥及び/又は敷料の製造方法。
【請求項14】
前記液体分の全窒素分が1,000~5,000ppmであり、アンモニア性窒素分が1,000~4,000ppmである、請求項11乃至13の何れか1項に記載の堆肥及び/又は敷料の製造方法。
【請求項15】
前記カチオン性高分子凝集剤が、カチオン性単量体単位として、下記式(1)
【化2】
(但し、上記化学式(1)において、R
1は炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基、R
2及びR
3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~3のアルキル基、Xは酸素原子又はNH、Yは水素原子又はメチル基、Qは炭素数1~4のアルキレン基又は炭素数2~4のヒドロキシアルキレン基、Z
-は対アニオンである。)
で表される(メタ)アクリレート単量体を含む、請求項11乃至14の何れか1項に記載の堆肥及び/又は敷料の製造方法。
【請求項16】
前記カチオン性高分子凝集剤が、ノニオン性単量体単位として、下記式(2)
CH2=CR1-CO-NR2R3・・・化(2)
(但し、上記化学式(2)において、R1は水素原子又はメチル基であり、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~8のアルキル基である。)
で表される(メタ)アクリルアミド系化合物を含む、請求項11乃至15の何れか1項に記載の堆肥及び/又は敷料の製造方法。
【請求項17】
前記カチオン性高分子凝集剤が、ラジカル重合によって製造された共重合体の粉末と、無機塩と、の混合物であって、
前記共重合体におけるカチオン性単量体単位とノニオン性単量体単位との比率(モル比)が1/99~50/50であり、
前記共重合体と前記無機塩とが質量比で9/1~1/9で混合して成るカチオン性高分子凝集剤である、請求項11乃至16の何れか1項に記載の堆肥及び/又は敷料の製造方法。
【請求項18】
前記カチオン性高分子凝集剤が、塩水分散重合型高分子凝集剤である、請求項11乃至16の何れか1項に記載の堆肥及び/又は敷料の製造方法。
【請求項19】
前記カチオン性高分子凝集剤が、25℃における0.1質量%(重合体換算)塩粘度が1.5~5.5mPa・sであるカチオン性高分子凝集剤である、請求項11乃至18の何れか1項に記載の堆肥及び/又は敷料の製造方法。
【請求項20】
前記カチオン性高分子凝集剤の添加量が、前記メタンバイオ発酵消化液の固形分に対して0.05~5質量%である、請求項11乃至19の何れか1項に記載の堆肥及び/又は敷料の製造方法。
【請求項21】
請求項11乃至20の何れか1項に記載の製造方法によって製造された堆肥及び/又は敷料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液肥、堆肥及び敷料の製造方法に関する。詳しくは、本発明は、家畜由来の糞尿を原料として、液肥、堆肥及び敷料を製造する方法に関する。さらに詳しくは、窒素の含有量が制御された液肥、堆肥及び敷料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メタン発酵は、嫌気条件下においてメタン発酵微生物の働きにより、原料である家畜排せつ物や食品廃棄物等の有機物から、再生可能エネルギーであるメタンを発生・回収する技術である。近年は電力固定価格買取制度(FIT)を利用した発電事業が注目されている。メタンを回収した後に残る液体がメタンバイオ発酵消化液(以下、「消化液」ともいう)であり、原料とほぼ同量生成される。消化液を廃棄物として処理した場合には、それに要するエネルギーやコストが大きいことが指摘されている。一方、消化液は窒素、リン酸、カリ等の肥料成分及び有機物を含むため、農地還元利用は有力な選択肢である。食料・農業・農村基本計画(農林水産省)にも、バイオガスの製造過程で発生する消化液等の副産物の有効活用による農業生産コストの削減等を促進するとされている。
【0003】
家畜の糞尿をメタン発酵させることで、メタンを製造し、電力に転換するメタンバイオ発酵法は、エネルギー資源を得る有効な技術であり、循環型社会を推進する上で重要な技術の一つである。メタン発生後の残渣である消化液は、一般に液肥として農地に撒かれ、使用されている。
【0004】
しかし、土壌中の窒素分濃度が全国的に高くなっており、窒素分を多く含む消化液をそのまま農地に撒くことは難しい状況になっている。消化液中の窒素分は主にアンモニア性窒素分であり、それが土壌中ではNO2
-、NO3
-に変換される。これらのNO2
-、NO3
-が地下水に浸透して溶解すると、人間のヘモグロビンと結合し、特に乳幼児に悪影響をもたらす危険性がある。また、最近の農業畜産関係の窒素分の排水規制の暫定値が600mg/Lから500mg/Lに引き下げられている。さらに、特に狭い農地においては、臭気や環境の観点から、消化液をそのまま撒くが難しい状況になってきている。
【0005】
乳牛や養豚等の畜産糞尿のメタンバイオ発酵消化液を廃水処理し、公共河川に放流する方法や、メタンバイオ発酵消化液を好気処理と嫌気処理を交互に実施して処理する方法、MBR膜処理をする方法があるが、コスト的に高価となり、採算が合わない場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
メタンバイオ発酵消化液の処理の方法としては、現在のところ、液肥として農地に撒くこと以外に有効な方法がないが、今後も撒き続ければ、土壌や地下水の窒素分濃度が上昇し、水環境を脅かす状況となる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、メタンバイオ発酵消化液を固液分離した後、固形物から堆肥や敷料を製造し、ろ液を液肥として利用する場合において、固液分離の際に所定の高分子凝集剤を添加することにより、液肥中に移行する窒素分を少なくすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
上記課題を解決する本発明は以下に記載するものである。
【0010】
〔1〕 家畜糞尿のメタンバイオ発酵消化液から液肥を製造する方法であって、前記メタンバイオ発酵消化液にカチオン性高分子凝集剤を添加後、固液分離して前記メタンバイオ発酵消化液から固形分を除去することにより、前記メタンバイオ発酵消化液における全窒素分及びアンモニア性窒素分の濃度よりも低い全窒素分及びアンモニア性窒素分の濃度である液肥を得ることを特徴とする、液肥の製造方法。
【0011】
上記〔1〕に記載の発明は、メタンバイオ発酵消化液を固液分離して固形分を除去することにより液肥を製造する方法であって、メタンバイオ発酵消化液に含まれる窒素分を固形分側に多く分配させることにより、液肥中に含まれる窒素分を低下させる液肥の製造方法である。液肥中に含まれる窒素分を低下させることにより、農地へそのまま散布しても環境等に対する影響を抑えることができる。
【0012】
〔2〕 前記メタンバイオ発酵消化液の総固形分が1,000~100,000ppmであり、全窒素分が2,000~9,000ppmであり、アンモニア性窒素分が1,000~6,000ppmである、〔1〕に記載の液肥の製造方法。
【0013】
〔3〕 前記液肥の全窒素分が1,000~5,000ppmであり、アンモニア性窒素分が1,000~4,000ppmである、〔1〕又は〔2〕に記載の液肥の製造方法。
【0014】
〔4〕 前記カチオン性高分子凝集剤が、カチオン性単量体単位として、下記式(1)
【0015】
【0016】
(但し、上記化学式(1)において、R1は炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~3のアルキル基、Xは酸素原子又はNH、Yは水素原子又はメチル基、Qは炭素数1~4のアルキレン基又は炭素数2~4のヒドロキシアルキレン基、Z-は対アニオンである。)
で表される(メタ)アクリレート単量体を含む、〔1〕乃至〔3〕の何れかに記載の液肥の製造方法。
【0017】
〔5〕 前記カチオン性高分子凝集剤が、ノニオン性単量体単位として、下記式(2)
CH2=CR1-CO-NR2R3・・・化(2)
(但し、上記化学式(2)において、R1は水素原子又はメチル基であり、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~8のアルキル基である。)
で表される(メタ)アクリルアミド系化合物を含む、〔1〕乃至〔4〕の何れかに記載の液肥の製造方法。
【0018】
〔6〕 前記カチオン性高分子凝集剤が、ラジカル重合によって製造された共重合体の粉末と、無機塩と、の混合物であって、
前記共重合体におけるカチオン性単量体単位とノニオン性単量体単位との比率(モル比)が1/99~50/50であり、
前記共重合体と前記無機塩とが質量比で9/1~1/9で混合されて成るカチオン性高分子凝集剤である、〔1〕乃至〔5〕の何れかに記載の液肥の製造方法。
【0019】
〔7〕 前記カチオン性高分子凝集剤が、塩水分散重合型高分子凝集剤である、〔1〕乃至〔5〕の何れかに記載の液肥の製造方法。
【0020】
〔8〕 前記カチオン性高分子凝集剤が、25℃における0.1質量%(重合体換算)塩粘度が1.5~5.5mPa・sであるカチオン性高分子凝集剤である、〔1〕乃至〔7〕の何れかに記載の液肥の製造方法。
【0021】
〔9〕 前記カチオン性高分子凝集剤の添加量が、前記メタンバイオ発酵消化液の固形分に対して0.05~5質量%である、〔1〕乃至〔8〕の何れかに記載の液肥の製造方法。
【0022】
〔10〕 〔1〕乃至〔9〕の何れかに記載の製造方法によって製造された液肥。
【0023】
〔11〕 家畜糞尿のメタンバイオ発酵消化液から堆肥及び/又は敷料を製造する方法であって、前記メタンバイオ発酵消化液にカチオン性高分子凝集剤を添加後、固液分離して前記メタンバイオ発酵消化液から液体分を除去することにより、前記メタンバイオ発酵消化液における全窒素分及びアンモニア性窒素分の濃度よりも高い全窒素分及びアンモニア性窒素分の濃度である堆肥及び/又は敷料を得ることを特徴とする、堆肥及び/又は敷料の製造方法。
【0024】
上記〔11〕に記載の発明は、メタンバイオ発酵消化液を固液分離して液体分を除去することにより堆肥及び/又は敷料を製造する方法であって、メタンバイオ発酵消化液に含まれる窒素分を堆肥及び/又は敷料側に多く分配させることにより、副産物として得られる液体分に含まれる窒素分を低下させる堆肥及び/又は敷料の製造方法である。副産物として得られる液体分中に含まれる窒素分を低下させることにより、これを液肥として農地へそのまま散布しても環境等に対する影響を抑えることができる。
【0025】
〔12〕 固液分離後の固体分を乾燥及び発酵させる工程をさらに有する、〔11〕に記載の堆肥及び/又は敷料の製造方法。
【0026】
〔13〕 前記メタンバイオ発酵消化液の総固形分が1,000~100,000ppmであり、全窒素分が2,000~9,000ppmであり、アンモニア性窒素分が1,000~6,000ppmである、〔11〕又は〔12〕に記載の堆肥及び/又は敷料の製造方法。
【0027】
〔14〕 前記液体分の全窒素分が1,000~5,000ppmであり、アンモニア性窒素分が1,000~4,000ppmである、〔11〕乃至〔13〕の何れかに記載の堆肥及び/又は敷料の製造方法。
【0028】
〔15〕 前記カチオン性高分子凝集剤が、カチオン性単量体単位として、下記式(1)
【0029】
【0030】
(但し、上記化学式(1)において、R1は炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~3のアルキル基、Xは酸素原子又はNH、Yは水素原子又はメチル基、Qは炭素数1~4のアルキレン基又は炭素数2~4のヒドロキシアルキレン基、Z-は対アニオンである。)
で表される(メタ)アクリレート単量体を含む、〔11〕乃至〔14〕の何れかに記載の堆肥及び/又は敷料の製造方法。
【0031】
〔16〕 前記カチオン性高分子凝集剤が、ノニオン性単量体単位として、下記式(2)
CH2=CR1-CO-NR2R3・・・化(2)
(但し、上記化学式(2)において、R1は水素原子又はメチル基であり、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~8のアルキル基である。)
で表される(メタ)アクリルアミド系化合物を含む、〔11〕乃至〔14〕の何れかに記載の堆肥及び/又は敷料の製造方法。
【0032】
〔17〕 前記カチオン性高分子凝集剤が、ラジカル重合によって製造された共重合体の粉末と、無機塩と、の混合物であって、
前記共重合体におけるカチオン性単量体単位とノニオン性単量体単位との比率(モル比)が1/99~50/50であり、
前記共重合体と前記無機塩とが質量比で9/1~1/9で混合して成るカチオン性高分子凝集剤である、〔11〕乃至〔16〕の何れかに記載の堆肥及び/又は敷料の製造方法。
【0033】
〔18〕 前記カチオン性高分子凝集剤が、塩水分散重合型高分子凝集剤である、〔11〕乃至〔16〕の何れかに記載の堆肥及び/又は敷料の製造方法。
【0034】
〔19〕 前記カチオン性高分子凝集剤が、25℃における0.1質量%(重合体換算)塩粘度が1.5~5.5mPa・sであるカチオン性高分子凝集剤である、〔11〕乃至〔18〕の何れかに記載の堆肥及び/又は敷料の製造方法。
【0035】
〔20〕 前記カチオン性高分子凝集剤の添加量が、前記メタンバイオ発酵消化液の固形分に対して0.05~5質量%である、〔11〕乃至〔19〕の何れかに記載の堆肥及び/又は敷料の製造方法。
【0036】
〔21〕 〔11〕乃至〔20〕の何れかに記載の製造方法によって製造された堆肥及び/又は敷料。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、メタンバイオ発酵消化液を固液分離して固形分と液体分とに分離するにあたって、メタンバイオ発酵消化液に含まれる窒素分を固体分側に多く分配させることにより、液体分に含まれる窒素分を低下させることができる。そのため、液肥として農地に多く散布しても環境等に対する影響を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0039】
第1の本発明は、家畜糞尿のメタンバイオ発酵消化液から液肥を製造する方法である。メタンバイオ発酵消化液にカチオン性高分子凝集剤を添加後、固液分離してメタンバイオ発酵消化液から固形分を除去することにより、液肥を得る。この液肥の全窒素分及びアンモニア性窒素分の濃度は、原料となるメタンバイオ発酵消化液における全窒素分及びアンモニア性窒素分の濃度よりも低いことを特徴とする。
【0040】
第2の本発明は、家畜糞尿のメタンバイオ発酵消化液から堆肥及び/又は敷料(畜舎の床に敷く稲わらやおがくず等の総称)を製造する方法である。メタンバイオ発酵消化液にカチオン性高分子凝集剤を添加後、固液分離してメタンバイオ発酵消化液から液体分を除去することにより、堆肥及び/又は敷料を得る。この堆肥及び/又は敷料の全窒素分及びアンモニア性窒素分の濃度は、原料となるメタンバイオ発酵消化液における全窒素分及びアンモニア性窒素分の濃度よりも高いことを特徴とする。
【0041】
即ち、本発明は、家畜糞尿のメタンバイオ発酵消化液を固液分離して、液体分を液肥として利用し、固体分を堆肥及び/又は敷料として利用するにあたって、全窒素分及びアンモニア性窒素分を固形分側に多く移行させることによって、液体分中の全窒素分及びアンモニア性窒素分を相対的に低下させることを特徴とする。
【0042】
(1) メタンバイオ発酵消化液
メタンバイオ発酵消化液は、家畜糞尿や敷料、食品廃棄物等をメタン発酵処理した後に残る液状の物体である。
【0043】
消化液の総固形分(蒸発残留物)は、消化液を乾燥させた総固形分である。消化液の総固形分は1,000ppm以上であることが好ましく、5,000ppm以上であることがより好ましく、10,000ppm以上であることがさらに好ましく、30,000ppm以上であることが特に好ましい。また、消化液の総固形分は、100,000ppm以下であることが好ましく、80,000ppm以下であることがより好ましい。1,000ppm未満である場合には、処理効率が低い。100,000ppmを超える場合、高分子凝集剤との反応が不十分となる。
【0044】
原料となる消化液の全窒素分は、2,000~9,000ppmであることが好ましく、2,500~8,000ppmであることがより好ましく、3,000~7,000ppmであることがさらに好ましい。9,000ppmを超える場合、得られる液肥の全窒素分が高くなり過ぎ、そのまま農地に散布することが困難である場合がある。
【0045】
消化液のアンモニア性窒素分は、1,000~6,000ppmであることが好ましく、1,200~5,000ppmであることがより好ましく、1,400~3,500ppmであることがさらに好ましい。6,000ppmを超える場合、得られる液肥の全窒素分が高くなり過ぎ、そのまま農地に散布することが困難である場合がある。
【0046】
(2) カチオン性高分子凝集剤
本発明において使用される高分子凝集剤は、カチオン性高分子凝集剤である。カチオン性高分子凝集剤としては、カチオン性単量体単位として、下記式(1)
【0047】
【0048】
(但し、上記化学式(1)において、R1は炭素数1~3のアルキル基又はベンジル基、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~3のアルキル基、Xは酸素原子又はNH、Yは水素原子又はメチル基、Qは炭素数1~4のアルキレン基又は炭素数2~4のヒドロキシアルキレン基、Z-は対アニオンである。)
で表される(メタ)アクリレート単量体に由来する単量体単位を含む共重合体から成るカチオン性高分子凝集剤であることが好ましい。
【0049】
上記化学式(1)で表される(メタ)アクリレート単量体の具体例としては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートやジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの塩酸塩及び硫酸塩が例示される。また、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートやジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの塩化メチル等のハロゲン化アルキル付加物、塩化ベンジル等のハロゲン化ベンジル付加物、硫酸ジメチル等の硫酸ジアルキル付加物等である第4級塩が例示される。これらの(メタ)アクリレート単量体は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
これらの好ましい(メタ)アクリレート単量体の中でも、特に高分子凝集剤としての性能に優れ、アクリレート単量体の品質及び貯蔵安定性にも優れることから、ジメチルアミノエチルアクリレートの塩化メチル第4級塩(DAC)を用いることが最も好ましい。
【0050】
本発明において使用されるカチオン性高分子凝集剤を構成する共重合体は、カチオン性単量体単位を1~50mol%で含むことが好ましく、5~35mol%で含むことがより好ましく、10~30mol%で含むことが特に好ましい。カチオン性単量体のモル分率が上記範囲外である場合、消化液のカチオン要求量に合致せず、脱水操作が難しくなる場合がある。
【0051】
本発明において使用されるカチオン性高分子凝集剤を構成する共重合体は、上記のカチオン性単量体とノニオン性単量体との共重合体である。ノニオン性単量体は特に限定されないが、例えば下記化学式(2)で表される(メタ)アクリルアミド系化合物の他、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルキル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニルを挙げることができる。これらのノニオン性単量体の中でも、カチオン性単量体との共重合性に優れており、高分子凝集剤として必要な高分子量化が容易であり、高分子凝集剤としての性能が優れることから、下記化学式(2)で表される(メタ)アクリルアミド系化合物が好ましい。
【0052】
CH2=CR1-CO-NR2R3 ・・・化(2)
【0053】
但し、上記化学式(2)において、R1は水素原子又はメチル基であり、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~8のアルキル基を表す。
【0054】
これらの(メタ)アクリルアミド系化合物の中でも、水溶性であり、高分子凝集剤としての性能が特に優れることから、アクリルアミド(AM)が最も好ましい。
これらのノニオン性単量体は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0055】
本発明において使用されるカチオン性高分子凝集剤を構成する共重合体は、ノニオン性単量体単位を50~99mol%で含むことが好ましく、65~95mol%で含むことがより好ましく、70~90mol%で含むことが特に好ましい。ノニオン性単量体のモル分率が上記範囲外である場合、幅広い性状のメタンバイオ発酵消化液に対して効果を発揮し難い。
【0056】
本発明において使用されるカチオン性高分子凝集剤を構成する共重合体は、前述のカチオン性単量体単位及びノニオン性単量体単位を含むことを必須とするが、本発明の効果を損なわない限り、その他の単量体単位を含むことができる。その他の単量体単位としては、例えば以下のアニオン性単量体や架橋性単量体に由来する単量体単位が挙げられる。
【0057】
アニオン性単量体としては、下記化学式(3)で表される(メタ)アクリル酸及びこれらの塩類の他、ビニルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、マレイン酸等及びこれらの塩類を挙げることができる。これらのアニオン性単量体の中でも、カチオン性単量体との共重合性に優れて、高分子凝集剤として必要な高分子量化が容易であり、高分子凝集剤としての性能が優れることから、下記化学式(3)で表される(メタ)アクリル酸及びそれらの塩類が好ましい。塩類としては、アンモニウム塩並びにナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
【0058】
CH2=CR1-CO-OM ・・・化(3)
【0059】
但し、上記化学式(3)において、R1は水素原子又はメチル基であり、Mは水素原子、アンモニウム基又はアルカリ金属原子を表す。
【0060】
これらの(メタ)アクリル酸及びそれらの塩類の中でも、高分子凝集剤としての性能が特に優れることから、アクリル酸(AA)及びそのアンモニウム塩が最も好ましい。これらのアニオン性単量体は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0061】
本発明において使用されるカチオン性高分子凝集剤を構成する共重合体は、アニオン性単量体単位を0~50mol%で含むことが好ましく、1~40mol%で含むことがより好ましく、1~30mol%で含むことが特に好ましい。
【0062】
架橋性単量体としては、下記化学式(4)で表される(メタ)アクリロイル基を、1分子中に2個以上有する(メタ)アクリレート系架橋性単量体(以下、単に「架橋性単量体」又は「架橋剤」と略記することもある)を挙げることができる。
【0063】
CH2=CR1-CO- ・・・化(4)
【0064】
但し、上記化学式(4)において、R1は水素原子又はメチル基であり、-CO-はカルボニル基を表す。
【0065】
前記架橋性単量体の1分子中に有する(メタ)アクリロイル基の数は、2個以上である。2~5個であるものが好ましく、2~3個であるものがさらに好ましい。1分子中に有する(メタ)アクリロイル基の数が5個を超えても、(メタ)アクリロイル基の数に相応の高分子凝集剤としての性能向上の効果が得られない場合がある。
【0066】
このような架橋性単量体としては、メチレンビスアクリルアミド(MBA)、エチレン又はポリエチレンジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の、アルキレンビス(メタ)アクリルアミド、モノ及びポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリメチロールアルカンポリ(メタ)アクリレートが例示される。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0067】
本発明において使用されるカチオン性高分子凝集剤を構成する共重合体は、架橋性単量体単位を0.0001~0.01mol%で含むことが好ましく、0.0002~0.008mol%で含むことがより好ましく、0.0005~0.007mol%で含むことが特に好ましい。架橋性単量体単位の含有量が0.0001~0.01mol%である場合、架橋型水溶性高分子同士の相互作用が弱いため粘性が低く、ハンドリングが優れる。また、粘性が低いことから、メタンバイオ発酵消化液との反応が速やかに進行し、強固なフロックを形成することができる。架橋性単量体単位の含有量が0.01mol%を超えると、架橋反応が進み過ぎることがあり、これは、特に水溶液重合の場合では不溶解量が増加し、高分子凝集剤として有効に作用する有効成分の量が減るため、凝集効果を十分に発揮できない場合がある。
【0068】
本発明において使用される高分子凝集剤を構成する共重合体は、カチオン性単量体、ノニオン性単量体及び必要に応じてその他の単量体を含む単量体混合物をラジカル重合することにより製造される。なお、本発明においては、得られる重合体を高濃度で予備溶解させることが困難になる場合があるため、エマルション重合法は好ましくない。
【0069】
単量体混合物の濃度は、5~50質量%とすることが好ましく、10~30質量%とすることが特に好ましい。単量体混合物の水溶液のpHは2~5に調整することが好ましい。
【0070】
重合反応の際に用いられるラジカル重合開始剤は特に制限されない。水溶液重合の場合は、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、t-ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、レドックス系開始剤及び光重合開始剤等を適宜利用できる。これらのラジカル重合開始剤は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤の添加量は特に制限されない。光重合開始剤の種類、単量体組成及び残存単量体の含有量に応じて、適宜調整すればよい。水溶性アゾ系開始剤の場合、通常、単量体混合物中の各単量体の合計質量に対して、質量基準で100~3000ppmが好ましい。
【0071】
重合開始温度は、通常0~35℃が好ましい。重合時間は、通常1~16時間が好ましい。また、重合反応は酸素の存在しない不活性雰囲気で行うことが好ましい。これらの重合条件は公知である。
【0072】
分子量を調節する目的で連鎖移動剤を使用しても良い。その種類は特に制限されない。本発明で使用可能な連鎖移動剤としては、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、メチルアミン、ジメチルアミン等のアミン類、メタンチオール、エタンチオール等のチオール類、メタリルスルホン酸、メルカプトエタノール及びメルカプトプロピオン酸等のチオール化合物や、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸水素ナトリウム及び次亜リン酸ナトリウム等の還元性無機塩類等や、メタリルスルホン酸等の有機系スルホン酸化合物等が挙げられる。これらの中でも単量体混合物の水溶液への溶解度が高く、少量の添加量でも効果が高く、架橋型水溶性高分子の分子量を容易に調整できる等の理由から、亜硫酸水素ナトリウムが好ましい。これらの連鎖移動剤は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0073】
連鎖移動剤の添加量は特に制限されない。亜硫酸水素ナトリウムの場合、通常、単量体混合物中の各単量体の合計質量に対して、質量基準で1~500ppmが好ましく、10~300ppmがさらに好ましく、15~200ppmが最も好ましい。亜硫酸水素ナトリウムの添加量が1ppm未満では、不溶解物の発生を抑制できない場合がある。その場合、高分子凝集剤として有効に作用する有効成分の量が減る。また、高分子凝集剤を水に溶解した溶解液を送液するポンプを閉塞させるトラブルの原因になることがある。亜硫酸水素ナトリウムの添加量が500ppmを超えると、重合体の分子量が低くなり過ぎることがある。その場合、メタンバイオ発酵消化液に対する凝集力が低下し、凝集フロックが成長しない。また、ろ過速度が低下し、メタンバイオ発酵消化液中の微細な固形物がろ液側にリークし、全窒素分やアンモニア性窒素の調整が難しくなる。
【0074】
光照射重合に用いられる光の波長、照射強度、照射時間等の光照射条件は特に制限されない。使用する光重合開始剤の種類及び添加量並びに重合体の物性及び性能に応じて、適宜調整すればよい。光重合開始剤として、前記水溶性アゾ系開始剤を使用する場合、波長365nm付近の光が好ましく、照射強度は365nm用のUV照度計による0.1~10.0mW/cm2が好ましい。照射時間は、通常0.1~3時間が好ましい。
【0075】
重合反応終了後には、必要に応じて適宜熱処理や乾燥、粉砕等の後処理を行ってもよい。これらの後処理も公知の方法を適用できる。
【0076】
本発明において使用されるカチオン性高分子凝集剤は、前述の共重合体以外の他の成分を含んでいても良い。また、必要に応じて、スルファミン酸、リンゴ酸、アジピン酸、クエン酸などのようなpH調整剤も混合しても良い。また、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、燐酸水素アンモニウム、燐酸水素ナトリウム、燐酸水素カリウム等の無機塩を混合しても良い。
【0077】
本発明において使用されるカチオン性高分子凝集剤の25℃における0.1質量%(重合体換算)塩粘度(UL粘度)は、1.5~5.5mPa・sであることが好ましく、2.0~5.0mPa・sであることがより好ましく、1.5~4.5mPa・sであることがさらに好ましい。1.5mPa・s未満であると、分子量が小さいために凝集性に乏しい。5.5mPa・sを超える場合、分子量が大き過ぎるため、同様に凝集性が悪化する。
【0078】
本発明において使用されるカチオン性高分子凝集剤は、上述の共重合体を粉末化して成る共重合体粉末と、無機塩と、の混合物であってもよい。共重合体粉末と無機塩との混合比は、質量比で9/1~1/9であることが好ましく、8/2~2/8であることがより好ましく、7/3~3/7であることがさらに好ましい。無機塩としては前述した物が例示される。本発明においては、共重合体粉末を無機塩と混合せずに用いることは好ましくない。無機塩と混合しない場合、高分子凝集剤を予備溶解させる際に要する水の量が多くなり、得られる液肥の量が多くなってしまう場合がある。また、高分子凝集剤を予備溶解させないで用いると、フロックが形成されないか、形成されるまでに長時間を要するため好ましくない。
【0079】
本発明において使用されるカチオン性高分子凝集剤は、塩水分散重合型高分子凝集剤であることも好ましい。塩水分散重合型高分子凝集剤は、分散剤の共存下でラジカル重合された高分子凝集剤である。このような塩水分散重合型高分子凝集剤を用いることにより、無機塩を共存させなくても、容易に高濃度で水に溶解できる。そのため、高分子凝集剤を予備溶解させる際の水の使用量を抑制でき、得られる液肥の量を少なくすることができる。
【0080】
塩水分散重合型高分子凝集剤は公知の方法によって製造できる。例えば、特開昭62-15251号公報などに開示された方法を採用できる。即ち、塩水溶液中で該塩水溶液に可溶な高分子からなる分散剤の共存下で、攪拌しながら製造された粒径100μm以下の高分子微粒子の高分子凝集剤を得ることができる。
【0081】
塩水溶液を構成する無機塩類は、多価アニオン塩類が好ましく、硫酸塩又は燐酸塩がより好ましい。硫酸塩又は燐酸塩としては、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、燐酸水素アンモニウム、燐酸水素ナトリウム、燐酸水素カリウムが例示される。塩水溶液における塩濃度は、15質量%以上であることが好ましい。
【0082】
分散剤としては、非イオン性又はイオン性の高分子のいずれも使用することができる。非イオン性高分子からなる分散剤としては、スチレン/無水マレイン酸共重合物あるいはブテン/無水マレイン酸共重合物の完全アミド化物などを使用できる。本発明においては、イオン性高分子を使用することが好ましい。カチオン性高分子を重合する場合は、分散剤としてカチオン性高分子を使用することがより好ましい。カチオン性高分子は、前述のカチオン性単量体の単独重合体や、ノニオン性単量体との共重合体を使用することが好ましい。
【0083】
高分子からなる分散剤の分子量は、イオン性高分子の場合、5,000~300万であり、5万~150万であることが好ましい。また、非イオン性高分子の場合、1,000~100万であり、1,000~50万であることが好ましい。分散剤の添加量としては、単量体の総量に対して、1/100~1/10であり、2/100~8/100であることが好ましい。
【0084】
(3) 固液分離操作
固液分離操作は、上記のメタンバイオ発酵消化液にカチオン性高分子凝集剤を添加することによって行われる。
【0085】
カチオン性高分子凝集剤は、予め水に溶解しておく必要がある。カチオン性高分子凝集剤の溶解濃度は0.1~10質量%であることが好ましく、0.3~7.5質量%であることがより好ましく、0.5~5質量%であることがさらに好ましい。0.1質量%未満である場合、フロック径が大きくならないか、大きくなるのに時間を要する。また、予備溶解時に用いる水によって、得られる液体分の量が増加してしまう。一方、10質量%を超える濃度でカチオン性高分子凝集剤を予備溶解させることは困難であり、また、高濃度であるとメタンバイオ発酵消化液に添加して全体的に混合されるまでに時間を要する場合がある。
【0086】
カチオン性高分子凝集剤の添加量は、対消化液固形分に対して0.1~3.0質量%であることが好ましく、0.1~2.0質量%であることがより好ましく、0.5~1.5質量%であることがさらに好ましい。0.1質量%未満であると、フロックの形成が不十分になる。3.0質量%を超える場合、添加量が過剰となり、凝集フロックが生成しても脱水強度を有さないフロックとなる場合がある。
【0087】
本発明のメタンバイオ発酵消化液の固液分離方法の具体例としては、メタンバイオ発酵消化液に粉末型高分子凝集剤と無機塩との混合物、又は塩水分散型高分子凝集剤を添加し、公知の方法で撹拌及び/又は混合することで消化液中の懸濁物と高分子凝集剤とを作用させて、凝集フロックを形成させる。形成されたメタンバイオ発酵消化液のフロックを公知の手段により機械的に脱水処理することで、ろ液と脱水ケーキとに分離する。
【0088】
脱水装置としては、特に制限されないが、スクリュープレス型脱水機、ベルトプレス型脱水機、フィルタープレス型脱水機、スクリューデカンター、多重円盤脱水機、ロータリープレスフィルター等が例示される。メタンバイオ消化液と高分子凝集剤との反応時間を確保できる点や、比較的コンパクトにすることを考慮した場合、スクリュープレスや多重円盤型脱水機が最適である。
【0089】
得られたろ液は、そのまま液肥として農地に散布することが可能である。
【0090】
ろ液(液肥)における全窒素分の濃度は1,000~5,000ppmであることが好ましく、1500~3500ppmであることがより好ましい。また、ろ液(液肥)における全窒素分の濃度は、原料となった消化液における全窒素分の濃度よりも低くなっていることが必須であり、10%以上低くなっていることが好ましく、20%以上低くなっていることがより好ましく、30%以上低くなっていることがさらに好ましい。
【0091】
ろ液(液肥)におけるアンモニア性窒素分の濃度は1,000~4,000ppmであることが好ましく、1500~3000ppmであることがより好ましい。また、ろ液(液肥)におけるアンモニア性窒素分の濃度は、原料となった消化液におけるアンモニア性窒素分の濃度よりも低くなっていることが必須であり、10%以上低くなっていることが好ましく、20%以上低くなっていることがより好ましく、30%以上低くなっていることがさらに好ましい。
【0092】
(4) 固形分の堆肥化・敷料化
固液分離後の固形分(脱水ケーキ)は、好気発酵させることにより、堆肥や敷料に転換させることができる。好気発酵は、脱水ケーキを野積みし、ケーキの温度が60~70℃まで上昇した後に切り返しを実施する従来の堆積法やロータリー等を用いる攪拌法によって行うことができる。堆積法の主な方法は、堆肥舎と通気型堆肥舎に貯蔵され、ローダー等によって適宜切り返しを行う。攪拌法は、ローダー等による切り返しに代えて、ロータリー等の攪拌装置を用いて攪拌混合する方法である。また、臭気や害虫抑制のための密閉コンポ方式や堆肥クレーン方式、ウインドロー方式が挙げられ、状況に応じて適宜選定される。EYS社(トルコ国)の急速堆肥発酵システムのクイックコンポスターBCシリーズを用いることも可能である。
【0093】
発酵を効率よく進行させるため、前処理で脱水ケーキの含水率を調整してもよい。含水率を調整する方法として、野積みによる水分蒸発、ハウス乾燥等による水分蒸発、わら等の低水分資材の混合による水分低下、又はスチーム等の熱源を用いた乾燥機の使用が挙げられ、設置場所や設置条件等の状況に応じて適宜選定される。
【0094】
堆肥や敷料における全窒素分の濃度は1,000~5,000ppmであることが好ましく、1500~3500ppmであることがより好ましい。また、堆肥や敷料における全窒素分の濃度は、原料となった消化液における全窒素分の濃度よりも高くなっていることが必須であり、10%以上高くなっていることが好ましく、20%以上高くなっていることがより好ましく、30%以上高くなっていることがさらに好ましい。
【0095】
堆肥や敷料におけるアンモニア性窒素分の濃度は1,000~4,000ppmであることが好ましく、1500~3000ppmであることがより好ましい。また、堆肥や敷料におけるアンモニア性窒素分の濃度は、原料となった消化液におけるアンモニア性窒素分の濃度よりも高くなっていることが必須であり、10%以上高くなっていることが好ましく、20%以上高くなっていることがより好ましく、30%以上高くなっていることがさらに好ましい。
【実施例0096】
以下、実施例によりさらに具体的に本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。各種物性の測定方法は以下の通りである。以下に記載のない項目は、「JIS K0102 工場排水試験法」に準じて測定した。各種物性の測定における温度条件は、特に断りのない限り25℃である。
【0097】
[UL粘度測定]
純水300mlを500mlのビーカーに秤量し、スターラーで撹拌しながら、固形分0.1%に相当するポリマーを徐々に添加し、溶解した。その後17.6gのNaClを加え、5分間撹拌し溶解させた。溶解液を250μmの網でろ過し、液温を25℃に調整後、LVTB型粘度測定機にて測定した。
【0098】
〔フロック径〕
目視によりフロック径を観察した。
【0099】
〔ろ過速度〕
内径75mm、深さ100mm、目開き80meshのステンレス製篩に、凝集したメタンバイオ発酵消化液をそそぎ込み、重力ろ過した。ろ液が200mLのメスシリンダーに入るようにロートをセットしておき、凝集したメタンバイオ発酵消化液投入後、5秒、10秒、20秒、30秒経過後のろ液の容量を計測して、重力ろ過性を評価した。このうち、10秒経過後のろ液の容量を10秒後ろ過速度(mL)とした。
【0100】
〔手絞り〕
ろ過速度を測定した後のケーキを採取し、手絞り具合を評価した。
悪:1回目の手絞りで指の間よりフロックケーキが漏れる
やや良:2回目の手絞りで指の間からフロックケーキが漏れる
良:3回目の手絞りで指の間からフロックケーキが漏れず、ろ液が絞れる。
【0101】
〔窒素成分の測定〕
MACHERY-NAGEL社製のポータブル水質分析測定装置PF12PLUSを用いて吸光度により全窒素分及びアンモニア性窒素をそれぞれ測定した。
【0102】
〔TS(全蒸発残分)、VTS(全蒸発物の強熱減量)、SS(懸濁物質)、VSS(懸濁物質の強熱減量)、繊維分(200)、粗灰、窒素全量、燐酸全量、加里全量、石灰全量、苦土全量〕
TSから繊維分は、下水試験法に準じて分析した。粗灰、燐酸全量、加里全量、石灰全量、苦土全量は堆肥等有機物分析法に準じて分析した。窒素全量は乾式燃焼法に準じて分析した。
【0103】
〔全窒素分回収率、アンモニア性窒素回収率〕
消化液原水を固液分離し、ろ液側で全窒素分量を測定した。消化液原水中の全窒素分量に対するろ液側の全窒素分量の割合(%)を100から減じることにより、全窒素分回収率とした。アンモニア性窒素についても同様に測定した。
【0104】
〔塩水分散型高分子凝集剤の製造〕
<製造例1>
撹拌器、温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた五つ口セパラブルフラスコに、イオン交換水202.6g、分散剤としてジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル単独重合物(20質量%水溶液、分子量120万)34.6g(対単量体6.0%)、硫酸アンモニウム125.0g、アクリルアミド(以下、「AM」と標記する場合がある)50質量%水溶液176.4g、ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル(以下、「DAC」と標記する場合がある)の80質量%水溶液34.0gを仕込み、各々完全に溶解させた。また、連鎖移動剤としてイソプロピルアルコール0.2gを加えた。液温を33~35℃に保ち、30分間窒素置換後、開始剤として2,2’-アゾビス〔2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン〕二塩化水素化物の1質量%水溶液1.0g(対単量体0.01質量%)を加えて重合を開始させた。重合開始8時間後、前記開始剤水溶液を1.0g追加し、さらに8時間重合を行った。得られた分散液のポリマー粒径は10μm以下、粘度は220mPa・s、UL粘度は3.5mPa・sであった。
【0105】
<製造例2、 参考製造例1>
単量体組成を表1に記載するように変更した他は、製造例1と同様に製造した。
【0106】
<参考製造例2>
ステンレス製反応容器に、78質量%ジメチルアミノエチルアクリレート塩化メチル水溶液及び50質量%アクリルアミド水溶液を加え、さらに蒸留水を加えて全質量を1.0kgにして均一に混合した。各単量体は、表1に示した配合比とし、全単量体の合計濃度は40質量%とした。この溶液をpH=4に調整し、窒素ガスを60分間溶液に吹き込みながら、液温を5℃に調節した。その後、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)2塩酸塩(以下、「V-50」と標記する場合がある)及びNaHSO3を、単量体の合計質量に対して固形分換算で、それぞれ1500ppm、20ppmとなるように加えた。次いで、反応容器の上方からこの溶液に光照射して重合を行い、含水ゲル状の重合体を得た。光照射には13Wブラックライトを用いた。照射強度は0.4mW/cm2で、照射時間は60分間である。得られた含水ゲル状の重合体を、容器から取り出して細断した。これを温度80℃で5時間乾燥後、粉砕して粉末状の重合体を得た。この重合体の各種物性を測定した。その結果を表1に示した。
【0107】
<参考製造例3>
単量体組成を表1に記載するように変更した他は、参考製造例2と同様に製造した。
【0108】
<製造例3>
単量体組成を表1に記載するように変更した他は、参考製造例2と同様に製造した。そして、得られた粉末状の重合体100gに硫酸アンモニウム100gを混合した。
【0109】
<参考製造例4>
1000ml四つ口セパラブルフラスコにDAC、AM、連鎖移動剤としてイソプロピルアルコール(単量体に対して2.0質量%)、及び蒸留水を投入し、濃硫酸でpHを4に調整した。各単量体は、表1に示した配合比とし、全単量体の合計濃度は45質量%とした。その後、V-50を0.04g含む20gの水溶液を添加し、全量が400gとなるように蒸留水を加えて単量体水溶液を調製した。さらに、この単量体水溶液を、HLB 8.0のノニオン性界面活性剤10.0gを溶解したパラフィン油 155gに加え、ホモジナイザーを用いて約1分間高速攪拌し乳化した。その後、フラスコに窒素ガス吹き込み管、還流冷却器、温度計を取り付け、攪拌機を通常の化学反応用の攪拌機に変え、攪拌しながらこの乳化液中に30分間窒素ガスを通して脱気した。その後、50℃に昇温して、窒素ガス雰囲気下で重合を行った。重合終了後、HLBが13.0のノニオン性界面活性剤17.2gを加えてエマルション型高分子化合物を得た。その結果を表1に示した。
【0110】
<参考製造例5>
単量体組成を表1に記載するように変更した他は、参考製造例4と同様に製造した。
【0111】
【0112】
〔メタンバイオ発酵消化液の固液分離試験1〕
<実施例1~3、参考例1~5、比較例1>
乳牛糞のメタンバイオ発酵消化液1の固液分離試験を実施した。メタンバイオ発酵消化液1の性状は、表2に示した。
300mlのプラスチック製ビーカーに消化液1を100ml秤量し、予め溶解させた(参考例2及び比較例1は溶解させない)高分子凝集剤を消化液対固形分当たり、0.7質量%を添加後、スパーテルを用いて、1分間混合し凝集させた。凝集後のフロック径、10秒ろ過速度、汚泥の手絞り性、ろ液中の全窒素分、ろ液中のアンモニア性窒素を測定し、結果を表3に示した。
【0113】
【0114】
【0115】
塩水分散型の高分子凝集剤を用いた参考例1は、製造例1で得た高分子凝集剤とは単量体組成が異なる点と、高分子凝集剤の溶解濃度が低かったため、フロックが大きくならず、ろ過速度や手絞り性が悪かった。また、ろ液中に移行したアンモニア性窒素の含有量は十分に低下しなかった。
塩水分散型の高分子凝集剤を用いた参考例2は、高分子凝集剤を予め溶解させなかったため、フロックが大きくならず、ろ過速度や手絞り性が悪かった。また、ろ液中に移行したアンモニア性窒素の含有量は十分に低下しなかった。
粉末型の高分子凝集剤を用いた参考例3、4は、予め溶解させる高分子凝集剤の溶解濃度を高くすることができなかったため、フロックが大きくならず、ろ過速度や手絞り性が悪かった。
エマルション型の高分子凝集剤を用いた参考例5は、予め溶解させる高分子凝集剤の溶解濃度を高くできなかったため、フロックが大きくならず、ろ過速度や手絞り性が悪かった。
エマルション型の高分子凝集剤を用いた比較例1は、高分子凝集剤を予め溶解させなかったため、フロックが形成されず、手絞不可であった。また、全窒素分及びアンモニア性窒素の含有量は、原料となったメタンバイオ発酵消化液1の含有量から変化しなかった。
これに対して、塩水分散型の高分子凝集剤を用いた実施例1及び2は、高分子凝集剤を予め適切な濃度で溶解させて用いたため、フロックが大きくなり、且つろ液中に移行したアンモニア性窒素の含有量が十分に低くなった。また、粉末型の高分子凝集剤に無機塩を添加して用いた実施例3は、高分子凝集剤を予め適切な濃度で溶解させて用いることができたため、フロックが大きくなり、且つろ液中に移行したアンモニア性窒素の含有量が十分に低くなった。
なお、参考例1~5で得られた液肥における全窒素分及びアンモニア性窒素の含有量は、原料となったメタンバイオ発酵消化液1における全窒素分及びアンモニア性窒素の含有量に対して有意に低下しているが、手絞り性が悪いため、連続的に製造することが困難である場合がある。
【0116】
〔メタンバイオ発酵消化液の固液分離試験2〕
<実施例4>
MTアクアポリマー(株)が作製したミニスクリュープレス(処理流量30L/H)を用いて、乳牛糞のメタンバイオ発酵消化液2の固液分離試験を実施した。メタンバイオ発酵消化液2(消化液原水)の性状は、表4に示した。
製造例2の塩水分散型高分子凝集剤を2.5質量%の水溶液とし、その高分子凝集剤水溶液を消化液に添加して凝集させ、ミニスクリュープレスを用いて固液分離した。高分子凝集剤の添加率は、対消化液固形分当たり0.9質量%とした。固液分離後のろ液側の物性値を表4に示した。
【0117】
<比較例2>
高分子凝集剤を添加しない他は、実施例4と同様に操作して固液分離した。
【0118】
比較例2は、無薬注で固液分離したので、ろ液中の全窒素分は、4,975mg/L、アンモニア性窒素は2,765mg/Lと高く、消化液原水の全窒素分やアンモニア性窒素に対して、10%程度しか低減しなかった。
一方、実施例4は、分散型高分子凝集剤を使用して凝集させたので、ろ液中の全窒素分を2,962mg/L、アンモニア性窒素を1,995mg/Lにまで低減できた。
【0119】
【0120】
〔固形物の堆肥化試験〕
<実施例5>
ミニスクリュープレスで脱水した消化液の固形物について堆肥化試験を実施した。
実施例4で固液分離した固形物(ケーキ)を3.0kg秤量した。次に、富士平工業株式会社製のラボ型堆肥化試験機かぐや姫に仕込み、米糠を対ケーキ当たり1.0質量%仕込み、風速1.5ml/min.の空気を流し、好気発酵させることにより堆肥化を開始した。3日後に最高温度の60℃に達したのでケーキの切り返しを行い、その後、さらに3度の切り返しを行い、堆肥化反応を終了させた。得られた堆肥の分析結果を表5に示した。
【0121】
<比較例3>
比較例2で固液分離した固形物(ケーキ)を使用した他は実施例5と同様に操作して堆肥を得た。
【0122】
比較例3は、無薬注で固液分離したので、堆肥中の各種成分の含有率は低かった。
一方、実施例5は、分散型高分子凝集剤を使用して凝集させたので、堆肥中の各種成分の含有率を高くすることができた。また、無薬注よりもC/N比の値が小さくなった。即ち、固液分離によって、消化液中に含まれる窒素を固形物側に多く移行させることができた。
【0123】
本発明によれば、家畜の糞尿を利用したメタンバイオ発酵消化液を有効利用することができる。具体的には、メタンバイオ発酵消化液を堆肥と液肥とに分離させた際に、液肥側に移行する窒素の量を低減できる。そのため、得られた液肥はそのまま農地等に散布して処理することができる。