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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097277
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】成形品及び成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 39/24 20060101AFI20230630BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20230630BHJP
   B29C 39/26 20060101ALI20230630BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20230630BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20230630BHJP
   B29C 44/12 20060101ALI20230630BHJP
   B29C 44/36 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
B29C39/24
B29C33/42
B29C39/26
B29C39/10
B29C44/00 A
B29C44/12
B29C44/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213542
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 隆稔
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
4F214
【Fターム(参考)】
4F202AD05
4F202AD17
4F202AD24
4F202AG20
4F202AG28
4F202AH26
4F202CA01
4F202CB01
4F202CB11
4F204AA42
4F204AB02
4F204AC05
4F204AD17
4F204AD24
4F204AG20
4F204AH17
4F204EA01
4F204EB01
4F204EB12
4F204EF05
4F204EF27
4F204EK13
4F204EK17
4F214AA42
4F214AB02
4F214AC05
4F214AD17
4F214AD24
4F214AG20
4F214AH17
4F214UA01
4F214UB01
4F214UB12
4F214UD13
4F214UD17
4F214UF05
4F214UF27
(57)【要約】
【課題】従来の成形品では、強度不足が問題となることが考えられる。
【解決手段】成形品は、第1樹脂の硬質フォームの成形品であって、オープンセル構造のフォームが埋設され、前記フォームに前記第1樹脂が含浸している成形品である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1樹脂の硬質フォームの成形品であって、
オープンセル構造のフォームが埋設され、
前記フォームに前記第1樹脂が含浸している成形品。
【請求項2】
前記フォームのセル数が6~24個/25mmである請求項1に記載の成形品。
【請求項3】
前記フォーム内の前記第1樹脂は、発泡していて、その発泡倍率は、前記フォーム外の前記第1樹脂の発泡倍率より低い請求項1又は2に記載の成形品。
【請求項4】
前記フォームと前記第1樹脂とが識別可能に色分けされている請求項1から3の何れか1の請求項に記載の成形品。
【請求項5】
前記成形品は車両に搭載されるEA材であって、前記フォームが埋設されている部分は前記成形品を車両に取り付けるための取付部である請求項1から4の何れか1の請求項に記載の成形品。
【請求項6】
前記取付部を、その内部の前記フォームごと貫通する取付孔を有する請求項5に記載の成形品。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1の請求項に記載の成形品の製造方法であって、前記成形品を成形する成形型に、前記フォームを設置し、前記成形型内で前記硬質フォームの発泡樹脂原料を発泡させて前記成形品を製造する成形品の製造方法。
【請求項8】
前記成形型には、前記取付孔を成形するための成形突部が設けられ、
前記フォームには切れ込みを形成し、前記成形突部が前記切れ込みに挿入されて前記フォームを貫通する請求項6に従属する請求項7に記載の成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂の成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の成形品として、発泡成形されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-69825号公報(段落[0013]、図2等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した成形品では、強度不足が問題となることが考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた発明の第1態様は、第1樹脂の硬質フォームの成形品であって、オープンセル構造のフォームが埋設され、前記フォームに前記第1樹脂が含浸している成形品である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る成形品の車両への取付状態を示す平断面図
図2】成形品の斜視図
図3】(A)成形品の取付部の平断面図、(B)成形品の取付部の側断面図
図4】(A)切れ込みが形成された埋設フォームの斜視図、(B)下型に設置された埋設フォームの断面図、
図5】型閉じされた成形型内の発泡樹脂原料及び埋設フォームの側断面図
図6】(A)成形凹部内に発泡しながら入り込んできた発泡樹脂原料の側断面図、(B)成形凹部内に発泡しながら入り込んできた発泡樹脂原料の平断面図
図7】成形型内で成形された成形品の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1実施形態]
図1及び図2に示される本実施形態の成形品10は、発泡樹脂製であり、具体的には、硬質フォームの成形品である。本実施形態の例では、成形品10は、車両に搭載されるEA(Energy Absorption)材であり、車両の衝突時に乗員からの荷重を受けて、圧縮破壊されることで、乗員への衝撃を緩和するものである。図1に示すように、EA材としての成形品10は、例えば、トリム60(ドアトリム等)に取り付けられる。
【0008】
本実施形態の例では、成形品10は、本体部11と取付部20を有する。本体部11は、車両の衝突時に乗員からの荷重を受け止める部分である。図1及び図2に示すように、例えば、本体部11は、ブロック状をなし、裏側面13がトリム60に宛がわれ、その反対側の表側面12が車両のボデーに臨むようになっている。
【0009】
取付部20は、成形品10を車両に取り付けるための部分である。本実施形態の例では、取付部20は、成形品10における突出部になっている。具体的には、取付部20は、本体部11のうち表側面12と裏側面13とを連絡する側面から張り出している。本実施形態の例では、取付部20は、本体部11の側面のうち裏側面13側の端部から延びていると共に、本体部11を挟んで互いに反対側に1対設けられている。
【0010】
取付部20には、取付孔22が貫通形成されている。取付部20は、トリム60に宛がわれて、取付孔22に通される締結部材61によりトリム60に固定され、これにより、成形品10がトリム60に固定される。なお、例えば、締結部材61は、ねじであってもよいし、リベットであってもよい。また、例えば、締結部材61は、トリム60から突出した樹脂製の突起であって、取付孔22に通されてから先端部が溶融されてフランジ状に拡径されるものであってもよい。
【0011】
本実施形態の例では、取付部20は、扁平な略直方体状をなし、その厚さ方向でトリム60と対向すると共に、該厚さ方向に上記取付孔22が延びている。図2に示すように、取付部20の表側面(トリム60と反対側を向く面)には、外縁突出部21が形成されている。外縁突出部21は、リブ構造をなすと共に、取付部20の表側面の外縁部のうち、本体部11と連絡される1辺部を除く3辺部から突出し、略コの字状になっている。外縁突出部21がリブ構造になっていることで、取付部20の剛性を上げることが可能となる。
【0012】
本実施形態の例では、硬質フォーム19は、硬質ポリウレタンフォームであるが、これに限定されるものではなく、例えば、硬質ポリエチレンフォーム、硬質ポリプロピレンフォーム、又は硬質フェノールフォーム等であってもよい。
【0013】
図1に示すように、成形品10には、フォーム30が埋設されている。本実施形態の例では、フォーム30(以下、適宜、「埋設フォーム30」という。)は、オープンセル構造、即ち、発泡セル同士が連通していると共に埋設フォーム30の外面に発泡セルが開口した構造になっている。さらに、埋設フォーム30は、発泡セルと発泡セルの間のセル膜(所謂、ミラー)が除去された除膜フォームとなっている。除膜フォームでは、セル膜が除去されることで樹脂の立体網目状の骨格構造だけが残されている。例えば、セル膜の除去は、フォームのセル膜を燃焼ガスの爆風によって吹き飛ばすことで行われてもよいし、アルカリによる加水分解で行われてもよい。
【0014】
本実施形態の例では、図1及び図3に示すように、埋設フォーム30は、取付部20内に収まるように配置されている。上述の取付孔22は、取付部20を埋設フォーム30ごと貫通している(図3(A)参照)。本実施形態の例では、埋設フォーム30は、取付部20よりも小さいサイズになっているものの、取付部20の厚さ方向で埋設フォーム30の外縁部が外縁突出部21の3辺部と重なるサイズになっている。なお、本実施形態の例では、略直方体状の取付部20の形状に対応して、埋設フォーム30も、略直方体状になっている。なお、本実施形態の例では、埋設フォーム30は、本体部11と外縁突出部21には埋設されていない。
【0015】
埋設フォーム30と、硬質フォーム19の樹脂(第1樹脂)とは、識別可能に色分けされている。これにより、成形品10内の埋設フォーム30の有無を、成形品10の外部から目視で確認することができる。本実施形態の成形品10では、例えば、埋設フォーム30の表面部における樹脂の骨格構造が、成形品10の外部から視認可能になっている。なお、埋設フォーム30と硬質フォーム19の第1樹脂とを、同じ色にする等して、成形品10の外部から識別不能となるようにし、成形品10を、埋設フォーム30の有無が成形品10の外部から目視で確認不能な構成にすることもできる。
【0016】
本実施形態の成形品10では、埋設フォーム30に、硬質フォーム19の第1樹脂が含浸している。例えば、埋設フォーム30内に含浸した第1樹脂は、発泡していてもよく、この場合、その発泡倍率が、埋設フォーム30外の第1樹脂の発泡倍率よりも低くなっていてもよい。なお、硬質フォーム19の第1樹脂は、埋設フォーム30の表面部だけに含浸していてもよいし、埋設フォーム30の内部まで(例えば、埋設フォーム30の全体に)含浸していてもよい。
【0017】
本実施形態の例では、埋設フォーム30は、ポリウレタンフォームであり、例えば、ポリエステル系ウレタンフォームであってもよいし、ポリエーテル系ウレタンフォームであってもよい。なお、埋設フォーム30は、これに限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォーム、又はフェノールフォーム等であってもよい。
【0018】
本実施形態の成形品10は、例えば、以下のようにして製造される。まず、図4(A)に示すように、埋設フォーム30が用意される。埋設フォーム30には、切れ込み31が形成される。例えば、図4(A)に示す例では、切れ込み31は、埋設フォーム30を貫通するスリットが十字に交差した構成になっている。後述するように、埋設フォーム30は、発泡成形前に、図5に示される成形型50内に設置される。なお、切れ込み31は、例えば、1つのスリットであってもよいし、3つ以上のスリットが1箇所で交差した構成になっていてもよい。
【0019】
図5に示すように、成形型50には、上型51と下型52とが設けられ、上型51により、成形品10の裏側面13が成形され、下型52により、成形品10の表側面12が成形される。下型52には、成形品10の本体部11を成形するためのメイン凹部52Uが設けられている。図4(B)に示すように、下型52のうちメイン凹部52Uの開口縁には、取付部20を成形するための成形凹部70が設けられている。成形凹部70の底面からは、取付孔22を成形するための成形突部71が突出している。
【0020】
埋設フォーム30は、下型52の成形凹部70内に設置される。このとき、埋設フォーム30の切れ込み31に成形突部71が挿入され、成形突部71が埋設フォーム30を貫通する。本実施形態の例では、埋設フォーム30は、このように成形凹部70内に配置されたときに、成形突部71に支持されて成形凹部70の底面から浮いた状態になると共に、成形凹部70の開口縁よりも下側に配置される(即ち、型閉じされたときに埋設フォーム30と上型51との間に隙間が形成される)。また、埋設フォーム30は、成形品10の外縁突出部21を成形するために成形凹部70の底面に設けられた外縁凹部72に上方から重なるように配置される。
【0021】
図4及び図5に示すように、下型52には、硬質フォーム19の原料である発泡樹脂原料Gが注入される。すると、発泡樹脂原料Gは、メイン凹部52Uの底部にたまった状態になる。なお、発泡樹脂原料Gの注入は、埋設フォーム30の下型52への設置の前に行ってもよいし、後に行ってもよい。後者の場合、発泡樹脂原料Gの注入は、成形型50の型閉じ後に行ってもよい。
【0022】
そして、型閉じされた成形型50内で、発泡樹脂原料Gを発泡させる。すると、発泡樹脂原料Gは、発泡しながら徐々に成形型50のキャビティ内で嵩を増す。そして、図6(A)及び図6(B)に示すように、発泡樹脂原料Gは、発泡しながら成形凹部70内に進入してくる。ここで、成形凹部70内のような発泡樹脂原料Gの発泡開始位置から離れた末端の部分には、発泡樹脂原料Gが到達しにくい。そのため、発泡硬化(樹脂化)が進んだ発泡樹脂原料Gが、成形凹部70内に充填されにくいという問題が生じ得る。そして、この充填性が下がることで、取付部20の強度が不足することが考えらえる。このため、例えば、成形凹部70の周辺で上型51及び下型52の合わせ目から外部に空気を抜く等して、成形凹部70への充填性の向上が図られるが、さらなる充填性の向上が望まれる。
【0023】
これに対し、本実施形態では、埋設フォーム30を成形凹部70内に設置しておくことで、成形凹部70内への樹脂の充填性の向上を図ることが可能となる。また、成形凹部70内には、成形突部71が設けられているので、発泡樹脂原料Gが回りこみにくくなることが考えられる。これに対し、埋設フォーム30を成形凹部70内に設置しておくことで、埋設フォーム30内に発泡樹脂原料Gを含浸させて成形凹部70内への樹脂の充填性の向上を図ることが可能となる。このように、埋設フォーム30を成形凹部70内に設置することで、埋設フォーム30内に発泡樹脂原料Gが含浸していき、埋設フォーム30が無い場合に比べて、成形凹部70内の全体の樹脂の充填性を高めることが可能となる。このようにすることで、成形型50のキャビティにおいて、下側から上がってくる発泡樹脂原料Gから遠い位置にある(即ち、上側の)末端の細部(例えば、図6(A)に示す成形凹部70や外縁凹部72等)にまで発泡樹脂原料Gを充填させることが可能となる。
【0024】
本実施形態では、埋設フォーム30がオープンセル構造を有しているので、埋設フォーム30内に発泡樹脂原料Gが含浸する。なお、図6(A)及び図6(B)に示す例では、埋設フォーム30と成形凹部70の内面との間に隙間が形成されるが、埋設フォーム30内に発泡樹脂原料Gが含浸するため、このような隙間が形成されなくても、成形凹部70及び外縁凹部72内に硬質フォーム19を充填することができる。
【0025】
発泡樹脂原料Gが発泡硬化して、成形型50のキャビティ内が硬質フォーム19で満たされると、成形品10が得られる(図7参照)。
【0026】
なお、例えば、埋設フォーム30が成形型50の成形凹部70内に設置されているか否かを検出する検出装置(例えばカメラ等を備えた装置)が用いられてもよい。この場合、埋設フォーム30が成形凹部70内にあることが検出された場合には、成形型50に発泡樹脂原料Gを注入する一方、検出されなかった場合には、発泡樹脂原料Gの注入を行わない注入装置(例えば、ロボット)がさらに用いられてもよい。このようにすれば、埋設フォーム30が成形凹部70内に配置されていない場合に、成形型50内に発泡樹脂原料Gが注入されることを防ぐことが可能となる。
【0027】
また、上記検出装置により、埋設フォーム30が検出されなかった場合に、それを表示又は音により報知する出力装置を設けてもよい。また、成形型50を、各製造工程(埋設フォーム30の設置工程、発泡樹脂原料Gの注入工程、発泡成形工程等)に搬送する搬送装置(例えば、搬送路を一周する間にそれら工程に成形型50を搬送する装置)を用いてもよい。そして、上記検出装置の検出結果(埋設フォーム30の有無)を受けて、上記注入装置により発泡樹脂原料Gの注入を行うか否かを決定し、埋設フォーム30が設置されておらず上記注入が行われない場合には、成形型50を埋設フォーム30の設置工程に戻すように制御装置により制御してもよい。以上が、成形品10の製造方法の説明である。
【0028】
上述のように、本実施形態の成形品10には、埋設フォーム30が埋設されていて、埋設フォーム30には硬質フォーム19の第1樹脂が含浸している。このように、埋設フォーム30に硬質フォーム19の第1樹脂が含浸することで、硬質フォーム19のみの成形品に比べて、強度アップを図ることが可能となり、成形品の強度不足を抑制可能となる。例えば、本実施形態の成形品10では、埋設フォーム30の樹脂骨格間に発泡樹脂原料Gの第1樹脂が充填され、取付部20全体が硬質フォーム19である成形品に比べて、取付部20の強度不足を抑制可能となる。また、埋設フォーム30内の第1樹脂が、発泡していて、その発泡倍率が、埋設フォーム30外の第1樹脂の発泡倍率より低くなっていることで、成形品10のうち埋設フォーム30が埋設された部分の強度アップを図ることが可能となる。
【0029】
埋設フォーム30の発泡セルの数は、6~24個/25mmであることが好ましい。埋設フォーム30の発泡セルの数を、24個/25mm以下とすることにより、埋設フォーム30の発泡セルが大きくなって硬質フォーム19の第1樹脂を埋設フォーム30内により含浸させ易くすることが可能となる。これにより、成形品10のうち埋設フォーム30が埋設された部分の密度を上げてその部分の強度アップを図ることが可能となる。また、埋設フォーム30の発泡セル数を、6個/25mm以上とすると、フォームの樹脂の骨格構造が密になり、フォームが埋設された部分の強度をより均一にすることが可能となる。
【0030】
成形品10は、上述のように、車両に搭載されるEA材に適用してもよく、この場合、埋設フォーム30が埋設されている部分を、成形品10を車両に取り付けるための取付部としてもよい。このようにすれば、成形品10の取付状態の安定化を図ることが可能となる。
【0031】
ここで、成形品が、取付部20が突出した形状になっている場合、成形型50のうち取付部20を成形する成形凹部70への樹脂の充填性が低いと、取付部20の硬度が低下する。その結果、締結部材61による車両への成形品10の締結が緩み易くなって成形品10の安定した固定がし難くなることが考えられる。また、上記締結の緩みにより、異音が生じるという不具合が考えられる。
【0032】
これに対し、全体が硬質フォーム19からなる従来の成形品では、取付部20の硬度を上げようとして硬質フォーム19の硬度を上げようとすると、本体部11の硬度も上がるため、本体部11を圧縮破壊させて良好に衝撃エネルギーの吸収を行うことが、難しくなるという別の問題が生じ得る。
【0033】
これに対し、本実施形態の成形品10では、取付部20内に埋設フォーム30を埋設して、埋設フォーム30に硬質フォーム19の第1樹脂を含浸させることで、取付部20を(即ち、成形品10を部分的に)硬くすることが可能となり、取付部20の強度不足を抑制可能となる。これにより、車両等の取付対象への成形品10の取付の安定化が図られると共に、上記異音が生じる不具合を抑制可能となる。また、成形品10を、埋設フォーム30が取付部20に設けられて本体部11には設けられない構成とすることで、衝撃エネルギーの吸収性を確保しつつ、取付部20の強度アップを図ることが可能となる。
【0034】
本実施形態の成形品10では、取付部20に取付孔22が形成され、取付孔22は、取付部20をその内部の埋設フォーム30ごと貫通している。このように、取付孔22の周辺に、第1樹脂が含浸した埋設フォーム30が設けられることで、取付孔22の周辺の強度不足を抑制可能となる。これにより、成形品10の取付状態のさらなる安定化を図ることが可能となる。
【0035】
本実施形態の成形品10の製造方法では、埋設フォーム30が成形型50の成形凹部70に設置されるにあたり、埋設フォーム30に形成された切れ込み31に、成形突部71が挿入されて埋設フォーム30を貫通する。このようにすれば、埋設フォーム30を成形突部71に容易に貫通させることができ、埋設フォーム30を貫通する取付孔22の形成を容易にすることが可能となる。
【実施例0036】
以下、実施例及び比較例によって上記実施形態をさらに具体的に説明するが、本開示の成形品は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
1.実施例及び比較例の成形品の構成
実施例1~5及び比較例1では、上記第1実施形態と同様にして成形品(EA材)を得た。各成形品では、硬質フォーム19の樹脂(第1樹脂)は、同じであり、硬質フォーム19は、硬質ポリウレタンフォームである。実施例1~5では、埋設フォーム30の構成のみが異なっている。実施例1~4では、埋設フォーム30の厚さは10mmであり、実施例5では、埋設フォーム30の厚さは5mmである。実施例1~5では、厚さ方向から見た埋設フォーム30のサイズは略同じである。実施例1~5及び比較例1では、取付部20の取付孔22の周辺の厚さは12mmである。
【0038】
<実施例1>
埋設フォーム30として、株式会社イノアックコーポレーション製の「モルトフィルター MF-8」(セル数が、8±2個/25mm)を用いた。
【0039】
<実施例2>
埋設フォーム30として、株式会社イノアックコーポレーション製の「モルトフィルター MF-13」(セル数が、13+3,-2個/25mm)を用いた。
【0040】
<実施例3>
埋設フォーム30として、株式会社イノアックコーポレーション製の「モルトフィルター CFH-13」(セル数が、13±3個/25mm)を用いた。
【0041】
<実施例4>
埋設フォーム30として、株式会社イノアックコーポレーション製の「モルトフィルター CFH-20」(セル数が、20±4個/25mm)を用いた。
【0042】
<実施例5>
埋設フォーム30として、株式会社イノアックコーポレーション製の「モルトフィルター CFH-30」(セル数が、30±4個/25mm)を用いた。
【0043】
<比較例1>
比較例1の成形品では、埋設フォーム30が埋設されていない。比較例1の成形品は、実施例1~5の成形品に対して、埋設フォーム30が設けられていない点のみが異なっている。
【0044】
2.評価方法
各実施例及び比較例の成形品について、取付部20の外形を観察すると共に、アスカーC硬度(JIS K7312に準拠。)を測定し、比較した。アスカーC硬度の測定位置は、図2及び図3(A)に示すように、取付部20のうち取付孔22よりも突出先端側の位置であり、取付部20の突出方向で取付孔22と外縁突出部21との中間の位置Aである。
【0045】
3.評価結果
実施例1~4では、成形品10の形状が良好であり、取付部20の形状も良好であった。比較例1の成形品では、取付部20の突出先端側の部分に(特に取付孔22よりも先端側の部分)に、凹み等の欠肉部分が生じることがあった。実施例5の成形品では、取付部20の外縁突出部21のうち取付孔22よりも先端側の1辺部に、凹みが生じることがあり、実施例1~4の成形品に比べると形状が良好ではなかったが、比較例1の成形品に比べると、凹みが小さく、形状は良好であった。また、アスカーC硬度は、実施例1~5の成形品10では、それぞれ80、81、85、90、93であり、比較例1では、72であった。なお、取付部20の断面を観察したところ、実施例5では、実施例1~4に比べると、埋設フォーム30に第1樹脂が含侵し難いことがわかった。以上により、実施例1~5では、比較例1に比べて、成形性が良好であると共に、取付部20が硬くなって強度の向上を図ることが可能なことが確認できた。
【0046】
[他の実施形態]
(1)成形品10は、ドアトリムに取り付けられるEA材に限定されるものではなく、例えば、車両の乗員の膝又は足裏からの荷重を受けて衝撃エネルギーを吸収するEA材(所謂、ニーボルスタやティビアパッド)であってもよい。また、成形品10は、車両に限らず、他の乗り物に設けられるEA材であってもよいし、EA材以外に用いられてもよい。また、成形品10の形状は、上記実施形態の形状に限定されるものではない。例えば、成形品10は、取付孔22が形成された取付部20が突出していない構成であってもよいし、取付部20が設けられていない構成であってもよい。これらの場合でも、成形品10に第1樹脂が含浸した埋設フォーム30が埋設されていればよい。
【0047】
(2)上記実施形態では、埋設フォーム30が、取付部20内に収まっていたが、本体部11内まで延びていてもよい。また、上記実施形態では、埋設フォーム30が、外縁突出部21内には、埋設されていないが、埋設フォーム30が外縁突出部21内に配置されていてもよい。この場合、例えば、埋設フォーム30に、外縁突出部21内まで延びる突出部を設けておくことが考えられる。また、埋設フォーム30が、本体部11内にのみ埋設されていてもよい。また、上記実施形態では、取付部20の厚さ方向で、埋設フォーム30の少なくとも1部が、外縁突出部21に重なっていたが、重なっていなくてもよい。
【0048】
(3)埋設フォーム30内に含浸して発泡している第1樹脂の発泡倍率が、埋設フォーム30外の第1樹脂の発泡倍率と同じであってもよいし、高くなっていてもよい。また、埋設フォーム30内に含浸した第1樹脂が、発泡していなくてもよい。
【0049】
(4)外縁突出部21は、上記実施形態において、略コの字状になっていたが、取付部20の表側面の外縁部のうち、取付部20の突出先端側の一辺部のみに形成されていてもよいし、第1突出部の両側辺部のみに形成されていてもよいし、上記一辺部に形成された部分と上記両側辺部に形成された部分とが、分離していてもよい。また、外縁突出部21が設けられていなくてもよい。
【0050】
(5)埋設フォーム30に、切れ込み31を形成する代わりに、貫通孔を形成してもよい。この貫通孔は、成形型50の成形突部71が挿入可能な大きさであればよい。この貫通孔を、成形突部71よりも細く形成しておけば、貫通孔に成形突部71を挿入したときに、成形凹部70の底面から埋設フォーム30を浮かせることができ、成形凹部70の底面と埋設フォーム30との間に発泡樹脂原料Gを進入させ易くすることが可能となる。
【0051】
(6)上記実施形態では、取付孔22が、取付部20を埋設フォーム30ごと貫通していたが、取付孔22が、埋設フォーム30を貫通しない構成であってもよい。例えば、取付孔22が、埋設フォーム30と離れて配置されていてもよいし、取付孔22の内周面に埋設フォーム30が露出するように取付孔22と埋設フォーム30が隣接して配置されていてもよい。
【0052】
(7)上記実施形態において、成形品10がトリム60等の取付対象に取り付けられる場合、取付部20は、取付対象への成形品10の取付部位として機能すれば、取付孔22を有する構成でなくてもよい。例えば、取付部20に、成形品を取付対象に取り付けるための取付凹部が形成されていてもよく、この場合、この取付凹部は、埋設フォーム30を貫通するものであってもよいし、埋設フォーム30を貫通せずに埋設フォーム30に凹部を形成するものであってもよい。
【0053】
(8)上記実施形態では、埋設フォーム30が下型52の成形凹部70に設置されたときに、埋設フォーム30が成形凹部70の底面から浮いた状態になっていたが、埋設フォーム30が成形凹部70の底面に当接してもよい。また、埋設フォーム30が、成形型50に設置されたときに、上型51と当接してもよい。また、埋設フォーム30が、成形凹部70に設置されたときに、成形凹部70の内面のうち側面と当接してもよいし、外縁凹部72に上方から重ならない位置に配置されてもよい。
【0054】
(9)なお、例えば、成形品10を、軟質フォームの成形品として、軟質フォームの内部に埋設フォーム30を埋設した構成とすることもできる。この場合、成形型50の成形凹部70内に埋設フォーム30を設置することで、成形型50の成形凹部70内への樹脂の充填性の向上を図ることが可能となり、成形品10の強度不足(特に取付部20の強度不足)の抑制を図ることが可能となる。
【0055】
<付記>
以下、上記実施形態及び実施例から抽出される特徴群について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお、以下では、理解の容易のため、上記実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、これら特徴群は、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0056】
例えば、以下の特徴群は、「樹脂の成形品及びその製造方法」に関し、「従来の成形品として、発泡成形されたものが知られている(例えば、特開2008-69825号公報(段落[0013]、図2等))」という背景技術について、「上述した成形品では、強度不足が問題となることが考えられる。」という課題をもって想到されたものと考えることができる。
【0057】
[特徴1]
第1樹脂の硬質フォームの成形品であって、
オープンセル構造のフォーム(埋設フォーム30)が埋設され、
前記フォームに前記第1樹脂が含浸している成形品。
【0058】
本特徴によれば、成形品の強度不足を抑制可能となる。本特徴によれば、埋設されたフォームに硬質フォームの第1樹脂が含浸することで、硬質フォームのみの成形品に比べて、強度アップを図ることが可能となり、成形品の強度不足を抑制可能となる。
【0059】
[特徴2]
前記フォームのセル数が6~24個/25mmである特徴1に記載の成形品。
【0060】
埋設されるフォームのセル数を、24個/25mm以下とすることにより、フォームのセルが大きくなり、硬質フォームの第1樹脂をフォーム内により含浸させ易くすることが可能となる。これにより、成形品のうちフォームが埋設された部分の密度を上げてその部分の強度アップを図ることが可能となる。また、埋設されるフォームのセル数を、6個/25mm以上とすると、フォームの樹脂の骨格構造が密になり、フォームが埋設された部分の強度をより均一にすることが可能となる。
【0061】
[特徴3]
前記フォーム内の前記第1樹脂は、発泡していて、その発泡倍率は、前記フォーム外の前記第1樹脂の発泡倍率より低い特徴1又は2に記載の成形品。
【0062】
特徴3によれば、成形品のうちフォームが埋設された部分の強度アップを図ることが可能となる。
【0063】
[特徴4]
前記フォームと前記第1樹脂とが識別可能に色分けされている特徴1から3の何れか1の特徴に記載の成形品。
【0064】
特徴4によれば、成形品内のフォームの有無を、成形品の外部から確認可能となる。
【0065】
[特徴5]
前記成形品は車両に搭載されるEA材であって、前記フォームが埋設されている部分は前記成形品を車両に取り付けるための取付部である特徴1から4の何れか1の特徴に記載の成形品。
【0066】
特徴5によれば、成形品の取付状態の安定化を図ることが可能となる。
【0067】
[特徴6]
前記取付部を、その内部の前記フォームごと貫通する取付孔を有する特徴5に記載の成形品。
【0068】
特徴6によれば、取付孔の周辺の強度不足を抑制可能となる。これにより、成形品の取付状態のさらなる安定化を図ることが可能となる。
【0069】
[特徴7]
前記フォームが埋設されている第1突出部(取付部20)を有する特徴1から6の何れか1の特徴に記載の成形品。
【0070】
特徴7によれば、第1突出部の強度不足を抑制可能となる。
【0071】
[特徴8]
前記第1突出部から突出し、前記フォームが埋設されていない第2突出部(外縁突出部21)を有する特徴7に記載の成形品。
【0072】
[特徴9]
前記第2突出部は、リブ構造をなしている特徴8に記載の成形品。
【0073】
特徴9によれば、第1突出部の剛性を上げることが可能となる。
【0074】
[特徴10]
特徴1から9の何れか1の請求項に記載の成形品の製造方法であって、前記成形品を成形する成形型に、前記フォームを設置し、前記成形型内で前記硬質フォームの発泡樹脂原料を発泡させて前記成形品を製造する成形品の製造方法。
【0075】
本特徴によれば、成形品の強度不足を抑制可能となる。
【0076】
[特徴11]
前記成形型には、前記取付孔を成形するための成形突部が設けられ、
前記フォームには切れ込みを形成し、前記成形突部が前記切れ込みに挿入されて前記フォームを貫通する特徴6に従属する特徴10に記載の成形品の製造方法。
【0077】
特徴11によれば、フォームを成形突部に容易に貫通させることができ、フォームを貫通する取付孔の形成を容易にすることが可能となる。
【0078】
[特徴12]
前記成形型のうち前記成形品に設けられる第1突出部を成形するための凹部に、前記フォームが設置されているか否かを検出する検出装置を用いると共に、前記フォームが前記凹部内にあることが検出された場合には、前記成形型に前記発泡樹脂原料を注入する一方、検出されなかった場合には、前記注入を行わない注入装置を用いる、特徴10又は11に記載の成形品の製造方法。
【0079】
特徴12によれば、フォームが凹部内に配置されていない場合に、成形型内に発泡樹脂原料を注入することを防ぐことが可能となる。
【0080】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0081】
10 成形品
19 硬質フォーム
20 取付部
21 外縁突出部
22 取付孔
30 埋設フォーム
31 切れ込み
50 成形型
70 成形凹部
71 成形突部
G 発泡樹脂原料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7