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<図1>
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097282
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】電動機及び圧縮機
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/34 20060101AFI20230630BHJP
   H02K 3/46 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
H02K3/34 C
H02K3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213547
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000116666
【氏名又は名称】愛知電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 敬
(72)【発明者】
【氏名】真野 鐘治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄大
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 健介
(72)【発明者】
【氏名】安谷屋 拓
(72)【発明者】
【氏名】滝本 修二
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA01
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC16
5H604PB02
5H604PB03
(57)【要約】
【課題】電動機の絶縁特性を高めることができる技術を提供する。
【解決手段】ティース112は、先端部に、周方向一方側に突出しているティース突出部114Aおよび周方向他方側に突出しているティース突出部114Bを有している。スロット絶縁部材120は、ヨーク111の内周面111aから、隣り合う一対のティース112それぞれの側面にかけて配置される本体部(122、123、124)と、互いに近づくように本体部の両端から折り曲げて形成された端部121および端部125を有している。相間絶縁部材170は、異相の巻き付け部131の間に配置される相間絶縁部(172、173)と、互いに離れるように相間絶縁部の両端から折り曲げて形成された端部171および端部174を有している。相間絶縁部材170の端部171(174)は、ティース突出部114B(114A)とスロット絶縁部材120の端部121(125)との間に配置される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子と、固定子と、を備え、
前記固定子は、固定子コアと、固定子巻線と、複数の絶縁部材と、を有し、
前記固定子コアは、固定子コアの軸線を中心とする円環状のヨークと、当該ヨークから径方向内側に延在する複数のティースと、前記ヨーク及び隣り合う一対の前記ティースにより区画される複数のスロットと、を有し、前記ティースは、前記ヨークと反対側の先端部に、周方向一方側及び周方向他方側に突出している一対のティース突出部を有し、
前記固定子巻線は、複数の巻線部分を有する複数相の固定子巻線部分により構成され、複数の前記巻線部分は、前記固定子コアの複数の前記ティースに巻回されている複数の巻き付け部を有し、
複数の前記絶縁部材は、前記ヨーク及び前記一対のティースと当該一対のティースそれぞれに巻回されている前記巻き付け部との間を絶縁する複数のシート状の第1の絶縁部材と、前記一対のティースそれぞれに巻回されている前記巻き付け部の間を絶縁する複数のシート状の第2の絶縁部材と、を有する、
電動機であって、
前記第1の絶縁部材は、前記スロットを区画する前記ヨークの内周面から前記一対のティースそれぞれの側面にかけて配置される本体部と、互いに近づくように前記本体部の両端から折り曲げて形成されている一対の第1の端部と、を有し、
前記第2の絶縁部材は、前記一対のティースそれぞれに巻回されている前記巻き付け部の間に配置される相間絶縁部と、互いに離れるように前記相間絶縁部の両端から折り曲げて形成された一対の第2の端部と、を有し、
前記ティース突出部、前記第2の端部及び前記第1の端部は、径方向内側から径方向外側に向かって、この順番で、径方向に重なるように配置されている、
ことを特徴とする電動機。
【請求項2】
請求項1に記載の電動機であって、
前記ティースの前記ティース突出部と前記第1の絶縁部材の前記第1の端部との間の距離は、当該ティースに隣り合う他のティース側に向かって増加し、
前記第2の絶縁部材の前記第2の端部は、前記ティースの前記ティース突出部と前記第1の絶縁部材の前記第1の端部により規定される領域内に配置されている、ことを特徴とする電動機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電動機であって、
前記固定子は、前記固定子コアの軸線方向一方側の固定子コア端面に配置されている第1の樹脂ボビンと、前記固定子コアの軸線方向他方側の固定子コア端面に配置されている第2の樹脂ボビンと、を有し、
前記第1の樹脂ボビン及び前記第2の樹脂ボビンは、周方向に延在するとともに、前記ヨークに対向する外壁部と、当該外壁部から径方向内側に延在するとともに、複数の前記ティースに対向する複数の延在部を有し、
前記第1の樹脂ボビンの複数の前記延在部は、前記外壁部と反対側の先端部に、前記周方向一方側に突出しているとともに、当該延在部より前記周方向一方側に配置されている前記スロットに対向する第1の移動規制部と、前記周方向他方側に突出しているとともに、当該延在部より前記周方向他方側に配置されている前記スロットに対向する第2の移動規制部と、を有し、
前記第2の樹脂ボビンの複数の前記延在部は、前記外壁部と反対側の先端部に、前記周方向一方側に突出しているとともに、当該延在部より前記周方向一方側に配置されている前記スロットに対向する第3の移動規制部と、前記周方向他方側に突出しているとともに、当該延在部より前記周方向他方側に配置されている前記スロットに対向する第4の移動規制部と、を有し、
前記第1の移動規制部は、前記軸線方向に沿って前記固定子コア側に突出している第1の内壁突出部を有し、
前記第2の移動規制部は、前記軸線方向に沿って前記固定子コア側に突出している第2の内壁突出部を有し、
前記第1の絶縁部材の前記本体部と前記一対の第1の端部のうちの一方との間の折り曲げ部が、前記第1の内壁突出部より径方向内側に配置され、
前記第1の絶縁部材の前記本体部と前記一対の第1の端部のうちの他方との間の折り曲げ部が、前記第2の内壁突出部より径方向内側に配置され、
前記第1の内壁突出部及び前記第2の内壁突出部によって、前記第1の絶縁部材の径方向外側への移動が規制されるように構成されている、
ことを特徴とする電動機。
【請求項4】
請求項3に記載の電動機であって、
前記第1の移動規制部は、前記スロットに面する第1の軸線方向移動規制面を有し、
前記第2の移動規制部は、前記スロットに面する第2の軸線方向移動規制面を有し、
前記第3の移動規制部は、前記スロットに面する第3の軸線方向移動規制面を有し、
前記第4の移動規制部は、前記スロットに面する第4の軸線方向移動規制面を有し、
前記第1の軸線方向移動規制面及び前記第2の軸線方向移動規制面によって、前記第2の絶縁部材の前記軸線方向一方側への移動が規制され、前記第3の軸線方向移動規制面及び前記第4の軸線方向移動規制面によって、前記第2の絶縁部材の前記軸線方向他方側への移動が規制されるように構成されている、
ことを特徴とする電動機。
【請求項5】
請求項3または4に記載の電動機であって、
前記第1の樹脂ボビン及び前記第2の樹脂ボビンの前記連結部は、前記軸線方向に沿って前記ティースと反対側に配置される頂部と、前記頂部より前記周方向一方側及び前記周方向他方側に配置され、それぞれ前記ティースの前記周方向一方側の側面及び前記周方向他方側の側面に対向する一対の側部と、を有し、前記頂部と一対の前記側部のうちの少なくとも一方との接続部には、前記巻き付け部を整列巻きさせる複数の溝が形成されている、ことを特徴とする電動機。
【請求項6】
請求項5に記載の電動機であって、
複数の前記溝は、巻回方向に沿って前記頂部から少なくとも一方の前記側部にかけて互いに平行に延在する複数の突起によって形成され、前記巻回方向における前記突起の少なくとも一端は面取りされている、ことを特徴とする電動機。
【請求項7】
請求項3~6のうちのいずれか一項に記載の電動機であって、
前記頂部と前記外壁部の内周面との間及び前記頂部と前記内壁部の外周面との間の少なくとも一方には、前記軸線方向に沿って前記ティースと反対側に突出する段差部が形成されている、ことを特徴とする電動機。
【請求項8】
冷却媒体を圧縮する圧縮機構部と、前記圧縮機構部を駆動する電動機を備える圧縮機であって、
前記電動機として請求項1~7のうちのいずれか一項に記載の電動機が用いられている、ことを特徴とする圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機及び電動機を駆動源とする圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)や燃料電池車(等FCV)等のエコカーと呼ばれる自動車では、エアコンの圧縮機として、電動機により圧縮機構部を駆動する圧縮機(「電動圧縮機」と呼ばれている)が用いられている。
近年、車両の電源電圧の高圧化に伴って、電動圧縮機に用いられる電動機も高圧仕様のものが求められている。例えば、部品間の絶縁距離を確保するための技術や、部品同士の接触を防止するための技術等の開発が求められている。
圧縮機構部を駆動する電動機としては、例えば、固定子コアの軸線方向両側の固定子コア端面に樹脂ボビンが配置された状態で、固定子巻線を形成する導線が固定子コアのティースに巻き付けられる固定子(「集中巻き方式の固定子」と呼ばれる)を備える電動機(「集中巻き方式の電動機」と呼ばれる)が用いられる。導線は、例えば、銅やアルミニウム等の導電体と、導電体の外周を覆っている絶縁被膜により構成される。
通常、導線と固定子コア間で絶縁不良が発生するのを防止するために、スロット絶縁部材が設けられている。スロット絶縁部材は、ヨークと周方向に隣接する2つのティースとによって区画されるスロット内に、スロットの内周に沿って延在するように配置される。
また、スロットを区画する2つのティース(周方向に隣接するティース)それぞれに巻き付けられる巻き付け部は、異相の固定子巻線部分を構成する。このため、異相の巻き付け部間で絶縁不良が発生するのを防止するために、相間絶縁部材が設けられている。相間絶縁部材は、スロットを形成する2つのティースそれぞれに巻き付けられている巻き付け部間に配置される。
スロット内にスロット絶縁部材と相間絶縁部材が配置されている電動機は、例えば、特許文献1に開示されている。
特許文献1に開示されている電動機では、スロット絶縁部材は、本体部と、互いに近づくように本体部の両端から折り曲げて形成されている一対の第1の端部を有している。また、相間絶縁部材は、相間絶縁部と、互いに離れるように相間絶縁部の両端から折り曲げて形成されている一対の第2の端部を有している。そして、相間絶縁部材は、相間絶縁部が異相の巻き付け部間に配置され、第2の端部がスロット絶縁部材の第1の端部より径方向内側に配置されるように、スロット内に挿入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-279218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている電動機では、相間絶縁部材の第2の端部が、スロット絶縁部材の第1の端部より径方向内側に配置されている。このため、相間絶縁部材が移動すると、相間絶縁部材とスロット絶縁部材との間に隙間が発生し、絶縁特性が低下するおそれがある。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、絶縁特性を高めることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明は、電動機に関する。
第1発明の電動機は、固定子と、固定子に対して回転可能に配置される回転子を備えている。回転子としては、公知の種々の構成の回転子が用いられる。
固定子は、固定子コア、複数の絶縁部材及び固定子巻線を有している。
固定子コアは、例えば、電磁鋼板を積層して形成される。固定子コアは、固定子コアの軸線を中心とする円環状のヨークと、ヨークから径方向内側に延在する複数のティースと、ヨーク及び隣り合う一対のティースにより区画される複数のスロットを有している。ティースは、ヨークと反対側の先端部に、周方向一方側及び周方向他方側に突出している一対のティース突出部を有している。
固定子巻線は、複数の巻線部分を有する複数相の固定子巻線部分により構成されている。複数の巻線部分は、固定子コアの複数のティースに巻回されている複数の巻き付け部を有している。
複数の絶縁部材は、シート状の第1の絶縁部材と、シート状の複数の第2の絶縁部材と、を有している。第1の絶縁部材は、ヨーク及び一対のティースと、当該一対のティースに巻回されている巻き付け部との間を絶縁する。第2の絶縁部材は、一対のティースそれぞれに巻回されている巻き付け部の間を絶縁する。
本発明では、第1の絶縁部材は、本体部と、一対の第1の端部を有している。本体部は、スロットを区画するヨークの内周面から一対のティースそれぞれの側面にかけて配置される。一対の第1の端部は、互いに近づくように本体部の両端から折り曲げて形成されている。
また、第2の絶縁部材は、相間絶縁部と、一対の第2の端部を有している。相間絶縁部は、一対のティースそれぞれに巻回されている巻き付け部の間に配置される。一対の第2の端部は、互いに離れるように相間絶縁部の両端から折り曲げて形成されている。
そして、ティース突出部、第2の端部及び第1の端部は、径方向内側から径方向外側に向かって、この順番で、径方向に重なるように配置されている。
第1発明の電動機は、相間絶縁部材の移動による絶縁不良の発生を防止することができる。これにより、絶縁特性を高めることができる。
第1発明の異なる形態では、第1の絶縁部材は、ティース突出部と第1の端部との間の距離が、当該ティースに隣り合う他のティース側に向かって増加するように、スロット内に配置される。そして、第2の絶縁部材は、第2の端部が、ティース突出部と第1の絶縁部材の第1の端部により規定される領域内に配置される。
本形態では、第2の絶縁部材をスロット内に容易に配置することができる。
第1発明の異なる形態では、固定子は、固定子コアの軸線方向両側の固定子コア端面に配置されている第1の樹脂ボビン及び第2の樹脂ボビンを有している。第1の樹脂ボビン及び第2の樹脂ボビンは、例えば、絶縁特性を有する樹脂により形成される。
第1の樹脂ボビン及び第2の樹脂ボビンは、外壁部と、複数の延在部を有している。外壁部は、周方向に延在するとともに、ヨークに対向するように配置される。複数の延在部は、外壁部より径方向内側に延在するとともに、複数のティースに対向するように配置される。
第1の樹脂ボビンの複数の延在部は、外壁部と反対側の先端部に、周方向一方側に突出している第1の移動規制部及び周方向他方側に突出している第2の移動規制部を有している。第1の移動規制部は、延在部より周方向一方側に配置されているスロットに対向するように突出している。第2の移動規制部は、延在部より周方向他方側に配置されているスロットに対向するように突出している。
また、第2の樹脂ボビンの複数の延在部は、外壁部と反対側の先端部に、周方向一方側に突出している第3の移動規制部及び周方向他方側の吐出している第4の移動規制部を有している。第3の移動規制部は、延在部より周方向一方側に配置されているスロットに対向するように突出している。第4の移動規制部と、延在部より周方向他方側に配置されているスロットに対向するように突出している。
第1の移動規制部は、軸線方向に沿って固定子コア側に突出している第1の内壁突出部を有している。また、第2の移動規制部は、軸線方向に沿って固定子コア側に突出している第2の内壁突出部を有している。
第1の絶縁部材の本体部と一対の第1の端部のうちの一方との間の折り曲げ部が、第1の内壁突出部より径方向内側に配置される。また、第1の絶縁部材の本体部と一対の第1の端部のうちの他方との間の折り曲げ部が、第2の内壁突出部より径方向内側に配置される。
第1の内壁突出部及び第2の内壁突出部によって、第1の絶縁部材の、径方向外側への移動が規制される。
本形態では、スロット内に配置された第1の絶縁部材の、径方向に沿った移動を容易に規制することができる。
第1発明の異なる形態では、第1~第4の移動規制部は、スロットに面する第1~第4の軸線方向移動規制面を有している。第1~第4の軸線方向移動規制面は、周方向及び径方向に延在している。
第1の軸線方向移動規制面及び第2の軸線方向移動規制面によって、第2の絶縁部材の、軸線方向一方側への移動が規制される。また、第3の軸線方向移動規制面及び第4の軸線方向移動規制面によって、第2の絶縁部材の、軸線方向他方側への移動が規制される。
本形態では、スロット内に配置された第2の絶縁部材の、軸線方向に沿った移動を容易に規制することができる。
第1発明の異なる形態では、第1の樹脂ボビン及び第2の樹脂ボビンの連結部は、頂部と、一対の側部と、を有している。頂部は、軸線方向に沿ってティースと反対側に配置される。一対の側部は、頂部より周方向一方側及び風方向他方側に配置され、それぞれティースの周方向一方側の側面及び周方向他方側の側面に対向する。
そして、頂部と一対の側部のうちの少なくとも一方との接続部には、巻き付け部を整列巻きさせる複数の溝が形成されている。
本形態では、巻き付け部を構成する第1列の導線が、複数の溝によって整列して巻き付けられる。これにより、第2列以降の導線が交差するのを防止することができ、導線を、交差させることなく、整列して巻き付けることができる。
本形態では、巻き付け部を整列巻きさせることができ、スロット内における導線の占積率を高めることができる。
第1発明の異なる形態では、複数の溝は、巻回方向に沿って頂部から少なくとも一方の側部にかけて互いに平行(「略平行」を含む)に延在する複数の突起によって形成されている。そして、突起は、巻回方向における少なくとも一端が面取りされている。
本形態では、溝を簡単に形成することができるとともに、溝を形成する突部の先端によって、巻き付け部を構成する導線が損傷するのを防止することができる。
第1発明の異なる形態では、頂部と外壁部の内周面との間及び頂部と内壁部の外周面との間の少なくとも一方には、軸線方向に沿ってティースと反対側に突出する段差部が形成されている。
本形態では、連結部の径方向外側端部及び径方向内側端部の少なくとも一方に段差面が形成されていることにより、巻き付け部を構成する第1列の導線が、整列して巻き付けられる。これにより、第2列以降の導線が交差するのを防止することができ、導線を、交差させることなく、整列して巻き付けることができる。
本形態では、巻き付け部を整列巻きさせることができ、スロット内における導線の占積率を高めることができる。
第2発明は、圧縮機に関する。
第2発明の圧縮機は、冷却媒体を圧縮する圧縮機構部と、圧縮機構部を駆動する電動機を備えている。そして、電動機として前述した電動機のいずれかが用いられている。
冷却媒体を圧縮する圧縮機構部としては、公知の種々の構成の圧縮機構部を用いることができる。
第2発明の圧縮機は、前述した電動機のいずれかと同様の効果を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の電動機及び圧縮機を用いることにより、相間絶縁部材の移動により絶縁不良が発生するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の電動機の第1の実施形態を構成する固定子の斜視図である。
図2図1に示されている固定子の、カバーを取り外した状態における斜視図である。
図3】第1の実施形態の電動機で用いられている固定子を構成する第1の樹脂ボビンの斜視図である。
図4】第1の実施形態の電動機で用いられている固定子を構成する第2の樹脂ボビンの斜視図である。
図5】第1の実施形態の電動機で用いられている固定子における、固定子コア、スロット絶縁部材、相間絶縁部材及び樹脂ボビンとの配置関係を示す図である。
図6】第1の実施形態の電動機で用いられている固定子を構成する第1の樹脂ボビンの要部の斜視図である。
図7】第1の実施形態の電動機で用いられている固定子を構成する第1の樹脂ボビンの断面図である。
図8】巻き付け部を示す図である。
図9】第1の実施形態の電動機で用いられている固定子を構成する第2の樹脂ボビンの外壁部の、切り欠きに対応する部分の断面図である。
図10】第1の実施形態の電動機で用いられている固定子を構成するスロット絶縁部材の斜視図である。
図11】第1の実施形態の電動機で用いられている固定子を構成する相間絶縁部材の斜視図である。
図12】相間絶縁部材をスロット内に挿入する動作を説明する図である。
図13】相間絶縁部材をスロット内に挿入する動作を説明する図である。
図14】第1の実施形態の電動機で用いられている固定子を構成するカバーの斜視図である
図15】第1の実施形態の電動機で用いられている固定子を構成するカバーを裏側から見た斜視図である。
図16】第1の実施形態の電動機で用いられている固定子を構成するカバーの係合片を示す図である。
図17】カバーを第2の樹脂ボビンに取り付ける取り付け機構を説明する図である。
図18】カバーを第2の樹脂ボビンに取り付けた状態を示す図である。
図19】中性点を覆う絶縁部材を示す図である。
図20】中性点を覆う絶縁部材を配置する方法の一例を示す図である。
図21】中性点を覆う絶縁部材を配置する方法の異なる例を示す図である。
図22】本発明の電動機の第2の実施形態で用いられている固定子の斜視図である。
図23図22に示されている固定子の、カバーを取り外した状態における斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
本明細書では、固定子コアの軸線P(図1図2参照)の延在方向を「軸線方向」という。固定子コアの軸線Pは、回転子が固定子に回転可能に配置された状態において、回転子の回転中心線に対応する。
また、軸線方向一方側から見て、軸線Pを中心とする円周方向を「周方向」という。
また、軸線方向一方側から見て、軸線Pを通る線の延在方向を「径方向」という。「径方向内側」という記載は、径方向に沿って軸線P側を示し、「径方向外側」という記載は、径方向に沿って軸線Pと反対側を示す。
なお、樹脂ボビン(第1の樹脂ボビン、第2の樹脂ボビン)、スロット絶縁部材、相間絶縁部材、カバーに対しては、「軸線方向」、「周方向」及び「径方向」という記載は、固定子コアに配置された状態における「軸線方向」、「周方向」及び「径方向」を示す。
また、以下では、図1図2において、紙面上方を「軸線方向一方側」といい、紙面下方を「軸線方向他方側」という。
また、図1図2の紙面上方から見て、軸線Pを中心に、時計方向を「周方向一方側」といい、反時計方向を「周方向他方側」という。
勿論、「軸線方向一方側」、「軸線方向他方側」、「周方向一方側」及び「周方向他方側」は、逆方向であってもよい。
【0009】
本発明の電動機の第1の実施形態を構成する固定子10を、図1図2を参照して説明する。なお、図1は、固定子10の斜視図である。また、図2は、カバーを取り外した状態における固定子10の斜視図である。
固定子10は、固定子コア100、第1の樹脂ボビン200、第2の樹脂ボビン300、スロット絶縁部材120、固定子巻線130、相間絶縁部材170、カバー400により構成されている。
【0010】
固定子コア100は、電磁鋼板を積層して構成されている。
固定子コア100は、筒状を有し、軸線方向一方側に固定子コア端面100Aを有し、軸線方向他方側に固定子コア端面100Bを有している。
固定子コア100は、軸線方向一方側から見た図である図5に示されているように、ヨーク111、複数のティース112、複数のスロット115を有している。
ヨーク111は、周方向に沿って延在している。本実施形態では、ヨーク111は、円環状に形成されている。
複数のティース112は、周方向に沿って離間して配置され、ヨーク111から径方向内側に延在している。ティース112は、ヨーク111から径方向内側に延在するティース基部113と、ティース基部113の先端部に設けられ、周方向に沿って延在するティース先端部114を有している。
ティース基部113は、周方向一方側に第1のティース基部側面113aを有し、周方向他方側に第2のティース基部側面113bを有している。
ティース先端部114は、径方向内側に、ティース先端部内周面114aを有し、径方向外側で周方向一方側に、第1のティース先端部外周面114bを有し、径方向外側で周方向他方側に、第2のティース先端部外周面114cを有している。
ティース先端部114は、ティース基部113から周方向一方側に突出している第1のティース突出部114A及び周方向他方側に突出している第2のティース突出部114Bを有している。第1のティース突出部114Aは、ティース先端部内周面114aと第1のティース先端部外周面114bにより形成され、第2のティース突出部114Bは、ティース先端部内周面114aと第2のティース先端部外周面114cにより形成される。
本実施形態では、第1のティース突出部414A及び第2のティース突出部114Bが、本発明の「一対のティース突出部」に対応する。
ティース先端部内周面114aによって固定子コア内側空間100aが形成される。
固定子コア内側空間100a内に回転子が回転可能に配置される。回転子としては、公知の種々の構成の回転子を用いることができる。
【0011】
固定子10と、固定子コア内側空間100a内に配置される回転子によって、本発明の電動機の第1の実施形態が構成される。
また、図示は省略しているが、冷却媒体を圧縮する圧縮機構部と、圧縮機構部を駆動する電動機として第1の実施形態の電動機を用いた圧縮機が、本発明の圧縮機の第1の実施形態に対応する。
冷却媒体を圧縮する圧縮機構部としては、公知の種々の構成の圧縮機構部を用いることができる。
【0012】
周方向に隣接する2つのティース112とヨーク111によって、スロット115が区画される。スロット115は、ヨーク111のヨーク内周面111aと、周方向一方側のティース112の第2のティース基部側面113b及び第2のティース先端部外周面114cと、周方向他方側のティース112の第1のティース基部側面113a及び第1のティース先端部外周面114bとにより規定される。隣り合うティース112のティース先端部114の間には、スロット115に連通しているスロット開口部115aが形成されている。
【0013】
スロット115内には、スロット絶縁部材が挿入される。
本実施形態では、図10に示されているスロット絶縁部材120が用いられている。
スロット絶縁部材120は、絶縁特性を有する樹脂により形成されるシート状の樹脂フィルムを折り曲げて形成される。樹脂フィルムとしては、公知の種々の樹脂により形成される樹脂フィルムを用いることができる。
具体的には、スロット絶縁部材120は、図10に示されているように、軸線方向に延在する縁部120a及び縁部120b、軸線方向と交差する方向に延在する縁部120c及び縁部120dを有する四角形状の絶縁フィルムを、折り曲げ線120A~120Dに沿って折り曲げることによって形成される。スロット絶縁部材120は、折り曲げ線120A~120Dによって、第1の端部121、第1の中間部122、中央部123、第2の中間部124及び第2の端部125に分割されている。
図10に示されているスロット絶縁部材120は、第1の中間部122、中央部123及び第2の中間部124が略コの字形状に折り曲げられている。第1の中間部122、中央部123及び第2の中間部124により、本体部が構成される。また、第1の端部121と第2の端部125は、互いに近づくように、すなわち、コの字の中心側に入り込むように折り曲げられている。
スロット絶縁部材120は、図5に示されているように、本体部が、ヨーク内周面111aから周方向一方側のティース112の第2のティース基部側面113b及び周方向他方側のティース112の第1のティース基部側面113aにかけて配置される。また、第1の端部121が、周方向一方側のティース112の第2のティース先端部外周面114cに対向し、第2の端部125が、周方向他方側のティース112の第1のティース先端部外周面114bと対向するように配置される。
スロット絶縁部材120は、スロット115内に挿入された状態において、第1の端部121と周方向一方側のティース112の第2のティース先端部外周面114cとの間の距離が、周方向他方側に向って大きくなるように折り曲げられている。同様に、第2の端部125と周方向他方側のティース112の第1のティース先端部外周面114bとの間の距離が、周方向一方側に向って大きくなるように折り曲げられている。
本実施形態では、スロット絶縁部材120が、本発明の「第1の絶縁部材」に対応する。また、第1の端部121と第2の端部125が、本発明の「第1の絶縁部材の一対の第1の端部」に対応する。
なお、図5では、スロット絶縁部材120は、第1の端部121が周方向一方側に配置され、第2の端部125が周方向他方側に配置されるようにスロット115内に挿入されているが、第1の端部121が周方向他方側に配置され、第2の端部125が周方向一方側に配置されるようにスロット115内に挿入することもできる。
この場合は、端部121と中間部122が、第2の端部と第2の中間部となり、端部125と中間部124が、第1の端部と第1の中間部となる。
【0014】
図2に示すように、第1の樹脂ボビン200及び第2の樹脂ボビン300は、固定子コア100の軸線方向両側の固定子コア端面に配置される。第1の実施形態では、第1の樹脂ボビン200が固定子コア100の軸線方向一方側の固定子コア端面100Aに配置され、第2の樹脂ボビン300が軸線方向他方側の固定子コア端面100Bに配置される場合について説明する。この時、第1の樹脂ボビン200の樹脂ボビン端面250Aが固定子コア端面100Aと対向し、第2の樹脂ボビン300の樹脂ボビン端面350Aが固定子コア端面100Bと対向するように配置される。
第1の樹脂ボビン200及び第2の樹脂ボビン300は、絶縁特性を有する樹脂により形成される。
【0015】
図3に示すように、第1の樹脂ボビン200は、外壁部210、複数の内壁部220、複数の連結部250を有している。
外壁部210は、周方向及び軸線方向に沿って延在している。外壁部210は、固定子コア100のヨーク111に対向するように配置される。
内壁部220は、外壁部210より径方向内側に配置され、周方向及び軸線方向に沿って延在している。
連結部250は、周方向及び径方向に沿って延在し、外壁部210と内壁部220を連結している。外壁部250は、固定子コア100のティース112(詳しくは、ティース基部113)に対向するように配置される。
図5図6に示すように、内壁部220は、周方向一方側に突出している第1の鍔部230及び周方向他方側に突出している第2の鍔部240を有している。なお、図6(b)は、図6(a)を矢印b方向から見た斜視図である。
図5に示すように、第1の鍔部230は、連結部250より周方向一方側に配置されているスロット115に対向するように突出している。また、第2の鍔部240は、連結部250より周方向他方側に配置されているスロット115に対向するように突出している。
【0016】
第1の鍔部230は、スロット115に面する第1の移動規制面231を有しているとともに、周方向一方側に外周面232を有している。第2の鍔部240は、スロット115に面する第2の移動規制面241を有しているとともに、周方向他方側に外周面242を有している。
また、第1の鍔部230は、固定子コア100側(固定子コア端面100A側)に突出している第1の内壁突出部233を有している。第1の内壁突出部233は、径方向内側に端面233aを有し、周方向他方側に側面233bを有している。
第1の移動規制面231、第1の内壁突出部233の端面233a及び第1の樹脂ボビン200の連結部250の第1の側面252によって、周方向一方側及び軸線方向他方側(固定子コア端面100A側)が開口している凹部230aが形成される。第1の樹脂ボビン200の連結部250の第1の側面252と第1の内内壁突出部233の側面233bによって、軸線方向他方側、径方向内側及び径方向外側が開口している凹部230bが形成される。
また、第2の鍔部240は、固定子コア100側(固定子コア端面100A側)に突出している第2の内壁突出部243を有している。第2の内壁突出部243は、径方向内側に端面243aを有し、周方向一方側に側面243bを有している。
第2の移動規制面241、第2の内壁突出部243の端面243a及び第1の樹脂ボビン200の連結部250の第2の側面253によって、周方向他方側及び軸線方向他方側(固定子コア端面100A側)が開口している凹部240aが形成される。第1の樹脂ボビン200の連結部250の第2の側面253と第2の内壁突出部243の側面243bによって、軸線方向他方側、径方向内側及び径方向外側が開口している凹部240bが形成される。
端面233a及び端面243aは、軸線方向及び周方向に延在している。
【0017】
本実施形態では、第1の鍔部230が、本発明の「第1の移動規制部」に対応する。第1の移動規制面231が、本発明の「第1の軸線方向移動規制面」に対応し、端面233aが、本発明の「第1の径方向移動規制面」に対応する。
また、第2の鍔部240が、本発明の「第2の移動規制部」に対応する。第2の移動規制面241が、本発明の「第2の軸線方向移動規制面」に対応し、端面243aが、本発明の「第2の径方向移動規制面」に対応する。
【0018】
また、図4に示すように、第2の樹脂ボビン300は、第1の樹脂ボビン100と同様に、外壁部310、複数の内壁部320、複数の連結部350を有している。
本実施形態では、第1の樹脂ボビン100の連結部250及び第2の樹脂ボビン300の連結部350が、本発明の「外壁部から径方向内側に延在する延在部」に対応する。
第2の樹脂ボビン300の内壁部320は、第1の樹脂ボビン200の内壁部220と同様に構成されている。このため、内壁部320の構成を、図6を参照して説明する。なお、図6において、第2の樹脂ボビン300の各要素の符号が括弧内に記載されている。
外壁部310は、周方向及び軸線方向に沿って延在している。外壁部310は、固定子コア100のヨーク111に対向するように配置される。
内壁部320は、外壁部310より径方向内側に配置され、周方向及び軸線方向に沿って延在している。
連結部350は、周方向及び径方向に沿って延在し、外壁部310と内壁部320を連結している。外壁部350は、固定子コア100のティース112(詳しくは、ティース基部113)に対向するように配置される。
内壁部320は、周方向一方側に突出している第3の鍔部330及び周方向他方側に突出している第4の鍔部340を有している。第3の鍔部330は、連結部350より周方向一方側に配置されているスロット115に対向するように突出している。また、第2の鍔部340は、連結部350より周方向他方側に配置されているスロット115に対向するように突出している。
【0019】
第3の鍔部330は、スロット115に面する第3の移動規制面331を有しているとともに、周方向一方側に外周面332を有している。第4の鍔部340は、スロット115に面する第4の移動規制面341を有しているとともに、周方向他方側に外周面342を有している。
第3の移動規制面331及び第4の移動規制面441は、周方向及び径方向に延在している。
また、第3の鍔部330は、固定子コア100側(固定子コア端面100B側)に突出している第3の内壁突出部333を有している。第3の内壁突出部333は、径方向内側に端面333aを有し、周方向他方側に側面333bを有している。
第3の移動規制面331、第3の内壁突出部333の端面333a及び第2の樹脂ボビン300の連結部350の第1の側面352によって、周方向一方側及び軸線方向一方側(固定子コア端面100B側)が開口している凹部330aが形成される。第2の樹脂ボビン300の連結部350の第1の側面352と第3の内壁突出部333の側面333bによって、軸線方向一方側、径方向内側及び径方向外側が開口している凹部330bが形成される。
また、第4の鍔部340は、固定子コア100側(固定子コア端面100B側)に突出している第4の内壁突出部343を有している。第4の内壁突出部343は、径方向内側に端面343aを有し、周方向一方側に側面343bを有している。
第4の移動規制面341、第4の内壁突出部343の端面343a及び第2の樹脂ボビン300の連結部350の第2の側面353によって、周方向他方側及び軸線方向一方側(固定子コア端面100B側)が開口している凹部340aが形成される。第2の樹脂ボビン300の連結部350の第2の側面353と第4の内壁突出部343の側面343bによって、軸線方向一方側、径方向内側及び径方向外側が開口している凹部340bが形成される。
第2の樹脂ボビン300の内壁部320の構成は、固定子コア100に対する、軸線方向に沿った位置関係が逆である点を除いて、第1の樹脂ボビン200の内壁部220と同様である。
【0020】
本実施形態では、第3の鍔部330が、本発明の「第3の移動規制部」に対応する。第3の移動規制面331が、本発明の「第3の軸線方向移動規制面」に対応し、端面333aが、本発明の「第3の径方向移動規制面」に対応する。
また、第4の鍔部340が、本発明の「第4の移動規制部」に対応する。第4の移動規制面341が、本発明の「第4の軸線方向移動規制面」に対応し、端面343aが、本発明の「第4の径方向移動規制面」に対応する。
【0021】
固定子巻線130は、固定子コア100のスロット115内にスロット絶縁部材120が挿入され、固定子コア100の軸線方向両側の固定子コア端面に第1の樹脂ボビン200及び第2の樹脂ボビン300が配置された状態で、導線132を固定子コア100のティース112と、第1の樹脂ボビン200の連結部250及び第2の樹脂ボビン300の連結部350とに巻き付けることによって形成される(図8参照)。導線132をティース112と連結部250及び連結部350とに巻き付ける方法としては、公知の種々の方法を用いることができる。例えば、導線132を供給するニードルを、ティース112と連結部250及び350の回りに旋回させる方法を用いることができる。
導線132は、例えば、銅やアルミニウム等の導電体と、導電体の外周を覆う絶縁被膜により構成される。
【0022】
ティース112に導線132を巻き付ける際、導線132が交差すると、スロット115内に収納される導線132の量が低下し、占積率が低下する。
ここで、ティース112回りの1列目の巻き付け状態が導線132の交差に大きく影響する。例えば、1列目が整列巻きされていない場合には、2列目を巻き付ける際に導線132が交差する可能性が高い。
本実施形態では、第1の樹脂ボビン200の連結部250及び第2の樹脂ボビン300の連結部350を、導線132の交差を防止するように形成している。
第1の樹脂ボビン200の連結部250と第2の樹脂ボビン300の連結部350は、同じ形状を有している。このため、第1の樹脂ボビン200の連結部250の形状について、図7を参照して説明する。図7(a)は、第1の樹脂ボビン200の、径方向に沿った断面図であり、図7(b)は、図7(a)を矢印b-b方向から見た断面図である。
なお、図7において、第2の樹脂ボビン300の連結部350の構成要素の符号が、括弧内に記載されている。
【0023】
連結部250は、固定子コア100と反対側に頂面251を有し、周方向一方側及び周方向他方側に第1の側面252及び第2の側面253を有している。頂面251は、径方向及び周方向に沿って延在し、第1の側面252及び第2の側面253は、軸線方向及び径方向に沿って延在している。
頂面251と第1の側面252との接続部には、周方向に沿って延在する複数の溝254が設けられている。本実施形態では、周方向に沿って平行(「略平行」を含む)に延在する突部254aによって溝254が形成されている。
頂面251と第2の側面253との接続部には、周方向に沿って延在する複数の溝255が設けられている。溝255は、溝254と同様に、周方向に沿って平行(「略平行」を含む)に延在する複数の突部255aによって形成されている。
頂面251と第1の側面252との接続部及び頂面251と第2の側面253との接続部に複数の溝254及び溝255を設けることにより、1列目の導線132を整列して巻き付けることができる。これにより、2列目以降の導線132が交差するのを防止することができ、導線132を整列して巻き付けることができる。導線132を、交差させることなく、整列して巻き付けることができることにより、スロット115内における導線132の占積率を高めることができる。
なお、溝254を形成する突部254a及び溝255を形成する突部255aの先端が尖っていると、溝254及び溝255に配置される導線132の絶縁被膜が損傷するおそれがある。このため、先端が尖っていない突部254a及び突部255aを設けるのが好ましい。「先端が尖っていない突部」という記載は、「先端が鋭角に尖っていない突部」を意味する。先端が尖っていない突部は、例えば、先端が、円弧面形状(R面形状)を含む曲面形状あるいは平面形状である突部が対応する。突部254a及び突部255aを有する第1の樹脂ボビン200を樹脂で一体成形する際には、先端が尖っていない突部254a及び突部255aが形成される。勿論、突部254a及び突部255aの先端を加工する方法、例えば、面取りする方法を用いることもできる。
【0024】
また、連結部250の頂面251と外壁部210の内周面211との間に、固定子コア100(ティース112)と反対側に突出する段差面256が形成されている。
また、連結部250の頂面251と内壁部220の外周面222との間に、固定子コア100(ティース112)と反対側に突出する段差面257が形成されている。
連結部250の頂面251と外壁部210の内周面211との接続部に段差面256を形成することにより、あるいは、連結部250の頂面251と内壁部220の外周面222との接続部に段差面257を設けることにより、1列目の導線132を整列して巻き付けることができる。1列目の導線132が整列して巻き付けられることにより、2列目以降の導線132が交差するのを防止することができる。導線132を、交差させることなく、整列して巻き付けることができることにより、スロット115内における導線132の占積率を高めることができる。
段差面256の高さ及び外壁部210の内周面211と段差面256との間の距離、段差面257の高さ及び内壁部220の外周面222と段差面257との間の距離は、導線132が整列して巻き付けられるように適切に設定される。
なお、溝254、溝255、段差面256及び段差面257のうちのいずれか一つを設けてもよいし、適宜選択した複数を設けてもよい。
連結部250の、固定子コア100側の端面250Aは、第1の樹脂ボビン200の樹脂ボビン端面として用いられる。
【0025】
第2の樹脂ボビン300の連結部350は、第1の樹脂ボビン200の連結部250と同様に形成されている。
すなわち、連結部350は、頂面351と第1の側面352との接続部及び頂面351と第2の側面353との接続部に複数の溝354及び溝355が形成されている。溝354及び溝355は、周方向に沿って平行(「略平行」を含む)に延在する複数の突部354a及び突部355aによって形成されている。
また、連結部350の頂面351と外壁部310の内周面311との間に、段差面356が形成され、連結部350の頂面351と内壁部320の外周面322との間に、段差面357が形成されている。
【0026】
また、本実施形態では、図7に示されているように、第1の樹脂ボビン200の外周面と内周面の、固定子コア100側の部分を、傾斜面に形成している。
具体的には、外壁部210の外周面212の、固定子コア端面100A側の部分212mを、外周面212と固定子コア端面100Aとの間の距離が、固定子コア端面100Aに近づくに従って短くなるように、径方向内側に傾斜する傾斜面に形成している。すなわち、傾斜面212mは、固定子コア端面100Aに向かって径方向内側に傾斜している。
また、内壁部220の内周面221の、固定子コア端面100A側の部分221mを、内周面221と固定子コア端面100Aとの間の距離が、固定子コア端面100Aに近づくに従って短くなるように、径方向外側に傾斜する傾斜面に形成している。すなわち、傾斜面221mは、固定子コア端面100Aに向かって径方向外側に傾斜している。
本実施形態では、第2の樹脂ボビン300の外周面と内周面の、固定子コア100側の部分も、第1の樹脂ボビン200と同様に、傾斜面に形成されている。すなわち、外壁部310の外周面312の、固定子コア端面100B側の部分は、固定子コア端面100Bに向かって径方向内側に傾斜する傾斜面312mに形成されている。また、内壁部320の内周面321は、固定子コア端面100Bに向かって径方向外側に傾斜する傾斜面321mに形成されている。
傾斜面としては、直線状に延在する面(テーパー面)、曲線状に延在する面、階段状に延在する面等のいずれであってもよい。
【0027】
本実施形態では、第1の樹脂ボビン200の外壁部210の外側に導線(渡り線)が配線されていない。この場合、外壁部210の外周面212に形成される傾斜面212mあるいは内壁部220の内周面221に形成される傾斜面221mによって、第1の樹脂ボビン200の凹部200a内の導線と固定子100(固定子コア端面100A)との間の絶縁距離(沿面距離)を長くすることができる。
また、本実施形態では、第2の樹脂ボビン300の外壁部310の外側に導線(渡り線)が配線されている。この場合、外壁部310の外周面312に形成される傾斜面312mによって、外壁部310の外側に配線されている導線(渡り線)と固定子コア100(固定子コア端面100B)との間の絶縁距離(沿面距離)を長くすることができる。また、内壁部320の内周面321に形成される傾斜面321mによって、第2の樹脂ボビン300の凹部300a内の導線と固定子100(固定子コア端面100B)との間の絶縁距離(沿面距離)を長くすることができる。
以上のように、樹脂ボビンの外周面(外壁部の外周面)及び樹脂ボビンの内周面(内壁部の内周面)の、固定子コア側の部分を傾斜面に形成することによって、樹脂ボビンの高さを高くすることなく、絶縁特性を高めることができる。
なお、第1の樹脂ボビン200と第2の樹脂ボビン300のうちの一方の樹脂ボビンのみに傾斜面(外壁部の傾斜面と内壁部の傾斜面)を設けてもよい。また、外壁部の外周面と内壁部の内周面の一方のみに傾斜面を設けてもよい。
【0028】
固定子巻線130は、複数相の固定子巻線部分により構成される。本実施形態では、第1相、第2相及び第3相(U相、V相及びW相)の固定子巻線部分により構成されている。各相の固定子巻線部分は、直列あるいは並列に接続される複数の巻線部分を有している。
各巻線部分は、図8に示されているように、ティース112(詳しくは、ティース112と連結部250及び連結部350)に巻き付けられている巻き付け部131と、巻き付け部131の両端から連続して延びる一対の延長部132a及び延長部132bを有している。延長部132aは、巻き始め線であり、延長部132bは、巻き終わり線である。
巻き付け部131は、ティース112の回りに内側から外側に列状(第1列~第n列)に巻き付けられている導線132により構成される。ここで、固定子巻線130に電流が供給されている状態では、ティース112の内側に巻き付けられている第1列の導線132と、ティース112の外側に巻き付けられている第n列の導線132の間の電位差は大きい。この場合、第1列の導線132と第n列の導線132が接触すると、絶縁不良が発生するおそれがある。第1列の導線132は、巻き始め線132aに連続して延びている。このため、巻き始め線132aと、ティース112の外側に巻き付けられている導線132との接触を防止する必要がある。
巻き始め線132aの処理方法を、図8を参照して説明する。
図8(a)は、樹脂ボビン200の要部を拡大した拡大図であり、図8(b)は、図8(a)を矢印b-b方向から見た図である。なお、図8(a)では、第1列の導線132のみが示されているが、実際には、図8(b)に示されているように、複数列巻き付けられている。
【0029】
本実施形態では、導線132を供給するニードルを、スロット開口部115aからスロット115内に挿入することによって、導線132をティース112に巻き付けている。また、本実施形態では、径方向外側(外壁部210側)の位置からニードルによる巻き付け動作を開始し、径方向外側(外壁部210側)の位置でニードルによる巻き付け動作を終了している。すなわち、巻き始め線132a及び巻き終わり線132bは、連結部250の第1の側面252あるいは第2の側面253側で、外壁部210側に配置される。
このため、本実施形態では、第1の樹脂ボビン200の外壁部210は、連結部250の第1の側面252あるいは第2の側面253との接続部に対応する個所(接続部付近)に、複数の溝213が形成されている。溝213は、軸線方向に沿って固定子コア100と反対側が開口しているとともに、外壁部210の内周面211及び外周面212に開口している。溝213は、周方向一方側の側壁213a、周方向他方側の側壁213b及び底壁213cにより形成されている。
そして、巻き始め線132aを、溝213を介して外壁部210の内側から外側に引き出している。すなわち、巻き始め線132aを、外壁部210の外側に逃がしている。
溝213は、巻き始め線132aが、少なくとも、ティース112の外側に巻き付けられる第n列の導線132と接触しないように、あるいは、定められた距離より近づかないように形成される。例えば、溝213の深さが、第n列の導線132と巻き始め線132aとの間の距離H(図8(b)参照)が設定値以下にならならないように設定される。
本実施形態では、ティース112に巻き付けられる巻き付け部131に連続する巻き始め線132aを、外壁部210の外側に逃がすことにより、巻き始め線132a(ティース112の内側に巻き付けられる第1列の導線132)とティース112の外側に巻き付けられる第n列の導線132とが接触あるいは近傍に配置されるのを防止することができる。
【0030】
ここで、第1相~第3相の固定子巻線部分の両端部のうちの少なくとも一方は、電源に接続される。例えば、スター結線される場合には、一方側端部が電源に接続され、他方側端部が中性点に接続される。また、デルタ結線される場合には、両端部が電源に接続される。電源に接続される端部は、固定子巻線部分を構成する巻き付け部131に連続する巻き始め線132aあるいは巻き終わり線132bにより構成され、電源側リード線と呼ばれる。
電源側リード線は、電源に接続されるため、絶縁強度を高める必要がある。特に、巻き始め線132aにより電源側リード線が構成される場合には、前述したように、ティース112の外側に巻き付けられる導線132と接触するのを防止する必要がある。
電源側リード線が巻き始め線132aにより構成される場合における、巻き始め線132aの処理方法を、図3を参照して説明する。
電源側リード線を構成する巻き始め線132aは、絶縁チューブで覆われる。絶縁チューブとしては、例えば、絶縁特性を有する樹脂により形成される絶縁チューブが用いられる。
絶縁チューブで覆われた巻き始め線132aは、第1の樹脂ボビン200の外壁部210に形成されている溝213の1つを介して外壁部210の内周面211から外周面212に引き出される。さらに、他の溝213を介して外壁部210の外周面212から内周面211に引き戻される。図3では、2つの溝213の間に形成される突部の回りに巻き付けられている。
そして、引き戻された、絶縁チューブで覆われた巻き始め側端部は、ティース112に巻き付けられている巻き付け部131の軸線方向一方側を引き回される。すなわち、絶縁チューブで覆われた巻き始め側端部は、軸線方向一方側から見て、巻き付け部131と重なるように配置される。
なお、電源側リード線が巻き終わり線132bにより構成される場合には、絶縁チューブで覆った状態で、巻き付け部131の軸線方向一方側を引き回される。
絶縁チューブで覆われた電源側リード線が巻き付け部131の軸線方向一方側を引き回されている状態は、後述するように、図20に示されている。
【0031】
巻き付け部131を連続して形成する場合、導線132は、巻き付け部131に連続する一対の延長部(巻き始め線132a、巻き終わり線132b)の一方が他の巻き付け部131に連続する一対の延長部の一方に連続するように引き回される。すなわち、2つの巻き付け部を接続する渡り線が設けられる。
本実施形態では、第2の樹脂ボビン300側で、渡り線を配線している。
第2の樹脂ボビン300は、図4に示されているように、外壁部310に、渡り線を外壁部310の内側から外側に引き出し、あるいは外側から内側に引き戻す複数の切り欠き316が形成されている。切り欠き316は、固定子コア100と反対側が開口しているとともに、外壁部310の外周面312及び内周面311に開口している。切り欠き316は、周方向一方側の第1の側壁316a、周方向他方側の第2の側壁316b及び固定子コア100側の底壁316cにより形成されている。
図4では、外壁部310には、第1~第3の固定子巻線部分(U相~W相の固定子巻線部分)を形成する渡り線を、接触を防止しながら、外壁部310の内側から外側に引き出し、あるいは外側から内側に引き戻すために、3種類の切り欠き316A~316Cが形成されている。
また、外壁部310の外周面312には、外壁部310の外側に引き出された渡り線を、外周面312に沿って配線するためのガイド溝315A~315Cが形成されている。ガイド溝315A~315Cは、それぞれに挿入される渡り線同士の接触を防止するために、軸線方向に離れた位置に形成されている。
渡り線は、切り欠き316A~316Cのいずれかを介して外壁部310の内側から外側に引き出される。そして、外壁部310の外周面312に形成されているガイド溝315A~315Cのいずれかに案内されて外周面312に沿って配線される。その後、切り欠き316A~316Cのいずれかを介して、外壁部310の外側から内周に引き戻される。
なお、切り欠き316A~316Cの深さを等しく設定すると、外壁部310の強度が低下するおそれがある。
このため、本実施形態では、切り欠き316A~316Cの深さが異なるように設定されている。これにより、切り欠き316A~316Cを形成することによる、外壁部310の強度の低下を抑制することができる。すなわち、切り欠き316A~316C内に挿入される渡り線のテンションを高く設定することができ、渡り線の移動を防止することができる。
【0032】
ここで、従来は、図9に破線で示されているように、外壁部310の外周面312と内周面311が、平行に、円弧状に延在しており、外周面312と内周面311との間の距離が等しい。この状態で、渡り線を、切り欠き316を介して外壁部310の外側から内側に引き出している。この場合、矢印Aで示されている細い実線のように、渡り線が切り欠き316を通過する際に、外壁部310の外側に大きく膨らむおそれがある。渡り線が、外壁部310の外側に大きく膨らむと、渡り線が他の部品に接近し、あるいは他の部品と接触し、絶縁不良が発生するおそれがある。
本実施形態では、少なくとも、渡り線が外壁部310の外側から内側に引き戻される個所における外壁部310の外周面312の形状を、図9に実線で示されているように変更している。すなわち、外壁部310の外周面312は、外周面312と内周面311との間の距離(径方向の厚さ)Lが、周方向に沿って切り欠き316に近づくにしたがって小さくなるように切り欠かれている。具体的には、外壁部310の内周面311は、従来と同様に円弧状に延在している。また、外周面312は、切り欠き316の近くまでは、従来と同様に円弧状に延在している。そして、外壁部310は、外周面312と内周面311の間の距離(径方向の厚さ)Lが、周方向に沿って、切り欠き316の手前から切り欠き316に近づくにしたがって短くなるように(L2<L1)、外周面312側から肉抜き(切り欠き)されている。本実施形態では、外周面312側に、直線状に延在する傾斜面312aが形成されるように肉抜きされている。
勿論、傾斜面312aの形状は、これに限定されない。
例えば、図9(b)では、傾斜面312aは、径方向外側に飛び出ている円弧形状に形成されている。
なお、図9において、渡り線が時計方向に引き回されて切り欠き316を渡される場合には、外壁部310の外周面312は、傾斜面312bのように肉抜きされている。
このように、外壁部310の外周面312を、切り欠き316近傍の領域において、外周面312と内周面311との間の径方向の厚さが溝316に向って短くなるように肉抜きされていることにより、図9に太線矢印Bで示されているように、渡り線の、外壁部310の外側への膨らみを抑制することができる。
【0033】
なお、第1の樹脂ボビン200の外壁部210、内壁部220及び連結部250と、第2の樹脂ボビン300の外壁部310、内壁部320及び連結部350は、巻き付け部に連続する巻き始め線を外壁部の外側に逃がす構成(巻き始め線を通す溝213)、渡り線を外壁部の外周面を介して異なる巻き付け部間に配線する構成(渡り線の配線位置をガイドするガイド溝315A~315C、渡り線を外壁部の内側と外側の間で渡す切り欠き316A~316C)を除いて、同様の構成である。勿論、第1の樹脂ボビン200と第2の樹脂ボビン300は、同じ構成であってもよい。
なお、第2の樹脂ボビン300は、樹脂ボビン端面350Aが固定子コア端面100Bと対向するように配置されるため、「軸線方向一方側」及び「軸線方向他方側」は、第1の樹脂ボビン200と逆になる。
【0034】
また、本実施形態では、第1の樹脂ボビン200側において、各固定子巻線部分の、電源に接続される一方側端部(「電源側リード線」と呼ばれる)が、第1の樹脂ボビン200の凹部200a内を周方向に沿って引き回される。なお、各固定子巻線部分がスター結線される場合には、各固定子巻線部分の、中性点に接続される端部(「中性点側リード線」と呼ばれる)も、共通接続された状態で、第1の樹脂ボビン200の凹部200a内を周方向に沿って引き回される。例えば、図20に示されているように、固定子巻線130(巻き付け部131)より固定子コア100と反対側に、電源側リード線(160U、160V)及び中性点リード線(130Ub、130Vb、130Wb)の順に配置される。
この時、電源側リード線や中性点側リード線は、移動を防止するために、縛り紐等によって第1の樹脂ボビン200に固定される。
本実施形態では、図13に示されているように、第1の樹脂ボビン200の外壁部210に、薄肉部215が形成されている。
また、薄肉部215に隣接して、外壁部210の外周面212と内周面211に開口している連通孔216が形成されている。
なお、薄肉部215は、外壁部210の外周面212から径方向内側に離れた位置に形成される。これにより、薄肉部215と外壁部210の外周面212との間に作業用の空間が形成される。
また、連通孔216は、薄肉部215に対して軸線方向に隣接する位置に、周方向に沿って延在するようにするように形成される。
これにより、電源側リード線や中性点側リード線を、連通孔216を通した縛り紐180を用いて固定する際に、縛り紐180が外壁部210の外周面212から外側に飛び出るのを防止することができる。
【0035】
次に、相間絶縁部材170について説明する。
本実施形態では、図11に示されている相間絶縁部材170が用いられている。
相間絶縁部材170は、絶縁特性を有する樹脂により形成される樹脂フィルムを折り曲げて形成される。樹脂フィルムとしては、公知の種々の樹脂により形成される樹脂フィルムを用いることができる。
相間絶縁部材170は、軸線方向に沿って延在する縁部170aと170b、軸線方向と交差する方向に延在する縁部170cと170dを有する四角形状の絶縁フィルムを、折り曲げ線170A~170Cに沿って折り曲げて形成される。折り曲げ線170A~170Cによって、第1の端部171、第1の中央部172、第2の中央部173及び第2の端部174に分割される。
図11に示されている相間絶縁部材170は、第1の中央部172と第2の中央部173がV字状に折り曲げられて相間絶縁部が形成される。第1の端部171と第2の端部174は、相間絶縁部の両端から互いに離れる方向に折り曲げられている。すなわち、相間絶縁部材170は、断面がV字状を有するように折り曲げられている。
相間絶縁部材170が、本発明の「第2の絶縁部材」に対応する。また、第1の端部171及び第2の端部174が、本発明の「第2の絶縁部材の一対の第2の端部」に対応する。
【0036】
相間絶縁部材170の挿入方法を以下に説明する。
先ず、スロット絶縁部材120が固定子コア110のスロット115内に挿入されているとともに、第1の樹脂ボビン200及び第2の樹脂ボビン300が固定子コア100の軸線方向両側の固定子コア端面に配置されている状態を、図5図6を参照して説明する。
スロット絶縁部材120は、図5に示されているように、本体部(中央部123、第1の中間部122、第2の中間部124)が、ヨーク内周面111aから、周方向一方側のティース112の第2のティース基部側面113b及び周方向他方側のティース112の第1のティース基部側面113aにかけて配置される。また、第1の端部121及び第2の端部125は、本体部の両端から互いに近づくように折り曲げられた状態で、周方向一方側のティース112の第2のティース先端部外周面114c及び周方向他方側のティース112の第1のティース先端部外周面114bに対向するように配置される。
この状態で、固定子コア100の軸線方向両側の固定子コア端面に第1の樹脂ボビン200と第2の樹脂ボビン300が配置される。
【0037】
この時、スロット絶縁部材120は、第1の樹脂ボビン200の内壁部220及び第2の樹脂ボビン300の内壁部320によって径方向外側への移動が規制される。
具体的には、第1の端部121と第1の中間部122は、隣り合う内壁部220のうちの周方向一方側の内壁部220の凹部240a及び凹部240b内に配置される。すなわち、第1の端部121と第1の中間部122との間の折り曲げ線120Bが、内壁突出部243より径方向内側に配置される。また、第1の端部121と第1の中間部122は、隣り合う内壁部320のうちの周方向一方側の内壁部320の凹部330a及び凹部330b内に配置される。すなわち、第1の端部121と第1の中間部122との間の折り曲げ線120Bが、内壁突出部333より径方向内側に配置される。
第2の端部125と第2の中間部124は、隣り合う内壁部220のうちの周方向他方側の内壁部220の凹部230a及び凹部230b内に配置される。すなわち、第2の端部125と第2の中間部124との間の折り曲げ線120Cが、内壁突出部233より径方向内側に配置される。また、第2の端部125と第2の中間部124は、隣り合う内壁部320のうちの周方向他方側の内壁部320の凹部340a及び凹部340b内に配置される。すなわち、第2の端部125と第2の中間部124との間の折り曲げ線120Cが、内壁突出部343より径方向内側に配置される。
この場合、第1の端部121の径方向外側への移動は、第1の樹脂ボビン200の内壁部220の内壁突出部243及び第2の樹脂ボビン300の内壁部320の内壁突出部333により規制される。また、第2の端部125の径方向外側への移動は、第1の樹脂ボビン200の内壁部220の内壁突出部233及び第2の樹脂ボビン300の内壁部320の内壁突出部343により規制される。
これにより、スロット絶縁部材120の第1の端部121と周方向一方側のティース112の第2のティース先端部外周面114cとの間及びスロット絶縁部材120の第2の端部125と周方向他方側のティース112の第1のティース先端部外周面114bとの間に空間が形成された状態で、第1の端部121及び第2の端部125(スロット絶縁部材120)の径方向外側への移動が規制される。
スロット絶縁部材120の軸線方向に沿った移動は、第1の樹脂ボビン200の内壁部220及び第2の樹脂ボビン300の内壁部320によって規制される。具体的には、第1の端部121の軸線方向に沿って移動は、周方向一方側に配置されている内壁部220の第2の移動規制面241及び内壁部320の第4の移動規制面341により規制される。また、第2の端部125の軸線方向に沿った移動は、周方向他方側に配置されている内壁部220の第1の移動規制面231及び内壁部320の第3の移動規制面331により規制される。
【0038】
次に、相間絶縁部材170をスロット115内に挿入する動作を、図5図12図13を参照して説明する。
相間絶縁部材170は、第1の端部171が、スロット115を区画する2つのティース112のうちの周方向一方側に配置されているティース112の第2のティース先端部外周面114cと、スロット絶縁部材120の第1の端部121とにより規定される領域内に配置される。また、第2の端部174が、スロット115を区画する2つのティースのうちの周方向他方側に配置されているティース112の第1のティース先端部外周面114bと、スロット絶縁部材120の第2の端部125とにより規定される領域内に配置される。また、相間絶縁部(第1の中央部172と第2の中央部173)が、周方向に隣接する2つのティース112それぞれに巻き付けられている、異相の巻き付け部131の間に配置される。
【0039】
相間絶縁部材170をスロット115内に挿入する場合には、図12に示されているように、縁部170aと170bの間の間隔が短くなるように折り畳む。
そして、この状態で、軸線方向一方側の縁部(例えば、縁部170c)から、第1の端部171及び第2の端部174を、第2の樹脂ボビン300の内壁部320の外周面とティース112のティース先端部外周面との間に挿入するとともに、相間絶縁部(第1の中央部172、第2の中央部173)を、隣接する異相の巻き付け部131の間に挿入する。
具体的には、第1の端部171を、内壁部320の外周面342とティース112の第2のティース先端部外周面114cとの間で、スロット絶縁部材120の第1の端部121より径方向内側に配置されるように挿入する。また、第2の端部174を、内壁部320の外周面332とティース112の第1のティース先端部外周面部分114bとの間で、スロット絶縁部材120の第2の端部125より径方向内側に配置されるように挿入する。
また、相間絶縁部を、隣接する内壁部320の間を介して、隣接するティース112に巻き付けられている、異相の巻き付け部131の間に挿入する。
【0040】
相間絶縁部材170の第1の端部171を、ティース112のティース先端部外周面114cとスロット絶縁部材120の第1の端部121により規定される空間内に配置するとともに、相間絶縁部材170の第2の端部174を、ティース112のティース先端部外周面114bとスロット絶縁部材120の第2の端部125により規定される空間内に配置することにより、絶縁強度を高めることができる。例えば、相間絶縁部材170が移動した場合でも、相間絶縁部材170(第1の端部171、第2の端部174)とスロット絶縁部材120(第1の端部121、第2の端部125)との間に隙間ができるのを防止することができる。これにより、相間絶縁部材170の移動による絶縁不良の発生を防止することができる。
【0041】
相間絶縁部材170を、軸線方向に沿ってスロット115内に挿入する操作は、図13に示されているように、第1の端部171が、第1の樹脂ボビン200の、周方向一方側に配置されている内壁部220の第2の移動規制面241に当接することによって、あるいは、第2の端部174が、第1の樹脂ボビン200の、周方向他方側に配置されている内壁部220の第1の移動規制面231に当接することによって完了する。
スロット115内への挿入が完了すると、縁部170aと170dの間の距離を短くする外力が解除される。これにより、相間絶縁部材170は、弾性力によって元の形状に復帰する。すなわち、相間絶縁部材170の第1の端部171が、周方向一方側に配置されている内壁部220の凹部240a内に配置され、第2の端部174が、周方向他方側に配置されている内壁部220の凹部230a内に配置される。
相間絶縁部材170の軸線方向に沿った移動は、第1の樹脂ボビン200の内壁部220及び第2の樹脂ボビン300の内壁部320によって規制される。具体的には、第1の端部171の軸線方向に沿って移動は、周方向一方側に配置されている内壁部220の第2の移動規制面241及び内壁部320の第4の移動規制面341により規制される。また、第2の端部174の軸線方向に沿って移動は、周方向他方側に配置されている内壁部220の第1の移動規制面231及び内壁部320の第3の移動規制面331により規制される。
【0042】
なお、図5では、相間絶縁部材170は、第1の端部171が周方向一方側に配置され、第2の端部174が周方向他方側に配置されるようにスロット115内に挿入されているが、相間絶縁部材170の挿入方法は、これに限定されない。例えば、第1の端部171が周方向他方側に配置され、第2の端部174が周方向一方側に配置されるようにスロット115内に挿入することもできる。
この場合は、端部171と中央部172が、第2の端部と第2の中央部となり、端部174と中央部173が、第1の端部と第1の中央部となる。
【0043】
ここで、相間絶縁部材170の軸線方向に沿った長さを長くして、軸線方向に沿った絶縁強度を高めたい場合がある。例えば、軸線方向に沿った絶縁距離を長くするために、固定子コア100の軸線方向両側の固定子コア端面に配置された第1の樹脂ボビン200と第2の樹脂ボビン300との間の距離より長い相間絶縁部材170の使用が要望されることがある。
このような相間絶縁部材170を、例えば、第2の樹脂ボビン300側から挿入すると、第1の樹脂ボビン200の内壁部220に形成されている第1の移動規制面231あるいは第2の移動規制面241に当接する。この時、図12に示されているように、相間絶縁部材170は、第2の樹脂ボビン300から、軸線方向に沿って固定子コア100と反対側に飛び出る。
この場合、相間絶縁部材170が、軸線方向に沿って固定子コア100と反対側に側に第2の樹脂ボビン300から飛び出ている分だけ、軸線方向に沿った絶縁距離を長くすることができる。
【0044】
相間絶縁部材170が、第2の樹脂ボビン300から、軸線方向に沿って固定子コア100と反対側に飛び出ると、相間絶縁部材170が第2の樹脂ボビン300の内壁部320に形成されている第3の移動規制面331あるいは第4の移動規制面341に当接しない。このため、第2の樹脂ボビン300側において、相間絶縁部材170が軸線方向に沿って移動するおそれがある。
本実施形態では、第2の樹脂ボビン300にカバー400を取り付けることによって、相間絶縁部材170の軸線方向に沿った移動を規制している。
【0045】
カバー400は、図14図15図16に示されているように、外周壁410、内周壁420、底壁430を有している。
外周壁410は、外周面と内周面を有しているとともに、周方向及び軸線方向に沿って延在している。
内周壁420は、外周壁410の径方向内側に配置され、外周面と内周面を有しているとともに、周方向及び軸線方向に沿って延在している。
底壁430は、外周壁410と内周壁420の間に設けられ、周方向及び径方向に沿って延在している。
外周壁410、内周壁420及び底壁430によって、周方向に沿って延在する凹部400aが形成される。
カバー400には、内側と外側を連通する少なくとも1つの連通孔を有している。本実施形態では、底壁430に連通孔431が形成されている。連通孔431により、カバー400内の温度上昇を抑制することができる。
また、カバー400を第2の樹脂ボビン300に取り付ける取り付け機構が設けられている。
本実施形態では、取り付け機構は、係合片と、係合片が係合可能な係合凹部により構成されている。本実施形態では、図16に示されているように、カバー400の底壁430の裏側(凹部400a内)に、爪441を有する係合片440が設けられている。また、図4に示されているように、第2の樹脂ボビン300の外壁部310の内周面311に、係合凹部360が設けられている。
【0046】
カバー400を第2の樹脂ボビン300に取り付けた状態が図17に示されている。図17に示されているように、カバー400に設けられている係合片440の爪441が、第2の樹脂ボビン300の係合凹部360を形成する係合凹部形成面361に係合されることによって、カバー400が第2の樹脂ボビン300に取り付けられる。この時、カバー400の外周壁410が、第2の樹脂ボビン300の外壁部310の外側に配置される。すなわち、第2の樹脂ボビン300の外周面312に沿って配線されている渡り線がカバー400の外周壁410によって覆われる。これにより、渡り線が他の部品と接触するのを防止することができ、絶縁特性を高めることができる。また、外壁部310の外周面312に沿って配線されている渡り線のテンションは、外壁部310を縮径するように作用する。一方、係合片440が係合凹部360に係合することによる力は、外壁部310を拡径するように作用する。このため、外壁部の強度を低下させることなく、外壁部310の外周面312に沿って配線される渡り線のテンションを高めることができる。
底壁430の形状は適宜設定可能である。本実施形態では、カバー400が第2の樹脂ボビンに取り付けられた状態において、軸線方向一方側(固定子コア100と反対側)から見て、内周壁420より径方向外側では、巻き付け部131の一部が底壁430によって覆われ、内周壁420より径方向内側では、巻き付け部131の他の一部が露出するように形成されている。これにより、固定子10を圧縮機に組付ける際における治具の干渉を防止することができる。また、巻き付け部131の冷却効果を高めることができる。
カバー400が第2の樹脂ボビン300に取り付けられることによって、相間絶縁部材170の軸線方向に沿った移動が規制される。図18では、相間絶縁部材170は、カバー400によって、軸線方向他方側(図18において下側)に移動するのが規制されている。
【0047】
勿論、本実施形態は、軸線方向に沿った長さが、第1の樹脂ボビン200あるいは第2の樹脂ボビン300から固定子コア100と反対側に飛び出さない長さに設定されている相間絶縁部材170を用いることもできる。
この場合には、例えば、相間絶縁部材170を、第2の樹脂ボビン300側から、第1の樹脂ボビン200の内壁部220に形成されている第1の移動規制面231あるいは第2の移動規制面241に当接する位置まで挿入すると、相間絶縁部材170は、第1の端部171と第2の端部174の間の距離が長くなるように弾性復帰する。これにより、相間絶縁部材170は、第1の樹脂ボビン200の内壁部220に形成されている第1の移動規制面231あるいは第2の移動規制面241によって、軸線方向一方側への移動が規制され、第2の樹脂ボビン300の内壁部320に形成されている第3の移動規制面331(図示省略)あるいは第4の移動規制面341(図示省略)によって、軸線方向他方側への移動が阻止される。
この場合は、相間絶縁部材170の移動を規制するためのカバー400を省略することができる。
一方、このような場合でも、カバー400を第2の樹脂ボビン300に取り付けることによって、第2の樹脂ボビン300の外壁部310の外周面312に配線されている渡り線が他の部品に接触するのを防止することができる。
【0048】
固定子巻線130を、スター結線される第1~第3の固定子巻線部分(例えば、U相~W相の固定子巻線部分)により構成する場合、第1~第3の固定子巻線部分の中性点接続側の端部は共通接続されて溶着等によって接合される。
この場合、共通接続部(中性点)は絶縁部材によって覆われた状態で、樹脂ボビンの凹部200a内に周方向に沿って引き回される。
しかしながら、絶縁部材によって覆った状態でも、共通接続部と他の導線との接触により、導線等の他の部品が損傷するおそれがある。
本実施形態では、絶縁部材で覆われた共通接続部(中性点)の配置状態を工夫することによって、共通接続部による他の部品の損傷等を防止している。
【0049】
共通接続部の配置態様の一例が、図20に示されている。
第1相~第3相の固定子巻線部分は、電源に接続される一方側端部(電源側リード線)と、中性点に接続される他方側端部(中性点側リード線)を有している。図20には、第1相~第3相(U相~W相)の固定子巻線部分の中性点側リード線130Ub、130Vb、130Wbのみが図示されている。
電源側リード線は、絶縁部材により覆われた状態で、第1の樹脂ボビン200の凹部200a内において、固定子巻線130(詳しくは、巻き付け部131)の軸線方向一方側を周方向に沿って引き回されている。なお、図20では、U相とV相の電源側リード線を覆っている絶縁部材160Uと160Vのみが図示され、W相の電源側リード線を覆っている絶縁部材は、隠れているため図示されていない。絶縁部材160U、160Vとしては、例えば、絶縁特性を有する絶縁チューブが用いられる。
また、中性点側リード線130Ub~130Wbは、共通に接続された状態で、熱溶着等により接合されて共通接続部(中性点)を形成する。共通接続部は、絶縁部材140で覆われている。
絶縁部材140は、例えば、図19に示されているように、絶縁特性を有する樹脂フィルム150により形成される。
先ず、絶縁特性を有する樹脂フィルム150を筒状に巻付ける。そして、矢印151、152で示す個所を、超音波溶着方法等を用いて接合する。これにより一端側に接合部141を有し、他端側に開口部140aを有する筒状体により構成される絶縁部材140が得られる。
そして、共通接続部を、開口部140aを介して絶縁部材140内に挿入する。
さらに、絶縁部材140で覆った共通接続部を、電源側リード線を覆っている絶縁部材の少なくとも1つに取り付ける。例えば、U相~W相の電源側リード線を覆っている絶縁部材160(図19では、絶縁部材160U、160Vのみが図示されている)の上に配置した状態で、絶縁部材140と、U相~W相の電源側リード線を覆っている絶縁部材160を縛り紐180によって縛る。この場合、前述した、図13に示されている薄肉部215と連通孔216を利用することにより、縛り紐180が、外壁部210の外周面212より外側に飛び出るのを防止すことができる。
【0050】
中性点側リード線の配置態様の他の例が、図21に示されている。
一方側端部(電源側リード線)130Ua~130Waは、絶縁部材160U~160Wにより覆われた状態で、第1の樹脂ボビン200の凹部200a内を周方向に沿って引き回されている。
他方側端部(中性点側リード線130Ub~130Wb)は、共通に接続された状態で接合されて共通接続部を形成する。そして、共通接続部を絶縁部材140で覆った状態で、周方向に隣接するティース112それぞれに巻き付けられている巻き付け部の間に配置される。
なお、周方向に隣接するティース112それぞれに巻き付けられている巻き付け部の間に相間絶縁部材170が配置されている場合には、共通接続部を相間絶縁部材170の間に配置することもできる。
以上のように構成することにより、共通接続部が導線等に接触することにより、導線等の損傷を防止することができる。
【0051】
第1の実施形態の電動機あるいは圧縮機では、固定子コアの軸線方向一方側の固定子コア端面に配置される第1の樹脂ボビン200側で端部の処理を行い、軸線方向他方側の固定子コア端面に配置されている第2の樹脂ボビン300側で渡り線の配線処理を行ったが、これに限定されない。
本発明の電動機の第2の実施形態を図22図23に示す。
第2の実施形態の電動機は、固定子コア500、固定子コア500の軸線方向一方側の固定子コア端面に配置される第1の樹脂ボビン600、固定子コア500の軸線方向他方側の固定子コア端面に配置される第2の樹脂ボビン700、第1の樹脂ボビン600に取り付けられるカバー800により構成される。本実施形態では、固定子コア500の軸線方向一方側の固定子コア端面に配置される第1の樹脂ボビン600側において、端部の処理と渡り線の配線処理を行っている。すなわち、本実施形態では、第1の実施形態おける、渡り線の配線処理を行うための第2の樹脂ボビン300の構成(肉抜きされた切り欠き、ガイド溝)が、第1の樹脂ボビン600に設けられている。
具体的な動作は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0052】
本発明は、実施形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
第1の樹脂ボビン及び第2の樹脂ボビンは、実施形態で説明した第1の樹脂ボビン及び第2の樹脂ボビンに限定されない。例えば、第1の樹脂ボビン及び第2の樹脂ボビンの材料や形状は適宜変更可能である。内壁突出部は、第1の樹脂ボビンの内壁部及び第2の樹脂ボビンの内壁部の双方に設けてもよいし、一方のみに設けてもよい。また、肉抜きされた切り欠きやガイド溝は、第1の樹脂ボビンの外壁部及び第2の樹脂ボビンの外壁部の双方に設けてもよいし、少なくとも一方の樹脂ボビンの外壁部に設けてもよい。
第2の樹脂ボビンに第1の挿入ガイド溝及び第2の挿入ガイド溝を形成したが、第1の挿入ガイド溝及び第2の挿入ガイド溝は、省略することもできる。
第1~第4の内壁突出部を設けたが、内壁部の数は適宜変更可能である。例えば、第1の内壁突出部と第2の内壁突出部のみ設け、あるいは、第3の内壁突出部と第4の内壁突出部のみ設けることもできる。さらに、内壁突出部は、省略することもできる。
スロット絶縁部材は、実施形態で説明したスロット絶縁部材に限定されない。例えば、スロット絶縁部材の材料や形状は適宜変更可能である。
相間絶縁部材は、実施形態で説明した相間絶縁部材に限定されない。例えば、相間絶縁部材の材料や形状は適宜変更可能である。
カバーは、実施形態で説明したカバーに限定されない。例えば、カバーの材料や形状は適宜変更可能である。また、カバーを省略することもできる。
実施形態で説明した各構成や構成部材は、単独で用いることもできるし、適宜選択した複数を組み合わせて用いることもできる。
本発明は、固定子、固定子を備える電動機、電動機を駆動源とする圧縮機として構成することができる。
【符号の説明】
【0053】
10、20 固定子
100、500 固定子コア
100a、500a 固定子コア内側空間
100A、100B、500A、500B 固定子コア端面
111 ヨーク
111a ヨーク内周面
112 ティース
113 ティース基部
113a、113b ティース基部側面(ティース側面)
114 ティース先端部
114A、114B ティース突出部
114a ティース先端部内周面
114b、114c ティース先端部外周面
120 スロット絶縁部材
120a~120d 縁部
120A~120D 折り曲げ線
121、122 端部
122、124 中間部
125 中央部
130 固定子巻線
130Ub、130Ub、130Wb 固定子巻線部分の他方側端部(中性点側端部)
131 巻き付け部
132 導線
132a 巻き始め線
132b 巻き終わり線
140 絶縁部材
140a 開口部
141 接合部
150 絶縁フィルム
160U、160V 絶縁部材
170 相間絶縁部材
170a~170d 縁部
170A~170C 折り曲げ線
171、174 端部
172、173 中央部
180 縛り紐
200、300、600、700 樹脂ボビン
200a、300a 凹部
210、310、610 外壁部
211、311 内周面
212、312 外周面
212m、221m、312m、321m 傾斜面
213 溝
213a、213b 側壁
213c 底壁
215 薄肉部
216 連通孔
220、320、620内壁部
221、321 内周面
222、322 外周面
230、240、330、340 鍔部
231、241、331、341 移動規制面(軸線方向移動規制面)
232、242、332、342 外周面
233、243、333、343 内壁突出部
233a、243a、333a、343a 端面(径方向移動規制面)
233b、243b、333b、343b 側面
230a、240a、330a、340a 凹部
230b、240b、330b、340b 凹部
250、350 連結部
250A、350A 樹脂ボビン端面
251、351 頂面
252、253、352、353 側面
254、255、354、355 溝
254a、354a 突部
256、257、356、357 段差面
315A~315C、615A~615C ガイド溝
316、316A~316C、616A~616C 切り欠き
316a、316b 側壁
316c 底壁
360、660 係合凹部
361 係合凹部形成面(係合面)
400、800 カバー
400a 凹部
410 外周壁
420 内周壁
430 底壁
431 連通孔
440 係止片
441 爪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
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図15
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図17
図18
図19
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図22
図23