IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 学校法人八戸工業大学の特許一覧 ▶ 株式会社ザックスR&Dの特許一覧

<>
  • 特開-隔離用陰圧ボックス 図1
  • 特開-隔離用陰圧ボックス 図2
  • 特開-隔離用陰圧ボックス 図3
  • 特開-隔離用陰圧ボックス 図4
  • 特開-隔離用陰圧ボックス 図5
  • 特開-隔離用陰圧ボックス 図5-2
  • 特開-隔離用陰圧ボックス 図5-3
  • 特開-隔離用陰圧ボックス 図5-4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097288
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】隔離用陰圧ボックス
(51)【国際特許分類】
   A61G 10/02 20060101AFI20230630BHJP
   A61G 1/04 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
A61G10/02 M
A61G1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213553
(22)【出願日】2021-12-27
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】503116257
【氏名又は名称】学校法人八戸工業大学
(71)【出願人】
【識別番号】517189526
【氏名又は名称】株式会社ザックスR&D
(74)【代理人】
【識別番号】100119264
【弁理士】
【氏名又は名称】富沢 知成
(72)【発明者】
【氏名】浅川 拓克
(72)【発明者】
【氏名】田高 昭人
(72)【発明者】
【氏名】今 明秀
【テーマコード(参考)】
4C341
【Fターム(参考)】
4C341JJ03
4C341KK05
4C341KL04
4C341MS02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】使用対象患者からのウイルスを含む飛沫のボックス外流出を効果的に防止でき、救急ストレッチャーにも対応可能な陰圧ボックスを提供すること。
【解決手段】隔離用陰圧ボックス10は、下面ならびに一側面が開口しているボックス本体1、開口側面3に設けられた被覆用シート6、およびボックス本体1の内部空間を陰圧にする陰圧手段7からなり、さらにボックス本体1には使い捨て手袋を気密状態で取り付け可能な手袋用穴8L等が設けられていることを、主たる構成とする。ボックス本体1は、開口下面2、開口側面3、側面4R、4L、4H、および上面5から構成される。持ち手9を備えた構成は本隔離用陰圧ボックス10の取り扱いに便利であるが、その具備の有無、備える場合の位置や数は任意である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストレッチャーに被せて用いる隔離用陰圧ボックスであって、
下面ならびに一側面が開口しているボックス本体、
開口している該一側面に設けられた被覆用シート、および
該ボックス本体の内部空間を陰圧にする陰圧手段からなり、
該ボックス本体には使い捨て手袋を気密状態で取り付け可能な手袋用穴が設けられていることを特徴とする、隔離用陰圧ボックス。
【請求項2】
前記手袋用穴が、前記被覆用シートの設けられている面以外の全側面に一箇所以上設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の隔離用陰圧ボックス。
【請求項3】
前記陰圧手段が前記ボックス本体上に設けられていることを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載の隔離用陰圧ボックス。
【請求項4】
前記陰圧手段が前記ボックス本体とは別体に設けられていることを特徴とする、請求項1、2のいずれかに記載の隔離用陰圧ボックス。
【請求項5】
前記陰圧手段がフィルター付き空気清浄機であることを特徴とする、請求項1、2、3、4のいずれかに記載の隔離用陰圧ボックス。
【請求項6】
前記陰圧手段はバッテリー駆動され、使用時においてストレッチャー移動が可能であることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5のいずれかに記載の隔離用陰圧ボックス。
【請求項7】
前記被覆用シートは前記ボックス本体に着脱可能に形成されていることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6のいずれかに記載の隔離用陰圧ボックス。
【請求項8】
前記被覆用シートは、これをボックス本体内の仰臥位の患者の胸部に載せてその上から心臓マッサージを行うのに十分な仕様に形成されていることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、6、7のいずれかに記載の隔離用陰圧ボックス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は隔離用陰圧ボックスに係り、使用対象患者からのウイルスを含む飛沫のボックス外流出を効果的に防止でき、救急ストレッチャーにも対応可能な陰圧ボックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウイルス、細菌等による感染症に罹患した患者を隔離した状態に保持し、また搬送するための装置や技術については、従来多くの提案、提供がなされている。それらは主に、患者を収容したり被覆したりする空間を陰圧(負圧)に保ち、患者からの病原体を含む飛沫等が流出することを防止し、もって感染防止策とすることを基本的な考え方としている。
【0003】
たとえば後掲特許文献1には、ストレッチャー取付用の患者搬送容器が開示されているが、これは本体部、床シート、給気ユニットおよび内部を負圧にする排気ユニットから構成されている。本体部をストレッチャーの積載部と組み合わせ、底部はストレッチャーの上パイプに載せれ、床シートはストレッチャーのマットレスを被覆し、このようにしてストレッチャーの上面全体を収容する形で用いられる。この構成により本体部を軽量化でき、外部への感染菌流出を防止でき、ストレッチャーに組み合わせて使用すればよいため便利である、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-290383号公報「クリーン患者搬送容器」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、21世紀初頭のSARSウイルスや2019年からの新型コロナウイルス(COVID-19)など大規模な蔓延、流行を初めとして、人間社会は常時、さまざまな感染症の危険に晒されている。医療現場においては、患者から医療従事者等への感染やその伝播を確実に防止することが重要である。特に救急医療の現場では、感染有無の検査・確認よりも、とにかく緊急に傷病者を搬送し、処置しなくてはならない。当然ながら、感染が疑われる患者が搬送されることもあり、そうすると、対応する医師や看護師は一刻一秒を争う状況の中、高い感染リスクに晒されながら処置せざるを得ないのが現状である。このような救急医療の現場においても、患者からの感染を有効に防ぎながら、たとえば気管挿管などの必要な処置を安全に行える方式、しかも導入が容易で、取扱いも簡単な方式が求められる。
【0006】
そこで本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点を踏まえ、救急医療の現場においても患者からの感染を有効に防ぎながら処置を安全に行うことができ、しかも導入が容易で取扱いも簡単な患者隔離技術を提供することである。さらに本発明が解決しようとする課題は、使用対象患者からのウイルス等の病原体を含む飛沫のボックス外流出を効果的に防止でき、救急ストレッチャーにも対応可能な陰圧ボックスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は上記課題について検討した。ストレッチャー上の患者からの主な飛沫発生元は頭部なのであり、また、特に救急患者に対して行われる処置は気管挿管や心臓マッサージ等なのであるから、感染防止しつつの処置対象部位としてはおおむね上半身を想定すればよい。そこで、患者の上半身を被覆可能な隔離用陰圧ボックスとして、下面ならびに一側面が開口しているボックス本体、開口側面に設けられた下半身用の被覆用シート、ボックス本体内部空間を陰圧にする陰圧手段、および使い捨て手袋を気密状態で取り付け可能なボックス本体上の穴を備えた構造を考案した。
【0008】
この隔離用陰圧ボックスの性能を試験したところ、ストレッチャー上への被覆、設置を容易に行うことができ、模擬患者の上半身はもちろん下半身も含めて、その収容空間全体すなわちボックス本体内部の気密を確保できた。それによって当該空間の陰圧状態を形成して維持することができ、しかも手袋用穴を通しての処置も安全かつ容易に行えることを確認できた。これらの成果に基づいて本発明は完成した。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0009】
〔1〕 ストレッチャーに被せて用いる隔離用陰圧ボックスであって、下面ならびに一側面が開口しているボックス本体、開口している該一側面に設けられた被覆用シート、および該ボックス本体の内部空間を陰圧にする陰圧手段からなり、該ボックス本体には使い捨て手袋を気密状態で取り付け可能な手袋用穴が設けられていることを特徴とする、隔離用陰圧ボックス。
〔2〕 前記手袋用穴が、前記被覆用シートの設けられている面以外の全側面に一箇所以上設けられていることを特徴とする、〔1〕に記載の隔離用陰圧ボックス。
〔3〕 前記陰圧手段が前記ボックス本体上に設けられていることを特徴とする、〔1〕、〔2〕のいずれかに記載の隔離用陰圧ボックス。
〔4〕 前記陰圧手段が前記ボックス本体とは別体に設けられていることを特徴とする、〔1〕、〔2〕のいずれかに記載の隔離用陰圧ボックス。
【0010】
〔5〕 前記陰圧手段がフィルター付き空気清浄機であることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕のいずれかに記載の隔離用陰圧ボックス。
〔6〕 前記陰圧手段はバッテリー駆動され、使用時においてストレッチャー移動が可能であることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕のいずれかに記載の隔離用陰圧ボックス。
〔7〕 前記被覆用シートは前記ボックス本体に着脱可能に形成されていることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕のいずれかに記載の隔離用陰圧ボックス。
〔8〕 前記被覆用シートは、これをボックス本体内の仰臥位の患者の胸部に載せてその上から心臓マッサージを行うのに十分な仕様に形成されていることを特徴とする、〔1〕、〔2〕、〔3〕、〔4〕、〔5〕、〔6〕、〔7〕のいずれかに記載の隔離用陰圧ボックス。
【発明の効果】
【0011】
本発明の隔離用陰圧ボックスは上述のように構成されるため、これらによれば、救急医療の現場においても患者からの感染を有効に防ぎながら処置を安全に行うことができる。しかも、導入が容易であり、取扱いも簡単である。すなわち本発明隔離用陰圧ボックスによれば、使用対象患者からのウイルス等の病原体を含む飛沫のボックス外流出が確実に防止できている状態でもって、医療従事者は患者への気管挿管や心停止などの際に行うCPR(心臓マッサージ)等の救命処置はもちろんのこと、患者からの検体採取も安心して行うことができ、救急搬送時を含む医療現場において特に利点が大きい。
【0012】
何らかの感染症への感染が疑われる患者が救急搬送されて来た場合、これまでは、対応する医師や看護師は、一刻一秒を争う状況の中、時には防護服が必要なほどの高い感染リスクに晒されながら処置している状況だった。しかし、本発明隔離用陰圧ボックスを用いることでそのような患者をすぐに隔離することができるため、医療従事者の感染防止に役立ち、また院内における感染の伝播も防止することができ、非常に使いやすい。もちろん、防護服なども不要である。
【0013】
本発明隔離用陰圧ボックスは、主として病院内における救急ストレッチャーへの対応を想定して取り組まれ、完成した。しかしながら、傷病者(患者)の搬送を担う救急車用のストレッチャーとしても用いることができる。また、救急用に限定せずに用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明隔離用陰圧ボックスの基本構成を示す斜視の説明図である。
図2図1に示す本発明隔離用陰圧ボックスの使用方法を示す説明図である(被覆前)。
図3図1に示す本発明隔離用陰圧ボックスの使用方法を示す説明図である(被覆後)。
図4図1に示す本発明隔離用陰圧ボックスの使用方法例を示す上面視の説明図である(使い捨て手袋および手による処置の状況)。
図5】本発明隔離用陰圧ボックスのボックス本体実施例を示す右体側方向からの図(正面図)である。
図5-2】図5に示す実施例の仰向け上面方向からの図(上面図)である。
図5-3】図5に示す実施例の頭部方向からの図(左側面図)である。
図5-4】図5に示す実施例の下半身方向からの図(右側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明隔離用陰圧ボックスの基本構成を示す斜視の説明図である。図示するように本隔離用陰圧ボックス10は、下面ならびに一側面が開口しているボックス本体1、開口側面3に設けられた被覆用シート6、およびボックス本体1の内部空間を陰圧にする陰圧手段7からなり、さらにボックス本体1には使い捨て手袋を気密状態で取り付け可能な手袋用穴8L等が設けられていることを、主たる構成とする。ボックス本体1は、開口下面2、開口側面3、側面4R、4L、4H、および上面5から構成される。なお、図示するように持ち手9を備えた構成は本隔離用陰圧ボックス10の取り扱いに便利であるが、その具備の有無、備える場合の位置や数は任意である。
【0016】
図2図3は、図1に示す本発明隔離用陰圧ボックスの使用方法を示す説明図であり、それぞれ患者への被覆前、被覆後の状態を示す。これらに図示するように上記構成の本隔離用陰圧ボックス10は、感染症に感染している疑いのある対象患者Pが寝かせられたストレッチャーSの上に被せて用いられる。すなわちボックス本体1を、その開口側面3が下半身側に向き、陰圧手段7の載置された上面5を上に向けた姿勢で、患者Pの頭部・上半身を被覆するようにストレッチャーSに取り付ける。この時、図示するように少なくともボックス本体1の側面4R、4Lに持ち手9を備えた構成は、本隔離用陰圧ボックス10の運搬および取り付けの際に便利である。
【0017】
開口側面3に設けられた被覆用シート6は、患者Pの下半身方向へと伸ばされ、縁をストレッチャーSに密着させるべく下半身を被覆する。この状態で陰圧手段7を機能させることにより、被覆用シート6はストレッチャーSに密着し、開口側面3により繋がっているボックス本体1内部空間および被覆表シート6による被覆内部は一体に陰圧となり、内部空間で患者Pからの飛沫が発生した場合でもこれが本隔離用陰圧ボックス10外へと流出することが確実に防止される。こうして患者Pを感染源とする感染・伝播を完全に遮断した隔離状態下、ボックス本体1に設けられた手袋用穴8L等に気密状態で取り付けられた使い捨て手袋(図示せず、後掲図4参照)を用いて、医療従事者は安全に患者Pに対する処置や検査用の検体採取等を行うことができる。
【0018】
本隔離用陰圧ボックス10を救急搬送された患者Pの救急医療現場にて用いる場合、救急車から救急ストレッチャー(S)に移された時点で直ちに本隔離用陰圧ボックス10を取り付け、外部への感染を防止するようにする。そしてそのまま院内を移動させ、処置室にての処理、検体の採取、別室への移動、全ての過程において、隔離状態を維持するようにする。
【0019】
本隔離用陰圧ボックス10の陰圧手段7としては、フィルター付き空気清浄機を好適に用いることができる。特に、医療用HEPAフィルター付きの空気清浄機の使用が望ましい。これによって、本発明所期の効果を最大限に得ることができる。フィルター付き空気清浄機を稼働させると、ボックス本体1内が陰圧化し、それにより新鮮な空気が強制的にボックス本体1内に吸い込まれる。一般に、健康な人の血中酸素濃度は96?100%であり、95%以下となった場合には要注意である。本隔離用陰圧ボックス10は陰圧手段7によって常時新鮮な空気が供給されるため、患者Pの血中酸素濃度は正常に保持することができる。
【0020】
また、陰圧手段7はバッテリー駆動方式とすることができる。これにより、ストレッチャーに取り付けて陰圧手段7を機能させている状態で、ストレッチャーを自由に移動することができる。したがって、必要に応じた院内移動が行える他、救急車用のストレッチャーとして用いる場合には、救護現場における使用にも便利である。
【0021】
図4は、図1に示す本発明隔離用陰圧ボックスの使用方法例を示す上面視の説明図である。すなわち、使い捨て手袋、および手による処置状況の例を示す。本図、および前掲図1でも示したように手袋用穴8R等は、前記被覆用シート6の設けられている開口側面3以外の全側面、すなわち側面4R、4L、4Hそれぞれに一箇所以上設けられている構成とすることができる。図示する例では、患者Pの左右にあたる側面4R、4Lにはそれぞれ一箇所の手袋用穴8R、8Lが、また、患者Pの頭頂方向にあたる側面4Hには二箇所の手袋用穴8H、8H’、計四箇所が設けられている。
【0022】
このように各側面に一箇所以上手袋用穴8R等が設けられることによって、必要な処置や検体採取を最適な方向から行うことができ、また複数の医療従事者での協同作業による処置等が必要な場合にも便利である。手袋用穴8R等の取り付け数、取付位置などは適宜に設計可能である。また、手袋用穴8R等は、これに使い捨て手袋を気密状態で取り付け可能な仕様に形成されている。これにより、手袋用穴8R等から内部からの汚染空気や飛沫の漏出を防ぐことができる。
【0023】
図示する処置例では、四箇所全ての手袋用穴8R等に使い捨て手袋が取り付けられていて、患者の左右からそれぞれ片手を、また患者の頭頂方向からは一人の両手もしくは二人の片手をボックス本体内に入れて、処置等に供することができる。また、開口側面3方向からは一人の医療従事者の両手H、Hがボックス本体内へ伸びているが、これは図示しない被覆用シート6の上からであり、内部の隔離状態は保持されている。CPRはこのように開口側面3から被覆シート3を介して行うのが便利である。
【0024】
図1、2、3に示したように、本隔離用陰圧ボックス10の陰圧手段7はボックス本体1上に、つまり上面5の上に設けるものとすることができる。しかしながら陰圧手段は、ボックス本体とは別体する構成も、本発明の範囲内である。望ましい陰圧手段として想定される医療用HEPAフィルター付きの空気清浄機は通常、相当の重量であり、ボックス本体にはこれを上面に設置するための相応の強度を備えた構造が要求される。たとえば、ステンレス鋼製フレームと塩化ビニール製の各面による構造等である。強度を担うフレームにより、ボックス本体は相応の重量を有することになる。
【0025】
だが、陰圧手段をボックス本体とは別体構成とすることによって、ボックス本体の軽量化を図ることができる。つまり、ステンレス鋼製等の強度担保用のフレームを用いずに、塩化ビニール製の面のみによってこれを構成すれば、相当の軽量化となる。陰圧手段を別体とする構成では、陰圧手段とボックス本体間を繋ぐ流通手段が備えられる。流通手段としてはたとえば、ダクト、およびダクト配設部である。救急車用のストレッチャー用の場合、この別体構成は実用性がより高い。
【0026】
なお下半身を覆うための被覆用シート6は、ボックス本体1に着脱可能な構成としてもよい。もともと別材料により形成され、前者は軟性、後者は剛性 であり、着脱可能な仕様は使用後の洗浄処理や保管に便利である。被覆用シート6は、これをボックス本体1内の仰臥位の患者Pの胸部に載せてその上からCPRを行うのに十分な仕様に形成されているものとすることができる。被覆用シート6の材質は任意であるが、ビニールを好適に使用できる。
【0027】
図5図5-2、図5-3、および図5-4は、本発明隔離用陰圧ボックスのボックス本体実施例を示す図であり、それぞれ、これが患者に被覆された場合の右体側方向からの図(正面図)、仰向け上面方向からの図(上面図)、頭部方向からの図(左側面図)、および下半身方向からの図(右側面図)である。本実施例のサイズは、長さ約50cm、幅約60cm、高さ約50cmであるが、これに限定されない。面(パネル)部分の材質は、アクリル樹脂製よりも塩化ビニール製の方が軽量で望ましい。塩化ビニールはアルコール耐性および難燃性でもあり、本発明隔離用陰圧ボックスの材質として最適である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の隔離用陰圧ボックスによれば、救急医療の現場においても患者からの感染を有効に防ぎながら処置を安全に行うことができ、導入容易、取扱いも簡単である。したがって、救急医療を初めとする医療現場に関わる医療機器製造・使用分野、および関連する全ての分野において、産業上利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0029】
1、21…ボックス本体
2、22…開口下面
3、23…開口側面
4R、4L、4H、24R、24L、24H…側面
5、25…上面
6…被覆用シート
7、27…陰圧手段
8L、8R、8H、8H’、28L、28R、28H、28H’…手袋用穴
9…持ち手
10…隔離用陰圧ボックス
G…使い捨て手袋
H…医療従事者の手
P…患者
S…ストレッチャー
図1
図2
図3
図4
図5
図5-2】
図5-3】
図5-4】