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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097289
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】鉄筋支持金具及び防水構造
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/38 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
E21D11/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213556
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】居川 圭太
(72)【発明者】
【氏名】金子 恵一
(72)【発明者】
【氏名】山岸 隆史
(72)【発明者】
【氏名】井上 勇太
(72)【発明者】
【氏名】小野 航
(72)【発明者】
【氏名】西里 亮
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155CA03
2D155HA04
2D155HA05
2D155KA00
2D155LA02
(57)【要約】
【課題】防水シートの貫通穴の周縁にバリがある状態でも、覆工コンクリート側への地山湧水の漏水を確実に防止できる。
【解決手段】覆工コンクリートに埋設される鉄筋205を支保工201に支持させるための鉄筋支持金具1であり、固定台21の一方の面から台座雄ねじ部22が突出し、他方の面が支保工201に固着される台座2と、環状の基板31の一方の面から雄ねじ部32が突出し、雄ねじ部32の内部に雌ねじ状の袋ねじ33が形成され、その奥部が袋状空間34になっている金具本体3と、台座雄ねじ部22の外周に嵌め込まれる環状の弾性シール材4を備え、防水シート102の固定台21と逆側に弾性シール材4が台座雄ねじ部22に外嵌めして積層され、袋状空間34を維持しつつ袋ねじ33に台座雄ねじ部22が螺合された金具本体3の基板31が弾性シール材4を防水シート102側に押圧する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋を被支持材に支持させるための鉄筋支持金具であって、
固定台の一方の面から台座雄ねじ部が突出し、前記固定台の他方の面が被支持材に固着される台座と、
環状の基板の一方の面から雄ねじ部が突出し、前記雄ねじ部の内部に雌ねじ状の袋ねじが形成され、前記袋ねじの奥部が袋状空間になっている金具本体と、
前記台座雄ねじ部の外周に嵌め込まれる環状の弾性シール材とを備え、
前記台座雄ねじ部に貫通して敷設される防水シートの前記固定台と逆側に前記弾性シール材が前記台座雄ねじ部に外嵌めして積層され、
前記袋状空間を維持しつつ前記袋ねじに前記台座雄ねじ部が螺合された前記金具本体の前記基板が前記弾性シール材を前記防水シート側に押圧することを特徴とする鉄筋支持金具。
【請求項2】
前記雄ねじ部の前記基板側に向かって、前記雄ねじ部に弾性リングとワッシャーとナットが順に取り付けられて前記ナットで締め付けられることを特徴とする請求書1記載の鉄筋支持金具。
【請求項3】
請求項2記載の鉄筋支持金具が用いられる防水構造であって、
環状の防水パッチシートの外周縁が前記防水シートに固着され、
前記防水パッチシートの内周縁の周辺が前記基板と前記弾性リングに挟持されることを特徴とする防水構造。
【請求項4】
前記防水シートと前記防水パッチシートと前記鉄筋支持金具とで囲まれる空間に弾性止水材が充填されていることを特徴とする請求項3記載の防水構造。
【請求項5】
前記防水パッチシートに前記弾性止水材を注入するための注入口と排気口が設けられていることを特徴とする請求項4記載の防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋を被支持材に支持させるための鉄筋支持金具及びこの鉄筋支持金具を用いる防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、山岳トンネルで地山301を掘進してトンネル空間Tを形成する作業では、トンネル掘進に伴って所定間隔で支保工302が建て込まれ、吹付コンクリート303が吹き付けられ、吹付コンクリート303の内側、即ちトンネル空間側に防水シート304が貼り付けられている。更に、防水シート304の内側には、覆工コンクリート306が移動式型枠で打設されて、覆工が形成される(図6(a)参照)。この際、覆工コンクリートをRC構造の鉄筋コンクリートとする場合、特にトンネルの坑口付近やウォータータイトトンネル等では、覆工コンクリート306内に構造筋として鉄筋305が格子状に組んだ状態で配筋される。
【0003】
そして、鉄筋305は、例えばトンネルのアーチ部では、移動型枠内の所定の配筋位置に鉄筋305を保持するために、図6(b)に示すように、円盤状の固定台308と、固定台308の一方の面から突出するボルト部309とから構成される溶接台座307が用いられる。溶接台座307の固定台308の他方の面は支保工302に溶接して固定され、防水シート304はボルト部309を貫通させるようにして敷設される。鉄筋305は、ボルト部309を介して支保工302に固定され、所定の配筋位置に保持される。
【0004】
これに類似する先行技術として、特許文献1には、支保工に溶接で定着された定着支持部材が防水シートを貫通してトンネル内側へ突出され、鉄筋が連結される連結ロッドと定着支持部材との間にターンバックルを介在して設けられ、ターンバックルの回転で鉄筋のトンネル内外方向への位置を調節可能な鉄筋支持金具が開示されている。特許文献1の鉄筋支持金具では、定着支持部材の防水シートよりトンネル内側へ突出した部分の外周に、シール材と座金とナットが防水シート側から順次嵌められ、防水シートの貫通穴からの漏水防止が図られている。
【0005】
また、特許文献2では、防水シートに穴をあけずに鉄筋を支持できる鉄筋支持金具が提案されている。特許文献2の鉄筋支持金具は、断面視略C字形で溝を有し、対向するように突出する引掛片が設けられ、支保工に取り付けられるグリップと、溝内に入り込む防水シートを溝内で押さえるシートプレートと、縦横の長さが異なるように形成され、シートプレートに対して回転可能に軸支されている回転板と、回転板と一体的に回転するように設けられ、鉄筋が取り付けられる鉄筋取付部とを備え、溝内で回転板を回転して回転板を引掛片に引っ掛けることにより、シートプレートで防水シートが挟持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-153210号公報
【特許文献2】特開2019-218724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、防水シートに貫通穴を開ける貫通式の鉄筋支持金具は、現場で防水シートを展張してから鉄筋支持金具のボルトや定着支持部材に当てがい、防水シートをハンマーで叩き、貫通穴を開けて施工される。この際、例えば図6(b)に示すようなギザギザのバリ304mが防水シート304の貫通穴304nの周縁に残る。このように防水シートの貫通穴の周縁にバリがある状態では、特許文献1のように、シール材を防水シートの貫通穴の周囲に押し付けて設けたとしても、地山湧水の水圧が高い場合には、図6(b)の水Wのように、バリと金具の間から水が出て来てシール材の貫通穴から漏水に至る可能性がある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであり、支保工等の被支持材から支持されて防水シートに貫通して設けられる鉄筋支持金具において、防水シートの貫通穴の周縁にバリがある状態でも、防水シートを超えて漏水することを確実に防止することができる鉄筋支持金具、及び鉄筋支持金具を用いる防水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の鉄筋支持金具は、鉄筋を被支持材に支持させるための鉄筋支持金具であって、固定台の一方の面から台座雄ねじ部が突出し、前記固定台の他方の面が被支持材に固着される台座と、環状の基板の一方の面から雄ねじ部が突出し、前記雄ねじ部の内部に雌ねじ状の袋ねじが形成され、前記袋ねじの奥部が袋状空間になっている金具本体と、前記台座雄ねじ部の外周に嵌め込まれる環状の弾性シール材とを備え、前記台座雄ねじ部に貫通して敷設される防水シートの前記固定台と逆側に前記弾性シール材が前記台座雄ねじ部に外嵌めして積層され、前記袋状空間を維持しつつ前記袋ねじに前記台座雄ねじ部が螺合された前記金具本体の前記基板が前記弾性シール材を前記防水シート側に押圧することを特徴とする。
これによれば、防水シートの貫通穴の周縁にバリがある状態で、防水シートの貫通穴の周縁から貫通する台座雄ねじ部を伝って漏水してきた場合にも、台座雄ねじ部に外嵌めされた弾性シール材で漏水を防止することができる。更に、弾性シール材で防水しきれなかった漏水があったとしてもその漏水は金具本体の袋ねじの袋状空間に導水される為、金具本体の雄ねじ部の外側には出ていかない。従って、防水シートを超えて漏水することを確実に防止することができる。
【0010】
本発明の鉄筋支持金具は、前記雄ねじ部の前記基板側に向かって、前記雄ねじ部に弾性リングとワッシャーとナットが順に取り付けられて前記ナットで締め付けられることを特徴とする。
これによれば、金具本体の基板の被支持材側に弾性シール材が配置され、その基板の被支持材と逆側に弾性リングが配置され、表裏両側に配置される弾性材で基板を挟み込むようにナット締めされることにより、台座の台座雄ねじ部と金具本体の雌ねじ状の袋ねじの螺合状態が緊密となり、例えば固定台と弾性シール材との間や、弾性シール材と基板との間や、基板と弾性リングとの間の隙間からの漏水をより確実に防止することができる。
【0011】
本発明の防水構造は、本発明の鉄筋支持金具が用いられる防水構造であって、環状の防水パッチシートの外周縁が前記防水シートに固着され、前記防水パッチシートの内周縁の周辺が前記基板と前記弾性リングに挟持されることを特徴とする。
これによれば、地山の水圧が高く漏水がにじみ出てきてしまいかねない状況でも防水パッチシートがこれをおさえ、さらに万一に備え防水シートと防水パッチシートと鉄筋支持金具とで囲まれる空間も袋状空間として利用することができる為、全体的な袋状空間の大きさを増やし、より高水圧の地山湧水の漏水を防止することができると共に、より長期に亘って地山湧水の漏水を防止することができる。
【0012】
本発明の防水構造は、前記防水シートと前記防水パッチシートと前記鉄筋支持金具とで囲まれる空間に弾性止水材が充填されていることを特徴とする。
これによれば、弾性止水材により、防水シートと防水パッチシートと鉄筋支持金具とで囲まれる空間に漏水をより確実に留めることができる。
【0013】
本発明の防水構造は、前記防水パッチシートに前記弾性止水材を注入するための注入口と排気口が設けられていることを特徴とする。
これによれば、防水シートと防水パッチシートと鉄筋支持金具とで囲まれる空間に弾性止水材を設置する際の施工性を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、防水シートの貫通穴の周縁にバリがある状態でも、防水シートを超えて漏水することを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明による実施形態の鉄筋支持金具の分解斜視図。
図2】実施形態の鉄筋支持金具の分解断面図。
図3】実施形態の鉄筋支持金具の防水構造を示す断面説明図。
図4】(a)~(c)は実施形態の鉄筋支持金具の施工手順を示す工程説明図。
図5】実施形態の鉄筋支持金具の防水構造の変形例を示す断面説明図。
図6】(a)は従来の施工中のトンネルの斜視説明図、(b)は従来の溶接台座と防水シートの設置状態を説明する斜視説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔実施形態の鉄筋支持金具及び防水構造〕
本発明による実施形態の鉄筋支持金具1は、覆工コンクリートに埋設される鉄筋205を支保工(被支持材)201に支持させるための鉄筋支持金具1であり、図1図3に示すように、台座2と、金具本体3と、環状の弾性シール材4と、弾性リング5と、ワッシャー6と、ナット7とを備える。
【0017】
台座2は、円盤状の固定台21と、台座雄ねじ部22とから構成され、固定台21の一方の面から台座雄ねじ部22が突出するようにして形成されている。固定台21の他方の面は支保工に溶接する等によって固着される。台座雄ねじ部22は、例えば固定台21に溶接で固定する等によって設けられ、図示例の台座雄ねじ部22はM16のボルトになっている。
【0018】
金具本体3は、固定台21の外径より若干小さい外径を有する環状の基板31と、雄ねじ部32とから構成され、基板31の一方の面から雄ねじ部32が突出するようにして形成されている。図示例の雄ねじ部32は、外径の異なる雄ねじが2段階で形成されており、基板31側である根元側の雄ねじ部321と、雄ねじ部321より外径の小さい先端側の雄ねじ部322とから構成されている。図示例の根元側の雄ねじ部321はM24のボルト、先端側の雄ねじ部322はM16のボルトになっている。尚、全体が同一の外径の雄ねじで金具本体3の雄ねじ部32を形成しても良い。
【0019】
金具本体3の雄ねじ部32の内部には非貫通で雌ねじ状の袋ねじ33が形成されており、袋ねじ33の奥部が袋状空間34になっている。雌ねじ状の袋ねじ33は、台座2の台座雄ねじ部22を基板31側から相対的に螺合可能に形成されており、図示例では台座雄ねじ部22のM16のボルトに対応してM16の雌ねじになっている。また、鉄筋支持金具1が用いられる防水構造において、袋ねじ33に台座雄ねじ部22を最大限螺入した状態でも、袋ねじ33の奥部の袋状空間34は空洞で維持されるようになっている。
【0020】
環状の弾性シール材4は、例えばゴムパッキン等で構成され、図示例では固定台21の外径と略同一の外径で形成されている。環状の弾性シール材4は、台座2の台座雄ねじ部22の外周に嵌め込まれるようにして設けられ、台座2の固定台21と、金具本体3の基板31との間に配置される。
【0021】
弾性リング5は、例えばゴムパッキン等で構成され、図示例では基板31の外径と略同一の外径で形成されている。弾性リング5は、金具本体3の雄ねじ部32の外周に嵌め込まれるようにして設けられ、図示例では先端側の雄ねじ部322よりも外径が大きい根元側の雄ねじ部321の外周に嵌め込まれるようにして設けられる。
【0022】
ワッシャー6は、図示例では弾性リング5の外径と略同一の外径で形成されており、弾性リング5に対して基板31と逆側で雄ねじ部32に外挿され、本例では外径が大きい根元側の雄ねじ部321に外挿される。また、ナット7は、ワッシャー6に対して基板31と逆側で雄ねじ部32に螺合され、本例では外径が大きい根元側の雄ねじ部321に螺合される。
【0023】
鉄筋支持金具1が用いられる防水構造では、図3に示すように、地山に建て込まれて周囲に吹付コンクリート202が吹き付けられた支保工201に、溶接部101で固着する等によって台座2の固定台21が固着される。そして、防水シート102を展張して台座2の台座雄ねじ部22に当てがい、防水シート102をハンマー103で叩き、防水シート102に貫通穴102aを開けて施工し、台座雄ねじ部22を防水シート102からトンネル空間の内側に突出させる(図4(a)、図3参照)。この際、図3に示すように、必要に応じて、防水シート102と吹付コンクリート202との間に不織布等の緩衝層104を敷設してもよい。
【0024】
更に、トンネル空間の内側に突出した台座雄ねじ部22に弾性シール材4を外嵌めし、敷設した防水シート102の固定台21と逆側に弾性シール材4を積層して配置し、金具本体3の袋ねじ33を台座雄ねじ部22に螺合して金具本体3を台座2に取り付ける(図3図4(b)参照)。台座雄ねじ部22に螺合された金具本体3は、袋状空間34のスペースを維持しつつ、その基板31で弾性シール材4を防水シート102側に押圧する。
【0025】
次いで、金具本体3の雄ねじ部32に、基板31側に向かって、弾性リング5、ワッシャー6、ナット7を順に取り付け、雄ねじ部32にナット7を締め付ける(図3図4(b)、図4(c)参照)。このナット7を雄ねじ部32に緊締することにより、台座2の台座雄ねじ部22と金具本体3の袋ねじ33の螺合状態が緊密となると共に、金具本体3は、袋状空間34のスペースを維持しつつ、その基板31で弾性シール材4を防水シート102側に強力に押圧することになる。
【0026】
そして、図3及び図4(c)に示すように、金具本体3のナット7から突出する雄ねじ部32、本例では先端側の雄ねじ部322に長ナット203を螺合し、長ナット203の雄ねじ部322の螺合側と逆側に鉄筋205を支持する支持ボルト204を螺合して鉄筋205を所定の配筋位置で保持し、鉄筋205の周囲に図示省略する覆工コンクリートを打設して鉄筋コンクリート製の覆工を形成する。
【0027】
本実施形態によれば、防水シート102の貫通穴102aの周縁にバリがある状態で、防水シート102の貫通穴102aの周縁から貫通する台座雄ねじ部22を伝って漏水してきた場合にも、台座雄ねじ部22に外嵌めされた弾性シール材4で漏水を防止することができる。更に、図3の太線矢印で示す水Wのように、弾性シール材4で防水しきれなかった漏水があったとしてもその漏水は金具本体3の袋ねじ33の袋状空間34に導水される為、金具本体3の雄ねじ部32の外側には出ていかない。従って、覆工コンクリート側への地山湧水の漏水を確実に防止することができる。
【0028】
また、金具本体3の基板31の支保工201側に弾性シール材4が配置され、その基板31の支保工201と逆側に弾性リング5が配置され、表裏両側に配置される弾性材で基板31を挟み込むようにナット締めされることにより、台座2の台座雄ねじ部22と金具本体3の雌ねじ状の袋ねじ33の螺合状態が緊密となり、例えば固定台21と弾性シール材4との間や、弾性シール材4と基板31との間や、基板31と弾性リング5との間の隙間からの漏水をより確実に防止することができる。
【0029】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0030】
例えば鉄筋支持金具1が用いられる防水構造は図3の例以外に、図5の変形例の構造としても好適である。図5の防水構造には、防水シート102と同一の材質等で形成された当変形例においては外周縁81が矩形の環状の防水パッチシート8が設けられる。防水パッチシート8の外周縁81は、敷設された防水シート102のトンネル内側面に溶着等で固着され、防水パッチシート8の内周縁の周辺の内周部82が金具本体3の基板31と弾性リング5とに挟持されている。即ち、防水パッチシート8は逆さ傘状に設けられて固定されている。なお、防水パッチシート81は外周縁81が円形をなしていても良く、平面視の形状如何に拘わらず、金具本体3の雄ねじ部321が挿通可能な貫通穴が設けられるものを環状と称している。
【0031】
防水パッチシート8の外周縁81と内周部82との間の所定位置には、弾性止水材9を注入するための注入口83と排気口84が設けられている。そして、注入口83から弾性止水材9を注入することにより、防水シート102と防水パッチシート8と鉄筋支持金具1とで囲まれる空間に水を吸収して止水する弾性止水材9が充填されている。図5の変形例の他の構成は、図3の鉄筋支持金具1及び防水構造の構成と同じである。
【0032】
図5の変形例の構造によれば、地山の水圧が高く漏水がにじみ出てきてしまいかねない状況でも防水パッチシート8がこれをおさえ、さらに万一に備え防水シート102と防水パッチシート8と鉄筋支持金具1とで囲まれる空間も袋状空間として利用することができる為、全体的な袋状空間の大きさを増やし、より高水圧の地山湧水の漏水を防止することができると共に、より長期に亘って地山湧水の漏水を防止することができる。更に、弾性止水材9により、防水シート102と防水パッチシート8と鉄筋支持金具1とで囲まれる空間に漏水をより確実に留めることができる。また、防水パッチシート8に弾性止水材9を注入するための注入口83と排気口84を設けることにより、防水シート102と防水パッチシート8と鉄筋支持金具1とで囲まれる空間に弾性止水材9を設置する際の施工性を高めることができる。その他、図5の例では図3の構成と対応する構成から対応する効果を得ることができる。
【0033】
また、本発明の鉄筋支持金具或いは本発明の鉄筋支持金具を用いる防水構造における台座、金具本体、弾性シール材、弾性リングの構成は本発明の趣旨の範囲内で適宜であり、上記実施形態の台座2、金具本体3、弾性シール材4、弾性リング5の形状や構成に限定されない。また、本発明において、台座の被支持材への固着は溶接による固着に限定されず、適用可能な適宜の仕方で台座を被支持材に固着することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、例えばトンネルに建て込んだ支保工に台座を溶接して鉄筋を支持する際に利用することができる。その他、地下工事や開削工事を行う場合に、周辺土砂の崩落を防止するために設けられる土留構造において、台座を土留構造物に溶接等により固着して、鉄筋を支持する際にも利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1…鉄筋支持金具 2…台座 21…固定台 22…台座雄ねじ部 3…金具本体 31…基板 32、321、322…雄ねじ部 33…袋ねじ 34…袋状空間 4…弾性シール材 5…弾性リング 6…ワッシャー 7…ナット 8…防水パッチシート 81…外周縁 82…内周部 83…注入口 84…排気口 9…弾性止水材 101…溶接部 102…防水シート 102a…貫通穴 103…ハンマー 104…緩衝層 201…支保工 202…吹付コンクリート 203…長ナット 204…支持ボルト 205…鉄筋 301…地山 302…支保工 303…吹付コンクリート 304…防水シート 304m…バリ 304n…貫通穴 305…鉄筋 306…覆工コンクリート 307…溶接台座 308…固定台 309…ボルト部 T…トンネル空間 W…水
図1
図2
図3
図4
図5
図6