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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097290
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】体温測定装置および体温管理システム
(51)【国際特許分類】
   G01K 13/20 20210101AFI20230630BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20230630BHJP
   A61B 5/01 20060101ALI20230630BHJP
   G01K 1/024 20210101ALI20230630BHJP
【FI】
G01K13/20 341G
A61B5/00 102A
A61B5/01 250
G01K1/024
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213557
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】391001457
【氏名又は名称】アイリスオーヤマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167438
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100166800
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 裕治
(72)【発明者】
【氏名】宮島 隆浩
(72)【発明者】
【氏名】山田 哲也
【テーマコード(参考)】
2F056
4C117
【Fターム(参考)】
2F056AE01
2F056AE05
2F056AE07
2F056HD01
2F056HD03
2F056HD07
4C117XA07
4C117XB02
4C117XC11
4C117XD22
4C117XE23
4C117XE54
4C117XE64
4C117XH02
4C117XH12
(57)【要約】
【課題】双熱流方式により被検者の深部体温を測定する体温測定装置において、装置の小型化、軽量化を実現する。
【解決手段】被検者の深部体温を測定する体温測定装置であって、筐体と、前記筐体内に設けられた基板と、前記基板の第1面に設けられた第1温度センサおよび第2温度センサと、反対側の第2面に設けられた第3温度センサとを備え、前記被検者から伝わる熱が前記第1温度センサから前記第3温度センサに向かう第1熱流路と、前記第2温度センサから前記第3温度センサに向かう第2熱流路とが前記基板内部に形成され、前記第1熱流路の熱抵抗値と前記第2熱流路の熱抵抗値とが異なることを特徴とする。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の深部体温を測定する体温測定装置であって、
筐体と、
前記筐体内に設けられた基板と、
前記基板の第1面に設けられた第1温度センサおよび第2温度センサと、反対側の第2面に設けられた第3温度センサとを備え、
前記被検者から伝わる熱が前記第1温度センサから前記第3温度センサに向かう第1熱流路と、前記第2温度センサから前記第3温度センサに向かう第2熱流路とが前記基板内部に形成され、前記第1熱流路の熱抵抗値と前記第2熱流路の熱抵抗値とが異なる
ことを特徴とする体温測定装置。
【請求項2】
前記第1熱流路の長さと前記第2熱流路の長さとが異なることにより、前記第1熱流路の熱抵抗値と前記第2熱流路の熱抵抗値が異なる
ことを特徴とする請求項1に記載の体温測定装置。
【請求項3】
前記第2熱流路の一部は、当該基板と水平な向きに形成されることにより、前記第1熱流路の長さと前記第2熱流路の長さが異なる
ことを特徴とする請求項2に記載の体温測定装置。
【請求項4】
前記基板は、当該基板と水平な任意の向きに屈曲する1以上の屈曲部を有するように切り欠かれた幅狭領域を備えており、
前記第1温度センサ、前記第2温度センサおよび前記第3温度センサは、前記幅狭領域に配置されており、
前記第1温度センサおよび前記第3温度センサは、前記基板を挟んで対抗する位置に配置され、前記第1熱流路は、前記基板に垂直な向きに形成され、
前記第2温度センサは、前記1以上の屈曲部を介して前記第1温度センサから離間した位置に配置され、前記第2熱流路の一部は前記1以上の屈曲部を経由する
ことを特徴とする請求項3に記載の体温測定装置。
【請求項5】
前記体温測定装置は、更に、
前記筐体内に配された電源と、
前記基板上に配され、前記電源により駆動する制御部および無線通信部とを備え、
前記制御部は、前記第1温度センサ、前記第2温度センサおよび前記第3温度センサの測定温度に応じて前記被検者の深部体温を算出し、
前記無線通信部は、前記制御部により算出された前記被検者の深部体温を外部に送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の体温測定装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記被検者の前記深部体温(TB)を以下の計算式により算出する、
【数2】
T1は、第1温度センサの測定温度、T2は第2温度センサの測定温度、T3は第3温度センサの測定温度、Kは定数である
ことを特徴とする請求項5に記載の体温測定装置。
【請求項7】
前記制御部は、記憶部とタイマとを備え、
前記記憶部は、自装置を識別する装置IDと前記計算式を含む深部体温測定プログラムとを予め保持しており、
前記制御部は、前記深部体温計測プログラムを実行することにより、所定の時間周期で前記深部体温を算出し、算出した値に前記装置IDを付与した測定データを生成し、生成した前記測定データを前記無線通信部を介して外部に送信する
ことを特徴とする請求項5に記載の体温測定装置。
【請求項8】
前記電源は、前記第3温度センサ上に前記基板と垂直な方向に重ねて配置されている
ことを特徴とする請求項5に記載の体温測定装置。
【請求項9】
前記筐体における前記被検者に接触する面のうち、少なくとも前記第1温度センサおよび前記第2温度センサが配置されている部分が薄く形成されている、または、開口が形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の体温測定装置。
【請求項10】
被検者の深部体温を測定する体温測定装置と、前記被験者の深部体温を管理する管理装置と、前記体温測定装置から前記管理装置へ、前記深部体温を含む送信データを中継する中継器とから構成される体温管理システムであって、
前記体温測定装置は、
筐体内に設けられた基板および電源と、
前記基板上に配され、前記電源により駆動する制御部および無線通信部と、
前記基板の第1面に設けられた第1温度センサおよび第2温度センサと、反対側の第2面に設けられた第3温度センサとを備え、
前記被検者から伝わる熱が前記第1温度センサから前記第3温度センサに向かう第1熱流路と、前記第2温度センサから前記第3温度センサに向かう第2熱流路とが前記基板内部に形成され、前記第1熱流路の熱抵抗と前記第2熱流路の熱抵抗とが異なり、
前記制御部は、前記第1温度センサ、前記第2温度センサおよび前記第3温度センサの測定温度に応じて前記被検者の深部体温を算出し、
前記無線通信部は、前記制御部により算出された前記被検者の深部体温を含む測定データを前記中継器に送信し、
前記中継器は、
前記体温測定装置の近傍に位置し、前記体温測定装置から送信された前記測定データを受信し、受信した前記測定データに時刻情報を付与して転送データを生成し、生成した前記転送データを無線ネットワークを介して管理装置へ送信し、
前記管理装置は、
各中継機器から送信された転送データを受信し、記憶する
ことを特徴とする体温管理システム。
【請求項11】
前記無線ネットワークは、
無線通信機能を有する複数の照明装置を中継ユニットとして用いる
ことを特徴とする請求項10に記載の体温管理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の深部体温を測定する体温測定装置および体温管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に家庭などで使用されている体温計は、体表面近傍の温度をサーミスタにより測定する加熱接触型のものや、体表面の温度を赤外線センサにより測定する被接触型のものなどがある。しかしながら、からだの状態を検知するバイタルサインとしては、体表面の温度よりからだ内部の温度(深部体温)が重要であることから、深部体温を測定可能な体温計が開発されている。
特許文献1~3はいずれも双熱流方式を用いた深部体温測定装置を開示している。双熱流方式は、被検者の体表面の温度を測定する2つのセンサと、前記2つのセンサと熱抵抗値の異なる断熱材を介して対応する2つのセンサを外気側に有しており、2組の温度センサの温度差を検出することにより、深部体温を算出するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016―109518号公報
【特許文献2】特開2012―73127号公報
【特許文献3】国際公開第2019/167707号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被加熱型の深部体温測定装置は、一般的な家庭用の体温計とは異なり、病院や介護施設などで継続的にバイタルチェックが必要な被検者に使用することが想定されている。そこで、長時間装着したままの状態であっても被験者にストレスを与えないための軽量且つ小型化が求められている。
しかしながら、上記の特許文献1~3に記載の深部体温測定装置は、2つの熱抵抗値の差を生じさせるために熱抵抗体の厚みを変更したり、熱抵抗体に導電部材を添加する等の工夫がなされているが、小型化や軽量化については実現できていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためのものであり、被験者の深部体温を測定する体温測定装置であって、長時間の装着でも被検者にとってストレスとならないように、軽量且つ小型、薄型の体温測定装置およびこれを用いた体温管理システムを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明の体温測定装置は、筐体と、前記筐体内に設けられた基板と、前記基板の第1面に設けられた第1温度センサおよび第2温度センサと、反対側の第2面に設けられた第3温度センサとを備え、被検者から伝わる熱が前記第1温度センサから前記第3温度センサに向かう第1熱流路と、前記第2温度センサから前記第3温度センサに向かう第2熱流路とが前記基板内部に形成され、前記第1熱流路の熱抵抗値と前記第2熱流路の熱抵抗値とが異なることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の体温測定装置は、筐体内部において熱抵抗値が異なる2つの熱流路を作り出すために、断熱材(熱抵抗体)を用いることなく、基板自体を利用することにより、筐体内部の部品点数を削減し、軽量化および、薄型化、小型化を実現することができる。これにより、当該装置を長時間装着した場合であっても、被験者に与えるストレスを軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、双熱流方式による深部体温測定について説明するための図である。
図2図2は、温測定装置1の構成を示す図である。
図3図3は、体温測定装置1における第1熱流路および第2熱流路を説明するための図である。
図4図4は、幅狭領域および第2熱流路の変形例を示す図である。
図5図5は、体温測定装置1の機能構成を示すブロック図である。
図6図6は、体温測定装置1の動作を示すフローチャートである。
図7図7は、体温測定装置2の構成を示す図である。
図8図8は、体温測定装置3の構成を示す図である。
図9図9は、体温管理システム4のシステム構成図である。
図10図10は、体温管理システム5のシステム構成図である。
図11図11は、体温管理システム6のシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<概要>
本実施形態の一態様に係る体温測定装置は、筐体と、前記筐体内に設けられた基板と、前記基板の第1面に設けられた第1温度センサおよび第2温度センサと、反対側の第2面に設けられた第3温度センサとを備え、被検者から伝わる熱が前記第1温度センサから前記第3温度センサに向かう第1熱流路と、前記第2温度センサから前記第3温度センサに向かう第2熱流路とが前記基板内部に形成され、前記第1熱流路の熱抵抗値と前記第2熱流路の熱抵抗値とが異なることを特徴とする。
すなわち、体温測定装置は、必須の構成要素である基板の内部に熱抵抗値が異なる2つの熱流路を形成することにより、従来の体温測定装置に必要であった熱抵抗値が異なる断熱材が不要となる。さらに、従来よりも温度センサの数を削減し、部品点数を低減することが可能となる。これにより、体温測定装置の軽量化および小型化を実現することができる。
【0009】
本実施形態の別態様に係る体温測定装置において、前記第1熱流路の長さと前記第2熱流路の長さとが異なることにより、前記第1熱流路の熱抵抗値と前記第2熱流路の熱抵抗値が異なることを特徴とする。
このように、基板内部で熱流路の長さを異ならせることにより第1熱流路と第2熱流路との間に熱抵抗差が生じ、深部体温を算出する際の算出誤差を低減することができる。
本実施形態の別態様に係る体温測定装置において、前記第2熱流路の一部は、当該基板と水平な向きに形成されることにより、前記第1熱流路の長さと前記第2熱流路の長さが異なることを特徴とする。
このように、基板内部の水平方向に第2熱流路の一部を形成することにより、コンパクトな筐体内部においても効果的に熱抵抗差を生じさせることが可能となる。また、基板自体を熱流路として使用することで部品点数を低減すると共に、筐体の薄型化を実現することができる。
【0010】
本実施形態の別態様に係る体温測定装置において、前記基板は、当該基板と水平な任意の向きに屈曲する1以上の屈曲部を有するように切り欠かれた幅狭領域を備えており、前記第1温度センサ、前記第2温度センサおよび前記第3温度センサは、前記幅狭領域に配置されており、前記第1温度センサおよび前記第3温度センサは、前記基板を挟んで対抗する位置に配置され、前記第1熱流路は、前記基板に垂直な向きに形成され、前記第2温度センサは、前記1以上の屈曲部を介して前記第1温度センサから離間した位置に配置され、前記第2熱流路の一部は前記1以上の屈曲部を経由することを特徴とする。
このように幅狭領域を形成することにより、熱抵抗差を効果的に生じさせ、深部体温を算出する際の算出誤差を低減することができる。
【0011】
本実施形態の別態様に係る体温測定装置は、更に、前記筐体内に配された電源と、前記基板上に配され、前記電源により駆動する制御部および無線通信部とを備え、前記制御部は、前記第1温度センサ、前記第2温度センサおよび前記第3温度センサの測定温度に応じて前記被検者の深部体温を算出し、前記無線通信部は、前記制御部により算出された前記被検者の深部体温を外部に送信することを特徴とする。
このように、体温測定装置が無線通信機能を備えることにより、算出した深部体温を外部へ送信することが可能となり、深部体温を受信した管理者は、被検者のバイタルチェックに利用することが可能となる。
【0012】
本実施形態の別態様に係る体温測定装置において、前記制御部は、前記被検者の深部体温(TB)を以下の計算式により算出する。
【数2】
T1は、第1温度センサの測定温度、T2は第2温度センサの測定温度、T3は第3温度センサの測定温度、Kは定数であることを特徴とする。
このように、本実施形態に係る体温測定装置は、従来技術と比較しサーミスタの数を一つ削減したことにより、従来技術の計算式と比較すると変数の数を一つ削減することが可能となる。
【0013】
本実施形態の別態様に係る体温測定装置において、前記制御部は、記憶部とタイマとを備え、前記記憶部は、自装置を識別する装置IDと前記計算式を含む深部体温測定プログラムとを予め保持しており、前記制御部は、前記深部体温計測プログラムを実行することにより、所定の時間周期で前記深部体温を算出し、算出した値に前記装置IDを付与した測定データを生成し、生成した前記測定データを前記無線通信部を介して外部に送信することを特徴とする。
これにより、複数の被検者の深部体温を管理する場合に、各被検者を識別しながら測定データを収集、管理することが可能となる。
本実施形態の別態様に係る体温測定装置において、前記電源は、前記第3温度センサ上に前記基板と垂直な方向に重ねて配置されていることを特徴とする。
これにより、筐体を小型化することが可能となる。
【0014】
本実施形態の別態様に係る体温測定装置において、前記筐体における前記被検者に接触する面のうち、少なくとも前記第1温度センサおよび前記第2温度センサが配置されている部分が薄く形成されている、または、開口が形成されていることを特徴とする。
これにより、深部体温の測定誤差を低減することが可能となる。
【0015】
本実施形態の一態様に係る体温管理システムは、被検者の深部体温を測定する体温測定装置と、前記被験者の深部体温を管理する管理装置と、前記体温測定装置から前記管理装置へ、前記深部体温を含む送信データを中継する中継器とから構成される体温管理システムであって、前記体温測定装置は、筐体内に設けられた基板および電源と、前記基板上に配され、前記電源により駆動する制御部および無線通信部と、前記基板の第1面に設けられた第1温度センサおよび第2温度センサと、反対側の第2面に設けられた第3温度センサとを備え、前記被検者から伝わる熱が前記第1温度センサから前記第3温度センサに向かう第1熱流路と、前記第2温度センサから前記第3温度センサに向かう第2熱流路とが前記基板内部に形成され、前記第1熱流路の熱抵抗と前記第2熱流路の熱抵抗とが異なり、前記制御部は、前記第1温度センサ、前記第2温度センサおよび前記第3温度センサの測定温度とに応じて前記被検者の深部体温を算出し、前記無線通信部は、前記制御部により算出された前記被検者の深部体温を含む測定データを前記中継器に送信し、前記中継器は、前記体温測定装置の近傍に位置し、前記体温測定装置から送信された前記測定データを受信し、受信した前記測定データに時刻情報を付与して転送データを生成し、生成した前記転送データを無線ネットワークを介して管理装置へ送信し、前記管理装置は、各中継機器から送信された転送データを受信し、記憶することを特徴とする。
【0016】
これにより、体温測定装置の無線通信部が短距離の通信機能しか有していない場合でも、中継器を介することにより、算出された深部体温のデータを管理装置まで送信することが可能となる。
本実施形態の別態様に係る体温管理システムにおいて、前記無線ネットワークは、無線通信機能を有する複数の照明装置を中継ユニットとして用いることを特徴とする。
このように、病院や介護施設内にある既存のインフラである照明装置を中継ユニットとして利用することにより、別途新たな設備工事などが不要となる。
【0017】
<双熱流方式による深部体温測定>
ここでは先ず、図1を参照し、双熱流方式により深部体温を測定する方法について説明する。
図1(a)に示すように、被検者の深部体温TBを測定するためには、熱抵抗が異なる2つの断熱材1(熱抵抗R1)および断熱材2(熱抵抗R2)を被検者の皮膚表面に接触させる。被検者の体内から断熱材1を通過して外気に流れる熱流をi1、被検者の体内から断熱材2を通過して外気に流れる熱流をi2とする。熱流は、電気回路相似法を用いて、図1(b)に示す電気回路で表現することができる。すなわち、電気回路における電流=起電力/電気抵抗を、熱の流れでは、熱流=温度差/熱抵抗で表現することができる。
【0018】
したがって、被検者の皮膚および皮下脂肪の熱抵抗をRSとし、温度センサを用いて、断熱材1および断熱材2の入口温度(T1、T2)および出口温度(T3、T4)を測定すると、以下の、(式1)および(式2)が得られる。
i1=(T1-T3)/R1=(TB-T1)/RS
TB=T1+{(T1-T3)*RS}/R1 ・・・(式1)
i2=(T2-T4)/R2=(TB-T2)/RS
TB=T2+{(T2-T4)*RS}/R2 ・・・(式2)
R1≠R2として、(式1)および(式2)の連立方程式を解くと、(式3)が得られる。
【数1】
・・・(式3)
(式3)では、断熱材1および断熱材2の熱抵抗の差R1/R2を利用することにより、深部体温TBを測定している。
【0019】
<実施形態1>
つづいて、図面を参照して本発明の一実施態様に係る体温測定装置1について説明する。体温測定装置1は、熱抵抗値の異なる2つの熱流路を形成する双熱流方式により被検者の深部体温を算出し、算出した深部体温を、無線通信により外部に送信する。
1.体温測定装置1の構成
図2(a)は、体温測定装置1の構成を示す断面図であり、図2(b)は、体温測定装置1の構成を示す平面図である。同図に示すように、体温測定装置1は、筐体11の内部に、基板12と電源の一例とて電池13とを内蔵しており、基板12の第一面12aには、第1温度センサ14、第2温度センサ15およびアンテナ18が配置され、基板12の第二面12bには、第3温度センサ16と無線通信マイコン17とが配置されている。無線通信部である無線通信マイコン17は、例として、BLE(Bluetooth Low Energy)を利用する。本例では、無線通信マイコン17とアンテナ18を別構成として例示しているが、無線通信マイコン17にアンテナ18を組み込んだ構成として無線通信部を構成してもよい。
【0020】
体温測定装置1は、筐体11の皮膚接触面11aを被検者の体表面(皮膚)に接触させ、外気面11bをテープや絆創膏等で固定して使用するものである。また、基板12の第一面12aは、使用時に被検者に対向する面であり、第二面12bは、第一面12aとは反対側の面、すなわち使用時に外気に対向する面である。
図2(b)の平面図から明らかなように、基板12の各温度センサ14、15、16が配置される領域は、略S字形状となるように切り欠き加工されている。このように、必須の構成要素である基板12の内部に熱抵抗値が異なる2つの熱流路を形成することにより、従来の体温測定装置に必要であった熱抵抗値が異なる断熱材が不要となる。したがって、体温測定装置1のz軸方向の厚みTを、例えば4mm程度に薄型化、x方向の長さLを28.5mm程度、y方向の幅Wを11.5mm程度の小型化を実現できる。当該装置を長時間装着した場合であっても、被験者に与えるストレスを軽減することができる。
この形状により、体温測定装置1の軽量化を実現し、更に算出する深部体温TBの誤差を小さくすることが可能となる。以下でより詳しく説明する。
【0021】
図3(a)は、温度センサ14、15、16近傍の構成をより詳細に示す断面図である。第1温度センサ14および第2温度センサ15はそれぞれが弾性伝熱接着剤19を介して筐体11の皮膚接触面11aと接続し、温度センサ16は、弾性伝熱接着剤19を介して筐体11の外気面11bと接続している。弾性伝熱接着剤19は、金属粉など熱伝導性フィラーを含む樹脂系接着剤である。また、第3温度センサ16側には、金属プレート、セラミックプレート、グラファイトシートなどで形成された熱拡散シート20を配し、熱の均一化を図っている。
このような構成を備えることにより、体温測定装置1には、図3(a)に示す第1熱流路i1と第2熱流路i2とが形成される。
【0022】
第1熱流路i1は、筐体11の皮膚接触面11aの一部、弾性伝熱接着剤19を介して第1温度センサ14、基板12の内部、第3温度センサ16、弾性伝熱接着剤19および筐体11の外気面11bの一部から構成される。
第2熱流路i2は、第1熱流路i1とは異なる筐体11の皮膚接触面11aの一部、弾性伝熱接着剤19を介して第2温度センサ15、第1熱流路i1とは異なる基板12の内部、第3温度センサ16、弾性伝熱接着剤19および筐体11の外気面11bの一部から構成される。
体温測定装置1は、第1熱流路i1の出口温度を測定するセンサ(第3温度センサ16)と、第2熱流路i2の出口温度を測定するセンサ(第3温度センサ16)とが共通しており、図1で説明した従来の双熱流方式と比較して、温度センサの数を一つ削減することができる。また、従来の双熱流方式では、熱抵抗の異なる断熱材(図1の断熱材1および断熱材2)を筐体内に配置していたが、体温測定装置1は、基板12の内部に熱流路の一部を形成することにより、断熱材1および断熱材2が不要となる。
【0023】
このように、本実施形態の体温測定装置1は、筐体内の部品点数を削減することが可能となり、これにより、装置の小型化、薄型化、軽量化を実現する。
体温測定装置1は、第1熱流路i1の出口温度を測定するセンサ(温度センサ16)と、第2熱流路i2の出口温度を測定するセンサ(温度センサ16)とが共通する。したがって、上述した(式3)において、T3=T4とし、以下の(式4)を得る。
体温測定装置1は、(式4)により、深部体温TBを算出する。
【数2】
・・・(式4)
ここで、T1は、第1温度センサ14の検出温度、T2は第2温度センサ15の検出温度、T3は、第3温度センサ16の検出温度、定数Kは、第1熱流路i1と第2熱流路i2との熱抵抗差(R1/R2)である。
【0024】
深部体温TBの算出に必要な熱抵抗差K(=R1/R2)であるが、体温測定装置1では、第1温度センサ14(T1)と第3温度センサ16(T3)との間の距離と、第2温度センサ15(T2)と第3温度センサ16(T3)との間の距離の違いによって、熱抵抗差(K=R1/R2)を作り出している。
図3(a)に示すように、第1温度センサ14(T1)と第3温度センサ16(T3)とは、基板12を介して対向する位置に配置されており、第1温度センサ14(T1)と第3温度センサ16(T3)との間の距離は、基板12の垂直方向、すなわちz軸方向の厚み(約0.6mm)となる。一方、第2温度センサ15(T2)と第3温度センサ16(T3)との間の距離は、基板12のz軸方向の厚み(約0.6mm)に加えて、基板12の内部における基板12と水平な向きに形成される第2熱流路i2の一部を足した長さとなる。
【0025】
先に述べたように、基板12は、図3(b)に示すように、4つの屈曲部21を有する略S字形状となるように切り欠き加工されている。この領域を幅狭領域12cと呼び、第1温度センサ14、第2温度センサ15および第3温度センサ16は、幅狭領域12cに配置されている。そのため、基板12の内部において基板12と水平な向き(xy平面)に形成される第2熱流路i2の一部は、4つの屈曲部21を経由した矢印で示した部分に相当する(約7.0mm)。したがって、第2温度センサ15(T2)と第3温度センサ16(T3)との間の距離は、約7.6mmとなる。
このように、体温測定装置1は、基板12の形状と各温度センサの配置とを工夫することにより、第2熱流路i2を第1熱流路i1と比較して長く形成し、第1熱流路i1と第2熱流路i2との熱抵抗差を大きくしている。これにより、深部体温TBの測定誤差を低減することが可能となる。
【0026】
なお、基板12に形成する幅狭領域12cは、図3(b)に示した形状に限定する必要はなく、例えば図4に示すような形状であってもよい。図4(a)に示す幅狭領域12cは、屈曲部21を1つ有するL字形状である。図4(b)に示す幅狭領域は、屈曲部21を2つ有するコの字形状である。図4(c)に示す幅狭領域12cは、屈曲部21を3つ有している。いずれも、基板12と水平な向きに形成される第2熱流路i2の一部は、矢印で示した部分に相当する。また、これら以外にもジグザグ(Z字)形状や緩やかに湾曲するS字形状など、基板12と水平な任意の向き(xy平面上における任意の向き)に屈曲する1以上の屈曲部を有しており、第2熱流路i2が第1熱流路i1より長くなるような形状であればよい。
【0027】
以上のことを鑑み、(式4)の定数Kとして、深部体温TBの測定誤差を低減する値を用いると、0.15<K<0.45の範囲である。また、好ましくは、0.25<K<0.36であり、更に好ましくは、0.30<K<0.33とする。
ここで、図3(a)に戻り、筐体11の特徴について説明する。筐体11はポリプロピレン(polypropylene)等の絶縁性の樹脂で形成されており、皮膚接触面11aのうち、第1温度センサ14および第2温度センサ15と重なるセンサ部分11cが、ハーフエッチング加工等により、その他の部分よりも薄く形成されている。これは、皮膚側の熱抵抗の大きさが測定誤差に影響を及ぼすためであり、本実施形態では、筐体11のセンサ部分11cを薄く形成して、熱抵抗を小さくしている。この構成により、深部体温TBの測定誤差を低減することが出来る。
【0028】
なお、皮膚側の熱抵抗を小さくするためには、第1温度センサ14と第2温度センサ15が配置されている部分に相当する筐体11のセンサ部分11cに開口部を形成し、第1温度センサ14と第2温度センサ15とが共に被検者の皮膚に接触するようにしてもよい。
2.体温測定装置1の機能的構成
ここでは、図5のブロック図を用いて、体温測定装置1の機能的構成について説明する。図5に示すように、体温測定装置1は、電源13a、第1温度センサ14、第2温度センサ15、第3温度センサ16、制御部17a、無線通信部17bから構成される。
【0029】
電源13aは、電池13を含み、各温度センサ14、15、16、制御部17aおよび無線通信部17bを駆動する電源を供給する。電池13は、具体的には、リチウム電池、リチウム2次電池、太陽電池、ワイヤレス充電コイルなどを用いることができる。体温測定装置1は、交換型電池の場合は60日以上の連続動作が可能であり、充電式電池の場合は2日以上の連続動作が可能である。
各温度センサ14、15、16は、サーミスタであり、本実施形態では、一例として1005サイズ(1.0×0.5mm)のサーミスタを用いている。
【0030】
制御部17aは、BLE等を利用した無線通信マイコン17およびその周辺回路から構成され、内部にタイマ171と記憶部172とを備える。無線通信マイコン17の一例は、CPU一体型のBLEモジュールであって、小型且つ省電力であることが特徴である。記憶部172には、自装置を一意に識別することが可能な装置ID173が保持されている。また、記憶部172には、体温測定プログラム174が予め記憶されており、CPUが体温測定プログラム174を実行することにより、制御部17aは、各温度センサから測定値(T1、T2、T3)を取得して、深部体温TBを算出する。無線通信部17bは、無線通信マイコン17とアンテナ18とから構成され、制御部17aにより算出された深部体温TBから送信データを生成して、アンテナ18を介して外部に送信する。アンテナ18は、BLEに準拠した無線通信を行う。具体的には、体温測定装置1は、3秒周期でアドバタイズ送信を行い、送信先の機器を見つけると、送信データを送信する。
【0031】
3.体温測定装置1の動作
ここでは、図6のフローチャートを用いて、体温測定装置1の動作について説明する。
先ず、制御部17aは、タイマ171の時刻を監視し、現時刻が測定時刻か否かを判定する(ステップS1)。本実施形態の体温測定装置1は、一例として、30分に1回、体温測定プログラム174を起動して、以下の処理を行う。
現時刻が測定時刻ではない場合(ステップ1でNO)、ステップ1に戻る。現時刻が測定時刻である場合(ステップ1でYES)、制御部17aは、第1温度センサ14からT1を取得し、第2温度センサ15からT2を取得し、第3温度センサ16からT3を取得する(ステップ2)。
【0032】
そして、以下の計算式を用いて、深部体温TBを算出する(ステップS3)。
【数2】
定数Kの値は、予め体温測定プログラムに書き込まれているものとする。
制御部17aは、算出した深部体温TBに、装置ID172を付加して送信用の測定データを生成する(ステップS4)。無線通信部17bは、生成された測定データを、アンテナ18を介して外部に送信する(ステップS5)。
【0033】
4.効果
このように、体温測定装置1は、電子部品を搭載する基板の内部に熱流路の一部を形成し、基板内で2つの熱流路における熱抵抗差を生み出すことにより、筐体内の部品点数を削減し、装置のコンパクト化、薄型化、軽量化を実現する。図2に示すように、体温測定装置1の寸法は、一例として、28.5mm×11.5mm×4mmである。
【0034】
<実施形態2>
次に、図7を用いて実施形態2に係る体温測定装置2について説明する。図7(a)は、体温測定装置2の断面図であり、図7(b)は、体温測定装置2の平面図である。同図に示すように、体温測定装置2は、基板32の第一面32aに第1温度センサ14、第2温度センサ15、アンテナ18が配置され、基板32の第二面32bに、第3温度センサ16および無線通信マイコン17が配置されている。また、第1温度センサ14および第2温度センサ15と、筐体31の皮膚接触面31aとの間には、弾性伝熱接着剤19が介在している。これらの点は、体温測定装置1と同様である。
体温測定装置1と異なるのは、電池13の配置である。体温測定装置2において電池13は、基板32と垂直な方向(z軸方向)に弾性伝熱接着剤19を介して第3温度センサ16に重ねて配置される。また、電池13と筐体31の外気面31bとの間には、熱の均一性を担保するための熱拡散シート20が配置される。
【0035】
これにより、実施形態2における第1熱流路は、筐体31の皮膚接触面31aの一部、弾性伝熱接着剤19を介して第1温度センサ14、基板32の内部、第3温度センサ16、弾性伝熱接着剤19、電池13および筐体31の外気面31bの一部から構成される。
また、第2熱流路は、第1熱流路とは異なる筐体31の皮膚接触面31aの一部、弾性伝熱接着剤19を介して第2温度センサ15、第1熱流路とは異なる基板32の内部、第3温度センサ16、弾性伝熱接着剤19、電池13および筐体31の外気面31bの一部から構成される。
それ以外の構成および機能は、実施形態1と同様である。
【0036】
体温測定装置2の寸法は、一例として、長さLが22mm×幅Wが11.5mm×厚さT5.5mmである。体温測定装置1(図2参照)と比較すると、体温測定装置2は、筐体設計をよりコンパクト化することが可能となる。また、外気側の熱抵抗を均一化することにより、深部体温TBの測定誤差を低減することができる。
【0037】
<実施形態3>
次に、図8を用いて実施形態3に係る体温測定装置3について説明する。図8は、体温測定装置3の平面図である。同図に示すように、体温測定装置3は円形の筐体41の内部に、外形が円形状である基板42が配置されている。円形状の基板42の一部、すなわち、各温度センサ14、15、16が配置される領域は、複数の屈曲部を有する略S字形状となるように切り欠き加工がされ、幅狭領域12cが形成されている。
その他の構成および機能は、実施形態2と同様である。
【0038】
図8に示すように、体温測定装置3の直径Φは一例として20mmであり、厚さTは体温測定装置2(図7(a)参照)と同様に5.5mm程度である。すなわち、本実施形態の体温測定装置3は1円玉を3枚重ねた程度の大きさであり、実施形態1および実施形態2と比較すると、筐体設計をよりコンパクト化することができる。
<実施形態4>
続いて、実施形態4では、上記で説明した体温測定装置1を使用した体温管理システム4について説明する。体温管理システム4は、図9に示すように、体温測定装置1、中継器100、管理装置200、無線ネットワーク300から構成される。
【0039】
体温測定装置1は、実施形態1で説明したように、被検者が常時装着して使用することを想定しているため、小型且つ軽量であることが求められる。そのため、搭載する各部品も小型且つ軽量を考慮し、短距離無線用のマイコンおよびアンテナを用いており、その通信距離は1~2m程度である。体温測定装置1が算出した深部体温TBを、離れた位置にある管理装置200まで送信するために、体温管理システム4では中継器100を用いる。
中継器100は、体温測定装置1の近傍(1~2mの範囲内)に配置される。中継器100は、具体的には、被検者が使用しているベッドの手すりに装着したり、ベッドのヘッドボードや足元などに置いておく専用端末でもよいし、被検者のスマートフォンでもよいし、被験者の体に装着するウェアラブル端末(スマートウォッチ等)でもよい。被検者のスマートフォンやウェアラブル端末を用いる場合には、専用端末と同等に以下の機能を達成するために使用開始前にデータ転送用のアプリケーションをダウンロードするとしてもよい。
【0040】
中継器100は、図9に示すように、電源部101、通信部102、制御部103および記憶部104から構成される。
電源部101は、通信部102および制御部103に電力を供給する。具体的には、電源部101は、リチウム電池、リチウム2次電池、太陽電池、ワイヤレス充電コイルなどを用いることができる。中継器100が専用端末である場合は、商用電源を用いてもよい。
通信部102は、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、およびWi-Fi(登録商標)に準拠したアンテナおよび通信回路を備える。通信部102は、体温測定装置1との間でBLE通信を行い、体温測定装置1から測定データを受信し、受信した測定データを制御部103へ受け渡す。また、通信部102は、制御部103から後述する転送データを受け取り、受け取った転送データを、無線ネットワーク300を介して、管理装置200へ送信する。
【0041】
制御部103は、CPUとメモリとから構成される。制御部103は、記憶部104に記憶されているデータ転送プログラムに従い動作することにより、体温測定装置1により生成された深部体温TBの測定データを管理装置200へ転送する転送処理を行う。
具体的に、制御部103は、体温測定装置1から測定データ(深部体温TBの算出値と体温測定装置1の装置IDとを含む)を受信すると、受信した測定データに時刻情報を付加して、転送データを生成する。そして、生成した転送データを、通信部102および無線ネットワーク300を介して、管理装置200へ送信する。なお、制御部103は、転送データを生成する都度、管理装置200へ送信してもよいし、生成した転送データを一定期間保存しておき、まとめて管理装置200へ送信してもよい。例えば、体温測定装置1が30分毎に深部体温TBを算出し、測定データを送信する場合、中継器100は、測定データを受信する毎に時刻情報を付加して保存しておき、3時間毎に6回分の転送データをまとめて転送してもよい。
【0042】
記憶部104は、データ転送プログラム、自装置を識別する装置ID、時刻情報(リアルタイムクロック)、データ転送先である管理装置200のアドレス等を記憶している。装置IDとしては、MACアドレスや位置情報を用いてもよい。記憶部104は、中継器100に内蔵されていてもよいし、着脱可能な外付け装置で実現してもよい。記憶部104が外付け装置である場合は、中継器100の筐体に記憶部104を着脱可能なスロットを設ける構成とする。
管理装置200は、被検者の深部体温TBを管理し、観察するためのコンピュータシステムであって、操作部201,表示部202,通信部203、制御部204、記憶部205および電源206から構成される。管理装置200は、具体的には、CPU、ROM、RAM、HDD(若しくはSSD)、ディスプレイユニット、キーボード、ネットワーク接続ユニットなどを備えるコンピュータシステムである。
【0043】
操作部201は、ユーザからの入力操作を受け付けるキーボード、マウス、タッチパネルなどから構成され、入力操作に対応する信号を制御部204へ通知する。表示部202は、ディスプレイユニットを備え、制御部204が生成した画像信号をディスプレイに表示する。通信部203は、無線ネットワーク300を介して中継器100から転送データを受信し、受信した転送データを、制御部204を介してHDDやSSDで構成される記憶部205に蓄積する。制御部204は、操作部201を介してユーザから深部体温TBの表示要求を受け付けると、記憶部205から対象となる深部体温TBを読み出して、表示部202に表示する。電源部206は、管理装置200の各ユニットに電力を供給する。
なお、制御部204は、中継器100から受信した複数の深部体温TBを時刻情報と共にリアルタイムで表示したり、ユーザから要求された過去データを表示したり、数値が異常な傾向を示す場合には警告を表示することも可能である。また、制御部204は、受信した深部体温TBから被検者の一日の体温リズムを測定したり、その他の各種生体リズムと関連付けて記録したり、被検者の健康管理のために利用することが可能である。
【0044】
無線ネットワーク300は、中継器100と管理装置200との間のデータ通信を行うネットワークであって、ここではWi-Fi(登録商標)を想定している。無線ネットワーク300は、携帯電話網を使用し、LTE(Long Term Evolution)等でデータ通信を行ってもよい。
<実施形態5>
続いて、実施形態5では、無線ネットワーク300の変形例として無線ネットワーク310を使用した体温管理システム5について説明する。
【0045】
体温管理システム5では、実施形態4と同様に、体温測定装置1は深部体温TBを含む測定データを中継器100に送信し、中継器100は測定データを受信する。そして、中継器100は、受信した測定データから転送データを生成し、生成した転送データを無線ネットワーク310を介して、管理装置200へ送信する。
無線ネットワーク310は、図10に示すように、N個の照明装置(301~303)と、制御装置304とから構成される。各照明装置は、隣り合う照明装置と2.4GHz帯の周波数を利用した独自プロトコルで無線通信を行い、転送データを中継する中継ユニットとして機能する。複数の照明装置のうち、体温測定装置1および中継器100に近い端部に位置する照明装置1(301)は、中継器100から転送データを受信するために、Wi-Fi(登録商標)接続機能を備えている。
【0046】
制御装置304は、上記の2.4GHz帯の周波数を利用した独自プロトコルに対応しており、照明装置N(303)から転送データを受信する。制御装置304は、受信した転送データを管理装置200に送信するために、Wi-Fi(登録商標)接続機能を備えており、照明装置N(303)から受信した転送データを、管理装置200へ送信する。なお、制御装置304は、照明装置N(303)から受信した転送データからノイズを除去する機能を有しており、転送データのノイズを除去し、データ整形してから管理装置200に送信する。
このように、本実施形態の体温管理システム5では、共通の通信プロトコルに準拠した複数の照明装置を中継ユニットとして用いることを特徴とする。病院や介護施設など体温測定装置1の利用が想定される施設は、複数の照明装置が一定間隔で配置されている。そこで、このような既存のインフラを中継ユニットとして利用することにより、新たな中継ユニットを別途設けることなく、深部体温TBを含む転送データを管理装置200まで転送することが可能となる。
【0047】
<実施形態6>
実施形態6は、一例として病院内で利用可能な体温管理システム6について説明する。図11に示すように、体温管理システム6は、病室A、病室B、病室Cのそれぞれに複数の被検者が存在している。各被検者の体表面には体温測定装置1が装着されており、各体温測定装置1の近傍には、それぞれの体温測定装置1に1対1に対応する中継器100が設置されている。
病室Aの内部には、実施形態5で説明した複数の照明装置と制御装置304aとから構成される無線ネットワーク310aが構築されている。同様に、病室Bには、無線ネットワーク310bが構築されており、病室Cには、無線ネットワーク310cが構築されている。
【0048】
病室Aの2名の被検者それぞれから測定された深部体温TBは、各中継器100を経由して、転送データとして制御装置304aに転送される。制御装置304aは、転送データを管理装置200へ送信してもよいし、クラウド400の記憶部に転送してもよい。病室Bの2名の被検者についても同様に、制御装置304bから管理装置200またはクラウド400へ深部体温TBを含む転送データを送信する。病室Cの3名の被検者についても同様に、制御装置304cから管理装置200またはクラウド400へ深部体温TBを含む転送データを送信する。転送データがクラウド400に記憶される場合には、管理装置200は、ネットワーク経由でクラウド上の転送データを利用する。
【0049】
本システムでは、クラウド400を利用することにより、大規模な病院や介護施設等においてもすべての被検者の深部体温TBを一括で管理することができる。また、複数の管理装置200から同時にデータを利用することも可能となる。
<変形例>
ここでは、上記実施形態の変形例を説明する。上記実施形態と以下に説明する変形例とを如何様にも組み合わせることができる。
【0050】
(1)上記の各実施形態において、基板上に配置される無線通信マイコン17およびアンテナ18の位置は任意である。また、無線通信マイコン17およびアンテナ18が搭載される基板と、3つの温度センサが搭載される基板とが異なる基板であってもよい。この場合においては、2つの基板は電気的に接続されている必要がある。また、基板には、無線通信マイコン17およびアンテナ18以外にもその他の必要な電子部品を搭載してもよい。
(2)上記の各実施形態において、第1温度センサ14と第3温度センサ16とは、基板を介して対向する位置に配置されていたが、これは必須の構成ではない。第1熱流路および第2熱流路の熱抵抗差を基板の内部(xy平面上)で作ることができる構成であれば足りる。例えば、第1温度センサ14から第3温度センサ16に向かう経路と、第2温度センサ15から第3温度センサ16に向かう経路とで基板の形状を変えるなどして両者の熱抵抗値を変えてもよい。また、第1熱流路が経由する第1の幅狭領域と、第2熱流路が経由する第2の幅狭領域とを形成し、第1の幅狭領域および第2の幅狭領域の道幅がそれぞれ異なるように基板を切り欠き加工してもよい。
【0051】
(3)実施形態4~6の体温管理システムでは、実施形態1の体温測定装置1を用いたが、実施形態2の体温測定装置2を用いてもよいし、よりコンパクトな実施形態3の体温測定装置3を用いてもよい。
(4)実施形態5および実施形態6の照明装置1(301)は、Wi-Fi(登録商標)接続により、中継器100から転送データを受信する構成であったが、照明装置1(301)は、体温測定装置1から直接測定データを受信する構成でもよい。この場合、照明装置1(301)は、2.4GHz帯の周波数でBluetooth(登録商標)に準拠した通信を行う。
(5)実施形態5および実施形態6のシステムでは、無線ネットワークに含まれる制御装置がノイズ除去機能を備える構成であったが、上記の実施形態において、無線ネットワークに含まれる各照明装置(中継ユニット)のそれぞれが転送データのノイズを除去する機能を備えていてもよい。
無線ネットワークにおいて、転送データが複数の中継ユニットを経由する場合、転送データにノイズが含まれる可能性が高くなる。そこで、ノイズの問題を解決するために、体温管理システムにおいて、深部体温TBを転送するための無線ネットワークを構成する複数の照明装置のうちの少なくとも一つがノイズ除去機能を備えており、受信した転送データからノイズを除去した後に、隣りの照明装置へデータを送信するとしてもよい。
また、上記の無線ネットワークを構成する複数の照明装置のそれぞれが、ノイズによりデータが受信出来なかった場合に、送信元である隣接する照明装置へデータ再送要求を送信し、データ再送要求を受信した照明装置が、データを再送するように構成してもよい。
【0052】
(6)実施形態4~6において、中継器100の記憶部104には、被検者情報を記憶させておいてもよい。被検者情報は、例えば、被検者の識別IDと紐づけられた被検者の名前、性別、年齢、カルテ番号、健康保険証情報などである。中継器100は、体温測定装置1から装置IDと深部体温TBとから成る測定データを受信すると、受信した測定データに被検者情報を結合したものを転送データとして管理装置200またはクラウド400へ送信する構成としてもよい。これにより、故障などにより体温測定装置1を交換した場合であっても、過去のデータと紐づけて効果後のデータを管理することができる。すなわち、体温測定装置、中継器および管理装置を備える体温管理システムにおいて、中継器は、被検者IDと被検者情報とを対応つけて記憶する記憶部と、 体温測定装置から装置IDと深部体温TBとを含む測定データを受信する受信手段と、受信した測定データに前記被検者IDおよび被検者情報とを結合した転送データを生成する転送データ生成手段と、生成した転送データを管理装置へ送信する送信手段とを備える構成としてもよい。
【0053】
(7)実施形態5および実施形態6では、中継ユニットの一例として照明装置を用いて説明したが、中継ユニットは、照明装置に限定されない。例えば、病室に複数のテレビが設置されている場合には、テレビを中継ユニットとして用いても良いし、その他の電化製品を中継ユニットとして用いてもよい。すなわち、体温管理システムにおいて、深部体温TBを転送するための無線ネットワークは、無線通信機能を有する複数の電化製品を中継ユニットとして用いる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1、2、3 体温測定装置
4、5、6 体温管理システム
11、31、41 筐体
12、32、42 基板
12a 第一面
12b 第二面
12c 幅狭領域
13 電池
13a 電源
14 第1温度センサ
15 第2温度センサ
16 第3温度センサ
17 無線通信マイコン
17a 制御部
17b 無線通信部
171 タイマ
172 記憶部
18 アンテナ
21 屈曲部
100 中継器
200 管理装置
300、310 無線ネットワーク
400 クラウド

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11