(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097291
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】検体採取台
(51)【国際特許分類】
G01N 1/10 20060101AFI20230630BHJP
F24F 8/108 20210101ALI20230630BHJP
F24F 8/20 20210101ALI20230630BHJP
F24F 8/80 20210101ALI20230630BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20230630BHJP
B01L 1/00 20060101ALI20230630BHJP
A61L 9/20 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
G01N1/10 V
F24F8/108 110
F24F8/20
F24F8/80 218
F24F8/80 240
F24F7/007 Z
B01L1/00 A
A61L9/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213562
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000228028
【氏名又は名称】株式会社トルネックス
(74)【代理人】
【識別番号】100111785
【弁理士】
【氏名又は名称】石渡 英房
(72)【発明者】
【氏名】松井 周生
(72)【発明者】
【氏名】成田 雅洋
【テーマコード(参考)】
2G052
4C180
4G057
【Fターム(参考)】
2G052AA29
2G052AB20
2G052AD06
2G052AD26
2G052BA19
2G052GA29
2G052JA23
4C180AA07
4C180DD03
4C180HH05
4C180MM10
4G057AA02
4G057AA13
(57)【要約】
【課題】被採取者が発する飛沫と飛沫核が空気流に乗って拡散する前に効果的に捕捉する検体採取台を提供する。
【解決手段】検体採取台1であって、隔離壁3と台部4と空気清浄ユニット5を備え、隔離壁3は、台部の上面4aから上部に伸び、台部4は、隔離壁の基部3bの被採取者側に位置する吸込口6とその下部に位置する送出口7を備え、空気清浄ユニット5は、吸込口から空気Ainを吸い込み、空気清浄を行い、送出口から清浄化された空気Apfを送出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被採取者(P)の唾液の飛沫核(dn)の拡散を防止するための検体採取台であって、隔離壁(3)と台部(4)と空気清浄ユニット(5)を備え、
前記隔離壁(3)は、前記台部の上面(4a)から上部に伸び、
前記台部(4)は、その上面(4a)と前記隔離壁で囲まれた凹状の半閉空間(Q)の内部に位置する吸込口(6)とその下部に位置する送出口(7)を備え、
前記空気清浄ユニット(5)は、前記吸込口から周辺の空気(Ain)を吸い込み、空気清浄を行い、前記送出口から清浄化された空気(Apf)を排出する検体採取台。
【請求項2】
前記台部(4)はその上部に天板4aを備えている、請求項1に記載の検体採取台。
【請求項3】
さらに殺菌ユニット(8)を備え、
前記殺菌ユニット(8)は、前記空気清浄ユニットで処理された空気(Apf)を殺菌し、殺菌した空気(Asn)を前記送出口から排出する、請求項1または2に記載の検体採取台。
【請求項4】
前記隔離壁(3)は、台部の上面の縁に沿って被採取者Pを囲むように設けられるとともに被採取者が隔離壁を通して特定できないよう可視光について不透明であって、
前記吸込口(6)は、前記隔離壁に沿って設けられるとともに、空気整流手段(6a)を備える、請求項1~3に記載の検体採取台。
【請求項5】
さらに投影ユニット(J)を備え、
前記隔離壁(3)は、その一部または全部がハーフミラー(K)で構成され、
前記投影ユニット(J)は、前記ハーフミラー(K)をスクリーンとして投影画像を被採取者が見ることできるように投影するように構成されている請求項1~4のいずれか1項に記載の検体採取台。
【請求項6】
天板(4a)と
前記天板の上面に設けられた隔離壁(3)と
前記天板と前記隔離壁で囲まれた凹状の半閉空間の内部に設けられた吸込口(6)と、
前記天板を支える台部(8)に収納され、前記吸込口から空気(Ain)を取り込んでその空気を清浄化して前記天板の下側から送り出す空気清浄ユニット(5)と送風ユニット(9)を備えた飛沫感染防止検体検出システム。
【請求項7】
(装置向け空気清浄ユニット)
請求項6に記載の飛沫感染防止検体検出システムに組み込まれて用いられる空気清浄ユニット(5)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCR検査などで検体を採取する検体採取台に関するもので、被採取者から放出される唾液などの飛沫及び飛沫核を含む空気を吸引して清浄化する検体採取台に関し、特に、感染症を引き起こす可能性のあるウィルスなどを含む飛沫等を含む空気の清浄化に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から住宅などにおいて室内の空気を清浄化する空気清浄装置は用いられていたが、これは空気中に含まれる粉塵などを対象にするものであり、感染症を引き起こすウィルスなどの感染の防止をするためのものではなかった(特許文献1)。
【0003】
一方、近年、SARS、severe acute respiratory syndromeや新型コロナウイルス、COVID-19などの感染症を引き起こすウィルスの流行によって、マスクを外しての会話などにより唾液の飛沫が空気中に飛び散る恐れがあり、そのような環境では感染リスクが高まることが危惧されている。
【0004】
特に、感染者から発せられ空気流に乗って空気中を漂う飛沫核が周囲の人に届かないように、または、届いたとしてもその濃度を可能な限り低減することが望まれている。たとえば、PCR検査(Polymerase Chain Reaction、ポリメラーゼ連鎖反応検査)などの感染症の検査の際、被採取者が発する飛沫核を拡散させることなく回収することが検体採取者の安全の観点から強く望まれるようになってきた。PCR検査は、ウィルス等の遺伝子を増幅させて検出する技術で、その検出感度が高いこともあり、感染症の流行期には高い頻度で用いられる。唾液、鼻腔ぬぐい液などが検体として用いられるが、特に鼻腔ぬぐい液を用いる場合、被採取者と検体採取者は物理的に近い位置を取ることが多く、検体採取者には感染のリスクが生じる。
【0005】
これに対し、従来は、アクリルボードやマスク、フェイスガードなどを用いて飛沫対策を行ってきたが、飛沫核やマイクロ飛沫と呼ばれる微小な飛沫は空気の流れに乗って拡散するため、いったん拡散するとその空間全体に感染リスクが生じる。
また、唾液を用いる場合でも、室内に複数の被採取者がいるような状況では室内に微小な飛沫が拡散し、その空間全体に感染リスクが生じる。
【0006】
このような拡散を抑制する簡易な手段として、換気が奨励されるとともに、室内据え置き型の空気清浄機がアクリルボードなどと併用されることもあったが、被採取者のそばでマイクロ飛沫が拡散する前に捕捉することが困難であり、いったん拡散したマイクロ飛沫の空気清浄を行っていたため、マイクロ飛沫対策として有効ではなかった。
【0007】
このため、発明者らは、被採取者から発生する飛沫及び空気流に乗って漂う飛沫核を吸引してこれらが被採取者の周囲に拡散する前に捕捉し、もって感染を防止するための検体採取台を鋭意検討し、検体採取台を発明するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来事情に鑑みてなされたもので、その目的は、PCR検査で被採取者から検体を採取する際に、被採取者から放出される唾液などの飛沫及び飛沫核を含む空気が拡散する前に捕捉する、検体採取台を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(解決手段1)
本発明は、被採取者の唾液の飛沫核の拡散を防止する検体採取台であって、隔離壁と台部と空気清浄ユニットを備え、前記隔離壁は、前記台部の上面から上部に伸び、前記台部は、隔離壁の基部の被採取者側に位置する吸込口とその下部に位置する送出口を備え、前記空気清浄ユニットは、前記吸込口から空気を吸い込み、空気清浄を行い、前記送出口から清浄化された空気を送出する検体採取台である。
これにより、被採取者が発する飛沫と飛沫核が室内に無秩序に拡散する前に効果的に捕捉することができる。
【0011】
(解決手段2)
この場合、前記台部はその上部に天板を備えていることが好ましい。
これにより、隔離壁と併せて被採取者Pを囲むように開放された凹状の半閉空間Qを形成して、被採取者の発する空気流をブロックして無秩序に拡散する前に効果的に捕捉することができる。
【0012】
(解決手段3)
この場合、前記検体採取台は、さらに殺菌ユニットを備え、前記殺菌ユニットは、前記空気清浄ユニットで清浄化された空気を吸込み、殺菌し、清浄化されかつ殺菌された空気を前記送出口から送出することが好ましい。
このようにすると、空気清浄に加え、殺菌機能を有するので、ウィルス対策として確実性を高めることができる。
【0013】
(解決手段4)
この場合、前記隔離壁は、台部の上面の縁に沿って被採取者を囲むように設けられるとともに被採取者が隔離壁を通して特定できないよう可視光について不透明であって、前記吸込口は、前記隔離壁に沿って設けられるとともに、空気整流手段が備えられていることが好ましい。
このようにすると、吸込口から整える空気流が乱れの少ない層流に近づくため、吸込口周辺の空気が一様流になるように整えられるため、効率的に飛沫核を取込むことができる。
【0014】
(解決手段5)
この場合、前記検体採取台は、投影ユニットを備え、前記隔離壁は、その一部または全部がハーフミラーで構成され、前記投影ユニットは、前記ハーフミラーをスクリーンとして投影画像を被採取者が見ることできるように投影するように構成されていることが好ましい。
これにより、被採取者は、ハーフミラーに投射された情報を検体検出の最中に読み取ることができるとともに、読み取りを継続するために隔離壁から近い位置で隔離壁の方向を向き続ける動機付けが生じ、被採取者が発する飛沫と飛沫核が拡散する前に捕捉しやすくなる。
(解決手段6)
本発明は、天板と、前記天板の上面に設けられた吸込口と、前記天板を支える台部に収納され、前記開口を通して前記吸込口から前記天板の上側の空気を取り込むとともにその空気を清浄化して前記天板の下側から送り出す空気清浄ユニットと送風ユニットを備えた飛沫感染防止検体検出システムである。
これにより、被採取者が発する飛沫と飛沫核が拡散する前に効果的に、捕捉することができる。
【0015】
(解決手段7)
本発明は、上記記載の飛沫感染防止検体検出システムに組み込まれて用いられる空気清浄ユニットである。
これにより、飛沫感染防止検体検出システムに好適な空気清浄ユニットを提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上のような構成により、被採取者が発する飛沫と飛沫核が室内に拡散する前に捕捉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施例である検体採取台(実施例1)の外観斜視図である。
【
図2】実施例1の(a)平面模式図及び(b)正面模式図である。
【
図4】実施例1の正面模式図であって、台部のパネルを外した図を示している。
【
図6】本発明の第2の実施例である検体採取台(実施例2)の外観斜視図である。
【
図8】実施例2の吸込口の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して本発明を実施するための形態について、実施例にもとづいて、検体採取台について説明する。
【実施例0019】
(検体採取台)
図1に本例の検体採取台1Aの外観斜視図を示す。また、
図2にその(a)平面模式図及び(b)正面模式図を示す。
本例の検体採取台1Aは、
図1、
図2に示すように、被採取者Pの唾液の飛沫核dnの拡散を防止するために被採取者Pに対面して設置される検体採取台1Aである。この検体採取台1Aは、隔離壁3と台部4と空気清浄ユニット5を備え、
前記隔離壁3は、前記台部の上面4aから上部に伸び、
前記台部4は、その上面4aと前記隔離壁で囲まれた凹状の半閉空間Qの内部に位置する吸込口6とその下部に位置する送出口7を備え、
前記空気清浄ユニット5は、前記吸込口から周辺の空気Ainを吸い込み、空気清浄を行い、前記送出口から清浄化された空気Apfを送出する。
【0020】
(台部)
図1及び
図2に示すように、台部4はその上面にテーブルとして用いることができる天板4aを有するとともに、その底面に周知のキャスター4cを有し、必要な場所に移動させることができる。
台部4の下部には、清浄化された空気Aoutが送り出される送出口7が設けられている。
【0021】
図2(b)に示すように、台部4の正面側には、検体採取台1Aの操作パネル4eが備えられ、この検体採取台1Aの電気的な操作を行うことができ、また状態が表示される。また、その下部には、開閉可能な正面側パネル4dが設けられ、必要に応じて検体採取台1Aの内部にアクセスすることができる。
【0022】
(天板)
台部4は、その上面にほぼ矩形の天板4aを有する。天板4aから、後述のように、隔離壁3が上部に向かって伸び、天板4aと隔離壁3で被採取者P側が開放された半閉空間Qを形成している。
また、天板4aは、検体採取台1Aに向って位置する被採取者Pがその天板4aの上で書類を広げるなどの作業スペースを提供する。また、これ以外に、必要な物品、たとえば、手元を照らす照明、マイク、後述の投射ユニットJなどの設置スペースとして用いることができる。
天板4aには、後述の隔離壁3と清浄化される空気Ainを取り込む吸込口6が設けられ、吸込口6の正面側には、突起物4bが吸込口4の正面側の縁に沿って吸込口4bより長くなるようにその間に設けられている。この突起物4bは天板4a上で誤って水をこぼした場合などにその水が台部4内に吸込口6から侵入することを防止するものである。
【0023】
(隔離壁)
天板4aの正面から見て奥側の天板4aの縁に近い箇所に、ほぼコの字(横置きのCの字)形状の基部3bで天板4aと接する隔離壁3が設けられている。隔離壁3は、天板4aに対し垂直に、その基部3bから上方に伸びている。本例では、隔離壁3は、各辺ごとに3分割した平面状の、アクリル板を接合して形成している。アクリル板を用いるのは、加工のしやすさからである。
なお、隔離壁3は、可視光について不透明であることが望ましい。可視光において不透明とは、被採取者Pの検体採取行為、たとえば、鼻から検体を採取したり、唾液から検体を採取したりすることが周囲の人から隔離壁を通して特定できないようにするため、被採取者本人のプライバシー尊重の観点から、表面に凹凸をつけたり、すりガラス様にして、本人識別ができない程度の透明度であるという意味である。なお、被採取者の背面側は検体のすり替えなどの余地がないように隔離壁3が回り込んでいる場合でも不透明にしないことが望ましい。
また、隔離壁3は、被採取者Pの方向に被採取者Pの側面や上面を覆うように延長しても差し支えない。
さらに、隔離壁は半閉空間を作るために、必ずしも三分割せずに曲面を用いても差し支えない。ただし、隔離壁に沿った一様流を作るためにはなるべく緩やかな曲面とすることが望ましい。
【0024】
本例の隔離壁3は、正面側の天板4aの一片を除く他の三辺に沿って設けられ、その高さは、本例では、1,800mmである。これは、平均的な人の口の位置よりも高くしたもので、後述のように被採取者Pの口から発せられる空気流を効果的にブロックするためである。他の三辺を囲むように設けるのは、天板4aの上面と合わせて被採取者Pに対して被採取者Pを囲むように開放された凹状の半閉空間Qを形成して、ブロックした空気流を効率よく回収するためである。
なお、被採取者Pが座って検体採取行為を行う場合は、これに応じて隔離壁の高さを低くしてもよい。
また、この検体採取台1Aは、投影ユニットJを天板4aに備え、隔離壁3は、その一部または全部がハーフミラーKで構成され、投影ユニットJは、ハーフミラーKをスクリーンとして投影画像を被採取者が見ることできるように投影するように構成されていることが好ましい。
これにより、被採取者Pは、ハーフミラーKに投射された情報を検体検出の最中に読み取ることができるとともに、読み取りを継続するために隔離壁3から近い位置で隔離壁3の方向を向き続ける動機付けが生じ、被採取者Pが発する飛沫と飛沫核が拡散する前に捕捉しやすくなる。
【0025】
(吸込口)
図1、
図2に示すように、吸込口6は、天板4aに設けられた隔離壁3に沿って、天板4aの三辺にわたり、天板4aに設けられている。吸込口6は、天板4a上部の隔離壁3に沿うように設けられているため、その周囲に負圧状態を作る。後述するように、隔離壁3に沿って降りる一様で滑らかな空気流Ainを形成して、台部4内に引き込む。
なお、吸込口6周辺の空気が吸込口6に吸い寄せられるのは、後述の送風ユニット9であるシロッコファンが台部4内の第3チャンバーC3に負圧を生じさせ、これと接続されている吸込口6の設けられた第1チャンバーC1内も負圧になるためである。
【0026】
(空気整流手段)
空気整流手段6aは、吸込口6に設けられており、スリットやパンチングメタル、もしくはそれらの組み合わせなどにより構成することができる。取込風速を均一化させ、乱流を抑制して吸込口6から効率よく空気が吸い込まれるようにさせるものである。空気整流手段6aは、空気の流れがある場合に、大きい開口を分割して格子状あるいは円形状の小さい開口を多数有するようにして形成することができる。このように大開口を小開口に分割して空気の流れを編成し直すことにより、少し乱れがある空気の流れであっても小さい開口を通る際に流れが整列するので、空気流の乱れが抑制され流れが均一化するものである。
本例では、格子状の小開口に分割している。
【0027】
(吸込口、隔離壁、天板の機能)
隔離壁3は、前述のように被採取者P、すなわち検体採取台1Aの正面側に対して半閉空間Qを形成するように設けられるとともに、吸込口3に対して、垂直方向に設けられる。
このように形成されているため、台部4の吸込口3の周辺に発生する負圧により、周囲の空気が引き込まれる際に、隔離壁3に沿ってほぼ均等な負圧が発生するので、流れの揃った空気流(一様流)を発生させることができると考えられる。
【0028】
このような一様流は、コアンダ効果と呼ばれることがある。コアンダ効果とは、一般には、噴流が粘性の効果により周りの流体を引き込むために、近くの壁に引き込まれる効果を言うとされる。この効果は必ずしも噴流のみをいうものではないとされるが、空気流のもつ粘性により周りの空気を引き込むことは知られており、この現象に鑑みて、本例の検体採取台1Aも、被採取者Pが発した空気流を半閉空間Q、特に、隔離壁3でブロックするとともに、吸込口6の作る負圧により下降気流を生じさせ、隔離壁3と天板4aで囲まれた半閉空間Qの平面状の境界に沿って空気の乱れを抑制しながら、被採取者Pから発せられた空気流を能率よく集められるものと考えられる。
【0029】
(空気清浄部)
第2チャンバーC2に空気清浄部である空気清浄ユニット5を備える。なお、後述のように第3チャンバーC3に送風部9を備えているが、空気清浄部5と送風部9は、直列になるように配置することができ、いずれを先後とすることもできる。
空気清浄ユニット5は、
図3に概略を示すが、入側から3段のサブユニットに分かれている。すなわち、空気の流路の順では、プレフィルター5a、メイン清浄ユニット5b、脱臭フィルター5cが備えられている。
図2に示すように、台部4の上面である天板4aに設けられた吸込口6から、後述の送風部9で作られた負圧により吸入された未清浄の空気Ainは、プレフィルター5aおよびメイン清浄ユニット5bを通って順次空気中の粒子、すなわち、飛沫及び飛沫核dnが取り除かれ、脱臭フィルター5cを通って空気中に含まれる不要なガス成分が取り除かれる。このようにして空気清浄ユニットで処理した空気Apfは、送風部9により台部4の外部に送出口7から送出される。
【0030】
(空気清浄部:プレフィルター5a)
プレフィルター5aは、メイン清浄ユニット5bの前段階として、吸引した空気中に浮遊する粗い粒子を除去するもので、不織布またはメッシュ状の金網で構成される。主として、目視可能な粒子をターゲットにしており、粒子径が10~20μm以上のものを除去する。プレフィルター5aを介することにより、空気清浄部の早期の目詰まりを防止して省メンテナンスを図るとともに、次段の電子式集塵ユニット5bで飛沫及び飛沫核dnに至る微粒子を効率的に取り除くことができる。
【0031】
(空気清浄部:メイン清浄ユニット5b)
次段のメイン清浄ユニット5bである電子式集塵ユニット5bは、台部4内に吸引した空気中に浮遊するさらに細かい粒子、主として、粒子径が0.3μm程度以上のものを除去する。このため、空気流に乗って漂う飛沫や飛沫核dnを除去できる。
【0032】
電子式集塵ユニット5bは、いわゆる2段荷電型電子式集塵ユニットと呼ばれる公知のものを用いることができる。この電子式集塵ユニット5bは、コロナ放電などにより空気中の浮遊粒子を帯電させるイオン化部と、帯電させた浮遊粒子を電界により捕集する集塵部とこれらに電力を供給する電源を備える。イオン化部は、イオン化線およびイオン化電極を備え、集塵部は、集塵電極板と集塵対電極板を交互に配置しこれらをスペーサで等間隔に配置してなる。
【0033】
このようにすると、イオン化線とイオン化電極との間、及び集塵電極板と集塵対電極板との間を空気が通過する構造とすることができるため、圧力損失が少なく、空気中を漂う飛沫核dnなどの微粒子を効率よく除去できる。
たとえば、定格風量800~900m3/hの際に粒子0.3~0.5μmの集塵効率は、85%~95%となる。
【0034】
加えて、電源とイオン化部との間に定電流制御部を設けるとともに、電源と集塵部との間に測定部を備えた電圧段階制御部および電圧変更部を設けて、段階的制御を行うことができる。この制御は、たとえば、特許第5545559号に記載されており、この明細書に組み込まれるものとする。
【0035】
このような構成においては、イオン化部におけるコロナ放電などを安定して継続でき、集塵部に湿気などの環境の変動や集塵の継続による集塵物などにより、火花放電などの異常放電が起きても、印加電圧を下げて速やかに正常な電界形成を再開して集塵作用を継続し、異常放電の原因が解消されると、印加電圧を上げて速やかに集塵作用を継続する。したがって、湿気や結露などの自然回復可能な場合のみならず、集塵物の堆積などの自然回復の困難な場合も含めて、全体として、集塵作用を高効率で運用でき、その上メンテナンス頻度を減らすことができる。
【0036】
このような電子式集塵ユニット5bを用いると、飛沫核dnを捕捉して除去することができ、感染の危険性を大いに低減できる。
【0037】
(空気清浄部:脱臭フィルター)
電子式集塵ユニット5bの後段には脱臭フィルター5cが設けられている。脱臭フィルター5cは、通気性を有するシート状の公知のものを用いることができる。脱臭フィルターでは、においなどの化学物質をトラップすることができる。
【0038】
(送風部)
図3に示すように、台部4内には、空気の吸入・送出のための送風部(送風ユニット)であるシロッコファン9が第3チャンバーC3に設けられている。シロッコファン9は、第3チャンバーC3を負圧状態にさせて、これに気密に接続された第1チャンバーC1の上部に設けられた吸込口6から周辺空気Ainを取り込むとともに、取り込んだ空気Ainを第2チャンバーC2の空気清浄機ユニット6に引き込んで清浄化処理する。最終的には、送出口7から処理した空気Aoutを送出する。シロッコファン9は、吸込口6から取り込まれる空気量を賄う容量および圧力を有するものを用いることができる。
【0039】
(動作)
このような検体採取台1Aは次のように動作する。動作の開始及び終了は、操作パネル4eに設けたスイッチによってもよいし、また、遠隔から自動で入り切りするものであってもよい。
たとえば、講演においてこの検体採取台1Aを用い、隔離壁3を挟んで被採取者(被採取者)Pと聴衆が向かいあう状態で、被採取者Pは講演をすることができる。被採取者Pが声を発するとき、発声に伴う唾液の飛沫及び飛沫核dnは、被採取者Pの顏が向いた方向、すなわち、顔の正面を中心とした前方へ放出される。
本例の場合、この飛沫dnは隔離壁3と台部4の上面4aで作られる凹状の半閉空間Qに遮られるとともに凹状の半閉空間Qの内部の吸込口6付近に発生させた負圧により生じる空気流にトラップされて、能率よく収集することができる。
一方、飛沫核dnは飛沫同様、被採取者Pの顏が向いた方向、すなわち、顔の正面を中心とした前方へ放出され空気流に乗って隔離壁3の方向に漂うが、本例の場合、この飛沫核dnは隔離壁3と台部4の上面4aで作られる凹状の半閉空間Qに遮られるとともに凹状の半閉空間Qの内部、特にその奥側の隔離壁3基部3b近傍に設けられた吸込口6により、緩やかな傾斜を含む滑らかな面を有する隔離壁3に沿って生成される緩やかな下降気流にトラップされて、能率よく回収することができる。
【0040】
図3に示すように、台部4の内部は、各々接続された気密の第1~第4チャンバーC1~C4により一体となった空洞構造を有している。第1チャンバーC1は、台部上部4aに設けられた吸込口6に接続され、第4チャンバーC4は、台部下部に設けられた送出口7に接続されている。
そして、まず、第1チャンバーC1は吸い込んだ空気Ainの空気だまりを作り、第2チャンバーC2に収納された空気清浄ユニット5が空気清浄を行い、次いで、第3チャンバーC3内に収納された送風ユニット9が入側に対して負圧を生じさせるとともに出側に対して正圧を生じさせ、第4チャンバーC4に設けられた送出口7から清浄化処理が済んだ空気Aoutが送出される。
このような空洞構造としているため、検体採取台1Aが取り込んだ空気Ainを外部の空気と遮断することができ、天板4aと隔離壁3で囲った半閉空間Qの空気は台部4に取り込まれ、台部4の内部で取り込んだ空気Ainだけを清浄化して、感染の危険性を低減した空気Aoutを送出口7から送り出し、室内に戻すことができる。