(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097295
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】飲料用演出グラス
(51)【国際特許分類】
A47G 19/22 20060101AFI20230630BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20230630BHJP
H04R 1/30 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
A47G19/22 S
H04R1/02 103Z
H04R1/30 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021215592
(22)【出願日】2021-12-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-14
(71)【出願人】
【識別番号】510286433
【氏名又は名称】株式会社ネットアプリ
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【弁理士】
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】西田 誠
【テーマコード(参考)】
3B001
5D018
【Fターム(参考)】
3B001AA02
3B001CC35
5D018AE31
5D018AE40
(57)【要約】
【課題】 本発明はグラス内で音やサウンドを増幅し、その増幅した音やサウンドをグラス本体の上部開口より効率良く拡散する飲料用演出グラスを提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明の飲料用演出グラスは水平方向に湾曲した上部開口を有する有底の筒状体であるグラス本体と、平坦な板状の振動板と、前記グラス本体にスピーカーを固定する固定機構とを備えており、前記振動板は前記グラス本体の側面に位置し、前記振動板は前記グラス本体の側面又は底部と少なくとも一箇所は連結されており、前記固定機構は前記スピーカーを前記振動板方向に向けた状態で前記振動板の近傍に固定し、前記スピーカーから出た音が前記振動板を振動し、前記振動板の振動が前記グラス本体に伝搬し、前記振動が前記グラス本体内の空間に伝搬し、前記振動が前記空間で共振することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に湾曲した上部開口を有する有底の筒状体であるグラス本体と、
平坦な板状の振動板と、
前記グラス本体にスピーカーを固定する固定機構と
を備えており、
前記振動板は前記グラス本体の側面に位置し、
前記振動板は前記グラス本体の側面と少なくとも一箇所は連結されており、
前記固定機構は前記スピーカーを前記振動板方向に向けた状態で前記振動板の近傍に固定し、
前記スピーカーから出た音が前記振動板を振動し、
前記振動板の振動が前記グラス本体に伝搬し、
前記振動が前記グラス本体の内壁面と飲料の間の空間に伝搬し、
前記空間で前記振動が共振することを特徴とする飲料用演出グラス。
【請求項2】
前記グラス本体の上部開口の径が前記グラス本体の底面の径に比して大きいことを特徴とする請求項1に記載の飲料用演出グラス。
【請求項3】
前記振動板と前記グラス本体は音響インピーダンスが同じ材料を用いていることを特徴とする請求項1~2のいずれか一項に記載の飲料用演出グラス。
【請求項4】
前記スピーカーと前記振動板との距離が可変であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の飲料用演出グラス。
【請求項5】
前記グラス本体の材料の音響インピーダンスが水の音響インピーダンスよりも高いことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の飲料用演出グラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用演出グラスに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料を入れる機能以外に様々な機能を持ったグラスが開発されている。
例えば特許文献1~3には本願発明者が発明した飲料用演出グラスが開示されている。この飲料用演出グラスは、グラス本体と、グラス本体の底部から内部側にのびており携帯電話又はスマートフォンを格納するための格納部と、グラス本体の側面から内部側にのびており携帯電話の電波を通過させるための導波部を備えている。この飲料用演出グラスはグラス本体内に飲料を充填した状態でも携帯電話の電波を導波部を通して外部に出して無線通信できる。
特許文献4には本願発明者が発明した飲料用演出グラスが開示されている。この飲料用演出グラスは、グラス側面に固定された映像表示装置と、グラス本体内部に配置された反射鏡とを備えてりおり、映像表示装置の映像を疑似的にグラス内部に投影する演出が可能なグラスである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6337256号
【特許文献2】特許第6406742号
【特許文献3】特許第6432960号
【特許文献4】特許第6488049号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1~4の飲料用演出グラスは、グラス内で音やサウンドを増幅することが不可能である。
【0005】
本発明は上記問題を鑑み、グラス内で音やサウンドを増幅し、その増幅した音やサウンドをグラス本体の上部開口より効率良く拡散する飲料用演出グラスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の飲料用演出グラスは、水平方向に湾曲した上部開口を有する有底の筒状体であるグラス本体と、平坦な板状の振動板と、前記グラス本体にスピーカーを固定する固定機構とを備えており、前記振動板は前記グラス本体の側面に位置し、前記振動板は前記グラス本体の側面と少なくとも一箇所は連結されており、前記固定機構は前記スピーカーを前記振動板方向に向けた状態で前記振動板の近傍に固定し、前記スピーカーから出た音が前記振動板を振動し、前記振動板の振動が前記グラス本体に伝搬し、前記振動が前記グラス本体の内壁面と飲料の間の空間に伝搬し、前記空間で前記振動が共振することを特徴とする。
また、前記グラス本体の上部開口の径が前記グラス本体の底面の径に比して大きいことを特徴とする。
また、前記振動板と前記グラス本体は音響インピーダンスが同じ材料を用いていることを特徴とする。
また、前記スピーカーと前記振動板との距離が可変であることを特徴とする。
また、前記グラス本体の材料の音響インピーダンスが水の音響インピーダンスよりも高いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の飲料用演出グラスは、グラス近傍に固定されたスピーカーの音をグラス側面の振動板で直接受けて、その振動板の振動(音)をグラス本体に伝搬させ、その振動をグラス本体内の空間で共振させることにより増幅させることが可能である。
本発明の飲料用演出グラスは、スピーカー近傍に配置された平坦な振動板で音を直接受ける方式のため、グラス本体に音(振動)を効率良く伝搬でき様々な径のスピーカーに対応出来る。また、電気を使わないため省エネである。
本発明の飲料用演出グラスは、グラス本体(より厳密にはグラス内壁面)と飲料との間の空間で音(振動)を共振増幅させる方式のためグラス本体内の飲料(液体)の水面の高さを調節することによりグラス本体内の共振周波数を変えることができる。つまり、飲料の量を調節することによりグラス本体内で共振するスピーカーの音を変えることができる(つまりグラス内の飲料の量の増減により音色が変る演出が可能である)。
本発明の飲料用演出グラスは、グラス本体の上部開口の径(直径)がグラス本体の底面の径(直径)に比して大きいためグラス本体内がスピーカーのホーンと同じ形状になっている。そのため、グラスの上部開口から音を効率的に広範囲に拡散する事が出来る(つまりグラス本体がスピーカーのホーン部として機能する)。
本発明の飲料用演出グラスは、振動板とグラス本体は少なくとも一箇所は連結されている箇所を有しており、更に振動板とグラス本体の音響インピーダンスが同じある(マッチングが取れている)ためエネルギーのロスが殆ど無しに音(振動)をグラス内に伝えることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施の形態の飲料用演出グラスを示す斜視図(a)及び断面図(b)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[飲料用演出グラスの第1の実施の形態]
以下、本発明の飲料用演出グラスの第1の実施の形態を図面を用いて示す。
図1に示すように、飲料用演出グラス1は水平方向に湾曲した上部開口11を有する有底の筒状体であるグラス本体10と、平坦な板状の振動板20と、グラス本体10にスピーカー100を固定する固定機構15とから概略構成される。
グラス本体10は
図1(a)または
図1(b)のように水平方向に湾曲した上部開口11を有する有底の筒状体であり、飲料Lをその内部に充填できる。グラス本体10は振動板20で受けたスピーカー100の音(振動)を共振させるための共鳴管(共振管)として機能する。
図1(b)のようにグラス本体10の内部に入れる飲料Lの水面の高さhを調整することにより、グラス本体10内での音の共振(共鳴)周波数を変化させる事ができる。ここで一つ注意点があり、それはグラス本体10の材料についてである。本発明の飲料用演出グラス1はスピーカー100の音増幅のためにグラス内壁面13と飲料L(より厳密には飲料Lの水面と)の間の空間30で振動板20の音(振動)を共鳴(共振)させる必要があるため、グラス本体10の材料は音響インピーダンスの大きさが水と同じかそれ以上の材料を用いた方が良い。何故なら、仮に音響インピーダンスの値が水のそれに比して低い材質(例えば密度の低い木材や発泡スチロール)をグラス本体10(より厳密にはグラス内壁面13)の材料として用いると、飲料Lの水面で反射した音(振動)がグラス内壁面13で再反射せずに吸収或いは透過してしまうため空間30で共振現象が起こり難くなり、結果としてグラス本体10内の音の共振又は共鳴の強さ(或いは共振のQ値)が弱くなるからである(音響インピーダンスやQ値、音の共振については音響工学の専門書を参照されたい)。グラス本体10の材料として適しているのは水より密度の高い材料(例えば金属等の音をよく反射する材料など)が挙げられる。
振動板20は振動板20の近傍に固定されたスピーカー100の音(振動)を効率良く受けるための平坦な振動板である。スピーカー100より出力された音(振動)によりグラス本体10側面に位置する振動板20を振動(または励起)させ、その振動がグラス本体10(より厳密には内壁面13)と飲料Lに伝わりグラス内の空間30で共振を起こす(空間30の空気を共振振動させる)。
図1(a)または
図1(b)のように固定機構15により振動板20の近傍にスピーカー100が配置されるため、スピーカー100から発生した微細の振動も振動板20はキャッチすることができる。なお、振動板20の駆動には電気を一切用いないため省エネである(振動板20は純粋にスピーカー100の音圧のエネルギーによってのみ振動または駆動する)。なお、振動板20はスピーカー100により励起(駆動)された音(振動)をグラス本体10内部に伝搬させる必要があるため、振動板20とグラス本体10は少なくとも一箇所は連結されてなければならない。振動板20の振動は連結箇所16を通ってグラス本体10に伝わる。音の伝送効率を考えると連結箇所16は振動板20とグラス本体10が最短距離で直結できるグラス本体10側面が良い(また、連結箇所16の面積は大きければ大きい程伝送効率は高くなる)。なお、スピーカー100から出力された音が振動板20の表面で無用な乱反射や拡散を起こすのを防ぐため振動板20は突起部等が存在しない平坦な板状の形状が望ましい。振動板20の材料としては音響インピーダンスが高くかつ軽量な(つまり振動し易い)材料が適している。
固定機構15はスピーカー100を振動板20方向に向けた状態で振動板20の近傍に固定するための部材である。固定機構15としては係止、ネジ機構、マグネット機構、ポケット機構の他に
図1(a)又は
図1(b)のような多軸アーム機構等が挙げられる。
図1(a)又は
図1(b)のように固定機構15として多軸アームを用いれば振動板20とスピーカー100の距離dを調整することが可能になる。距離dを大きくすれば振動板20にスピーカー100の音(振動)が届き難くなるため、グラス本体10内での音(振動)の共振の大きさを小さくできる。つまり、距離dを増減させることによりグラス本体10内で共鳴(共振)する音のボリュームを調整できる。なお、距離dが小さければ小さい程、スピーカー100と振動板間の音のエネルギーの伝送ロスが減る(原理的には距離d=0つまりスピーカー100と振動板が密着状態の時伝送ロスが最小になる)。
【0010】
グラス本体10について補足説明をする。
本発明の飲料用演出グラス1は
図1(b)のように振動板20にて集音されたスピーカー100の音(振動)をグラス本体10に伝搬させてグラス本体10内部の空間30で共振又は共鳴させる。そのため、振動板20とグラス本体10の連結部での音(振動)のエネルギーの伝送ロス(より厳密には反射ロス)を減らすために、振動板20とグラス本体10の音響インピーダンスは一致(マッチング)させておく方が望ましい。そのため振動板20とグラス本体10は音響インピーダンスが同じ材料を用いていることが望ましい(音響インピーダンスについての詳細は
図3または音響工学の専門書を参照されたい)。
本発明の飲料用演出グラス1はスピーカー100の音(振動)をグラス本体10に伝搬させてグラス本体10内部の空間30(厳密にはグラス内壁面13と飲料Lの間の空間)で共振又は共鳴させて増幅させる方式のため、
図1(b)のように飲料Lの量の増減(より厳密には飲料Lの水面の高さhの増減)によりグラス本体10内に共鳴する音を変えることができる。つまり、本発明の飲料用演出グラス1はグラス内部のお酒(飲料)の量により音色が変る飲料用演出グラスである。
【0011】
図1(b)のようにグラス本体10の上部開口11の径R1(或いは直径R1)がグラス本体10の底面12の径R2(或いは直径R2)に比して大きくしても良い(つまりグラス内壁面13をグラス底面12に対して傾斜させても良い)。こうすることによりグラス本体10内部の形状がホーンスピーカーのホーン(又はホーン部)と同じ形状になるためグラス本体10内部の空間で共鳴した音を上部開口11より広範囲に拡散できる(ホーンスピーカーやホーンの詳細については音響工学やスピーカーの専門書を参照されたい)。
以上のように、本発明の飲料用演出グラス1は、飲料を充填するグラス本体10が音(振動)を共鳴させる共鳴管と音を拡散させるスピーカーホーンの2つの機能を有しているため、グラス本体10内部の飲料Lの量(厳密にはグラス内の飲料Lの水面の高さ)により、上部開口11より拡散される音を大きく変化させる事が可能なのが最大の特長である。
また、振動板20とグラス本体10の材料の音響インピーダンスをマッチング(整合)させればエネルギーロスを非常に抑えた飲料用演出グラス1を作成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明は、グラス内で音やサウンドを増幅し、その増幅した音やサウンドをグラス本体の上部開口より効率良く拡散する飲料用演出グラスであり、ユーザーはグラス内で共振増幅した音やサウンドをホーンの形状をしたグラスの上部開口より広範囲に拡散できる。以上より本発明は産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0013】
L 飲料(液体)
d 距離(スピーカーと振動板間の距離)
h 高さ(水面までの高さ)
R1 径(上部開口)
R2 径(底面)
1 飲料用演出グラス
10 グラス本体
11 上部開口
12 底面
13 グラス内壁面(グラス本体10の内壁面)
14 底部
15 固定機構
16 連結箇所
20 振動板
30 空間(共振用の空間)
100 スピーカー
【手続補正書】
【提出日】2022-06-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に湾曲した上部開口を有する有底の筒状体であるグラス本体と、
平坦な板状の振動板と、
前記グラス本体にスピーカーを固定する固定機構とを備えており、
前記固定機構は前記スピーカーを前記振動板方向に向けた状態で、且つ前記振動板との距離を可変な状態で前記振動板の近傍に固定し、
前記振動板は前記グラス本体の側面に位置すると共に前記スピーカーから出た音の振動を前記グラス本体に伝搬させるものであり、
前記スピーカーから出た音が前記振動板を振動させ、
前記振動板の振動が前記グラス本体に伝搬され、
前記グラス本体に伝搬された前記振動が前記グラス本体の内壁面と前記上部開口と前記グラス本体内の飲料の表面とで囲まれる空間に伝搬され、
前記空間で前記振動が共振又は共鳴することで前記音を増幅させると共に、前記飲料の表面の高さを調節することにより前記グラス本体の共振周波数を変えて前記音を変え、更に前記スピーカーと前記振動板との距離を変えることで前記音のボリュームを変えることを特徴とする飲料用演出グラス。
【請求項2】
前記上部開口の径が前記グラス本体の底面の径に比して大きいことを特徴とする請求項1に記載の飲料用演出グラス。
【請求項3】
前記振動板と前記グラス本体は音響インピーダンスが同じ材料を用いていることを特徴とする請求項1~2のいずれか一項に記載の飲料用演出グラス。
【請求項4】
前記グラス本体の材料の音響インピーダンスが水の音響インピーダンスよりも高いことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の飲料用演出グラス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
本発明の飲料用演出グラスは、水平方向に湾曲した上部開口を有する有底の筒状体であるグラス本体と、平坦な板状の振動板と、前記グラス本体にスピーカーを固定する固定機構とを備えており、前記固定機構は前記スピーカーを前記振動板方向に向けた状態で、且つ前記振動板との距離を可変な状態で前記振動板の近傍に固定し、前記振動板は前記グラス本体の側面に位置すると共に前記スピーカーから出た音の振動を前記グラス本体に伝搬させるものであり、前記スピーカーから出た音が前記振動板を振動させ、前記振動板の振動が前記グラス本体に伝搬され、前記グラス本体に伝搬された前記振動が前記グラス本体の内壁面と前記上部開口と前記グラス本体内の飲料の表面とで囲まれる空間に伝搬され、前記空間で前記振動が共振又は共鳴することで前記音を増幅させると共に、前記飲料の表面の高さを調節することにより前記グラス本体の共振周波数を変えて前記音を変え、更に前記スピーカーと前記振動板との距離を変えることで前記音のボリュームを変えることを特徴とする。
また、前記上部開口の径が前記グラス本体の底面の径に比して大きいことを特徴とする。
また、前記振動板と前記グラス本体は音響インピーダンスが同じ材料を用いていることを特徴とする。
また、前記グラス本体の材料の音響インピーダンスが水の音響インピーダンスよりも高いことを特徴とする。