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  • -早炊き米の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097300
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】早炊き米の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20230630BHJP
【FI】
A23L7/10 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016764
(22)【出願日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2021213489
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504110948
【氏名又は名称】株式会社アサノ食品
(74)【代理人】
【識別番号】100093931
【弁理士】
【氏名又は名称】長屋 直樹
(72)【発明者】
【氏名】浅野 正成
【テーマコード(参考)】
4B023
【Fターム(参考)】
4B023LC07
4B023LE03
4B023LG01
4B023LG04
4B023LL05
4B023LP02
4B023LP03
4B023LP05
4B023LP08
4B023LP10
4B023LP14
4B023LP15
4B023LP19
4B023LQ01
4B023LT04
4B023LT08
4B023LT43
(57)【要約】
【課題】食味が良好で、常温流通が可能な早炊き米の製造方法を提供する。
【解決手段】早炊き米の製造方法は、精米を洗米する洗米工程(S2)と、洗米された精米を浸漬水に浸漬する浸漬工程(S3)と、浸漬された精米を浸漬水から取り出す取出し工程(S4)と、精米の水切りを行なう水切り工程(S5)と、精米を加熱することにより、精米中の米デンプンの少なくとも一部をアルファ化する加熱工程(S6)と、精米を冷却する冷却工程(S7)と、冷却された精米を熟成して老化させる熟成工程(S8)と、老化された精米をほぐして単粒化するほぐし工程(S9)と、精米を乾燥させることにより、精米の水分活性の値を0.94未満とする乾燥工程(S10)と、精米を計量して容器内に充填し、脱酸素剤とともに密封する密封工程(S11)とを有する。なお、乾燥工程を省略して、密封工程において、吸湿剤を容器内に密封してもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
早炊き米の製造方法であって、
精米を洗米する洗米工程と、
洗米された精米を浸漬水に浸漬する浸漬工程と、
浸漬された精米を浸漬水から取り出す取出し工程と、
取り出した精米の水切りを行なう水切り工程と、
水切りした精米を加熱することにより、精米中の米デンプンの少なくとも一部をアルファ化する加熱工程と、
加熱された精米を冷却する冷却工程と、
冷却された精米を熟成して老化させる熟成工程と、
老化された精米をほぐして単粒化するほぐし工程と、
単粒化された精米を乾燥させることにより、精米の水分活性の値を0.94未満とする乾燥工程と、
乾燥された精米を計量して容器内に充填し、脱酸素剤とともに密封する密封工程と、
を有することを特徴とする早炊き米の製造方法。
【請求項2】
冷却工程において、精米を1~10℃の温度にまで冷却することを特徴とする請求項1に記載の早炊き米の製造方法。
【請求項3】
熟成工程において、1~10℃の環境下で12時間以上48時間以下の時間保管することを特徴とする請求項1又は2に記載の早炊き米の製造方法。
【請求項4】
乾燥工程において、精米の水分活性の値を0.90以上とすることを特徴とする請求項1又は2又は3に記載の早炊き米の製造方法。
【請求項5】
早炊き米の製造方法であって、
精米を洗米する洗米工程と、
洗米された精米を浸漬水に浸漬する浸漬工程と、
浸漬された精米を浸漬水から取り出す取出し工程と、
取り出した精米の水切りを行なう水切り工程と、
水切りした精米を加熱することにより、精米中の米デンプンの少なくとも一部をアルファ化する加熱工程と、
加熱された精米を冷却する冷却工程と、
冷却された精米を熟成して老化させる熟成工程と、
老化された精米をほぐして単粒化するほぐし工程と、
単粒化された精米を容器内に充填し、吸湿剤及び脱酸素剤とともに密封して、精米の水分活性の値を0.94未満とするする密封工程と、
を有することを特徴とする早炊き米の製造方法。
【請求項6】
冷却工程において、精米を1~10℃の温度にまで冷却することを特徴とする請求項5に記載の早炊き米の製造方法。
【請求項7】
熟成工程において、1~10℃の環境下で12時間以上48時間以下の時間保管することを特徴とする請求項5又は6に記載の早炊き米の製造方法。
【請求項8】
密封工程において、精米の水分活性の値を0.90以上とすることを特徴とする請求項5又は6又は7に記載の早炊き米の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗米・浸漬が不要で、短時間で炊飯出来る早炊き米の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の乾燥アルファ化米と言われる製品は、一旦炊飯したご飯を熱風、マイクロ波、過熱水蒸気等を単体または複合的に加え、水分活性の値を0.50以下、水分値を10%以下にすることで、水またはお湯を加えるだけで短時間に復元ができ、かつ常温流通が出来る商品として様々な技術で製品化されている。
【0003】
また、乾燥アルファ化米よりも多くの水分を持つ早炊き米と言われる加工米飯は、洗米、浸漬した精米に熱風、マイクロ波、過熱水蒸気などを加えアルファ化し、加熱された原料を冷却した後に、バリア製のあるパウチに脱酸素剤と一緒に充填し密封シールする事で、乾燥アルファ化米と異なり、重量比で同等程度の水を加え、炊飯器や電子レンジ等で再加熱することで、洗米・浸漬が不要で通常の精米よりも早く炊ける商品として製品化されている。
【0004】
なお、出願人は、早炊き貯蔵米の製造方法として、特許文献1に示す出願を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-291181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の乾燥アルファ化米は、常温流通が可能で、水またはお湯などを加えるだけで短時間に復元は出来るが、乾燥度合いが高いため、ご飯全体に多くのヒビ割れがあり、結果として一般的に生米を炊飯するものと比べると著しい食味の劣化が起こる課題がある。
【0007】
また、乾燥アルファ化米よりも水分が多い早炊き米は、浸漬した精米原料に熱を加え、冷却する事で得られるため乾燥工程がなく、うるち米の場合で重量比で同等程度の水を加え、炊飯器等で加熱(炊飯)をすることで、一般的な生米を炊飯するよりは短い時間で調理でき、食味も一般的な生米を炊飯したものと遜色が無いが、水分値が概ね33±3%、水分活性の値が0.96以上あることから、脱酸素剤を用いて製品内を低酸素状態にすると、ボツリヌス菌による食中毒のリスクが発生し常温流通が出来ない課題があった。
【0008】
そこで、本発明は、早炊き米の製造方法において、食味が良好で、常温流通が可能な早炊き米の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記問題点を解決するために創作されたものであって、第1には、早炊き米の製造方法であって、精米を洗米する洗米工程と、洗米された精米を浸漬水に浸漬する浸漬工程と、浸漬された精米を浸漬水から取り出す取出し工程と、取り出した精米の水切りを行なう水切り工程と、水切りした精米を加熱することにより、精米中の米デンプンの少なくとも一部をアルファ化する加熱工程と、加熱された精米を冷却する冷却工程と、冷却さ
れた精米を熟成して老化させる熟成工程と、老化された精米をほぐして単粒化するほぐし工程と、単粒化された精米を乾燥させることにより、精米の水分活性の値を0.94未満とする乾燥工程と、乾燥された精米を計量して容器内に充填し、脱酸素剤とともに密封する密封工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
第1の構成の早炊き米の製造方法においては、水分活性の値を0.94未満とすることにより、常温流通を可能とすることができる。また、熟成工程により精米を老化させた後にほぐし工程で単粒化しているので、ほぼ一粒ごとに単粒化でき、乾燥効率を向上させることができる。
【0011】
つまり、本発明者は、上記の問題に鑑み鋭意研究した結果、洗米、浸漬が不要で短時間で炊飯でき、従来の早炊き米と同等の食味に復元できるにも関わらず、水分活性を0.94未満とすることにより、常温流通ができ、さらには、熟成後に単粒化することにより乾燥効率を向上させることができる早炊き米の製造工程を開発し本発明に至った。
【0012】
なお、上記第1の構成の密封工程において、酸素非透過性の容器に精米を密封することを特徴とするものとしてもよい。
【0013】
また、第2には、上記第1の構成において、冷却工程において、精米を1~10℃の温度にまで冷却することを特徴とする。よって、冷却工程において、精米を1~10℃の温度にまで冷却するので、熟成工程において老化するまでの時間を短縮させることができる。
【0014】
また、第3には、上記第1又は第2の構成において、熟成工程において、1~10℃の環境下で12時間以上48時間以下の時間保管することを特徴とする。よって、熟成工程において、1~10℃の環境下で12時間以上48時間以下の時間保管することにより、米粒を破損することなくほぼ一粒ごとに単粒化でき、米粒同士をほぼ均等に乾燥させて、より乾燥効率をより向上させることができる。
【0015】
また、第4には、上記第1から第3までのいずれかの構成において、乾燥工程において、精米の水分活性の値を0.90以上とすることを特徴とする。よって、水分活性の値を0.90以上とすることにより、食味を良好とすることができる。
【0016】
また、第5には、早炊き米の製造方法であって、精米を洗米する洗米工程と、洗米された精米を浸漬水に浸漬する浸漬工程と、浸漬された精米を浸漬水から取り出す取出し工程と、取り出した精米の水切りを行なう水切り工程と、水切りした精米を加熱することにより、精米中の米デンプンの少なくとも一部をアルファ化する加熱工程と、加熱された精米を冷却する冷却工程と、冷却された精米を熟成して老化させる熟成工程と、老化された精米をほぐして単粒化するほぐし工程と、単粒化された精米を容器内に充填し、吸湿剤及び脱酸素剤とともに密封して、精米の水分活性の値を0.94未満とするする密封工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
第5の構成の早炊き米の製造方法においては、水分活性の値を0.94未満とすることにより、常温流通を可能とすることができる。また、熟成工程により精米を老化させた後にほぐし工程で単粒化しているので、ほぼ一粒ごとに単粒化でき、乾燥効率を向上させることができる。
【0018】
つまり、本発明者は、上記の問題に鑑み鋭意研究した結果、洗米、浸漬が不要で短時間で炊飯でき、従来の早炊き米と同等の食味に復元できるにも関わらず、水分活性を0.94未満とすることにより、常温流通ができ、さらには、熟成後に単粒化することにより乾燥効率を向上させることができる早炊き米の製造工程を開発し本発明に至った。
【0019】
なお、上記第5の構成の密封工程において、酸素非透過性の容器に精米を密封することを特徴とするものとしてもよい。
【0020】
また、第6には、上記第5の構成において、冷却工程において、精米を1~10℃の温度にまで冷却することを特徴とする。よって、冷却工程において、精米を1~10℃の温度にまで冷却するので、熟成工程において老化するまでの時間を短縮させることができる。
【0021】
また、第7には、上記第5又は第6の構成において、熟成工程において、1~10℃の環境下で12時間以上48時間以下の時間保管することを特徴とする。よって、熟成工程において、1~10℃の環境下で12時間以上48時間以下の時間保管することにより、米粒を破損することなくほぼ一粒ごとに単粒化でき、米粒同士をほぼ均等に乾燥させて、より乾燥効率をより向上させることができる。
【0022】
また、第8には、上記第5から第7までのいずれかの構成において、密封工程において、精米の水分活性の値を0.90以上とすることを特徴とする請求項5又は6又は7に記載の早炊き米の製造方法。よって、水分活性の値を0.90以上とすることにより、食味を良好とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に基づく早炊き米の製造方法によれば、水分活性の値を0.94未満とすることにより、常温流通を可能とすることができる。また、熟成工程により精米を老化させた後にほぐし工程で単粒化しているので、ほぼ一粒ごとに単粒化でき、乾燥効率を向上させることができる。つまり、洗米、浸漬が不要で短時間で炊飯でき、従来の早炊き米と同等の食味に復元できるにも関わらず、水分活性を0.94未満とすることにより、常温流通ができ、さらには、熟成後に単粒化することにより乾燥効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施例の早炊き米の製造工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明においては、早炊き米の製造方法において、食味に問題がなく、常温流通が可能な早炊き米の製造方法を提供するという目的を以下のようにして実現した。
【0026】
以下、本発明の早炊き米の製造方法を図1を使用して説明すると、玄米を精白して精米を得て(S1)、得られた精米を洗米する(S2(洗米工程))。
【0027】
精米の種類としては、うるち米、もち米、玄米、発芽玄米、インディカ米など、品種や産地において特に制約するものではなく、無洗米を使用する事も可能である。
【0028】
次に、洗米された精米を水(浸漬水)に浸漬する(S3(浸漬工程))。この浸漬工程においては、精米原料を十分に水分を吸収させること以外に、味付けや制菌剤等を加えるなど特に制約はない。
【0029】
次に、浸漬された精米を浸漬水から取り出し(S4(取出し工程))、取り出した精米の水切りを行なう(S5(水切り工程))。つまり、精米の表面に付着した水を取り除くが、取り出した後の浸漬原料(つまり、精米)の表面に付着した遊離水分を自重または強制的に吸引する事で取り除く以外に特に制約はない。なお、水切りした状態での精米の水分値は、25%以上であればよいが、30%以上とすることが好ましい。
【0030】
次に、水切りした精米を加熱して、精米中の米デンプンの一部または全部(すなわち、少なくとも一部)をアルファ化する(S6(加熱工程))。なお、この加熱工程では蒸気、または過熱水蒸気、飽和水蒸気、マイクロ波などで米デンプンの一部または全部をアルファ化すること以外に特に制約はなく、上記熱源に複合的に使用してもよい。好ましくは、米の乾燥を防ぎ、ランニングコストが安い、通常の蒸気発生器(ボイラー)により得られた一般的な蒸気を用い、浸漬された精米原料に1~30分程度の範囲内で加熱する事が好ましく、5~10分程度で加熱する事が更に好ましい。なお、加熱する方法自体はネットコンベアー、スパイラル、バッチ式(セイロ)など、均一に加熱することが出来れば、特に制約はない。
【0031】
次に、加熱された精米を冷却する(S7(冷却工程))が、冷却の方法については、冷風、真空冷却等が挙げられるが、特に制約はなく、次工程の熟成工程において一定時間保管する際に菌の増殖を抑制でき、また、熟成工程において安定化(すなわち、老化)するまでの時間を短縮するために、精米を1~10℃の温度にまで冷却することが好ましい。

次に、冷却された精米を熟成させる(S8(熟成工程))。この熟成工程では、加熱後冷却された精米原料は米粒同士が結着しており、熟成工程に於いて一定時間放置する事で、加熱後冷却された精米原料が安定化(すなわち、老化)し、次のほぐし工程において米粒をほぼ一粒ごとに(つまり、一粒一粒に近い状態に)単粒化する事が可能となり、結果的に、乾燥工程において、米粒同士をほぼ均等に乾燥させて、乾燥効率をより向上させることができる。この熟成工程において精米を老化させることにより、精米は複数の米粒が集まった固まりの状態となる。
【0032】
なお、加熱後冷却された精米原料が、ほぐし工程において、米粒を破損することなくほぼ一粒ごとに単粒化できるまでに老化させるには、1~10℃の環境下で12時間以上48時間以下の時間(好ましくは20時間以上30時間以下、より好ましくは24時間程度)保管する事が好ましい。ここで、48時間以下とするのは、腐敗を防止するためである。また、10℃を超える温度で保管する場合には、菌の増殖を防ぐために、40℃以下とするとともに、脱酸素状態で、24時間以上72時間以下の時間(好ましくは36時間以上48時間以下)保管する。
【0033】
次に、精米を単粒化する(S9(ほぐし工程))。つまり、結着した米粒同士に外圧を加える事により米粒をほぼ一粒ごとに単粒化するものであり、その方法は特に制約はないが、例えば、互いに間隔を介して設けられた一対のベルトコンベアにおけるベルト間の隙間に老化させて固まりの状態の精米を投入し、ベルトを移動させて精米を搬送することにより精米を粗くほぐした後に、メッシュ状の網(例えば、目開きが5mmの5mmメッシュの網)の上に精米を配置した状態で網に向けて精米を押さえつけて、精米が網を通過す
ることにより、一粒一粒に近い状態に単粒化する。
【0034】
このほぐし工程において、米粒をほぼ一粒ごとに単粒化することにより、次の乾燥工程において乾燥効率を向上させることができ、さらに、米粒を破損することなくほぼ一粒ごとに単粒化することにより、米粒同士をほぼ均等に乾燥させて、より乾燥効率をより向上させることができるとともに、米粒同士をほぼ均等に乾燥させることにより、より食味を向上させることができる。
【0035】
なお、ほぐし工程の他の方法としては、一対のベルトコンベアにおけるベルトの間隔が徐々に小さくなるようにベルトコンベアを配置し、ベルト間の隙間に老化させて固まりの状態の精米を投入し、ベルトを移動させて精米を搬送することにより2つのベルト間の隙間が徐々に狭くなることから精米がほぐされて単粒化する。
【0036】
また、メッシュの目開きの大きさが異なる複数の網を用意し、老化させた精米をそれぞれの網に通過させるが、通過させる網の目開きの大きさを徐々に小さくすることにより、精米を徐々にほぐして単粒化させてもよい。
【0037】
次に、ほぐし工程でほぐされた精米を乾燥させて、精米の水分活性の値が0.94未満となるようにする(S10(乾燥工程))。水分活性の値が0.94未満になるように乾燥できれば温度、時間、風量や方法に特に制約はないが、水分活性の値が低くなり過ぎると食味が悪くなることから、0.90以上とし、水分活性の値が0.94に近い方が好ましい。つまり、水分活性の値が0.90未満となると、食味が良好とはならず、やや不良又は不良となってしまう。また、水分活性の値が0.94以上となると、冷蔵しなければならないため常温流通ができない。つまり、水分活性の値が0.90以上0.94未満とするのが好ましく、0.94に近い方がより好ましい。なお、水分活性の値が0.85以上であればやや不良程度の食味を得ることはできるので(実施例3(後述)参照)、水分活性の値を0.85以上0.94未満としてもよい。
【0038】
次に、乾燥された精米を所定量ずつ計量し、計量された精米を容器(例えば、プラスチック製の袋)内に充填して密封する(S11(密封工程))。その際、容器としては、酸素透過性のない容器(例えば、袋)を使用するとともに、脱酸素剤を容器に入れて密封するが、脱酸素剤を酸素透過性のない容器(つまり、酸素非透過性の容器)に入れて密封する以外は特に制約はない。つまり、水分活性の値が0.94未満であるので、低酸素状態でもボツリヌス菌の増殖を抑えることはできるが、一般生菌の増殖を抑えることはできないので、脱酸素剤を酸素非透過性の容器に入れて密封する。なお、脱酸素剤の脱酸素能力が高い場合には、酸素非透過性の容器でなくてもよい。また、水分活性が0.50未満の場合には菌の増殖のリスクがないことから、脱酸素剤や酸素非透過性の容器の構成を省略してもよい。
【0039】
上記のように、水切り工程で精米の表面に付着した水を取り除いた後に加熱しているので、水分値が概ね25~36%(好ましくは、33±3%)とした早炊き米とすることができる。
【0040】
また、水分活性の値が0.94未満であるので、常温流通することが可能となる。つまり、密封工程で密封した状態で製品として流通させることができる。また、脱酸素剤を酸素非透過性の容器に入れて密封するので、水分活性の値が0.94未満で、0.50以上の場合でも、一般生菌の増殖を抑えることができる。
【0041】
また、熟成工程により精米を老化させた後にほぐし工程で単粒化しているので、ほぼ一粒ごとに単粒化することができ、乾燥工程における乾燥効率を向上させることができる。
【0042】
なお、本発明のような早炊き米においては、水を入れて加熱することにより短時間で調理することができ、例えば、炊飯器の場合には、早炊き米と水を入れて炊飯するのみで調理することができ、炊飯時間が短く、また、通常の生米を炊飯する場合のように洗米や浸漬は不要である。
【0043】
また、単粒化後の乾燥工程を省くために、単粒化した精米を乾燥せず、酸化カルシウム、塩化カルシウム、十酸化四リンなどの吸湿剤を脱酸素剤とともに密封することで、密封容器内に於いて精米からの水分を吸湿させ、結果として精米を乾燥させることで水分活性の値を0.94未満としてもよい。
【0044】
つまり、ほぐし工程でほぐされた精米を容器(具体的には、酸素透過性のないプラスチック製の容器(例えば、袋))内に脱酸素剤及び吸湿剤とともに充填して密封する(密封工程)。なお、精米を容器内に脱酸素剤及び吸湿剤とともに密封する密封工程(これを「新密封工程」とする)を行なう場合には、上記乾燥工程(S10)より前の工程、つまり、精米(S1)からほぐし工程(S9)までの工程は上記と同様であり、ほぐし工程の次に新密封工程を行ない、上記乾燥工程は省略される。また、ほぐし工程でほぐされた精米を容器内に充填する際に、精米を所定量ずつ計量することなく、脱酸素剤及び吸湿剤とともに密封して、水分活性の値を0.94未満としておき、その後、精米を所定量ずつ計量して、精米を他の容器(具体的には、酸素透過性のないプラスチック製の容器(例えば、袋))内に脱酸素剤とともに密封して製品としてもよいし、一方、精米を所定量ずつ計量して、計量された精米を容器内に充填し、脱酸素剤及び吸湿剤とともに容器に密封された精米をそのまま製品としてもよい。脱酸素剤及び吸湿剤とともに容器に密封された精米をそのまま製品とする場合には、乾燥工程が省略されることにより、乾燥工程のための設備や時間が不要となる。
【0045】
なお、この新密封工程を行なう場合でも、熟成工程において精米を熟成させることにより、ほぐし工程において米粒をほぼ一粒ごとに単粒化する事が可能となり、結果的に、新密封工程において、米粒同士をほぼ均等に乾燥させて、乾燥効率をより向上させることができ、また、ほぐし工程において、米粒をほぼ一粒ごとに単粒化することにより、新密封工程において乾燥効率を向上させることができ、さらに、米粒を破損することなくほぼ一粒ごとに単粒化することにより、米粒同士をほぼ均等に乾燥させて、より乾燥効率をより向上させることができるとともに、米粒同士をほぼ均等に乾燥させることにより、より食味を向上させることができる。
【0046】
水分活性の値を0.94未満にするには吸湿剤の能力や容量に依存するため、単粒化した精米を水分活性の値が0.94未満に成り得る容量を密封する必要がある以外、顆粒状、シート状など特に制約するものではないが、食品に接触するため吸湿剤は不織布等の包装材により包装することにより食品に直接触れない構成とするとともに、包装材の強度としては、容器に精米及び脱酸素剤とともに入れられた状態で破れない強度が必要である。
【0047】
なお、吸湿剤の能力及び容量としては、水分活性の値が0.90以上になるようにすることが好ましく、これにより食味を良好とすることができる。つまり、吸湿剤の能力及び容量を吸湿剤を精米とともに容器に密封して放置した状態(例えば、12時間以上放置した状態)で、精米の水分活性の値が0.90以上0.94未満となるようにするのが好ましい。
【実施例0048】
以下実施例1を説明する。精米には秋田県産あきたこまちを800g用意し、常法で洗米し(洗米工程)、2000gの清水に洗米した精米原料を漬け込み90分放置し精米原料に水を吸水させた(浸漬工程)。浸漬した精米原料を浸漬水から取り出して(取出し工程)ザルに移し10分間放置し、ザルの下方部に残った水分を吸引できる吸引機で強制的に吸い込み(水切り工程)、浸漬された精米原料1040gを得た。次いで、浸漬・水切りされた精米原料を厚みが3cm程度に均一になる様に直径30cm、高さ30mmのザルに入れ、100℃の蒸気庫内で5分加熱し(加熱工程)精米原料をアルファ化した。この時使用した蒸し庫は、一般的なボイラー(蒸気発生器)で発生させた蒸気を上部にのみ開放口のある密閉容器とし、下方部から蒸気を密封容器内に吐出させる構造の蒸し庫を使用し、密封容器内に上記精米原料を入れたザルを静置し加熱するものとした。次いで、10℃以下の風に加熱された精米原料を10分間さらし、加熱された精米原料を10℃以下まで冷却し(冷却工程)、パウチに充填シールし8℃の冷蔵庫で24時間放置し安定化させた(熟成工程)。安定化された精米原料をパウチの外側から圧力を加える事で単粒化し、パウチを開封し取り出した後に5mmメッシュの網の上で擦り付ける様に更に単粒化し、一様に米粒一粒一粒に近い状態まで単粒化した(ほぐし工程)。単粒化した精米原料を米粒が通過しない程度の網に厚みが1cm程度になる様に均一に広げ、25℃の風に30分さらし乾燥することで(乾燥工程)低水分活性早炊き米を得た。この時の乾燥後重量は900g、水分値は26.0%、水分活性の値は0.938であった。また、当該処理により得られた低水分活性早炊き米450gと水600gと一緒に炊飯器(パナソニック製SR-FD107)にいれ、早炊きモード(炊飯時間:25分)で炊飯をし、炊飯後重量、食味を確認した。食味としては、良好であった(表1参照)。
【実施例0049】
次に、実施例2では、乾燥条件の温度を25℃、乾燥時間1時間に変えた以外は実施例1と同じ工程とし、乾燥後重量860g、乾燥後の水分値23.0%、水分活性の値0.905の乾燥早炊き米を得た。炊飯条件を乾燥早炊き米を430g、水5630gに変えた以外は実施例1と同条件で炊飯し(炊飯時間は25分とした)、炊飯後重量、食味を確認した。食味としては、良好であった(表1参照)。
【実施例0050】
次に、実施例3では、乾燥条件を風の温度を25℃、乾燥時間3時間に変えた以外は実施例1と同じ工程とし、乾燥後重量830g、乾燥後の水分値21.0%、水分活性の値0.858の乾燥早炊き米を得た。炊飯条件を乾燥早炊き米を415g、水650gに変えた以外は実施例1と同条件で炊飯し(炊飯時間は25分とした)、炊飯後重量、食味を確認した。食味としては、やや不良であった(表1参照)。
【実施例0051】
次に、実施例4では、乾燥条件を風の温度を90℃、乾燥時間30分に変えた以外は実施例1と同じ工程とし、乾燥後重量760g、乾燥後の水分値15.0%、水分活性の値0.750の乾燥早炊き米を得た。炊飯条件を乾燥早炊き米を380g、水670gに変えた以外は実施例1と同条件で炊飯し(炊飯時間は30分とした)、炊飯後重量、食味を確認した。食味としては、不良であった(表1参照)。
【0052】
また、比較例1として、精米には秋田県産あきたこまちを300g用意し、常法で洗米
した後、炊飯器(パナソニック製SR-FD107)に水500gと一緒に入れ、エコ炊飯モード(炊飯時間:50分)で炊飯をし、炊飯後重量、食味を確認した。食味としては、良好であった(表1参照)。
【0053】
また、比較例2として、精米には秋田県産あきたこまちを300g用意し、常法で洗米した後、炊飯器(パナソニック製SR-FD107)に水500gと一緒に入れ、早炊きモード(炊飯時間:30分)で炊飯をし、炊飯後重量(680g)を確認するとともに、食味を確認した。食味としては、やや不良であった(表1参照)。
【0054】
【表1】
【実施例0055】
実施例5として、使用する精米を北海道産はくちょうもち800gとし実施例1と同じ条件で処理し、乾燥後重量950g、水分値33.1%、水分活性の値0.938の乾燥早炊き米を得た。得られたもち米精米原料の乾燥早炊き米400gと水250gを炊飯器(パナソニック製SR-FD107)にいれ、早炊きモード(炊飯時間:25分)で炊飯をし、炊飯後重量、食味を確認した。食味としては、良好であった(表2参照)。
【0056】
また、比較例3として、精米には北海道産はくちょうもちを300g用意し、常法で洗米した後、炊飯器(パナソニック製SR-FD107)に水400gと一緒に入れ、炊き込みモード(炊飯時間:55分)で炊飯をし、炊飯後重量(600g)を確認するとともに、食味を確認した。食味としては、良好であった(表2参照)。
【0057】
【表2】
【0058】
なお、上記実施例1~4と比較例1及び比較例2は、うるち米の場合であり、実施例5と比較例3は、もち米の場合であるといえる。また、実施例1~5は早炊き米を炊飯した場合であるのに対して、上記比較例1~3は、生米を炊飯したものであり、比較例1~3においては、炊飯時間がそれぞれ異なるといえる。
【0059】
以上のように、実施例1~5においては、水分活性の値を0.90以上とすることにより、食味を良好とすることができ、生米を炊飯した場合と比べても、食味は、炊飯時間を十分長くした場合(比較例1、比較例3)と遜色ない結果となった。
【実施例0060】
実施例6として、単粒化するまでは実施例1と同じ処理をし、単粒化した精米原料1000gを密封容器に脱酸素剤とともに不織布等で包装した酸化カルシウム350gを密封シールし、室温25℃で24時間保管した。開封した後に取り出した精米原料は910g、水分値は26.2%、水分活性の値は0.938であった。また、当該処理により得られた低水分活性早炊き米450gと水600gと一緒に炊飯器(パナソニック製SR-FD107)にいれ、早炊きモード(炊飯時間:25分)で炊飯をし、炊飯後重量、食味を確認した。食味としては、良好であった(表1参照)。
図1