(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097316
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】誘電体組成物及び積層型キャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
H01G4/30 515
H01G4/30 201L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085357
(22)【出願日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】10-2021-0188595
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョウン ウク
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジェ スン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、エウン ハ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジョン ファン
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
(57)【要約】
【課題】高い信頼性を有する誘電体組成物とこれを用いた積層型キャパシタを提供する。
【解決手段】
本発明の一実施形態は、BaTiO
3系主成分及び希土類元素を含む副成分を含み、上記希土類元素はDy及びEuを含み、上記BaTiO
3系主成分100モル当たりの上記Dy及びEuのモル含有量は0.10<Eu/(Dy+Eu)≦0.50の条件及び0.60モル≦Dy+Eu≦1.0モルを満たし、上記希土類元素は、上記Dy及びEuよりも高いモル含有量の他の元素を含まない誘電体組成物及びこれを含む積層型キャパシタを提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BaTiO3系主成分と、
希土類元素を含む副成分と、を含み、
前記希土類元素はDy及びEuを含み、
前記BaTiO3系主成分100モル当たりの前記Dy及びEuのモル含有量は、0.10<Eu/(Dy+Eu)≦0.50及び0.60モル≦Dy+Eu≦1.0モルの条件を満たし、前記希土類元素は、前記Dy及び前記Euよりも高いモル含有量の他の元素を含まない、誘電体組成物。
【請求項2】
前記BaTiO3系主成分100モル当たりの前記Dyのモル含有量は、0.30≦Dy≦0.70の条件を満たす、請求項1に記載の誘電体組成物。
【請求項3】
前記BaTiO3系主成分100モル当たりの前記Euのモル含有量は、0.10≦Eu≦0.50の条件を満たす、請求項1に記載の誘電体組成物。
【請求項4】
前記希土類元素は前記Dy及び前記Euのみを含む、請求項1から3の何れか1つに記載の誘電体組成物。
【請求項5】
誘電体層及び前記誘電体層を間に挟んで積層された複数の内部電極を含む本体と、
前記本体に配置されて前記複数の内部電極と接続された外部電極と、を含み、
前記誘電体層は誘電体グレインを含み、
前記誘電体グレインは希土類元素を含む第1副成分と、前記希土類元素はDy及びEuを含み、前記BaTiO3系主成分100モル当たりの前記Dy及びEuのモル含有量は0.10<Eu/(Dy+Eu)≦0.50及び0.60モル≦Dy+Eu≦1.0モルの条件を満たし、前記希土類元素は、前記Dy及びEuよりも高いモル含有量の他の元素を含まない、積層型キャパシタ。
【請求項6】
前記誘電体グレインはコア部及び前記コア部とは異なる組成を有するシェル部を含むコア-シェル構造を有する、請求項5に記載の積層型キャパシタ。
【請求項7】
前記希土類元素は、前記シェル部に含まれた、請求項6に記載の積層型キャパシタ。
【請求項8】
前記BaTiO3系主成分100モル当たりの前記Dyのモル含有量は、0.30≦Dy≦0.70の条件を満たす、請求項5に記載の積層型キャパシタ。
【請求項9】
前記BaTiO3系主成分100モル当たりの前記Euのモル含有量は、0.10≦Eu≦0.50の条件を満たす、請求項5に記載の積層型キャパシタ。
【請求項10】
前記希土類元素は、前記Dy及び前記Euのみを含む、請求項5から9の何れか1つに記載の積層型キャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体組成物及び積層型キャパシタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャパシタは電気を蓄えることができる素子であり、基本的に2つの電極を対向させて電圧をかけると、各電極に電気が蓄積されるものである。直流電圧を印加した場合には、電気が蓄電されてキャパシタ内部に電流が流れるが、蓄積が完了すると電流が流れなくなる。一方、交流電圧を印加した場合、電極の極性が交変しながら交流電流が流れるようになる。
【0003】
このようなキャパシタは、電極間に備えられる絶縁体の種類に応じて、アルミニウムで電極を構成し、上記アルミニウム電極間に薄い酸化膜を備えるアルミニウム電解キャパシタ、電極材料としてタンタルを用いるタンタルキャパシタ、電極間にチタン酸バリウムなどの高誘電率の誘電体を用いるセラミックキャパシタ、電極間に備えられる誘電体として高誘電率系セラミックを多層構造で用いる積層セラミックキャパシタ(Multi-Layer Ceramic Capacitor、MLCC)、電極間の誘電体としてポリスチレンフィルムを用いるフィルムキャパシタなど様々な種類に区分することができる。
【0004】
この中で、積層セラミックキャパシタは温度特性及び周波数特性に優れ、小型で実現可能であるという利点を有しており、最近では、高周波回路などの多様な分野で多く応用されている。最近では、積層セラミックキャパシタをさらに小さく実現するための試みが続けられており、このために誘電体層及び内部電極を薄く形成している。
【0005】
積層セラミックキャパシタの小型化及び高容量化を達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増加させる必要がある。現在、誘電体層の厚さが約0.6μmレベルまで到達した状態であり、薄層化が進行し続けている。しかしながら、誘電体層の厚さが薄くなるほど、信頼性、高温耐電圧の特性だけでなく、dc-bias特性が問題になる可能性がある。dc-bias特性は、MLCCに印加されるdc-bias fieldの大きさが増加することによって容量または誘電率が減少する現象を意味する。電力管理集積回路(Power management integrated circuit)などのMLCCの様々な適用事例において、dc-biasが印加された状態でMLCCが用いられる場合が多いため、高電界dc-biasが印加された条件で高い有効誘電率または容量を実現することができるMLCC及びこれを製作するための誘電体組成物に対する要求がますます増加している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一目的は、高い信頼性を有する誘電体組成物とこれを用いた積層型キャパシタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するための方法として、本発明は一例によって新規な誘電体組成物を提案し、具体的には、BaTiO3系主成分及び希土類元素を含む副成分を含み、上記希土類元素はDy及びEuを含み、上記BaTiO3系主成分100モル当たりの上記Dy及びEuのモル含有量は、0.10<Eu/(Dy+Eu)≦0.50及び0.60モル≦Dy+Eu≦1.0モルの条件を満たし、上記希土類元素は、上記Dy及びEuよりも高いモル含有量の他の元素を含まない。
【0008】
一実施形態において、上記BaTiO3系主成分100モル当たりの上記Dyのモル含有量は、0.30≦Dy≦0.70の条件を満たすことができる。
【0009】
一実施形態において、上記BaTiO3系主成分100モル当たりの上記Euのモル含有量は、0.10≦Eu≦0.50の条件を満たすことができる。
【0010】
一実施形態において、上記希土類元素は上記Dy及びEuのみを含むことができる。
【0011】
本発明の他の側面は、誘電体層及び上記誘電体層を間に挟んで積層された複数の内部電極を含む本体と、上記本体に配置されて上記複数の内部電極と接続された外部電極と、を含み、上記誘電体層は誘電体グレインを含み、上記誘電体グレインは希土類元素を含む第1副成分と、上記希土類元素はDy及びEuを含み、上記BaTiO3系主成分100モル当たりの上記Dy及びEuのモル含有量は0.10<Eu/(Dy+Eu)≦0.50及び0.60モル≦Dy+Eu≦1.0モルの条件を満たし、上記希土類元素は、上記Dy及びEuよりも高いモル含有量の他の元素を含まない積層型キャパシタを提供する。
【0012】
一実施形態において、上記誘電体グレインは、コア部及び上記コア部とは異なる組成を有するシェル部を含むコア-シェル構造を有することができる。
【0013】
一実施形態において、上記希土類元素は上記シェル部に含まれることができる。
【0014】
一実施形態において、上記BaTiO3系主成分100モル当たりの上記Dyのモル含有量は、0.30≦Dy≦0.70の条件を満たすことができる。
【0015】
一実施形態において、上記BaTiO3系主成分100モル当たりの上記Euのモル含有量は、0.10≦Eu≦0.50の条件を満たすことができる。
【0016】
一実施形態において、上記希土類元素は上記Dy及びEuのみを含むことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一例に係る誘電体組成物の場合、構造的特性、電気的特性が向上することができ、これを積層型キャパシタに利用する際に信頼性が向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示した図面である。
【
図2】
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示した図面である。
【
図3】
図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示した図面である。
【
図4】本発明の一実施形態による積層型電子部品の本体を分解して概略的に示した分解斜視図である。
【
図5】本発明の誘電体層の微細構造を説明するための概略図である。
【
図6a】Dy及びEuのモル含有量が誘電体の信頼性に及ぼす影響を示すTCCの実験結果を示した図面である。
【
図6b】Dy及びEuのモル含有量が誘電体の信頼性に及ぼす影響を示すMTTFの実験結果を示した図面である。
【
図7a】Dy及びEuのモル含有量が誘電体の信頼性に及ぼす影響を示すTCCの実験結果を示した図面である。
【
図7b】Dy及びEuのモル含有量が誘電体の信頼性に及ぼす影響を示すMTTFの実験結果を示した図面である。
【
図8a】Dy及びEuのモル含有量が誘電体の信頼性に及ぼす影響を示すTCCの実験結果を示した図面である。
【
図8b】Dy及びEuのモル含有量が誘電体の信頼性に及ぼす影響を示すMTTFの実験結果を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0020】
そして、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、複数の層及び領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を付与して説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0021】
本発明の一実施形態による誘電体組成物は、BaTiO3系主成分及び希土類元素を含む第1副成分を含み、ここで、上記希土類元素はDy及びEuを含む。そして、上記BaTiO3系主成分100モル当たりの上記Dy及びEuのモル含有量は、0.10<Eu/(Dy+Eu)≦0.50及び0.60モル≦Dy+Eu≦1.0モルの条件を満たし、上記希土類元素は上記Dy及びEuよりも高いモル含有量の他の元素を含まない。すなわち、上記誘電体組成物は、希土類元素のうちDy及びEuを主要添加元素とし、本発明の発明者らは、Dy及びEuの添加量に応じて誘電体の電気的特性及び信頼性などに変化があることを見出して含有量の条件を最適化しようとした。そして、このような組成条件を満たす誘電体組成物は、MLCCの誘電体として用いる際に高い絶縁抵抗及びTCC(Temperature Coefficient of Capacitance)特性を示すことができる。ここで、上記BaTiO3系主成分は、BaTiO3及びここにCa、Zr、Snなどの成分が固溶されたもの、例えば、(Ba1-xCax)(Ti1-yCay)O3、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3の組成式で表れる組成物を用いることができる。
【0022】
上記誘電体組成物において、上記副成分の組成条件は、下記で説明する主要成分の機能及び実験例に基づいて設定されたものである。誘電体組成物の焼結は、イオン間の物質移動によって発生し、大きく緻密化及び粒成長の段階を経るようになる。ここで、緻密化はイオンの表面拡散によって、粒成長は全表面積を下げるための界面移動によって発生する。この場合、誘電体内に高抵抗成分である粒界が多く存在するほど電荷の移動度を下げることができるため、粒界の分率が多くなるように誘電体グレインが微細化すると、誘電体の誘電率が向上することができる。但し、粒界も電界強度が高くなる薄層環境(例えば、誘電体層の厚さが0.5μm以下である場合)では、ショットキーバリア(Schottky barrier)が低くなって電気導電性が高くなることがある。粒界以外にも、誘電体グレインのコア部とシェル部との界面においても高いポテンシャルバリア(potential barrier)が形成されるように、BaTiO3系物質よりも仕事関数が高い元素を副成分として添加することができ、母材及び添加剤の反応性が高くなるようにBaTiO3系主成分粒子の表面をイオン化されたコーティング表面とする工法を用いることができる。
【0023】
このような粒界及びコア-シェル構造における界面への考慮事項以外に、誘電体が薄型化し、高電界環境で高いレベルの絶縁抵抗を有するためには、電荷の濃度が低いことが有利である。具体的には、MLCC絶縁抵抗劣化の主要原因として作用する酸素空孔欠陥を最小化する際に結晶粒内でp-n接合(junction)形成による絶縁抵抗劣化を防止することができ、本実施形態ではグレイン内の伝導現象を抑制するために、n-type傾向性の高い元素として希土類元素を用いた。具体的には、BaTiO3系主成分に互いに異なる希土類元素を副成分として添加し、上記希土類元素はDy及びEuを含む。従来には、希土類元素としてDyを単独で用いることが一般的であったが、Dy3+イオンがBaTiO3系主成分のBa-siteに固溶される量に限界があるため、特性の実現に制約がある。本実施形態においては、希土類元素の固溶効果を最大化するために、Ba2+イオンをさらに効果的に置換することができるように、Dyに加えてDyよりも原子価がさらに高く、イオンの大きさがより大きく、Ba2+イオンと類似した大きさを有するEuを併せて使用した。したがって、Dyに対するEuは、BaTiO3系主成分にさらに多い量でより均一にドーピングされることができ、Dyを単独で用いる場合に比べてDy及びEuを併せて用いる場合、誘電体グレインの微細構造の均一性及び高温信頼性の実現が可能である。但し、Dy及びEuの含有量が過度に増加する場合、絶縁抵抗などの信頼性特性が低下することがあり、これはDyやEuが過量に添加される場合、電子濃度の増加に伴う過度の半導体化によって絶縁抵抗が急激に低下するためであると理解される。
【0024】
上述した考慮事項及び実験結果に基づいて、本発明の発明者らは希土類の副成分の含有量の条件を最適化しようとした。その結果、まず、上記BaTiO3系主成分100モル当たりの上記Dy及びEuのモル含有量は、0.10<Eu/(Dy+Eu)≦0.50及び0.60モル≦Dy+Eu≦1.0モルの条件を導出した。さらに好ましい条件として、上記BaTiO3系主成分100モル当たりの上記Dyのモル含有量は、0.30≦Dy≦0.70の条件を満たすことができる。また、上記BaTiO3系主成分100モル当たりの上記Euのモル含有量は、0.10≦Eu≦0.50の条件を満たすことができる。また、上記希土類元素は上記Dy及びEuのみを含むことができる。
【0025】
このように、本実施形態による誘電体組成物の場合、副成分として添加される希土類元素の組み合わせを最適化し、これによって誘電体の微細構造の均一性、緻密度向上、さらには高温信頼性及び耐電圧の改善効果を期待することができる。また、組み合わされる希土類元素によって含有量の比は異なり、このような差異はDy、Euのイオン半径差、電子価(valence)差による欠陥化学的反応によるものと理解される。すなわち、Baとイオン半径が類似するほど同一含有量においてもドナーリッチ(donor-rich)の欠陥化学的反応で電子の生成によるn-type伝導(conduction)が発生する可能性があるため、添加される希土類元素によってその含有量を異ならせる必要がある。但し、このようなドナー型の傾向性が高いEuを単独で用いるか、Dyに比べてその添加割合が高すぎる場合、電子放出が過度になって誘電体の絶縁抵抗が低下するおそれがあるため、上記提示した含有量の条件を満たすことが好ましい。
【0026】
以下、上述した誘電体組成物を用いて得られる積層型キャパシタの一例を説明する。但し、本発明の誘電体組成物は、積層キャパシタ以外にも様々な電子製品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、またはサーミスタなどにも適用されることができる。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示した図面であり、
図2は、
図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示した図面であり、
図3は、
図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示した図面であり、
図4は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の本体を分解して概略的に示した分解斜視図であり、
図5は、本発明の誘電体層の微細構造を説明するための概略図である。
【0028】
図1~
図5を参照すると、本発明の一実施形態による積層型キャパシタ100は、本体110及び外部電極131、132を含み、ここで、本体110は複数の誘電体層111及びこれを間に挟んで積層された複数の内部電極121、122を含む。
【0029】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように、本体100は、六面体状やこれと類似した形状からなることができる。焼結過程で本体100に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体100は、完全な直線を有する六面体状ではないが、実質的に六面体状を有することができる。本体110は、第1方向に互いに対向する第1面1及び第2面2、第1面1及び第2面2と連結され、第2方向に互いに対向する第3面3及び第4面4、第1面1及び第2面2と連結され、第3面3及び第4面4と連結され、第3方向に互いに対向する第5面5及び第6面6を有することができる。本体100を形成する複数の誘電体層110は、焼結された状態であって、隣接する誘電体層110間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0030】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量が形成される容量形成部Acと、上記容量形成部Acの第1方向の上部及び下部に形成されたカバー部112、113を含むことができる。また、容量形成部Acは、キャパシタの容量形成に寄与する部分であり、誘電体層111を間に挟んで複数の第1内部電極121及び第2内部電極122を繰り返し積層して形成されることができる。
【0031】
図4を参照すると、誘電体層111は、コア部11a及びこれと異なる組成を有するシェル部11bを含むコア-シェル構造の誘電体グレイン11を含み、これ以外にコア-シェル構造ではない誘電体グレイン12も含むことができる。上述した誘電体組成物を用いて積層型キャパシタ100の誘電体層111を形成する場合、誘電体層111の誘電体グレイン11、12は、BaTiO
3系主成分と、希土類元素を含む副成分とを含み、上記希土類元素はDy及びEuを含み、上記BaTiO
3系主成分100モル当たりの上記Dy及びEuのモル含有量は0.10<Eu/(Dy+Eu)≦0.50及び0.60モル≦Dy+Eu≦1.0モルの条件を満たし、上記希土類元素は、上記Dy及びEuよりも高いモル含有量の他の元素を含まない。さらに具体的な例として、上述した希土類の副成分は、BaTiO
3系主成分に固溶されてシェル部11bを形成することができる。これにより、シェル部11bは、BaTiO
3系主成分と、希土類元素を含む副成分とを含み、上記希土類元素はDy及びEuを含み、上記BaTiO
3系主成分100モル当たりの上記Dy及びEuのモル含有量は0.10<Eu/(Dy+Eu)≦0.50の条件及び0.60モル≦Dy+Eu≦1.0モルを満たすことができる。以下の例においては、シェル部11bに希土類の副成分が存在することを説明するが、コア部11aにも希土類の副成分が一部存在することもできる。
【0032】
コア-シェル構造の誘電体グレイン11においてコア部11aの直径をD1とするとき、5nm≦D1≦100nmの条件を満たすことができる。そして、誘電体グレイン11の直径をD2とするとき、50nm≦D2≦600nmの条件を満たすことができる。このとき、誘電体グレイン11の直径は、各誘電体グレイン11の面積を測定し、上記面積を有する円相当直径に換算した値を誘電体グレイン11の直径とすることができる。コア-シェル構造の誘電体グレイン11における上記希土類元素の成分、すなわち、Dy、Euの含有量は、
図5に示したように、一つのグレイン11の一側から他側に向かって線を引き、等間隔で9つの点(P1~P9)を打って、P1~P9におけるDy、Euの少なくとも一つの含有量をSTEM/EDSを用いて分析することができる。より具体的に説明すると、
図2のP領域をSTEMを用いてスキャンしてイメージを得た後、STEM/EDS分析によって位置P1~P9で検出しようとする元素の含有量を分析することができる。このような分析によってコア部11aとシェル部11bの境界を決定することができ、例えば、誘電体グレイン11の表面から内部に向かうにつれて上記希土類元素の成分が実質的に検出されない領域をその境界として決定することができる。
【0033】
一方、上述した誘電体組成物に含まれた副成分は、酸化物または炭酸塩の形態で添加されることができるが、焼結した後には、酸化物または炭酸塩の形態ではないBaTiO3系主成分に固溶された形態で存在することができる。但し、副成分の主要元素の含有量の割合は、ほぼ類似して維持されることができ、焼結前の誘電体組成物に含まれた主成分及び副成分の含有量に基づいて、焼結後の誘電体層の各元素含有量を計算することができる。また、誘電体層111に含まれた各元素の含有量は、非破壊工法、破壊工法などを用いて測定することができる。例えば、非破壊工法の場合、TEM-EDSを用いてチップの中央部で誘電体グレインの内部の成分を分析することができる。具体的には、焼結が完了された本体の一断面のうち、誘電体層を含む領域で集束イオンビーム(FIB)装備を用いて薄片化された分析試料を用意する。そして、薄片化された試料をArイオンミリングを用いて表面のダメージ層を除去し、この後、STEM-EDSを用いて得られたイメージで各成分のマッピング及び定量分析を行う。この場合、各成分の定量分析グラフは、各元素の質量分率で得られることができるが、これをモル分率または原子分率に換算して示すことができる。また、破壊工法の場合、積層型キャパシタを粉砕して内部電極を除去した後、誘電体部分を選別し、このように選別された誘電体を誘導結合プラズマ分光分析器(ICP-OES)、誘導結合プラズマ質量分析器(ICP-MS)などの装置を用いて誘電体の成分を分析することができる。
【0034】
以下、本体110の他の構成要素を説明し、上述した誘電体組成物は、誘電体層111以外にもカバー部112、113、マージン部114、115の形成時にも用いられることができる。
【0035】
カバー部112、113は、上記容量形成部Acの第1方向の上部に配置される上部カバー部112及び上記容量形成部Acの第1方向の下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの上下面にそれぞれ厚さ方向に積層して形成することができ、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。上部カバー部112及び下部カバー部113は内部電極を含まず、誘電体層111と同一材料を含むことができる。すなわち、上部カバー部112及び下部カバー部113は、セラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。一方、カバー部112、113の厚さは特に限定する必要はない。但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さは20μm以下であることができる。
【0036】
容量形成部Acの側面には、マージン部114、115が配置されることができる。マージン部114、115は、本体110の第5面5に配置されたマージン部114と第6面6に配置されたマージン部115を含むことができる。すなわち、マージン部114、115は、上記セラミック本体110の幅方向の両側面に配置されることができる。マージン部114、115は、
図3に示したように、上記本体110を幅-厚さ(W-T)方向に切断した断面で第1及び第2内部電極121、122の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。マージン部114、115は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。マージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にマージン部が形成されるところを除いて導電性ペーストを塗布して内部電極を形成することによって形成されたものであることができる。また、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極が本体の第5面5及び第6面6に露出するように切断した後、単一誘電体層または2つ以上の誘電体層を容量形成部Acの両側面に幅方向(第3方向)に積層してマージン部114、115を形成することもできる。
【0037】
一方、誘電体層111の厚さtdは特に限定する必要はない。但し、一般的に誘電体層を0.6μm未満の厚さで薄く形成する場合、特に誘電体層の厚さが0.5μm以下である場合には信頼性が低下するおそれがあった。上述したように、本発明の一実施形態によると、優れた常温誘電率、DC-bias特性、高温耐電圧特性などを確保することができるため、誘電体層111の厚さが0.5μm以下である場合にも優れた信頼性を確保することができる。したがって、誘電体層111の厚さが0.5μm以下である場合に、本発明による信頼性の向上効果がより顕著になることができる。誘電体層111の厚さtdは、上記第1内部電極121及び第2内部電極122の間に配置される誘電体層111の平均厚さを意味することができる。誘電体層111の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いてイメージをスキャンして測定することができる。例えば、本体110の第3方向(幅方向)の中央部で切断した第1方向及び第2方向(長さ及び厚さ方向)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いてスキャンしたイメージから抽出された任意の誘電体層について、長さ方向に等間隔である30つの地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔である30つの地点で測定した厚さは、第1内部電極121及び第2内部電極122が互いに重なる領域を意味する容量形成部Acで測定されることができる。
【0038】
内部電極121、122は誘電体層111と交互に積層される。内部電極121、122は、第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができる。第1内部電極121及び第2内部電極122は、本体110を構成する誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3面3及び第4面4でそれぞれ露出することができる。
図2を参照すると、第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3を介して露出し、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4を介して露出することができる。このとき、第1内部電極121及び第2内部電極122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離することができる。
図4を参照すると、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシート及び第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートを交互に積層した後、焼成して形成することができる。内部電極121、122を形成する材料は特に制限されず、電気導電性に優れた材料を用いることができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金のうち1つ以上を含むことができる。また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち1つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0039】
一方、内部電極121、122の厚さteは特に限定する必要はない。但し、一般的に内部電極を0.6μm未満の厚さで薄く形成する場合、特に内部電極の厚さが0.5μm以下である場合には、信頼性が低下するおそれがあった。上述したように、本発明の一実施形態によると、優れた常温誘電率、DC-bias特性、高温耐電圧特性などを確保することができるため、内部電極121、122の厚さが0.5μm以下である場合にも優れた信頼性を確保することができる。したがって、内部電極121、122の厚さが0.5μm以下である場合に本発明による効果がより顕著となることができ、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成することができる。内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の平均厚さを意味することができる。内部電極121、122の平均厚さは、本体110の長さ及び厚さ方向(L-T)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いてイメージをスキャンして測定することができる。例えば、本体110の第3方向(幅方向)の中央部で切断した第1及び第2方向(長さ及び厚さ方向)の断面を走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)を用いてスキャンしたイメージから抽出された任意の第1内部電極121及び第2内部電極122について、長さ方向に等間隔である30つの地点でその厚さを測定して平均値を測定することができる。上記等間隔である30つの地点は、内部電極121、122が互いに重なる領域を意味する容量形成部Acで測定されることができる。
【0040】
外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4に配置されることができる。外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ配置され、第1内部電極121及び第2内部電極122とそれぞれ連結された第1外部電極131及び第2外部電極132を含むことができる。
図1を参照すると、外部電極131、132は、サイドマージン部114、115の第2方向の両端面を覆うように配置されることができる。本実施形態では、積層型電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造を説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態や他の目的に応じて変更されることができる。一方、外部電極131、132は、金属などのように電気導電性を有するものであれば、どのような物質を用いて形成されることができ、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されることができ、さらに多層構造を有することができる。例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a及び電極層131a、132a上に形成されためっき層131b、132bを含むことができる。電極層131a、132aに対するより具体的な例を挙げると、電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成(firing)電極であるか、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であることができる。
【0041】
また、電極層131a、132aは、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順次形成された形態であることができる。また、電極層131a、132aは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されるか、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであることができる。電極層131a、132aに含まれる導電性金属として、電気導電性に優れた材料を用いることができ、特に限定されない。例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)及びこれらの合金のうち1つ以上であることができる。めっき層131b、132bは、実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層131b、132bの種類は特に限定されず、Ni、Sn、Pd及びこれらの合金のうち1つ以上を含むめっき層であることができ、複数の層で形成されることもできる。めっき層131b、132bに対するより具体的な例を挙げると、めっき層131b、132bは、Niめっき層またはSnめっき層であることができ、電極層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であることができ、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であることができる。また、めっき層131b、132bは、複数のNiめっき層及び/または複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0042】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。但し、小型化及び高容量化を同時に達成するためには、誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増加させる必要があるため、例えば、0402(長さ×幅、0.4mm×0.2mm)以下のサイズを有する積層型電子部品100において、本発明によるDC-bias特性、高温耐電圧特性などの向上効果がより顕著になることができる。したがって、製造誤差、外部電極大きさなどを考慮すると、積層型電子部品100の長さが0.44mm以下であり、幅が0.22mm以下である場合、本発明による信頼性の向上効果がより顕著になることができる。ここで、積層型電子部品100の長さは、積層型電子部品100の第2方向の最大大きさを意味し、積層型電子部品100の幅は、積層型電子部品100の第3方向の最大大きさを意味することができる。
【0043】
以下、本発明の発明者が行った実験例によって本発明をさらに詳細に説明するが、これは発明の具体的な理解を助けるためのものであって、本発明の範囲が実験例によって限定されるものではない。
【0044】
母材主成分は30nm以上100nm以下のBaTiO3粉末を用い、このとき、副成分の具体的な組成は下記表1のとおりである。セラミックスラリー製作時に、母材主成分及び副成分パウダーをジルコニアボールを用いて混合/分散し、エタノール/トルエンと分散剤を混合した後、機械的ミリング(milling)を施した。この場合、上記主成分と希土類の副成分の他に、Si、Al、Na、Liなどを含む焼結助剤の成分を添加した。また、誘電体シートの強度を高めるためにバインダー混合工程を追加した。製造されたスラリーを用いて積層体用セラミックグリーンシートを形成し、その上に内部電極用ペーストを塗布した。そして、ヘッド吐出方式のオン-ロール(on-roll)成形コーター(coater)を用いて約0.8μm以下の厚さで製作し、このように得られた成形シートをサイドマージン用として積層体の内部電極露出部に付着した。これによって、横、縦、高さがそれぞれ0.6mm、0.3mm、0.3mmである焼成前の積層体が得られた。
【0045】
表1のサンプルの場合、希土類の副成分の含有量は、BaTiO
3主成分100モルに基づいて添加されたモル含有量及び各サンプルに対する実験結果を示す。上記のように製作が完了されたグリーンチップ形態の積層体を900℃ 以下、窒素雰囲気でバインダーバーンアウト(burn out)過程を経て焼成温度1200℃以下、水素濃度1.0%H
2以下の条件で焼成した。この後に得られた試料について構造的特性、すなわち、焼結性(緻密度、微細構造の均一性)及び電気的特性(誘電率、高温信頼性、温度特性)を測定して下記のような結果を得た。具体的には、各サンプルの常温静電容量及び誘電損失は、LCRメーター(meter)を用いて1kHz、AC0.5Vで測定し、耐電圧特性は絶縁破壊が発生するBDV(Breakdown voltage)を測定した。高温信頼性の場合、MTTF(Mean Time To Failure)を測定し、TCC温度特性については-55℃-+105℃で各温度区間で5分維持する条件で昇/減温しながら測定して25℃常温に対する容量変化率を確認した。構造的特性の場合、サンプルの破断面及び研磨面について、緻密度及びグレインの大きさの均一性を測定した。そして、
図6~
図8は、Dy及びEuのモル含有量が誘電体の信頼性に及ぼす影響を示すTCC(
図6a、
図7a、
図8a)及びMTTF(
図6b、
図7b、
図8b)の実験結果を示した図面である。ここで、
図6~
図8の実験で使用したサンプルは、いずれも0.10<Eu/(Dy+Eu)≦0.50の条件を満たし、但し、Dy+Euの含有量の条件が互いに異なる。具体的には、
図6a及び
図6bのサンプルはDy+Eu<0.60モル、
図7a及び
図7bのサンプルは0.60モル≦Dy+Eu≦1.0、
図8a及び
図8bのサンプルは1.0モル<Dy+Euモルの条件をそれぞれ満たし、
図7が本発明の実施形態に該当する。そして、
図6a、
図7a、
図8aのTCCグラフの場合、横軸は温度、縦軸は相対容量(%)を示す。一方、下記表1において、各記号の基準は以下のとおりである。
◎:優秀、○:良好、△:普通、×:不良
【0046】
【0047】
上記実験結果及び
図6~
図8を検討しますと、本実施形態で提案する希土類の副成分の含有量の条件、すなわち、0.10<Eu/(Dy+Eu)≦0.50の条件及び0.60モル≦Dy+Eu≦1.0モルを満たす実施例(*で示したサンプル7-8、12-14)では、構造的特性及び電気的特性のすべてが良好または優秀の結果を示した。上述したように、Eu及びDyを併せて添加する場合、電気的特性の向上に有利であることができるが、その総含有量及び割合を適切に調節しないと所望の特性を得ることが困難であり、Eu及びDyのモル含有量の合計が1.0モル%、すなわち、上記BaTiO
3系主成分100モル当たり1.0モルを超える場合、温度特性を満たすのに困難があることが確認できる。一方、Eu及びDyの量が低すぎる場合、すなわち、Eu及びDyのモル含有量の合計が0.60モル%、すなわち、上記BaTiO
3系主成分100モル当たり0.60モル未満である場合、絶縁抵抗特性が低下されることが確認できる。また、このような条件を満たしてもEu/(Dy+Eu)値が0.10以下である場合には、Dyを単独添加する場合に比べて誘電率の向上効果が僅かであるのに対し、高温信頼性は低下されることが確認できる。Eu/(Dy+Eu)値が0.10を超える場合、誘電率及び信頼性特性のすべてが向上する可能性があり、これは、上述したように、Dyを単独で添加した場合よりも酸素空孔が効果的に除去されたためであると理解される。しかし、Eu/(Dy+Eu)値が0.5を超えると、誘電率が減少され、誘電体の一部の半導体化による絶縁抵抗のレベルが減少するという問題が発見された。このような結果に基づいて、Eu/(Dy+Eu)の適正条件は0.60モル≦Dy+Eu≦1.0モルに設定することができる。
【0048】
本発明は、上述の実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で様々な形態の置換、変形及び変更が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には自明であり、これも添付の特許請求の範囲に記載された技術的思想に属するといえる。
【符号の説明】
【0049】
100 積層型キャパシタ
110 本体
111 誘電体層
112、113 カバー部
114、115 サイドマージン部
121、122 内部電極
131、132 外部電極
131a 電極層
132b めっき層