(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097354
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】血管を安定化させるため、または血管のバリア機能を強化するための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 36/235 20060101AFI20230630BHJP
A61K 36/72 20060101ALI20230630BHJP
A61K 36/288 20060101ALI20230630BHJP
A61K 36/45 20060101ALI20230630BHJP
A61K 36/73 20060101ALI20230630BHJP
A61K 36/28 20060101ALI20230630BHJP
A61K 36/53 20060101ALI20230630BHJP
A61K 36/482 20060101ALI20230630BHJP
A61K 36/346 20060101ALI20230630BHJP
A61K 36/42 20060101ALI20230630BHJP
A61K 36/31 20060101ALI20230630BHJP
A61K 36/815 20060101ALI20230630BHJP
A61K 36/896 20060101ALI20230630BHJP
A61K 35/57 20150101ALI20230630BHJP
A61K 36/062 20060101ALI20230630BHJP
A61K 36/064 20060101ALI20230630BHJP
A61K 36/899 20060101ALI20230630BHJP
A61K 36/48 20060101ALI20230630BHJP
A61K 31/336 20060101ALI20230630BHJP
A61P 9/14 20060101ALI20230630BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20230630BHJP
【FI】
A61K36/235
A61K36/72
A61K36/288
A61K36/45
A61K36/73
A61K36/28
A61K36/53
A61K36/482
A61K36/346
A61K36/42
A61K36/31
A61K36/815
A61K36/896
A61K35/57
A61K36/062
A61K36/064
A61K36/899
A61K36/48
A61K31/336
A61P9/14
A23L33/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177651
(22)【出願日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2021213310
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】宮永 美帆
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
4C087
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD48
4B018MD52
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4B018ME14
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4C087NA14
4C087ZA36
4C088AB12
4C088AB13
4C088AB15
4C088AB19
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4C088AB38
4C088AB40
4C088AB44
4C088AB48
4C088AB51
4C088AB59
4C088AB61
4C088AB66
4C088AB74
4C088AB85
4C088AC03
4C088AC04
4C088AC05
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4C088AD13
4C088AD17
4C088AD18
4C088BA08
4C088CA03
4C088MA02
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA36
(57)【要約】
【課題】血管を安定化させるため、または血管のバリア機能を強化するための組成物を提供する。
【解決手段】血管を安定化させるため、または血管のバリア機能を強化するための組成物であって、タンポポ、サネブトナツメ、トンカットアリ、ビルベリー、カシス、エルダーベリー、アロニア、マリアアザミ、ツバメの巣、シーベリー、ローズマリー、ケツメイシ、ドクダミ、キキョウ、リンゴンベリー、クロマメノキ、ゴーヤ、セージ、マカ、黒クコ、ハイビスカス、ウイキョウ、ナルコユリ、ホップ、およびもろみのエキスからなる群から選択される1種以上のエキス、ならびに/またはフコキサンチンを含んでなる、組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管を安定化させるため、または血管のバリア機能を強化するための組成物であって、タンポポ、サネブトナツメ、トンカットアリ、ビルベリー、カシス、エルダーベリー、アロニア、マリアアザミ、ツバメの巣、シーベリー、ローズマリー、ケツメイシ、ドクダミ、キキョウ、リンゴンベリー、クロマメノキ、ゴーヤ、セージ、マカ、黒クコ、ハイビスカス、ウイキョウ、ナルコユリ、ホップ、およびもろみのエキスからなる群から選択される1種以上のエキス、ならびに/またはフコキサンチンを含んでなる、組成物。
【請求項2】
血管を安定化させるための、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
血管のバリア機能を強化するための、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
タンポポ、サネブトナツメ、トンカットアリ、カシス、エルダーベリー、ツバメの巣、シーベリー、ローズマリー、ドクダミ、キキョウ、ゴーヤ、およびセージのエキスからなる群から選択される1種以上のエキス、ならびに/またはフコキサンチンを含んでなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
トンカットアリ、カシス、エルダーベリー、およびローズマリーのエキスからなる群から選択される1種以上のエキス、ならびに/またはフコキサンチンを含んでなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物の全量に対する前記成分の含有率が、
(i)前記成分がタンポポ、サネブトナツメ、トンカットアリ、ビルベリー、カシス、エルダーベリー、アロニア、マリアアザミ、ツバメの巣、シーベリー、ローズマリー、ケツメイシ、ドクダミ、キキョウ、リンゴンベリー、クロマメノキ、ゴーヤ、セージ、マカ、黒クコ、ハイビスカス、ウイキョウ、ナルコユリ、ホップ、およびもろみのエキスからなる群から選択される場合、乾燥物として0.0002~610μg/mgであり、
(ii)前記成分がフコキサンチンである場合、乾燥物として0.0002~30.30μg/mgである、
請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
食品組成物である、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
保健機能食品である、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
特定保健用食品、栄養機能食品、および機能性表示食品のいずれかである、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管を安定化させるため、または血管のバリア機能を強化するための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生命がその活動を正常に維持するためには、各臓器へ十分な酸素や栄養を供給し、さらにその活動で生じる老廃物を適切に運搬・処理することが重要であるが、この機能を担う器官が血管である。血管は、血液を通して全身の臓器に酸素や栄養素を送るだけでなく、組織中からの老廃物を運び体外へ排泄する役割を担っており、人体が生命活動を維持するにあたって重要な組織である。
【0003】
血管には、心臓から送り出された血液が流れる動脈、心臓へ戻る血液が通る静脈の他に、血管のうち90%以上(人間の場合)を占める毛細血管がある。毛細血管は主に血管内皮細胞と血管壁細胞により構成される。
【0004】
血管内皮細胞は、例えば、互いに接着し血管内環境因子(細胞および液性因子)が容易には血管外に漏出しないような内皮細胞間の接着斑を形成すること等によって、血管のバリアとして働き、また、物質の透過性すなわちバリア機能を調節することで、生命の健康維持に重要な役割を担うことが近年分かってきた。血管バリア機能の障害により、炎症、動脈硬化など様々な血管の病気の引き金となるだけではなく、末梢細胞への酸素、栄養の不足が生じることが知られている。
【0005】
また、血管壁細胞と総称される血管平滑筋細胞やペリサイトは、血管内皮細胞の外腔面から、細胞外マトリックスを介してまたは直接的に血管内皮細胞に接着している。血管径の大きさによっては血管内皮細胞と血管壁細胞の接着する比率は異なり、大血管系では、1層の血管内皮細胞に、複数層の血管壁細胞が裏打ちしており、中、小血管では、血管内皮細胞1細胞に血管壁細胞が1細胞裏打ちするものが多く、また、さらに径の細い血管では、1個の血管壁細胞が複数の血管内皮細胞に接着している。このように、血管壁細胞が血管内皮細胞に対し裏打ちすることは血管の構造上重要である。例えば、組織の酸素や栄養分の需要に応じて、とくにそれらが不足する際には、血管は管腔を拡大化させることで血流を増加させ、酸素、養分を組織に十分に行き渡らせるように調節することが可能である。
【0006】
一方で、肌が不健康な状態においては、血管内皮細胞同士の接着の抑制、血管壁細胞の血管内皮細胞への接着の欠損等により、不安定な血管の形成が生じていることがある。不安定な血管においては無秩序な血管透過性の亢進がしばしば見られるが、これは皮膚において浮腫や炎症等が生じる原因となる。さらに、血管壁細胞は既存の血管からの血管の発芽を抑制しているため、血管壁細胞の伴わない血管からは血管の発芽が過剰となり、無秩序な血管の発芽が誘導され、その結果、肌の不健康な状態が悪化する原因ともなりうる。
【0007】
また、上記の異常な血管においては、血流内外環境因子の変化が血管内皮細胞や血管壁細胞に障害(細胞死など)を与えることがある。加えて、血管新生促進因子の過度の産生上昇が引き金になって上記の異常な血管が生じることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016-094477号公報
【特許文献2】特開2020-130166号公報
【発明の概要】
【0009】
本発明は、血管を安定化させるため、または血管のバリア機能を強化するための組成物を提供する。
【0010】
本発明者らは、驚くべきことに、特定の成分を含んでなる組成物が血管を安定化、または血管のバリア機能を強化できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
【0011】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)血管を安定化させるため、または血管のバリア機能を強化するための組成物であって、タンポポ、サネブトナツメ、トンカットアリ、ビルベリー、カシス、エルダーベリー、アロニア、マリアアザミ、ツバメの巣、シーベリー、ローズマリー、ケツメイシ、ドクダミ、キキョウ、リンゴンベリー、クロマメノキ、ゴーヤ、セージ、マカ、黒クコ、ハイビスカス、ウイキョウ、ナルコユリ、ホップ、およびもろみのエキスからなる群から選択される1種以上のエキス、ならびに/またはフコキサンチンを含んでなる、組成物。
(2)血管を安定化させるための、(1)に記載の組成物。
(3)血管のバリア機能を強化するための、(1)に記載の組成物。
(4)タンポポ、サネブトナツメ、トンカットアリ、カシス、エルダーベリー、ツバメの巣、シーベリー、ローズマリー、ドクダミ、キキョウ、ゴーヤ、およびセージのエキスからなる群から選択される1種以上のエキス、ならびに/またはフコキサンチンを含んでなる、(1)~(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)トンカットアリ、カシス、エルダーベリー、およびローズマリーのエキスからなる群から選択される1種以上のエキス、ならびに/またはフコキサンチンを含んでなる、(1)~(3)のいずれかに記載の組成物。
(6)前記組成物の全量に対する前記成分の含有率が、
(i)前記成分がタンポポ、サネブトナツメ、トンカットアリ、ビルベリー、カシス、エルダーベリー、アロニア、マリアアザミ、ツバメの巣、シーベリー、ローズマリー、ケツメイシ、ドクダミ、キキョウ、リンゴンベリー、クロマメノキ、ゴーヤ、セージ、マカ、黒クコ、ハイビスカス、ウイキョウ、ナルコユリ、ホップ、およびもろみのエキスからなる群から選択される場合、乾燥物として0.0002~610μg/mgであり、
(ii)前記成分がフコキサンチンである場合、乾燥物として0.0002~30.30μg/mgである、
(1)~(5)のいずれかに記載の組成物。
(7)食品組成物である、(1)~(6)のいずれかに記載の組成物。
(8)保健機能食品である、(1)~(7)のいずれかに記載の組成物。
(9)特定保健用食品、栄養機能食品、および機能性表示食品のいずれかである、(1)~(7)のいずれかに記載の組成物。
(10)タンポポ、サネブトナツメ、トンカットアリ、ビルベリー、カシス、エルダーベリー、アロニア、マリアアザミ、ツバメの巣、シーベリー、ローズマリー、ケツメイシ、ドクダミ、キキョウ、リンゴンベリー、クロマメノキ、ゴーヤ、セージ、マカ、黒クコ、ハイビスカス、ウイキョウ、ナルコユリ、ホップ、およびもろみのエキスからなる群から選択される1種以上のエキス、ならびに/またはフコキサンチンを含んでなる、組成物の血管の安定化のため、または血管のバリア機能の強化のための使用。
(11)血管を安定化させるための、(10)に記載の使用。
(12)血管のバリア機能を強化するための、(10)に記載の使用。
(13)前記組成物が、タンポポ、サネブトナツメ、トンカットアリ、カシス、エルダーベリー、ツバメの巣、シーベリー、ローズマリー、ドクダミ、キキョウ、ゴーヤ、およびセージのエキスからなる群から選択される1種以上のエキス、ならびに/またはフコキサンチンを含んでなる、(10)~(12)のいずれかに記載の使用。
(14)前記組成物が、トンカットアリ、カシス、エルダーベリー、およびローズマリーのエキスからなる群から選択される1種以上のエキス、ならびに/またはフコキサンチンを含んでなる、(10)~(12)のいずれかに記載の使用。
(15)前記組成物の全量に対する前記成分の含有率が、
(i)前記成分がタンポポ、サネブトナツメ、トンカットアリ、ビルベリー、カシス、エルダーベリー、アロニア、マリアアザミ、ツバメの巣、シーベリー、ローズマリー、ケツメイシ、ドクダミ、キキョウ、リンゴンベリー、クロマメノキ、ゴーヤ、セージ、マカ、黒クコ、ハイビスカス、ウイキョウ、ナルコユリ、ホップ、およびもろみのエキスからなる群から選択される場合、乾燥物として0.0002~610μg/mgであり、
(ii)前記成分がフコキサンチンである場合、乾燥物として0.0002~30.30μg/mgである、
(10)~(14)のいずれかに記載の使用。
(16)前記組成物が食品組成物である、(10)~(15)のいずれかに記載の使用。
(17)前記組成物が保健機能食品である、(10)~(16)のいずれかに記載の使用。
(18)前記組成物が特定保健用食品、栄養機能食品、および機能性表示食品のいずれかである、(10)~(16)のいずれかに記載の使用。
(19)対象において、血管を安定化する、または血管のバリア機能を強化する方法であって、タンポポ、サネブトナツメ、トンカットアリ、ビルベリー、カシス、エルダーベリー、アロニア、マリアアザミ、ツバメの巣、シーベリー、ローズマリー、ケツメイシ、ドクダミ、キキョウ、リンゴンベリー、クロマメノキ、ゴーヤ、セージ、マカ、黒クコ、ハイビスカス、ウイキョウ、ナルコユリ、ホップ、およびもろみのエキスからなる群から選択される1種以上のエキス、ならびに/またはフコキサンチンを含んでなる、組成物の有効量を投与することを含む、方法。
(20)血管を安定化させるための、(19)に記載の方法。
(21)血管のバリア機能を強化するための、(19)に記載の方法。
(22)前記組成物が、タンポポ、サネブトナツメ、トンカットアリ、カシス、エルダーベリー、ツバメの巣、シーベリー、ローズマリー、ドクダミ、キキョウ、ゴーヤ、およびセージのエキスからなる群から選択される1種以上のエキス、ならびに/またはフコキサンチンを含んでなる、(19)~(21)のいずれかに記載の方法。
(23)前記組成物が、トンカットアリ、カシス、エルダーベリー、およびローズマリーのエキスからなる群から選択される1種以上のエキス、ならびに/またはフコキサンチンを含んでなる、(19)~(21)のいずれかに記載の方法。
(24)前記組成物の全量に対する前記成分の含有率が、
(i)前記成分がタンポポ、サネブトナツメ、トンカットアリ、ビルベリー、カシス、エルダーベリー、アロニア、マリアアザミ、ツバメの巣、シーベリー、ローズマリー、ケツメイシ、ドクダミ、キキョウ、リンゴンベリー、クロマメノキ、ゴーヤ、セージ、マカ、黒クコ、ハイビスカス、ウイキョウ、ナルコユリ、ホップ、およびもろみのエキスからなる群から選択される場合、乾燥物として0.0002~610μg/mgであり、
(ii)前記成分がフコキサンチンである場合、乾燥物として0.0002~30.30μg/mgである、
(19)~(23)のいずれかに記載の方法。
(25)前記組成物が食品組成物である、(19)~(24)のいずれかに記載の方法。
(26)前記組成物が保健機能食品である、(19)~(25)のいずれかに記載の方法。
(27)前記組成物が特定保健用食品、栄養機能食品、および機能性表示食品のいずれかである、(19)~(25)のいずれかに記載の方法。
【0012】
本発明によれば、血管を安定化させるため、または血管のバリア機能を強化するための組成物が提供される。また、本発明の組成物は血管を安定化させるため、または血管のバリア機能を強化するために使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、タンポポエキスを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【
図2】
図2は、サネブトナツメエキスを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【
図3】
図3は、トンカットアリエキスを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【
図4】
図4は、ビルベリーエキスを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【
図5】
図5は、カシスエキスを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【
図6】
図6は、エルダーベリーエキスを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【
図7】
図7は、アロニアエキスを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【
図8】
図8は、フコキサンチンを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【
図9】
図9は、マリアアザミエキスを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【
図10】
図10は、ツバメの巣エキスを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【
図11】
図11は、シーベリーエキスを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【
図12】
図12は、ローズマリーエキスを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【
図13】
図13は、ケツメイシエキスを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【
図14】
図14は、ドクダミエキスを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【
図15】
図15は、キキョウエキスを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【
図16】
図16は、リンゴンベリーエキスを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【
図17】
図17は、クロマメノキエキスを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【
図18】
図18は、ゴーヤエキスを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【
図19】
図19は、セージエキスを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【
図20】
図20は、マカエキスを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【
図21】
図21は、黒クコエキスを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【
図22】
図22は、ハイビスカスエキスを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【
図23】
図23は、ウイキョウエキスを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【
図24】
図24は、ナルコユリエキスを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【
図25】
図25は、ホップエキスを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【
図26】
図26は、もろみエキスを培地に添加した後の、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞の電気抵抗性の経時変化を表す。
【発明の具体的説明】
【0014】
本発明は、血管を安定化させるため、または血管のバリア機能を強化するための組成物であって、タンポポ、サネブトナツメ、トンカットアリ、ビルベリー、カシス、エルダーベリー、アロニア、マリアアザミ、ツバメの巣、シーベリー、ローズマリー、ケツメイシ、ドクダミ、キキョウ、リンゴンベリー、クロマメノキ、ゴーヤ、セージ、マカ、黒クコ、ハイビスカス、ウイキョウ、ナルコユリ、ホップ、およびもろみのエキスからなる群から選択される1種以上のエキス、ならびに/またはフコキサンチンを含んでなる、組成物、が提供される。
【0015】
本発明の別の実施態様によれば、血管を安定化させるため、または血管のバリア機能を強化するための組成物であって、タンポポ、サネブトナツメ、トンカットアリ、カシス、エルダーベリー、ツバメの巣、シーベリー、ローズマリー、ドクダミ、キキョウ、ゴーヤ、およびセージのエキスからなる群から選択される1種以上のエキス、ならびに/またはフコキサンチンを含んでなる、組成物、が提供される。
【0016】
本発明のさらに別の実施態様によれば、血管を安定化させるため、または血管のバリア機能を強化するための組成物であって、トンカットアリ、カシス、エルダーベリー、およびローズマリーのエキスからなる群から選択される1種以上のエキス、ならびに/またはフコキサンチンを含んでなる、組成物、が提供される。
【0017】
本発明の「血管の安定化」という用途は、直接的にまたは間接的に、血管を安定な状態にすることを意味し、血管の状態が健常者のそれと同等でない対象の血管の状態が、健常者と同等の血管の状態に戻るもしくは近づくこと、または血管の状態が健常者のそれと同等である対象の血管の状態が、維持もしくは健常者と同等の血管の状態よりも良好になることをいう。該血管が存在する場所は皮膚をはじめ身体のどこであってよい。本発明における対象は、限定されるわけではないが、ヒト、チンパンジーを含む霊長類、イヌ、ネコなどのペット動物、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギなどの家畜動物、マウス、ラットなどの齧歯類等の哺乳動物を意味し、ヒトであることが好ましい。
【0018】
本発明における「血管のバリア機能の強化」という用途は、血管における細胞同士の接着を直接的にまたは間接的に、調節することにより血管のバリア機能を向上させることを意味する。本発明における「血管のバリア機能の強化」というが用途が、血管における細胞同士の接着を調節することで達成されることに対し、本発明の「血管の安定化」という用途は、血管における細胞同士の接着を調節することの有無によらず達成されるという点で両者は異なる。
【0019】
本発明の組成物の「血管の安定化」および「血管のバリア機能の強化」という用途は、例えば、本発明の組成物に含まれる成分によるTie2活性化、血管透過性抑制、血管の成熟化、血管の正常化、血管の健全化等の作用によって達成されてもよいが、これらに限定されない。
【0020】
一般的に、「Tie2」とは、受容体型チロシンキナーゼ(Tyrosine kinase with Ig and ECF homology domain 2)を意味する。本発明において「Tie2活性化」とは、Tie2をリン酸化することで、その活性体(リン酸化Tie2)に変換できる能力をいう。毛細血管の構造の安定化には血管内皮細胞に存在するTie2と呼ばれる受容体の活性化が重要な役割を果たしている。このTie2は血管内皮細胞のほかリンパ管内皮細胞にも存在が示され、血管壁細胞から放出されるアンジオポエチン-1によって活性化され、血管内皮細胞同士の接着や血管壁細胞との接着を強め、血管構造の安定化に関与している。このTie2の活性は、例えば、年齢と共に低下するという知見も報告され、それに伴い血管やリンパ管も老化することが明らかとなっている。また、Tie2活性化により血管内皮細胞の安定化、血管透過性の抑制等が観察される。よって、例えば、血管内皮細胞が強固に結びつくことにより肌に栄養が行き渡り、肌のハリやキメの改善、しわ防止等をすることも可能である。また、血管やリンパ管の内皮細胞の隙間が塞がれることにより血流が改善し、組織中からの水分や老廃物が回収されて、冷え、肩こり、むくみ、クマなどの諸症状を改善、予防することも可能である。したがって、Tie2活性化作用により血管やリンパ管の状態を改善することによって、本発明の「血管の安定化」または「血管のバリア機能の増強」という用途を達成し得る。
【0021】
本発明において、「血管透過性抑制」とは、VEGF(血管内皮成長因子)等によって引き起こされる血管透過性の亢進を抑制することをいう。「血管の成熟化」とは、血管内皮細胞と血管壁細胞との接着を誘導して、血管内環境因子が容易には血管外に漏出しないような血管内皮細胞間の接着斑を形成することをいう。「血管の正常化」とは、血管内皮細胞同士の接着を高め、血管壁細胞の血管内皮細胞への裏打ちを促進することにより、血管透過性の破綻した血管や血管の無秩序な増生を招くような異常な血管を、正常な状態にすることをいう。「血管の健全化」とは、既存の血管に対する傷害、血管内皮細胞同士の乖離、及び血管内皮細胞と血管壁細胞の乖離の抑制、および血管内皮細胞の細胞死の抑制をいう。これらの作用によっても、本発明の「血管の安定化」または「血管のバリア機能の増強」という用途を達成し得る。
【0022】
また、血管の安定化、または血管のバリア機能の強化によって血流が改善されることから、本発明の組成物を摂取した対象では血流改善が生じる。したがって、本発明の組成物は、血流改善のためにも使用することができる。
【0023】
本発明において血流改善とは、血液の流れが改善されることをいい、血流レベルが健常者のそれと同等でない対象の血流レベルが、健常者と同等の血流レベルに戻るまたは近づくことをいう。これは、正常時の血流レベルと同等でない血流レベルにある対象の血流レベルが、正常時の血流レベルに戻ることであってもよい。対象が本発明の組成物を摂取してから、健常者と同等の血流レベルまたは正常時の血流レベルに戻るまでの時間は短いことが好ましい。血流は血行と称することもある。血流は、限定されるわけではないが、例えば、血流計(例えば、超音波血流計、レーザー血流計など)、位相コントラストMRI、Vector Flow Mapping、Echo PIVなどを用いて測定することができる。血流は、末梢(例えば、指先)の血流であってよく、皮膚血流であってよい。
【0024】
本発明の「タンポポ」は、キク科のタンポポ属(Taraxacum spp.)植物を意味する。使用部位としては、限定されるわけではないが、根が好ましい。
【0025】
本発明の「サネブトナツメ」は、クロウメモドキ科ナツメ属のサネブトナツメ(Zizyphus jujuba Miller var.spinosa(Bunge)Hu ex H.F.Chou)を意味する。使用部位としては、限定されるわけではないが、種子が好ましい。
【0026】
本発明の「トンカットアリ」は、ニガキ科に属する植物の一種であるトンカットアリ(Eurycoma longifolia Jack)を意味する。使用部位としては、限定されるわけではないが、根が好ましい。
【0027】
本発明の「ビルベリー」は、つつじ科コケモモ属(スノキ属)の、ブルーベリーの一種であるビルベリー(Vaccinium myrtillus)を意味する。使用部位としては、限定されるわけではないが、果実が好ましい。
【0028】
本発明の「カシス」は、ユキノシタ科スグリ属のカシス(Ribes nigrum)を意味する。使用部位としては、限定されるわけではないが、果実または果皮が好ましい。
【0029】
本発明の「エルダーベリー」は、レンプクソウ科に属する植物の一種であるエルダーベリー(Sambucus nigra)を意味する。使用部位としては、限定されるわけではないが、全果実、または果実の果皮や種子が好ましい。
【0030】
本発明の「アロニア」は、バラ科アロニア属の植物であるアロニア(Aronia melanocarpa)を意味する。使用部位としては、限定されるわけではないが、果実が好ましい。
【0031】
本発明の「マリアアザミ」は、キク科マリアアザミ属の植物であるマリアアザミ(Silybum marianum)を意味する。使用部位としては、限定されるわけではないが、種子が好ましい。
【0032】
本発明の「ツバメの巣」は、アナツバメが自らの唾液を糸状にして作る巣を意味し、その成分としては、糖タンパク質を多く含み、脂質はほとんど含まれていない。本発明のツバメの巣のエキスは、ツバメの巣またはその処理物(例えばツバメの巣の水抽出物)を、プロテアーゼやプロテアーゼを含む複合酵素等を用いて分解したツバメの巣の酵素分解物を使用してもよい。
【0033】
本発明の「シーベリー」は、グミ科ヒッポファエ属のシーベリー(Hippophae rhamnoides)を意味する。使用部位としては、限定されるわけではないが、果実が好ましい。
【0034】
本発明の「ローズマリー」は、シソ科ロスマリヌス属の植物であるローズマリー(Rosmarinus officinalis)を意味する。使用部位としては、限定されるわけではないが、葉が好ましい。
【0035】
本発明の「ケツメイシ」は、マメ科ジャケツイバラ亜科の植物であるエビスグサ(Senna obtusifolia)の種子またはCassia tora L.の種子を乾燥させたものを意味する。種子としては、限定されるわけではないが、成熟したものが好ましい。
【0036】
本発明の「ドクダミ」は、ドクダミ科ドクダミ属の植物であるドクダミ(Houttuynia cordata)を意味する。使用部位としては、限定されるわけではないが、例えば、葉、茎、根、花等が挙げられる。
【0037】
本発明の「キキョウ」は、キキョウ科キキョウ属の植物であるキキョウ(Platycodon grandiflorus A.DC.)を意味する。使用部位としては、限定されるわけではないが、根が好ましい。
【0038】
本発明の「リンゴンベリー」は、ツツジ科スノキ属の植物であるリンゴンベリー(Vaccinium vitis-idaea L)を意味する。リンゴンベリーはコケモモとも呼ばれるものである。使用部位としては、限定されるわけではないが、果実(果肉や果皮等)が好ましい。
【0039】
本発明の「クロマメノキ」は、ツツジ科スノキ属の植物であるクロマメノキ(Vaccinium uliginosum)を意味する。クロマメノキはアサマブドウ、コウザンブドウとも呼ばれるものである。使用部位としては、果実(果肉や果皮等)が好ましい。
【0040】
本発明の「ゴーヤ」は、苦瓜と同意義であり、ツルレイシ(Momordica charantia var. pavel)とも呼ばれ、ウリ目ウリ科ツルレイシ属の植物の果実(果肉や果皮等)を意味する。この果実は、成熟したもの、または未熟なもののいずれであってもよい。
【0041】
本発明の「セージ」は、シソ科アキギリ属の植物であるセージ(Salvia officinalis)を意味する。使用部位としては、限定されるわけではないが、葉が好ましい。
【0042】
本発明の「マカ」は、アブラナ科の植物であるマカ(Lepidium meyenii)を意味する。使用部位としては、限定されるわけではないが、根が好ましい。
【0043】
本発明の「黒クコ」は、ナス科クコ属の植物である黒クコ(Lycium ruthenicum Murray)を意味する。黒クコは、ブラックゴジ、ブラックゴジベリー、ナガバクコとも呼ばれるものである。使用部位としては、限定されるわけではないが、果実(果肉や果皮等)が好ましい。
【0044】
本発明の「ハイビスカス」は、アオイ科フヨウ属の植物であるハイビスカス(Hibiscus sabdariffa L.)を意味し、特に限定されないが、例えば、ローゼル(Hibiscus sabdariffa L.)、ムクゲ(Hibiscus syriacus)、フヨウ(Hibiscus mutabills)、モミジアオイ(Hibiscus coccineus)、オオハマボウ(Hibiscus tiliaceus)、ブッソウゲ(Hibiscus schizopetalus)等を用いることが出来る。使用部位としては、限定されるわけではないが、例えば、花弁、子実、茎、葉、根、全草等が挙げられる。
【0045】
本発明の「ウイキョウ」は、セリ科ウイキョウ属の植物であるウイキョウ(Foeniculum vulgare)を意味する。使用部位としては、限定されるわけではないが、果実(果肉や果皮等)が好ましい。
【0046】
本発明の「ナルコユリ」は、ユリ科アマドコロ属の植物であるナルコユリ(Polygonatum falcatum)を意味する。使用部位としては、限定されるわけではないが、根茎が好ましい。
【0047】
本発明の「ホップ」は、アサ科カラハナソウ属の植物であるホップ(Humulus lupulus)を意味する。使用部位としては、限定されるわけではないが、雌花穂が好ましい。
【0048】
「もろみ」とは、一般的に、酒、醤油、味噌、酢等の醸造工程において複数の原料が発酵してできる柔らかい固形物を意味する。本発明の「もろみ」は、原料として黒大豆および玄米が使用されるものであればよく、特に限定されるわけではないが、例えば、黒酢と同様の方法で、原料として玄米に黒大豆を追加し、製造する黒大豆玄米酢を製造する過程で産生される、黒大豆玄米もろみであることが好ましい。本発明の「もろみ」は、そのまま用いても乾燥させて用いてもよいが、乾燥させたものを用いることが好ましい。
【0049】
前記成分のエキスの製造方法は、特に制限されず、当該技術分野において通常使用される方法に応じて抽出することができる。前記抽出方法としては、限定されるわけではないが、例えば、熱水抽出法、超音波抽出法、ろ過法、還流抽出法、溶媒(例えばエタノール)抽出法等が挙げられる。これらは単独で実行、または2種以上の方法を併用して行ってもよい。また、高純度のエキスを得るためにエキスを同様の方法で1回以上ずつさらに抽出してもよい。
【0050】
前記成分のエキスの製造のために使用される抽出溶媒の種類は特に制限されず、本発明の目的効果を有するエキスが得られるものであれば、当該技術分野において公知となっている任意の溶媒を使用してもよい。そのような溶媒の例としては、限定されるわけではないが、例えば、水、炭素数1~4のアルコール、酢酸エチル、アセトン、クロロホルム等が挙げられ、これらは2つ以上組み合わせて使用してもよい。
【0051】
前記成分のエキスが商業的に販売されている場合、本発明の目的効果を有するエキスが得られるのであれば、それを使用してもよい。なお、商業的に販売されているツバメの巣には、毛や糞等の汚れを取り除いて洗浄しただけのものから、ツバメの巣のクズを集めて漂白と洗浄を繰り返して成形したものまで、様々な種類があるが、本発明では、前処理において過度の洗浄や漂白等が行われていないツバメの巣を使用することが好ましい。
【0052】
本発明の組成物に含まれるタンポポ、サネブトナツメ、トンカットアリ、ビルベリー、カシス、エルダーベリー、アロニア、マリアアザミ、ツバメの巣、シーベリー、ローズマリー、ケツメイシ、ドクダミ、キキョウ、リンゴンベリー、クロマメノキ、ゴーヤ、セージ、マカ、黒クコ、ハイビスカス、ウイキョウ、ナルコユリ、ホップ、およびもろみのエキスからなる群から選択される1種以上のエキスの配合量は、用途に応じて適宜決定できるが、組成物全量中、乾燥物として好ましくは0.0002~610μg/mg、より好ましくは0.1~500μg/mg、最も好ましくは1~151μg/mgである。本発明において乾燥物とは、エキスを乾燥して得られる乾燥粉末を意味し、乾燥粉末が商業的に販売されている場合、本発明の目的効果を有する乾燥粉末が得られるのであれば、それを使用してもよい。エキスを乾燥させて乾燥粉末を得る方法としては、限定されるわけではないが、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥等の公知の乾燥方法が挙げられる。本発明における乾燥物は、本発明の目的効果を有する程度に十分に水分が除去されていればよく、その水分含有量は0%でなくともよい。本発明の組成物が前記成分の2種以上を含む場合、前記の配合量はそれらの合計量を意味する。
【0053】
本発明の「フコキサンチン」は、分子式C42H58O6で表される非プロビタミンA類のカロテノイドの一種で、キサントフィルに属する成分を意味する。本発明のフコキサンチンは、限定されるわけではないが、海藻類から抽出することにより得てもよい。海藻類は、例えば、ワカメ(Undaria pinnatifida)等のワカメ類、オキナワモズク(Cladosiphon okamuranus)等のモズク類、マコンブ(Laminaria japonica)等のコンブ類、ヒジキ(Sargassum fusiforme、ホンダワラ(Sargassum fulvellum)、アカモク(Sargassum horneri)等が挙げられるが、フコキサンチンを含有する海藻類であればいずれでもよく、マコンブであることが好ましい。
【0054】
本発明の組成物に含まれるフコキサンチンの配合量は、用途に応じて適宜決定できるが、組成物全量中、乾燥物として0.0002~30.30μg/mg、好ましくは0.001~18.18μg/mg、さらに好ましくは0.04~6.1μg/mgである。
【0055】
本発明の組成物は、特に限定されるわけではないが、食品組成物としてもよい。本発明の血管を安定化させるための組成物を食品組成物とする場合、食品組成物に配合される公知の成分(添加剤)をさらに配合することができる。このような成分としては、例えば、甘味料、高糖味度甘味料(アスパラテーム、スクラロース、グリチルリチン、サッカリン、ステビア、ズルチン、トリクロロシュークロース、ソーマチン、アセスルファムカリウム等)、香料、着色料、酸味料、抗酸化剤、乳化剤、防腐剤、安定剤等が挙げられる。
【0056】
本発明の組成物は、栄養機能食品、特定保健用食品、機能性表示食品等の保健機能食品であってもよく、また治療食(すなわち、治療の目的を果たすもの、または、医師が食事箋を出し、それに従い栄養士等が作成した献立に基づいて調理されたもの)、食事療法食、介護食等として、製造されてもよい。
【0057】
本発明の組成物の一食分または一日あたりの摂取目安量(有効成分量)は、血管を安定化する対象の年齢、体重、性別や、摂取前の血管を安定化に関係する指標値などに応じて、また非臨床的または臨床的な試験結果等に基づいて、適宜設定することができる。本発明の組成物の摂取期間も適宜設定することができ、長期間に亘って繰り返し、また日常的に、摂取することが好ましい。本発明の一つの態様として、本発明の組成物は、そこに含まれる有効成分の摂取量が、0.00001g/日以上が好ましく、0.0001g/日以上がより好ましく、0.001g/日以上がより好ましく、また、10g/日以下が好ましく、7.5g/日以下がより好ましく、5g/日以下がより好ましくなるよう摂取されるものである。
【0058】
本発明の組成物の「血管の安定化」、「血管のバリア機能の増強」または「血流改善」という用途は、直接的にまたは間接的に表示することができる。直接的な表示の例は、製品自体、パッケージ、容器、ラベル、タグ等の有体物への記載であり、間接的な表示の例は、ウェブサイト、店頭、展示会、看板、掲示板、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、郵送物、電子メール等の場所または手段による、広告・宣伝活動である。本発明の組成物を機能性表示食品として製造する場合は、例えば、「血管を丈夫にする」、「血管透過性亢進を抑制する」、「血管内因子の血管外への漏出を抑制する」、「血管を正常な状態に改善する」、「血管を正常な状態に維持する」、「血管内皮細胞同士の乖離を抑制する」、「血管内皮細胞の細胞死を抑制する」、「組織間液の速やかな回収機能を保持する」、「血行を良くする」またはこれらと同視できる表示又は機能表示等のように、機能性成分として含まれる成分の作用効果に基づく機能性を表示することができる。
【実施例0059】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。含有量は特記しない限り、質量%で示す。
【0060】
電気抵抗性を用いた血管バリア機能の評価
電極付96well培養皿(96W20E+;Applied Biophysics)をあらかじめ10mMのLシステインで酸化被膜を剥離し、200μg/mLコラーゲン溶液でコートした。前記96well培養皿にヒト臍帯静脈血管内皮細胞(Human umbilical vein endothelial cell;HUVEC)を5×104個/300μL(Humedia EGM)に懸濁して播種した。23時間後、細胞がコンフレントであることを確認し、上澄みを回収した。その後、購入した、表1に示す各サンプル(タンポポエキス、サネブトナツメエキス、トンカットアリエキス、ビルベリーエキス(MyrtiPROTMビルベリーエキスパウダー25.5%(北京緑色金可生物技術股※有限広司製(「※」はにんべんに分)))、カシスエキス(ブラックカラントエキスパウダー35%(北京緑色金可生物技術股※有限広司製(「※」はにんべんに分)))、エルダーベリーエキス(エルダーベリーエキスパウダー15%(北京緑色金可生物技術股※有限広司製(「※」はにんべんに分)))、アロニアエキス(アロニアエキスパウダー35%(北京緑色金可生物技術股※有限広司製(「※」はにんべんに分)))、フコキサンチン(ThinOgenTMフコキサンチンパウダー1%(北京緑色金可生物技術股※有限広司製(「※」はにんべんに分)))、マリアアザミエキス(マリアアザミエキスパウダー(北京緑色金可生物技術股※有限広司製(「※」はにんべんに分)))、ツバメの巣エキス、シーベリーエキス、ローズマリーエキス、ケツメイシエキス、ドクダミエキス、キキョウエキス、リンゴンベリーエキス、クロマメノキエキス、ゴーヤエキス、セージエキス、マカエキス、黒クコエキス、ハイビスカスエキス、ウイキョウエキス、ナルコユリエキス、ホップエキス、およびもろみエキス(黒大豆玄米もろみ))を表1に示した量加えたHumedia EGM培地(DMSO最終濃度0.125%)を添加し、ECIS-Zθリアルタイム細胞解析装置により、インピーダンス(細胞間バリア)を23~24時間測定した。なお、各サンプルはいずれも市販されているものを使用した。N=3で測定し、平均値を計算して、グラフ化した。なお、一度に解析可能なサンプル数の関係で実験は3回に分けて施行した。陰性対照としてはジメチルスルホキシド(DMSO)を使用し、陽性対照としてはアンジオポエチン1(Ang1)を使用した。また、陰性対照および陽性対照の解析は各解析毎に行った。
【0061】
陽性対照であるAng1を添加して得られた細胞の電気抵抗性の強度と、各サンプルを添加して得られた細胞の電気抵抗性の強度を比較して、以下の基準にしたがって各サンプル添加時の電気抵抗性(各サンプルの血管バリア機能)を評価し、結果を表1に示した。
A:電気抵抗性が非常にある(Ang1添加時以上の強度)。
B:電気抵抗性がある(Ang1添加時と同程度の強度)。
C:電気抵抗性がややある(Ang1添加未満の強度)。
D:電気抵抗性がない。
【0062】
【0063】
以上の結果から、表1に示す各サンプル(タンポポエキス、サネブトナツメエキス、トンカットアリエキス、ビルベリーエキス、カシスエキス、エルダーベリーエキス、アロニアエキス、フコキサンチン、マリアアザミエキス、ツバメの巣エキス、シーベリーエキス、ローズマリーエキス、ケツメイシエキス、ドクダミエキス、キキョウエキス、リンゴンベリーエキス、クロマメノキエキス、ゴーヤエキス、セージエキス、マカエキス、黒クコエキス、ハイビスカスエキス、ウイキョウエキス、ナルコユリエキス、ホップエキス、およびもろみエキス)は血管の安定性を高める、または血管のバリア機能を強化する可能性が示され、その中でタンポポエキス、サネブトナツメエキス、トンカットアリエキス、カシスエキス、エルダーベリーエキス、フコキサンチン、ツバメの巣エキス、シーベリーエキス、ローズマリーエキス、ドクダミエキス、キキョウエキス、ゴーヤエキス、およびセージエキスは血管の安定性をより高める、または血管のバリア機能をより強化する可能性が示され、さらにその中でトンカットアリエキス、カシスエキス、エルダーベリーエキス、フコキサンチン、およびローズマリーエキスは血管の安定性をより高める、または血管のバリア機能をより強化する可能性が示された。