(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097369
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】積層型キャパシタ
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
H01G4/30 201D
H01G4/30 201G
H01G4/30 516
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022189773
(22)【出願日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0188006
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョ、スー ジェオン
(72)【発明者】
【氏名】リー、デ ヒー
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒョ ジン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジョン ホ
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC09
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082EE23
5E082EE26
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
5E082GG11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】内部電極と外部電極との間の結合力を強固にし、耐湿信頼性と高温IR特性を向上させた積層型キャパシタを提供する。
【解決手段】積層型キャパシタは、誘電体層111及び誘電体層111を間に挟んで積層され、第1導電性金属を含む複数の内部電極121、122を含む本体110と、本体の外側に配置され、第2導電性金属を含む外部電極131、141と、を含み、複数の内部電極のうち、第1導電性金属及び第2導電性金属の合金領域を含む内部電極の個数割合は、40%以上、80%以下とする。第1導電性金属は、Ni、Cu、Pd、Ag、Au、、Pt、Sn、W、Ti及びこれらの合金のうち1種以上であり、より好ましくはNiを含み、第2導電性金属は、Ag、Pb、Pt、Ni、Cu及びこれらの合金のうち1種以上であり、より好ましくはCuを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び前記誘電体層を間に挟んで積層され、第1導電性金属を含む複数の内部電極を含む本体と、
前記本体の外側に配置され、第2導電性金属を含む外部電極と、を含み、
前記複数の内部電極のうち、前記第1導電性金属及び前記第2導電性金属の合金領域を含む内部電極の個数割合は、40%以上、80%以下である、積層型キャパシタ。
【請求項2】
前記合金領域は、前記内部電極において前記外部電極と接続される端部に形成された、請求項1に記載の積層型キャパシタ。
【請求項3】
前記合金領域のEPMAによる前記第2導電性金属の検出強度は、前記外部電極のEPMAによる前記第2導電性金属の検出強度の40%以上である、請求項1に記載の積層型キャパシタ。
【請求項4】
前記合金領域の第2導電性金属の検出強度は、前記内部電極と前記外部電極との界面から前記内部電極側に3μm以内の領域で測定されたものである、請求項3に記載の積層型キャパシタ。
【請求項5】
前記合金領域は、前記第2導電性金属が前記内部電極側に拡散した領域である、請求項1から4のいずれか一項に記載の積層型キャパシタ。
【請求項6】
前記合金領域において前記外部電極と接続される一端は、他端よりも前記第2導電性金属の割合が高い、請求項1から4のいずれか一項に記載の積層型キャパシタ。
【請求項7】
前記複数の内部電極のうち少なくとも2つは、前記合金領域の長さが互いに異なる、請求項1から4のいずれか一項に記載の積層型キャパシタ。
【請求項8】
前記第1導電性金属は、ニッケル(Ni)を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の積層型キャパシタ。
【請求項9】
前記第2導電性金属は、銅(Cu)を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の積層型キャパシタ。
【請求項10】
前記合金領域は、Ni-Cu合金を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の積層型キャパシタ。
【請求項11】
前記外部電極上に配置されるめっき層を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の積層型キャパシタ。
【請求項12】
前記めっき層は、前記外部電極上に順に積層して形成されるニッケル(Ni)めっき層及びスズ(Sn)めっき層を含む、請求項11に記載の積層型キャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
積層型キャパシタ(Multilayered Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話などの様々な電子製品の印刷回路基板に装着されて電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサである。
【0003】
このような積層型キャパシタは、小型でありながら高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として用いられることができる。電子製品などの高信頼性が要求される分野における多くの機能が電子化され、その需要が増加するにつれて、積層型キャパシタに対しても高信頼性が求められている。このような積層型キャパシタの高信頼性において問題となる要素としては、めっき工程中に発生するめっき液の浸透、外部衝撃によるクラックの発生、及び外部からの水分浸透などがある。
【0004】
このような問題を解決すべく、従来には、内部電極と外部電極との間のニッケル(Ni)-銅(Cu)合金領域を形成することで、内部電極と外部電極との間の結合力を向上させ、水分及びめっき液の浸透を防止する積層型キャパシタが開発されてきた。
【0005】
しかしながら、積層型キャパシタの外部電極から内部電極への拡散が過度に発生すると、内部電極の体積膨張によって放射クラックが発生し、該クラックが原因で、曲げ強度の低下やめっき液の浸透が発生するなどの問題点が依然として存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2017-0009777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の様々な目的の一つは、積層型キャパシタの耐湿信頼性及び高温IR特性を向上させるためにある。
【0008】
本発明の様々な目的の一つは、内部電極と外部電極との間の結合力を向上させることで、外部からの水分及びめっき液の浸透を防止するためにある。
【0009】
本発明の様々な目的の一つは、過度な合金形成によるクラックの発生を防止するためにある。
【0010】
但し、本発明の目的は上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解されることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態は、誘電体層及び上記誘電体層を間に挟んで積層され、第1導電性金属を含む複数の内部電極を含む本体と、上記本体の外側に配置され、第2導電性金属を含む外部電極と、を含み、上記複数の内部電極のうち、上記第1及び第2導電性金属の合金領域を含む内部電極の個数割合は、40%以上、80%以下である積層型キャパシタを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の様々な効果の一つとして、積層型キャパシタの耐湿信頼性及び高温IR特性を向上させることができる。
【0013】
本発明の様々な効果の一つとして、内部電極と外部電極との間の結合力を向上させることで、外部からの水分及びめっき液の浸透を防止することができる。
【0014】
本発明の様々な効果の一つとして、過度な合金形成によるクラックの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層型キャパシタを概略的に示した斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る内部電極を示す模式図である。
【
図5】
図1の第2方向及び第3方向断面図であって、第1内部電極が観察される断面を示したものである。
【
図6】
図1の第2方向及び第3方向断面図であって、第2内部電極が観察される断面を示したものである。
【
図7a】本発明の一実施形態に係る積層型キャパシタの断面を走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて撮影したイメージである。
【
図7b】
図7aのイメージをEPMA(Electron Probe Micro Analysis)によって銅(Cu)の検出強度を測定したイメージである。
【
図8】クラック(crack)が発生した比較例を撮影したイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。しかしながら、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどは、より明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0017】
そして、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上、任意に示しているため、本発明は必ずしも図示されたものに限定されない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素については、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0018】
図面において、第1方向は積層方向又は厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る積層型キャパシタを概略的に示した斜視図であり、
図2は、
図1のI-I'断面図であり、
図3は、
図2のA領域を拡大した拡大図であり、
図4は、本発明の一実施形態に係る内部電極を示す模式図であり、
図5は、
図1の第2方向及び第3方向断面図であって、第1内部電極が観察される断面を示したものであり、
図6は、
図1の第2方向及び第3方向断面図であって、第2内部電極が観察される断面を示したものである。
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る積層型キャパシタについて詳細に説明する。
【0021】
本発明の一実施形態に係る積層型キャパシタ100は、誘電体層111及び上記誘電体層を間に挟んで積層され、第1導電性金属を含む複数の内部電極121、122を含む本体110と、上記本体の外側に配置され、第2導電性金属を含む外部電極131、141と、を含み、上記複数の内部電極121、122のうち、上記第1及び第2導電性金属の合金領域121a、122aを含む内部電極の個数割合は、40%以上、80%以下であることができる。
【0022】
本体110の具体的な形状に特に限定はないが、図示されたように、本体110は六面体形状やこれと類似の形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮や角部の研磨により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0023】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1及び第2面1、2、上記第1及び第2面1、2と連結され、第2方向に互いに対向する第3及び第4面3、4、第1及び第2面1、2と連結され且つ第3及び第4面3、4と連結され、第3方向に互いに対向する第5及び第6面5、6を有することができる。
【0024】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化していることができる。
【0025】
本発明の一実施形態によると、上記誘電体層111を形成する材料は、十分な静電容量が得られる限り、特に制限されない。例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料又はチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。上記チタン酸バリウム系材料はBaTiO3系セラミック粉末を含むことができ、上記セラミック粉末としては、例えば、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCax)TiO3、Ba(Ti1-yCay)O3、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3、又はBa(Ti1-yZry)O3などが挙げられる。
【0026】
このとき、誘電体層111の厚さは、積層セラミックキャパシタ100の容量設計に合わせて任意に変更することができ、本体110の大きさと容量を考慮して1層の厚さは焼成後に0.1μm~10μmとなるように構成することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量が形成される容量形成部と、上記容量形成部の上部及び下部に形成されたカバー部112、113とを含むことができる。
【0028】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層又は2層以上の誘電体層を容量形成部の上下面にそれぞれ第1方向に積層して形成することができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0029】
上部及び下部カバー部112、113は、内部電極を含まないことを除いては、上記容量形成部の誘電体層111と同じ材質及び構成を有することができる。上部及び下部カバー部112、113は、それぞれ、25μm以下の厚さを有することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
誘電体層111及びカバー部112、113は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などのセラミック粉末を含んで形成されたスラリーをキャリヤーフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥することで複数のセラミックグリーンシートを設け、上記複数のセラミックグリーンシートを積層して焼成することで形成されることができる。
【0031】
内部電極121、122は、誘電体層111と交互に配置されることができ、第1内部電極121と第2内部電極122は誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように配置されることができる。
【0032】
すなわち、第1及び第2内部電極121、122は、互いに異なる極性を有する一対の電極であり、第1及び第2内部電極121、122は、誘電体層111を間に挟んで誘電体層111の積層方向に沿って本体110の第3及び第4面3、4に交互に露出することができ、中間に配置された誘電体層111により互いに電気的に絶縁されることができる。これにより、第1内部電極121は第3面3において第1外部電極131と接続され、第2内部電極122は第4面4において第2外部電極141と接続されることができる。
【0033】
このような第1及び第2内部電極121、122の厚さは、用途に応じて決定されることができ、例えば、本体110の大きさと容量を考慮して0.2μm~1.0μmの範囲内にあるように決定されることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0034】
内部電極121、122に含まれる第1導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)、及びこれらの合金のうち1種以上であることができるが、より好ましくは、ニッケル(Ni)を含むことができる。
【0035】
内部電極121、122は、高容量を有する積層型キャパシタ100を実現するために400層以上積層されてもよいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0036】
内部電極121、122は、セラミックグリーンシート上に所定の厚さで第1導電性金属を含む内部電極用導電性ペーストを印刷して形成することができる。内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法などを使用することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
外部電極131、141は、本体110の外側に配置され、第2導電性金属を含むことができる。このとき、外部電極131、141に含まれる第2導電性金属は、銀(Ag)、鉛(Pb)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、及びこれらの合金のうち1種以上であることができるが、より好ましくは、銅(Cu)を含むことができる。
【0038】
外部電極131、141は、本体110の第3面に配置される第1外部電極131と、本体110の第4面に配置される第2外部電極141とを含むことができ、第1及び第2外部電極131、141は、本体110の第1面及び第2面1、2の一部までそれぞれ延長されて配置されることができ、本体110の第5面及び第6面5、6の一部までそれぞれ延長されて配置されることができる。
【0039】
外部電極131、141は、例えば、本体110の第3面及び第4面3、4を上記第2導電性金属及びガラスを含む外部電極用導電性ペーストにディッピング(Dipping)した後、焼成することで形成されることができる。これにより、外部電極131、141は、第2導電性金属及びガラスを含む焼成電極であることができる。
【0040】
本発明の一実施形態によると、複数の内部電極121、122のうち、上記第1及び第2導電性金属の合金領域121a、122aを含む内部電極の個数割合は、40%以上、80%以下であることができる。このとき、合金領域121a、122aは、内部電極121、122において外部電極131、141と接続される端部に形成されることができる。
【0041】
合金領域121a、122aは、上記第2導電性金属が内部電極121、122側に拡散した領域であることができ、具体的には、外部電極用導電性ペーストを本体110に塗布し焼成する過程において上記第2導電性金属が内部電極121、122側に拡散することで形成されることができる。
【0042】
例えば、上記第1導電性金属がニッケル(Ni)を含み、上記第2導電性金属が銅(Cu)を含む場合、外部電極131、141の焼成過程で銅(Cu)が内部電極121、122側に拡散することができる。このとき、合金領域121a、122aは、Ni-Cu合金を含むことができる。
【0043】
このとき、複数の内部電極121、122のうち、上記第1及び第2導電性金属の合金領域121a、122aを含む内部電極の個数割合が40%以上、80%以下を満たすことで、内部電極121、122と外部電極131、141との結合力を向上させ、外部水分及びめっき液の浸透を防止することができる。
【0044】
合金領域121a、122aは、内部電極121、122と外部電極131、141との間の界面を強く結合させることができる。これにより、内部電極121、122と外部電極131、141との間の界面に外部水分及びめっき液が浸透することを防止することができる。これにより、積層型キャパシタ100の耐湿信頼性及び高温絶縁抵抗(IR)特性を向上させることができる。
【0045】
また、合金領域121a、122aを含む内部電極121、122の個数割合を調整することで、内部電極121、122の体積膨張による放射クラック及びブリッジ(bridge)クラックの発生を防止することができる。これにより、クラックを介して外部水分及びめっき液が浸透することを防止することができる。
【0046】
複数の内部電極121、122のうち、上記第1及び第2導電性金属の合金領域121a、122aを含む内部電極の個数割合が40%未満であると、内部電極121、122と外部電極131、141との間の結合力が低下することがある。これにより、内部電極121、122と外部電極131、141との間の界面から外部水分及びめっき液が浸透し、積層型キャパシタ100の信頼性及び高温IR特性が低下することがある。
【0047】
複数の内部電極121、122のうち、上記第1及び第2導電性金属の合金領域121a、122aを含む内部電極の個数割合が80%を超えると、合金領域121a、122aの形成によって体積が膨張した内部電極121、122の個数が過度に多くなり、本体110に放射クラックが発生することがある。例えば、上記第1導電性金属がニッケル(Ni)で上記第2導電性金属が銅(Cu)である場合、銅(Cu)の拡散速度がニッケル(Ni)よりも速く、内部電極121、122の体積が膨張することがある。これにより、内部応力が作用し、本体110に放射クラックが発生することがある。また、内部電極121、122の積層方向に沿って、複数の内部電極121、122にかけて発生するブリッジ(bridge)クラックが発生することがある。これにより、クラックを介して外部水分が浸透するようになり、積層型キャパシタ100の曲げ強度及び信頼性が低下することがある。
【0048】
後述するように、複数の内部電極121、122のうち、上記第1及び第2導電性金属の合金領域121a、122aを含む内部電極の個数割合は、SEM-EPMAにより測定されることができる。
【0049】
合金領域121a、122aを含む内部電極121、122の個数は、焼成温度を適宜設定することで、調整することができる。焼成温度が過度に低いと、複数の内部電極121、122のうち、上記第1及び第2導電性金属の合金領域121a、122aを含む内部電極の個数割合が40%未満になることがある。また、焼成温度が過度に高いと、複数の内部電極121、122のうち、上記第1及び第2導電性金属の合金領域121a、122aを含む内部電極の個数割合が80%を超えることがある。
【0050】
例えば、焼成温度は600~700℃であってもよいが、本発明はこれに限定されるものではなく、内部電極121、122及び外部電極131、141の組成と焼成時間に応じて適宜調整されることができる。
【0051】
本発明の一実施形態において、合金領域121a、122aのEPMAによる上記第2導電性金属の検出強度は、外部電極131、141のEPMAによる上記第2導電性金属の検出強度の40%以上であることができる。このとき、合金領域121a、122aの上記第2導電性金属の検出強度は、内部電極121、122と外部電極131、141との界面から内部電極121、122側に3μm以内の領域で測定されたものであることができる。
【0052】
上記第2導電性金属の検出強度は、例えば、積層型キャパシタ100の第1方向及び第2方向断面においてSEM-EPMA(Scanning Electron Microscope-Electron Probe Micro Analyzer)により測定されることができる。上記第2導電性金属の検出強度が高いほど、分析地点に含まれた上記第2導電性金属割合が高いことを意味することができる。
【0053】
合金領域121a、122aの上記第2導電性金属の検出強度が外部電極131、141の上記第2導電性金属の検出強度の40%以上であると、合金領域121a、122aに第2導電性金属が十分に拡散することで、内部電極121、122と外部電極131、141との間の結合力が向上するようになる。
【0054】
これに対し、合金領域121a、122aの上記第2導電性金属の検出強度が外部電極131、141の上記第2導電性金属の検出強度の40%未満であると、内部電極121、122と外部電極131、141との間の結合力が低下するようになる。
【0055】
このとき、合金領域121a、122aのEPMAによる上記第2導電性金属の検出強度は、多数の分析地点で測定された値の最大値を意味することができるが、多数の値を平均した値であってもよい。また、外部電極131、141のEPMA分析による上記第2導電性金属の検出強度は、多数の分析地点で測定された値の最大値を意味することができる。
【0056】
本発明の一実施形態において、合金領域121a、122aにおいて外部電極131、141と接続される一端は、他端よりも上記第2導電性金属の割合が高くなることができる。上記一端及び他端の第2導電性金属の割合はSEM-EPMAにより測定されることができる。例えば、積層型キャパシタ100の第1方向及び第2方向断面をSEM-EPMAによって上記第2導電性金属の検出強度を比較することで測定されることができる。
【0057】
外部電極131、141と接続される一端が他端よりも上記第2導電性金属の割合が高くなることから、内部電極121、122と外部電極131、141との結合力が向上し、これにより、耐湿信頼性及び高温IR特性が向上するようになる。
【0058】
本発明の一実施形態において、複数の内部電極121、122のうち少なくとも2つは、合金領域121a、122aの長さが互いに異なることができる。ここで、長さは、第2方向への長さを意味する。
【0059】
合金領域121a、122aの長さは、
図3のように、積層型キャパシタ100の第1方向及び第2方向断面における長さを意味することができる。また、合金領域121a、122aの長さは、
図4のように、第2方向及び第3方向断面における合金領域121a、122aの長さの最大値を意味することもできる。
【0060】
合金領域121a、122aの長さは、積層型キャパシタ100の第1方向及び第2方向断面、又は、第2方向及び第3方向断面をSEM-EPMAによって分析することで測定されることができる。
【0061】
本発明の一実施形態において、外部電極131、141上に配置されるめっき層132、133、142、143を含むことができる。すなわち、第1外部電極131上に第1めっき層132、133が配置されることができ、第2外部電極141上に第2めっき層142、143が形成されることができる。
【0062】
めっき層132、133、142、143は、積層型キャパシタ100の実装特性を向上させる役割を果たす。めっき層132、133、142、143は、Ni、Sn、Cu、Pd、及びこれらの合金のうち1種以上を含むことができ、複数の層からなってもよい。
【0063】
本発明の一実施形態において、めっき層132、133、142、143は、外部電極131、141上に順に積層して形成されるニッケル(Ni)めっき層132、142及びスズ(Sn)めっき層133、143を含むことができる。すなわち、第1外部電極131上に第1ニッケルめっき層132及び第1スズめっき層133が順に形成されることができ、第2外部電極141上に第2ニッケルめっき層142及び第2スズめっき層143が順に形成されることができる。
【0064】
ニッケルめっき層132、142は、積層型キャパシタ100を実装するとき、はんだ(solder)の溶解を防止する役割を果たすことができる。また、ニッケルめっき層132、142上に形成されたスズめっき層133、143は、積層型キャパシタ100を実装するとき、はんだの濡れ性を良好にする役割を果たすことができる。
【0065】
ニッケルめっき層132、142及びスズめっき層133、143は、スパッタ又は電解めっき(Electric Deposition)により形成されることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例0066】
複数の内部電極121、122のうち、上記第1及び第2導電性金属の合金領域を含む内部電極の個数割合による積層型キャパシタ100の信頼性及びクラックの発生有無を評価して表1に記載した。ここで、第1導電性金属としてニッケル(Ni)、第2導電性金属としては銅(Cu)を用いて積層型キャパシタ100を製造した。
【0067】
図7aは、本発明の一実施形態に係る積層型キャパシタの断面を走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて撮影したイメージである。より具体的には、積層型キャパシタ100の第1方向及び第2方向断面において、第1方向への長さ×第2方向への長さ=80μm×30μmの領域に内部電極121、122と外部電極131、141との界面の一部が含まれるように撮影した。
【0068】
図7bは、
図7aのイメージをEPMA(Electron Probe Micro Analysis)によって銅(Cu)の検出強度を測定したイメージである。銅(Cu)の検出強度が高いほど該当領域は濃くなる傾向にあり、
図7bの上段に図示された外部電極131、141は、銅(Cu)の検出強度が高いことから、該当領域が濃くなっていることが確認できた。さらに、
図7bの下段に図示された内部電極121、122は、銅(Cu)の検出強度が現れず、黒くなっていることが確認できた。
【0069】
また、内部電極121、122において外部電極131、141と接続される端部の銅(Cu)の検出強度が現れることによって、外部電極131、141と接続される端部にニッケル(Ni)-銅(Cu)合金領域121a、122aが形成されていることが確認できた。さらに、複数の内部電極121、122のうち、銅(Cu)の検出強度が現れない内部電極121、122が存在することも確認できた。
【0070】
次いで、内部電極121、122と外部電極131、141との界面より3μm以内の領域において、EPMAによって銅(Cu)の検出強度を測定した。このとき、上記領域に銅(Cu)検出強度が外部電極131、141における銅(Cu)検出強度の最大値の40%以上であると、合金領域121a、122aが形成されたものと判断した。すなわち、上記領域に銅(Cu)検出強度が外部電極131、141における銅(Cu)検出強度の最大値の40%未満であると、合金領域121a、122aが形成されていないものと判断した。
【0071】
続いて、
図7bにおいて内部電極121、122の全体個数、及び合金領域121a、122aが形成された内部電極121、122の個数を測定してその割合を求め、試料ごとに測定された個数割合を
図1に記載した。
【0072】
積層型キャパシタ100の信頼性の評価は、高温IRを測定することで行われた。85℃、相対湿度85%の条件下で10Vの電圧を印加した後、高温IRの劣化程度に応じて積層型キャパシタ100の信頼性を評価した。このとき、試料番号ごとに準備した400個のサンプルに対して高温IRを測定し、IR値が108以上の場合は正常、106未満の場合は不良と判断して、試料番号ごとに発生した不良個数を測定した。
【0073】
クラックの発生有無については、製造された各試料の第1方向及び第2方向断面をSEM-EPMAによって分析した後、放射クラック及びブリッジクラックが発生したか否かを観察した。このとき、全てのサンプルにおいてクラックが発生しなかった場合は正常(○)、クラックが発生した場合には不良(×)と判断した。
【0074】
【0075】
比較例1*~5*の場合は、複数の内部電極121、122のうち、Ni-Cu合金領域121a、122aを含む内部電極の個数割合が40%未満であった。これにより、サンプルのうちIR劣化といった不良が発生し、積層型キャパシタ100の信頼性が低下したことが確認できた。これは、合金領域121a、122aの個数割合が十分でなかったために内部電極121、122と外部電極131、141との結合力が低下し、外部水分が浸透してIR劣化が発生したためと考えられる。
【0076】
一方、比較例10*~12*の場合、複数の内部電極121、122のうち、Ni-Cu合金領域121a、122aを含む内部電極の個数割合が80%を超えていた。これにより、各サンプルに放射クラック又はブリッジクラックが発生したことが確認できた。比較例10*~12*の場合、内部電極121、122の過度な体積膨張によってクラックが発生し、これにより、外部水分などが浸透してIR劣化が発生したことが確認できた。
【0077】
図8は、クラック(crack)が発生した比較例を撮影したイメージである。
図8を参照すると、内部電極121、122の積層方向に沿って複数の内部電極121、122にかけてブリッジ(bridge)クラックが発生したことが確認できた。これは、合金領域121a、122aの個数割合が過度に高く、内部電極121、122の体積膨張によって内部応力が作用したためと考えられる。
【0078】
これに対し、実施例6~9では、複数の内部電極121、122のうち、Ni-Cu合金領域121a、122aを含む内部電極の個数割合が40%以上、80%以下を満たすことで信頼性に優れていることが確認でき、クラックが発生していないことが確認できた。
【0079】
さらに、
図7bを参照すると、合金領域121a、122aのうち、外部電極131、141と接続される一端の銅(Cu)検出強度が他端の検出強度よりも高いことから、外部電極131、141と接続される一端が他端よりも銅(Cu)の割合が高いことを確認することができる。また、
図7bを参照すると、銅(Cu)の検出強度が現れた領域の厚さが、外部電極131、141との界面から離れるほど薄くなることが確認できた。
【0080】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。