(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009737
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】発泡成形型および発泡体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 44/58 20060101AFI20230113BHJP
B29C 39/24 20060101ALI20230113BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20230113BHJP
B29C 44/02 20060101ALI20230113BHJP
B29C 39/28 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
B29C44/58
B29C39/24
B29C44/00 A
B29C44/02
B29C39/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113254
(22)【出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002424
【氏名又は名称】ケー・ティー・アンド・エス弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
4F214
【Fターム(参考)】
4F202AB02
4F202AG20
4F202AM33
4F202CA01
4F202CB01
4F204AB02
4F204AC05
4F204AG20
4F204AJ08
4F204AM33
4F204EA01
4F204EB01
4F204EF27
4F204EK13
4F204EK17
4F204EK24
4F214AB02
4F214AC05
4F214AG20
4F214AJ08
4F214AM33
4F214UA01
4F214UB01
4F214UD13
4F214UD17
4F214UF27
4F214UK31
(57)【要約】
【課題】精度よく発泡体を形成することができる新規の発泡成形型および発泡体の製造方法を提供する。
【解決手段】発泡成形型は、第1型と第2型を型閉じしてキャビティを形成する発泡成形型である。発泡成形型は、第1型におけるキャビティの周囲に配置される第1シール面と、第1シール面から凸設し、キャビティの周方向に沿って延びる第1凸部と、第2型におけるキャビティの周囲に配置される第2シール面と、第2シール面から凸設し、キャビティの周方向に沿って延びる第2凸部と、を備える。発泡成形型は、第1型と第2型とを型閉じた時に、第1凸部と第2シール面が合わさり、第2凸部と第1シール面が合わさり、第1凸部と第2凸部との間に空間が形成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1型と第2型とを型閉じしてキャビティを形成する発泡成形型であって、
前記第1型における前記キャビティの周囲に配置される第1シール面と、
前記第1シール面から凸設し、前記キャビティの周方向に沿って延びる第1凸部と、
前記第2型における前記キャビティの周囲に配置される第2シール面と、
前記第2シール面から凸設し、前記キャビティの周方向に沿って延びる第2凸部と、を備え、
前記第1型と前記第2型とを型閉じた時に、前記第1凸部と前記第2シール面が合わさり、前記第2凸部と前記第1シール面が合わさり、前記第1凸部と前記第2凸部との間に空間が形成される発泡成形型。
【請求項2】
前記第1凸部は、前記第2凸部よりも前記キャビティ側に配置される、
請求項1に記載の発泡成形型。
【請求項3】
前記第1凸部は、前記第1シール面の前記キャビティと隣接する側の端部に配置される、
請求項1または2に記載の発泡成形型。
【請求項4】
前記キャビティと前記空間とを接続する第1通路と、
前記空間と前記発泡成形型の外部とを接続する第2通路と、
をさらに備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の発泡成形型。
【請求項5】
前記第1通路が、前記第1凸部と前記第2シール面の間に形成され、
前記第2通路が、前記第2凸部と前記第1シール面の間に形成される、
請求項4に記載の発泡成形型。
【請求項6】
前記第1通路は、前記第2通路に対して前記周方向に間隔を空けて配置される、
請求項4または5に記載の発泡成形型。
【請求項7】
請求項1に記載の発泡成形型を用意する工程と、
前記キャビティに発泡材料を注入する工程と、
前記第1型と前記第2型とを閉じ、
前記キャビティと前記空間とを接続する第1通路および前記空間と前記発泡成形型の外部とを接続する第2通路が連通可能に維持された状態で、前記発泡材料を発泡させる工程と、
を備える発泡体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発泡成形型および発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発泡体を成形するための発泡成形型が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような発泡成形型はキャビティを有し、キャビティに発泡材料を流し込み発泡させる。特許文献1の発泡成形型は、上型と下型を有し、下型に形成されたキャビティに発泡材料を流し込む込んだのち上型と下型を閉じ、発泡させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようにキャビティに流し込んだ発泡材料は、キャビティの中でガスを発生させながら膨張する。発泡材料が、ガスとともにキャビティ周囲の上型と下型の隙間に入り込むと、発泡成形後の発泡体にバリが発生する。発泡成形型は、このようなバリが発泡体に形成されることなく、精度よく発泡体を形成することが好ましい。
【0005】
本開示は、精度よく発泡体を形成することができる新規の発泡成形型および発泡体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る発泡成形型は、第1型と第2型とを型閉じしてキャビティを形成する発泡成形型である。発泡成形型は、第1型におけるキャビティの周囲に配置される第1シール面と、第1シール面から凸設し、キャビティの周方向に沿って延びる第1凸部と、第2型におけるキャビティの周囲に配置される第2シール面と、第2シール面から凸設し、キャビティの周方向に沿って延びる第2凸部と、を備える。発泡成形型は、第1型と第2型とを型閉じた時に、第1凸部と第2シール面が合わさり、第2凸部と第1シール面が合わさり、第1凸部と第2凸部との間に空間が形成される。
【0007】
発泡体の製造方法は、上記発泡成形型を用意する工程と、キャビティに発泡材料を注入する工程と、第1型と第2型とを閉じ、キャビティと空間とを接続する第1通路および空間と発泡成形型の外部とを接続する第2通路が連通可能に維持された状態で、発泡材料を発泡させる工程と、を備える。
【0008】
この発泡成形型によれば、第1凸部と第2シール面が合わさり、第2凸部と第1シール面が合わさることによって、キャビティ周囲を密閉する。これによって、第1型と第2型の間にできた隙間に発泡材料が入りにくい。この結果、発泡体を精度よく形成できる。さらにこの発泡成形型できた発泡体は形状の精度がよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、精度よく発泡体を形成することができる新規の発泡成形型および発泡体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施形態における発泡成形型の平面図。
【
図5】本開示の他の実施形態における発泡成形型の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
(1)全体構成
図1および
図2に示すように、発泡成形型1は、第1型2と第2型4とを有し、第1型2と第2型4とを型閉じしてキャビティ20を形成する。本実施形態において、発泡成形型1は上型と下型とに分割され、上型が第1型2、下型が第2型4である。しかし、発泡成形型1は、左右に分割されてもよい。発泡成形型1は、上下2つの分割に加えて、左右方向などに分割してもよい。いずれにせよ、発泡体の形状に合わせて、発泡成形型1は少なくとも2つの型を有する。発泡成形型1は、アルミなどの金属材料によって形成される。
【0012】
図2に示すように、第1型2は、上部キャビティ21と、第1シール面22と、第1凸部23と、第1通路24と、を備える。第2型4は、下部キャビティ41と、第2シール面42と、第2凸部43と、第2通路44と、を備える。発泡成形型1は、上部キャビティ21と下部キャビティ41を上下に合わせることによって、発泡体の形状に沿ったキャビティ20を形成する。
【0013】
図1および
図2に示すように、第1シール面22は、第1型2における上部キャビティ21の周囲に配置される。第2シール面42は、第2型4における下部キャビティ41の周囲に配置される。
図2に示すように、第1シール面22および第2シール面42は、下部キャビティ41に向かって下方に傾斜して形成される。言い換えると、第1シール面22および第2シール面42は、キャビティ20に向けて下方に傾斜したテーパ面となっている。第1シール面22および第2シール面42は、型を閉じた際の合わせ面となる。
【0014】
図1および
図2に示すように、第1凸部23は、第1シール面22から凸設し、キャビティ20の周方向に沿って延びる。第1凸部23は、第2シール面42と対応した面を有し、発泡成形型1が閉じられた状態において、第2シール面42と当接する。第1凸部23は、第1シール面22のキャビティ20と隣接する側の端部に配置される。
【0015】
本実施形態では、さらに、第1凸部23が第2シール面42にと当接した状態において、第1型2および第2型4が型を閉じる方向(本実施形態では上下方向)にプレスされる。これによって、第1凸部23および第1凸部23と当接した第2シール面42が塑性変形した状態となる。この結果、第1凸部23と第2シール面42の隙間がゼロの状態となる。本実施形態の発泡成形型1は、このようにキャビティ20に発泡材料を供給し、第1凸部23と第2シール面42との隙間がゼロの状態で発泡体を成形する。これによって、第1型2と第2型4の隙間に発泡材料が入り込むことを防止する。この結果、発泡体にバリが形成されにくい。
【0016】
第2凸部43は、第2シール面42から凸設し、キャビティ20の周方向に沿って延びる。第2凸部43は、第1シール面22と対応した面を有し、発泡成形型1が閉じられた状態において、第1シール面22と当接する。
【0017】
本実施形態では、第2凸部43は、第1凸部23と略同じ高さに形成される。したがって、第1型2および第2型4が型を閉じる方向(本実施形態では上下方向)にプレスされたときに、第1凸部23と同様に第2凸部43および第1シール面22が塑性変形した状態となる。この結果、第2凸部43と第1シール面22の隙間がゼロの状態となる。
【0018】
図2に拡大して示すように、第2凸部43は、第1凸部23よりもキャビティ20から離れた位置に配置される。言い換えると、第1凸部23は、第2凸部43よりもキャビティ20側に配置される。また、第1凸部23と第2凸部43とは、第1シール面22および第2シール面42の斜面に沿って隙間をあけて配置される。このような第1凸部23および第2凸部43の配置とすることによって、第1型2と第2型4とを型閉じしたときに、第1凸部23と第2シール面42が合わさり、第2凸部43と第1シール面22が合わさり、第1凸部23と第2凸部43との間に空間Sが形成される。
【0019】
図1および
図3に示すように、第1通路24は、キャビティ20の周囲のいずれかの位置に配置され、キャビティ20と空間Sとを接続する通路である。
図3に拡大して示すように、第1通路24は、第1凸部23と第2シール面42との間に形成される。本実施形態では、第1凸部23の第2シール面42に対向する面の一部を第1シール面22に向けて低くすることによって第1通路24が形成される。
【0020】
図1および
図4に示すように、第2通路44は、第1通路24とキャビティ20の周囲方向に間隔を空けて配置され、空間Sと発泡成形型1の外部とを接続する通路である。
図4に拡大して示すように、第2通路44は、第2凸部43と第1シール面22との間に形成される。本実施形態では、第2凸部43の第1シール面22に対向する面の一部を第2シール面42に向けて低くすることによって第2通路44が形成される。また、
図4に示すように第2通路44の第1シール面22の上方(キャビティ20から離れる方向)においても、第1シール面22と第2シール面42との間に隙間が設けられる。第1シール面22および第2シール面42の外側(キャビティ20から離れる方向)においても、第1型2と第2型4との間に隙間が設けられる。これによって、空間Sが第2通路44を介して外部と連通する。
【0021】
さらに、
図1に示すように、本実施形態では、第2通路44は、第1通路24に対しキャビティ20を挟んで反対側の第2凸部43と第1シール面22との間に形成される。
【0022】
このように空間S、第1通路24、および第2通路44を配置することによって、キャビティ20に流し込まれた発泡材料が発泡する際に発生するガスが、第1通路24、空間S、第2通路44の順で通過して、発泡成形型1の外部に排出される。言い換えると、本実施形態の発泡成形型1は、第1通路24、空間S、および第2通路44によってガス排出経路を形成する。さらに本実施形態では、第1凸部23と第2シール面42の隙間、および第2凸部43と第1シール面22の隙間がゼロである。このため、第1通路24、空間S、および第2通路44によって、ガス漏れがない密閉状態のガス排出経路を形成できる。
【0023】
さらに、本実施形態の発泡成形型1では、第1通路24と第2通路44とがキャビティ20を挟んで反対側に配置される。このため、第1通路24に流入したガスは、キャビティ20の周囲を取り囲む空間Sを半周して第2通路44に流れ出る。これによって、ガスの急激な圧力低下を防ぐことができる。ガスの急激な圧力低下が発生すると、ガスとともに発泡材料がガス排出経路に流入しやすい。しかし、本実施形態の発泡成形型1であれば、ガスの急激な圧力低下を防ぐことができるため、発泡材料がガス排出経路に流入しにくい。これによって、発泡体にバリが発生しにくい。
【0024】
(2)発泡成形型1による発泡体の成形
上記のような発泡成形型1を製造するために、まず第1型2と第2型4とを型閉じ方向にプレスする。これによって、第1凸部23と第2シール面42および第2凸部43と第1シール面22を塑性変形させる。この結果、第1凸部23と第2シール面42との隙間、および第2凸部43と第1シール面22との隙間がゼロになる。
【0025】
発泡体の製造方法は、まず、上記のように製造した発泡成形型1を用意する。次に、発泡材料を下部キャビティ41に注入する。次に、第1型2と第2型4を型閉じ方向に移動させて型を閉じる。そして、第1通路24と空間Sと第2通路44とが発泡成形型1の外部に連通可能に維持された状態で、発泡材料を発泡させる。発泡材料の発泡が完了したのち、型を開き、発泡体を取り出す。
【0026】
上記のように製造された発泡体は、第1凸部23が、キャビティ20と隣接した位置に配置され、第1凸部23と第2シール面42との隙間がゼロであるため、バリが発生せず、形状の精度も高い。さらに、発泡中のガスが第1通路24、空間S、第2通路44の順で抜けるため、急激な圧力の低下も生じにくい。一方、圧力が適度に抜けるため、発泡体内部に形成される空隙をバランスよく形成できる。また、急激な圧力低下によるバリの発生も生じにくい。したがって、本開示の発泡成形型1で製造した発泡体の精度を高く維持できる。
【0027】
以上説明した通り、本開示によれば、精度よく発泡体を形成することができる新規の発泡成形型1および発泡体の製造方法を提供できる。
【0028】
(3)他の実施形態
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【0029】
上記実施形態では、第1型2を上型、第2型4を下型とする例を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば、
図5に示すように、第1型2を下型、第2型4を上型としてもよい。この場合、第1凸部23が下型から凸設し、第2凸部43が上型から凸設してもよい。
【符号の説明】
【0030】
1:発泡成形型,2:第1型,4:第2型
20:キャビティ,22:第1シール面
23:第1凸部,24:第1通路,42:第2シール面
43:第2凸部,44:第2通路,S:空間