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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097388
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】繊維構造物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 11/13 20060101AFI20230630BHJP
   D06M 11/46 20060101ALI20230630BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
D06M11/13
D06M11/46
D06M15/564
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022197618
(22)【出願日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】P 2021212187
(32)【優先日】2021-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】飯牟禮 陽介
(72)【発明者】
【氏名】主森 敬一
【テーマコード(参考)】
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4L031AA20
4L031AA22
4L031AB31
4L031BA04
4L031BA11
4L031BA35
4L031DA12
4L033AA08
4L033AB04
4L033AC10
4L033BA86
4L033CA50
(57)【要約】
【課題】洗濯耐久性の高い抗菌や抗ウイルス性といった機能性を有し、かつ変色が抑制され、風合いにも優れた繊維構造物を得る。
【解決手段】塩化銀担持酸化チタンと、第四級アンモニウム塩が繊維に付着した繊維構造物であり、さらに、ポリウレタン成分を含む繊維構造物であって、前記繊維構造物の質量に対して、前記塩化銀担持酸化チタンが0.003~0.6質量%、前記第四級アンモニウム塩が0.0005~0.5質量%であり、下記(1)および/または(2)を満たしかつ、JISL1922プラーク測定法により、家庭洗濯10回前後の抗ウイルス活性値が2.0以上である繊維構造物。
(1)前記ポリウレタン成分がバインダーとして前記繊維構造物を構成する繊維に付着したポリウレタン樹脂であり、その付着量が前記繊維構造物の質量に対して、0.01~1.0質量%である。
(2)前記ポリウレタン成分が繊維構造物を構成する繊維として含まれるポリウレタン繊維である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化銀担持酸化チタンと、第四級アンモニウム塩が繊維に付着した繊維構造物であり、さらに、ポリウレタン成分を含む繊維構造物であって、前記繊維構造物の質量に対して、前記塩化銀担持酸化チタンが0.003~0.6質量%、前記第四級アンモニウム塩が0.0005~0.5質量%であり、下記(1)および/または(2)を満たしかつ、JISL1922:2016プラーク測定法により、家庭洗濯10回前後の抗ウイルス活性値がいずれも2.0以上である繊維構造物。
(1)前記ポリウレタン成分がバインダーとして前記繊維構造物を構成する繊維に付着したポリウレタン樹脂であり、その付着量が前記繊維構造物の質量に対して、0.01~1.0質量%である。
(2)前記ポリウレタン成分が前記繊維構造物を構成する繊維として含まれるポリウレタン繊維である。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂がポリカーボネート系のウレタン樹脂である請求項1記載の繊維構造物。
【請求項3】
さらに下記(3)または(4)を満たす請求項1または2記載の繊維構造物。
(3)前記ポリウレタン樹脂のイオン性がカチオン性もしくはノニオン性である。
(4)前記ポリウレタン樹脂のイオン性がアニオン性であり、かつ、前記ポリウレタン樹脂は相溶性向上剤とともに繊維に付着しているある。
【請求項4】
JISL1922:2016プラーク測定法により、家庭洗濯10回前後の抗ウイルス活性値が3.0以上である請求項1または2に記載の繊維構造物。
【請求項5】
前記塩化銀担持酸化チタンと前記第四級アンモニウム塩の水溶液、または前記塩化銀担持酸化チタンと前記第四級アンモニウム塩、前記ポリウレタン樹脂の水溶液に繊維を浸漬して、その後、130℃以上の温度で乾燥し、キュアリングする請求項1または2に記載の繊維構造物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維構造物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活の多様化および新型コロナウイルス感染拡大に伴い、健康および衛生面に関する意識が高まり、衣食住の各分野において、従来あった抗菌加工に加えて抗ウイルス加工が種々の製品に求められるようになり、抗菌防臭、抗ウイルス機能などを有する製品が実用化されている。
【0003】
これまで抗菌や抗ウイルスといった機能性を付与する方法としては、金属粒子や、第四級アンモニウム塩を用いる方法(特許文献1)、フマル酸を繊維に付着させる方法(特許文献2)等が提案されている。
【0004】
特許文献1には、第4級アンモニウム塩と金属塩または金属酸化物を有する繊維に関して記載されており、バインダー樹脂としてポリウレタンバインダーを併用することが好ましいとある。
【0005】
特許文献2には、フマル酸を抗菌剤としてポリウレタン等の樹脂を併用し、固着させた技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-184906号公報
【特許文献2】特開2017-197853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、特に、生活様式が大きく変化したことで、健康増進の観点から屋内外での様々な運動が活発に行われており、洗濯後も繰り返し使用できる、機能性に優れた繊維物品の需要が高まっている。
【0008】
抗ウイルス性が付与された様々な繊維物品、特に日常生活で繰り返し洗濯しても、高い抗ウイルス性を維持する繊維物品の開発が望まれる。
【0009】
特許文献1、2に示す方法では、洗濯耐久性が低く、抗ウイルス剤やバインダーの使用量が多く、繊維構造物の風合いなどの品位を損ねるという問題があった。
【0010】
特に、特許文献2記載の技術については、洗濯耐久性を持たせるため、バインダーとして用いるポリウレタン樹脂の併用量が多く、繊維の風合いを損ねかねない。
【0011】
また、高ウイルス性は、一般に抗菌剤を用いて付与することができるが、抗菌性付与のための使用量では、十分な高ウイルス性を発現しない。そのため、洗濯耐久性の高い抗ウイルス性発現のためにはより多くの抗菌剤とバインダーを使用する必要がある。
【0012】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、洗濯耐久性向上のため、抗ウイルス剤対比、バインダー使用量を増やすと、バインダーが抗ウイルス剤の性能を阻害する可能性があり、さらに、生地の吸水性が阻害されるおそれがあることが判明した。
【0013】
また、従来から銀、銅、亜鉛といった金属系の抗ウイルス剤がよく知られているが、これら金属系の抗ウイルス剤を多く処方すると、金属の酸化等による変色が起こり、繊維構造物の品位を損ねるという問題も判明した。
【0014】
本発明は、洗濯耐久性の高い抗菌性や抗ウイルス性といった機能性を有し、かつ変色が抑制され、風合いにも優れた繊維構造物およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明者らは、銀成分として酸化チタンに担持された塩化銀と第四級アンモニウム塩をそれぞれ極微量ずつ併用することで、変色の心配がない、高い抗ウイルス性を持つ繊維構造物が得られることを見出した。さらにポリウレタン樹脂の高い固着性および高い吸尽能を応用し、機能剤を繊維表面に留めることで、洗濯後も高い抗ウイルス性を維持できることを見出した。
【0016】
また、ポリウレタン樹脂を用いなくとも、ポリウレタン繊維の高い吸尽能を利用することで、機能剤の洗濯耐久性が大きく向上することを見出した。
【0017】
すなわち本発明は下記の構成を採用する。
[1]塩化銀担持酸化チタンと、第四級アンモニウム塩が繊維に付着した繊維構造物であり、さらに、ポリウレタン成分を含む繊維構造物であって、前記繊維構造物の質量に対して、前記塩化銀担持酸化チタンが0.003~0.6質量%、前記第四級アンモニウム塩が0.0005~0.5質量%であり、下記(1)および/または(2)を満たしかつ、JISL1922:2016プラーク測定法により、家庭洗濯10回前後の抗ウイルス活性値がいずれも2.0以上である繊維構造物。
(1)前記ポリウレタン成分がバインダーとして前記繊維構造物を構成する繊維に付着したポリウレタン樹脂であり、その付着量が前記繊維構造物の質量に対して、0.01~1.0質量%である。
(2)前記ポリウレタン成分が前記繊維構造物を構成する繊維として含まれるポリウレタン繊維である。
[2]前記ポリウレタン樹脂がポリカーボネート系のウレタン樹脂である[1]記載の繊維構造物。
[3]さらに下記(3)または(4)を満たす[1]または[2]記載の繊維構造物。
(3)前記ポリウレタン樹脂のイオン性がカチオン性もしくはノニオン性である。
(4)前記ポリウレタン樹脂のイオン性がアニオン性であり、かつ、前記ポリウレタン樹脂は相溶性向上剤とともに繊維に付着している。
[4]JISL1922:2016プラーク測定法により、家庭洗濯10回前後の抗ウイルス活性値が3.0以上である[1]~[3]のいずれかに記載の繊維構造物。
[5]前記塩化銀担持酸化チタンと前記第四級アンモニウム塩の水溶液、または前記塩化銀担持酸化チタンと前記第四級アンモニウム塩、前記ポリウレタン樹脂の水溶液に繊維を浸漬して、その後、130℃以上の温度で乾燥し、キュアリングする[1]~[4]のいずれかに記載の繊維構造物の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
ポリウレタンの高い固着性および高い吸尽能を応用し、洗濯耐久性に優れた抗菌性や抗ウイルス性を有する繊維構造物が得られるようになった。本加工技術は、使用する薬剤の安全性が高く、さらに薬剤使用量が少なくても奏功する点で安全性が高い。同様の理由により皮膚刺激等、人体に対する影響は少ない。また、金属系の抗ウイルス剤使用量は極微量であり、そのため前記繊維構造物は、変色が抑制される。
【0019】
また、本発明でバインダーとしてポリウレタン樹脂を使用する場合においても含有量が少なく、抗ウイルス剤の性能を阻害せず、得られる繊維構造物の風合いをほとんど損ねることもない。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
[塩化銀担持酸化チタン]
本発明における塩化銀担持酸化チタンは酸化チタンに担持された塩化銀であり、酸化チタンは二酸化チタンであることが好ましい。塩化銀は安定性が高く、また酸化チタンに担持することで、さらなる安定性向上につながり、銀成分の洗濯耐久性が向上する。
【0022】
本発明における第四級アンモニウム塩としては、特に限定はないが、一つのアルキル基および三つのメチル基を持つものが好ましく、そのアルキル基の炭素数が8~20であることがより好ましい。
【0023】
[第四級アンモニウム塩]
第四級アンモニウム塩は、第四級アンモニウムイオンと各種アニオン(陰イオン)との塩であり、本発明が目的とする抗菌及び抗ウイルス加工剤等を得られる限り特に限定されない。第四級アンモニウムイオンとの塩を形成するアニオンは、塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、ヨウ化物イオン、水酸化物イオン、硝酸イオン及び硫酸イオンの他、分子イオン(多原子イオン)であってよい。アニオンは、塩化物イオンであることが好ましい。第四級アンモニウム塩は、塩化第四級アンモニウムであることが好ましい。
【0024】
第四級アンモニウム塩としては、ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、セトリモニウムクロリド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルジメチルアンモニウムブロミド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムアセテート、ベンザルコニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムヨーダイド、トリメチルデシルアンモニウムブロミド、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド、アルキルトリメチルアンモニウムクロリド、トリメチルオクタデシルアンモニウムクロリド、ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムブロミド、アルキルジメチルハイドロキシエチルアンモニウムクロリド、アルキルトリメチルアンモニウムブロミド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロリド、ジオクチルジメチルアンモニウムブロミド、オクチルデシルジメチルアンモニウクロリド などが挙げられる。
【0025】
また、上記の塩化銀担持酸化チタン、第四級アンモニウム塩の両方を有効成分として含む、ハイキュ(HeiQ)社製の“HeiQ Viroblock NPJ03”(塩化銀担持酸化チタン:0.3質量%、第四級アンモニウム塩成分:0.3質量%)は皮膚刺激性が低く、本発明では極めて好ましく用いることができる。そしてそれを加工してなる繊維構造物は安全性が高いといえる。
【0026】
[ポリウレタン成分]
前記ポリウレタン成分は、特に限定されるものではない。ポリウレタン成分の態様としては、繊維構造物を構成する繊維に付着させて用いる、いわゆるバインダー樹脂の態様であってもよいし、後述のポリウレタン繊維の態様であってもよい。
【0027】
ポリウレタン成分が、繊維にバインダーとして付着させて用いる、いわゆるバインダー樹脂の態様で用いるポリウレタン樹脂である場合には、ポリエステル系もしくは、ポリカーボネート系のポリウレタン樹脂であることが好ましい。ポリカーボネートは構造中にベンゼン環を持つため、他の樹脂、バインダーに比べて抗ウイルス剤の脱落を抑制しうる。また、その合成法については特に限定されるものではない。
【0028】
また、ポリウレタン樹脂を、抗ウイルス剤として併用する塩化銀担持酸化チタン、第四級アンモニウム塩とともに添加して加工液を調製し、繊維化合物の加工に供する場合、その実施規模が工業的な規模である場合、あるいは加工液を調製後の保管時間が長くなる場合、用いるポリウレタン樹脂のイオン性によっては、コンプレックス様の凝集物を形成する場合がある。すなわち、ポリウレタン樹脂がカチオン性またはノニオン性である場合には、通常コンプレックスは形成されないが、ポリウレタン樹脂がアニオン性であると、上記抗ウイルス剤がカチオン性であるためか、加工液調製時や保管中にそれらがコンプレックスを形成しやすい傾向がある。よって、アニオン性のポリウレタン樹脂を使用する場合には相溶性を向上させる相溶性向上剤をさらに添加することが好ましい。加工液中に凝集物が存在する状態で加工を施すと、加工の時に機能剤(抗ウイルス剤)のムラ付きや加工装置の汚れ等の発生が懸念される。したがって、加工液を長期間保存する場合、工業的な規模で実施する場合に凝集が発生する可能性がある加工液に相溶性向上剤を添加することは、加工時に機能剤(抗ウイルス剤)のムラ付きの防止や加工装置の汚れ等を防止することができる点で好ましい態様である。
【0029】
また、ポリウレタン樹脂を抗ウイルス剤と同浴で併用する時に凝集物が発生する場合の他の方法として、カチオン性のポリウレタン樹脂および/またはノニオン性のポリウレタン樹脂の併用や、この併用にさらに相溶性向上剤を添加することによって、高い性能を保ったまま、コンプレックスを抑制することもできる。
【0030】
本発明においてポリウレタン樹脂を用いる場合、その粒径は0.01~0.1μmであることが好ましく、0.03~0.05μmであることがより好ましい。上記粒径を有することで、銀系成分、第四級アンモニウム塩の抗ウイルス性を阻害することなく、繊維に固着することができる。上記粒径はナノトラック粒度分布測定装置UPA-EX150;日機装(株)を用いた光散乱法によって測定した平均粒径である。
【0031】
[相溶性向上剤]
前記相溶性向上剤は、本発明において目的とする液安定性の向上が得られる限り特に限定されない。前記繊維構造物を製造する時に使用する加工液に添加することで、凝集物の発生を抑制し、相溶性を向上させる効果がある。通常分散剤として用いられるものが挙げられ、イオン性を持つ成分とイオン結合し、その成分を分散させることで凝集物発生を抑制する。相溶性向上剤としては、アニオン性の界面活性剤等が一般的であり、ナフタリンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物等のアニオン系界面活性剤が挙げられる。このようなアニオン系界面活性剤としては市販品を用いることが可能であり、具体的にはK&Dファインケミカル社製の“ラべリン(登録商標)”FC-45M等が挙げられる。また、抗ウイルス剤のカチオン性を失活させないためには両性の界面活性剤を使用しても良い。そのような両性の界面活性剤としてはカルボキシベタイン型両性活性剤等を用いることが可能であり、その市販品としては、例えばライオンスペシャリティケミカルズ(株)製の“エナジコール(登録商標)”L-30B、“エナジコール(登録商標)”C-40Hなどが挙げられる。
【0032】
凝集物の発生有無は下記の方法で確認することとする。300mlの加工液を調製し、3000rpmで5分間攪拌し、1時間放置したあとの様子を確認する。凝集物発生時は、加工液が2層に分離したり、半固体状の凝集物が発生するので、この発生の有無を観察することにより、凝集物の発生有無を確認することができる。
【0033】
上記相溶性向上剤の含有量は、繊維構造物の質量に対して0.1~1.0質量%であることが十分に効果を得るためには好ましく、0.2~0.8質量%であることがより好ましい。
【0034】
また、上記成分に加えて、吸水剤を併用してもよい。吸水剤併用によって、抗ウイルス性能を損なうことなく、吸水性を得ることができる。併用する吸水剤としては、ポリエステル樹脂系、シリコーン系、ポリアクリル系の吸水剤が挙げられる。
【0035】
[繊維構造物を構成する繊維]
繊維構造物を構成する繊維としては、特に制限はなく、合成繊維や天然繊維、またそれらの混用品であってもよい。合成繊維としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリアルキレンテレフタレート、その共重合体(カチオン可染ポリエステルであってよい)等からなるポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維等が挙げられる。天然繊維としては、例えば綿やウール、レーヨン、キュプラ等が挙げられる。これらは一種または二種以上を併用して用いることができる。
【0036】
本発明においては、機能性の観点からポリエステル繊維を含むことが好ましい。ポリエステル繊維は単独でも、他の繊維と併用して用いることが可能である。ポリエステル繊維としては、カチオン可染ポリエステル繊維とそれ以外のポリエステル繊維を併用してもよい。繊維構造物を構成する繊維中ポリエステル繊維を45質量%以上含んでいることが好ましい。
【0037】
ポリエステル繊維以外の繊維としては、合成繊維や天然繊維、またそれらの混用品であってもよい。ポリエステル繊維以外の合成繊維としては、例えばナイロン繊維、アクリル繊維等が挙げられる。天然繊維としては、例えば綿やウール、レーヨン、キュプラ等が挙げられる。これらは紡績糸、混繊糸、交織、交編、混綿等いずれの形態で含まれていても構わない。
【0038】
また、ポリウレタン繊維を用いることは、本発明におけるポリウレタン成分として機能し得る点で好ましい。
【0039】
また、ポリウレタン成分として、ポリウレタン繊維を用いる場合には、ポリウレタン以外の繊維として合成繊維や天然繊維が挙げられ、またそれらの混用品であってもよい。合成繊維としては、例えばポリエステル繊維やカチオン可染ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維等が挙げられる。天然繊維としては、例えば綿やウール、レーヨン、キュプラ等が挙げられる。これらは紡績糸、混繊糸、交織、交編、混綿等いずれの形態で含まれていても構わない。
【0040】
上記ポリエステル繊維やポリウレタン繊維は、両者を併用することも可能であるし、さらに他の繊維とともに用いることもできる。その他の繊維としては、使用するポリエステル繊維やポリウレタン繊維以外の合成繊維、天然繊維を用いることができる。上記その他の繊維中、合成繊維としては、例えばナイロン繊維、アクリル繊維等が挙げられる。天然繊維としては、例えば綿やウール、レーヨン、キュプラ等が挙げられる。これら他の繊維は一種以上で用いることが可能である。
【0041】
繊維構造物において、二種以上の繊維を組み合わせて用いる場合、その使用形態は混紡糸、複合紡績糸、混繊糸、複合糸、交織、交編、混綿等いずれの形態であっても構わない。
【0042】
[繊維構造物]
本発明の繊維構造物は、糸形態であっても、織編物等布帛の形態であっても、さらにそれらを加工した繊維製品等の形態であっても構わない。
【0043】
本発明においては、前記の塩化銀担持酸化チタンと第四級アンモニウム塩を繊維に付着させ、さらに繊維構造物中にポリウレタン成分を含むようにすることによって、高い抗ウイルス性が発現する。塩化銀担持酸化チタンと第四級アンモニウム塩を併用することで、第四級アンモニウム塩がウイルスを不安定化させ、銀イオンがウイルスに対して性能を発揮しやすく、短時間でウイルスを不活化することが可能である。更にポリウレタン成分として、ポリウレタン樹脂をバインダーとして、塩化銀担持酸化チタンと第四級アンモニウム塩と併用、もしくはポリウレタン繊維が繊維構造物中に存在することで、繰り返し洗濯後も性能が維持される高い洗濯耐久性を発現することが可能である。ポリウレタン樹脂の繊維に対する高い固着性および/またはポリウレタン繊維の高い吸尽能が洗濯耐久性向上に寄与したと考えられる。通常、塩化銀担持酸化チタンと第四級アンモニウム塩のみが表面に存在する繊維又は繊維物品を、各種界面活性剤を含む洗濯用洗剤を使用して洗浄すると、洗濯処理後に抗ウイルス性が大幅に低下し得るが、塩化銀担持酸化チタンと第四級アンモニウム塩とともに、ポリウレタン成分を共存させることで洗濯耐久性を向上し得るので、たとえ複数回洗濯しても、優れた抗ウイルス性を発揮し得る。
【0044】
更に、繊維構造物に含まれる塩化銀担持酸化チタンは、0.003~0.6質量%であり、0.01~0.1質量%であることがより好ましく、0.02~0.05質量%であることが最も好ましい。塩化銀担持酸化チタンが少なすぎると抗ウイルス性は発現しない。一方、多すぎると繊維構造物が変色する可能性がある。
【0045】
更に、繊維構造物に含まれる第四級アンモニウム塩は、0.0005~0.5質量%であり、0.005~0.1質量%であることがより好ましく、0.01~0.05質量%であることが最も好ましい。第四級アンモニウム塩が少なすぎると抗ウイルス性は発現しない。一方、多すぎると加工時の加工液が泡立ち、均一な加工が難しくなる。
【0046】
本発明においてポリウレタン成分がバインダーとして使用される場合、上記塩化銀担持酸化チタンと第四級アンモニウム塩などの抗ウイルス剤と、ポリウレタン樹脂の使用量を制御することが重要である。洗濯耐久性向上のため、抗ウイルス剤対比、バインダー使用量を増やすと、バインダーが抗ウイルス剤の性能を阻害する可能性、生地の吸水性が阻害される可能性がある。
【0047】
バインダーとしてポリウレタン樹脂を用いる場合、繊維構造物に含まれる当該ポリウレタン樹脂は、0.01~1.0質量%であり、0.05~0.7質量%であることがより好ましく、0.1~0.5質量%であることが最も好ましい。ポリウレタン樹脂が少ないと洗濯後の抗ウイルス性は大きく低下する。一方、重量%の上限と下限の間である場合、抗菌・抗ウイルス剤の抗菌・抗ウイルス性を阻害することなく、より洗濯耐久性が高い繊維構造物となる。
【0048】
前述のとおり、ポリウレタン樹脂をバインダーとして繊維に付着させるかわりに、繊維構造物を構成する繊維として、ポリウレタン繊維を用いることも可能である。その使用量は繊維構造物を構成する繊維の質量に対して、1~10質量%であることが好ましい。
【0049】
塩化銀担持酸化チタンと第四級アンモニウム塩から成る抗ウイルス剤を繊維に対して加工する方法として、例えば、前記抗ウイルス剤を含む加工剤に繊維を浸漬する方法及び物品に加工剤を塗布(又は塗工)又は噴霧等する方法を例示することができる。なお、浸漬する繊維は、糸形態であっても。織編物等布帛の形態であっても、さらにそれらを加工した繊維製品等の形態であっても構わない。また、バインダーとしてポリウレタン樹脂を使用する場合は、前記抗ウイルス剤とともにポリウレタン樹脂を含有させた加工剤を用いることができる。以下、塩化銀担持酸化チタンおよび第四級アンモニウム塩を繊維に付着させるための加工方法としては、パッド、ドライ(Pad、Dry)加工および浴中加工が好ましく、バインダー樹脂としてポリウレタン樹脂を併用加工する方法としては、Pad、Dry加工が好ましい。浴中加工としては、調製した加工液に生地を浸漬し、その後100℃以上で乾燥し、キュアリング処理することが好ましい。また、Pad、Dry加工としては、生地を加工液にディップ、ニップ(Dip、Nip)した後、130℃以上で乾燥し、キュアリング処理することが好ましい。ただ、本発明が目的とする抗菌及び抗ウイルス物品(又は加工品)を得られる限り、特に制限されることはない。
【0050】
また、吸水剤を併用する場合、浴中加工、Pad、Dry加工どちらで併用しても構わない。浴中加工の場合は、抗ウイルス加工の前に行うことが好ましい。Pad、Dry加工の場合は抗ウイルス加工と同時、もしくは抗ウイルス加工と吸水剤加工の2段加工のどちらでも構わない。2段加工とは一方の加工をした後にもう一方の加工を行うことを指す。抗ウイルス性の高い洗濯耐久性を得るためには抗ウイルス加工の後に吸水剤を加工する2段加工であることが好ましい。
【0051】
かくして得られる、本発明の繊維構造物は、JISL1922:2016プラーク測定法により、家庭洗濯10回前後の抗ウイルス活性値がいずれも2.0以上を達成することが可能となる。
【0052】
そして本発明の繊維構造物は、布帛の形態であることが好ましく、カジュアルウェアやユニフォームなどの衣料類やベッドシーツ、枕カバーといった寝装具類、小物類等に対して用いられる。
【実施例0053】
以下、本発明を実施例および比較例により具体的に説明する。但し、本発明はその要旨を逸脱しない限り、下記の実施例に限定されるものではない。
【0054】
(抗ウイルス性評価法)
JIS L1922:2016プラーク測定法に従って測定を行った。以下に詳細を示す。
1.試験片0.4gをバイアル瓶に入れ、試験ウイルス懸濁液0.2mLを滴下後、バイアル瓶のふたをする。
2.バイアル瓶を25℃で2時間静置する。
3.洗い出し液20mLを加えて試験片から試験菌を洗い出し、洗い出し液中の生ウイルス数をプラーク測定法により測定する。
4.下記の式に従い抗ウイルス活性値を算出する。
抗ウイルス活性値={log(対照試料・培養後生菌数)-log(対照試料・接種直後生菌数)}-{log(試験試料・培養後生菌数)-log(試験試料・接種直後生菌数)}
対照試料には、標準布(綿)を使用した。
【0055】
抗ウイルス活性値≧3.0である場合、合格である。対応ウイルス種としては、A型インフルエンザウイルス(H3N2)ATCC VR-1679を選択した。ウイルスはエンベロープという最外膜を持つものと持たないものに大別されるが、A型インフルエンザウイルス及び、新型コロナウイルスはエンベロープを持つウイルスに分類される。
【0056】
(家庭洗濯10回後の抗ウイルス性評価)
家庭洗濯を10回行った試験片を用い、上記JIS L1922:2016プラーク測定法に従って抗ウイルス性評価を行った。上記家庭洗濯の方法は後述するJIS L0217:1995 103法)を用いた。
【0057】
(家庭洗濯の方法)
JIS L0217:1995 103法を用いた。具体的には、JIS C9606 001:1993、同002:2007に規定される遠心式脱水装置付きの家庭用電気洗濯機(Panasonic製NA-F50B9)を用い、標準水量を示す水位線まで液温40℃の水を入れ、JAFET標準配合洗剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びアルファオレフィンスルホン酸ナトリウムを配合)を40mL使用する。この洗濯液に浴比が、1:30になるように試料、負荷布を投入して運転を開始した。
【0058】
25分間洗濯処理した後、運転を止め、試料及び負荷布を脱水機で脱水し、次に洗濯液を30℃以下の新しい水に代えて、同一の浴比で2分間すすぎ洗いを行った。2分間のすすぎ洗いを行った後、運転を止め、試料と負荷布を脱水し、再び2分間すすぎ洗いを行い、脱水し、直接日光の影響を受けない状態で、つり干しをした。
【0059】
(風合い評価) 得られた繊維構造物の風合いについての評価は官能評価で行い、未加工品対比風合いがほとんど変わらないものを◎(優良)、衣服用として柔らかく、体の動きを阻害しないものを〇(良好)、やや硬く、体の動きをやや制限するものを△(やや不良)、硬すぎて、体を動かした際に大きな抵抗感があるものを×(不良)とした。
【0060】
(吸水性評価法)
JIS L1907:2010 滴下法を用いた。試験片を試験片保持枠に取り付け,試験片の表面からビュレットの先端までが10mmの高さになるように調整する。次に,ビュレットから水を1滴滴下させ,水滴が試験片の表面に達したときからその試験片が水滴を吸収するにつれて鏡面反射が消え,湿潤だけが残った状態までの時間をストップウォッチで1秒単位まで測定する。
【0061】
(変色性評価)
また、得られた繊維構造物の変色性についての評価は官能評価で行い。未加工生地と比べて、変色が十分抑制され、ほとんど変色がないものを◎(優良)、変色が抑制されるが、わすかに変色しているものを〇(良好)、変色が抑制されるが、やや変色しているものを△(やや不良)、著しく変色しているものを×(不良)とした。
【0062】
<実施例1>
下記A,B成分を含むハイキュ(HeiQ)社製の“HeiQ Viroblock NPJ03”(塩化銀担持酸化チタン:0.3質量%、第四級アンモニウム塩成分:0.3質量%)を用意した。
(A)銀成分:塩化銀担持酸化チタン
(B)第四級アンモニウム塩:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド
下記ポリウレタン樹脂を用意した。
(C)ポリウレタン樹脂:ポリカーボネート系ウレタン樹脂(第一工業製薬株式会社製のスーパーフレックス460 固形分38質量%、アニオン性ポリウレタン樹脂)
【0063】
(試験布)
試験布としてポリエステル繊維100質量%の白生地ニット(縦40cm×横30cmに裁断したもの)を用意した(表中T100)。
【0064】
(加工液の調製およびその加工方法)
A,Bを含む“HeiQ Viroblock NPJ03”が125g/L、Cが10g/Lとなるように秤量し、水に加えて撹拌し、加工剤を調製した。
【0065】
上記試験布を加工剤に十分に浸漬させたのち、試験布をニップし(ピックアップ率 80%)、余剰な加工剤を除去した。その後、乾燥させ、キュアリングすることで本発明におけるポリエステル系繊維構造物を得た。
【0066】
得られた繊維構造物は洗濯10回前後で十分な抗ウイルス性を持ち、風合いも未加工品対比、ほとんど変化しないことが分かった。
【0067】
<実施例2>
下記A,B成分を含むHeiQ社製の“HeiQ Viroblock NPJ03”(銀成分:0.3質量%、第四級アンモニウム塩成分:0.3質量%)を用意した。
(A)銀成分:実施例1に同じ
(B)第四級アンモニウム塩:実施例1に同じ
(C)ポリウレタン樹脂:実施例1に同じ
【0068】
(試験布)
試験布としてカチオン可染ポリエステル繊維100質量%の白生地ニット(縦40cm×横30cmに裁断したもの)を用意した(CDP100)。
ピックアップ率 80%
【0069】
(加工液の調製およびその加工方法)
A,Bを含む“HeiQ Viroblock NPJ03”が125g/L、Cが10g/Lとなるように秤量し、水に加えて撹拌し、加工剤を調製した。
加工方法は実施例1と同じとした。
【0070】
得られた繊維構造物は洗濯10回前後で十分な抗ウイルス性を持ち、風合いは未加工品対比、ほとんど変化がなかった。
【0071】
<実施例3>
下記A,B成分を含むHeiQ社製の“HeiQ Viroblock NPJ03”(銀成分:0.3質量%、第四級アンモニウム塩成分:0.3質量%)を用意した。
(A)銀成分:実施例1に同じ
(B)第四級アンモニウム塩:実施例1に同じ
【0072】
(試験布)
試験布としてポリエステル繊維95質量%、ポリウレタン繊維5質量%の白生地ニット(縦40cm×横30cmに裁断したもの)を用意した(表中T95/Pu5)。
PickUp率 80%
【0073】
(加工液の調製およびその加工方法)
A,Bを含む“HeiQ Viroblock NPJ03”が125g/Lとなるように秤量し、水に加えて撹拌し、加工剤を調製した。
加工方法は実施例1と同じとした。
【0074】
得られた繊維構造物は洗濯10回前後で十分な抗ウイルス性を持ち、風合いは未加工品対比、変化がなかった。
【0075】
<実施例4>
下記A,B成分を含むHeiQ社製の“HeiQ Viroblock NPJ03”(銀成分:0.3質量%、第四級アンモニウム塩成分:0.3質量%)を用意した。
(A)銀成分:実施例1に同じ
(B)第四級アンモニウム塩:実施例1に同じ
【0076】
(試験布)
ナイロン繊維90質量%、ポリウレタン繊維10質量%の白生地織物(縦40cm×横30cmに裁断したもの)を用意した(表中Ny90/Pu10)。
PickUp率 80%
【0077】
(加工液の調製およびその加工方法)
A,Bを含む“HeiQ Viroblock NPJ03”が125g/Lとなるように秤量し、水に加えて撹拌し、加工剤を調製した。
【0078】
加工方法は実施例1と同じとした。
【0079】
得られた繊維構造物は洗濯10回前後で十分な抗ウイルス性を持ち、風合いは未加工品対比、変化がなかった。
【0080】
<実施例5>
下記剤を用意した。
(A)銀成分:HeiQ社製の“HeiQ PureTAG”(酸化チタンに担持された塩化銀を7.5質量%含む)
(B)第四級アンモニウム塩:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(東京化成工業株式会社製)
(C)ポリウレタン樹脂:実施例1に同じ
【0081】
(試験布)
試験布は実施例1に同じとした。
【0082】
(加工液の調製およびその加工方法)
Aを5.0g/L、Bが0.38g/L、Cが10g/Lとなるように秤量し、水に加えて撹拌し、加工剤を調製した。
加工方法は実施例1と同じとした。
【0083】
実施例1に同じく、得られた繊維構造物は洗濯10回前後で十分な抗ウイルス性を持ち、風合いも未加工品対比、ほとんど変化しないことが分かった。
【0084】
<実施例6>
下記剤を用意した。
(A)銀成分:実施例5に同じ
(B)第四級アンモニウム塩:テトラブチルアンモニウムアセテート(東京化成工業株式会社製)
(C)ポリウレタン樹脂:実施例1に同じ
【0085】
(試験布)
試験布は実施例1に同じとした。
【0086】
(加工液の調製およびその加工方法)
Aを5.0g/L、Bが0.38g/L、Cが10g/Lとなるように秤量し、水に加えて撹拌し、加工剤を調製した。
【0087】
加工方法は実施例1と同じとした。
【0088】
得られた繊維構造物は実施例1~5には劣るものの洗濯10回前後で十分な抗ウイルス性を持つことがわかった。
【0089】
<実施例7>
下記剤を用意した。
(A)銀成分:実施例5に同じ
(B)第四級アンモニウム塩:実施例5に同じ
(C)ポリウレタン樹脂:実施例1に同じ
【0090】
(試験布)
試験布は実施例1に同じとした。
【0091】
(加工液の調製およびその加工方法)
Aを1.67g/L、Bが0.38g/L、Cが10g/Lとなるように秤量し、水に加えて撹拌し、加工剤を調製した。
【0092】
加工方法は実施例1と同じとした。
【0093】
実施例1に比べて、銀成分の使用量を減らしても、本発明で規定する範囲内であれば、性能は少し劣るものの、洗濯前後で高い性能が得られることがわかった。
【0094】
<実施例8>
下記剤を用意した。
(A)銀成分:実施例5に同じ
(B)第四級アンモニウム塩:実施例5に同じ
(C)ポリウレタン樹脂:実施例1に同じ
【0095】
(試験布)
試験布は実施例1に同じとした。
【0096】
(加工液の調製およびその加工方法)
Aを0.83g/L、Bが0.38g/L、Cが10g/Lとなるように秤量し、水に加えて撹拌し、加工剤を調製した。
【0097】
加工方法は実施例1と同じとした。
【0098】
実施例7からさらに銀成分の使用量を減らしても、本発明で規定する範囲内であれば、性能は少し劣るものの、洗濯前後で高い性能が得られることがわかった。
【0099】
<実施例9>
下記剤を用意した。
(A)銀成分:実施例5に同じ
(B)第四級アンモニウム塩:実施例5に同じ
(C)ポリウレタン樹脂:実施例1に同じ
【0100】
(試験布)
試験布は実施例1に同じとした。
【0101】
(加工液の調製およびその加工方法)
Aを5.0g/L、Bが0.088g/L、Cが10g/Lとなるように秤量し、水に加えて撹拌し、加工剤を調製した。
【0102】
加工方法は実施例1と同じとした。
【0103】
実施例1に比べて、第四級アンモニウム塩の使用量を減らしても、本発明で規定する範囲内であれば、性能は少し劣るものの、洗濯前後で高い性能が得られることがわかった。
【0104】
<実施例10>
下記剤を用意した。
(A)銀成分:実施例5に同じ
(B)第四級アンモニウム塩:実施例5に同じ
(C)ポリウレタン樹脂:実施例1に同じ
【0105】
(試験布)
試験布は実施例1に同じとした。
【0106】
(加工液の調製およびその加工方法)
Aを5.0g/L、Bが0.038g/L、Cが10g/Lとなるように秤量し、水に加えて撹拌し、加工剤を調製した。
【0107】
加工方法は実施例1と同じとした。
【0108】
実施例7から、さらに第四級アンモニウム塩の使用量を減らしても、本発明で規定する範囲内であれば、性能は少し劣るものの、洗濯前後で高い性能が得られることがわかった。
【0109】
<実施例11>
下記A,B成分を含むHeiQ社製の“HeiQ Viroblock NPJ03”(塩化銀担持酸化チタン:0.3質量%、第四級アンモニウム塩成分:0.3質量%)を用意した。
(A)銀成分:塩化銀担持酸化チタン
(B)第四級アンモニウム塩:セトリモニウムクロリド
下記剤を用意した。
(C)ポリウレタン樹脂:ポリエーテル系ウレタン樹脂(第一工業製薬株式会社製の“スーパーフレックス”E-4800 固形分40質量%)
【0110】
(試験布)
試験布は実施例1に同じとした。
【0111】
(加工液の調製およびその加工方法)
A,Bを含む“HeiQ Viroblock NPJ03”が125g/L、Cが10g/Lとなるように秤量し、水に加えて撹拌し、加工剤を調製した。
【0112】
加工方法は実施例1と同じとした。
【0113】
<実施例12>
下記A,B成分を含むHeiQ社製の“HeiQ Viroblock NPJ03”(銀成分:0.3質量%、第四級アンモニウム塩成分:0.3質量%)を用意した。
(A)銀成分:実施例1に同じ
(B)第四級アンモニウム塩:実施例1に同じ
(C)ポリウレタン樹脂:実施例1に同じ
(D)ポリエステル樹脂:ポリエステル樹脂(松本油脂製薬株式会社製のTM-SS21 固形分10質量%)
【0114】
(試験布)
試験布は実施例1と同じとした。
【0115】
(加工液の調製およびその加工方法)
A,Bを含む“HeiQ Viroblock NPJ03”が125g/L、Cが10g/Lとなるように秤量し、水に加えて撹拌し、調製した加工液Aと、Dが18.8g/Lとなるように秤量し、水に加えて撹拌し、調製した加工液Bを用意した。
【0116】
上記試験布を加工剤Aに十分に浸漬させたのち、試験布をニップし(ピックアップ率 80%)、余剰な加工剤を除去した。その後、乾燥させた試験布を加工液Bに十分に浸漬させたのち、試験布をニップし(PickUp率 80%)、余分な加工液を除去し、乾燥、キュアリングすることで本発明におけるポリエステル系繊維構造物を得た。
【0117】
得られた繊維構造物は洗濯10回前後で十分な抗ウイルス性を持ち、風合いは未加工品対比、ほとんど変化がなかった。
【0118】
<実施例13>
下記A,B成分を含むHeiQ社製の“HeiQ Viroblock NPJ03”(銀成分:0.3質量%、第四級アンモニウム塩成分:0.3質量%)を用意した。
(A)銀成分:実施例1に同じ
(B)第四級アンモニウム塩:実施例1に同じ
(C)ポリウレタン樹脂:実施例1に同じ
(D)相溶性向上剤:アニオン性界面活性剤(K&Dファインケミカル社製のラべリンFC-45M)
【0119】
(試験布)
試験布は実施例1と同じとした。
【0120】
(加工液の調製およびその加工方法)
A,Bを含む“HeiQ Viroblock NPJ03”が125g/L、CおよびDが10g/Lとなるように秤量し、水に加えて撹拌し、加工剤を調製した。
加工方法は実施例1と同じとした。
【0121】
得られた繊維構造物は洗濯10回前後で十分な抗ウイルス性を持ち、風合いは未加工品対比、ほとんど変化がなかった。
【0122】
(凝集物の有無確認)
上記調製した加工液について下記の方法で凝集物の有無を確認した。その結果、凝集物は確認されなかった。
【0123】
[凝集物の発生有無]
上記で調製した加工液300mlを、3000rpmで5分間攪拌したあと、1時間放置してその様子を確認した。加工液が2層に分離したり、半固体状の凝集物が発生した場合は、凝集物発生あり、調製直後の加工液の状態と変化なく、加工液の分離、凝集物の発生が認められない場合は凝集物発生なしと判断した。
【0124】
比較のため、実施例1で使用した加工液と同じ加工液を調製し、上記の方法で凝集物の発生有無を確認した。加工液の調製直後に存在していなかった凝集物の発生が認められた。
【0125】
<比較例1>
下記剤を用意した。
(A)銀成分:実施例5に同じ
(B)第四級アンモニウム塩:添加なし
(C)ポリウレタン樹脂:実施例1に同じ
【0126】
(試験布)
試験布は実施例1に同じとした。
【0127】
(加工液の調製およびその加工方法)
Aを5.0g/L、Cが10g/Lとなるように秤量し、水に加えて撹拌し、加工剤を調製した。
【0128】
加工方法は実施例1と同じとした。
【0129】
得られた繊維構造物は、未洗濯から性能が低いものであった。銀成分と第四級アンモニウム塩の併用が重要であるとわかる。
【0130】
<比較例2>
下記剤を用意した。
(A)銀成分: 塩化銀担持アルミノケイ酸塩
(B)第四級アンモニウム塩:実施例5に同じ
(C)ポリウレタン樹脂:実施例1に同じ
【0131】
(試験布)
試験布は実施例1に同じとした。
【0132】
(加工液の調製およびその加工方法)
Aを0.38g/L、Bが0.38g/L、Cが10g/Lとなるように秤量し、水に加えて撹拌し、加工剤を調製した。
【0133】
加工方法は実施例1と同じとした。
【0134】
得られた繊維構造物は、未洗濯から性能が低いものであった。銀成分は塩化銀担持酸化チタンであることが必要であるといえる。
【0135】
<比較例3>
下記剤を用意した。
(A)銀成分:実施例1に同じ
(B)第四級アンモニウム塩:実施例1に同じ
(C)ポリウレタン樹脂:添加なし
【0136】
(試験布)
試験布は実施例1に同じとした。
【0137】
(加工液の調製およびその加工方法)
A,B成分を含む“HeiQ Viroblock NPJ03”を125g/Lとなるように秤量し、水に加えて撹拌し、加工剤を調製した。
【0138】
加工方法は実施例1と同じとした。
【0139】
得られた繊維構造物は、未洗濯時こそ実施例1のものと同様の高い抗ウイルス性に優れたものであったが、洗濯10回後は大きく性能が低下する結果となった。樹脂もしくは繊維としてポリウレタン成分の併用が必要であるとわかった。
【0140】
<比較例4>
下記剤を用意した。
(A)銀成分:実施例5に同じ
(B)第四級アンモニウム塩:実施例5に同じ
(C)ポリウレタン樹脂:実施例1に同じ
【0141】
(試験布)
試験布は実施例1に同じとした。
【0142】
(加工液の調製およびその加工方法)
Aを0.33g/L、Bが0.38g/L、Cが10g/Lとなるように秤量し、水に加えて撹拌し、加工剤を調製した。
【0143】
加工方法は実施例1と同じとした。
【0144】
得られた繊維構造物は、十分な抗ウイルス性を示さなかった。銀成分の使用量が少なく、ウイルスの不活化に不十分であったと考えられる。
【0145】
<比較例5>
下記剤を用意した。
(A)銀成分:実施例5に同じ
(B)第四級アンモニウム塩:実施例5に同じ
(C)ポリウレタン樹脂:実施例1に同じ
【0146】
(試験布)
試験布は実施例1に同じとした。
【0147】
(加工液の調製およびその加工方法)
Aを5.0g/L、Bが0.0050g/L、Cが10g/Lとなるように秤量し、水に加えて撹拌し、加工剤を調製した。
【0148】
加工方法は実施例1と同じとした。
【0149】
得られた繊維構造物は、十分な抗ウイルス性を示さなかった。第四級アンモニウム塩の使用量が少なく、ウイルスの不活化に不十分であったと考えられる。
【0150】
<比較例6>
下記剤を用意した。
(A)銀成分:実施例5に同じ
(B)第四級アンモニウム塩:実施例5に同じ
(C)ポリウレタン樹脂:実施例1に同じ
【0151】
(試験布)
試験布は実施例1に同じとした。
【0152】
(加工液の調製およびその加工方法)
Aを5.0g/L、Bが0.38g/L、Cが0.13g/Lとなるように秤量し、水に加えて撹拌し、加工剤を調製した。
【0153】
加工方法は実施例1と同じとした。
【0154】
得られた繊維構造物は、未洗濯時こそ実施例1のものと同様に抗ウイルス性に優れたものであったが、バインダーとしてのポリウレタン樹脂の繊維への付着量が少ないため洗濯10回後は大きく性能が低下する結果となった。
【0155】
<比較例7>
下記剤を用意した。
(A)銀成分:実施例5に同じ
(B)第四級アンモニウム塩:実施例5に同じ
(C)ポリウレタン樹脂:実施例1に同じ
【0156】
(試験布)
試験布は実施例1に同じとした。
【0157】
(加工液の調製およびその加工方法)
Aを150g/L、Bが0.38g/L、Cが10g/Lとなるように秤量し、水に加えて撹拌し、加工剤を調製した。
【0158】
加工方法は実施例1と同じとした。
【0159】
得られた繊維構造物は、洗濯10回前後で高い抗ウイルス性を持つものであったが、塩化銀担持酸化チタン質量の繊維構造物質量に対する割合が大きいため、生地の変色が大きく、繊維構造物の色彩に大きく影響があった。
【0160】
<比較例8>
下記剤を用意した。
(A)銀成分:実施例5に同じ
(B)第四級アンモニウム塩:実施例5に同じ
(C)ポリウレタン樹脂:実施例1に同じ
【0161】
(試験布)
試験布は実施例1に同じとした。
【0162】
(加工液の調製およびその加工方法)
Aを5.0g/L、Bが13g/L、Cが10g/Lとなるように秤量し、水に加えて撹拌し、加工剤を調製した。
【0163】
加工方法は実施例1と同じとした。
【0164】
得られた繊維構造物は、抗ウイルス性のバラつきが大きく、活性値も大きく変動した。他の実施例、比較例に比べ、第四級アンモニウム塩の使用量が過剰であったため、加工時の加工液の泡立ちが激しく、それが加工ムラの原因になったと考えられる。
【0165】
<比較例9>
下記剤を用意した。
(A)銀成分:実施例1に同じ
(B)第四級アンモニウム塩:実施例1に同じ
(C)ポリウレタン樹脂:実施例1に同じ
【0166】
(試験布)
試験布は実施例1に同じとした。
【0167】
(加工液の調製およびその加工方法)
A,B成分を含む“HeiQ Viroblock NPJ03”を125g/L、Cが50g/L、となるように秤量し、水に加えて撹拌し、加工剤を調製した。
【0168】
加工方法は実施例1と同じとした。
【0169】
得られた繊維構造物は未洗濯から性能が低く、風合いも硬く、不良であった。ポリウレタン樹脂の使用量が過剰であったため、銀成分と第四級アンモニウム塩を被覆し、性能を阻害していると考えられる。
【0170】
<比較例10>
下記剤を用意した。
(A)銀成分:塩化銀
(B)第四級アンモニウム塩:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(東京化成工業株式会社製)
(C)ポリウレタン樹脂:実施例1に同じ
【0171】
(試験布)
試験布は実施例1に同じとした。
【0172】
(加工液の調製およびその加工方法)
Aが0.38g/L、Bが0.38g/L、Cが10g/Lとなるように秤量し、水に加えて撹拌し、加工剤を調製した。
【0173】
加工方法は実施例1と同じとした。
【0174】
得られた繊維構造物は、未洗濯時こそ実施例1のものと同様に抗ウイルス性に優れたものであったが、洗濯10回後は大きく性能が低下する結果となった。塩化銀が酸化チタンに担持されたものに比べて、洗濯時に脱落しやすく、洗濯後の性能が低下したと考えられる。
【0175】
<比較例11>
下記剤を用意した。
(A)銀成分:添加無し
(B)第四級アンモニウム塩:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(東京化成工業株式会社製)
(C)ポリウレタン樹脂:実施例1に同じ
【0176】
(試験布)
試験布は実施例1に同じとした。
【0177】
(加工液の調製およびその加工方法)
Bが0.38g/L、Cが10g/Lとなるように秤量し、水に加えて撹拌し、加工剤を調製した。
【0178】
加工方法は実施例1と同じとした。
【0179】
得られた繊維構造物は、十分な抗ウイルス性を示さなかった。銀成分と第四級アンモニウム塩の併用が必要であるとわかった。
【0180】
【表1】
【0181】
【表2】