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特開2023-97455日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097455
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備
(51)【国際特許分類】
   A63B 23/00 20060101AFI20230703BHJP
   A63B 22/02 20060101ALI20230703BHJP
   A63B 7/00 20060101ALI20230703BHJP
   A63B 6/00 20060101ALI20230703BHJP
   A63B 17/00 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
A63B23/00 J
A63B22/02
A63B7/00
A63B6/00
A63B17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213568
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】522001611
【氏名又は名称】高橋 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106378
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 宏一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 守
(57)【要約】
【課題】日常生活における予期せぬ転倒を防止したり、万が一転倒しても身体にダメージが及ばないようにするか、転んだりしても身体に与えるダメージを最小限に抑える日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備を提供する。
【解決手段】日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備100は、危険回避・対処能力向上用運動学習設備を所定の場所に設置した際に設備利用者の頭部より上方に位置する設備固定部110と、設備固定部から吊り下げられ利用者の身体の姿勢のバランスを意図的に喪失させたあらゆる状態においても利用者の身体のバランス喪失状態を維持するバランス喪失状態体感用運動学習部120を備え、利用者の日常生活における予期せぬ様々な形態の転倒に至る過程の疑似体験を反復練習することを可能とする。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体の姿勢のバランスを喪失した際の状況を疑似体験する日常生活における危険回避能力の向上を図ると共に、危険対処能力の向上を図る運動学習施設であって、
前記日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、任意の場所に設置可能となっており、
前記日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、当該危険回避・対処能力向上用運動学習設備を所定の場所に設置した際に設備利用者の頭部より上方に位置する設備固定部と、前記設備固定部から吊り下げられ前記利用者の身体の姿勢のバランスを意図的に喪失させたあらゆる状態においても当該利用者の身体のバランス喪失状態を維持するバランス喪失状態体感用運動学習部を備え、
前記利用者の日常生活における予期せぬ様々な形態の転倒に至る過程の疑似体験を反復練習することを可能とすることを特徴とする日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備。
【請求項2】
身体の姿勢のバランスを喪失した際の状況を疑似体験する日常生活における危険回避能力の向上を図ると共に、危険対処能力の向上を図る運動学習施設であって、
前記日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、任意の場所に設置可能となっており、
前記日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、第1の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備と、第2の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備乃至第7の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備のうちの少なくとも何れか1つとの組み合わせからなり、
前記第1の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、当該危険回避・対処能力向上用運動学習設備を所定の場所に設置した際に設備利用者の頭部より上方に位置する設備固定部と、前記設備固定部から吊り下げられ前記利用者の身体の姿勢のバランスを意図的に喪失させたあらゆる状態においても当該利用者の身体のバランス喪失状態を維持するバランス喪失状態体感用運動学習部を備えることで、前記利用者の日常生活における予期せぬ様々な形態の転倒に至る過程の疑似体験を反復練習することを可能とするようになっており、
前記第2の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、前記利用者が歩行する方向において、当該利用者が片足ずつ所定高さまで上げて跨がなければならない下肢挙上能力向上用運動学習部がこの利用者の歩行方向に沿って所定間隔隔てて複数設けられ、
前記複数の下肢挙上能力向上用運動学習部は、前記利用者が前記複数の下肢挙上能力向上用運動学習部をそれぞれ1つずつ跨いで歩行していくに当たって、最初の前記下肢挙上能力向上用運動学習部から最後の前記下肢挙上能力向上用運動学習部まで当該利用者が跨ぐのに必要な下肢の挙上高さが段階的に高くなるように設置されており、かつ
前記利用者がこれら複数の下肢挙上能力向上用運動学習部を跨ぐ際に身体の安全な姿勢を保ちながら跨ぐことを可能とするための手すりであって、それぞれの跨ぎ動作を少なくとも片方の手で握りながら行うことを可能にする手すりが当該利用者の歩行方向少なくとも一方の側に備わっており、
前記第3の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、前記利用者が所定の距離だけ進行する領域において当該利用者の進行方向に沿って所定間隔隔てて設けられた複数の潜り抜け能力向上用運動学習部からなり、
前記複数の潜り抜け能力向上用運動学習部はそれぞれ、利用者が少なくとも身体を直立状態から屈めることで潜り抜け可能とした潜り抜け空間を形成するようになっており、かつそれぞれの前記枠状体の高さが前記利用者の進行方向に沿って段階的に低くなっており、これに応じて利用者は身体を屈める高さを段階的に低くしなければ当該すり抜け能力向上用障害物を潜り抜けることができないようになっており、
前記第4の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、前記利用者が所定の距離だけ進行する領域において当該利用者の進行方向に沿って所定間隔隔てて設けられた複数の身体昇降能力向上用運動学習部からなり、
前記複数の身体昇降能力向上用運動学習部は、それぞれ高さの異なる箱型の形状を有しており、前記利用者が前記第4の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備を利用するに当たって、運動学習開始位置から運動学習終了位置に至るまでそれぞれの身体昇降能力向上用運動学習部の上面を両足で踏み越えながら当該身体昇降能力向上用運動学習部の全てを踏み越え可能とするためにそれぞれの身体昇降能力向上用運動学習部の踏み越え高さが徐々に高くなるように配置されており、
前記第5の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、横歩きによる狭い空間を通過する複数の横歩きすり抜け能力向上用運動学習部であって、互いに異なる所定幅を有しかつそれぞれを横歩きして通過する複数の横歩きすり抜け能力向上用運動学習部からなり、
前記横歩きすり抜け能力向上用運動学習部のそれぞれについて、利用者の横歩きすり抜け方向の幅が、運動学習開始位置から運動学習終了位置に至るまでの所定の長さに亘って段階的に狭くなる複数の横歩きすり抜け空間を形成するように所定間隔隔てて順々に配置されおり、
前記第6の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、利用者の歩行中において予期せず現れる障害物からの外力を利用者が受けないように回避するか受けてもその利用者が受ける影響力を最小限に抑えるための運動学習設備であって、
前記利用者が歩行する方向に沿って利用者の頭上に運動学習部材吊り下げ用支持部が備わると共に、当該運動学習部材吊り下げ用支持部から利用者の歩行する方向に沿って所定間隔隔てて複数のサンドバッグ状の衝突影響度合い低下用運動学習部材が吊り下げられており、
前記第7の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、利用者が身体にダメージを負うことなく、様々な形態の転倒疑似体験を繰り返し可能とする運動学習設備であって、
前記利用者が立った状態から倒れ込んでも怪我をしない程度の弾力性を有する所定高さの転倒時対処能力向上用運動学習マットと、その転倒時対処能力向上用運動学習マットの周囲の少なくとも一部に当該転倒時対処能力向上用運動学習マットの周方向に沿ってそれぞれの高さが段階的に高くなるように配置されている転倒時対処能力向上用運動学習マットへの倒れ込み踏み台を備えることで、前記各踏み台からの前記転倒時対処能力向上用運動学習マットへの様々な形態の転倒疑似体験を怪我することなく可能とした運動学習設備からなることを特徴とする日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日常生活における予期せぬ転倒を防止したり、万が一転倒しても身体にダメージが及ばないようにするか、転んだりしても身体に与えるダメージを最小限に抑える日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢になるにつれて一般的に身体のバランス感覚に衰えが生じたり、下肢の筋肉や両腕の筋力、体全体の柔軟性が衰えたりして転倒しそうな時等に危険回避のための反射神経の迅速な反応の低下により思わぬ怪我をしてしまうことも多くなる。
【0003】
また、例えば歩道を歩いている時に下肢の筋肉の低下により両足を十分に上げ下げせずに歩いていると、予期せぬ所にある突起物や歩行中に目に入らない縁石等に足先を引っ掛けて転倒して思わぬ怪我をしてしまう恐れがある。
【0004】
このような転倒を防止するための対策として、踏板の上に立った状態においてこの踏板を水平方向に固定せずに、その上に立った人の重心の位置に応じて踏板の傾きが一定にならないようあえて変わるようにすることで、踏板の上での立った状態での身体のバランスを保つように運動学習する所謂バランスボードのような練習器具が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
また、下肢の筋肉を鍛えて歩行中にしっかりと足を上げ下げして歩行できるようにすることで、歩道の縁石や予期せぬ位置にある突起物に躓いて転倒したり階段の上り下り時に足を階段の段部にひっかけたり足を階段から踏み外したりするのを防止する練習器具も知られている(例えば特許文献2参照)。
【0006】
また、歩行中に予期せぬ所にある突起物をいち早く見つける認識能力と、素早くそれを避けて転倒を防止する歩行中の下肢の素早い危険回避動作のための反射神経の機能を向上させるための練習器具も知られている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-171431号公報
【特許文献2】特開2008-104701号公報
【特許文献3】特開2006-115968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した特許文献1に記載された練習器具は、あくまで訓練者がバランスを崩すことなくバランスボードの上面に立った状態を如何に維持し続けるかを目的としている。そのため、一旦バランスを崩すと体験したこともないような姿勢で練習器具の周囲に一瞬のうちに倒れ込んでしまい、身体に大きなダメージを与える恐れがある。
【0009】
また、特許文献2及び特許文献3に記載された練習器具は、あくまで下肢の筋力向上や下肢の上下運動に伴う反射能力の向上を図ることを目的としている。即ち、両文献とも左右の手でそれぞれ掴み用手すりを握り締めながら下肢の左足と右足の交互の上下運動や反射的な足の組み込み動作を行うようなっている。そのため、両手でそれぞれ掴み用手すりをしっかりと握りしめた状態で練習器具を使用し続けることができるので、訓練者が立位状態から転倒するようなことはまずありえない。
【0010】
以上のような練習器具を使用するだけでは、例えば高齢者が歩行中や階段の昇降の際に一旦バランスを崩すと、反射神経の衰えにより両腕のみならず上半身をコンクリートの地面や階段の角等に打ち付けたり、更には顔面や頭部を地面に打ち付けたりしてしまい、身体に重大なダメージを与えるのを防止することは難しい。
【0011】
また、近年の異常気象により冬季においてはかなり外気温が低下して路面が凍結することが多くなり、上述のような突起物がなくても歩行中に足を滑らせてその勢いで瞬間的に転倒してしまう危険性も増えている。
【0012】
以上のような高齢者による転倒の危険性は、家の外の歩道だけでなく家の中においても階段を降りるときや、床に置きっぱなしにしたままの箱や荷物、カーペット、廊下から和室等の他の部屋に入る際に敷居等の僅かな段差に足先をうっかり引っ掛けて転倒してしまうことも十分に考えられる。
【0013】
また、家の中では年齢に伴う下肢の筋力の衰えや上述のような歩行中のみならず、バランス感覚の低下により例えば食器棚の上に乗せたものを取る時に椅子の上につま先立って手を伸ばした瞬間にバランスを崩して、床にそのまま倒れ込んでしまう恐れもある。
【0014】
更には、フローリングの床面や和室に這わせた電源タップの延長コードが何らかの理由で僅かに浮き上がったままとなっていて、高齢の居住者がこれに気付かずに足先を引っ掛けて転倒したり、姿勢を崩して近くにある家具の角部に顔や頭、上半身の一部をぶつけたりして思わぬ怪我をしてしまうことも起こり得る。
【0015】
以上のように高齢になると、上半身の筋力の低下や体全体の柔軟性の低下、更には反射神経の低下により両腕だけで身体を守ることができず、顔や最悪の場合には頭を強打してしまい、顔や頭の骨折や脳内出血等の深刻な事態に陥ってしまう。
【0016】
なお、上述のような問題は高齢者のみならず、脳卒中やその他の疾病を患っていることによる下肢の一部麻痺や怪我等の何らかの原因により歩行が不自由になった人達にとっても同様の問題となり得る。
【0017】
このような実際の転倒の経験は、その際に気が動転して全く覚えていなかったり、頭部の打撲や身体への強い衝撃が加わったりすることで、その瞬間の記憶が残りづらいことが往々にしてある。また、仮に覚えていたとしても、思い出したくない負の記憶として定着するだけで、ネガティブな経験として残るに過ぎない。これによって、実際に転倒を経験しても危険回避能力向上のための運動学習には至らない。
【0018】
本発明の目的は、日常生活における予期せぬ転倒を防止したり、万が一転倒しても身体にダメージが及ばないようにするか、転んだりしても身体に与えるダメージを最小限に抑える日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述した課題を解決するために、本発明の請求項1に係る日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、
身体の姿勢のバランスを喪失した際の状況を疑似体験する日常生活における危険回避能力の向上を図ると共に、危険対処能力の向上を図る運動学習施設であって、
前記日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、任意の場所に設置可能となっており、
前記日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、当該危険回避・対処能力向上用運動学習設備を所定の場所に設置した際に設備利用者の頭部より上方に位置する設備固定部と、前記設備固定部から吊り下げられ前記利用者の身体の姿勢のバランスを意図的に喪失させたあらゆる状態においても当該利用者の身体のバランス喪失状態を維持するバランス喪失状態体感用運動学習部を備え、
前記利用者の日常生活における予期せぬ様々な形態の転倒に至る過程の疑似体験を反復練習することを可能とすることを特徴としている。
【0020】
また、本発明の請求項2に記載の日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、
身体の姿勢のバランスを喪失した際の状況を疑似体験する日常生活における危険回避能力の向上を図ると共に、危険対処能力の向上を図る運動学習施設であって、
前記日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、任意の場所に設置可能となっており、
前記日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、第1の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備と、第2の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備乃至第7の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備のうちの少なくとも何れか1つとの組み合わせからなり、
前記第1の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、当該危険回避・対処能力向上用運動学習設備を所定の場所に設置した際に設備利用者の頭部より上方に位置する設備固定部と、前記設備固定部から吊り下げられ前記利用者の身体の姿勢のバランスを意図的に喪失させたあらゆる状態においても当該利用者の身体のバランス喪失状態を維持するバランス喪失状態体感用運動学習部を備えることで、前記利用者の日常生活における予期せぬ様々な形態の転倒に至る過程の疑似体験を反復練習することを可能とするようになっており、
前記第2の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、前記利用者が歩行する方向において、当該利用者が片足ずつ所定高さまで上げて跨がなければならない下肢挙上能力向上用運動学習部がこの利用者の歩行方向に沿って所定間隔隔てて複数設けられ、
前記複数の下肢挙上能力向上用運動学習部は、前記利用者が前記複数の下肢挙上能力向上用運動学習部をそれぞれ1つずつ跨いで歩行していくに当たって、最初の前記下肢挙上能力向上用運動学習部から最後の前記下肢挙上能力向上用運動学習部まで当該利用者が跨ぐのに必要な下肢の挙上高さが段階的に高くなるように設置されており、かつ
前記利用者がこれら複数の下肢挙上能力向上用運動学習部を跨ぐ際に身体の安全な姿勢を保ちながら跨ぐことを可能とするための手すりであって、それぞれの跨ぎ動作を少なくとも片方の手で握りながら行うことを可能にする手すりが当該利用者の歩行方向少なくとも一方の側に備わっており、
前記第3の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、前記利用者が所定の距離だけ進行する領域において当該利用者の進行方向に沿って所定間隔隔てて設けられた複数の潜り抜け能力向上用運動学習部からなり、
前記複数の潜り抜け能力向上用運動学習部はそれぞれ、利用者が少なくとも身体を直立状態から屈めることで潜り抜け可能とした潜り抜け空間を形成するようになっており、かつそれぞれの前記枠状体の高さが前記利用者の進行方向に沿って段階的に低くなっており、これに応じて利用者は身体を屈める高さを段階的に低くしなければ当該すり抜け能力向上用障害物を潜り抜けることができないようになっており、
前記第4の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、前記利用者が所定の距離だけ進行する領域において当該利用者の進行方向に沿って所定間隔隔てて設けられた複数の身体昇降能力向上用運動学習部からなり、
前記複数の身体昇降能力向上用運動学習部は、それぞれ高さの異なる箱型の形状を有しており、前記利用者が前記第4の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備を利用するに当たって、運動学習開始位置から運動学習終了位置に至るまでそれぞれの身体昇降能力向上用運動学習部の上面を両足で踏み越えながら当該身体昇降能力向上用運動学習部の全てを踏み越え可能とするためにそれぞれの身体昇降能力向上用運動学習部の踏み越え高さが徐々に高くなるように配置されており、
前記第5の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、横歩きによる狭い空間を通過する複数の横歩きすり抜け能力向上用運動学習部であって、互いに異なる所定幅を有しかつそれぞれを横歩きして通過する複数の横歩きすり抜け能力向上用運動学習部からなり、
前記複数の横歩きすり抜け能力向上用運動学習部のそれぞれについて、利用者の横歩きすり抜け方向の幅が、運動学習開始位置から運動学習終了位置に至るまでの所定の長さに亘って段階的に狭くなる複数の横歩きすり抜け空間を形成するように所定間隔隔てて順々に配置されおり、
前記第6の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、利用者の歩行中において予期せず現れる障害物からの外力を利用者が受けないように回避するか受けてもその利用者が受ける影響力を最小限に抑えるための運動学習設備であって、
前記利用者が歩行する方向に沿って利用者の頭上に運動学習部材吊り下げ用支持部が備わると共に、当該運動学習部材吊り下げ用支持部から利用者の歩行する方向に沿って所定間隔隔てて複数のサンドバッグ状の衝突影響度合い低下用運動学習部材が吊り下げられており、
前記第7の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、利用者が身体にダメージを負うことなく、様々な形態の転倒疑似体験を繰り返し可能とする運動学習設備であって、
前記利用者が立った状態から倒れ込んでも怪我をしない程度の弾力性を有する所定高さの転倒時対処能力向上用運動学習マットと、その転倒時対処能力向上用運動学習マットの周囲の少なくとも一部に当該転倒時対処能力向上用運動学習マットの周方向に沿ってそれぞれの高さが段階的に高くなるように配置されている転倒時対処能力向上用運動学習マットへの倒れ込み踏み台を備えることで、前記各踏み台からの前記転倒時対処能力向上用運動学習マットへの様々な形態の転倒疑似体験を怪我することなく可能とした運動学習設備からなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、日常生活における予期せぬ転倒を防止したり、万が一転倒しても身体にダメージが及ばないようにするか、転んだりしても身体に与えるダメージを最小限に抑える日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】ハンモックに掴まりながら転倒状態を疑似体験する運動学習設備を示す斜視図である。
図2】高さが順々に高くなる板材を跨ぎながら進む運動学習設備を示す斜視図(図2(a))、上側から見た平面図(図2(b))、及び手すりのみを示す斜視図(図2(c))である。
図3】高さが順々に低くなる空間を徐々に屈みながら進む運動学習設備を示す斜視図である。
図4】高さが順々に高くなる踏み台を乗り越えて進む運動学習設備を示す斜視図である。
図5】体を横にして狭い隙間を通り抜ける運動学習設備を示す斜視図である。
図6】サンドバッグを押しのけながら前に進む運動学習設備を示す斜視図である。
図7】柔らかい転倒時対処能力向上用運動学習マットに倒れ込んで転倒状態を疑似体験する運動学習設備の斜視図(図7(a))、側面図(図7(b))、上側から見た平面図(図7(c))である。
図8】設備利用者の身体の各部位を説明する説明図である。
図9】設備利用者が、図1に示す運動学習設備を使用するに際して、台座に座った状態でハンモックからなる運動学習設備に掴まり安全を確保しながら前後方向に倒れる運動学習の過程を、前方には(a)から(b)の順に、後方には(c)から(d)の順に示す説明図である。
図10】設備利用者が立ったまま、ハンモックからなる運動学習設備に身体の一部を支えた状態で安全を確保しながら前後方向に倒れる運動学習の過程を、前方には(a)から(c)の順に、後方には(d)から(f)の順に示す説明図である。
図11】設備利用者が立ったまま、ハンモックからなる運動学習設備に身体の一部を支えた状態で安全を確保しながら横方向に倒れる運動学習の過程を(a)から(c)の順に示す説明図である。
図12】設備利用者が、高さが順々に高くなる板材からなる運動学習設備を跨ぐ運動学習の過程を(a)から(e)の順に示す説明図である。
図13】設備利用者が、高さが順々に低くなる空間を形成する運動学習設備を、身体を屈めて潜る運動学習の過程を(a)から(e)の順に示す説明図である。
図14】設備利用者が、高さが順々に高くなる踏み台からなる運動学習設備を両足で順々に踏み越えて進んでいく運動学習の過程を(a)から(h)の順に示す説明図である。
図15】設備利用者が、順々に幅が狭くなっていく隙間を形成する運動学習設備を横書きで通り抜ける運動学習の過程を(a)から(d)の順に示す説明図である。
図16】設備利用者が、その進む方向に沿って並んで配置されたサンドバッグからなる運動学習設備を押しのけながら進んでいく運動学習の過程を側方から見て(a)から(c)の順に示すと共に、前方から見て(d)から(e)の順に示す説明図である。
図17】設備利用者が、転倒状態を疑似体験するための転倒時対処能力向上用運動学習マットと踏み台からなる運動学習設備の踏み台や周囲の床から転倒時対処能力向上用運動学習マットレスに倒れ込む運動学習の過程を倒れこみ踏み台の有無や高さに応じて(a)から(c)、(d)から(f)、(g)から(i)、(j)から(l)に分けて示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の各実施形態に係る日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備について図面に基づいて説明する。なお、各設備は、図面に示された大きさや専用スペースに限定されるものではなく、例えば、施設の規模や利用者の人数、利用者の身体機能の重症度に応じて適宜選択可能となっている。
【0024】
最初に第1の実施形態に係る日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備100について図面に基づいて説明する。図1は、バランス喪失状態運動学習部としてのハンモックに掴まりながら転倒状態を疑似体験する第1の実施形態に係る日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備100を示す斜視図である。
【0025】
第1の実施形態に係る日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備100は、身体の姿勢のバランスを喪失した際の状況を疑似体験する日常生活における危険回避能力の向上を図ると共に、危険対処能力の向上を図る第1の運動学習施設であり、ハンモック利用型の形態を有している。
【0026】
第1の日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備100は、身体の姿勢のバランスを喪失した際の状況を疑似体験することで日常生活における危険回避能力の向上を図ると共に、危険対処能力の向上を図る運動学習施設である。また、第1の日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備100は、任意の場所に設置可能となっている。
【0027】
そして、この第1の日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備100は、危険回避・対処能力向上用運動学習設備を所定の場所に設置した際に設備利用者の頭部より上方に位置する設備固定部110と、設備固定部110から吊り下げられ利用者の身体の姿勢のバランスを意図的に喪失させたあらゆる状態においても利用者の身体のバランス喪失状態を、身体にダメージを与えることなく維持するためのものであってハンモックの形態をなすバランス喪失状態体感用運動学習部120を備えている。そして、設備利用者の日常生活における予期せぬ様々な形態の転倒に至る過程の疑似体験を反復練習することを可能とすることを特徴としている。
【0028】
設備固定部110は、本実施形態の場合、3人の利用者の頭上に延在するハンモック吊り下げ棒状部材111と、ハンモック吊り下げ棒状部材111の両端に備わり、利用者3人が同時に運動学習しても設備自体を床にしっかりと固定した状態を維持するための逆V字形の端部支持部材112からなる。
【0029】
なお、設備固定部110は、上述の実施形態の構造に限らず、バランス喪失状態体感用運動学習部120を安全かつしっかりと吊下げることができれば、その他の形態の支持固定部や、天井に安全な状態を保ちながら取り付ける形態を有していても本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【0030】
また、バランス喪失状態体感用運動学習部120は、利用者の身体をどのようなバランス喪失状態を再現してもそのまま転倒しないように支える所定幅の平たいバンド状や網目の帯状をなした所謂ハンモックの形態を有している。
【0031】
より具体的には、ハンモックは、利用者の身体のある程度の体表面積をしっかりと支えるものであればどのような形態や材質でできていても良く、所謂幅の広い帯状のものやバンド状のもの、網状のものであって或る程度の幅を有するもののような様々な形態が考えられる。更には、ハンモックは、利用者が使用中に身体にダメージを負うことのない形態を有しており、例えばこれを満たせば弾力性がなくても良く、若しくは利用者の安全を確保できる範囲内で弾力性を有していても良い。
【0032】
なお、ハンモックの形態を有するバランス喪失状態体感用運動学習部120は、上述の形態に加えて、利用者の身体に直接装着するためのものであって落下防止ベルトの役目を果たすようになっており、利用者の身体に予め直接装着可能な落下防止ベルトの役目を果たすハーネス(図示せず)と、設備固定部110から吊り下げられ、ハーネスと着脱可能にしっかり結合する転落回避ベルトの組み合わせから構成されていても良い。
【0033】
また、図1においてはそれぞれの利用者が個別に必要とする運動学習の種類、身体状況や、その日の体調、年齢や性別、身長、体重等に合わせて運動学習中に座ったままで運動学習するか立ったままで運動学習するか、何れかの場合に適宜補助的に利用したりしなかったりすることが可能となっている。即ち、図1に示す構成においては、必要に応じて用いることができる利用者座り姿勢維持のための軽量でしっかりした強度を有する座り状態維持用箱131,132,133,・・・(130)が必要に応じて取り外し可能に設置されている。
【0034】
なお、座り状態維持用箱130を用いた場合の本発明設備の運動学習の仕方の一例については、図9及び後述するこの図面に対応する文章によって詳細に説明すると共に、座り状態維持用箱130を用いることなく運動学習する仕方の一例については図10及び図11並びに後述するこれらの図面に対応する文章によって説明する。
【0035】
以上に加えて、図1において二点鎖線で示す矩形状をなすものは、本発明設備の利用中に利用者が自分の身体全体を視覚的に確認できる付加的設備としての(本発明設備においては必須のものでは無い)鏡150である。この鏡150は、本発明設備の設置された施設の例えば壁の一部に常時固定しておくのが良い。しかしながら、鏡150については必須なものではなく、これが無くても本発明の作用効果を十分に発揮することは可能である。
【0036】
これによって、利用者が鏡を介して自分の姿勢とこれに伴う擬似転倒の状態の過程を逐次確認しながら本発明設備を用いることで、運動学習効果をより高めるようになっている。
【0037】
また、鏡150が設置されていることで、補助者や介助者の助言の理解の容易化をより高めたり、利用者がいなくても自ら視覚的に適切な運動学習の仕方をフィードバックしたりして習得することが可能となる。
【0038】
なお、図1に示した鏡150は、この図面に示す本運動学習設備100のみに対して設置することに限定されず、後述する運動学習設備200乃至運動学習設備700の何れにおいても、適当な配置で設置することが可能でありかつ設置しておくことによって、上述した運動学習を効率的に行うことが可能となる点で好ましいと言える。
【0039】
続いて、第2の実施形態に係る日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備について説明する。第2の実施形態に係る日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、第1の実施形態と同様に身体の姿勢のバランスを喪失した際の状況を疑似体験する日常生活における危険回避能力の向上を図ると共に、危険対処能力の向上を図る運動学習施設である。
【0040】
ここで、第2の実施形態の特徴的な構成としては、日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、第1の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備100と、第2の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備200乃至第7の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備700のうちの少なくとも何れか1つとの組み合わせからなることにある。
【0041】
なお、日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備100を構成するにあたって、第1の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備100と、第2の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備200乃至第7の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備700のうちの少なくとも何れか1つとの組み合わせについては、例えばエレベーター付きビルの中の適当な階数において全体的にまた部分的に設けられた平たく段差や凹凸のない所謂フローリング状の床面の上にその場所に合った最適な組み合わせを適宜選択して好ましいレイアウトを決めて配置するのが良い。
【0042】
この際、利用者の年齢層や人数、利用者の平均的な身体のコンディション状態の程度に合わせて上述した平たく段差や凹凸のない床面に上述の程度を考慮して必要な運動学習設備を組み合わせ、利用者が運動学習し易い順番や配置で床面に設置したり、運動学習設備の種類によっては天井から安全面を確保した状態で吊り下げたりしても良い。
【0043】
従って、上述の組み合わせの中で設備利用者の年齢や危険回避能力の程度、設備利用者が使ってみることを希望する危険回避・対処能力向上用運動学習設備の種類、危険回避・対処能力向上用運動学習設備の設置スペースの制約上の条件に基づいて様々な組み合わせを個別の状況に応じて適宜選択可能である。
【0044】
なお、第1の危険回避・対処能力向上用運動学習設備100は、第1の実施形態において説明済みのため、これと少なくとも1つ組み合わせて日常生活における危険回避・対処能力向上用運動学習設備を実現可能な、第2の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備200乃至第7の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備700をそれぞれ図面に基づいて説明していく。
【0045】
最初に第2の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備200について図面に基づいて説明する。図2は、高さが順々に高くなる板材を跨ぎながら進む第2の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備200を示す斜視図である。
【0046】
第2の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備200は、図2に示したように、利用者が歩行する方向において、設備利用者が片足ずつ所定高さまで上げて跨がなければならない下肢挙上能力向上用運動学習部としての複数の下肢挙上能力向上用跨ぎ板211,212,213,・・・(210)がこの利用者の歩行方向に沿って所定間隔隔てて複数設けられている。
【0047】
そして、複数の下肢挙上能力向上用跨ぎ板210は、利用者が複数の下肢挙上能力向上用跨ぎ板211,212,213,・・・をそれぞれ1つずつ跨いで歩行していくに当たって、最初の下肢挙上能力向上用跨ぎ板211から最後の下肢挙上能力向上用跨ぎ板210+n(nは2以上の自然数)まで利用者が跨ぐのに必要な下肢の挙上高さが段階的に高くなるように設置されている。
【0048】
なお、下肢挙上能力向上用跨ぎ板210は、利用者が歩む床面に固定されていたり、それぞれが通常は弾性支持部材によって床面から直立状態を保っており、もしも利用者が跨ぐ際に足先がひっかかったら倒れたりするように利用者の身体機能に合わせて適宜選択することが本発明において可能である。
【0049】
更には、この第2の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備200においては、設備利用者がこれら複数の下肢挙上能力向上用跨ぎ板210を跨ぐ際に身体の安全な姿勢を保ちながら跨ぐことを可能とするための手すりであって、それぞれの跨ぎ動作を少なくとも片方の手で握りながら行うことを可能にする手すり220が設備利用者の歩行方向に沿って幅方向両側に備わっている。なお、手すり220は、図2に示す構成と異なり、幅方向どちらか一方の側に備わっていても良く、場合によっては全く備わっていなくても良い。
【0050】
更には、所定間隔隔てて配置された複数枚の下肢挙上能力向上用跨ぎ板210の途中の跨ぎ板に利用者の足先が引っかかって倒れた場合、それより利用者の進む方向に配置された複数の跨ぎ板がそれぞれの弾性支持部材の弾性力に抗して利用者自身が進む方向にドミノ倒し状のように倒れてそれぞれ一部が重なり合った複数の跨ぎ板の上に倒れ込むような構造にすれば安全上好ましい。
【0051】
これに加えて、下肢挙上能力向上用跨ぎ板の利用者と対向する面側に薄いクッションシート部材を貼り付けておけば、上述のようなドミノ倒しのようにそれぞれが一部重なりながら倒れた複数枚の下肢挙上能力向上用跨ぎ板の上に利用者が倒れ込む際に身体に衝撃を与えることがなく安全上好ましい。
【0052】
更には、フローリングの床面や和室に這わせた電源タップの延長コードが何らかの理由で僅かに浮き上がったままとなっていて、高齢の居住者がこれに気付かずに足先を引っ掛けて転倒したり、姿勢を崩して近くにある家具の角部2顔や頭、上半身の一部をぶつけたりして思わぬ怪我をしてしまうことも起こり得る。
【0053】
なお、ここでいう高さが順々に高くなっている意味合いとしては、高さが段階的に高くなっていくという包括的な広い概念も含むものとする。具体的には、互いに高さが同じで高さの低い下肢挙上能力向上用跨ぎ板210を3枚から4枚を運動学習開始位置から連続して配置し、それに続いて互いに高さが同じでこれらより少し高さが高くなった下肢挙上能力向上用跨ぎ板210を2枚から3枚連続して配置し、更には互いに高さが同じでより高さの高くなった下肢挙上能力向上用跨ぎ板210を1枚又は2枚だけ連続して配置するようにしても良い。
【0054】
これによって、設備利用者が最初の複数の最も高さの低い下肢挙上能力向上用跨ぎ板210を連続的に跨いでいくことで、利用者の身体機能を高めるためのウォーミングアップになり、運動学習の効果を兼ねることが可能となる。その結果、更に高さの高くなるそれらに続く下肢挙上能力向上用跨ぎ板210を気分的にも身体機能的にも跨ぎ易くなる。
【0055】
また、身体機能の劣った設備利用者の場合は、最初の最も高さの低い数枚の下肢挙上能力向上用跨ぎ板210を連続して跨ぐ動作を何度もルーチンワーク的に繰り返すことで、身体に無理な負荷をかけることなくかつ気分的にも運動学習を続けたくなるモチベーションを高めることが可能となる。
【0056】
続いて、第3の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備300について図面に基づいて説明する。図3は、高さが順々に低くなる空間を徐々に屈みながら進む第3の運動学習設備300を示す斜視図である。
【0057】
第3の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備300は、図3に示したように、設備利用者が所定の距離だけ進む領域において利用者の進む方向に沿って所定間隔隔てて立設した状態で配置された複数の潜り抜け能力向上用運動学習部材311,312,313,・・・(310)からなる。
【0058】
そして、これら複数の運動学習部材310はそれぞれ、利用者が少なくとも身体を直立状態から屈めることで潜り抜け可能とした潜り抜け空間を形成するようになっている。更には、これら複数の運動学習部材310は、それぞれの枠状体の高さが設備利用者の進行方向に沿って段階的に低くなっており、これに応じて設備利用者は身体を屈める高さを段階的に低くしなければ次々に現れるすり抜け能力向上用運動学習部材311,312,313,・・・(310)を潜り抜けることができないようになっている。
【0059】
また、最後の潜り抜け能力向上用運動学習部材310+n(nは2以上の自然数)においては、利用者が腹ばいになりながら匍匐前進しなければならない程度の構成を有していると、この第3の運動学習設備による身体能力の向上に関して非常に有用となる。
【0060】
なお、本実施形態のくぐり抜け能力向上用運動学習部材310は、利用者がこの設備を利用中に転倒しそうになっても、しっかりと掴んで安全を確保できる支持部としても利用するのに十分な強度と剛性を有していることが好ましい。
【0061】
なお、ここでいう高さが順々に低くなっている意味合いとしては、高さが段階的に低くなっていくという包括的な広い概念も含むものとする。具体的には、互いに高さが同じで高さの高い潜り抜け能力向上用運動学習部材310を3枚から4枚を運動学習開始位置から連続して配置し、それに続いて互いに高さが同じでこれらより少し高さが低くなった潜り抜け能力向上用運動学習部材310を2枚から3枚連続して配置し、更には互いに高さが同じでより高さの低くなった潜り抜け能力向上用運動学習部材310を1枚又は2枚だけ連続して配置するようにしても良い。
【0062】
これによって、設備利用者が最初の複数の最も高さの高い潜り抜け能力向上用運動学習部材310を少しだけ屈みながら連続的に潜っていくことで、利用者の身体機能を高めるためのウォーミングアップになり、運動学習の効果を高めることが可能となる。その結果、更に高さの低くなるそれらに続く潜り抜け能力向上用運動学習部材310を気分的にも身体機能的にも潜り抜け易くなる。
【0063】
また、身体機能の劣った設備利用者の場合は、最初の最も高さの高い数枚の潜り抜け能力向上用運動学習部材310を連続して潜り抜ける動作を何度もルーチンワーク的に繰り返すことで、身体に無理な負荷をかけることなくかつ気分的にも運動学習を続けたくなるモチベーションを高めることが可能である。
【0064】
続いて、第4の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備400について図面に基づいて説明する。図4は、高さが順々に高くなる踏み台を乗り越えて進む第4の運動学習設備400を示す斜視図である。
【0065】
第4の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備400は、設備利用者が所定の距離だけ進行する領域において設備利用者の進行方向に沿って所定間隔隔てて配置された複数の身体昇降能力向上用運動学習部411,412,413,・・・(410)からなる。そして、それぞれの身体昇降能力向上用運動学習部410は、部材ごとに高さの異なる箱型の形状を有している。
【0066】
設備利用者が第4の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備400を利用するに当たって、所定の距離に亘って設けられたこの身体昇降能力向上用運動学習部410の運動学習開始位置から運動学習終了位置に至るまで、それぞれの身体昇降能力向上用運動学習部410の上面を両足で踏み越えながら可能な限りの高さの身体昇降能力向上用運動学習部410を踏み越え可能とするために、それぞれの身体昇降能力向上用運動学習部411,412,413,・・・の踏み越え高さが徐々に高くなるように配置されている。
【0067】
なお、ここでいう身体昇降能力向上用運動学習部410の箱型の形状とは、本発明の作用を発揮し得る範囲内でのあらゆる形態のものを含む。従って、利用者の体重を十分に支えることができる矩形のテーブルであって4本の脚の周囲を板やしっかりした厚紙、段ボール等で囲って形成された箱状のものを、高さの低い順から徐々に高くなるように順番に並べて配置しても良い。
【0068】
なお、ここでいう高さが順々に高くなっている意味合いとしては、高さが段階的に高くなっていくという包括的な広い概念も含むものとする。具体的には、互いに高さが同じで高さの低い身体昇降能力向上用運動学習部410を3個から4個を運動学習開始位置から連続して配置し、それに続いて互いに高さが同じでこれらより少し高さが高くなった身体昇降能力向上用運動学習部410を2個から3個連続して配置し、更には互いに高さが同じでより高さの高くなった身体昇降能力向上用運動学習部410を1個又は2個だけ連続して配置するようにしても良い。
【0069】
これによって、設備利用者が最初の複数の最も高さの低い身体昇降能力向上用運動学習部410を連続的に昇降しながら越えていくことで、利用者の身体機能を高めるためのウォーミングアップになり、運動学習の効果を兼ねることが可能となる。その結果、更に高さの高くなるそれらに続く身体昇降能力向上用運動学習部410を気分的にも身体機能的に昇降しながら越え易くなる。
【0070】
また、身体機能の劣った設備利用者の場合は、最初の最も高さの低い数個の身体昇降能力向上用運動学習部410を連続して昇降しながら越える動作を何度もルーチンワーク的に繰り返すことで、身体に無理な負荷をかけることなくかつ気分的にも運動学習を続けたくなるモチベーションを高めることが可能となる。
【0071】
続いて、第5の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備500について図面に基づいて説明する。図5は、体を横にして狭い隙間を通り抜ける第5の運動学習設備を示す斜視図である。
【0072】
第5の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備は、横歩きによる狭い空間を通過する複数の横歩きすり抜け能力向上用運動学習部である。具体的には、互いに異なる所定幅を有しかつそれぞれを横歩きして通過する横歩きすり抜け空間形成部材511,512,513,・・・(510)から構成されている。
【0073】
横歩きすり抜け空間形成部材510のそれぞれは、設備利用者の横歩きすり抜け方向の幅が所定の距離だけ規定された運動学習開始位置から運動学習終了位置に至るまでの所定の長さに亘って段階的に狭くなる複数の横歩きすり抜け空間を形成するように順々に配置されている。
【0074】
なお、図5においては、1つの大きな枠体で区切られる空間を一方の横枠から他方の横枠に亘ってその隙間の幅が順々に狭くなっていく仕切板を用いた構成を有している。そして、設備利用者が1つの大きな枠体の中に直列に並ぶ幅の広い横歩きすり抜け空間を枠体の一方から他方に横歩きで通り抜けた後にそれに隣接してそれより少しだけ狭くなる横歩きすり抜け空間を枠体の他方から一方に横歩きで通り抜けるようになっている。
【0075】
つまり、設備利用者は、九十九折り状態に進んで広い幅の横歩きすり抜け空間形成部材511から最後の横歩きすり抜け空間形成部材510+n(nは2以上の自然数)まで順々に狭い幅の横歩きすり抜け空間形成部材510を横歩きで通り抜けるようになっている。
【0076】
しかしながら、このような構成とは異なり、上述の横歩きすり抜け空間形成部材510を設備利用者の特定の進行方向に沿って適当な間隔で配置して、それぞれの横歩きすり抜け空間形成部材510によって横歩きすり抜け空間をすり抜ける際にのみ横歩きで通り抜けるようにしても良い。また、設備の規模に合わせて各部材の配置位置を適宜変更できるようにするのが好ましい。
【0077】
なお、ここでいう幅が順々に狭くなっている意味合いとしては、幅が段階的に狭くなっていく包括的な広い概念も含むものとする。具体的には、互いに幅が同じで幅の比較的広い横歩きすり抜け空間形成部材510を3箇所から4箇所を運動学習開始位置から連続して配置し、それに続いて互いに幅が同じでこれらより少し幅が狭くなった横歩きすり抜け空間形成部材510を2箇所から3箇所連続して配置し、更には互いに幅が同じでより幅の狭くなった横歩きすり抜け空間形成部材510を1箇所又は2箇所だけ連続して配置するようにしても良い。
【0078】
これによって、設備利用者が最初の複数の最も幅の狭い横歩きすり抜け空間形成部材510を連続的に横歩きで通り抜けていくことで、利用者の身体機能を高めるためのウォーミングアップになり、運動学習の効果を兼ねることが可能となる。その結果、更に幅の狭くなるそれらに続く横歩きすり抜け空間形成部材510を気分的にも身体機能的に横歩きで通り抜け易くなる。
【0079】
また、身体機能の劣った設備利用者の場合は、最初の最も幅の広い数箇所の横歩きすり抜け空間形成部材510を連続して横歩きですり抜ける動作を何度もルーチンワーク的に繰り返すことで、身体に無理な負荷をかけることなくかつ気分的にも運動学習を続けたくなるモチベーションを高めることが可能となる。
【0080】
続いて、第6の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備600について図面に基づいて説明する。図6は、サンドバッグ状の衝突影響度合い低下用運動学習部材620を押しのけながら前に進む第6の運動学習設備600を示す斜視図である。
【0081】
第6の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備600は、設備利用者が歩行する方向に沿って利用者の頭上に運動学習部材吊り下げ用支持部610が備わると共に、運動学習部材吊り下げ用支持部610から利用者の歩行する方向に沿って所定間隔隔てて複数のサンドバッグ状の衝突影響度合い低下用運動学習部材621,622,623,・・・(620)が吊り下げられて構成されている。
【0082】
第6の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備600は、利用者の歩行中において不意にかつ連続的に目の前に現れる衝突影響度合い低下用運動学習部材621,622,623,・・・(620)からの外力を利用者がそのまま受けないようにすることに加えて、このような衝突影響度合い低下用運動学習部材620を身体にダメージを与えないように積極的にはねのけながら進行方向に歩いて行くのに役立てる運動学習設備である。
【0083】
なお、それぞれがサンドバッグ形状をなす衝突影響度合い低下用運動学習部材の重さや大きさは、利用者の身体機能に合わせて調整可能にするのが好ましい。
【0084】
なお、最初のサンドバッグを例えば3つ程度の軽いサンドバッグか軽くて小さいサンドバッグとして吊り下げ、その後に続くサンドバッグとして上述した各種本発明設備のように少し重くなったサンドバッグや大きくなったサンドバッグを例えば2つ程度吊り下げ、更にその後に続くサンドバッグとしてより重くなったサンドバッグやより重くて大きいサンドバッグを吊り下げるように配置しても良い。
【0085】
サンドバッグの大きさや重さを段階的に重くなったり大きくなったりする形態で吊り下げ配置することで、身体機能の低下の度合いがそれ程でもない設備利用者は、最初の軽くて小さい複数個のサンドバッグを連続的に何回もはねのけながら進むことで、ウォーミングアップとしてのトレーニングを行うことができ、その後に段階的にはねのけ難くなるサンドバッグを、ペースを高めながら調子良くはねのけて進んでいくことで、運動学習をより効果的に行うことが可能となる。
【0086】
また、小柄な女性や身体機能のかなり劣った設備利用者は、最初の数個の軽いサンドバッグか軽くて小さいサンドバッグをはねのけながら進む動作を繰り返すことで、身体に必要以上の負荷がかからずこの本発明設備を利用するモチベーションを高めることができ、運動学習のやる気と効率を向上させることができる。
【0087】
続いて、第7の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備700について図面に基づいて説明する。図7は、柔らかい転倒時対処能力向上用運動学習マットに倒れ込んで転倒状態を疑似体験する運動学習設備700の斜視図である。
【0088】
第7の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備700は、設備利用者が立った状態から倒れ込んでも怪我をしない程度の弾力性を有する所定高さの転倒時対処能力向上用としての転倒疑似体感運動学習マット710と、転倒疑似体感運動学習マット710の周囲の少なくとも一部に転倒疑似体感運動学習マット710の周方向に沿ってそれぞれの高さが段階的に高くなるように配置されている踏み台であって、転倒疑似体感運動学習マット710への倒れ込み踏み台721,722,723,・・・(720)を備えている。
【0089】
なお、図7においては、図7(a)における3つの踏み台721,722,723の大きさ及び配置位置と、図7(b)及び(c)における3つの踏み台721,722,723の大きさ及び配置位置が互いに異なるように示してある。
【0090】
また、図7(a)、(b)、(c)の何れにおいても、それぞれの転倒疑似体感運動学習マット710への倒れ込み踏み台721,722,723の転倒時対処能力向上用運動学習マット710と反対側に設備利用者が倒れてしまうのを防止する安全用の掴みレール730が備わっている。
【0091】
なお、掴みレール730は、本実施形態の場合、設備利用者が高さの最も低い踏み台721から高さの最も高い踏み台723まで踏み歩いて行く際に掴みレール730を掴みながら行くことで、高さの最も高い踏み台723の上に立つまでに途中で踏み台720を踏み外さないようにする安全確保の役目も果たしている。
【0092】
設備利用者は、このようなそれぞれ異なる高さを有する倒れ込みを踏み台720から転倒時対処能力向上用運動学習マット710に倒れ込むことによって、転倒時対処能力向上用運動学習マット710への様々な形態の転倒疑似体験を、怪我することなく可能とした優れた運動学習設備となっている。なお、転倒時対処能力向上用運動学習マットの大きさや、踏み台の高さ、手すりの形状は、施設の規模や利用者の身体機能に合わせて適宜選択可能であることが好ましい。
【0093】
例えばマットの上面を4等分や6等分に区画分けしてそれぞれの区画の弾力性を変えても良い。この場合、踏み台の高さとマットの硬さの組み合わせを適宜選択して、利用者の年齢や身体機能に応じて同じ踏み台の高さから異なる弾力性を有するマットの最適な区画に倒れ込むようにしても良い。
【0094】
続いて、第1の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備乃至第7の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備のそれぞれにおいて設備利用者がこれらの設備を利用した際の運動学習の具体的な説明を行う。
【0095】
最初に、本発明よって非常に効果的な運動学習を行うことが可能なことの理解を容易にするために、設備利用者の身体の各部位について、理学療法的見地から模式的に分かり易く描いた設備利用者の人体の主な部位の構成図について説明する。
【0096】
図8は、設備利用者(以下適宜単に「利用者」とする)の身体の各部位を説明する説明図である。利用者の身体の各部位は、同図面に記載されている各関節をそれぞれ定められた特定の軸線周りに動くようになっている。そこで、本発明に係る各種学習設備をそれぞれ利用するにあたって、学習設備ごとの利用者の身体の動きを視覚的に分かり易くするため、図8において関節の運動が視覚的にすぐに分かる棒人間のモデルとして示すことにした。
【0097】
続いて、図9以降の具体的な運動学習を示す図面に関して説明する。なお、図面中の括弧書きのアルファベット小文字で示す各図面は、その図中においてa,b,c,d,・・・と順々に動作が変化していく状態を時系列的に示している。
【0098】
図9は、設備利用者が、図1に示す運動学習設備を使用するに際して、台座に座った状態でハンモックからなる運動学習設備に掴まり安全を確保しながら前後方向に倒れる運動学習の過程を、前方には(a)から(b)の順に、後方には(c)から(d)の順に示す説明図である。この図から分かることは以下の通りである。
【0099】
具体的には、利用者の立位での運動が不安定である利用者や禁忌・リスクがあり座位での運動が必要な利用者の場合、座位ではBos(Base of support:支持基底面)が広くなり、下半身の自重が台座によって支持されるので、ハンモックと身体へかかる自重は減少する。これによって、臀部を中心に頭部を振り子状に移動できる。その結果、Bosから重心が外れて転倒することなく、頭部から臀部までの360°方向への転倒疑似体験が容易に可能となる。
【0100】
図10は、設備利用者が立ったまま、ハンモックからなる運動学習設備に身体の一部を支えた状態で安全を確保しながら前後方向に倒れる運動学習の過程を、前方には(a)から(c)の順に、後方には(d)から(f)の順に示す説明図である。同図面においては、立位ではBosが足底面のみと狭くなり、ハンモックと身体にかかる自重は増大する。これによって、頭部の移動が足底の位置に影響を受けることを体感できる。その結果、足底のBosから重心を外すことで転倒疑似体験が容易に可能となる。
【0101】
これに加えて、ハンモックを使用していることにより、体全体の姿勢を元の姿勢に立て直すことを、補助者や介助者の手を借りずに利用者自身で行うことができる。その結果、利用者にとって特に注意すべきバランスを崩した状態を何度も再現させることで、それぞれの利用者が個々に感じた一番危険な転倒の状況を容易に疑似体験することができる。
【0102】
また、ステップ等足底の位置を移動させて実際の転倒を回避するための疑似体験が容易に可能となり、この疑似体験を繰り返すことにより、転倒回避のためのステップ等足底の最適な位置への移動についても運動学習することが容易に可能となる。
【0103】
特に前方へ倒れる動作は視覚的な影響は大きく、思わず「怖い」と感じるかなり強い恐怖心につながるが、自分自身を支える有用な手段としてハンモックを用いることで、利用者が十分な安心感を得ることができ、かつ転倒疑似体験中に利用者自身の空間認知能力を最大限生かせるようになる本発明特有のメリットをこの図面から容易に理解することができる。
【0104】
一方、後方への倒れる動作は、利用者の脳内への視覚的入力が少なく、人間本来の前方での生活とはまったく逆の動作となる。即ち、通常めったに体感することのない後方への転倒に対する不安感は、いざそのような状況に実際におかれた場合、前方よりもかなり大きくなる。
【0105】
そこで、本発明設備を介して、ハンモックのテンション(張力)をハンモックによって支えられる身体の一部に強い圧力として及ぼす(入力する)ことで、利用者は実際に触覚、圧覚、振動覚等多くの情報を介して後方への倒れこみを運動学習することが容易に可能となる。
【0106】
更に、設備利用者は、本発明設備を介して後方へ倒れた後、ハンモックを利用することで補助者や介助者の助けを借りずに自ら元の姿勢に立ち直すことができる。即ち、補助者や介助者の手を煩わせることなく利用者自ら何度でも後方への転倒疑似体験及びこれに対する迅速かつ安全な危険回避の仕方を運動学習することが容易に可能となる。
【0107】
図11は、設備利用者が立ったまま、ハンモックからなる運動学習設備に身体の一部を支えた状態で安全を確保しながら横方向に倒れる運動学習の過程を(a)から(c)の順に示す説明図である。本来人間は、生体的な構造物としての観点から見て、前額面上の前方での生活が主体となっている。そのため、当然のことながら側方への作業、横歩きは不得意の分野となっている。一方、理学療法的観点から見ると、実際の高齢者の骨折の割合の上位に位置するものとして、大腿骨頸部骨折が挙げられる。ここで、大腿骨頸部骨折が生じる要因としては、人間の骨や関節の構造上に起因して前方への転倒ではなく側方への転倒が主原因となっている。
【0108】
そこで、本発明に係るハンモックを利用することで、身体の構造上の観点から見て不得意な側方への重心移動を利用者自身が体感可能とすることで、このような側方への重心移動を利用者が何度でも容易に運動学習することができるようになる。その結果、Bosより重心が外れた横方向への転倒疑似体験を、補助者や介助者の手を借りずに利用者自身が納得するまで何度も運動学習することが本発明によって容易に可能となる。
【0109】
図12は、設備利用者が、高さが順々に高くなる板材からなる運動学習設備を跨ぐ運動学習の過程を(a)から(e)の順に示す説明図である。年齢を重ねると共に円背や怪我、病気による廃用性症候群等で身体機能の変化が起こる。しかしながら、成長と共に学習してきた脳は、その変化に対応することはなく、「できる」基準が年齢を重ねた後の現在の身体機能と不一致になることが多い傾向にある。
【0110】
そのため、躓いての転倒、浴槽を跨ごうとしての転倒等、日常的にトレーニングをすることのない日常生活の動作中での転倒が多く生じてしまう。そこで、図12に示す本発明設備を用いることで、跨ぐ運動を視覚的な障害物として認識させて、実際に高さを数字化し、可視化したものと、身体機能と、今までの経験である記憶との一致の必要性を充足させ得ることで、このような形態の転倒を回避したり実際に転倒しても大怪我を負わないようにしたりすることが容易に可能となる。
【0111】
なお、図12に示す本発明設備では、それぞれの障害物の高さが隣接する障害物に沿って段階的に変化するように構成されているが、これは、それぞれの障害物の高さの基準を日常生活にあるベッド、椅子、机等の家具やその他屋内の構造物や屋外の様々な建築物等に実際に近似する高さを標準規定値として数値した高さとした障害物をその高さが順々に高くなるように並べて配置させたものとなっている。これによって、屋内外の何れにおいても転倒の危険がある躓きに対する疑似体験が図12に示す本発明設備によって可能となっている。
【0112】
図13は、設備利用者が、高さが順々に低くなる空間を形成する運動学習設備を、身体を屈めて潜る運動学習の過程を(a)から(e)の順に示す説明図である。人々は自分の年齢が高齢になるにつれて転倒予防を徐々に意識して生活している。しかしながら、このような意識を持つことで結果的に、転倒に対する回避方法、転倒時の対処方法能力が低下している状態になっている。そして、立位のみでのバランストレーニングでは、あらゆる姿勢をとる日常生活において転倒予防としては完全とは言えない。
【0113】
具体的には、日常生活における動作中に頭部が常時身体の一番上にあるとは限らない。例えば、中腰での作業や、膝立ちでの作業、必要に応じては四つ這いでの作業、臀部を床に着いた状態での作業等様々な作業を日常生活で行うことが多い。また、同様の姿勢で移動する中腰歩き、膝歩き、四つ這い歩行、臀部を床に着いた所謂「いざり動作」等もある。
【0114】
日常的に行われている動作、又は家事等については特別にトレーニングされるような機会はなく、身体の成長度合いに伴って運動学習した脳で行っている。そのため、加齢、怪我、病気等に身体のコンディションに変化が生じた場合、脳内にその状態に合わせた最新の身体情報をフィードバック入力して、脳内の運動神経細胞の情報処理の仕方をアップデートする必要がある。
【0115】
ここで、高さが段階的に変化する本発明設備は、日常生活において屋内にあるテーブルや机、椅子等の家具やその他屋内の構造物や屋外の様々な建築物等、屈んで潜り込み可能な高さを有する様々な障害物に実際に近似する高さを標準規定値として数値化した高さとした障害物をその高さが順々に低くなるように並べて配置させたものとなっている。
【0116】
具体的には、日常生活において居住建物の屋内外の何れにおいても転倒に危険がある「屈む」という動作に対する転倒疑似体験ができる。これによって、本発明設備を利用して、例えば大地震発生時等の突発的な災害時においてのみ避難のために行うめったにない自分の身を守る動作を、このような突発的に発生する災害が生じたときに他人の助けを借りずに条件反射的に自ら瞬時にとることができるように十分な回数に亘って運動学習することを可能とする。
【0117】
図14は、設備利用者が、高さが順々に高くなる踏み台からなる運動学習設備を両足で順々に踏み越えて進んでいく運動学習の過程を(a)から(h)の順に示す説明図である。日常生活における動作中で上に昇る動作は階段昇降が主であり、多くはバリアフリーな生活を送っている。
【0118】
しかしながら、実際には高所での作業、即ち、具体的には、日常生活において踏み台に乗りながら台所の上の棚から食器や調理道具を取り出す、電球の付け替えを行う、押入れの天袋から荷物を取り出す、庭の植木の剪定を行う等、多くの高所作業が考えられる。
【0119】
それらの作業について敢えて事前に十分に練習してから行う人はまずいない。これに対して、図14に示す本発明設備は、日常にある家具や建築物等に近い数字の高さの踏み台を昇降することを想定しているので、高所を昇降する運動機能を十分に必要とする高所での作業する疑似体験を通して、これらの作業に必要な運動機能の習得及び向上を図ることができる。また、本発明設備における高低差を、身体が昇降を伴いながら移動する際に生じる位置エネルギーの急激な変化に対して身体への作用に慣れるためトレーニングとしても有用である。
【0120】
以上に加えて、これを別のかつ重要な観点から図14に示す本発明設備の有用性を確認することができる。具体的には、近年の災害に関して、異常気象に基づく集中豪雨の発生や巨大台風の到来に伴う甚大な水害の割合が多くなっている。このような水害に基づく災害においては、浸水した水はタンス等の家具の高さまでに至ることがある。そして、通常このようなことを想定した具体的な避難訓練は行われていないのが実情である。
【0121】
以上のような点を勘案して、本発明設備は家具等の高さを目安に製作されており、本発明設備を利用して運動学習することで、上述のような水害によって家屋内に浸水して水位が急に上昇するような危機的状況の発生時における緊急時の自らの身の安全の確保のための回避や対処する能力の向上を促すことができる。
【0122】
また、災害時の避難経路として避難袋を使用する際にはベランダ等を乗り越えて自らの安全を確保できる入り口等場所に自分の身体を迅速に退避させる必要がある。このような場合において自らの手で自分の身を守るためには一般的な階段昇降では行われない段差の高さを昇り越える動作が必須であり、同じく急な段差を急いで昇降しなければならない。ところが、実際にはベランダの高さを想定した避難訓練のような類は行われていないのが実情である。
【0123】
そのため、図14に示す本発明設備によって十分な運動学習、即ち高さを段階的に高くしてかなり高い位置への昇降を予め何度も行って運動学習しておくことで、上述のような突発的に身に迫る危険状態の発生に対しても冷静に対処して自分の身を自ら守ることができるようになる。
【0124】
図15は、設備利用者が、順々に幅が狭くなっていく隙間を形成する運動学習設備を横書きで通り抜ける運動学習の過程を(a)から(d)の順に示す説明図である。加齢や怪我、病気に起因して、姿勢の変化や歩行能力の低下により、狭い空間を通り抜ける際に予期せず転倒してしまう場合が多く見受けられる。そのような状況は非日常的な状況下でのみ起こり得る事態ではなく、自宅の家具の間や冷蔵庫を開けた際のスペース、台所での作業中に横歩きを行う等の日常生活における動作中において頻繁に起こるものである。
【0125】
また、例えば特に混雑した飲食店や狭い飲食店において外食する際には、隣のテーブルとの狭い空間を通り抜けて着座しなければならない機会が頻繁に生じる。これに加えて、食品を扱う店舗での他の人が歩きながら押していくカートを機敏に避けて歩かなければならない場合や、ショッピング等を行う店舗でも隣接する商品棚の間の狭い通路空間を通り抜けなければならない場合等の状況が数多く生じる。しかしながら、そのような類の状況に対して迅速かつ安全に対応するためのトレーニングは日常的に行われていない。
【0126】
これに加えて、例えば災害の発生直後に避難する人が多く集まった一時的避難設備においては、個々の避難者の避難滞在スペースを十分に確保できることはあまり考えられず、更にはこのような状況下における移動の際に狭い空間での移動能力が必要となる。しかしながら、通常の避難訓練ではそのような類の避難動作の訓練は行われていないのが実情である。
【0127】
一方、本発明設備では、上記のような状況を想定した狭い空間を横歩きですり抜ける疑似体験が十分にできるので、それに伴ってかかる事態にとるべき適切な行動を予め繰り返し運動学習しておくことが可能となる。これによって、このような事態に自分の身が晒された場合に冷静かつ迅速に自分の安全を確保しながら行動することが可能となる。
【0128】
図16は、設備利用者が、その進む方向に沿って並んで配置されたサンドバッグからなる運動学習設備を押しのけながら進んでいく運動学習の過程を側方から見て(a)から(c)の順に示すと共に、前方から見て(d)から(e)の順に示す説明図である。高齢者の多くは生活範囲が狭くなり、年齢を重ねるごとに他者との交流が減っていく傾向にある。また、独り住まいの高齢者の多くは、住み慣れた生活空間のみでであって限定された狭い空間内における生活に必要なかつ十分な身体機能を維持するレベルに留まっていることが多い。
【0129】
そのため、例えば何らかの必要に迫られて外出した際に、屋外での歩行中の移動動作において対面から来る人や自転車にぶつかって転倒したり、自動車に身体の一部が接触し転倒したりして思わぬ怪我を招きがちである。これは、屋内だけの生活に慣れてしまって、屋外での我が身を守る危険回避対応能力が低下していることに起因するものであると言える。
【0130】
このように、あまり外出することのないライフスタイルを送る高齢者の人達にとって、屋外での外出中に起こる上述したすれ違う人や自転車との思いがけない接触や衝突、走行中や歩道の脇の駐車場から急に飛び出してくる車との接触による転倒、若しくは実際には接触や衝突しないにも関わらず、思わず慌てた瞬間に身体のバランスを崩し転倒してしまう場合が多く生じる。
【0131】
しかしながら、屋外での外出中においてすれ違う人や急に向かってくる自転車、突然駐車場から出てきたり交差点を無理矢理右折や左折してきたりする車から思いもかけず受ける不可抗力的な外力に対して自分の身を守るトレーニングは、日常的に行われていないのが実情である。
【0132】
一方、図16に示す本発明設備によると、それ自体の特有な構成を有することにより、この設備を利用して上述した自分の身を瞬時に守る動作を繰り返し運動学習することで、上述した他者(すれ違う人々や急に向かってくる自転車)、若しくは急に自分の身に近づいてくる車等に対する距離感を瞬時に正確に認識して危険性度合いの判断に役立てることができると共に、接触や衝突を回避する敏捷な身のかわし方を運動学習できる。
【0133】
これに加えて、人や自転車等に接触や衝突したり、車等に接触したりした場合であっても、これらから意に反して受ける外力(衝撃力)に対する対処方法の疑似体験を通して頭の中にリアリティーを有する記憶としてインプットしておくことができる。
【0134】
即ち、この本発明設備を繰り返し利用することによって上述した自分の身に突発的に加わる外力に対する自分の身体のかわし方や外力を受けて転倒して大怪我につながるような事態を未然に瞬時に避ける運動学習能力の向上を図ることができる。
【0135】
図17は、設備利用者が、転倒状態を疑似体験するための転倒時対処能力向上用運動学習マットと踏み台からなる運動学習設備の踏み台や周囲の床から転倒時対処能力向上用運動学習マットに倒れ込む説明図である。転倒によって思わぬ怪我を負う人々の多くは「こんなところで転ぶなんて・・・。」「いつもは平気なのに・・・。」「転倒なんて初めて・・・。」という意識を持っている。そのため、転倒をすることに不安や注意を払っていても、実際にその瞬間になった時に転倒回避や転倒し始めた時の身を守る瞬間的な対処をすることができないままでいる。
【0136】
また、あまりに予期せぬあっという間の予想外の出来事のため、気が動転してその瞬間の記憶が欠如したりして「転倒した瞬間を覚えていない。」ということが多い。そのため、実際に転倒を経験したにも関わらず、その事実が運動学習に反映されることが極めて困難となっている。
【0137】
これは、日常生活活動を行っている中で常に転倒に注意を払いながら生活することは難しく、また転倒する時は思いもしないタイミングで起こっていることにも起因している。しかしながら、現状では「転倒予防」の対策として一般的な筋力増強やダイエットを目的とする所謂フィットネスクラブにおける「重錘やエアロバイク(登録商標)、マシーンを使用しての筋力トレーニングや立位での体操、バランス運動」が主として行われており、実際に転倒した際に受けるダメージを最小限にしたり、転倒を瞬時に回避したりするような特別なトレーニングについては行われていないのが実情である。
【0138】
一方、本発明設備では、約60cmのマットに倒れこむ体験を、マットの上面に対する高低差が0cm~60cm程度まで段階的に設置した倒れ込み台から自ら倒れ込むことで、身体機能、精神的な不安等に考慮した上での転倒疑似体験を身体にダメージを与えることなく安全に行うことができる。
【0139】
更に強調したい点としては、本発明設備によると、転倒の疑似体験が繰り返し行えることに重要な意義を有している。具体的には、このような繰り返しの転倒疑似体験、即ち倒れ込み台から身体に何の拘束具も付けることなくそのままマットに倒れ込むことを繰り返すことで、この倒れ込み動作の瞬間の過程を視覚的にしっかりと記憶できると共に、三半規管による体感バランスの崩れの過程を、身をもってしっかりと記憶することができる。
【0140】
これによって、日常生活において同じような状況に陥った時に、0.5秒か1秒以内の極めて短い転倒中のバランス喪失状態において、ダメージを受けると特に高齢者にとって事後の完全な回復が非常に困難を極める頭部や頸椎、脊椎、胸部、腰部等の骨折や胸部や腹部への打撲に基づく内臓への悪影響を条件反射的に瞬時に回避することができる。
【0141】
このように、本発明設備によって、実際の思わぬ転倒時に瞬時に対応できる運動学習効果を得ることができ、安全に転倒回避・対処能力の向上を促すことが可能となる。
【0142】
更に別の具体例で説明すると、例えば災害時には高所からの避難経路としてベランダやビルから滑り降りる構造となった避難用スロープの形態をとる救助袋等を利用する場合は、身体が重力に逆らわずに落下する状態となる。この際、本発明施設によるマットへの倒れこむ動作は、身体が重力に逆らわない状態での身体にかかる衝撃や負担を軽減させ、身体の動きを事前に運動学習して脳内の運動を司る記憶野に危険回避のための運動神経のネットワークと共に安全上最適な身の守り方の情報としてしっかりと定着させておくことができる。
【0143】
以上説明したように、上述した全ての本発明設備の最低限少なくとも1つを利用しながら運動学習することで、上述した瞬間的に起こる思わぬ転倒によって身体に重大なダメージを受けないように条件反射的に瞬時に適切な姿勢変化や身のかわし方等の対応をとったり、危険回避のための避難中においても思わぬ怪我をしないように冷静に対応しながら避難したりすることが可能となる。
【0144】
即ち、自分の身を自分自身で守るしかない状況下での瞬時にとるべき身を守る具体的な行動を、本発明設備を繰り返し利用して得られた運動学習効果に基づいて冷静にとることができる。
【0145】
これによって、かかる非日常的な予期せぬ様々な種類の危険状況にいきなり陥っても、最善の運動機能を発揮して身体に及ぼす負担を最小限に軽減できる特有の優位点を上述した複数の本発明設備の何れもが有している。
【0146】
最後に本発明の発明者が本発明分野の専門家(理学療法士)としての立場から見た知見であって、本発明の優位性をより鮮明にする知見について具体的に述べる。
【0147】
(1)ハンモックエクササイズ(身体の傾きを体験する)…初級・中級・上級…これは上述した具体的実施形態における第1の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備を利用者が用いて運動学習した場合の本発明者の知見である。
**まず転倒疑似体験から始める**
難易度の変化はハンモックの接触面積、身体の使用する量(両手・片手、体幹の使用・不使用等)によって利用者ごとに決める。
<活動が強まる要素>
*筋力:頭部、頸部、体幹、上肢(手部・手指を含む)、下肢(足部、足趾を含む)。
*関節運動:頭部、頸部、体幹、上肢、下肢、足部。
*体性感覚:立ち直り反応(頭部を正中に保とうとする反応)。
*バランス能力:重力に対して体を地面に向けて傾けていく。ハンモックを利用してバランスを保つ。
*精神的な効果:ハンモックを身体にくぐらせて「恐怖」「不安」を軽減させた状態で、身体を傾けることができる。
*体感感覚に基づく効果:ハンモックが接している部分からの外的な力により、触覚刺激と体重が加わることにより圧覚の刺激、ハンモックからの振動覚を利用して脳の活性化を促すことができる。また、今まで漠然とした不安感として付き纏っていた「転倒」という概念を払拭して精神的な安心へつながる。
*空間認知機能に関する効果:身体を非現実的な方向へ傾けることにより、周りの景色(窓枠・柱等動かないもの)との空間との距離、視覚的な変化を体感できる。
・ハンモックを利用した三半規管への刺激と立ち直り反応の促通が図れる。
・ハンモックを支えに行い日常生活では練習のできない体の傾きを体験ができる。
・正中へ戻る際には転倒回避の動きとして体験ができる。
・ハンモックが身体に接しているため、触覚、圧覚、振動覚等の固有受容器が促通される。
・重力を利用することにより、抗重力筋を主動作筋として、各動作に筋力増強効果がある。また、体を傾ける方向により使用する主動作筋が変わり全身の筋力を促通することができる。
・ハンモックの外的刺激により筋肉、皮膚、神経、血管、関節等にストレッチ効果が得られ、柔軟性の向上が得られる。
・重力により転倒をしてしまう身体の傾きを、ハンモックを使用することで重力の影響を軽減し、それに伴い転倒の疑似体験、回避能力の促通となる。
・ハンモックを利用して身体を傾けることができるため、正中位での立位姿勢では重力を足底より頭部で感じているが、前方・後方・側方(左右)等360°に亘り身体の傾きを行えるため、身体に加わる重力の変化を起こすことができる。
・何かの作業を行うために身体を傾ける動作は日常的にはよく行われている。しかしながら、このような動作を上げてトレーニングとして行うことはほぼない。そこで、あえてトレーニングとして特別に行うことで、利用者ごとに以下の効果を生じさせることが本発明によって可能となる。
【0148】
具体的には、例えば、洗濯機から洗濯物をとる。浴槽を洗う。キッチン下の棚から鍋等をとる、自動販売機で買ったものを取る、床に落ちているものを拾う等が挙げられる。
*単体の四肢や一部の筋肉や関節、固有受容器を刺激する一般的なストレッチ、筋力トレーニング等ではなく、脳と全身のつながりを促通する。
・身体を傾け宙吊りの状態を保持できる設備を使用することにより、現実的には保持できない姿勢での平衡感覚、身体機能(筋活動、関節運動、立ち直り反射等)の活性化を促す。また、実際の転倒の疑似体験を介してその姿勢からの対処方法を脳中で運動学習して最良の対処方法に高めることができる。
*ハンモックを使用することで、より実際の転倒に近い宙吊りとなる状態が行え、先行トレーニングにあるような立位姿勢での転倒予防と違い、『転倒疑似体験』が行える。
・身体を宙吊りで保持できる本設備は反復運動を可能とし、運動学習が行えるため、座位や、立位で行うトレーニングとは違い「転倒疑似体験」が行える。また身体が傾いている状態での対処方法、傾いた姿勢から正中方向へ身体を戻すトレーニングを行えるのは、この設備がないと不可能と考えられる。
【0149】
(2)跨ぐトレーニング(転倒回避に必要な下肢の運動能力の促通)…初級・中級…これは上述した具体的実施形態における第2の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備を利用者が用いて運動学習した場合の本発明者の知見である。
*筋力:頭部、頸部、体幹、上肢(手部・手指を含む)、下肢(足部、足趾を含む)。主に体幹・下肢の筋群がより促通される。
*関節運動:頭部、頸部、体幹、上肢、下肢、足部の全ての身体部位に関して可能となる。
*体性感覚:立ち直り反応(頭部を正中に保とうとする反応)の向上。
*バランス能力:高さの違う障害物を跨ぐことで、下肢の挙上させる距離、関節角度、筋力の違いの積極的認識や確認が可能となる。
それに伴う身体の傾きに対する正中を保とうそする能力の向上を図ることができる。
*精神的な効果:脳で判断したで「またげる」と実際の「跨ぐ」動作を行うことで、安心して行える。
*感覚:必要に応じた高さに足を上げることで、各関節の運動(関節位置覚)、筋力を選択して使用する。これによって、その運動に伴う重心の移動が起こり体性感覚の活動を促すことができる。
*空間認知機能:障害物と自分との距離を明確にして、予期せぬ実際の転倒に対する素早い対処行動を起こす能力が向上する。
・日常的に目安となっている段差を用いて転倒のリスクのある動作を体験できる。
・その際に必要な下肢筋力、関節の柔軟性、上半身のバランスを保つ能力を促通する。
・5cm…歩道の低い部分、10cm…歩道の高さ、20cm…一般的な商業施設、最近の家屋の階段、25cm…日本家屋の階段、30cmから35cm…バスの出入り口ステップ(前後出入り口、ノンステップを含む)、40cm…日本家屋の上がり框等、45cm…浴槽の高さ等を基準値として参考にしながら本発明設備の具体的寸法や大きさを適宜決める。
【0150】
本発明設備を用いた運動学習を介して、屋内の日常生活においても、考え事をしながら上の空で屋内を歩いていて何かに思わず躓き、バランスを崩して頭部や上半身を家具の角部にぶつけたり、そのままフローリングの上に転倒したりして大怪我に繋がらないように、常に足元に注意を払いながら屋内での移動を安全に行うことを習慣付けることができる。
・跨ぐ動作の中で下肢の各関節の動かすことで、各関節の柔軟性の向上を促通。
・関節の運動は深部感覚である関節位置覚の刺激があり、加重下では関節への圧縮された刺激により固有受容器の促通へとなる。
・下肢を上げる高さの違いにより抗重力運動にて筋力の強化を促す。
・下肢の運動を行うことで上半身の状態の変化、平衡を保つ・立て直す体性感覚の反応を体験・促通できる。
・障害物を跨ぐ動作では「つまずく」動作につながるつま先の感覚、「滑る」動作につながる踵の感覚が促通できる。
・災害の際の避難経路の確保として障害物を「跨ぐ」ことで助かる命がある。
・傷病の影響や高齢になると視覚的な判断と身体機能の不一致が多くなる。この設備を見て「できる」と思い実際に行うと躓いてしまったり、「できない」と視覚的に判断して消極的な気持ちを持つ方でも実際に行ってみるとできたりすることがある。この不一致の改善は転倒回避につながると考えられる。
【0151】
(3)くぐるトレーニング(頭部が臀部・膝よりも下になる体験)…初級・中級・上級…これは上述した具体的実施形態における第3の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備を利用者が用いて運動学習した場合の本発明者の知見である。
・日常では臥床している以外の時間は、地面から足部・膝(下肢)、臀部・体幹(骨盤から上)、頭部と上方へ向かって生活している。
・天地が逆さまになるような動きを積極的に体感することで、身体の回転に対する平衡感覚を促通できる。
・平衡感覚は視線を水平に保つ機能がある。それに対して、臀部より低い位置に視線が移動することに脳への恐怖や不安の改善を促す。
・逆さまの刺激は脳の反応(脳圧の変化や血流(脳脊髄液を含む)の変化)を生じさせてそれに対する危険回避能力を促す。
・かがむ、中腰、四つ這い、伏臥位(腹ばい)・いざり等の動作を行うことにより、頭部、臀部、膝の位置関係が変化した中での筋活動、関節の柔軟性、バランス感覚の促通となる。
・例えば、起立性低血圧等の貧血症状立ち眩み等に起因して、本人が予測しない状態での頭部の上下運動が急激に起こることが症状を起こす原因となる。しかしながら、本発明説明によると、動作としての頭部の上下運動において急に貧血が生じないようにトレーニングすることができ、内科的な治療の効果に加えて、これと相乗的な更なる効果を発揮することができる。
・40cm…こたつ・座卓等、50cm…押入れの下段、台所の下の棚等、60~70cm…押入れの下段・中段、台所の下の棚、食卓テーブル等、80~90cm…食卓テーブル・干してある洗濯物等、100cm…キッチンの上、カウンター等、(今後考えられる本設備の設置予定として110cm…ベランダの柵等)を基準値として参考にしながら本発明設備の具体的寸法や大きさを適宜決める。
・地震の際にテーブルや家具の下に身を守るために潜る動作の練習となる。
低く身体を縮める動作は狭い所を通り抜けて非難する体験ができる。
・低い姿勢での動作を練習しておくことで、転倒予防になることに加えて転倒後に移動ができ、電話で家族に緊急連絡をとることができ、仮に転倒しても身体にダメージを負っても、早期発見及び早期治療につながり、大事に至ることがなくなる。
・マンションやビル等では避難経路が床とフラットになっている場合、避難経路口が狭い場合もあるので、頭部が低い位置になる動作は、突発的な災害発生時に自分の身を自ら守る上で重要である。
・災害の際の避難経路の確保として障害物を「くぐる」ことで助かる命がある。
【0152】
(4)昇るトレーニング(自重(体重)を体感する)…初級・中級・上級…これは上述した具体的実施形態における第4の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備を利用者が用いて運動学習した場合の本発明者の知見である。
・上下運動を積極的に行うことで、位置エネルギーを体感することかでき、位置感覚の促進を図ることが可能となる。
・自重を持ちあげる運動であるため抗重力運動によって昇降のための筋力の強化を図ると共に、関節運動を促通する。
・上る運動により臥位、座位、立位、歩行では使用しない関節運動を行い、そこに重力という外力により関節への刺激が促通され、転倒しそうになった時の危険回避のための身体の反応速度を向上させることができ、身体が受けるダメージの低減を可能とする。
・上る高さによって頭部・臀部・下肢の位置の変化が起こり、日常生活では体感できない平衡感覚、バランス反応、筋活動、関節運動を脳へ刺激として体験することができる。
・40cm…椅子、50cm…テレビ台、60cm…押入れの中段、70cm…洗面台、80cm…キッチン(今後考えられる本設備の設置予定として90cm…キッチン・避難経路の窓、100~110cm…ベランダの柵)を基準値として参考にしながら本発明設備の具体的寸法や大きさを適宜決める。
・昇る運動では高い所に立つ体験からは、恐怖感からの錯乱状態(パニック状態)を軽減させ、何かの上に立った際に落ち着いて姿勢を保てるトレーニングができる。
・水害での浸水等があった際に、少ない水位でも命に係わることがメディア等で近年多く報道されている。そのため、昇るトレーニングは水害の際に所への危険回避の体験となる。
【0153】
(5)狭い幅の空間を通り抜けるトレーニング(限られたスペースに身体の形を対応して歩く)…初級・中級・上級…これは上述した具体的実施形態における第5の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備を利用者が用いて運動学習した場合の本発明者の知見である。
・自分と物体との距離を判断する空間認知能力を促通する。
・自らの身体の形態(骨折等の怪我、関節等の変形による姿勢の変化、麻痺等による拘縮)や体質(身長、体重、肥満、肩幅等)を把握して、視覚的に確認できている狭い幅を通り抜けることができるかどうかの判断をする脳の促通機能の向上を図る。
・また、実際に通る運動学習を行うことによって、「自己予測して通れるか否かの判断」と、実際に行い「通れた」、「通れなかった」という体験が脳内の認識機能と実際の身体機能のズレを修正でき(キャリブレーションでき)、非常に効率的な運動学習となる。
・歩行が不安となる人達は最短距離での移動を選択することがある。その際に、実際の運動機能(脳機能)と一致していない空間を通ろうとして、身体への負担をかけ疼痛を誘発、増悪させることや、転倒を招き怪我を負ってしまうことがあるが、そのような人達に対して本発明設備は特に有用である。
・頭部が通れても、肩甲帯周囲や腹部が通れない。足部や下肢が通れても臀部、腰部が通れない等、身体の一部が通れても、他の部位が通れない場合が多くあり、その際にバランスを崩し転倒につながってしまうことがあるが、本発明設備は、このような転倒回避のトレーニングとして特に有用である。
・また、身体の一部が通れない等起こった際にはパニック状態になり、より大きな二次的な事故(小さな怪我を大きな怪我にさせてしまう)になることがある。狭い空間を通る際には枠組みの部分と身体が触れることにより、触覚、圧覚が加わる狭くなるほどに刺激は強くなる。刺激が強くなると「不安」「恐怖」等につながりパニック状態を誘発することが強くなるが、本発明設備は、このようなパニック状態に陥ることなく冷静な判断に基づき的確な行動をとることに関して特に有用である。
・上記の項目(5)のトレーニングを行うことは日常生活での危険回避としては非常に大切な経験(体験)となる。具体的には、繰り返しの危険回避トレーニングを行うことで、通り抜けや脱出に必要な筋力、関節運動、柔軟性、判断能力、落ち着いた判断できる精神力を促通することができる。
・近年多く起こっている天災によって、家屋の倒壊から狭い空間に閉じ込められてしまう事例も多くある。このような場合に(5)のトレーニングを行っていることで、冷静な判断と迅速な対処行動により、人の手を借りずに自ら自分を守ることができるようになる。
・幅:20cm、25cm、30cm…寝室ベッドと壁の間、35cm、40cm…ファミレスのテーブル間の通路、45cm、50cm…正面の向いて歩くには60cmが目安。家具等を想定する幅等を基準値として参考にしながら本発明設備の具体的寸法や大きさを適宜決める。
【0154】
(6)障害物を押しのけながら進んでいくトレーニング(障害物に対応しながら歩く)…中級・上級…これは上述した具体的実施形態における第6の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備を利用者が用いて運動学習した場合の本発明者の知見である。
*筋力:頭部、頸部、体幹、上肢、下肢、足部の各部位の筋力の向上が可能となる。
*関節運動:頭部、頸部、体幹、上肢、下肢、足部の各部位の関節運動に対して有効である。
*体性感覚:立ち直り反応(頭部を正中に保とうとする反応)に関する能力を向上させる。
*バランス能力:外力に対して転倒しないように筋力・関節運動を活動させる。
*空間認知機能:障害物と自分との距離を明確にして、行動を起こす能力を向上させる。
・歩行が不安定な人達は、人込みを歩くことが「恐怖」と感じる。そのことにより外出を控えてしまい、日常生活に必要な基礎的能力の低下につながることがしばしば生じる。
・また、高齢であるほど子供や自転車に乗っている人を「怖い」と感じる。実際に子供は突然、走りだしたり方向転換をしたりする。また急には止まれずぶつかることもある。また、自転車に乗っている人がぶつかる事故も多く見られている。しかしながら、それだけでなく、自転車がかなりの速度で思いもかけず急に近づいてくるような切迫した極めて危険な状態に対処方法が分からず、避けようとして転倒したり、当たっていないのに慌てたために気が動転してパニックになったりして転倒した挙句に人生を左右する怪我につながるケースが多くある。しばしばこの現象は空間認知機能と連動する。本発明設備は、このような日常の外出時の様々な危険回避能力の向上に有効である。
・障害物の項目では「外力」に対応する方法が体験できる。
・天井からぶら下がっている5kg~10kgの錘としてのサンドバッグを自らの力で押しのけながら前方へ歩行する。しかしながら、錘としてのサンドバッグを天井から吊り下げているので、押しのけた力の分、押し戻ってくる外力を身体へ負荷として振り子のように返してくる。このようにして、障害物に対して「押す力」と「押される力」に対して立位姿勢を保つ機能と歩行を継続する機能が促通される。
・外力に対する全身の筋力や関節運動を促通することはもちろん、平衡感覚や転倒に対する危険回避、バランスを崩した際の立ち直り反応(身体を垂直に保とうとする体性感覚)、ステッピングや踏ん張る等の姿勢維持機能の反応を促通することができる。
・難易度を変化させるにはサンドバッグを予め揺らしておいて、自身の判断でタイミングを計り、転倒しないように身体機能の準備(全身の筋活動や関節運動)、空間認知機能(距離感)、転倒回避のためのバランス能力の向上に繋がる。
・即ち、右方向からの障害物に対して左方向への反力を使い身体の正中を維持したり、ステッピング等の立ち直り反応を使用し転倒を回避したりすることで、身体にどのような予期せぬ外力が加わろうと身体のバランスを保つ能力を促通する。
・転倒に対する不安は多くの傷病者が抱えており、当人が静止した立位でも「買い物や電車等の人混みが怖い」等の理由や、「自転車や子供の飛び出し等で散歩が怖い」等の理由で外出を避けてしまうことが多い。それにより廃用性症候群の低下、空間認知機能の低下、外力に対する対処能力の低下等が生じて更なる空間認知機能や距離感認知機能の低下、転倒回避のためのバランス能力の低下のような2次的障害となることは多々あるが、本発明設備は、そのような対策手段として極めて有効である。
【0155】
(7)実際に経験すると極めて危険な「転倒」を安全に疑似体験するトレーニング(実際に転倒をする体験)…初級・中級・上級…これは上述した具体的実施形態における第7の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備を利用者が用いて運動学習した場合の本発明者の知見である。
・運動学習(何度も反復運動をして習得していく学習方法:try and error)では、子供が歩けるようになるために何度も転倒を繰り返し、バランス能力・筋力・関節運動を学習してつかまり立ち、伝い歩き、手放し立位、歩行を習得していく(成長過程)ことを基本的考え方としている。そのため、本発明設備を用いた場合も、転倒の危険回避能力を向上させるためには、上記同様に実体験を安全に繰り返しながら行って学習していくことが重要である。
・多くの転倒経験がある人は「転倒した瞬間を覚えていない」と運動学習を十分に行うことができておらず、転倒を繰り返すことがあるが、本発明設備は、そのような対策手段として極めて有効である。
・転倒を疑似体験する設備では、転倒を下記の様に段階に分けて運動学習を行うことができる。即ち、転倒という概念を正確に段階分けできることは非現実的で不可能であるので、例えば、取り敢えず60cm(2m×2m)の衝撃吸収に優れたクッションを使用することを好ましい一形態として考える。具体的には、以下の通りである。
(a)初級の運動学習:床面0cmの所に立位となる。60cmの高さのクッションに手をついたり胸部をつけたりして徐々に体を傾けてクッションに身体を乗せていく。
(b)中級の運動学習:20cm台・40cm台に乗りクッションに対して高低差を徐々に減少させた状態でクッションに倒れていく。
・20cm台ではクッションとの高低差が40cmとなる。
・40cm台ではクッションとの高低差が20cmとなる。
(c)上級の運動学習:60cm台に乗りマットへ倒れていく。
クッションとの高低差は0cmとなり、日常生活動作により近い状態での転倒体験となる。
*初級・中級・上級の中でも右又は左等側方への転倒、後方への転倒等難易度の程度を変化させることもできる。更に視覚的情報入力能力を利用したりしなかったりすること、即ち、開眼と閉眼により難易度は大きく変更する。これは、視覚的に得られる情報は危険回避能力の中でも重要性の高い情報で、人間の95%は視覚的情報から入ると言われていることに起因する。そこで、本発明設備において開眼と閉眼の何れかの状態を適宜選択して利用者が体験学習することによって、利用者ごとの転倒疑似体験の効果を個別にかつ効率的に高めるようにする。
・マットへの転落方法や不安への対策等下方に向かっての身体の動きのトレーニングが行えることは前提となるが、転倒後は倒れこんだ姿勢から立ち上がる必要がある。多くの傷病者の人は転倒後に立ち上がれず、怪我や病気を悪化させてしまい、最悪な結果としては命を落としてしまう人もいる。しかしながら、本発明設備によると、転倒後の対策のトレーニングも行うことができるので、この点でも本発明設備は優位性を有している。
・転倒後に自らの身体でどのように立ち上がるべきか、どのような補助具が必要か等多くの課題をクリアしなければならない。また、柔軟性にすぐれたクッションの上を歩くことは、歩行するにあたって通常のフローリングや畳等の上を歩く日常生活の場合と全く異なる。具体的には、以下の項目のような、歩行する上での日常生活ではめったに経験できない特徴を有しているので、利用者の危険回避能力の向上に本発明設備は大いに貢献する。即ち、本発明設備の利用者は、以下のような本発明設備を利用した特有の経験により危険回避能力を向上させる。
*床に相当するクッション表面から受ける反力が減少する。
*足底の固定力が低下する。
*体全体のバランスの保持が困難になる。
*片脚立位の難易度が高くなる。
*不安定な材質でできたクッションの上を歩行する間ずっと日常生活であまり体験しない特有の不安を感じながら歩行することになる。
*つま先が引っかかったり、足の振り出しが困難になったりする。
【0156】
即ち、クッションの上を歩行することで、日常生活では生じ得ない多くの環境因子からの影響を受けることとなる。このように、宙に浮いた後に床に倒れこむ転倒は、「単に立位姿勢から重力によって身体が床に倒れこむ」ということだけでなく、極めて柔らかい材質できたクッションの上への転倒を体験した後に再び起き上がってクッションの外側に出るまで歩いて行くことが必須の絶対条件となっている。その結果、転倒疑似体験の後にマットの上をずっと注意して歩いていかなければならなくなることで、本発明設備でトレーニングすることで、実際の転倒に適切に対処するための運動学習効果を倍増させることができる。
【0157】
最後に各設備の全てにおいて共通して発揮し得る本発明の優位点を、「傷病者が通えるトレーニングジム」をワンフロア(例えば、ビルの中のフロアで段差のない平らなにフローリングの床面)に設けた場合に基づいて具体的に述べる。
・傷病(脳卒中による運動麻痺、骨折による禁忌事項、円背、脚長差、拘縮、変形性関節症等の姿勢変化等)により、障害のある身体部位(脳も含む)の固有受容器の反応が低下している。その固有受容器に刺激を与え、機能を促通させる設備を利用した転倒回避トレーニングが行える。
・個々の身体機能の特徴に合わせたオリジナルなプログラムを作成できる。
・単一的なトレーニング(重錘やバーベル等使用した筋トレ、ストレッチ等)の運動と全く異なり、日常生活の運動を疑似体験することは、全身の筋力、柔軟性を向上させ、身体機能の反応の促通、突然の出来事に反射的に反応できる。
・体質(身長、上半身、下半身、腕の長さ等の各人の身体各部位の特徴、体重、筋力、身体の柔軟性)の違いにより、日常生活における動作の仕方も個人個人様々となっている。そこで、個人の日常生活における習慣で身に付いてしまった悪い癖を本発明設備によって矯正し、更には本発明設備を利用することで日常的に使用しない身体機能を刺激し、転倒回避へつなげることができる。
・日常「自宅での生活」として裸足、又は義足等の装具や下肢疾患の影響がある人達等の場合は、滑り止め付き靴下を履いて行う。足底への刺激は脳の活性化にとっては重要な要素となるので、このようにして運動学習を行う時間を少しでも長くすることで、本発明設備の使用から得られる効果がより向上する。
・QOL(クオリティー・オブ・ライフ)や参加レベルでの活動は利用者ごとに違いがあるので、利用者が各々自分の身体能力レベルや運動学習ペースに合わせた短期や中期、長期等の目標を掲げて行っていくことができる。
・運動学習の理論では「認知レベル」「連合レベル」「自動レベル」に基づいている。
・視覚的情報は(1)~(7)のトレーニングでも、身体機能、バランス、恐怖等の精神面に大きく影響をして、本来の身体機能、バランス機能を低下、又は発揮できなくさせることは、今までの研究により明確である。しかしながら、日常生活活動練習として「閉眼してのトレーニング」は、一般的には指導されてきていない。
・本発明設備においては、幾つかの設備に関して災害時の危険回避・避難路へのアプローチへの動作が含まれている。これらの設備を利用することで、水害における床上浸水や火災等の際に家具等の安全確保のための狭い空間や強固な構造体をなす木材等でできた狭い通路や構造体に潜ったり昇ったりして一時的に避難することや、水から非難する際には家具やキッチン等の上に昇ることで助かる命が増え、災害対策としての極めて有効な役目を果たす。
・本発明設備に関する構成部材については、カラフルな装飾を行い、白内障(黄色が見え辛く、赤が見易い)等の視覚に影響がある傷病のある人でも認識し易いように工夫するのが好ましいと考えている。
・介護保険の開始後、デイケア、デイサービス等の通所リハビリテーション、老健や特養等の介護老人保健施設、老人ホーム、健康教室等で行われているトレーニングは「転倒予防」として筋力トレーニング、ストレッチ、体操等約20年間内容の変化は大きくない。また、座位や立位等でのトレーニングが中心となり、実際に「転倒時の対策」としてのトレーニングは行われていない。
【0158】
しかしながら、本発明の発明者自身が理学療法士としての知識や経験に基づいて海外での研修を通じて勉強する中で今までわが国では行われることのなかった転倒に対する積極的なトレーニングを行うといういわば攻めの方針に基づく実践的な観点から本発明としての「日常生活における危険回避能力向上のための設備」の着想を得るに至った。
・全ての設備に筋力強化、関節の柔軟性向上、判断能力の向上、空間認知機能の向上、バランス能力の向上、視野能力の向上、体性感覚、立ち直り反応の向上が含まれている。これによって、転倒しそうになった瞬間にどのように身体を動かし、どのように身体を守るかをトレーニングする必要があるが、これに当って本発明は極めて有用に貢献することができる。
・なお、傷病を患っている人達の身体状況は個人個人様々で異なっており、症状による禁忌こと項が異なる。具体的には、麻痺がある人達と骨折後に人工関節置換術をされている人達、外科的要素からの廃用性症候群、パーキンソン病等による動作障害の人達、骨粗鬆症の人達ごとに禁忌事項を規定するように考えている。
【0159】
本発明者は、特に傷病を患っている人達が利用者になる場合、全ての設備において上述の傷病の種類ごとに禁忌動作を明確化して傷病を患っている利用者の各自に特別な注意事項として周知徹底しておくが必要であると考えている。また、身体機能レベルで可能な設備の選択や介助方法等一人一人にプログラムの立案が必要となることも考えている。
【符号の説明】
【0160】
100 第1の危険回避・対処能力向上用運動学習設備
110 設備固定部
120 バランス喪失状態体感用運動学習部
131,132,133,・・・(130) 座り状態維持用箱
200 第2の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備
211,212,213,・・・(210) 下肢挙上能力向上用跨ぎ板
220 手すり
300 第3の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備
311,312,313,・・・(310) 潜り抜け能力向上用運動学習部材
400 第4の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備
411,412,413,・・・(410) 身体昇降能力向上用運動学習部
500 第5の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備
511,512,513,・・・(510) 横歩きすり抜け空間形成部材
600 第6の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備
621,622,623,・・・(620) 衝突影響度合い低下用運動学習部材
700 第7の日常生活の危険回避・対処能力向上用運動学習設備
710 転倒疑似体感マット
721,722,723,・・・(720) 倒れ込み踏み台
730 掴みレール
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