(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097474
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】水中油型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/49 20060101AFI20230703BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230703BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230703BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230703BHJP
A61Q 19/02 20060101ALI20230703BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/06
A61K8/34
A61K8/73
A61Q19/02
A61K8/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213602
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】591230619
【氏名又は名称】株式会社ナリス化粧品
(72)【発明者】
【氏名】浅井 健史
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA032
4C083AA122
4C083AB032
4C083AC022
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC102
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC212
4C083AC241
4C083AC342
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC542
4C083AC582
4C083AC622
4C083AC642
4C083AC662
4C083AC851
4C083AC852
4C083AC902
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD072
4C083AD092
4C083AD132
4C083AD152
4C083AD202
4C083AD212
4C083AD242
4C083AD332
4C083AD351
4C083AD352
4C083AD392
4C083AD412
4C083AD432
4C083AD492
4C083AD572
4C083AD641
4C083AD662
4C083BB05
4C083CC05
4C083CC19
4C083DD22
4C083DD33
4C083EE16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、ニコチン酸アミドを高配合した場合に生じるベタツキ等の使用感、使用・保管時に生じる析出を改善し、さらに充分な高温での乳化安定性を向上させることを課題とする。
【解決手段】次の成分(A)~(E);
(A)ニコチン酸アミド:1~10質量%
(B)アニオン性界面活性剤
(C)20℃で固体状の高級アルコール
(D)ジェランガム
(E)多価アルコール:5~25質量%
を含む水中油型乳化組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(E);
(A)ニコチン酸アミド:1~10質量%
(B)アニオン性界面活性剤
(C)20℃で固体状の高級アルコール
(D)ジェランガム
(E)多価アルコール:5~25質量%
を含む水中油型乳化組成物。
【請求項2】
成分(E)と成分(A)の配合質量割合が、
(E)/(A)≧2である請求項1記載の水中油型乳化組成物。
【請求項3】
さらに(F)水溶性美白剤を配合する、請求項1に記載の水中油型乳化組成物。
【請求項4】
成分(F)の水溶性美白剤がアスコルビン酸誘導体及びその塩、トラネキサム酸、アルブチンから選ばれた1種以上である請求項1~3いずれかに記載の水中油型乳化組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベタツキがない使用感触に優れ、かつ結晶析出抑制効果に優れ、高温での乳化安定性の良好でさらに優れた美白効果を有する水中油型乳化組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、化粧品の製品コンセプトとして、加齢やストレス、紫外線や空気の乾燥などにより、シミやシワ、たるみ、色素沈着等を改善することを目的とした製品が多く発売されている。特にシミや色素沈着などの皮膚色の変化は、加齢が進んだ印象をあたえるため改善を望む人は多い。効果成分としてニコチン酸アミドは、色素細胞から表皮細胞へのメラニンの転送を阻害することにより色素沈着を防止する美白効果が知られている(非特許文献1)。
【0003】
しかしながら、ニコチン酸アミドを多く配合することでベタツキやキシミなどが発生し、良好な使用感触が得られないということが知られている(特許文献1)。特にニコチン酸アミドを1質量%以上配合した皮膚外用組成物の場合には、中身が口部や、キャップに付着した後乾燥した場合、容器側面に付着した時などでニコチン酸アミドの結晶が析出することが知られている(特許文献2、特許文献3)。
【0004】
これに対し、特許文献1では、特定の分枝鎖炭化水素、特定の高展性油を併用することで、ニコチン酸アミドを多量に配合した場合のベタツキを抑えられたのだが、中身が口部やキャップに付着して結晶が析出しスムーズな容器の開閉を妨げる場合があった。他には、水中油型乳化組成物において、直鎖脂肪酸とポリエチレングリコールとのエステルを乳化剤として用いて、ワセリンを配合するという対応をおこなうことで、1%以上のニコチン酸アミドを配合しても刺激感・べたつきがなく使用感触に優れ、かつ結晶抑制効果に優れた水中油型乳化組成物を得ることが報告されている(特許文献4)。しかしながら、特許文献4では総合的に良好な皮膚外用組成物が得られているものの、ワセリンを必須とする水中油型乳化物に限定されており充分な汎用性を持つとは言い難い。特許文献2では、特定のカチオン配合ポリマーを配合することにより結晶析出は改善されるが、ベタツキが増し、使用感触の良くないものであった。
【0005】
一方、皮膚外用剤の増粘剤として配合される水溶性高分子としては、カルボマーなどのアクリル酸系増粘剤が挙げられるが、一般に耐塩性に乏しく電解質の種類によっては、著しい粘度低下や凝集をおこすため安定性不良の原因となることはよく知られており様々なアプローチで技術開発されている。例えば、特許文献5のように高温での安定性を得るために、特定の界面活性剤(ポリオキシエチレン付加型ヒマシ油とポリオキシエチレン付加型ソルビット脂肪酸エステル)を用いるといった技術が開示されている。さらに気候の温暖化で夏場の室温が上昇しているため、今まで以上に耐高温性を高めた処方が必要とされている。具体的には、今までであれば50℃以上での安定性で十分と思われていたが、最近では60℃程度までの保管安定性確認が必要な場合がある。一般的に保管温度を上げることで低粘度化が進み著しく安定性が低下する。つまり低温での保管より、より高温での保管の方が保管安定性に対する負荷が高い。
【0006】
以上のことにより、ニコチン酸アミドを配合することで、優れた美白効果を発揮することができるが、ベタツキがなく使用感触に優れ、かつ結晶が析出しない、さらに高温でも乳化安定性の良好な水中油型乳化組成物は知られていない状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2003-502435号公報
【特許文献2】特表2002-537241号公報
【特許文献3】特開2018-168105号公報
【特許文献4】特開2018-172304号公報
【特許文献5】特開2018-168146号公報
【非特許文献1】T.Hakozakiら、British J.Dermatology、147巻、20頁、2002年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ニコチン酸アミドを高配合した場合に生じるベタツキ等の使用感、使用・保管時に生じる析出を改善し、さらに充分な高温での乳化安定性および優れた美白効果を有することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる実情を鑑み、本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、
次の成分(A)~(E);
(A)ニコチン酸アミド:1~10質量%
(B)アニオン性界面活性剤
(C)20℃で固体状の高級アルコール
(D)ジェランガム
(E)多価アルコール:5~25質量%
を含む水中油型乳化組成物が上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明はさらに成分(E)と成分(A)の配合質量割合が、(E)/(A)≧2である水中油型乳化組成物に関するものである。
【0011】
本発明はさらに(F)水溶性美白剤を配合することができる。
【0012】
本発明は(F)水溶性美白剤がアスコルビン酸誘導体及びその塩、トラネキサム酸、アルブチンから選ばれた1種以上の水溶性美白剤である水中油型乳化組成物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水中油型乳化組成物は、ベタツキがなく使用感触に優れ、かつ結晶析出抑制効果と高温での乳化安定性および美白効果に優れた効果を有するものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。また、%で表記する数値は、特に記載した場合を除き、質量を基準にした値である。
【0015】
本発明における成分(A)ニコチン酸アミド(C6H6NO/分子量:122.12)は、ニコチン酸(ビタミンB3、ナイアシン)の水溶性のアミド化合物である。本発明では、米ぬかから抽出したものや、合成したものを配合することができる。具体的には、第15改正日本薬局方2008に収載されているものを用いることが出来る。溶状においては、水やエタノールに易溶で、ジエチルエーテルには難溶である。多価アルコールや油剤にも溶けにくいことが知られている。
【0016】
成分(A)の配合量は、1~10質量%(以下、単に「%」と略す)である。より好ましくは2~8%である。成分(A)の配合量がこの範囲であるとシミや色素沈着の改善効果が得られる。尚、10%を超えて配合しても効果面では頭打ちの傾向にあり、加えて組成物中の水分が蒸発した際に結晶析出する恐れがある。
【0017】
本発明における(B)アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、ステアリン酸アルギニン等の炭素数12~24の脂肪酸を由来とする脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキルエーテル硫酸エステル塩;ラウロイルサルコシンナトリウム等のN-アシルサルコシン塩;N-ステアロイル-N-メチルタウリンナトリウム、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム等の脂肪酸アミドスルホン酸塩;モノセチルリン酸カリウム等のアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩;ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム等の長鎖スルホコハク酸塩;N-ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸アルギニン、N-ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、N-ミリストイル-L-グルタミン酸ナトリウム等の長鎖N-アシルグルタミン酸塩などが挙げられる。これらのうち、アルキルリン酸塩、長鎖N-アシルグルタミン酸塩が好ましく、セチルリン酸塩、ステアロイルグルタミン酸塩がより好ましい。
【0018】
成分(B)の配合量は、特に限定されないが、0.1~3%であることが望ましく、より好ましくは、0.3~1%である。
【0019】
本発明における(C)20℃で固体状の高級アルコールの炭素数は特に限定されないが、炭素数16以上の直鎖状飽和アルコールが好ましい。例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。
【0020】
成分(C)の配合量は、特に限定されないが、0.2~5%であることが望ましく、より好ましくは、0.5~3%である。
【0021】
本発明における(D)ジェランガムは、ブドウ糖を基質として細菌Pseudomonaselodeaの純粋培養によって得られるヘテロポリサッカライドであり、化粧料分野で一般的に使用されているものであれば、ネイティブ型ジェランガムでも、脱アシル型ジェランガムでも特に制限されずに用いることができる。これらの中でもネイティブ型ジェランガムを用いることが好ましい。
【0022】
成分(D)の配合量は、特に限定されないが、0.01~1%であることが望ましく、より好ましくは、0.02~0.5%である。配合量が1%を超えるとべたつく場合がある。市販のケルコゲル、ケルコゲルHM(いずれもCPケルコ社)等を用いることもできる。
【0023】
本発明における成分(E)多価アルコールは、成分(A)を溶解させ結晶析出を抑制するために配合される。多価アルコールだけでは、結晶析出抑制効果はほとんどないが(D)ジェランガムと併用することで良好な結果が得られる。成分(E)は、外用組成物に一般に用いられるものであれば、特に制限されないが、例えば、2価のアルコールである1,3ブチレングリコールのようなアルカンジオール類でもよく、3価以上のアルコールであるグリセリンやジグリセリン、水酸基が多い糖類や糖アルコールでもよく、必要に応じて一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。
【0024】
成分(E)の配合量は、多量の多価アルコールを配合すると使用感的にベタツキが発生しやすくなるため25%以下が望ましい。一方、成分(A)を溶解させ結晶析出を抑制するために、成分(E)は組成物全体の5%以上含まれる必要があり、さらには成分(A)に対し2倍量以上配合されているとより好ましく結晶析出を抑制できる。
【0025】
本発明の水中油型乳化組成物は、上記成分(A)~(E)を配合することにより、シミや色素沈着などの皮膚色の変化を改善すると共に、刺激感・ベタツキがない使用感触に優れ、かつ結晶析出抑制効果、および高温の乳化安定性に優れた水中油型乳化組成物にすることが可能となる。
【0026】
本発明はさらに、(F)水溶性美白剤を配合することができる。水溶性美白剤は特に限定されないが、アスコルビン酸誘導体及びその塩、トラネキサム酸、アルブチンから選ばれた1種以上の水溶性美白剤を配合することで美白効果を増強することができる。
【0027】
本発明の水中油型乳化組成物には、上記成分の他に、本発明の効果を妨げない範囲で通常の水中油型乳化組成物に配合される任意成分、すなわち、上記必須成分以外の、水性成分、油剤、粉体、皮膜形成剤、界面活性剤、油溶性ゲル化剤、有機変性粘土鉱物、樹脂、着色剤、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、香料、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、美容成分等を配合することができる。
【0028】
本発明の水中油型乳化組成物は、他の成分との併用により種々の剤型とすることもできる。具体的には、液状、ゲル状、ペースト状、クリーム状、固形状、シート状等、種々の剤型にて実施することができる。
【0029】
本発明の水中油型乳化組成物は、化粧料の他、特に抗老化効果を期待してニコチン酸アミドを高配合する医薬部外品を調製するのに適している。具体的には、例えば化粧水、乳液、クリーム、美容液、マッサージ化粧料、パック化粧料、ハンドクリーム、ボディローション、ボディクリームなどに用いることができる。その使用方法は、手や指、コットンで使用する、不織布等に含浸させて使用する、噴射剤を用いてエアゾール化させるなどの方法が挙げられる。
【実施例0030】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。配合量は特記しない限り、その成分が配合される系に対する質量%で示す。
【0031】
実験1:増粘剤に与えるニコチン酸アミドの影響
1%カルボマーゲルを用いて、ニコチン酸アミド配合量による粘度変化を確認した。結果を表1に示す。
(実験方法)
(1):1%カルボマー水溶液を、水酸化カリウムを用いてpH6.5に調整して、ゲル化させ1%カルボマーゲルとした。
(2):上記1%カルボマーゲルに所定量のニコチン酸アミドを添加し、均一に溶解した後、20℃で4時間放置し粘度を測定した。粘度低下度は数1の式に基づいて算出した。
(測定条件)
測定機器:東機産業社製 VISCOTESTER TVB-10
測定条件:ローター M3、回転数 12rpm、60秒後、20℃環境下
【0032】
【0033】
【0034】
(考察)
ニコチン酸アミドの配合量が1%に達しないような低濃度領域では、粘度低下が少なかった。ニコチン酸アミドは電解質であるが、化粧料の増粘安定剤として汎用されているカルボマーのような、電解質に敏感な水溶性高分子ゲルの粘度低下に対して比較的影響が少ないことが示唆された。しかし配合量が1%を超えて高濃度になった場合には、明らかな粘度低下が起こることが本実験で示されている。そのため分離などの安定性不良が起こりやすくなることが懸念された。
尚、塩化ナトリウムを用いて同様の試験を行った場合は以下のとおりであった。
1%カルボマーゲルに代表的電解質である塩化ナトリウムを0.1%加えた時の粘度は、35.3mPa.s(測定条件:ローター M1、回転数 60rpm、60秒後、20℃環境下)粘度低下度=99.4%
【0035】
本発明品1~12及び比較品1~8:水中油型乳液
下記表2に示す処方の水中油型乳化クリームを調製し、ベタツキのなさ、結晶析出抑制効果、高温での乳化安定性について下記の方法により評価した。また、実施例1、実施例2、比較例8は美白効果を評価した。その結果も併せて表2に示す。
【0036】
(評価項目)
ベタツキのなさ
結晶析出抑制効果
高温での乳化安定性
美白効果
【0037】
(評価方法)
[ベタツキのなさの官能評価方法]
20代~40代の女性で官能評価の訓練を受けた、専門パネラーを10名にて評価を行った。各試料について専門パネラーが皮膚に塗布した後の直後のベタツキを評価した。
下記絶対評価にて5段階評価をおこない、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
【0038】
[ベタツキのなさの評価方法]
(点数):(評価)
5点:ベタツキを感じない
4点:ほとんどベタツキを感じない
3点:ややベタツキを感じる
2点:ベタツキを感じる
1点:非常にベタツキを感じる
4段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎ :4点以上
○ :3点以上~4点未満
△ :2点以上~3点未満
× :2点未満
【0039】
[結晶析出抑制効果の評価方法]
結晶析出抑制効果の評価については、滅菌シャーレ(ポリスチレン製:90mmΦ×15mm)に試料4gを底面に塗布し、30℃インキュベーター内に解放状態(蓋をしない状態)で24時間静置した。その後、各試料を顕微鏡観察した。結晶析出状態は、光学顕微鏡40倍にて偏光フィルターを用いて観察した。
<判定基準>
(判定):(評価)
◎ :結晶の析出がない。
○ :わずかに結晶の析出がみられる。
× :結晶の析出が明らかに見られる。
【0040】
[高温での乳化安定性の評価方法]
(乳化安定性の評価)
実施例1~12、比較例1~8の各試料を、60℃の温度条件下に2週間保存し、外観変化を目視により観察し、下記3段階の判定基準により判定した。
3段階判定基準
(判定):(評価結果)
◎ :変化なし、均一:非常に良好
○ :1週間は変化がないが、2週間後には分離が認められる:良好
× :1週間以内に分離が認められる:不良
【0041】
[美白効果の評価方法]
30代~50代の女性20名を2群に分け、第1群は半顔にニコチン酸アミドと水溶性美白剤を配合した試料(実施例1)、もう一方にはプラセボ(比較例8)を1日2回塗布、第2群は半顔にニコチン酸アミドを配合した試料(実施例2)、もう一方にはプラセボを1日2回塗布で8週間連用してもらった。連用前後の顔の正面および半顔を、顔写真専用撮影ミニスタジオVISIA―CR(CANFIELD社製)を用いて撮影した。撮影は、被験者の額部に画像補整用カラーチャートを貼付した状態で写真撮影を行い、Photoshop(アドビ システムズ インコーポレイテッド)(登録商標)の機能を用いてカラーチャートのホワイトバランスが一定となるように各撮影画像を補正することで解析用画像を得た。連用前後での解析用画像比較をもとに、「美白効果」について化粧品評価専門パネル3名で評価した。評価基準は、以下の通りである。下記5段階評価基準により評点を付してもらい、全パネルの評点の平均値を下記4段階評価基準に従って判定した。
(評点)
5点:美白効果に特に優れる
4点:美白効果に優れる
3点:美白効果がある
2点:美白効果がわずかにある
1点:美白効果がない
結果は、平均値から、下記基準に基づき示した。
(評価基準)
◎:平均点が4点以上
○:平均点が3点以上4点未満
△:平均点が2点以上3点未満
×:平均点が2点未満
【0042】
【0043】
ステアロイルグルタミン酸ナトリウム *1 アミソフト HS―11P 味の素ヘルシーサプライ社製
セチルリン酸カリウム *2 AMPHISOL K DSM ニュートリション社製
ジェランガム *3 ケルコゲルHM CPケルコ社製
(なお、以下に記載する*1、*2および*3はそれぞれ同一のものを指す)
【0044】
製造方法
(a):1~12を70℃で均一に溶解混合する。
(b):25の精製水に順次その他成分を加え、70℃で均一に溶解混合する。
(c):(b)に(a)を添加し70℃で乳化する。
(d):40℃まで攪拌冷却して目的の組成物とする。
【0045】
表2の結果から明らかなように、本発明品の実施例1~12の水中油型乳化組成物は、比較例1~8に比べ、ベタツキのなさ、結晶析出抑制効果、高温での乳化安定性の全てにおいて良好な結果が得られた。また、実施例1、実施例2の美白効果が認められ、特にニコチン酸アミドに加えて水溶性美白剤を配合した実施例1は優れた効果を確認した。
一方、(B)アニオン性界面活性剤を配合していない比較品1、2は経時安定性試験にて3日以内に顕著な分離が見られ、ベタツキを感じる使用感となった。(C)20℃で固体状の高級アルコールを配合していない比較例3、および20℃で液体状の分岐鎖飽和アルコールであるイソステアリルアルコールを使用した比較例4は、経時安定性試験にて翌日までに顕著な分離が見られた。(D)ジェランガムを配合していない比較例5は結晶析出が確認され、さらに3日以内に顕著な分離が見られた。(D)ジェランガムの代わりに汎用的な増粘剤であるキサンタンガムを用いた比較例6も、結晶析出、さらに1週間以内に顕著な分離が見られた。(E)多価アルコールの代わりに一価のアルコールであるエタノールを配合した比較例7については、結晶析出を生じた。また、ニコチン酸アミドを配合していない比較例8については、美白効果をほとんど確認できなかった。
【0046】
実施例13:水中油型日焼け止めクリーム
(成分) (質量%)
1.1,3-ブチレングリコール 12.0
2.ジグリセリン 3.0
3.精製水 適量
4.ニコチン酸アミド 6.0
5.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
6.ステアリン酸スクロース 1.0
7.(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー
*4 0.1
8.ジェランガム *3 0.05
9.30%ジラウロイルグルタミン酸リシンNa水溶液 0.3
10.モノステアリン酸グリセリル 1.5
11.セスキオレイン酸ソルビタン 0.3
12.水添レシチン 0.1
13.ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル) 3.0
14.セチルリン酸ジエタノールアミン *5 0.5
15.メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 5.0
16.ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル 1.0
17.ホホバ油 5.0
18.シアバター 2.0
19.スクワラン 1.0
20.セラミド3 0.1
21.トコフェロール 0.05
22.セトステアリルアルコール 2.0
23.コレステロール 0.3
24.ユビキノン 0.001
25.水添ポリイソブテン 2.0
26.40%ポリアクリルアミド溶液 0.3
(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー *4 SEPINOV EMT10:セピック社製
セチルリン酸ジエタノールアミン*5 AMPHISOL:DSM ニュートリション社製
【0047】
(製造方法)
(a):成分1~9を70℃で均一に溶解混合する。
(b):成分10~25を80℃で均一に溶解混合する。
(c):(a)に(b)を添加し70℃で乳化する。
(d):(c)に26を加えて均一になるまで混合する。
(e):40℃まで冷却して水中油型日焼け止めクリームを得た。
【0048】
実施例13の水中油型日焼け止めクリームは、美白効果、ベタツキ、結晶析出抑制効果、経時安定性が優れた皮膚外用組成物であった。
【0049】
実施例14:水中油型乳化美容液
(成分) (質量%)
1.1,3-ブチレングリコール 5.0
2.ジプロピレングリコール 5.0
3.キシリトール 3.0
4.精製水 適量
5.ニコチン酸アミド 4.0
6.ジェランガム *3 0.1
7.92%(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー/(t-ブタノール/水混合品)*6 0.1
8.ヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.) 0.5
9.マカデミアナッツ油脂肪酸フィトステリル 2.0
10.セタノール 3.0
11.ジメチルポリシロキサン(5CS) 3.0
12.ステアロイルグルタミン酸ナトリウム *2 0.2
13.ミリスチン酸ポリグリセリル-5 1.0
14.トコフェロール 0.1
15.グリチルレチン酸ステアリル 0.05
16.10%水酸化ナトリウム水溶液 0.5
17.フェノキシエタノール 0.2
18.エタノール 5.0
19.0.3%水溶性コラーゲン水溶液 0.1
20.1%ヒアルロン酸ナトリウム水溶液 0.1
21.シロキクラゲ多糖体 0.1
22.10%リン酸アスコルビルナトリウム水溶液 10.0
92%(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー (t-ブタノール/水混合品) *6 ARISTOFLEX AVC:クラリアント社製
【0050】
(製造方法)
(a):成分1~8を70℃で均一に溶解混合する。
(b):成分9~15を80℃で均一に溶解混合する。
(c):(a)に(b)を添加し70℃で乳化する。
(d):(c)を冷却開始後、45℃で成分18~22を順次添加した後、40℃まで冷却して水中油型乳化美容液を得た。
【0051】
実施例14の水中油型乳化美容液は、美白効果、ベタツキ、結晶析出抑制効果、経時安定性が優れた皮膚外用組成物であった。
【0052】
実施例15:水系保湿ジェル
(成分) (質量%)
1.1,2-ペンタンジオール 0.5
2.1,3-ブチレングリコール 12.0
3.メチルグルセスー10 3.0
4.37.5%(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー/イソヘキサデカン/ポリソルベート80/水混合品 *7 0.3
5.5%ポリクオタニウムー51水溶液 0.3
6.ジェランガム *3 0.05
7.(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー *8
0.7
8.ニコチン酸アミド 3.0
9.トラネキサム酸 2.0
10.カルボマー 0.1
11.10%水酸化カリウム水溶液 1.0
12.セチルリン酸カリウム *2 0.2
13. セタノール 0.4
14.PEG-100水添ヒマシ油 0.5
15.エチルヘキシルグリセリン 0.3
16. 精製水 適量
37.5%(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー/イソヘキサデカン/ポリソルベート80/水混合品 *7 SIMULGEL EG QD:セピック社製
(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー *8 アデカノールGT-700:アデカ社製
【0053】
(製造方法)
(a):あらかじめ成分12~14を加熱溶解しておく。
(b):成分15に(a)および、1~11の各成分を添加混合し透明均一になるまで攪拌し水系保湿ジェルを得た。
【0054】
実施例15の水系保湿ジェルは、美白効果、ベタツキ、結晶析出抑制効果、経時安定性の優れた皮膚外用組成物であった。
【0055】
実施例16:シートマスク(不織布含浸美容液)
(成分) (質量%)
1.1,2-ヘキサンジオール 0.5
2.1,3-ブチレングリコール 10.0
3.メチルグルセスー10 1.0
4.(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー
0.05
5.ジェランガム *3 0.1
6.キサンタンガム 0.2
7.PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン 0.3
8.ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
9.ニコチン酸アミド 7.0
10.オクテニルコハク酸デンプンAl 0.5
11.グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
12.グリセリン 5.0
13.セタノール 0.1
14.リン酸セチル *9 0.1
15.PPG-6デシルテトラデセス-30 0.5
16.エチルヘキシルグリセリン 0.2
17.メチルパラベン 0.1
18.精製水 適量
19・10%水酸化カリウム水溶液 0.2
リン酸セチル Hostaphat CC100 *9 クラリアント社製
【0056】
(製造方法)
(a):あらかじめ成分12~17を加熱溶解しておく。
(b):成分18に(a)および、1~11の各成分を添加混合し均一になるまで攪拌し美容液を得た。
(c):(b)に19を入れて混合しシートマスク用原液とした。
(d):本美容液を、顔状に成形した不織布(500cm2,目付60g/m2,レーヨン/ポリプロピレン=70%/30%)に30g含浸させ、アルミシート袋に充填して、シートマスクを調整した。
【0057】
実施例16のシートマスクは、美白効果、ベタツキ、使用時に結晶析出がない、経時安定性の優れたものであった。
【0058】
実施例17:オールインワンゲル
(成分) (質量%)
1.リンゴ酸ジイソステアリル 1.0
2.ベヘニルアルコール 1.0
3.エチルヘキサン酸セチル 4.0
4.ジメチコン 1.5
5.スクワラン 4.0
6.ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル) 1.0
7.ココイルメチルタウリンナトリウム 1.0
8.セスキオレイン酸ソルビタン 0.8
9.ステアリン酸スクロース 2.0
10.ステアリン酸ポリグリセリル-10 1.5
11.PEG-50水添ヒマシ油 1.0
12.トコフェロール 0.1
13.水 適量
14.1,3-ブチレングリコール 10.0
15.ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル*10 0.1
16.グリセリン 15.0
17.カルボマー 0.1
18.ジェランガム *3 0.1
19.ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル 0.003
20.エチルヘキシルグリセリン 0.2
21.ニコチン酸アミド 4.0
22.フェノキシエタノール 0.2
23.アルブチン 3.0
24.パルミチン酸レチノール/コーン油混合物 0.001
25.10%アルギニン水溶液 1.0
26.グルタミン酸ナトリウム 0.01
27.クレアチニン 0.01
28.ツボクサエキス 0.01
29.ハイビスカス花エキス 0.01
30.加水分解ヒアルロン酸 0.01
31.コンフリー葉エキス 0.01
32.加水分解エラスチン 0.01
33.加水分解ダイズタンパク 0.01
34.マンダリンオレンジ果皮エキス 0.01
35.乳酸桿菌/セイヨウナシ果汁発酵液 0.01
36.ハトムギ種子エキス 0.01
37.ゲットウ葉エキス 0.01
ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル *10 サンジェロース 60L:大同化成社製
【0059】
(製造方法)
(a):成分1~12を70℃で均一に溶解混合する。
(b):成分13~24を80℃で均一に溶解混合する。
(c):(b)に(a)を添加し70℃で乳化する。
(d):(c)を冷却開始後、45℃で成分25~37を順次添加した後、35℃まで冷却して水中油型乳化美容液を得た。
【0060】
実施例17のオールインワンゲルは、美白効果、ベタツキ、結晶析出抑制効果、経時安定性が優れた皮膚外用組成物であった。
【0061】
実施例18:水中油型乳化美容液(多種抽出物配合美容液)
(成分) (質量%)
1.1,3-ブチレングリコール 9.0
2.ジグリセリン 5.0
3.マルトース 3.0
4.精製水 適量
5.ニコチン酸アミド 4.0
6.ジェランガム *3 0.1
7.(ヒドロキシプロピルメチルセルロースステアロキシエーテル *10 0.1
8.PEG-50水添ヒマシ油 2.0
9.ダイマージリノール酸(フィトステリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル) 2.0
10.ステアリルアルコール 1.0
11.水添ポリイソブテン 3.0
12.セチルリン酸カリウム *2 0.5
13.セスキオレイン酸ソルビタン 0.8
14.グリチルレチン酸ステアリル 0.05
15.トコフェロール 0.1
16.フェノキシエタノール 0.2
17.バラ抽出物 0.01
18.桜抽出物 0.01
19.ユリ抽出物 0.01
20.シマホオズキ抽出物 0.01
21.ガジュツ抽出物 0.01
22.茶抽出物 0.01
23.ジオウ抽出物 0.01
24.トウキ抽出物 0.01
25.ハイビスカス抽出物 0.01
26.トルメンチラ抽出物 0.01
27.バオバブ抽出物 0.01
28.イレイセン抽出物 0.01
29.ヒマワリ抽出物 0.01
30.クスリグサ抽出物 0.01
31.カンゾウ抽出物 0.01
32.ベニバナ抽出物 0.01
33.朝鮮人参抽出物 0.01
34.ハトムギ抽出物 0.01
35.スギナ抽出物 0.01
36.イチョウ抽出物 0.01
37.ホホバ抽出物 0.01
38.テルミナリア抽出物 0,01
39.ハコベ抽出物 0.01
40.トウモロコシ抽出物 0.01
41.ハナイグチ抽出物 0.01
42.ザクロ抽出物 0.01
43.メシマコブ抽出物 0.01
44.ローズヒップ抽出物 0.01
45.月見草抽出物 0.01
46.カミツレ抽出物 0.01
47.ダイズ抽出物 0.01
48.シロハナマメ抽出物 0.01
49.ミカン抽出物 0.01
50.モクテンリョウ抽出物 0.01
51.黒ニンジン抽出物 0.01
52.ホワイトストロベリー抽出物 0.01
53.ヒマラヤンラズベリー抽出物 0.01
54.ネムノキ抽出物 0.01
55.スイートマジョラム抽出物 0.01
56.モダマ抽出物 0.01
57.コンフリー葉エキス 0.01
58.サッカロミセス/デイリリー花発酵液 0.01
59.ゲットウ葉エキス 0.01
60.ムラサキシキブ果実エキス 0.01
61.ヒバマタエキス 0.01
62.加水分解ダイズタンパク 0.01
63.タベブイアインペチギノサ樹皮エキス 0.01
64.グルコシルヘスペリジン 0.01
【0062】
(製造方法)
(a):成分1~7を70℃で均一に溶解混合する。
(b):成分8~16を80℃で均一に溶解混合する。
(c):(a)に(b)を添加し70℃で乳化する。
(d):(c)を冷却開始後、45℃で成分17~64を順次添加した後、35℃まで冷却して水中油型乳化美容液を得た。
【0063】
実施例18の水中油型乳化美容液は、美白効果、ベタツキ、結晶析出抑制効果、経時安定性が優れた皮膚外用組成物であった。