(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097503
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】縦型排水トラップ
(51)【国際特許分類】
E03C 1/298 20060101AFI20230703BHJP
F16K 27/02 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
E03C1/298
F16K27/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213656
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】591138201
【氏名又は名称】コンドーエフアルピー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】近藤 太郎
【テーマコード(参考)】
2D061
3H051
【Fターム(参考)】
2D061DA10
2D061DD09
2D061DD14
3H051AA01
3H051BB03
3H051CC11
3H051FF02
(57)【要約】
【課題】メンテナンスが容易でコンパクトな縦型排水トラップを提供する。
【解決手段】縦型排水トラップXは、上下方向に沿って配置され、液体が流入する流入管部11及び液体が排出される排出管部12と、流入管部11及び排出管部12の間に設けられた弁筐体13と、を有する本体ケース1と、流入管部11に形成された弁座11b1に下側から当接可能な弁体21と、弁体21を上側へ移動させる磁石機構23と、液体の自重を受けた弁体21の下移動及び磁石機構23による弁体21の上移動を案内する案内部材22と、を有する弁筐体13の内部に収容される弁ユニット2と、を備え、弁筐体13には、上下方向と交差する方向から弁ユニット2のうち少なくとも弁体21及び磁石機構23を取り出し可能な開口部13Aが形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に沿って配置され、液体が流入する流入管部及び前記液体が排出される排出管部と、前記流入管部及び前記排出管部の間に設けられた弁筐体と、を有する本体ケースと、
前記流入管部に形成された弁座に下側から当接可能な弁体と、前記弁体を上側へ移動させる磁石機構と、前記液体の自重を受けた前記弁体の下移動及び前記磁石機構による前記弁体の上移動を案内する案内部材と、を有し、前記弁筐体の内部に収容される弁ユニットと、を備え、
前記弁筐体には、前記上下方向と交差する方向から前記弁ユニットのうち少なくとも前記弁体及び前記磁石機構を取り出し可能な開口部が形成されている縦型排水トラップ。
【請求項2】
前記弁ユニットの全体が前記開口部から取り出し可能に構成されている請求項1に記載の縦型排水トラップ。
【請求項3】
前記開口部は、前記上下方向に対して垂直な方向よりも上向きに傾斜した開口管部を含んでいる請求項1又は2に記載の縦型排水トラップ。
【請求項4】
前記案内部材は、円筒形状に形成された筒部を含んでおり、
前記弁体は、前記筒部に外挿される可動部と、当該可動部と接続された半球状の弁部とを含んでおり、
前記弁部の表面には、前記弁座に当接する環状シール材が固定されている請求項1から3のいずれか一項に記載の縦型排水トラップ。
【請求項5】
前記案内部材は、前記筒部の下端から外側に延出した複数の腕部と、複数の前記腕部の端部を接続する円環状部と、を含んでおり、
前記円環状部が前記排出管部に係止されている請求項4に記載の縦型排水トラップ。
【請求項6】
前記磁石機構は、前記弁体に設けられた第一磁石と、当該第一磁石と同一の極性から成り、前記案内部材に設けられた第二磁石とを有している請求項1から5のいずれか一項に記載の縦型排水トラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下方向に沿って配置される縦型排水トラップに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を汚水桝に排水する排水経路中に設けられ、汚染空気や臭気、害虫などの逆流を防止する縦型排水トラップが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の縦型排水トラップは、洗面器や手洗い器の下部に接続されるL字管状の排水導入部と、排水導入部の下流側の端部が接続され、下側に排出口を設けた直管状の本体部と、を備え、本体部に可動弁を取り付けている。この可動弁は、本体部の上側に設けられた蓋に支持された弁軸に設けられた鉄片と本体部に設けられた磁石とが吸着することにより、排水導入部を閉塞するように構成されている。この縦型排水トラップは、液体の流体圧が鉄片の磁石への吸着力を上回ったとき、可動弁が右側に移動して排水導入部の液体が本体部に流れて排出される構造となっており、また、蓋と一体的に可動弁を取り外して洗浄を行うことを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の縦型排水トラップは、洗面器等の下部に設けられるため、大量の液体の水圧により可動弁を移動させるものであるが、空調機のドレンなどは少量の液体であるため、水圧が低くて可動弁が移動せず、所望の排水性能を発揮できないおそれがある。また、空調機のドレン配管は狭隘な空間に設けられることがあるため、特許文献1に記載の縦型排水トラップのように、L字管と直管を組み合わせた構造では装着することができないおそれがある。しかも、特許文献1に記載の縦型排水トラップは、蓋と一体的に可動弁を取り外して洗浄可能となっているが、本体部に設けられた磁石等については本体部の内部に手を入れて洗浄する必要があり、メンテナンス上の問題がある。
【0006】
そこで、メンテナンスが容易でコンパクトな縦型排水トラップが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る縦型排水トラップの特徴構成は、上下方向に沿って配置され、液体が流入する流入管部及び前記液体が排出される排出管部と、前記流入管部及び前記排出管部の間に設けられた弁筐体と、を有する本体ケースと、前記流入管部に形成された弁座に下側から当接可能な弁体と、前記弁体を上側へ移動させる磁石機構と、前記液体の自重を受けた前記弁体の下移動及び前記磁石機構による前記弁体の上移動を案内する案内部材と、を有し、前記弁筐体の内部に収容される弁ユニットと、を備え、前記弁筐体には、前記上下方向と交差する方向から前記弁ユニットのうち少なくとも前記弁体及び前記磁石機構を取り出し可能な開口部が形成されている点にある。
【0008】
本構成では、上下方向に沿って配置される流入管部、弁筐体及び排出管部を有する本体ケースを備えているため、上下方向に沿う既設の配管に接続する際、幅を小さくすることが可能である。このため、空調機のドレン配管のように狭隘な空間に設けられている場合でも、縦型排水トラップを接続することができる。
【0009】
また、本構成では、磁石機構により上側に移動させた弁体が流入管部の弁座に下側から当接し、液体の自重により弁体が案内部材に案内されて下側へ移動するので、流入管部を流通する液体の流通方向と弁体の移動方向とが同じ方向である。つまり、液体が大量に流れない状況下であっても、液体の自重により弁体を開放するための力を確保することが可能となる。その結果、空調機のドレン等の少量の液体であっても、所望の排水性能を発揮することができる。
【0010】
しかも、本構成の弁筐体には上下方向と交差する方向から弁ユニットのうち弁体及び磁石機構を取り出し可能な開口部が形成されているため、弁体だけでなく、磁石機構も取り外して洗浄することができる。また、弁ユニットの取り出し方向は、上下方向に配置された本体ケースの側方であるため、上下方向に沿う配管が邪魔となることなく、開口部から弁ユニットを取り出すことができる。このように、本構成の縦型排水トラップは、メンテナンスが容易でコンパクトなものとなっている。
【0011】
他の特徴構成は、前記弁ユニットの全体が前記開口部から取り出し可能に構成されている点にある。
【0012】
本構成のように、弁ユニット全体を開口部から取り出せば、案内部材も洗浄することができるため、メンテナンスが更に容易である。
【0013】
他の特徴構成は、前記開口部は、前記上下方向に対して垂直な方向よりも上向きに傾斜した開口管部を含んでいる点にある。
【0014】
本構成のように、開口管部が上下方向に対して垂直な方向よりも上向きに傾斜していれば、流入管部から開口管部に液体が逆流すること無く、メンテナンス中でも排水が円滑なものとなる。
【0015】
他の特徴構成は、前記案内部材は、円筒形状に形成された筒部を含んでおり、前記弁体は、前記筒部に外挿される可動部と、当該可動部と接続された半球状の弁部とを含んでおり、前記弁部の表面には、前記弁座に当接する環状シール材が固定されている点にある。
【0016】
本構成のように弁部の表面に環状シール材を固定すれば、弁ユニットを取り外した際に、環状シール材を洗浄又は交換可能となる。その結果、長期に亘って汚染空気や臭気、害虫などの逆流防止機構を維持できる。
【0017】
他の特徴構成は、前記案内部材は、前記筒部の下端から外側に延出した複数の腕部と、複数の前記腕部の端部を接続する円環状部と、を含んでおり、前記円環状部が前記排出管部に係止されている点にある。
【0018】
本構成では、複数の腕部の間から液体を排出管部の方へ排出することが可能となり、円環状部を排出管部に係止させる構造であるため、弁ユニットの構造がシンプルであり製造コストを低減できる。
【0019】
他の特徴構成は、前記磁石機構は、前記弁体に設けられた第一磁石と、当該第一磁石と同一の極性から成り、前記案内部材に設けられた第二磁石とを有している点にある。
【0020】
本構成のように弁体及び案内部材を活用して互いに反発する第一磁石及び第二磁石を設ければ、装置のコンパクト化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】蓋部材を取り外した状態の縦型排水トラップの正面図である。
【
図5】その他の実施形態(1)における縦型排水トラップの正面図である。
【
図6】その他の実施形態(2)における縦型排水トラップの側断面図である。
【
図7】その他の実施形態(3)における縦型排水トラップの側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る排水トラップの実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0023】
図1及び
図2に示すように、縦型排水トラップXは、上下方向に沿って配置された樹脂製の本体ケース1と、本体ケース1に収容される弁ユニット2とを備えている。本体ケース1は、液体が流入する流入管部11と、液体が排出される排出管部12と、流入管部11及び排出管部12の間に設けられた弁筐体13と、を有している。本実施形態における流入管部11と排出管部12と弁筐体13とは、一体的に形成されている。以下、重力方向を下方向、その反対方向を上方向として説明するが、弁筐体13に対して、流入管部11が上側、排出管部12が下側にあれば、本体ケース1が傾斜して配置されてもよい。
【0024】
図2に示すように、弁ユニット2は、流入管部11を下側から閉塞可能な樹脂製の弁体21と、弁体21の上下移動を案内する樹脂製の案内部材22と、弁体21を上側へ移動させる磁石機構23とを有している。この弁ユニット2は、本体ケース1の弁筐体13に収容されている。本体ケース1,弁体21及び案内部材22は、ポリカーボネート等の耐候性樹脂で形成されている。また、本体ケース1は透明で、且つ、弁体21及び案内部材22は弁筐体13に対して識別可能な有色(例えば、青色)であることが好ましい。ここで、「透明」とは、弁筐体13の内部が透けて見える状態のことであり、無色透明又は有色透明が含まれ、また、半透明も含まれる。
【0025】
図1及び
図2に示すように、弁筐体13には、流入管部11及び排出管部12の間に、上下方向と交差する方向から弁ユニット2を取り出し可能な開口部13Aが形成されている。本実施形態における開口部13Aは、弁筐体13のうち本体部13Bから外側に突出した開口管部13aと、開口管部13aを閉塞する蓋部材14と、を含んでいる。開口管部13aは、上下方向に対して垂直な方向よりも上向きに傾斜している。
【0026】
流入管部11は、上流側の第一ドレン配管31に接続される第一接続管11aと、第一接続管11aに接続され弁筐体13に向かうほど拡径する第一テーパ管11bとを有している。排出管部12は、下流側の第二ドレン配管32に接続される第二接続管12aと、第二接続管12aに接続され弁筐体13に向かうほど拡径する第二テーパ管12bとを有している。弁筐体13の本体部13Bは、第一テーパ管11b及び第二テーパ管12bを接続する円筒形状に形成されており、内部に弁ユニット2を収容する収容空間Sが形成されている。
【0027】
第一テーパ管11bの弁筐体13側の端部には、中央に円形孔が形成された整流板11b2が固定されている。整流板11b2のうち円形孔の外周縁は、弁体21が下側から当接可能な弁座11b1となっている。本実施形態における整流板11b2は、第一テーパ管11bの弁筐体13側の端部に固定されている。なお、弁座11b1を多角形孔等で構成しても良く、液体が流通可能な形状であれば特に限定されない。また、整流板11b2を第一テーパ管11bの弁筐体13側の端部に係止してもよい。この場合、整流板11b2の弁座11b1となる円形孔に使用者の指を引っ掛けて、整流板11b2を取り外してメンテナンスすることが可能である。
【0028】
開口管部13aは、上壁13b1と、上壁13b1よりも長い下壁13b2と、弁筐体13の本体部13Bと接続される第一端部13b3と、蓋部材14が螺合される雄ねじが形成された第二端部13b4とで囲まれた傾斜管である。開口管部13aは、下壁13b2を上壁13b1よりも長く形成することにより、上下方向に対して垂直な方向よりも上向きに傾斜している。開口管部13aの第二端部13b4は、下壁13b2と上壁13b1とを接続することにより、流入管部11及び排出管部12に対して傾斜して配置されている。つまり、第二端部13b4に螺合される蓋部材14も傾斜して配置されており、縦型排水トラップXの正面側から蓋部材14を認識しやすくなっている。また、開口管部13aの第二端部13b4には、蓋部材14を螺合することにより密着するシール材Kaが配置されている。
【0029】
蓋部材14は、正面視で円形状に形成してあり、開口管部13aの第二端部13b4の外周面に形成された雄ねじに螺合させることにより開口管部13aに取付可能である。また、蓋部材14の外周には、等間隔に径外方向に突出した複数の凸部14aが形成されており、この凸部14aに使用者の指を引っ掛けることにより蓋部材14の開口管部13aに対する取付けが容易なものとなっている。また、蓋部材14の外側部には、周方向の全周にわたって反射体14b(例えば、反射テープ)を貼り付けてある。これにより、縦型排水トラップXをメンテナンスボックスに収容した場合に、作業者が反射体14bに光を照射して縦型排水トラップXの配設位置を容易に認識できる。縦型排水トラップXを配設する排水経路の他にも、各種の経路を設置していることがあるので、例えば、縦型排水トラップXに設ける反射体14bを赤色とし且つ他の経路に設ける部材に黄色の反射体を設け、経路ごとに反射体を色分けすることもできる。
【0030】
図2~
図4に示すように、弁体21は、後述する案内部材22の筒部22aに外挿される可動部21aと、可動部21aと一体的に接続された半球状の弁部21bとを含んでいる。可動部21aは、一端が案内部材22の筒部22aに外挿され、他端が弁部21bに接続された円筒形状で形成されている。弁部21bは、可動部21aの他端が接続された円形平面21b1と、円形平面21b1の外周から湾曲した半球面21b2とを有している。円形平面21b1の中央位置には、後述する磁石機構23の第一磁石23aが固定されている。半球面21b2(弁部21bの表面)には、流入管部11の弁座11b1に当接可能なOリング等の環状シール材Kbが環状溝に嵌めこまれた状態で固定されている。流入管部11に形成された弁座11b1に下側から当接可能な弁体21は、環状シール材Kbが弁座11b1に密着することにより閉弁される。この環状シール材Kbは、弁座11b1に密着可能な形状及び幅で形成されている。
【0031】
案内部材22は、液体の自重を受けた弁体21の下移動及び磁石機構23による弁体21の上移動を案内する。この案内部材22は、有底円筒状に形成された筒部22aと、筒部22aの下端から外側に延出した複数(本実施形態では4つ)の腕部22bと、複数の腕部22bの端部を接続する円環状部22cと、を含んでいる。筒部22aの底部は、磁石保持部材22a1を有しており、この磁石保持部材22a1の中央位置には、後述する磁石機構23の第二磁石23bが固定されている。複数の腕部22bは、周方向で互いに等間隔(本実施形態では90度間隔)で離間しており、隣り合う腕部22bの間が液体排出空間となっている。円環状部22cは、排出管部12の第二テーパ管12bにおける弁筐体13側の端部に係止されている。なお、円環状部22cと第二テーパ管12bとの係合は、第二テーパ管12bの内側突出部位に対する円環状部22cの係合等で構成されており、案内部材22の軸芯を維持できる構造であれば特に限定されない。
【0032】
図2及び
図4に示すように、磁石機構23は、弁体21に設けられた第一磁石23aと、案内部材22に設けられた第二磁石23bとを有している。上述したように、第一磁石23aは、弁体21の円形平面21b1の中央位置に固定されており、第二磁石23bは、案内部材22の磁石保持部材22a1の中央位置に固定されている。弁体21の円形平面21b1と案内部材22の磁石保持部材22a1とは、同軸芯上で同一の極が対向して配置されている。このため、第一磁石23aと第二磁石23bとの斥力により、弁ユニット2が弁筐体13の収容空間Sに収容された状態で、弁部21bが弁座11b1に当接し、環状シール材Kbが弁座11b1に密着して流入管部11が閉塞される。一方、流入管部11から流入した液体が、整流板11b2の上に所定量溜まったとき、第一磁石23aと第二磁石23bとの斥力に対抗して弁体21が下方向に移動し、開弁する。弁体21が開弁したとき、弁体21を通過した液体は、弁筐体13の本体部13Bから案内部材22の複数の腕部22bの間を経由して、排出管部12へと排出される。
【0033】
図1に示すように、本実施形態では、弁体21の弁部21bの下部と案内部材22の筒部22aの下部とのそれぞれに指を引っ掛けて、磁石機構23の斥力に対抗する力を加えることにより、弁体21を整流板11b2から離間させて弁ユニット2全体を開口部13A(開口管部13a)から取り出すことができる。つまり、弁筐体13には上下方向と交差する方向から弁ユニット2を取り出し可能な開口部13Aが形成されているため、弁体21だけでなく、案内部材22や磁石機構23も取り外して洗浄することができる。また、弁ユニット2の取り出し方向は、上下方向に配置された本体ケース1の側方であるため、上下方向に沿うドレン配管31,32が邪魔となることなく、開口管部13aから弁ユニット2を取り出すことができる。このように、本実施形態の縦型排水トラップXは、メンテナンスが容易な構造になっている。
【0034】
また、本実施形態では、上下方向に沿って配置される流入管部11、弁筐体13及び排出管部12を有する本体ケース1を備えているため、上下方向に沿う既設のドレン配管31,32に接続する際、幅を小さくすることが可能である。このため、空調機のドレン配管31,32のように狭隘な空間に設けられている場合でも、縦型排水トラップXを接続することができる。
【0035】
また、本実施形態では、磁石機構23により上側に移動させた弁体21が流入管部11の弁座11b1に下側から当接し、液体の自重により弁体21が案内部材22に案内されて下側へ移動するので、流入管部11を流通する液体の流通方向と弁体21の移動方向とが同じ方向である。つまり、液体が大量に流れない状況下であっても、液体の自重により弁体21を開放するための力を確保することが可能となる。その結果、空調機のドレン等の少量の液体であっても、所望の排水性能を発揮することができる。
【0036】
また、開口管部13aが上下方向に対して垂直な方向よりも上向きに傾斜しているため、流入管部11から開口管部13aに液体が逆流すること無く、排水が円滑なものとなる。本実施形態では弁部21bの表面に環状シール材Kbを固定しているので、弁ユニット2を取り外した際に、環状シール材Kbを洗浄又は交換可能となる。その結果、長期に亘って汚染空気や臭気、害虫などの逆流防止機構を維持できる。また、複数の腕部22bの間から液体を排出管部12の方へ排出することが可能であり、円環状部22cを排出管部12に係止させる構造であるため、弁ユニット2の構造がシンプルであり製造コストを低減できる。さらに、弁体21及び案内部材22を活用して互いに反発する第一磁石23a及び第二磁石23bを設けているため、装置のコンパクト化が図られる。
【0037】
[その他の実施形態]
【0038】
(1)
図5に示すように、弁ユニット2の案内部材22は、弁体21が閉弁状態にあるとき、筒部22aのうち可動部21aの下端よりも下側の位置に、ねじ部22a2を設けてもよい。本実施形態における円環状部22cは、排出管部12の第二テーパ管12bにおける弁筐体13側の端部に固定されている。本実施形態では、ねじ部22a2を螺脱させた後、弁体21の弁部21bの下部とねじ部22a2の下部とのそれぞれに指を引っ掛けて、磁石機構23の斥力に対抗する力を加えることにより、弁体21及び磁石機構23を整流板11b2から離間させて、開口部13Aから取り出すことができる。つまり、弁筐体13には、流入管部11及び排出管部12の間に、上下方向と交差する方向から弁ユニット2のうち少なくとも弁体21及び磁石機構23を取り出し可能な開口部13Aが形成されている。本実施形態では、案内部材22のうちねじ部22a2より下側の領域を開口部13A(開口管部13a)から取り出す必要が無いため、開口部13Aの開口面積を小さくできる。案内部材22のうちねじ部22a2より下側の領域は、開口部13Aから手を入れて洗浄すればよい。
【0039】
(2)
図6に示すように、第一磁石23aを弁体21の円形平面21b1の外周側に配置し、第二磁石23bを案内部材22の磁石保持部材22a1の外周側に配置してもよい。この場合、弁体21の可動部21aが案内部材22の筒部22aに内挿されることとなる。
【0040】
(3)
図7に示すように、開口管部13aは、蓋部材14が螺合する雄ねじが形成されたねじ形成管であってもよい。また、蓋部材14は、端部に雌ねじを形成した中実管(不図示)を一体形成して、この中実管の雌ねじを、開口管部13aに螺合してもよい。開口管部13aには、弁筐体13の延在方向と同じ上下方向に沿う平端面13b5に密着するシール材Kaが配置されている。蓋部材14を開口管部13aに螺合することにより、シール材Kaが圧縮して止水される。また、蓋部材14を開口管部13aから螺脱させることにより、整流板11b2を取り外して洗浄又は交換可能に構成してもよい。この場合、開口管部13aの突出寸法を小さくすることができるため、縦型排水トラップXが更にコンパクトになる。
【0041】
(4)蓋部材14を平面視矩形状として、弁筐体13の開口管部13aに圧入する形態であってもよい。この場合、蓋部材14の外周に凸部14aを設けなくても着脱しやすい。また、案内部材22を取り出すための開口部13Aの開口幅を小さくできるため、縦型排水トラップXの幅をコンパクトにできる。
【0042】
(5)少なくとも弁筐体13及び流入管部11の境界部分を密閉状態で包囲する分割式の密閉ケースを更に備えていてもよい。この場合、密閉ケースと弁筐体13及び流入管部11との間には空気が介在した空隙が形成されている。これにより、弁筐体13を流通する液体と外気との間に温度差がある場合でも、空隙により結露の発生を抑制することができる。また、本体ケース1及び密閉ケースは透明で、且つ、弁体21は弁筐体13及び密閉ケースに対して識別可能な有色(例えば、青色)であることが好ましい。これにより、弁筐体13の収容空間Sに弁ユニット2を装着した状態において、作業者が弁筐体13の外側から弁体21の位置を視認できる。したがって、弁体21を適正な位置に取り付けているか否かの確認および弁体21の汚れ具合の確認を容易に行うことができる。
【0043】
(6)上記実施形態では、蓋部材14を開口管部13aとの螺合により取付可能に構成したが、蓋部材14を圧入して開口管部13aに嵌め込むことにより開口管部13aに取付可能とする圧入式に構成してもよい。つまり、蓋部材14をどのようにして開口管部13aに取り付けるかは適宜変更が可能である。
【0044】
(7)上記実施形態における開口管部13aを省略して、蓋部材14を弁筐体13の本体部13Bに直接装着してもよい。この場合、縦型排水トラップXを更にコンパクトにできる。
【0045】
(8)上記実施形態では弁部21bの表面に環状シール材Kbを固定したが、環状シール材Kbを弁座11b1に固定してもよい。また、弁部21bの半球面21b2全域に弾性部材を設けて、半球面21b2を全てシール材としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、上下方向に沿って配置される縦型排水トラップに利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 :本体ケース
2 :弁ユニット
11 :流入管部
11b1 :弁座
12 :排出管部
13 :弁筐体
13A :開口部
13a :開口管部
21 :弁体
21a :可動部
21b :弁部
22 :案内部材
22a :筒部
22b :腕部
22c :円環状部
23 :磁石機構
23a :第一磁石
23b :第二磁石
Kb :環状シール材
X :縦型排水トラップ