(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097516
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】ヘッドサスペンションアッセンブリおよびディスク装置
(51)【国際特許分類】
G11B 21/16 20060101AFI20230703BHJP
G11B 5/56 20060101ALI20230703BHJP
G11B 5/48 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
G11B21/16 L
G11B5/56 R
G11B5/48 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213674
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】木土 拓磨
【テーマコード(参考)】
5D059
【Fターム(参考)】
5D059AA01
5D059BA01
5D059CA25
5D059DA26
5D059DA36
(57)【要約】
【課題】記録媒体との接触を防止することが可能なヘッドサスペンションアッセンブリおよび磁気ディスク装置を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、ヘッドサスペンションアッセンブリは、第1主面S1および第1主面に対向する第2主面と、先端部と、第1主面の側で先端部に形成された凹所50と、を有するベースプレート38と、凹所50に配置され凹所の底面に固定された基端部43を有し、ベースプレートから延出したロードビーム42と、ベースプレートの第1主面およびロードビームに重ねて配置された配線部材40と、配線部材を介してロードビームに支持された磁気ヘッド17と、を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面および前記第1主面に対向する第2主面と、先端部と、前記第1主面の側で前記先端部に形成された凹所と、を有するベースプレートと、
前記凹所に配置され前記凹所の底面に固定された基端部を有し、前記ベースプレートから延出したロードビームと、
前記ベースプレートの前記第1主面および前記ロードビームに重ねて配置された配線部材と、
前記配線部材を介して前記ロードビームに支持された磁気ヘッドと、
を備えるヘッドサスペンションアッセンブリ。
【請求項2】
前記凹所の深さは、前記ロードビームの板厚以上に形成されている請求項1に記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。
【請求項3】
前記凹所における前記ベースプレートの板厚は、前記ベースプレートの他の部分の板厚の1/2以下である請求項1に記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。
【請求項4】
前記凹所は、前記ベースプレートの幅方向に離間して設けられた一対の凹所を含み、
前記ロードビームの基端部は、前記ロードビームの幅方向に離間して位置する一対の基端部を含み、前記一対の基端部は前記一対の凹所にそれぞれ配置され、前記凹所の底面に重ねて溶接されている請求項1に記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。
【請求項5】
前記凹所は、前記ベースプレートの幅方向の全幅に亘って延在し、
前記ロードビームの基端部は、前記ロードビームの幅方向に離間して位置する一対の基端部を含み、前記一対の基端部は前記凹所にそれぞれ配置され、前記凹所の底面に重ねて溶接されている請求項1に記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。
【請求項6】
前記基端部は、前記凹所の底面に当接した下面と反対側の上面とを有し、
前記基端部の上面は、前記ベースプレートの前記第1主面と面一に位置している、
請求項1に記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。
【請求項7】
前記ベースプレートは、互いに対向する一対の側縁と、前記一対の側縁と交差する先端縁と、を有し、前記凹所は、前記第1主面、前記側縁、および前記先端縁に開口している、
請求項1に記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。
【請求項8】
前記凹所の底面は、前記第1主面と平行に延在している、請求項7に記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。
【請求項9】
前記ベースプレートおよび前記ロードビームに重ねて配置された配線部材を更に備え、前記配線部材の一部は、前記凹所の内に配置されている請求項1に記載のヘッドサスペンションアッセンブリ。
【請求項10】
回転自在な磁気ディスクと、
アームと、前記アームに取り付けられた請求項1から9のいずれか1項に記載のヘッドサスペンションアッセンブリと、を有するアクチュエータアッセンブリと、
を備えるディスク装置。
【請求項11】
間隔1.3~1.45mmを置いて積層配置された板厚0.5~0.6mmの11枚の前記磁気ディスクを有し、
前記アクチュエータアッセンブリは、板厚0.65~0.9mmの複数本の前記アームを有し、
前記ベースプレートの板厚は0.1~0.12mm、前記ロードビームの板厚は0.02~0.03mm、前記配線部材の板厚は0.03~0.39mmである、
請求項10に記載のディスク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、ヘッドサスペンションアッセンブリおよびこれを備えるディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク装置として、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)は、筐体内に配設された磁気ディスク、磁気ディスクを支持および回転駆動するスピンドルモータ、磁気ヘッドを支持したヘッドアクチュエータ、このヘッドアクチュエータを駆動するボイスコイルモータ、フレキシブルプリント回路基板ユニット等を備えている。
【0003】
ヘッドアクチュエータは、支持シャフトの回りで回動自在に支持されたアクチュエータブロックと、アクチュエータブロックから延出した複数本のアームと、各アームの延出端に接続されたヘッドサスペンションアッセンブリ(ヘッドジンバルアッセンブリ(HGA)と称する場合もある)と、を有している。
ヘッドサスペンションアッセンブリは、アームに固定されたベースプレートと、ベースプレートから延出するロードビームと、ベースプレートおよびロードビームに設置された配線部材(フレキシャ)と、配線部材を介してロードビームの先端部に支持された磁気ヘッドと、を含んでいる。ロードビームの基端部は、ベースプレートの表面に重ねてベースプレートに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7898770号明細書
【特許文献2】米国特許第7573680号明細書
【特許文献3】米国特許第7688549号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁気ヘッドがディスクにロードされた状態でHDDに衝撃等が加わった場合、ロードビームは磁気ヘッドを支点として大きく振動する。そのため、ロードビームがディスクに接触し、ディスクに障害を与える可能性が考えられる。ロードビームとディスクとの接触を避けるためには、ディスクとロードビームとの隙間を広げる必要がある。
【0006】
この発明の実施形態の課題は、記録媒体との接触を防止することが可能なサスペンションアッセンブリおよびこれを備える磁気ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、ヘッドサスペンションアッセンブリは、第1主面および前記第1主面に対向する第2主面と、先端部と、前記第1主面の側で前記先端部に形成された凹所と、を有するベースプレートと、前記凹所に配置され前記凹所の底面に固定された基端部を有し、前記ベースプレートから延出したロードビームと、前記ベースプレートの前記第1主面および前記ロードビームに重ねて配置された配線部材と、前記配線部材を介して前記ロードビームに支持された磁気ヘッドと、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るハードディスクドライブ(HDD)をトップカバーを分解して示す斜視図。
【
図2】
図2は、前記HDDのアクチュエータアッセンブリおよび基板ユニットを示す斜視図。
【
図3】
図3は、前記ヘッドアクチュエータアッセンブリのヘッドサスペンションアッセンブリを示す斜視図。
【
図4】
図4は、前記ヘッドサスペンションアッセンブリのベースプレートの先端部およびロードビームの基端部を示す分解斜視図。
【
図5】
図5は、接合された状態のベースプレートの先端部およびロードビームの基端部を示す平面図。
【
図6】
図6は、
図5の線A-Aに沿った、ベースプレートおよびロードビームの断面図。
【
図7】
図7は、磁気ディスクとヘッドサスペンションアッセンブリと位置関係を模式t系に示す側面図。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係るヘッドサスペンションアッセンブリと比較例に係るヘッドサスペンションアッセンブリとについて、X方向の各位置におけるZハイトを比較して示す図。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係るヘッドサスペンションアッセンブリのベースプレートの先端部およびロードビームの基端部を示す分解斜視図。
【
図10】
図10は、第2実施形態において、接合された状態のベースプレートの先端部およびロードビームの基端部を示す平面図。
【
図11】
図11は、第3実施形態に係るヘッドサスペンションアッセンブリのベースプレートの先端部、ロードビームの基端部、およびフレキシャを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面を参照しながら、実施形態に係るディスク装置ついて説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更であって容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
(第1実施形態)
ディスク装置として、第1実施形態に係るハードディスクドライブ(HDD)について詳細に説明する。
図1は、トップカバーを外して示す第1実施形態に係るHDDの分解斜視図である。
図1に示すように、HDDは、矩形状の筐体10を備えている。筐体10は、上面の開口した矩形箱状のベース12と、カバー(トップカバー)14と、を有している。ベース12は、矩形状の底壁12aと、底壁12aの周縁に沿って立設された側壁12bとを有し、例えば、アルミニウムにより一体に成形されている。カバー14は、例えば、ステンレスにより矩形板状に形成されている。カバー14は、複数のねじ13によりベース12の側壁12b上にねじ止めさ、ベース12の上部開口を気密に閉塞する。
【0011】
筐体10の内には、ディスク状の記録媒体として複数枚、例えば、10枚の磁気ディスク18、および磁気ディスク18を支持および回転させるスピンドルモータ19が設けられている。スピンドルモータ19は、底壁12a上に配設されている。各磁気ディスク18は、例えば、直径95mm(3.5インチ)の円板状に形成され非磁性体、例えば、ガラスからなる基板と、基板の上面(第1面)および下面(第2面)に形成された磁気記録層とを有している。各磁気ディスク18は、スピンドルモータ19のハブに互いに同軸的に嵌合されて、更に、クランプばね20によりクランプされている。これにより、磁気ディスク18は、所定の間隔を置いて、互いに平行に、また、底壁12aとほぼ平行に支持されている。複数枚の磁気ディスク18は、スピンドルモータ19により所定の回転数で矢印C方向に回転される。なお、磁気ディスク18の搭載枚数は、10枚に限らず、9枚以下、あるいは、10枚以上、12枚以下としてもよい。
【0012】
筐体10の内には、磁気ディスク18に対して情報の記録、再生を行なう複数の磁気ヘッド17、および、これらの磁気ヘッド17を磁気ディスク18に対して移動自在に支持したアクチュエータアッセンブリ22が設けられている。また、筐体10の内には、アクチュエータアッセンブリ22を回動および位置決めするボイスコイルモータ(VCM)24、磁気ヘッド17が磁気ディスク18の最外周に移動した際、磁気ヘッド17を磁気ディスク18から離間したアンロード位置に保持するランプロード機構25、変換コネクタ等の電子部品が実装された基板ユニット(FPCユニット)21、およびスポイラ70が設けられている。VCM24は、底壁12aに設けられた一対のヨーク35とヨーク35に固定された図示しない磁石とを含んでいる。ランプロード機構25は、底壁12aに立設されたランプ74を含んでいる。
ベース12の底壁12aの外面には、プリント回路基板27がねじ止めされている。プリント回路基板27は、スピンドルモータ19の動作を制御するとともに、基板ユニット21を介してVCM24および磁気ヘッド17の動作を制御する制御部を構成している。
【0013】
図2は、アクチュエータアッセンブリを示す斜視図である。図示のように、アクチュエータアッセンブリ22は、透孔26を有するアクチュエータブロック29と、透孔26内に設けられた軸受ユニット(ユニット軸受)28と、アクチュエータブロック29から延出する複数、例えば、11本のアーム32と、各アーム32に取付けられたサスペンションアッセンブリ(ヘッドジンバルアッセンブリ:HGAと称する場合もある)30と、サスペンションアッセンブリ30に支持された磁気ヘッド17と、を備えている。ベース12の底壁12aに支持シャフト(枢軸)31が立設されている。アクチュエータブロック29は、軸受ユニット28により、支持シャフト31の周りで、回動自在に支持されている。
【0014】
本実施形態において、アクチュエータブロック29および11本のアーム32はアルミニウム等により一体に成形され、いわゆるEブロックを構成している。アーム32は、例えば、細長い平板状に形成され、支持シャフト31と直交する方向に、アクチュエータブロック29から延出している。11本のアーム32は、互いに隙間を置いて、平行に設けられている。
アクチュエータアッセンブリ22は、アクチュエータブロック29からアーム32と反対の方向へ延出する支持フレーム33を有している。支持フレーム33により、VCM24の一部を構成するボイスコイル39が支持されている。
図1に示すように、ボイスコイル39は、ベース12上にその1つが固定された一対のヨーク37間に位置し、これらのヨーク37、およびヨークに固定された磁石とともにVCM24を構成している。
【0015】
図2に示すように、アクチュエータアッセンブリ22は、それぞれ磁気ヘッド17を支持した20個のヘッドサスペンションアッセンブリ30を備えている。ヘッドサスペンションアッセンブリ30は各アーム32の延出端32aにそれぞれ取付けられている。複数のヘッドサスペンションアッセンブリ30は、磁気ヘッド17を上向きに支持するアップヘッドサスペンションアッセンブリと、磁気ヘッド17を下向きに支持するダウンヘッドサスペンションアッセンブリと、を含んでいる。これらのアップヘッドサスペンションアッセンブリおよびダウンヘッドサスペンションアッセンブリは、同一構造のヘッドサスペンションアッセンブリ30を上下向きを変えて配置することにより構成される。
本実施形態では、
図2において、最上部のアーム32にダウンヘッドサスペンションアッセンブリ30が取付けられ、最下部のアーム32にアップヘッドサスペンションアッセンブリ30が取り付けられている。中間の9本のアーム32の各々には、アップヘッドサスペンションアッセンブリ30およびダウンヘッドサスペンションアッセンブリ30が取り付けられている。
【0016】
ヘッドサスペンションアッセンブリ30は、ほぼ矩形状のベースプレート38と、細長い板ばねからなるロードビーム42と、細長い帯状のフレキシャ(配線部材)40と、を有している。フレキシャ40は、後述するジンバル部を有し、このジンバル部に磁気ヘッド17が載置されている。ベースプレート38の基端部がアーム32の延出端32aに固定され、例えば、カシメ止めされている。ロードビーム42は、その基端部がベースプレート38の先端部に重ねて固定されている。ロードビーム42は、ベースプレート38から延出し、延出端に向かって先細に形成されている。ロードビーム42は、磁気ヘッド17を磁気ディスク18の表面に向けて付勢するばね力(反力)を生じている。また、ロードビーム42の先端からタブ46が突出している。タブ46は、前述したランプ74に係合可能であり、ランプ74と共にランプロード機構25を構成する。
【0017】
図2に示すように、FPCユニット21は、L字形状に折り曲げられたほぼ矩形状のベース部21a、ベース部21aの一側縁から延出した細長い帯状の中継部21bと、中継部21bの先端に連続して設けられた接合部21cと、を一体に有している。ベース部21a、中継部21b、および接合部21cは、フレキシブルプリント配線基板(FPC)により形成されている。フレキシブルプリント配線基板は、ポリイミド等の絶縁層と、この絶縁層上に形成され、複数の配線、接続パッド等を形成した導電層と、導電層を覆う保護層とを有している。
【0018】
ベース部21a上に、図示しない変換コネクタ、複数のコンデンサ等の電子部品が実装され、図示しない配線に電気的に接続されている。ベース部21aに、補強板として機能する金属板が貼付されている。ベース部21aは、ベース12の底壁12a上に設置されている。中継部21bは、ベース部21aの側縁からアクチュエータブロック29に向かって延びている。接合部21cは、アクチュエータブロック29の側面(設置面)とほぼ等しい高さおよび幅の矩形状に形成されている。接合部21cは、アルミニウム等で形成された裏打ち板を介して、アクチュエータブロック29の設置面に貼付され、更に、固定ねじ72により設置面にねじ止め固定されている。接合部21cに多数の接続パッドが設けられている。接合部21cには例えば1つのヘッドIC(ヘッドアンプ)67が実装され、このヘッドIC67は配線を介して接続パッドおよびベース部21aに接続されている。更に、接合部21cには、ボイスコイル39が接続された接続端子68が設けられている。
【0019】
各ヘッドサスペンションアッセンブリ30のフレキシャ40は、磁気ヘッド17に電気的に接続された一端部と、アーム32の側縁に形成された溝を通ってアクチュエータブロック29まで延出した他端部と、他端部に設けられた接続端部(テール接続端子部)48cと、を有している。接続端部48cは、細長い矩形状に形成されている。接続端部48cには複数、例えば、13個の接続端子(接続パッド)51が設けられている。これらの接続端子51は、フレキシャ40の配線にそれぞれ接続されている。すなわち、フレキシャ40の複数の配線は、フレキシャ40のほぼ全長に亘って延び、一端は磁気ヘッド17に電気的に接続され、他端は、接続端子(接続パッド)51に接続されている。
20本のフレキシャ40の接続端部48cに設けられた接続端子51は、接合部21cの接続パッドに接合され、接続パッドを介して接合部21cの配線に電気的に接続されている。これにより、アクチュエータアッセンブリ22の20個の磁気ヘッド17は、それぞれフレキシャ40の配線、接続端部48c、FPCユニット21の接合部21c、中継部21bを通して、ベース部21aに電気的に接続される。
【0020】
上記のように構成されたアクチュエータアッセンブリ22をベース12上に組み込んだ状態において、
図1に示したように、支持シャフト31は、スピンドルモータ19のスピンドルとほぼ平行に立設される。各磁気ディスク18は2本のヘッドサスペンションアッセンブリ30間に位置する。HDDの動作時、2本のヘッドサスペンションアッセンブリ30に支持された磁気ヘッド17は、磁気ディスク18の上面および下面にそれぞれ対向する。
【0021】
次に、ヘッドサスペンションアッセンブリ30の構成を詳細に説明する。
図3は、ヘッドサスペンションアッセンブリの磁気ヘッドの側を示す斜視図である。
図示のように、ヘッドサスペンションアッセンブリ30は、支持板として機能するサスペンション34を有している。サスペンション34は、数百ミクロン厚の金属板からなる矩形状のベースプレート38と、数十ミクロン厚の金属板からなる細長い板ばね状のロードビーム42と、を有している。一例では、ベースプレート38の板厚は、130μm程度に、ロードビーム42の板厚は、30μm程度に形成されている。ベースプレート38は、互いに対向するほぼ矩形状の第1主面S1および第2主面S2、長手方向の基端部および先端部、を有している。ベースプレート38は、互いに対向する一対の側縁38aと、これらの側縁38aと交差した基端側の一端縁38bおよび先端側の他端縁(先端縁)38cと、を有している。ヘッドサスペンションアッセンブリ30をHDDに組込んだ際、ベースプレート38の第1主面S1が磁気ディスク18に対向する。
【0022】
本実施形態において、ロードビーム42の基端部は二股状に分かれた一対の基端部43を有し、これらの基端部43はロードビーム42のヒンジ部を構成している。一対の基端部43は、ベースプレート38の第1主面S1の側の先端部に重ねて配置され、複数個所を溶接することによりベースプレート38に固定されている。ロードビーム42は、ベースプレート38から延出している。ロードビーム42の基端部の幅は、ベースプレート38の幅とほぼ等しく形成されている。ロードビーム42は、先細に形成され、すなわち、基端部から先端部に向かって幅が徐々に狭くなっている。ロードビーム42の先端には、細長い棒状のタブ46が突設されている。
【0023】
ベースプレート38は、その基端部に形成された円形の透孔(カシメ孔)38aおよび透孔37aの周囲に位置する円環状のフランジ37bを有している。フランジ37bは、透孔37a内に延出しているとともに、第2主面S2の側に突出している。
アーム32の延出端(先端部)32aは厚さの薄いカシメ部(固定部)を形成している。この先端部32aにカシメ孔32bが貫通形成されている。ベースプレート38の基端部は、第2主面S2の側が先端部32aの設置面の上に載置され、フランジ37bが先端部32aのカシメ孔32bに嵌合され、かつ、カシメにより先端部32aに締結される。これにより、ベースプレート38はアーム32の先端部32aに固定されている。
【0024】
図3に示すように、ヘッドサスペンションアッセンブリ30は、一対の圧電素子(PZT素子)50、並びに、記録、再生信号および圧電素子52の駆動信号を伝達するための細長い帯状のフレキシャ(配線部材)40を有している。フレキシャ40は、先端側部分40aがロードビーム42およびベースプレート38上に取り付けられ、後半部分(延出部)40bがベースプレート38の側縁から外側に延出し、アーム32の側縁に沿って延びている(
図2参照)。そして、延出部40bの先端に位置する接続端部48cは、前述したFPCユニット21の接合部21cに接続される。
ロードビーム42の先端部上に位置するフレキシャ40の先端部は、弾性支持部として機能するジンバル部36を構成している。磁気ヘッド17は、ジンバル部36上に載置および固定され、ジンバル部36を介してロードビーム42に支持されている。駆動素子としての一対の圧電素子52は、ジンバル部36に取り付けられ、磁気ヘッド17に対して、ロードビーム42の基端側に位置している。
【0025】
フレキシャ40は、ベースとなるステンレス等の金属薄板(金属板)44aと、この金属薄板44a上に貼付あるいは固定された帯状の積層部材41と、を有し、細長い積層板をなしている。積層部材41は、大部分が金属薄板44aに固定されたベース絶縁層44bと、ベース絶縁層44b上に形成されて、複数の信号配線、駆動配線を構成する導電層(配線パターン)44cと、導電層44cを覆ってベース絶縁層44b上に積層されたカバー絶縁層と、を有している。フレキシャ40の先端側部分40aでは、金属薄板44a側がロードビーム42およびベースプレート38の表面上に貼付され、あるいは、複数の溶接点にてスポット溶接されている。
【0026】
ジンバル部36において、金属薄板44aは、先端側に位置する矩形状のタング部(支持部)36aと、タング部36aから基端部まで延びる細長い一対のアウトリガー(リンク部)36cと、を有している。タング部36aは、磁気ヘッド17を載置可能な大きさおよび形状に形成され、例えば、ほぼ矩形状に形成されている。タング部36aは、そのほぼ中心部が、ロードビーム42の先端部に突設された図示しないディンプル(凸部)に当接している。タング部36aは、一対のアウトリガー36cが弾性変形することにより、ディンプルを支点として種々の向きに変位可能である。これにより、タング部36aおよびこのタング部36a上に搭載される磁気ヘッド17は、磁気ディスク18の表面変動に対しロール、ピッチ方向に対して柔軟に追従し、磁気ディスク18の表面と磁気ヘッド17との間に微小隙間を維持することができる。
【0027】
ジンバル部36において、積層部材41の一部は、二股に別れてサスペンション34の中心軸線の両側に位置している。積層部材41は、金属薄板44aに固定された一対の基端部47aと、タング部36a上に貼付された先端部47bと、基端部47aから先端部47bまで延びている一対の帯状の第1ブリッジ部47cと、それぞれ第1ブリッジ部47cと並んで基端部47aから第1ブリッジ部47cの中途部まで延び、第1ブリッジ部47cに合流する一対の帯状の第2ブリッジ部(分岐部)47dと、を有している。
【0028】
磁気ヘッド17は、ほぼ矩形状のスライダ17aを有し、このスライダ17aは接着剤によりタング部36aに固定されている。磁気ヘッド17は長手方向の中心軸線がサスペンション34の中心軸線と一致するように配置され、また、磁気ヘッド17のほぼ中心部はディンプル上に位置している。磁気ヘッド17の記録、再生素子は、半田あるいは銀ペースト等の導電性接着剤により先端部47bの複数の電極パッド40dに電気的に接合している。これにより、磁気ヘッド17は、電極パッド40dを介してフレキシャ40の信号配線に接続されている。
【0029】
ベースプレート38とロードビーム42との接合部について説明する。
図4は、ベースプレートの先端部およびロードビームの基端部を示す分解斜視図、
図5は、接合された状態のベースプレートの先端部およびロードビームの基端部を示す平面図、
図6は、ベースプレートおよびロードビームの側面図である。
図4に示すように、ベースプレート38の先端部において、第1主面S1の側に、ほぼ矩形状の一対の凹所50が形成されている。一対の凹所50は、ベースプレート38の幅方向に互いに離間して位置し、ベースプレート38の先端側の角部にそれぞれ位置している。各凹所50は、第1主面S1よりも一段低い段差部を形成している。凹所50は、ベースプレート38の第1主面S1、側縁38a、および先端縁38cに開口し、その底面50aは、第1主面S1とほぼ平行に延在している。凹所50は、ベースプレート38の成形時のコイニング(あるいはプレス)により形成され、あるいは、ベースプレート38の成形後、エッチングにより形成される。
【0030】
図5および
図6に示すように、ロードビーム42の一対の基端部43は、それぞれ凹所50の中に配置され、凹所50の底面50aに密着している。この状態で、基端部43は、ベースプレート38に溶接され固定されている。
一例では、ベースプレート38の板厚T1を100~130μm、ロードビーム42の板厚T2を20~30μmとした場合、各凹所50の深さD1(第1主面S1と底面50aとの間隔)は、板厚T2以下、例えば、20~30μmに形成されている。ベースプレート38において、凹所50が形成されている部分は、板厚の薄くなった薄厚部(段差部)となっている。薄厚部の板厚T3は、70~100μmとなる。
上記のように基端部43を凹所50に配置することにより、ロードビーム42は、ベースプレート38の第1主面S1上に設置する場合に比較して、凹所50の深さD1分だけ、低い位置に、すなわち、磁気ディスク18から離れた位置に設けられる。一例では、基端部43の上面42Aは、ベースプレート38の第1主面S1とほぼ面一に延びている。
【0031】
図7は、本実施形態に係るヘッドサスペンションアッセンブリおよび比較例に係るヘッドサスペンションアッセンブリと磁気ディスク18との配置関係を比較して示す側面図、
図8は、X方向の各位置における、第1主面S1からヘッドサスペンションアッセンブリの最上面までの高さ(第1主面S1に垂直なZ方向の高さ)を示す図である。
図8は、有限要素法を用いて、磁気ディスクにヘッドをロードした時のサスペンションアッセンブリの上面のプロファイルを算出した結果を示している。プロファイルの算出において、HDDの設定値は、一例では、磁気ディスク11枚設置、ディスク板厚:0.5~0.6mm、磁気ディスク間の間隔:1.3~1.45mm、アーム板厚:0.65~0.9mm、ベースプレート板厚:0.1~0.13mm、ロードビーム板厚:0.02~0.03mm、フレキシャ板厚:0.03~0.39mmとしている。
【0032】
図7および
図8において、本実施形態に係るヘッドサスペンションアッセンブリは実線で示し、比較例に係るヘッドサスペンションアッセンブリは破線で示されている。比較例に係るヘッドサスペンションアッセンブリのロードビームは、ベースプレート38の第1主面S1の上に直接接合されているものとする。
図7および
図8から分かるように、本実施形態のロードビーム42の基端部はベースプレート38の凹所50に配置されているため、本実施形態に係るロードビーム42のZ―ハイトは、比較例に係るロードビームのZ-ハイトよりも低い。すなわち、ロードビームと磁気ディスクとの間隔Zは、比較例に係るロードビームよりも本実施形態に係るロードビームの方が大きい。特に、ロードビーム42のX方向の中間部において、実施形態に係るロードビームのZ―ハイトと比較例に係るロードビームのZ―ハイトとの差が大きくなっている。
【0033】
上記のように構成された本実施形態に係るHDDによれば、磁気ディスク18とロードビーム42との間隔Zを広げることができ、ロード時の衝撃等によりロードビーム42と磁気ディスク18とが接触するリスクを下げることが可能となる。サスペンションの共振特性の観点において、ベースプレート38の捻じれ中心部の板厚を変えずに、捻じれ中心から離間したベースプレートの先端部のみを薄型化、軽量化する構成としているため、ベースプレートの剛性低下と軽量化とが相殺され共振特性への影響は軽微とすることができる。更に、ベースプレートの先端部のみに凹所を設け軽量化しているため、ベースプレートのカシメ用の突起部(フランジ)の成形性が影響を受けることはほとんどない。
以上のことから、本実施形態によれば、記録媒体との接触を防止することが可能なサスペンションアッセンブリおよびこれを備える磁気ディスク装置が得られる。
【0034】
次に、他の実施形態に係るHDDのヘッドサスペンションアッセンブリについて説明する。以下に述べる他の実施形態において、上述した第1実施形態と同一の部分には、同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略あるいは簡略化し、第1実施形態と異なる部分を中心に詳しく説明する。
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態に係るHDDのヘッドサスペンションアッセンブリにおいて、ベースプレートの先端部およびロードビームの基端部を示す分解斜視図、
図10は、接合された状態のベースプレートの先端部およびロードビームの基端部を示す平面図である。
図示のように、第2実施形態によれば、ベースプレート38の先端部に形成された凹所50は、ベースプレート38の幅方向の全長に亘って延在している。すなわち、第1実施形態で示した一対の凹所50は、互いに連続した1つの凹所に形成してもよい。ロードビーム42の一対の基端部43は、凹所50の底面50aの上に重ねて配置され、溶接によりベースプレート38に固定されている。
第2実施形態において、ヘッドサスペンションアッセンブリの他の構成は、前述した第1実施形態に係るヘッドサスペンションアッセンブリと同一である。そして、第2実施形態においても、前述した第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
なお、凹所50の形状は、矩形状に限定されることなく、必要に応じて、種々変更可能である。
【0035】
(第3実施形態)
図11は、第3実施形態に係るHDDのヘッドサスペンションアッセンブリにおいて、ベースプレートの先端部、ロードビームの基端部、およびフレキシャを示す平面図である。
図示のように、第3実施形態によれば、ベースプレート38の先端部に形成された凹所50は、ベースプレート38の幅方向の全長に亘って延在している。更に、凹所50は、ベースプレート38の基端部に向かって、かつ、ベースプレート38の一方の側縁38aの側まで、斜めに延在している。また、ベースプレート38の第1主面S1において、ベースプレート38の基端部に第2凹所54が設けられている。第2凹所54は、例えば、矩形状を有し、ベースプレート38の基端縁および一方の側縁38aに開口している。
【0036】
ロードビーム42の一対の基端部43は、凹所50の底面50aの上に重ねて配置され、溶接によりベースプレート38に固定されている。ロードビーム42の上に設けられたフレキシャ40の一部、すなわち、後半部分(延出部)40bは、凹所50を通ってベースプレート38の側縁から外側に延出し、更に、アーム32の側縁に沿って延びている。後半部分40bの一部は、凹所50の底面50aに当接して配置され、更に、後半部分40bの一部が底面50aに溶接されている。
フレキシャ40の後半部分40bは、その側縁からベースプレート38の側に突出した舌片部44dを有している。舌片部44dは、第2凹所54の内に配置され、例えば、溶接により第2凹所54の底面に固定されている。
【0037】
第3実施形態において、ヘッドサスペンションアッセンブリの他の構成は、前述した第1実施形態に係るヘッドサスペンションアッセンブリと同一である。そして、第3実施形態においても、前述した第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。更に、第3実施形態によれば、フレキシャ40の一部をベースプレート38の凹所50内に配置することにより、フレキシャ40と磁気ディスク18との間隔を広けることができ、フレキシャ40と磁気ディスク18とが接触するリスクを下げることが可能となる。これにより、本実施形態によれば、記録媒体との接触を防止することが可能なサスペンションアッセンブリおよびこれを備える磁気ディスク装置が得られる。
【0038】
本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、磁気ディスクの設置枚数は、10枚に限らず、11枚あるいは12枚まで増加可能である。ロードビームの基端部は、二股に分かれた構成に限らず、幅方向に連続して延在する基端部としても良い。凹所の形状は、ロードビームの基端部の形状に合わせて任意に変更可能である。凹所の底面は、ベースプレートの第1主面と平行な構成に限らず、第1主面に対して傾斜した底面としてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10…筺体、12…ベース、12a…底壁、12b…側壁、17…磁気ヘッド、
18…磁気ディスク、19…スピンドルモータ、22…アクチュエータアッセンブリ、
30…ヘッドサスペンションアッセンブリ、32…アーム、38…ベースプレート、
40…フレキシャ(配線部材)、42…ロードビーム、43…基端部、50…凹所、
50a…底面