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特開2023-97528鋼製スリットダムの鋼管継手構造および鋼製スリットダム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097528
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】鋼製スリットダムの鋼管継手構造および鋼製スリットダム
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/02 20060101AFI20230703BHJP
   F16L 23/12 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
E02B7/02 B
F16L23/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213693
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鉄建材株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000227593
【氏名又は名称】日之出水道機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090114
【弁理士】
【氏名又は名称】山名 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100174207
【弁理士】
【氏名又は名称】筬島 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】國領 ひろし
(72)【発明者】
【氏名】永田 誠
(72)【発明者】
【氏名】黒川 貴大
(72)【発明者】
【氏名】谷 陽介
(57)【要約】
【課題】フランジ継手(フランジプレートと高力ボルト)に代わる新たな鋼管継手構造を開発することで、高力ボルトを用いることなく前記フランジ継手よりも強度・剛性の高い継手構造を実現することにより、前記ボルト締め付け管理も無用とし、また、前記礫の直撃による部材の損傷、破壊を極力最小限に止める等、施工性、強度・剛性、経済性、およびメンテナンス性に優れた鋼製スリットダムの鋼管継手構造および前記鋼管継手構造を備えた鋼製スリットダムを提供する。
【解決手段】一方の鋼管10の端部に、前記鋼管10の軸方向へ凹凸の段差をなす凹凸部11を備えた第1継手部材1が設けられ、他方の鋼管20の端部に、前記第1継手部材1の凹凸部11に噛み合う凸凹部22を備えた第2継手部材2が設けられ、前記第1継手部材1の凹凸部22と前記第2継手部材2の凸凹部22との噛み合わせ部Rに抜け止め部材3が接合される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製スリットダムを構成する鋼管同士の接合部の継手構造において、
一方の鋼管端部に、前記鋼管の軸方向へ凹凸の段差をなす凹凸部を備えた第1継手部材が設けられ、他方の鋼管端部に、前記第1継手部材の凹凸部に噛み合う凸凹部を備えた第2継手部材が設けられ、
前記第1継手部材の凹凸部と前記第2継手部材の凸凹部との噛み合わせ部に抜け止め部材が接合されることを特徴とする、鋼製スリットダムの鋼管継手構造。
【請求項2】
前記抜け止め部材は、前記第1継手部材の凹凸部と前記第2継手部材の凸凹部との噛み合わせ部に串刺し状に貫通されて接合されることを特徴とする、請求項1に記載した鋼製スリットダムの鋼管継手構造。
【請求項3】
前記第1継手部材の凹凸部と前記第2継手部材の凸凹部はそれぞれ、前記鋼管の軸方向と直交する方向に延びる複数の平行な凹溝がほぼ等間隔に形成されており、前記凹溝の溝壁部に前記抜け止め部材挿入用の貫通孔が形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載した鋼製スリットダムの鋼管継手構造。
【請求項4】
前記第1継手部材と前記第2継手部材はそれぞれ、対応する鋼管の端部に設けられ前記鋼管の外方に突き出る大きさの円盤状又は矩形状の基端プレート部と、前記基端プレート部から立ち上がる立ち上がり壁部とからなることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載した鋼製スリットダムの鋼管継手構造。
【請求項5】
前記立ち上がり壁部は、立ち上がり方向に向かって幅狭のテーパー状に形成されていることを特徴とする、請求項4に記載した鋼製スリットダムの鋼管継手構造。
【請求項6】
前記第1継手部材の基端プレート部と前記第2継手部材の基端プレート部はそれぞれ、前記抜け止め部材を、鋼管軸方向から見て覆う大きさに設定されていることを特徴とする、請求項4又は5に記載した鋼製スリットダムの鋼管継手構造。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載した鋼管継手構造を備えていることを特徴とする、鋼製スリットダム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋼製スリットダムの鋼管継手構造の技術分野に属し、さらにいえば、主として河川の横断方向両岸のコンクリート堤体間に設けられる鋼製スリットダムを構成する鋼管同士の接合部の継手構造の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
河川の横断方向両岸のコンクリート堤体間に立設され、土石流捕捉工対策、或いは流木捕捉工対策として巨礫、或いは流木などの流下物を効果的に捕捉する鋼製スリットダムがよく知られている。
【0003】
この鋼製スリットダムは、鋼製透過型砂防堰堤とも呼ばれ、今日まで、様々な形状、構造の技術が開示され、実施に供されているが、前記鋼製スリットダムを構成する鋼管同士の接合部の継手構造は、例えば、特許文献1~3に示したように、鋼板(以下、フランジプレートという。)と接合ボルト(以下、高力ボルトという。)による連結手段(以下、フランジ継手という。)が主流である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-40073号公報
【特許文献2】特開2017-40074号公報
【特許文献3】特開2017-40081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記鋼製スリットダムに作用する外力が大きくなる場合、前記フランジプレートの板厚が厚くなると共に、多くの高力ボルトが必要になるので、フランジ継手の製作が現実的に困難となり、場合によっては構造設計上、フランジ継手では対応できない問題があった。
また、現状のフランジ継手では、高力ボルト(ボルト頭部およびナット)が露出しているため、例えば継手部(接合部)に礫が直撃した場合、高力ボルトが破断し、高力ボルトの破断による継手部の破壊が助長され、ついには鋼製スリットダムの構造全体の損傷、破壊に繋がる恐れがあった。
さらに、フランジ継手に用いる高力ボルトの締め付け作業に当たっては、現場でのボルト締め付け管理(トルク管理、気温管理)が必須となる等、組み立て作業が煩雑という問題もあった。
【0006】
本発明は、上述した背景技術の課題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、前記フランジ継手(フランジプレートと高力ボルト)に代わる新たな鋼管継手構造を開発することで、高力ボルトを用いることなく前記フランジ継手よりも強度・剛性の高い継手構造を実現することにより、前記ボルト締め付け管理も無用とし、また、前記礫の直撃による部材の損傷、破壊を極力最小限に止める等、施工性、強度・剛性、経済性、およびメンテナンス性に優れた鋼製スリットダムの鋼管継手構造および前記鋼管継手構造を備えた鋼製スリットダムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る鋼製スリットダムの鋼管継手構造は、鋼製スリットダムを構成する鋼管同士の接合部の継手構造において、一方の鋼管端部に、前記鋼管の軸方向へ凹凸の段差をなす凹凸部を備えた第1継手部材が設けられ、他方の鋼管端部に、前記第1継手部材の凹凸部に噛み合う凸凹部を備えた第2継手部材が設けられ、
前記第1継手部材の凹凸部と前記第2継手部材の凸凹部との噛み合わせ部に抜け止め部材が接合されることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した鋼製スリットダムの鋼管継手構造において、前記抜け止め部材は、前記第1継手部材の凹凸部と前記第2継手部材の凸凹部との噛み合わせ部に串刺し状に貫通されて接合されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載した発明は、請求項1又は2に記載した鋼製スリットダムの鋼管継手構造において、前記第1継手部材の凹凸部と前記第2継手部材の凸凹部はそれぞれ、前記鋼管の軸方向と直交する方向に延びる複数の平行な凹溝がほぼ等間隔に形成されており、前記凹溝の溝壁部に前記抜け止め部材挿入用の貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載した発明は、請求項1~3のいずれか1項に記載した鋼製スリットダムの鋼管継手構造において、前記第1継手部材と前記第2継手部材はそれぞれ、対応する鋼管の端部に設けられ前記鋼管の外方に突き出る大きさの円盤状又は矩形状の基端プレート部と、前記基端プレート部から立ち上がる立ち上がり壁部とからなることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載した発明は、請求項4に記載した鋼製スリットダムの鋼管継手構造において、前記立ち上がり壁部は、立ち上がり方向に向かって幅狭のテーパー状に形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載した発明は、請求項4又は5に記載した鋼製スリットダムの鋼管継手構造において、前記第1継手部材の基端プレート部と前記第2継手部材の基端プレート部はそれぞれ、前記抜け止め部材を、鋼管軸方向から見て覆う大きさに設定されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載した発明に係る鋼製スリットダムは、請求項1~6のいずれか1項に記載した鋼管継手構造を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる鋼製スリットダムの鋼管継手構造および前記鋼管継手構造を備えた鋼製スリットダムによれば、以下の作用効果を奏する。
(1)第1継手部材の凹凸部と第2継手部材の凸凹部との噛み合わせ効果(噛み合わせ継手)により、従来のフランジ継手よりも強度・剛性が高い鋼管継手構造を簡易かつ確実に実現することができる。
これに伴い、前記鋼製スリットダムに作用する外力が大きくなる場合、従来のフランジ継手であれば、前記フランジプレートの板厚が厚くなると共に、多くの高力ボルトが必要になるのでフランジ継手の製作が現実的に困難となり、場合によっては構造設計上、フランジ継手では対応できない問題があったが、本発明に係る鋼管継手構造によれば、フランジプレート及び高力ボルトを用いないので、前記鋼製スリットダムに作用する外力が大きくなる場合であっても十分に対応できる。
また、従来のフランジ継手に用いる高力ボルトの締め付け作業については、現場でのボルト締め付け管理(トルク管理、気温管理)が必須となる等、煩雑で面倒という問題があったが、本発明に係る鋼管継手構造によれば、そもそも高力ボルトを用いないので、前記ボルト締め付け管理も無用となる等、施工性、経済性、メンテナンス性に非常に優れている。
更には、従来のフランジ継手と比し、第1継手部材の凹凸部と第2継手部材の凸凹部とによる重厚で強度・剛性が高い構造の噛み合わせ効果により、鋼管接合部のせん断抵抗力及び曲げ抵抗力を飛躍的に高めることができるので、巨礫の衝撃等による開き、又は芯ずれを極力防止することもできる。
(2)従来のフランジ継手では、高力ボルト(ボルト頭部およびナット)が露出しているため、例えば継手部(接合部)に礫が直撃した場合、高力ボルトが破断し、高力ボルトの破断による継手部の破壊が助長され、ついには鋼製スリットダムの構造全体の損傷、破壊に繋がる恐れがあったが、本発明に係る鋼管継手構造によれば、そもそも高力ボルトを用いないので、前記したような高力ボルトの使用に伴う問題が生じない。
また、高力ボルトを用いないので、現地作業の省力化、工期短縮に寄与する。
(3)加えて、請求項6に係る発明(実施例2、3参照)によれば、第1継手部材と第2継手部材との噛み合わせ状態を保持する抜け止め部材を礫から保護する構造で実施できるので、抜け止め部材(鋼管接合部)の損傷、破壊を防止することができる。ひいては所定の耐用年数まで所要の強度・剛性を保持した安定性、安全性に優れた鋼製スリットダムを実現し、近年の増大する土石流規模や想定外規模の土石流・巨礫の衝突にも対応できる。
(4)纏めると、従来のフランジ継手(フランジプレートと高力ボルト)に代わる新たな鋼管継手構造を開発したことで、高力ボルトを用いることなく前記フランジ継手よりも強度・剛性の高い継手構造を実現することにより、前記ボルト締め付け管理も無用とし、また、前記礫の直撃による部材の損傷、破壊を極力最小限に止める等、施工性、強度・剛性、経済性、およびメンテナンス性に優れた鋼製スリットダムの鋼管継手構造および前記鋼管継手構造を備えた鋼製スリットダムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1にかかる鋼製スリットダムの鋼管継手構造の鋼管接合部を示した斜視図である。
図2】前記鋼管接合部における一方の鋼管端部の第1継手部材と他方の鋼管端部の第2継手部材とを示した斜視図である。
図3】実施例1にかかる鋼製スリットダムの鋼管継手構造の鋼管接合部を示した縦断面図である。
図4】実施例1にかかる鋼製スリットダムの鋼管継手構造の鋼管接合部を示した正面図である。
図5】前記鋼管接合部における第1継手部材を示した斜視図である。
図6】前記鋼管接合部における第2継手部材を示した斜視図である。
図7】実施例2にかかる鋼製スリットダムの鋼管継手構造の鋼管接合部を示した斜視図である。
図8】前記鋼管接合部における一方の鋼管端部の第1継手部材と他方の鋼管端部の第2継手部材とを示した斜視図である。
図9】実施例2にかかる鋼製スリットダムの鋼管継手構造の鋼管接合部を示した縦断面図である。
図10】実施例2にかかる鋼製スリットダムの鋼管継手構造の鋼管接合部を示した正面図である。
図11】前記鋼管接合部における第1継手部材を示した斜視図である。
図12】前記鋼管接合部における第2継手部材を示した斜視図である。
図13】実施例3にかかる鋼製スリットダムの鋼管継手構造の鋼管接合部を示した斜視図である。
図14】前記鋼管接合部における一方の鋼管端部の第1継手部材と他方の鋼管端部の第2継手部材とを示した斜視図である。
図15】実施例3にかかる鋼製スリットダムの鋼管継手構造の鋼管接合部を示した縦断面図である。
図16】実施例3にかかる鋼製スリットダムの鋼管継手構造の鋼管接合部を示した正面図である。
図17】前記鋼管接合部における第1継手部材を示した斜視図である。
図18】前記鋼管接合部における第2継手部材を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明は、鋼製スリットダムの鋼管継手構造、具体的には、主として河川の横断方向両岸のコンクリート堤体間に設けられる鋼製スリットダムを構成する鋼管同士の接合部の継手構造において、従来のフランジ継手よりも強度・剛性の高い鋼管継手構造を、従来のフラット継手よりも簡易かつ確実に実現することができる技術的思想に立脚している。
なお、実施例を説明するために用いる図は、一例として鉛直方向に接合する場合の鋼管継手構造を記載しているが勿論これに限定されない。本発明に係る鋼管継手構造を適用する部位に方向性はなく、水平方向、鉛直方向、傾斜方向等、あらゆる方向に適宜継ぎ足して接合し、鋼製スリットダムを立体的に構築することができる。もっとも、本発明に係る鋼管継手構造は、すべての鋼管接合部に適用して鋼製スリットダムを構築しても良いし、一部の鋼管接合部(例えば、上流側に設置する鋼管接合部のみ)に適用して鋼製スリットダムを構築しても良い。実施のバリエーションは多様に考えられる。
以下、本発明に係る鋼製スリットダムの鋼管継手構造の実施例について図面に基づいて説明する。
【実施例0017】
実施例1にかかる鋼製スリットダムの鋼管継手構造は、図1図6に示したように、鋼製スリットダムを構成する鋼管同士の接合部の継手構造であり、一方の鋼管10の端部に、前記鋼管10の軸方向へ凹凸の段差をなす凹凸部11を備えた第1継手部材1が設けられ、他方の鋼管20の端部に、前記第1継手部材1の凹凸部11に噛み合う凸凹部22を備えた第2継手部材2が設けられ、前記第1継手部材1の凹凸部11と前記第2継手部材2の凸凹部22との噛み合わせ部R(図3参照)に抜け止め部材3が接合された構造で実施されている。
【0018】
前記抜け止め部材3は、本実施例1では、金属製の棒状のキー又はピンが好適に用いられ、接合部位に応じて長さの異なる複数本(図示例では6本)の抜け止め部材3を、前記噛み合わせ部Rに串刺し状に貫通させて接合する手法で実施されている。
前記第1継手部材1の凹凸部11と前記第2継手部材2の凸凹部22はそれぞれ、本実施例1では、前記鋼管10、20の軸方向と直交する方向に延びる複数の平行な凹溝11a、22aがほぼ等間隔に形成されており、前記凹溝11a、22aの溝壁部11b、22bに前記抜け止め部材3挿入用の貫通孔11c、22cが形成されている。本実施例1に係る前記貫通孔11c、22cはともに、前記抜け止め部材3の断面と略同形同大(50×50mm程度の正方形)で、前記抜け止め部材3が滑らかに、又は若干の摩擦抵抗を受けつつ挿入可能な形態で実施されている。
【0019】
前記第1継手部材1と前記第2継手部材2はそれぞれ、本実施例1では、対応する鋼管10、20の端部に設けられ前記鋼管10、20の外方に突き出る大きさの円盤状の基端プレート部1a、2aと、前記基端プレート部1a、2aから立ち上がる立ち上がり壁部1b、2bとからなる。また、前記立ち上がり壁部1b、2bは、本実施例1では、立ち上がり方向に向かって幅狭のテーパー状に形成されている。
ちなみに図中の符号1a’、2a’はそれぞれ、前記基端プレート部1a、2aを、対応する前記鋼管10、20の端部へ同芯配置に突き合わせて良好な溶接接合作業を実現するためのリング状の突設部を示している。なお、前記基端プレート部1a、2aを前記鋼管10、20の端部へ同芯配置に良好に接合する手段は、溶接手段に限定されず、ボルト接合手段、ネジ接合手段でも同様に実施できる。
【0020】
そして、前記一方(図示例では上方)の鋼管10の接合端縁には予め、前記第1継手部材1が、その前記リング状の突設部1a’を介して同芯配置に前記溶接手段(全周溶接)で一体的に設けられている(溶接ビードは図示の便宜上省略)。前記他方(図示例では下方)の鋼管20の接合端縁にも予め、前記第2継手部材2が、その前記リング状の突設部2a’を介して同芯配置に前記溶接手段(全周溶接)で一体的に設けられている(溶接ビードは図示の便宜上省略)。
【0021】
ここで、本発明に係る鋼管継手構造の構成部材の形態について説明すると、先ず、前記鋼管10、20は、構造設計に応じて適宜設計変更されるが、外径(φ)400~600mm程度、板厚(t)9~22mm程度の大きさが一般的である。もっとも、接合する鋼管10、20同士の大きさ(断面サイズ)は一致させておくことが好ましい。具体的に、本実施例1に用いる前記鋼管10、20は、ともに外径400mm程度、板厚18mm程度の大きさで実施されている。以下の実施例2、3についても同様の技術的思想とする。
【0022】
次に、前記第1継手部材1を構成する円盤状の前記基端プレート部1aは、本実施例1では、外径が550mm程度、板厚(符号T1参照)が32mm程度、リング状の突設部1a’の高さが30mm程度で形成されている。前記立ち上がり壁部1bは、図3が分かり易いように、略等間隔に6つ形成され、断面がそれぞれ上辺47mm程度、下辺55mm程度、高さ(符号R参照)125mm程度の逆台形状に形成されている。前記6つの立ち上がり壁部1bの奥行き方向長さはそれぞれ、円盤状の基端プレート部1aの外周縁からはみ出さない長さとされるので、図3の中心から左右の外方に向かって短い長さに設定されている。その他、前記第1継手部材1は、前記基端プレート部1aと前記立ち上がり壁部1bとを合わせた総重量が246kg程度で、溶接構造用鋳鋼品の種類は一例としてSCW550が採用されている。
【0023】
次に、前記第2継手部材2を構成する円盤状の前記基端プレート部2aは、本実施例1では、外径が550mm程度、板厚(符号T2参照)が32mm程度、リング状の突設部2a’の高さが30mm程度で形成されている。前記立ち上がり壁部2bは、図3が分かり易いように、略等間隔に5つ形成され、断面がそれぞれ上辺47mm程度、下辺55mm程度、高さ(符号R参照)125mm程度の台形状に形成されている。前記5つの立ち上がり壁部2bの奥行き方向長さはそれぞれ、円盤状の基端プレート部2aの外周縁からはみ出さない長さとされるので、図3の中心から左右の外方に向かって短い長さに設定されている。その他、前記第2継手部材2は、前記基端プレート部2aと前記立ち上がり壁部2bとを合わせた総重量が243kg程度で、溶接構造用鋳鋼品の種類は一例としてSCW550が採用されている。
【0024】
次に、前記抜け止め部材3は、本実施例1では、断面が前記貫通孔11c、22cの断面と略同形同大(50×50mm程度の正方形)の角形の均等断面形状で、前記貫通孔11c、22cへ串刺し状に貫通させる部位に応じて長さが異なる複数本(図示例では6本)の金属製棒材で実施されている。ちなみに、本実施例1に係る6本の抜け止め部材3は、最長570mm程度、最短300mm程度で、6本の総重量は68kg程度で実施されている。
【0025】
なお、前記段落[0021]~[0024]に記載した実施例1に係る鋼管継手構造の構成部材の大きさ等の数値は、あくまでも一例を示したものにすぎず、構造設計に応じて適宜増減可能である。
【0026】
よって、実施例1にかかる鋼製スリットダムの鋼管継手構造は、鋼管同士を水平方向、鉛直方向、又は傾斜方向に適宜継ぎ足して鋼製スリットダムを立体的に構築するにあたり、前記第1継手部材1を備えた鋼管10と前記第2継手部材2を備えた鋼管20とを相対峙させ、前記第1継手部材1の凹凸部11と前記第2継手部材2の凸凹部22とを突き合わせたり、スライドさせたりする位置合わせ作業を適宜行いつつ、前記凹凸部11と前記凸凹部22とを噛み合わせる(図示例では隙間なく重ね合わせる)と共に、交互に配置される前記凹凸部11の貫通孔11cと前記凸凹部22の貫通孔22cとの芯を略一致させて連通状態となるような微調整作業を行う。そうすると、本実施例1では、前記貫通孔11c、22cからなる角筒状の長短の貫通孔が計6箇所形成される。
しかる後、前記6箇所の長短の貫通孔に、長さが異なる前記6本の抜け止め部材3をそれぞれ貫通させ、必要に応じて割ピン等の脱落防止部材を用いて位置決めすることにより、前記第1継手部材1の凹凸部11と前記第2継手部材2の凸凹部22との噛み合わせ状態を強固に保持させ、もって、強度・剛性が高い前記第1継手部材1と第2継手部材2とによる鋼製スリットダムの鋼管継手構造を実現することができる。
【0027】
なお、本実施例1に係る前記凹凸部11と前記凸凹部22は、良好な噛み合わせ作業を実現するべく、溝壁部11b、22bをテーパー状に形成して実施しているがこれに限定されず、互いに鋼管軸方向に平行な直線状に形成して実施することもできる。その他、前記抜け止め部材3のコーナー部を全長にわたってR加工を施すことにより前記貫通孔11c、22cへの貫通作業をより滑らかにする工夫等は適宜行われるところである。
【0028】
したがって、この実施例1に係る鋼製スリットダムの鋼管継手構造によれば、第1継手部材1の凹凸部11と第2継手部材2の凸凹部22との噛み合わせ効果により、従来のフランジ継手よりも強度・剛性が高い鋼管継手構造を簡易かつ確実に実現することができる等、種々の作用効果を発揮することができる(詳しくは、明細書の段落[0014]の[発明の効果]を参照)。
【実施例0029】
実施例2に係る鋼製スリットダムの鋼管継手構造は、上記実施例1と比し、前記第1継手部材1と第2継手部材2の形態(大きさ、形状)が相違する。これに伴い、抜け止め部材3それぞれの形態が相違する。その他の構成要素は上記実施例1と同一なので同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
【0030】
すなわち、実施例2にかかる鋼製スリットダムの鋼管継手構造は、図7図12に示したように、鋼製スリットダムを構成する鋼管同士の接合部の継手構造であり、一方の鋼管10の端部に、前記鋼管10の軸方向へ凹凸の段差をなす凹凸部44を備えた第1継手部材4が設けられ、他方の鋼管20の端部に、前記第1継手部材4の凹凸部44に噛み合う凸凹部55を備えた第2継手部材5が設けられ、前記第1継手部材4の凹凸部44と前記第2継手部材5の凸凹部55との噛み合わせ部R(図9参照)に抜け止め部材6が接合された構造で実施されている。
【0031】
前記抜け止め部材6は、本実施例2では、金属製の棒状のキー又はピンが好適に用いられ、接合部位に応じて長さの等しい複数本(図示例では6本)の抜け止め部材6を、前記噛み合わせ部Rに串刺し状に貫通させて接合する手法で実施されている。
前記第1継手部材4の凹凸部44と前記第2継手部材5の凸凹部55はそれぞれ、本実施例2では、前記鋼管10、20の軸方向と直交する方向に延びる複数の平行な凹溝44a、55aがほぼ等間隔に形成されており、前記凹溝44a、55aの溝壁部44b、55bに前記抜け止め部材6挿入用の貫通孔44c、55cが形成されている。本実施例2に係る前記貫通孔44c、55cはともに、前記抜け止め部材6の断面と略同形同大(42×42mm程度の正方形)で、前記抜け止め部材6が滑らかに、又は若干の摩擦抵抗を受けつつ挿入可能な形態で実施されている。
【0032】
前記第1継手部材4と前記第2継手部材5はそれぞれ、本実施例2では、対応する鋼管10、20の端部に設けられ前記鋼管10、20の外方に突き出る大きさの矩形状(正方形状)の基端プレート部4a、5aと、前記基端プレート部4a、5aから立ち上がる立ち上がり壁部4b、5bとからなる。また、前記立ち上がり壁部4b、5bは、本実施例2では、立ち上がり方向に向かって幅狭のテーパー状に形成されている。
ちなみに図中の符号4a’、5a’はそれぞれ、前記基端プレート部4a、5aを、対応する前記鋼管10、20の端部へ同芯配置に突き合わせて良好な溶接接合作業を実現するためのリング状の突設部を示している。なお、前記基端プレート部4a、5aを前記鋼管10、20の端部へ同芯配置に良好に接合する手段は、溶接手段に限定されず、ボルト接合手段、ネジ接合手段でも同様に実施できる。
【0033】
そして、前記一方(図示例では上方)の鋼管10の接合端縁には予め、前記第1継手部材4が、その前記リング状の突設部4a’を介して同芯配置に前記溶接手段(全周溶接)で一体的に設けられている(溶接ビードは図示の便宜上省略)。前記他方(図示例では下方)の鋼管20の接合端縁にも予め、前記第2継手部材5が、その前記リング状の突設部5a’を介して同芯配置に前記溶接手段(全周溶接)で一体的に設けられている(溶接ビードは図示の便宜上省略)。
【0034】
ここで、本発明に係る鋼管継手構造の構成部材の形態について説明すると、先ず、前記鋼管10、20は、上記実施例1で説明した通りである(前記段落[0021]参照)。
【0035】
次に、前記第1継手部材4を構成する矩形状の前記基端プレート部4aは、本実施例2では、外径が550×550mm程度(但し四隅部切欠き)、板厚(符号T4参照)が36mm程度、リング状の突設部4a’の高さが30mm程度で形成されている。前記立ち上がり壁部4bは、図9が分かり易いように、略等間隔に4つ形成され、断面がそれぞれ上辺64mm程度、下辺72mm程度、高さ(符号R参照)83mm程度の逆台形状に形成されている。前記4つの立ち上がり壁部4bの奥行き方向長さはともに、前記基端プレート部4aの一辺の長さに合わせた550mm程度に設定されている。その他、前記第1継手部材4は、前記基端プレート部4aと前記立ち上がり壁部4bとを合わせた総重量が200kg程度で、溶接構造用鋳鋼品の種類は一例としてSCW550が採用されている。
【0036】
次に、前記第2継手部材5を構成する矩形状の前記基端プレート部5aは、本実施例2では、外径が550×550mm程度(但し四隅部切欠き)、板厚(符号T5参照)が36mm程度、リング状の突設部5a’の高さが30mm程度で形成されている。前記立ち上がり壁部5bは、図9が分かり易いように、略等間隔に3つ形成され、断面がそれぞれ上辺64mm程度、下辺72mm程度、高さ(符号R参照)83mm程度の台形状に形成されている。前記3つの立ち上がり壁部5bの奥行き方向長さはともに、前記基端プレート部5aの一辺の長さに合わせた550mm程度に設定されている。その他、前記第2継手部材5は、前記基端プレート部5aと前記立ち上がり壁部5bとを合わせた総重量が177kg程度で、溶接構造用鋳鋼品の種類は一例としてSCW550が採用されている。
【0037】
次に、前記抜け止め部材6は、本実施例2では、断面が前記貫通孔44c、55cの断面と略同形同大(42×42mm程度の正方形)の角形の均等断面形状で、前記貫通孔44c、55cへ串刺し状に貫通させる長さ(550mm程度)が等しい複数本(図示例では6本)の金属製棒材で実施されている。
すなわち、本実施例2では、前記抜け止め部材6の長さを、前記第1継手部材4の基端プレート部4aおよび前記第2継手部材5の基端プレート部5aの長さと略同じ長さか若干短い長さ(例えば、550mm程度)とすることで、前記抜け止め部材6に大きな礫が衝突(直撃)しない構造で実施されている。言い換えると、前記第1継手部材4の基端プレート部4aと前記第2継手部材5の基端プレート部5aはそれぞれ、前記抜け止め部材6を、鋼管10、20の軸方向から見て覆う大きさに設定することで、前記抜け止め部材6を礫から保護する保護プレートの役割を果たしている。
ちなみに、本実施例1に係る6本の前記抜け止め部材6の総重量は50kg程度で実施されている。
【0038】
なお、前記段落[0035]~[0037]に記載した実施例2に係る鋼管継手構造の構成部材の大きさ等の数値は、あくまでも一例を示したものにすぎず、構造設計に応じて適宜増減可能である。
【0039】
よって、実施例2にかかる鋼製スリットダムの鋼管継手構造は、鋼管同士を水平方向、鉛直方向、又は傾斜方向に適宜継ぎ足して鋼製スリットダムを立体的に構築するにあたり、前記第1継手部材4を備えた鋼管10と前記第2継手部材5を備えた鋼管20とを相対峙させ、前記第1継手部材4の凹凸部44と前記第2継手部材5の凸凹部55とを突き合わせたり、スライドさせたりする位置合わせ作業を適宜行いつつ、前記凹凸部44と前記凸凹部55とを噛み合わせる(図示例では隙間なく重ね合わせる)と共に、交互に配置される前記凹凸部44の貫通孔44cと前記凸凹部55の貫通孔55cとの芯を略一致させて連通状態となるような微調整作業を行う。そうすると、本実施例2では、前記貫通孔44c、55cからなる角筒状の長さ(550mm程度)が等しい貫通孔が計6箇所形成される。
しかる後、前記6箇所の貫通孔に、前記6本の抜け止め部材6をそれぞれ貫通させ、必要に応じて割ピン等の脱落防止部材を用いて位置決めすることにより、前記第1継手部材4の凹凸部44と前記第2継手部材5の凸凹部55との噛み合わせ状態を強固に保持させ、もって、強度・剛性が高い前記第1継手部材4と第2継手部材5とによる鋼製スリットダムの鋼管継手構造を実現することができる。
【0040】
なお、本実施例2に係る前記凹凸部44と前記凸凹部55は、上記実施例1と同様に、良好な噛み合わせ作業を実現するべく、溝壁部44b、55bをテーパー状に形成して実施しているがこれに限定されず、互いに鋼管軸方向に平行な直線状に形成して実施することもできる。その他、前記抜け止め部材6のコーナー部を全長にわたってR加工を施すことにより前記貫通孔44c、55cへの貫通作業をより滑らかにする工夫等は適宜行われるところである。
【0041】
したがって、この実施例2に係る鋼製スリットダムの鋼管継手構造によれば、上記実施例1と同様の効果があることに加え、第1継手部材4と第2継手部材5との噛み合わせ状態を保持する抜け止め部材6を礫から保護する構造で実施できるので、抜け止め部材6(鋼管接合部)の損傷、破壊を防止することができる等、種々の作用効果を発揮することができる(詳しくは、明細書の段落[0014]の[発明の効果]を参照)。
【実施例0042】
実施例3に係る鋼製スリットダムの鋼管継手構造は、上記実施例1と比し、前記第1継手部材1と第2継手部材2の形態(大きさ、形状)が相違する。これに伴い、抜け止め部材3それぞれの形態が相違する。その他の構成要素は上記実施例1と同一なので同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
【0043】
すなわち、実施例3にかかる鋼製スリットダムの鋼管継手構造は、図13図18に示したように、鋼製スリットダムを構成する鋼管同士の接合部の継手構造であり、一方の鋼管10の端部に、前記鋼管10の軸方向へ凹凸の段差をなす凹凸部77を備えた第1継手部材7が設けられ、他方の鋼管20の端部に、前記第1継手部材7の凹凸部77に噛み合う凸凹部88を備えた第2継手部材8が設けられ、前記第1継手部材7の凹凸部77と前記第2継手部材8の凸凹部88との噛み合わせ部R(図15参照)に抜け止め部材9が接合された構造で実施されている。
【0044】
前記抜け止め部材9は、本実施例3では、金属製の棒状のキー又はピンが好適に用いられ、接合部位に応じて長さの等しい複数本(図示例では6本)の抜け止め部材9を、前記噛み合わせ部Rに串刺し状に貫通させて接合する手法で実施されている。
前記第1継手部材7の凹凸部77と前記第2継手部材8の凸凹部88はそれぞれ、本実施例3では、前記鋼管10、20の軸方向と直交する方向に延びる複数の平行な凹溝77a、88aがほぼ等間隔に形成されており、前記凹溝77a、88aの溝壁部77b、88bに前記抜け止め部材9挿入用の貫通孔77c、88cが形成されている。本実施例3に係る前記貫通孔77c、88cはともに、前記抜け止め部材9の断面と略同形同大(45×45mm程度の正方形)で、前記抜け止め部材9が滑らかに、又は若干の摩擦抵抗を受けつつ挿入可能な形態で実施されている。
【0045】
前記第1継手部材7と前記第2継手部材8はそれぞれ、本実施例3では、対応する鋼管10、20の端部に設けられ前記鋼管10、20の外方に突き出る大きさの矩形状(正方形状)の基端プレート部7a、8aと、前記基端プレート部7a、8aから立ち上がる立ち上がり壁部7b、8bとからなる。また、前記立ち上がり壁部7b、8bは、本実施例3では、立ち上がり方向に向かって幅狭のテーパー状に形成されている。
ちなみに図中の符号7a’、8a’はそれぞれ、前記基端プレート部7a、8aを、対応する前記鋼管10、20の端部へ同芯配置に突き合わせて良好な溶接接合作業を実現するためのリング状の突設部を示している。ただし、前記リング状の突設部7a’、8a’の形状は、テーパー状に形成された上記実施例1、2のそれとは異なり、上面が平坦に形成されている。なお、前記基端プレート部7a、8aを前記鋼管10、20の端部へ同芯配置に良好に接合する手段は、溶接手段に限定されず、ボルト接合手段、ネジ接合手段でも同様に実施できる。
【0046】
そして、前記一方(図示例では上方)の鋼管10の接合端縁には予め、前記第1継手部材7が、その前記リング状の突設部7a’を介して同芯配置に前記溶接手段(全周溶接)で一体的に設けられている(溶接ビードは図示の便宜上省略)。前記他方(図示例では下方)の鋼管20の接合端縁にも予め、前記第2継手部材8が、その前記リング状の突設部8a’を介して同芯配置に前記溶接手段(全周溶接)で一体的に設けられている(溶接ビードは図示の便宜上省略)。
【0047】
ここで、本発明に係る鋼管継手構造の構成部材の形態について説明すると、先ず、前記鋼管10、20は、上記実施例1で説明した通りである(前記段落[0021]参照)。
【0048】
次に、前記第1継手部材7を構成する矩形状の前記基端プレート部7aは、本実施例3では、外径が550×550mm程度(但し四隅部切欠き)、板厚(符号T7参照)が40mm程度、リング状の突設部7a’の高さが9mm程度で形成されている。前記立ち上がり壁部7bは、図15が分かり易いように、略等間隔に4つ形成され、断面がそれぞれ上辺60mm程度、下辺72mm程度、高さ(符号R参照)120mm程度の逆台形状に形成されている。前記4つの立ち上がり壁部7bの奥行き方向長さはともに、前記基端プレート部7aの一辺の長さに合わせた550mm程度に設定されている。その他、前記第1継手部材7は、前記基端プレート部7aと前記立ち上がり壁部7bとを合わせた総重量が185.8kg程度で、溶接構造用鋳鋼品の種類は一例としてSCW550が採用されている。
【0049】
次に、前記第2継手部材8を構成する矩形状の前記基端プレート部8aは、本実施例3では、外径が550×550mm程度(但し四隅部切欠き)、板厚(符号T8参照)が40mm程度、リング状の突設部8a’の高さが9mm程度で形成されている。前記立ち上がり壁部8bは、図15が分かり易いように、略等間隔に3つ形成され、断面がそれぞれ上辺60mm程度、下辺72mm程度、高さ(符号R参照)120mm程度の台形状に形成されている。前記3つの立ち上がり壁部8bの奥行き方向長さはともに、前記基端プレート部8aの一辺の長さに合わせた550mm程度に設定されている。その他、前記第2継手部材8は、前記基端プレート部8aと前記立ち上がり壁部8bとを合わせた総重量が162.9kg程度で、溶接構造用鋳鋼品の種類は一例としてSCW550が採用されている。
【0050】
次に、前記抜け止め部材9は、本実施例3では、断面が前記貫通孔77c、88cの断面と略同形同大(45×45mm程度の正方形)の角形の均等断面形状で、前記貫通孔77c、88cへ串刺し状に貫通させる長さ(550mm程度)が等しい複数本(図示例では6本)の金属製棒材で実施されている。
すなわち、本実施例3では、前記抜け止め部材6の長さを、前記第1継手部材7の基端プレート部7aおよび前記第2継手部材8の基端プレート部8aの長さと略同じ長さか若干短い長さ(例えば、550mm程度)とすることで、前記抜け止め部材9に大きな礫が衝突(直撃)しない構造で実施されている。言い換えると、前記第1継手部材7の基端プレート部7aと前記第2継手部材8の基端プレート部8aはそれぞれ、前記抜け止め部材9を、鋼管10、20の軸方向から見て覆う大きさに設定することで、前記抜け止め部材9を礫から保護する保護プレートの役割を果たしている。
ちなみに、本実施例1に係る6本の前記抜け止め部材9の総重量は52kg程度で実施されている。
【0051】
なお、前記段落[0048]~[0050]に記載した実施例3に係る鋼管継手構造の構成部材の大きさ等の数値は、あくまでも一例を示したものにすぎず、構造設計に応じて適宜増減可能である。
【0052】
よって、実施例3にかかる鋼製スリットダムの鋼管継手構造は、鋼管同士を水平方向、鉛直方向、又は傾斜方向に適宜継ぎ足して鋼製スリットダムを立体的に構築するにあたり、前記第1継手部材7を備えた鋼管10と前記第2継手部材8を備えた鋼管20とを相対峙させ、前記第1継手部材7の凹凸部77と前記第2継手部材8の凸凹部88とを突き合わせたり、スライドさせたりする位置合わせ作業を適宜行いつつ、前記凹凸部77と前記凸凹部88とを噛み合わせる(図示例では隙間なく重ね合わせる)と共に、交互に配置される前記凹凸部77の貫通孔77cと前記凸凹部88の貫通孔88cとの芯を略一致させて連通状態となるような微調整作業を行う。そうすると、本実施例3では、前記貫通孔77c、88cからなる角筒状の長さ(550mm程度)が等しい貫通孔が計6箇所形成される。
しかる後、前記6箇所の貫通孔に、前記6本の抜け止め部材9をそれぞれ貫通させ、必要に応じて割ピン等の脱落防止部材を用いて位置決めすることにより、前記第1継手部材7の凹凸部77と前記第2継手部材8の凸凹部88との噛み合わせ状態を強固に保持させ、もって、強度・剛性が高い前記第1継手部材7と第2継手部材8とによる鋼製スリットダムの鋼管継手構造を実現することができる。
【0053】
なお、本実施例3に係る前記凹凸部77と前記凸凹部88は、上記実施例1と同様に、良好な噛み合わせ作業を実現するべく、溝壁部77b、88bをテーパー状に形成して実施しているがこれに限定されず、互いに鋼管軸方向に平行な直線状に形成して実施することもできる。その他、前記抜け止め部材9のコーナー部を全長にわたってR加工を施すことにより前記貫通孔77c、88cへの貫通作業をより滑らかにする工夫等は適宜行われるところである。
【0054】
したがって、この実施例3に係る鋼製スリットダムの鋼管継手構造によれば、上記実施例1と同様の効果があることに加え、第1継手部材7と第2継手部材8との噛み合わせ状態を保持する抜け止め部材9を礫から保護する構造で実施できるので、抜け止め部材9(鋼管接合部)の損傷、破壊を防止することができる等、上記実施例2と同様の作用効果を発揮することができる(詳しくは、明細書の段落[0014]の[発明の効果]を参照)。
【0055】
以上、実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
【0056】
例えば、上記実施例1では、円盤状の前記基端プレート部1a、2aの外径(550mm程度)に対し、最長の抜け止め部材3の方を長く(570mm程度)して実施しているが、上記実施例2、3の場合と同様に、前記抜け止め部材3を鋼管10、20の軸方向から見て覆う大きさに設定するべく、前記抜け止め部材3の最長の長さを、前記基端プレート部1a、2aと略同じ長さか若干短い長さ(例えば、550mm程度)とすることで、前記抜け止め部材3に大きな礫が衝突(直撃)しない構造で実施することもできる。
【0057】
また、本発明に係る鋼製スリットダムの鋼管継手構造は、上記したように、水平方向、鉛直方向、傾斜方向等、あらゆる方向に適宜継ぎ足して接合して鋼製スリットダムを立体的に構築することができるが、図3が分かりやすいように、前記第1継手部材1の立ち上がり壁部1bおよび第2継手部材2の立ち上がり壁部1bの向きは、河川の流れ方向Fに対し略直交する方向に位置決めして実施することが接合部の強度・剛性上は好ましい(合わせて図9図15も参照)。また、前記抜け止め部材3を設ける向きによっては、頭付きボルトのように、一側(例えば、図3では右方)の突き出し部分を太径に形成し、抜け止め効果をより高めるような工夫は適宜行われるところである。
【0058】
さらに、本実施例1~3に係る噛み合わせ部R(立ち上がり壁部1b、2b等)の形状は、逆台形状と台形状との組み合わせで実施しているがこれに限定されず、互いにほぼ隙間無く噛み合わせる(接触させる)ことができる組み合わせであれば良い。前記抜け止め部材3(又は6又は9)の断面形状も正方形に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0059】
1 第1継手部材
1a 基端プレート部
1a’ リング状の突設部
1b 立ち上がり壁部
11 凹凸部
11a 凹溝
11b 溝壁部
11c 貫通孔
2 第2継手部材
2a 基端プレート部
2a’ リング状の突設部
2b 立ち上がり壁部
22 凹凸部
22a 凹溝
22b 溝壁部
22c 貫通孔
3 抜け止め部材
4 第1継手部材
4a 基端プレート部
4a’ リング状の突設部
4b 立ち上がり壁部
44 凹凸部
44a 凹溝
44b 溝壁部
44c 貫通孔
5 第2継手部材
5a 基端プレート部
5a’ リング状の突設部
5b 立ち上がり壁部
55 凹凸部
55a 凹溝
55b 溝壁部
55c 貫通孔
6 抜け止め部材
7 第1継手部材
7a 基端プレート部
7a’ リング状の突設部
7b 立ち上がり壁部
77 凹凸部
77a 凹溝
77b 溝壁部
77c 貫通孔
8 第2継手部材
8a 基端プレート部
8a’ リング状の突設部
8b 立ち上がり壁部
88 凹凸部
88a 凹溝
88b 溝壁部
88c 貫通孔
9 抜け止め部材
10 鋼管
20 鋼管
R 噛み合わせ部
F 河川の流れ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18