(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097532
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】消火システム、及び、消火方法
(51)【国際特許分類】
A62C 37/40 20060101AFI20230703BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20230703BHJP
G08B 17/12 20060101ALI20230703BHJP
G08B 17/10 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
A62C37/40
H04N7/18 D
G08B17/12 Z
G08B17/10 F
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213699
(22)【出願日】2021-12-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-03-25
(71)【出願人】
【識別番号】515297076
【氏名又は名称】アースアイズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522000728
【氏名又は名称】Sabマネージメント有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165238
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】山内 三郎
【テーマコード(参考)】
2E189
5C054
5C085
【Fターム(参考)】
2E189FA10
2E189FB07
2E189FB09
5C054CA04
5C054FC12
5C054FF06
5C054HA20
5C085AA03
5C085AA11
5C085BA36
5C085CA20
5C085CA30
5C085EA41
(57)【要約】
【課題】監視カメラによって撮影される監視画像から、画像認識処理によって監視対象領域の空間内での火災の発生位置を正確に検出して、初期消火を自動的に行う。
【解決手段】撮影部10と、背景画像内に、3次元座標を設定する、座標設定部21と、撮影部10が撮影した監視画像から画像認識処理によって火又は煙の発生を検出する、火災発生検知部22と、火災発生検知部22が検出した火又は煙の背景画像の3次元座標中における位置に基づいて、実際の監視対象領域を構成する3次元空間内における火又は煙の位置である消火目標地点の3次元位置ベクトルを決定する、消火目標地点特定部23と、消火剤噴射部30と、を備え、消火剤噴射部30は、消火目標地点の3次元位置ベクトルに基づいて、噴射された消火剤が消火目標地点に到達するように消火剤の噴射条件が自動的に決定される、消火システム1とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象領域内で火災が発生した場合に自動的に初期消火を行う消火システムであって、
監視対象領域を構成する3次元空間を2次元の監視画像として撮影する、撮影部と、
前記監視対象領域を構成する3次元空間の2次元画像であって、前記監視対象領域を構成する3次元空間の底面と常設物とから構成される背景画像内に、当該背景画像の平面内における各点の位置を実際の前記監視対象領域を構成する3次元空間内での位置に対応させる3次元位置ベクトルの集合である3次元座標を設定する、座標設定部と、
前記撮影部が撮影した前記監視画像から画像認識処理によって火又は煙の発生を検出する、火災発生検知部と、
前記火災発生検知部が検出した前記火又は前記煙の前記背景画像の前記3次元座標中における位置に基づいて、実際の前記監視対象領域を構成する3次元空間内における前記火又は前記煙の位置である消火目標地点の前記3次元位置ベクトルを決定する、消火目標地点特定部と、
前記火災発生検知部が前記火又は前記煙の発生を検出したときに、消火剤を噴射する消火剤噴射部と、を備え、
前記消火剤噴射部は、前記消火目標地点の前記3次元位置ベクトルに基づいて、噴射された前記消火剤が前記消火目標地点に到達するように前記消火剤の噴射条件が自動的に決定される、
消火システム。
【請求項2】
前記消火剤噴射部は、前記撮影部とは異なる位置に設置されている少なくとも1機以上の噴射機からなり、
前記噴射機は、前記消火剤の噴射方向を任意の方向に変動可能な噴射方向制御機構を有し、前記消火目標地点の前記3次元位置ベクトルに基づいて、前記消火剤の前記噴射方向が自動的に決定される、
請求項1に記載の消火システム。
【請求項3】
前記消火剤噴射部は、前記監視対象領域を構成する3次元空間のそれぞれ異なる部分領域に前記消火剤を到達させることができるように複数の噴射機が分散配置されている、噴射機群からなり、
前記噴射機群は、前記消火目標地点の前記3次元位置ベクトルに基づいて、複数の前記噴射機のうちから前記消火目標地点に前記消火剤を到達させることができる前記噴射機を選択して、選択された該噴射機から前記消火剤を噴射する、
請求項1に記載の消火システム。
【請求項4】
前記消火目標地点特定部は、前記火又は前記煙の外縁の前記3次元位置ベクトルに基づいて、前記3次元空間内における前記火又は前記煙の大きさも算出し、
前記消火剤噴射部は、前記消火目標地点特定部が特定した前記火又は前記煙の大きさに基づいて、前記消火剤の噴射量を決定する、
請求項1から3の何れかに記載の消火システム。
【請求項5】
前記火災発生検知部は、多層式ニューラルネットワークを有する機械学習型の画像認識装置を備え、
前記多層式ニューラルネットワークは、前記背景画像に火及び/又は煙のサンプル画像を画像合成して作成された火災発生シミュレーション画像を、教師データとして入力してディープラーニングによって学習させた、学習済多層式ニューラルネットワークである、
請求項1から4の何れかに記載の消火システム。
【請求項6】
監視対象領域内で火災が発生した場合に自動的に初期消火を行う消火方法であって、
座標設定部が、前記監視対象領域を構成する3次元空間の2次元画像であって、前記監視対象領域を構成する3次元空間の底面と常設物とから構成される背景画像内に、当該背景画像の平面内における各点の位置を実際の前記監視対象領域を構成する3次元空間内での位置に対応させる3次元位置ベクトルの集合である3次元座標を設定する、座標設定ステップと、
撮影部が、前記監視対象領域を構成する3次元空間を2次元画像として撮影する監視撮影ステップと、
火災発生検知部が、前記監視撮影ステップにおいて撮影された前記監視対象領域を構成する3次元空間の2次元画像である監視画像から画像認識処理によって火又は煙の発生を検出する、火災発生検知ステップと、
消火目標地点特定部が、前記火災発生検知ステップにおいて検出された前記火又は前記煙の前記背景画像の前記3次元座標中における位置に基づいて、実際の前記監視対象領域を構成する3次元空間内における前記火又は前記煙の位置である消火目標地点の前記3次元位置ベクトルを決定する、消火目標地点特定ステップと、
消火剤噴射部が、前記火災発生検知ステップにおいて前記火又は前記煙の発生が検出されたときに、消火剤を噴射する、消火剤噴射ステップと、
を備え、
前記消火剤噴射ステップにおいては、前記消火目標地点の前記3次元位置ベクトルに基づいて、噴射された前記消火剤が前記消火目標地点に到達するように前記消火剤の噴射条件が自動的に決定される、
消火方法。
【請求項7】
前記消火剤噴射部は、前記撮影部とは異なる位置に設置されている少なくとも1機以上の噴射機からなり、
前記噴射機は、前記消火剤の噴射方向を任意の方向に変動可能な噴射方向制御機構を有し、
前記消火剤噴射ステップにおいて、前記消火目標地点の前記3次元位置ベクトルに基づいて、前記噴射方向が自動的に決定される、
請求項6に記載の消火方法。
【請求項8】
前記消火剤噴射部は、前記監視対象領域を構成する3次元空間のそれぞれ異なる部分領域に前記消火剤を到達させることができるように複数の噴射機が分散配置されている、噴射機群からなり、
前記消火剤噴射ステップにおいて、前記噴射機群は、前記消火目標地点の前記3次元位置ベクトルに基づいて、複数の前記噴射機のうちから前記消火目標地点に前記消火剤を到達させることができる前記噴射機が選択されて、選択された該噴射機から前記消火剤を噴射する、
請求項6に記載の消火方法。
【請求項9】
前記消火目標地点特定ステップにおいて、前記火又は前記煙の外縁の前記3次元位置ベクトルに基づいて、前記3次元空間内における前記火又は前記煙の大きさも算出し、
前記消火剤噴射ステップにおいて、前記消火目標地点特定ステップにおいて特定された前記火又は前記煙の大きさに基づいて、前記消火剤の噴射量が自動的に決定される、
請求項6から8の何れかに記載の消火方法。
【請求項10】
前記火災発生検知部は、多層式ニューラルネットワークを有する機械学習型の画像認識装置を備え、
前記多層式ニューラルネットワークは、前記背景画像に火及び/又は煙のサンプル画像を画像合成して作成された火災発生シミュレーション画像を、教師データとして入力してディープラーニングによって学習させた、学習済多層式ニューラルネットワークである、
請求項6から9の何れかに記載の消火方法。
【請求項11】
請求項6から10の何れかに記載の消火方法において、前記監視撮影ステップ、前記座標設定ステップ、前記火災発生検知ステップ、前記消火目標地点特定ステップ、及び、前記消火剤噴射ステップを、実行させる消火システム用のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火システムに関する。本発明は、より詳しくは、住宅、店舗、病院、学校、競技場、工場、倉庫、駅、及びその他の各種施設として用いられている様々な建造物の内部、或いは、船舶や大型車両等の輸送手段の内部に設置された、監視カメラによって撮影される監視画像から、火災の発生を自動的に検出して初期消火を自動的に行う、消火システム、及び、消火方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような消火システムの一例として、撮像方向を火災の方向に向ける(消火対象を画像の中心に合わせる)ことで、消火剤を噴射する噴射口の方向を消火対象に合わせることができる構成とした装置において、撮像手段が撮像した赤外線画像を画像処理して、予め定めた所定の温度よりも高い領域(高温領域)を火熱として抽出し、当該火熱が火災であると判定したときに、撮像部の光軸と同一方向に向けられた噴射口から火熱の方向に向けて自動的に消火剤が噴射される消火装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示されている上記消火システムにおいては、画像からの加熱の抽出は、赤外線画像の画像処理によることが想定されている。このため、このような消火システムを導入するためには、近年様々な施設等において広く設置されている監視カメラとは別途に、火災の発生を検知するための専用のカメラを新たに設置することが必要となる。
【0004】
これに対して、近年、認識脳力の進歩が著しい、ニューラルネットワークを用いた画像認識技術を用いれば、必ずしも、上記のような赤外線画像には頼らずに、既設の監視カメラが撮影している可視光画像である監視画像中から火や煙を認識することは可能である(特許文献2、3参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献2、3に開示されている最先端の画像認識処理技術によって、監視画像中から火や煙を認識することができたとしても、通常、監視カメラで撮像される画像データは二次元的なものであるため、当該画像の二次元の画像データのみから、監視対象領域を構成する3次元空間内での、実際の火災発生位置を正確に把握することはできない。
【0006】
例えば、特許文献1の消火装置のようにカメラの光軸と消火剤の噴射方向が一致するように固定されている構造を前提とする場合に限れば、単純にカメラの光軸の方向と火の方向を一致させることにより、噴射口を火の方向に向けることは可能ではある。しかしながら、この場合において、監視対象領域を構成する3次元空間内での実際の火の位置が把握できていないとすると、消火剤の噴射方向、噴射量、及び、噴射強度を、監視対象領域を構成する3次元空間内のあらゆる場所で発生し得る実際の火の発生位置に応じた最適な状態に自動的に調整することはできない。
【0007】
又、既設の監視カメラを利用する場合であって、尚且つ、その監視カメラの設置位置とは別の位置に消火装置が設置されている場合には、監視対象領域を構成する3次元空間内での実際の火の位置が把握できていない限り、実際には、消火剤の噴射方向、噴射量、及び、噴射強度を自動的に決定することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-61686号公報
【特許文献2】特開2018-88630号公報
【特許文献3】特開2021-174215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、建造物や輸送手段等の内部に設置された、監視カメラによって撮影される監視画像から、画像認識処理によって監視対象領域の空間内での火災の発生位置を正確に検出して、初期消火を自動的に行うことができる、消火システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、監視画像から、画像認識処理によって火災の発生位置を検出する消火システムにおいて、監視画像データに3次元座標を設定する座標設定部を備えさせることにより、監視カメラによって撮影される2次元画像である監視画像から、監視対象領域を構成する3次元空間内での実際の火の位置、即ち、火災の発生位置を正確に検出して、初期消火を自動的に行うことができることに想到し、本発明を完成するに至った。本発明は、具体的に、以下の解決手段により、上述の課題を解決する。
【0011】
(1) 監視対象領域内で火災が発生した場合に自動的に初期消火を行う消火システムであって、監視対象領域を構成する3次元空間を2次元画像として撮影する、撮影部と、前記監視対象領域を構成する3次元空間の2次元画像であって、前記監視対象領域を構成する3次元空間の底面と常設物とから構成される背景画像内に、当該背景画像の平面内における各点の位置を実際の前記監視対象領域を構成する3次元空間内での位置に対応させる3次元位置ベクトルの集合である3次元座標を設定する、座標設定部と、前記撮影部が撮影した前記監視画像から画像認識処理によって火又は煙の発生を検出する、火災発生検知部と、前記火災発生検知部が検出した前記火又は前記煙の前記背景画像の前記3次元座標中における位置に基づいて、実際の前記監視対象領域を構成する3次元空間内における前記火又は前記煙の位置である消火目標地点の前記3次元位置ベクトルを決定する、消火目標地点特定部と、前記火災発生検知部が前記火又は前記煙の発生を検出したときに、消火剤を噴射する消火剤噴射部と、を備え、前記消火剤噴射部は、前記消火目標地点の前記3次元位置ベクトルに基づいて、噴射された前記消火剤が前記消火目標地点に到達するように前記消火剤の噴射条件が自動的に決定される、消火システム。
【0012】
(1)の消火システムによれば、建造物や輸送手段等の内部に設置された、監視カメラによって撮影される2次元の監視画像から、画像認識処理によって監視対象領域の空間内での火災の発生位置を正確に検出して、初期消火を自動的に行うことができる。
【0013】
(2) 前記消火剤噴射部は、前記撮影部とは異なる位置に設置されている少なくとも1機以上の噴射機からなり、前記噴射機は、前記消火剤の噴射方向を任意の方向に変動可能な噴射方向制御機構を有し、前記消火目標地点の前記3次元位置ベクトルに基づいて、前記消火剤の前記噴射方向が自動的に決定される、(1)に記載の消火システム。
【0014】
(2)の消火システムによれば、噴射方向を任意の方向に変動可能な1機以上の噴射機(例えば、
図7に示す噴射機31)を用いて(1)に記載の消火システムを構成する場合において、監視対象領域を構成する3次元空間内の任意の位置で発生した火災に対して、各噴射機からの消火剤の噴射方向を、2次元の監視画像から得られる情報のみに基づいて、正確に消火目標地点に向けることができる。
【0015】
(3) 前記消火剤噴射部は、前記監視対象領域を構成する3次元空間のそれぞれ異なる部分領域に前記消火剤を到達させることができるように複数の噴射機が分散配置されている、噴射機群からなり、前記噴射機群は、前記消火目標地点の前記3次元位置ベクトルに基づいて、複数の前記噴射機のうちから前記消火目標地点に前記消火剤を到達させることができる前記噴射機を選択して、選択された該噴射機から前記消火剤を噴射する、(1)に記載の消火システム。
【0016】
(3)の消火システムによれば、スプリンクラー設備等、複数の噴射機が、監視対象領域を構成する3次元空間の異なる部分領域に前記消火剤を噴射することができるように分散配置されている、噴射機群(例えば、
図8に示す噴射機31A~E)を用いて(1)に記載の消火システムを構成する場合において、監視対象領域を構成する3次元空間内の任意の位置で発生した火災に対して、監視画像から得られる情報のみに基づいて、消火が必要な地点の周囲のみに消火剤を効率良く噴射することができる。
【0017】
(4) 前記消火目標地点特定部は、前記火又は前記煙の外縁の前記3次元位置ベクトルに基づいて、前記3次元空間内における前記火又は前記煙の大きさも算出し、前記消火剤噴射部は、前記消火目標地点特定部が特定した前記火又は前記煙の大きさに基づいて、前記消火剤の噴射量を決定する、(1)から(3)の何れかに記載の消火システム。
【0018】
(4)の消火システムによれば、(1)から(3)の何れかに記載の消火システムにおいて、検出した火又は煙の大きさに基づいて、消火剤の噴射量を最適な量に自動的に調整することができるので、これにより、火災発生時に行われる初期消火の段階において、消火剤の使用量を消火に必要不可欠な範囲の量に抑えながら、尚且つ、検出した火の消火を確実に実行して、火災の発生を高い確率で防止することができる。
【0019】
(5) 前記火災発生検知部は、多層式ニューラルネットワークを有する機械学習型の画像認識装置を備え、前記多層式ニューラルネットワークは、前記背景画像に火及び/又は煙のサンプル画像を画像合成して作成された火災発生シミュレーション画像を、教師データとして入力してディープラーニングによって学習させた、学習済多層式ニューラルネットワークである、(1)から(4)の何れかに記載の消火システム。
【0020】
(5)の消火システムによれば、(1)から(4)の何れかに記載の消火システムにおいて、機械学習型の画像認識装置において十分な教師データをそろえることが難しい火又は煙の画像について、検知精度を極めて高い水準にまで向上させることができる。これにより、火災発生時に行われる初期消火の段階において、火災の発生をより高い確率で防止することができる。又、誤検知に起因する不要な消火剤の誤噴射も高い確率で防止することができる。
【0021】
(6) 監視対象領域内で火災が発生した場合に自動的に初期消火を行う消火方法であって、座標設定部が、前記監視対象領域を構成する3次元空間の2次元画像であって、前記監視対象領域を構成する3次元空間の底面と常設物とから構成される背景画像内に、当該背景画像の平面内における各点の位置を実際の前記監視対象領域を構成する3次元空間内での位置に対応させる3次元位置ベクトルの集合である3次元座標を設定する、座標設定ステップと、撮影部が、前記監視対象領域を構成する3次元空間を2次元画像として撮影する監視撮影ステップと、火災発生検知部が、前記監視撮影ステップにおいて撮影された前記監視対象領域を構成する3次元空間の2次元画像である監視画像から画像認識処理によって火又は煙の発生を検出する、火災発生検知ステップと、消火目標地点特定部が、前記火災発生検知ステップにおいて検出された前記火又は前記煙の前記背景画像の前記3次元座標中における位置に基づいて、実際の前記監視対象領域を構成する3次元空間内における前記火又は前記煙の位置である消火目標地点の前記3次元位置ベクトルを決定する、消火目標地点特定ステップと、消火剤噴射部が、前記火災発生検知ステップにおいて前記火又は前記煙の発生が検出されたときに、消火剤を噴射する、消火剤噴射ステップと、を備え、前記消火剤噴射ステップにおいては、前記消火目標地点の前記3次元位置ベクトルに基づいて、噴射された前記消火剤が前記消火目標地点に到達するように前記消火剤の噴射条件が自動的に決定される、消火方法。
【0022】
(6)の消火方法によれば、建造物や輸送手段等の内部に設置された、監視カメラによって撮影される2次元の監視画像から、画像認識処理によって監視対象領域の空間内での火災の発生位置を正確に検出して、初期消火を自動的に行うことができる。
【0023】
(7) 前記消火剤噴射部は、前記撮影部とは異なる位置に設置されている少なくとも1機以上の噴射機(例えば、
図7に示す噴射機31)からなり、前記噴射機は、前記消火剤の噴射方向を任意の方向に変動可能な噴射方向制御機構を有し、前記消火剤噴射ステップにおいて、前記消火目標地点の前記3次元位置ベクトルに基づいて、前記噴射方向が自動的に決定される、(6)に記載の消火方法。
【0024】
(7)の消火方法によれば、噴射方向を任意の方向に変動可能な1機以上の噴射機を用いて(6)に記載の消火方法を行う場合において、監視対象領域を構成する3次元空間内の任意の位置で発生した火災に対して、各噴射機からの消火剤の噴射方向を、監視画像から得られる情報のみに基づいて、正確に消火目標地点に向けることができる。
【0025】
(8) 前記消火剤噴射部は、監視対象領域を構成する3次元空間のそれぞれ異なる部分領域に前記消火剤を到達させることができるように複数の噴射機が分散配置されている、噴射機群からなり、前記消火剤噴射ステップにおいて、前記噴射機群は、前記消火目標地点の前記3次元位置ベクトルに基づいて、複数の前記噴射機のうちから前記消火目標地点に前記消火剤を到達させることができる前記噴射機が選択されて、選択された該噴射機から前記消火剤を噴射する、(6)に記載の消火方法。
【0026】
(8)の消火方法によれば、スプリンクラー設備等、複数の噴射機が、監視対象領域を構成する3次元空間の異なる部分領域に前記消火剤を噴射することができるように分散配置されている噴射機群(例えば、
図8に示す噴射機31A~E)を用いて(6)に記載の消火方法を行う場合において、監視対象領域を構成する3次元空間内の任意の位置で発生した火災に対して、監視画像から得られる情報のみに基づいて、消火目標地点に消火剤を噴射することができる噴射機のみを作動させて、消火が必要な地点の周囲のみに消火剤を効率良く噴射することができる。
【0027】
(9) 前記消火目標地点特定ステップにおいて、前記火又は前記煙の外縁の前記3次元位置ベクトルに基づいて、前記3次元空間内における前記火又は前記煙の大きさも算出し、前記消火剤噴射ステップにおいて、前記消火目標地点特定ステップにおいて特定された前記火又は前記煙の大きさに基づいて、前記消火剤の噴射量が自動的に決定される、(6)から(8)の何れかに記載の消火方法。
【0028】
(9)の消火方法によれば、(6)から(8)の何れかに記載の消火方法において、検出した火又は煙の大きさに基づいて、消火剤の噴射量を最適な量に自動的に調整することができるので、これにより、火災発生時に行われる初期消火の段階において、消火剤の使用量を消火に必要不可欠な範囲の量に抑えながら、尚且つ、検出した火の消火を確実に実行して、火災の発生を高い確率で防止することができる。
【0029】
(10) 前記火災発生検知部は、多層式ニューラルネットワークを有する機械学習型の画像認識装置を備え、前記多層式ニューラルネットワークは、前記背景画像に火及び/又は煙のサンプル画像を画像合成して作成された火災発生シミュレーション画像を、教師データとして入力してディープラーニングによって学習させた、学習済多層式ニューラルネットワークである、(6)から(9)の何れかに記載の消火方法。
【0030】
(10)の消火方法によれば、(6)から(9)の何れかに記載の消火方法において、機械学習型の画像認識装置において十分な教師データをそろえることが難しい火又は煙の画像について、検知精度を極めて高い水準にまで向上させることができる。これにより、火災発生時に行われる初期消火の段階において、火災の発生をより高い確率で防止することができる。又、誤検知に起因する不要な消火剤の誤噴射も高い確率で防止することができる。
【0031】
(11) (6)から(10)の何れかに記載の消火方法において、前記監視撮影ステップ、前記座標設定ステップ、前記火災発生検知ステップ、前記消火目標地点特定ステップ、及び、前記消火剤噴射ステップを、実行させる消火システム用のプログラム。
【0032】
(11)のプログラムによれば、建造物や輸送手段等の内部に設置された、監視カメラによって撮影される監視画像から、画像認識処理によって監視対象領域の空間内での火災の発生位置を正確に検出して、初期消火を自動的に行うことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、建造物の内部、或いは、船舶や大型車両等の輸送手段の内部に設置された、監視カメラによって撮影される2次元の監視画像から、画像認識処理によって消火目標地点を正確に検出して、初期消火を自動的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の消火システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の消火システムを構成する撮影部の取り付け態様の一例を示す図である。
【
図3】本発明の消火システムが備える座標設定部が、3次元座標の設定を行うために用いる背景画像の一例を示す図である。
【
図4】本発明の消火システムが備える座標設定部が設定した3次元座標の一例を示す図である。
【
図5】本発明の消火システムが備える座標設定部が設定した3次元座標の他の一例を示す図である。
【
図6】本発明の消火システムを用いて行うことができる本発明の消火方法の流れを示すフロー図である。
【
図7】本発明の消火システムを構成する消火剤噴射部の設置態様の一例を示す図である。
【
図8】本発明の消火システムを構成する消火剤噴射部の設置態様の他の一例を示す図である。
【
図9】本発明の消火システムにおいて画像認識処理が行われる監視画像(背景画像・火災非発生時)の一例である。
【
図10】本発明の消火システムにおいて画像認識処理が行われる監視画像(火災発生時)画像の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
<消火システム>
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。本発明の消火システムは、監視対象領域内で火災が発生した場合に、2次元の監視画像の映像から、監視対象領域空間内における実際の火災の発生及び発生位置を正確に検知して、自動的に初期消火を行うことができるシステムである。
図1は、本発明の消火システムの実施形態の一例である消火システム1の構成を示すブロック図である。消火システム1は、
図1に示す各構成を備えることによって、監視カメラ等によって撮影される監視画像の2次元データから、監視対象領域の三次元空間内での消火目標地点の正確な位置を検出することにより、火災発生時の初期消火を、高精度で自動的に行うことができるシステムとしたものである。
【0036】
[全体構成]
消火システム1は、撮影部10、演算処理部20、及び、消火剤噴射部30によって構成される。そして、演算処理部20は、少なくとも、座標設定部21、火災発生検知部22、及び、消火目標地点特定部23を含んで構成される。以上の構成からなる消火システム1は、一つの消火システム(或いは、消火装置)として一体化した構成とすることもできる。或いは、消火システム1は、演算処理部20の機能の一部のみを撮影部10や消火剤噴射部30に搭載した構成とすることもできる。
【0037】
ここで、消火システム1は、上記の各部分、即ち、撮影部10、演算処理部20、及び、消火剤噴射部30を、相互に情報通信可能に接続した情報処理システムでもある。各部分間の接続は、専用の通信ケーブルを利用した有線接続、或いは、有線LANによる接続とすることができる。又、有線接続に限らず、無線LANや近距離無線通信、携帯電話回線等の各種無線通信を用いた接続によって消火システム1を構成することもできる。
【0038】
上記のように、各部分を相互に情報通信可能に接続して構成される消火システム1において、少なくとも、撮影部10及び消火剤噴射部30は、防火対象となる監視対象領域内、或いは、その近傍に設置されるが、演算処理部20については、必ずしも、当該監視対象領域内等に設置することが必須ではない。演算処理部20については、監視対象領域から物理的に離れた任意の場所にある他の施設内や、或いは、インターネット上(所謂クラウド上)に配置することもできる。そのような分散型の情報システムとしての実施形態も当然に本発明の消火システムの技術的範囲に含まれる。
【0039】
[撮影部]
撮影部10は、上述した様々な建造物、或いは、各種の輸送手段の内部において、防火のための監視を行う監視対象領域を構成する3次元空間を2次元画像として撮影する、監視カメラ11によって構成される。監視カメラ11としては、撮影した監視画像を、演算処理部20で演算処理することができるようにデジタル形式の画像データに加工して、当該画像データを演算処理部20に向けて出する機能を有するものであれば、既存の各種のデジタルカメラを特に制限なく用いることができる。又、監視カメラ11は、監視対象領域3次元空間を2次元の可視光画像として撮影する汎用的な単眼のカメラでよく、高価な3Dカメラや或いは赤外線カメラ等を導入することなく、本発明の効果を享受することができる。
【0040】
図2は、撮影部10を構成する監視カメラ11の取り付け態様の一例を示す図である。
図2には、監視カメラ11が天井に取り付けられている例を示したが、取り付け場所は、監視対象領域の状況に応じて適宜変更することができる。又、撮影部10は、上記の監視対象領域を構成する3次元空間を連続的に撮影することができる位置に設置されているカメラであれば、当該施設に設置されている既設の監視カメラを、消火システム1の撮影部10を構成する監視カメラ11として用いることもできる。尚、この
図2を含め、以下に示す各図面(
図5のフロー図を除く)は、何れも模式図であり、各部の大きさ、形状等については、本発明の構成や動作の理解を容易にするために、必要に応じて適宜変更して示している。
【0041】
[演算処理部]
演算処理部20は、撮影部10から送信された画像データを入力値として、監視対象領域内で発生した火災に対する初期消火の動作を自動的に実行するために必要な演算処理を行う。演算処理部20は、消火システム1の各部の動作を制御する用途に特化した専用の情報処理装置として構成することもできるが、例えば、パーソナルコンピュータやタブレット端末、スマートフォン等を利用して構成することもできる。
【0042】
上記何れの構成においても、演算処理部20は、CPU、メモリ、通信部等のハードウェアを備えている。そして、このような構成からなる演算処理部20は、本発明に係るコンピュータプログラムである消火システム用のプログラムを実行することにより、以下に説明する各種動作、及び、消火方法を具体的に実行することができる。
【0043】
演算処理部20は、撮影部10から画像データを受信し、消火剤噴射部30に向けて監視対象領域内で発生した火災に関するデータを送信することができるように撮影部10及び消火剤噴射部30と通信可能に接続されている。この接続は、専用の通信ケーブルを利用した有線接続、或いは、有線LANによる接続とすることができる。又、有線接続に限らず、無線LANや近距離無線通信、携帯電話回線等の各種無線通信を用いた接続としてもよい。尚、演算処理部20は、撮影部10の近傍に配置せずに、撮影部10から離れた遠隔地に配置することもできる。又、演算処理部20は、消火システム1の各部の動作の制御する機能を備える情報処理装手段をサーバーとしてクラウド上に構成して、これを多数のクライアントで共有する構成とすることもできる。
【0044】
以下、演算処理部20を構成する各部、即ち、座標設定部21、火災発生検知部22、及び、消火目標地点特定部23の各部について、その詳細を説明する。
【0045】
(座標設定部)
座標設定部21は、撮影部10が撮影した監視対象領域の背景画像内に、3次元座標を設定する座標設定処理を行う。この3次元座標は2次元画像である背景画像の平面内における各点の位置を実際の監視対象領域を構成する3次元空間内での位置に対応させる3次元位置ベクトルの集合である。座標設定処理の動作の詳細については後述する。
【0046】
(火災発生検知部)
火災発生検知部22は、撮影部10が撮影した監視画像の中から画像認識処理によって「火」又は「煙」を、自動的に識別して検出する。発生した「火」や「煙」の監視画像からの抽出は、具体的には、従来公知の様々な手法の何れか、又は、それらを組合せて行うことができる。例えば、背景差分によって撮影画像100中から背景以外の対象物を抽出することができる。そして、抽出した対象物の特定については、近年、画像認識分野において、認識率の飛躍的向上が注目を集めている、ニューラルネットワークを有する機械学習型の画像解析装置(所謂「ディープラーニング技術を用いた画像認識装置」)を用いることが好ましい。
【0047】
ここで、「火」又は「煙」の画像認識処理による検出を、より高い確率で行うためには、火災発生検知部22を、多層式ニューラルネットワークを有する機械学習型の画像認識装置で構成することが有効である。但し、この場合において、「火」及び/又は「煙」の状態は、発生(発火)場所の環境毎に差異が大きいため、認識精度を高めるためには、上記の多層式ニューラルネットワークに、実際に使用する環境で発生し得る「火」及び/又は「煙」の大量の画像を(即ち、背景画像毎)教師データとして入力してディープラーニングによって学習させることが好ましい。しかしながら、実際に監視対象領域に着火することはできないため、上記の学習データの集積が難しいという問題がある。この問題に対して、多層式ニューラルネットワークの学習は、監視対象領域の背景画像(一例として
図9に示す画像)に、「火」及び/又は「煙」のサンプル画像を画像合成して作成された火災発生シミュレーション画像(一例として
図10に示す画像と同様の画像)を大量に製造して、これを教師データとして学習させ、これにより学習済多層式ニューラルネットワークとすることが有効である。これにより、当該環境での使用に特化した極めて検出精度の高い火災発生検知部を構成することができる。
【0048】
(消火目標地点特定部)
消火目標地点特定部23は、火災発生検知部22が検出した「火」又は「煙」の背景画像の3次元座標中における位置に基づいて、実際の監視対象領域を構成する3次元空間内における当該「火」又は当該「煙」の位置である消火目標地点の3次元位置ベクトルを決定する、消火目標地点特定処理を行う。
【0049】
消火目標地点特定部23は、更には、「火」又は「煙」の外縁の3次元位置ベクトルに基づいて、実際の監視対象領域を構成する3次元空間内における「火」又は「煙」の大きさも算出することができるようにすることがより好ましい。
【0050】
[消火剤噴射部]
消火剤噴射部30は、火災発生検知部22が「火」又は「煙」の発生を検出したときに、消火目標地点に向けて消火剤を噴射する。この「消火目標地点」とは、監視対象領域空間内において、「火」又は「煙」が発生した位置であり、消火目標地点特定部23によってこの位置に対応する「3次元位置ベクトル」が決定された位置である。
【0051】
消火剤噴射部30からの消火剤の噴射条件は、噴射された消火剤が、消火目標地点に到達するように、当該消火目標地点の3次元位置ベクトルに基づいて自動的に決定される。
【0052】
消火剤噴射部30は、一例として、
図7に示すように、消火剤の噴射方向を任意の方向に変動可能な噴射機31が、少なくとも1機以上、設置されている構成とすることができる。消火剤噴射部30を、
図7に示すこのような構成とする場合には、噴射機31は、消火剤の噴射方向を任意の方向に変動可能な噴射方向制御機構を有するものとして、消火目標地点P0の3次元位置ベクトルに基づいて、消火剤の噴射方向が自動的に決定されるようにすればよい。具体的には、
図7に示すように、撮影部10を構成する監視カメラ11によって撮影される監視画像から検知された火fの発生地点である消火目標地点P0の3次元位置ベクトルに基づいて調整することによって、消火剤噴射部30を構成する噴射機31の噴射方向を、消火目標地点P0の方向に向ければよい。
【0053】
又、消火剤噴射部30は、他の一例として、
図8に示すように、監視対象領域を構成する3次元空間のそれぞれ異なる部分領域に消火剤を到達させることができるように複数の噴射機(スプリンクラー等)31A~Eが分散配置されている噴射機群によって構成することもできる。消火剤噴射部30を、
図8に示す構成とする場合には、消火目標地点P0の3次元位置ベクトルに基づいて、複数の噴射機31A~Eのうちから、消火目標地点P0に消火剤を到達させることができる噴射機を選択して、選択された噴射機31Cから消火剤を噴射するようにすればよい。具体的には、一例として、
図8に示すように、撮影部10を構成する監視カメラ11によって撮影される監視画像から検知された火fの発生地点である消火目標地点P0の3次元位置ベクトルに基づいて、複数の噴射機31A~Eのうちから、消火目標地点P0に消火剤を到達させることができる噴射機(
図8の場合には噴射機31C)を選択すればよい。
【0054】
又、上述したように、消火目標地点特定部23によって、実際の監視対象領域を構成する3次元空間内における「火」又は「煙」の大きさも算出されている場合には、消火剤噴射部30は、消火目標地点特定部23が特定した「火」又は「煙」の大きさに基づいて、消火剤の噴射量を決定することが好ましい。具体的には、「火」や「煙」の大きさが大きい時には、消火剤の噴射量をその大きさに比例して増やすようにすることにより、初期消火の成功確率を更に高めることができる。
【0055】
尚、本発明に用いる「消火剤」は、消火システムの設置場所の条件に応じて、従来公知の各種の消火剤から選択することができる。消火剤として水を用いることもできる。消火剤の噴射口や噴射機構については、選択された消火剤を所望の条件の下で噴射できる構造のものであればよく、特定の構造の物に限定されない。
【0056】
[消火方法(消火システムの動作)]
図5は、消火システム1を好適に用いて実行することができる本発明の消火方法の流れを示すフロー図である。本発明の消火方法は、監視対象領域内で火災が発生した場合に、これを監視画像から検出して、自動的に初期消火を行う消火方法である。この消火方法は、
図5に示す通り、座標設定ステップS1、監視撮影ステップS2、火災発生検知ステップS3、消火目標地点特定ステップS4、及び、消火剤噴射ステップS5が、順次行われるプロセスである。このプロセスは、上記において詳細を説明した消火システム1を用いて実施することができる。
【0057】
(座標設定ステップ)
座標設定ステップS1では、座標設定部21が、座標設定処理を行う。この「座標設定処理」とは、監視対象領域を構成する3次元空間内の2次元の撮影画像である背景画像内に、当該背景画像の平面内における各点の位置を、実際の監視対象領域空間内での位置に対応させる3次元位置ベクトルの集合である3次元座標を設定する処理である。上記の「背景画像」とは、監視カメラ等によって監視対象領域を撮影した2次元画像であって、当該監視対象領域を構成する3次元空間の底面と常設物とから構成される画像である。
【0058】
2次元の撮影画像内に3次元位置ベクトルの集合である3次元座標を設定する「座標設定処理」は、具体的には、一例として、「特許第6581280号」に開示されている以下の方法によることができる。
【0059】
上記方法による「座標設定処理」において座標設定部21が設定する「3次元座標」とは、監視対象領域についての奥行き情報も有する3次元座標であり、撮影部10が撮影する撮影画像中において、ある任意の位置を特定し、その位置が床面又は地面にあるとしたときに、その床面又は地面が、実際の監視対象領域の空間においてどの位置に相当するのか特定可能な座標である。即ち、この設定される座標上の位置は、監視対象領域3次元空間内における実寸法と関連付けて設定される。
【0060】
図3は、座標設定ステップS1において、座標設定部21が、座標設定を行うときに撮影される「背景画像」の一例を示す図である。
図3に示した例では、床面501と、壁面502と、什器503とが撮影画像中に含まれている。
図3において、床面に平行な面をXY平面とし、XY平面のうち
図3中の左右方向をX方向とし、左右方向に直交する奥行方向をY方向とする。又、床面に垂直な鉛直方向をZ方向とする。以下、
図4、
図7~8においても同様である。
【0061】
撮影部10が撮影する撮影画像は2次元の画像情報である。よって、撮影画像中である位置を選択(特定)したとしても、それだけでは、選択(特定された)位置(2次元位置)が、実際の3次元空間上におけるいかなる位置(3次元位置)であるのかを特定することができない。しかし、床面、又は、地面上に、「監視対象領域3次元空間内における実寸法」と関連付けた座標を設定した上で、撮影画像中で選択(特定)する位置を、床面又は地面であると限定すれば、撮影画像中で選択(特定)された位置が監視対象領域3次元空間内におけるどの位置の床面又は地面であるのかを特定することが可能となる。そこで、座標設定部21は、先ず、床面又は地面に対応させた座標を設定する。
【0062】
座標設定ステップS1において、座標設定部21は、撮影部10から床面又は地面までの距離hと、撮影部10が撮影する映像光の光軸Oの向き(角度α)と、撮影部10が撮影する撮影画像の画角(θ)とを用いて座標を設定する。
図2に示すように、撮影部10が撮影する撮影画像中における、中心位置に存在する床面又は地面の実際の中心位置PO、即ち、撮影レンズ112の光軸Oが床面又は地面と交わる中心位置POは、幾何学的に特定可能である。具体的には、撮影部10が設置されている位置の床面又は地面からの高さhと、光軸Oの向きを特定可能な角度α(光軸Oと鉛直方向Gとのなす角度)とを取得できれば、撮影部10の真下の位置から中心位置POまでの距離LOを求めることができる。
【0063】
又、垂直方向画角θは、監視カメラ11の撮像素子のサイズと撮影レンズの諸元から一義的に決まる既知の値であるので、中心位置POから撮影範囲の最近点P1までの距離L1と、中心位置POから撮影範囲の最遠点P2までの距離L2とについても、幾何学的に求めることができる。同様に、これらの中間の任意の位置についても、画像中の位置と監視対象領域3次元空間内における実際の位置(実寸法、実距離)とを関連付けることができる。又、奥行方向(図中のY方向)と同様に、左右方向(図中のX方向)についても、画像中の位置と監視対象領域3次元空間内における実際の位置(実寸法、実距離)とを関連付けることができる。以上のようにして、座標設定部21は、撮影画像中に、「監視対象領域3次元空間内における位置」と関連付けされた座標を設定することができる。
【0064】
図4は、座標設定ステップS1において、座標設定部21が設定した座標の一例を示す図である。
図4では、説明のために、
図3の撮影画像にY方向及びX方向に、監視対象領域3次元空間内における実寸法において等間隔となるグリッドを重ねて示した。尚、このようにグリッドで領域を分割することは、一例であって、グリッド分けをせずに連続した座標が設定されていてもよい。尚、座標設定部21が設定する座標は、床面501(又は地面)が無限に広がっていると仮定して設定されるので、これを説明するために、あえて壁面502や什器503等に対してもグリッドを重ねて表示した。
【0065】
ここで、撮影画像では、監視対象領域3次元空間内における実寸法が同じであっても、近くの位置よりも遠くの位置の方が小さく見える。よって、設定された座標において、上記実寸法上で等間隔のグリッドは、遠方の方が小さくなるように設定される。このように、座標設定部21が設定する座標は、監視対象領域3次元空間内における実際の位置(実寸法、実距離)と関連付けられている。
【0066】
座標設定部21が設定する座標が、上述の通り、監視対象領域3次元空間内における実際の位置(実寸法、実距離)と関連付けられているということは、換言すれば、座標設定部21が設定する上記座標上の各グリッド、或いは、各点は、撮影部10からの距離情報を含んでいるということでもある。そうすると、所定領域内の監視対象がどのグリッドに位置しているかを把握することで、当該監視対象の大きさや立体形状に係る3次元情報を取得することが可能である。
【0067】
尚、本発明の消火システム1においては、撮影部10が設置されている位置の床面又は地面からの高さhと、光軸Oの向きを特定可能な角度α(光軸Oと鉛直方向Gとのなす角度)とを取得できれば、撮影部10の真下の位置から中心位置POまでの距離LOを求めることができる。一方で、消火システム1を構成する撮影部10は、赤外線等を照射して距離測定を行う距離測定部に相当する構成を必須の構成としてはいない。上記のように幾何学的に監視対象領域3次元空間の位置を特定する前提として必要な初期情報となる「高さh」に関しては、消火システム1が自動的に得られる値ではない。撮影部10が設置される高さは、監視を行う現場に応じて様々である。消火システム1では、高さhを初期情報として座標設定部21に入力しておくことにより、適切に座標設定処理を行うことがであきる。
【0068】
又、光軸Oの向きを特定可能な角度αについても、正しい値を取得する必要がある。ここで説明する撮影部10は、光軸Oの向きを任意の向きに向けて設置が可能なように構成されているが、設置後は、光軸Oの向きに変化はない。そこで、本実施形態の消火システム1では、角度αについても、座標設定部21に初期情報として入力しておくようにする。尚、角度αについては、撮影部10の設置工事時に調整されるので、設置工事完了後に入力が行われる。その際、最終的な調整値を得ることができるように、例えば、撮影部10の向き調整機構に目盛を設けておけば、この目盛に応じた値を入力部122に入力することにより、適切な値を簡単に入力可能である。
【0069】
2次元の撮影画像内に3次元位置ベクトルの集合である3次元座標を設定する「座標設定処理」は、具体的には、他の一例として、「特許第5899506号」に開示されている以下の方法によることができる。
【0070】
上記方法による「座標設定処理」によれば、
図6に示すように監視対象領域の背景画像について、水平方向と高さ方向の三次元の位置情報を備えたグリッドを積み上げていくことにより、背景画像中に、床面501と常設物である什器503の存在が反映された3次元座標を設定することができる。尚、このグリッドは撮影部10を構成する監視カメラ11の真下から外側に向かって積み上げていく。グリッドのサイズは任意に設定され、各グリッドの水平方向(X軸方向及びY軸方向)の位置は、積み上げられたグリッドの数で算出することができる。又、各グリッドの高さ方向(Z軸方向)の位置は、各什器の設置位置、形状・サイズを初期情報として入力するか、或いは、測距センサにより各什器の外縁までの距離データを測定することにより当該距離データから算出することができる。尚、
図6においては、説明を容易にするため、2つの什器503とその間の床面501のグリッド(3次元座標)を図示したが、実際には、監視領域Aの背景すべてについてグリッド(3次元座標)が生成される。又、
図6においては、理解を容易にするため、床面501にハッチングを付している。
【0071】
尚、これらの座標設定ステップS1は、上記何れかの方法、或いは、その他の従来方法による場合であっても、監視対象領域を監視するための事前準備であって、これ以降のステップにより本稼働としての実際の監視が開始される。換言すると、座標設定ステップS1は、監視の本稼働の開始に先行して、撮影部10の設置後に少なくとも1回行われればよい。例えば、消火システム1を設置したときに適切に上記の座標を設定しておけば、その後、撮影部10の配置の変更等、監視画像の撮影条件に特段の変更がない限り、消火システムの稼働中における再度の座標設定を不要とすることができる。
【0072】
(監視撮影ステップ)
監視撮影ステップS2では、撮影部10が監視対象領域を構成する3次元空間を2次元画像として撮影する監視撮影を行う。ここで、監視撮影は、静止画の撮影を所定間隔で連続して行い、撮影される画像の連続として後述する監視動作を行うが、撮影間隔を非常に短くすることにより、実質的には、動画撮影として、監視動作を行っているものと捉えることもできる。
【0073】
(火災発生検知ステップ)
火災発生検知ステップS3では、火災発生検知部22が、監視撮影ステップS2において撮影された監視画像撮影画像から画像認識処理によって火又は煙の発生を検出する。「火又は煙の発生」が検出された場合(S3、Yes)には、消火目標地点特定ステップS4へ進み、「火又は煙の発生」が検出されていない場合(S3、No)には、監視撮影ステップS2へ戻り、監視動作を継続する。
【0074】
「火又は煙の発生」の検出は、具体的には、従来公知の様々な手法の何れか、又は、それらを組合せて行うことができる。例えば、背景差分によって監視対象領域内に発生した「火又は煙の発生」を抽出することができる。この背景差分は公知の技術であり、監視カメラ11で取得された画像データと、事前に取得しておいた監視対象領域の背景画像との差分をとることで、動きのある監視対象を抽出する技術である。
【0075】
又、検出した監視対象の特定については、近年、画像認識分野において、認識率の飛躍的向上が注目を集めているディープラーニングを用いた画像認識技術と本発明との組合せが有効である。このような画像認識技術と組合せることにより、撮影画像中の「火又は煙の発生」や物を、自動的に検出して特定することができる。
【0076】
尚、ディープランニングを用いた画像認識技術については、例えば、下記に公開されている。
「ディープラーニングと画像認識、オペレーションズ・リサーチ」
(http://www.orsj.o.jp/archive2/or60-4/or60_4_198.pdf)
【0077】
(消火目標地点特定ステップ)
消火目標地点特定ステップS4では、消火目標地点特定部23が、火災発生検知ステップS3において検出された「火又は煙」の背景画像の3次元座標中における位置に基づいて、実際の監視対象領域を構成する3次元空間内における「火又は煙」の位置である「消火目標地点」の3次元位置ベクトルを決定する。火災発生検知ステップS3において、「火又は煙」は監視画像中の2次元の図形として検出されるが、この2次元の図形が、背景画像中において設定されている3次元座標中に占める位置から、検出された「火又は煙」の3次元位置ベクトルを特定することができる。
【0078】
又、座標設定ステップS1において設定された3次元座標が、上述の通り、監視対象領域3次元空間内における実際の位置(実寸法、実距離)と関連付けられているということは、換言すれば、上記座標上の各グリッド、或いは、各点は、撮影部10からの距離情報を含んでいるということでもある。そうすると、消火目標地点特定ステップS4においては、所定領域内の監視対象がどのグリッドに位置しているかを把握することで、当該監視対象、即ち、検出された「火」や「煙」の外縁に関する3次元位置ベクトルから、それらの「火」や「煙」の大きさや立体形状を算出することも可能である。
【0079】
(消火剤噴射ステップ)
消火剤噴射ステップS5では、火災発生検知ステップS3において火又は煙の発生が検出されたときに、消火剤噴射部30が消火剤を噴射する。又、この消火剤噴射ステップS5においては、消火目標地点特定ステップS4で特定された、実際の監視対象領域を構成する3次元空間内における「火又は煙」の位置である「消火目標地点」の3次元位置ベクトルを入力値として、噴射された消火剤が消火目標地点に到達することができるように前記消火剤の噴射条件が自動的に決定される。
【0080】
例えば、
図9に示す背景画像の撮影範囲が監視対象領域であり、同領域の天井部に消火剤噴射部30として、
図7に示すように、消火剤の噴射方向を任意の方向に変動可能な噴射方向制御機構を有する噴射機31が1機設置されている場合において、常設物Mの上面fpにおいて火fが発生した場合であれば、本発明の消火方法においては、先ず、火災発生検知ステップS3において、背景画像中に火fが現れた状態の画像、即ち、
図10に示す監視画像から、火fが画像認識処理によって検出される。続いて、消火目標地点特定ステップS4において、当該火fの発生位置fpが消火目標地点とされ、その3次元位置ベクトルが特定される。そして、消火剤噴射ステップS5において、消火目標地点の3次元位置ベクトルが噴射方向制御機構へ入力され、同機構による制御によって、噴射機31の噴射口の方向が正確に火fの発生位置fp(消火目標地点)に向けられた後、速やかに、消火剤が火fに向けて噴射されることにより、初期消火が行われる。
【0081】
上述した通り、消火目標地点特定ステップS4において、「火」又は「煙」の大きさが算出されている場合には、この大きさに基づいて、消火剤の噴射量を消火に必要な最適量に調整することもできる。
【0082】
このように、本発明の消火システム・消火方法によれば、火災発生時に行われる初期消火の段階において、自動的に適切な態様で消火を実行して、火災の発生を高い確率で防止することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 消火システム
10 撮影部
11 監視カメラ
20 演算処理部
21 座標設定部
22 火災発生検知部
23 消火目標地点特定部
30 消火剤噴射部
31(31A、31B、31C、31D、31E) 噴射機
501 床面
502 壁面
503 常設物(什器)
S1 座標設定ステップ
S2 監視撮影ステップ
S3 火災発生検知ステップ
S4 消火目標地点特定ステップ
S5 消火剤噴射ステップ
【手続補正書】
【提出日】2022-01-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象領域内で火災が発生した場合に自動的に初期消火を行う消火システムであって、
監視対象領域を構成する3次元空間を2次元の監視画像として撮影する、撮影部と、
前記監視対象領域を構成する3次元空間の2次元画像であって、前記監視対象領域を構成する3次元空間の底面と常設物とから構成される背景画像内に、当該背景画像の平面内における各点の位置を実際の前記監視対象領域を構成する3次元空間内での位置に対応させる3次元位置ベクトルの集合である3次元座標を設定する、座標設定部と、
前記撮影部が撮影した前記監視画像から画像認識処理によって火又は煙の発生を検出する、火災発生検知部と、
前記火災発生検知部が検出した前記火又は前記煙の前記背景画像の前記3次元座標中における位置に基づいて、実際の前記監視対象領域を構成する3次元空間内における前記火又は前記煙の位置である消火目標地点の前記3次元位置ベクトルを決定すし、更に、前記火又は前記煙の外縁の前記3次元位置ベクトルに基づいて、前記3次元空間内における前記火又は前記煙の大きさも算出する、消火目標地点特定部と、
前記火災発生検知部が前記火又は前記煙の発生を検出したときに、消火剤を噴射する消火剤噴射部と、を備え、
前記消火剤噴射部においては、前記消火目標地点の前記3次元位置ベクトルに基づいて、噴射された前記消火剤が前記消火目標地点に到達するように、前記消火剤の噴射条件が自動的に決定され、前記消火剤の噴射量については、前記消火目標地点特定部が算出した前記火又は前記煙の大きさに基づいて決定される、
消火システム。
【請求項2】
前記消火剤噴射部は、前記撮影部とは異なる位置に設置されている少なくとも1機以上の噴射機からなり、
前記噴射機は、前記消火剤の噴射方向を任意の方向に変動可能な噴射方向制御機構を有し、前記消火目標地点の前記3次元位置ベクトルに基づいて、前記消火剤の前記噴射方向が自動的に決定される、
請求項1に記載の消火システム。
【請求項3】
前記消火剤噴射部は、前記監視対象領域を構成する3次元空間のそれぞれ異なる部分領域に前記消火剤を到達させることができるように複数の噴射機が分散配置されている、噴射機群からなり、
前記噴射機群は、前記消火目標地点の前記3次元位置ベクトルに基づいて、複数の前記噴射機のうちから前記消火目標地点に前記消火剤を到達させることができる前記噴射機を選択して、選択された該噴射機から前記消火剤を噴射する、
請求項1に記載の消火システム。
【請求項4】
前記火災発生検知部は、多層式ニューラルネットワークを有する機械学習型の画像認識装置を備え、
前記多層式ニューラルネットワークは、前記背景画像に火及び/又は煙のサンプル画像を画像合成して作成された火災発生シミュレーション画像を、教師データとして入力してディープラーニングによって学習させた、学習済多層式ニューラルネットワークである、
請求項1から3の何れかに記載の消火システム。
【請求項5】
監視対象領域内で火災が発生した場合に自動的に初期消火を行う消火方法であって、
座標設定部が、前記監視対象領域を構成する3次元空間の2次元画像であって、前記監視対象領域を構成する3次元空間の底面と常設物とから構成される背景画像内に、当該背景画像の平面内における各点の位置を実際の前記監視対象領域を構成する3次元空間内での位置に対応させる3次元位置ベクトルの集合である3次元座標を設定する、座標設定ステップと、
撮影部が、前記監視対象領域を構成する3次元空間を2次元画像として撮影する監視撮影ステップと、
火災発生検知部が、前記監視撮影ステップにおいて撮影された前記監視対象領域を構成する3次元空間の2次元画像である監視画像から画像認識処理によって火又は煙の発生を検出する、火災発生検知ステップと、
消火目標地点特定部が、前記火災発生検知ステップにおいて検出された前記火又は前記煙の前記背景画像の前記3次元座標中における位置に基づいて、実際の前記監視対象領域を構成する3次元空間内における前記火又は前記煙の位置である消火目標地点の前記3次元位置ベクトルを決定し、更に、前記火又は前記煙の外縁の前記3次元位置ベクトルに基づいて、前記3次元空間内における前記火又は前記煙の大きさも算出する、消火目標地点特定ステップと、
消火剤噴射部が、前記火災発生検知ステップにおいて前記火又は前記煙の発生が検出されたときに、消火剤を噴射する、消火剤噴射ステップと、
を備え、
前記消火剤噴射ステップにおいては、前記消火目標地点の前記3次元位置ベクトルに基づいて、噴射された前記消火剤が前記消火目標地点に到達するように前記消火剤の噴射条件が自動的に決定され、前記消火剤の噴射量については、前記消火目標地点特定ステップにおいて消火目標地点特定部が算出した前記火又は前記煙の大きさに基づいて決定される、
消火方法。
【請求項6】
前記消火剤噴射部は、前記撮影部とは異なる位置に設置されている少なくとも1機以上の噴射機からなり、
前記噴射機は、前記消火剤の噴射方向を任意の方向に変動可能な噴射方向制御機構を有し、
前記消火剤噴射ステップにおいて、前記消火目標地点の前記3次元位置ベクトルに基づいて、前記噴射方向が自動的に決定される、
請求項5に記載の消火方法。
【請求項7】
前記消火剤噴射部は、前記監視対象領域を構成する3次元空間のそれぞれ異なる部分領域に前記消火剤を到達させることができるように複数の噴射機が分散配置されている、噴射機群からなり、
前記消火剤噴射ステップにおいて、前記噴射機群は、前記消火目標地点の前記3次元位置ベクトルに基づいて、複数の前記噴射機のうちから前記消火目標地点に前記消火剤を到達させることができる前記噴射機が選択されて、選択された該噴射機から前記消火剤を噴射する、
請求項5に記載の消火方法。
【請求項8】
前記火災発生検知部は、多層式ニューラルネットワークを有する機械学習型の画像認識装置を備え、
前記多層式ニューラルネットワークは、前記背景画像に火及び/又は煙のサンプル画像を画像合成して作成された火災発生シミュレーション画像を、教師データとして入力してディープラーニングによって学習させた、学習済多層式ニューラルネットワークである、
請求項5から7の何れかに記載の消火方法。
【請求項9】
請求項5から8の何れかに記載の消火方法において、前記監視撮影ステップ、前記座標設定ステップ、前記火災発生検知ステップ、前記消火目標地点特定ステップ、及び、前記消火剤噴射ステップを、実行させる消火システム用のプログラム。