(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097537
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】OA用ローラ
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20230703BHJP
F16C 13/00 20060101ALI20230703BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20230703BHJP
G03G 15/02 20060101ALI20230703BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20230703BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20230703BHJP
B65H 5/06 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
G03G15/16 103
F16C13/00 B
F16C13/00 A
G03G15/00 551
G03G15/02 101
G03G15/08 235
G03G15/08 221
G03G15/20 515
B65H5/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213716
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100110227
【弁理士】
【氏名又は名称】畠山 文夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 右弥
【テーマコード(参考)】
2H033
2H077
2H171
2H200
3F049
3J103
【Fターム(参考)】
2H033AA25
2H033BB02
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2H033BB12
2H033BB14
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3J103HA60
(57)【要約】
【課題】紫外線を吸収する顔料を含む基材層と、紫外線硬化型エラストマーを含むエラストマー層とを備えたOA用ローラにおいて、基材層とエラストマー層との界面における接着不良を抑制すること。
【解決手段】OA用ローラ10は、導電性のシャフト12と、シャフト12の外周面に形成された基材層14と、基材層14の外周面に形成されたプライマー層16と、プライマー層16の外周面に形成されたエラストマー層18とを備えている。基材層14は、発泡樹脂と、発泡樹脂内に分散している紫外線を吸収する顔料とを含む。プライマー層16は、非紫外線硬化型エラストマーを含む。エラストマー層18は、紫外線硬化型エラストマーを含む。基材層14は、イオン導電剤Aをさらに含んでいても良い。エラストマー層18は、イオン導電剤Bをさらに含んでいても良い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性のシャフトと、
前記シャフトの外周面に形成された基材層と、
前記基材層の外周面に形成されたプライマー層と、
前記プライマー層の外周面に形成されたエラストマー層と
を備え、
前記基材層は、発泡樹脂と、前記発泡樹脂内に分散している紫外線を吸収する顔料とを含み、
前記プライマー層は、非紫外線硬化型エラストマーを含み、
前記エラストマー層は、紫外線硬化型エラストマーを含む
OA用ローラ。
【請求項2】
前記発泡樹脂は、発泡ポリウレタンである請求項1に記載のOA用ローラ。
【請求項3】
前記顔料は、カーボンである請求項1又は2に記載のOA用ローラ。
【請求項4】
前記基材層は、イオン導電剤Aをさらに含む請求項1から3までのいずれか1項に記載のOA用ローラ。
【請求項5】
前記プライマー層は、ポリウレタン系エラストマーを含む請求項1から4までのいずれか1項に記載のOA用ローラ。
【請求項6】
前記エラストマー層は、
アリル基、ビニルエーテル基、又は、アクリレート基を末端官能基として有するウレタンプレポリマーと、チオール基を有するポリチオールとを含む原料を前記プライマー層の表面に塗布し、
前記原料からなる塗膜に紫外線を照射し、エンチオール反応を生じさせる
ことにより得られたエラストマーを含む請求項1から5までのいずれか1項に記載のOA用ローラ。
【請求項7】
前記エラストマー層は、イオン導電剤Bをさらに含む請求項1から6までのいずれか1項に記載のOA用ローラ。
【請求項8】
前記エラストマー層の厚さは、0.5mm以上5.0mm以下である請求項1から7までのいずれか1項に記載のOA用ローラ。
【請求項9】
前記プライマー層の厚さは、0mm超0.8mm以下である請求項1から8までのいずれか1項に記載のOA用ローラ。
【請求項10】
体積抵抗率が3(logΩ)以上10(logΩ)以下である請求項1から9までのいずれか1項に記載のOA用ローラ。
【請求項11】
前記OA用ローラは、転写ローラ、帯電ローラ、トナー供給ローラ、現像ローラ、定着ローラ、給紙ローラ、又は、排紙ローラである請求項1から10までのいずれか1項に記載のOA用ローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OA用ローラに関し、さらに詳しくは、複写機、ファクシミリ、レーザープリンタ等の各種OA機器に用いられるOA用ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成は、一般に、
(a)帯電ローラを用いて有機感光体(OPC)ドラムの表面を均一に帯電させ、
(b)帯電したOPCドラムにレーザーを照射し、照射領域の帯電をキャンセルすることにより、OPCドラムの表面に静電潜像を作り、
(c)現像ローラを用いてOPCドラムの表面にトナーを静電付着(現像)させ、
(d)転写ローラを用いてトナーをOPCドラムの表面から紙の表面に転写し、
(e)定着ローラを用いてトナーを紙に定着させる
ことにより行われる。
【0003】
このように、電子写真方式を用いた画像形成装置には、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、定着ローラなどの各種ローラ(以下、これらを総称して「OA用ローラ」ともいう)が用いられている。
OA用ローラは、一般に、金属シャフトと、金属シャフトの表面に形成された弾性層とを備えている。弾性層は、一般に、低硬度の高分子弾性フォームからなる。弾性層の表面には、所定の特性を有する他の層が形成されることもある。例えば、ローラ表面が低硬度の高分子弾性フォームからなる場合、ローラ表面にトナーが付着し、トナーフィルミング(感光体ドラム表面にトナーが薄く付着する現象)の原因となることがある。このような場合、弾性層の表面に摩擦係数を下げるためのソリッド層が形成される場合がある。
【0004】
このようなOA用ローラ及びその製造方法に関し、従来から種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、
(a)金属製シャフトの表面に発泡層及びスキン層からなる弾性層を形成し、
(b)スキン層の表面に紫外線硬化型樹脂組成物を厚み100μmとなるように塗布し、
(c)塗膜に紫外線を照射することにより硬化させ、ソリッド層を形成する
発泡体ローラの製造方法が開示されている。
【0005】
同文献には、
(A)溶剤系塗料又は水系塗料を塗布し、熱風で乾燥させることによりソリッド層を形成する場合、長い乾燥ラインを必要とし、ソリッド層の品質も安定しない点、及び、
(B)紫外線硬化型樹脂組成物を用いてソリッド層を形成すると、長い乾燥ラインを必要とせず、かつ、品質も安定化する点
が記載されている。
【0006】
特許文献2には、シャフトの外周面に発泡樹脂層を形成し、発泡樹脂層の外周面に網状の樹脂層を形成することにより得られる画像形成装置用ローラが開示されている。
同文献には、このような画像形成装置用ローラをクリーニングローラとして用いると、清掃対象部に付着しているトナーの掻き取り性が向上する点が記載されている。
【0007】
特許文献3には、
(a)シャフトの外周面に紫外線硬化樹脂からなる接着剤を塗布し、
(b)紫外線を透過する材料からなる円筒状の弾性体の貫通孔にシャフトを挿通し、
(c)弾性体の外面に紫外線を照射し、接着剤を硬化させる
ことにより得られるローラが開示されている。
同文献には、このような方法を用いると、弾性体とシャフトの接着に必要な作業を簡略化することができる点が記載されている。
【0008】
さらに、特許文献4には、
(a)アリル基、ビニルエーテル基、又はアクリレート基を末端官能基として有するウレタンプレポリマー、ポリチオール、及び導電剤を含む組成物を調製し、
(b)金属製シャフトの表面に上記組成物を1mmの厚さで塗布し、
(c)塗膜の表面に紫外線を照射し、塗膜を硬化させ、
(d)円筒研磨機を用いて、硬化した塗膜の表面を研磨し、金属製シャフトの表面に厚さ0.5mmの弾性層を形成する
ことにより得られる帯電ローラが開示されている。
同文献には、このような方法により、アクリル系の配合原料を用いることなく、弾性層を形成することができる点が記載されている。
【0009】
OA用ローラの中でも、転写ローラ、現像ローラ、帯電ローラ等には、導電性が要求される。金属製シャフトの表面に形成される弾性層(基材層)が発泡樹脂のみからなる場合、導電性が不足するため、弾性層には、通常、導電剤が添加される。また、弾性層の最表面が発泡樹脂からなる場合、気孔部分において静電気力が不足するために、トナーが部分的に転写されず、画像の一部が欠落する現象(中抜け現象)が発生することがある。そのため、発泡樹脂からなる弾性層(基材層)の最表面に、気孔を含まない表面層(エラストマー層)を形成することが行われている。
【0010】
基材層の表面にエラストマー層を形成する場合において、エラストマー層として紫外線硬化型エラストマーを用いると、エラストマー層を短時間で形成することができる。しかしながら、基材層に含まれる導電剤がカーボンなどの紫外線を吸収する顔料である場合において、エラストマー層として紫外線硬化型エラストマーを用いると、基材層とエラストマー層との界面で硬化不良が発生し、十分な接着強度を確保できないという問題がある。
一方、この問題を解決するために、エラストマー層として熱硬化型エラストマー、湿気硬化型エラストマー等の非紫外線硬化型エラストマーを用いると、硬化に時間がかかるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002-310136号公報
【特許文献2】特開2018-077268号公報
【特許文献3】特開2021-025639号公報
【特許文献4】特許第6847599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする課題は、紫外線を吸収する顔料を含む基材層と、紫外線硬化型エラストマーを含むエラストマー層とを備えたOA用ローラにおいて、基材層とエラストマー層との界面における接着不良を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明に係るOA用ローラは、
導電性のシャフトと、
前記シャフトの外周面に形成された基材層と、
前記基材層の外周面に形成されたプライマー層と、
前記プライマー層の外周面に形成されたエラストマー層と
を備え、
前記基材層は、発泡樹脂と、前記発泡樹脂内に分散している紫外線を吸収する顔料とを含み、
前記プライマー層は、非紫外線硬化型エラストマーを含み、
前記エラストマー層は、紫外線硬化型エラストマーを含む。
【発明の効果】
【0014】
紫外線を吸収する顔料と、発泡樹脂とを含む基材層の外周面に、直接、紫外線硬化型エラストマーの原料を塗布し、塗膜に紫外線を照射した場合、基材層とエラストマー層との界面近傍において、原料の硬化不良が発生する。これは、基材層とエラストマー層との界面近傍において、顔料が紫外線を吸収し、又は、顔料が紫外線を遮蔽するために、界面近傍にある原料に十分な量の紫外線が照射されないためと考えられる。
【0015】
これに対し、紫外線を吸収する顔料と、発泡樹脂とを含む基材層の外周面に紫外線硬化型エラストマーを含むエラストマー層を形成する場合において、基材層とエラストマー層との間にプライマー層を介在させると、紫外線硬化型エラストマーの原料の硬化不良が抑制される。これは、基材層の外周面にプライマー層を形成することにより、プライマー層とエラストマー層との界面近傍において、顔料による紫外線の吸収又は遮蔽が抑制されるためと考えられる。さらに、エラストマー層及びプライマー層の全体を熱硬化型エラストマー、湿気硬化型エラストマー等の非紫外線硬化型エラストマーを用いて作製する場合に比べて、硬化時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係るOA用ローラの正面図(左図)及びそのA-A’線断面図(右図)である。
【
図2】従来のOA用ローラの製造方法の模式図である。
【
図3】本発明に係るOA用ローラの製造方法の模式図である。
【0017】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. OA用ローラ]
図1に、本発明に係るOA用ローラの正面図(左図)及びそのA-A’線断面図(右図)を示す。
図1において、OA用ローラ10は、
導電性のシャフト12と、
シャフト12の外周面に形成された基材層14と、
基材層14の外周面に形成されたプライマー層16と、
プライマー層16の外周面に形成されたエラストマー層18と
を備えている。
エラストマー層18の表面には、さらにOC層(図示せず)が形成されていても良い。
【0018】
[1.1. シャフト]
シャフト12は、導電性を有する材料からなる。シャフト12の材料は、導電性を有するものである限りにおいて、特に限定されない。シャフト12の材料としては、例えば、
(a)ステンレス鋼、アルミニウム合金、銅合金、マグネシウム合金などの金属、
(b)樹脂からなるマトリックス中に導電剤を分散させた複合材料、
(c)樹脂の表面に導電性被膜を形成した複合材料
などがある。
特に、シャフト12は、金属シャフトが好ましい。これは、金属シャフトは、他の材料からなるシャフトに比べて、導電性及び強度が高く、かつ、低コストであるためである。
【0019】
シャフト12の直径及び長さは、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。シャフト12は、中実のシャフトであっても良く、あるいは、中空のシャフトであっても良い。
【0020】
[1.2. 基材層]
シャフト12の外周面には、基材層14が形成されている。本発明において、基材層14は、発泡樹脂と、発泡樹脂内に分散している紫外線を吸収する顔料とを含む。基材層14は、発泡樹脂及び顔料のみからなるものでも良く、あるいは、これらに加えて、イオン導電剤Aをさらに含むものでも良い。
【0021】
[1.2.1. 材料]
[A. 発泡樹脂]
本発明において、発泡樹脂の種類は、特に限定されない。発泡樹脂の材料としては、例えば、ポリウレタン、シリコーンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ポリノルボルネンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)などがある。
【0022】
これらの中でも、発泡樹脂は、発泡ポリウレタンが好ましい。OA用ローラ10は、使用中に対象物との接触及び対象物からの離脱を高速で繰り返し、それに応じて変形及び復元を繰り返す。この時、OA用ローラ10の表面の復元力が弱いと、表面が凹んだ状態のままOA用ローラ10と次の対象物とが接触するために、画像に横方向の白筋や色ムラが発生する場合がある。発泡ポリウレタンは、他の材料に比べて復元力が大きいので、このような白筋や色ムラが発生しにくいという利点がある。また、発泡ポリウレタンは、耐摩耗性に優れているという利点もある。
【0023】
本発明において、発泡樹脂の密度は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。一般に、密度が小さくなりすぎると、基材層14の表面に液体状のプライマー原料を塗布したときに、基材層14の表面にプライマー原料を保持するのが困難となる場合がある。従って、密度は、35kg/m3以上が好ましい。
一方、密度が大きくなりすぎると、発泡樹脂を製造するのが困難となる場合がある。従って、密度は、800kg/m3以下が好ましい。密度は、さらに好ましくは、720kg/m3以下である。
なお、本発明において、「基材層14の密度」とは、顔料、及び、必要に応じて添加されるイオン導電剤Aを含む発泡樹脂の密度をいう。
【0024】
発泡樹脂に含まれる気泡は、独立気泡が好ましい。これは、基材層14の表面にプライマー層16を形成する場合において、プライマー層16の原料が発泡樹脂の内部まで浸み込みづらいためである。
さらに、基材層14の表面は、凹凸が小さいことが好ましい。これは、基材層14の表面の凹凸が小さくなるほど、基材層14の表面の凹部をプライマーで埋めることが容易となるためである。
【0025】
[B. 顔料]
基材層14は、発泡樹脂内に分散している顔料を含む。
「顔料が発泡樹脂内に分散している」とは、
(a)発泡樹脂を構成する高分子鎖の隙間に顔料が充填されていること、及び/又は、
(b)発泡樹脂の気泡内に顔料が充填されていること
をいう。
【0026】
顔料は、主として、基材層14を所望の色に着色し、発泡樹脂の変色(黄変)を目立たないようにするため、及び、基材層14の導電性を制御するために添加される。本発明において、顔料は、紫外線を吸収する材料からなる。顔料は、高い導電性を有する材料であっても良く、あるいは、高い導電性を有しない材料であっても良い。
顔料としては、例えば、
(a)カーボン、
(b)アルミニウム、銅、ニッケル等の金属粉末、
(c)酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物粉末、
などがある。
特に、顔料は、カーボンが好ましい。これは、基材層14が黒く着色されるために黄変が目立ちにくくなり、かつ、基材層14の導電性を比較的容易に制御できるためである。
【0027】
カーボンには、形状や導電性の異なる種々の材料がある。カーボンとしては、例えば、
(a)アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのストラクチャーが大きいカーボンブラックであって、基材層14の導電性を高める機能が大きいもの(以下、これらを総称して「導電性カーボン」ともいう)、
(b)ファーネスブラックなどのストラクチャーが小さいカーボンブラックであって、基材層14の導電性を高める機能が小さいもの(以下、これらを総称して「顔料カーボン」ともいう)、
(c)グラファイト粉末、
(d)カーボンファイバー
などがある。
【0028】
[C. イオン導電剤A]
OA用ローラ10を例えば転写ローラとして使用する場合、基材層14、プライマー層16及びエラストマー層18には、所定の導電性が必要となる。基材層14への顔料の添加、並びに、プライマー層16及びエラストマー層18の最適化(各層の厚さの最適化を含む)のみによりOA用ローラ10に必要とされる導電性が得られる場合、イオン導電剤Aは、必ずしも必要ではない。一方、基材層14への顔料の添加、並びに、プライマー層16及びエラストマー層18の最適化のみによりOA用ローラ10に必要とされる導電性が得られない場合、基材層14にイオン導電剤Aを添加するのが好ましい。
【0029】
本発明において、基材層14に添加されるイオン導電剤Aの材料は、特に限定されない。イオン導電剤Aとしては、例えば、
(a)テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム(例えば、ステアリルトリメチルアンモニウム)、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウムなどの過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エチル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩などのアンモニウム塩、
(b)リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルホン酸塩、
(c)カチオン種にイミダゾリウム系イオン、ピリジニウム系イオン、ピロリジニウム系イオン、ピペリジニウム系イオン、フォスホニウム系イオンを持ち、
アニオン種に塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン系イオン、テトラフルオロホウ素酸イオンなどのホウ素酸系イオン、ヘキサフルオロリン酸イオンなどのリン酸系イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオンなどの硫酸系イオンを持つ塩
などがある。
【0030】
[1.2.2. 含有量]
基材層14に含まれる顔料の含有量は、特に限定されるものではなく、顔料の種類、イオン導電剤Aの有無、OA用ローラ10の用途などに応じて最適な含有量を選択することができる。
同様に、基材層14がイオン導電剤Aを含む場合、イオン導電剤Aの含有量は、特に限定されるものではなく、顔料の種類、OA用ローラ10の用途などに応じて最適な含有量を選択することができる。
【0031】
一般に、顔料の含有量が少なくなりすぎると、黄変が目立ちやすくなり、あるいは、目的とする導電性が得られない場合がある。従って、顔料の含有量は、0.4mass%以上が好ましい。
一方、顔料の含有量が過剰になると、これを含む原料の粘度が過度に増大し、基材層14の製造が困難となる場合がある。また、顔料の含有量が過剰になると、基材層14が脆くなる場合がある。従って、顔料の含有量は、19.6mass%以下が好ましい。
【0032】
イオン導電剤Aの含有量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な含有量を選択することができる。一般に、イオン導電剤Aの含有量が多くなるほど、高い導電率が得られる。一方、イオン導電剤Aの含有量が過剰になると、基材層14の機械物性が低下する場合がある。イオン伝導材Aの含有量は、具体的には、0.01mass%以上10.0mass%以下が好ましい。
【0033】
[1.2.3. 厚さ]
基材層14の厚さは、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な厚さを選択することができる。基材層14の厚さは、通常、1mm~10mm程度である。
【0034】
[1.3. プライマー層]
基材層14の外周面には、プライマー層16が形成されている。プライマー層16は、エラストマー層18の硬化不良を抑制するために、基材層14とエラストマー層18との間に挿入される。
【0035】
[1.3.1. 材料]
本発明において、プライマー層16は、非紫外線硬化型エラストマーを含む。「非紫外線硬化型エラストマー」とは、紫外線を照射させることなく硬化させることが可能なエラストマーをいう。
【0036】
非紫外線硬化型エラストマーとしては、例えば、
(a)ポリウレタン系エラストマー、アクリル系エラストマー、スチレン系エラストマーなどの熱硬化型・溶剤揮発型エラストマー、
(b)アクリル系、エチレン酢酸ビニル系、ウレタン系、エポキシ系などの下塗り用塗料
などがある。
プライマー層16の材料は、特に、ポリウレタン系エラストマーが好ましい。これは、ポリウレタン系エラストマーのガラス転移温度及び粘弾性の温度依存性が基材層14やエラストマー層18に用いられる材料のそれらに近くなる場合があるためである。
【0037】
プライマー層16の材料は、未硬化状態のエラストマー層18の材料と基材層14との接触を防ぐことができる限りにおいて、非紫外線硬化型エラストマーのみからなるものでも良く、あるいは、それ以外の成分が含まれていても良い。他の成分としては、例えば、金属粉末やイオン導電剤などの導電性を付与する材料であって、紫外線を吸収しないものがある。
【0038】
但し、プライマー層16は、紫外線を吸収する顔料を含まないことが必要である。これは、プライマー層16が紫外線を吸収する顔料を含んでいる場合、エラストマー層18の原料を紫外線により硬化させるのが困難となるためである。
なお、プライマー層16は、発泡している材料でも良く、あるいは、発泡していない材料でも良い。但し、プライマー層16が発泡している材料である場合において、プライマー層16の気泡内にエラストマー層18の原料が浸み込み、エラストマー層18の原料が基材層14と接触した時には、原料の硬化が不十分となる場合がある。このような原料の浸み込みを抑制するためには、プライマー層16は、発泡していない材料が好ましい。
【0039】
[1.3.2. 厚さ]
プライマー層16は、後述するように、プライマー層16の原料を基材層14の表面に塗布し、塗膜を硬化させることにより形成される。この場合、基材層14は、気泡を含むので、基材層14の気泡内にプライマー層16の原料の一部が浸み込み、気泡内において原料が硬化する場合がある。
本発明において、「プライマー層16の厚さ」とは、基材層14の最表面からプライマー層16の最表面までの距離をいい、基材層14の気泡内にプライマー層16の原料が浸み込み、硬化した領域の厚さを含まない。
【0040】
プライマー層16の厚さは、OA用ローラ10の性能やコストに影響を与える。プライマー層16の厚さが薄くなりすぎると、エラストマー層18を形成する際に、硬化不良が生じる場合がある。従って、プライマー層16の厚さは、0mm超が好ましい。厚さは、さらに好ましくは、0.2mm以上である。
一方、プライマー層16の厚さが厚くなりすぎると、プライマー層16の硬化処理に長時間を要し、製造コストが増大する場合がある。従って、プライマー層16の厚さは、0.8mm以下が好ましい。
【0041】
[1.4. エラストマー層]
プライマー層16の外周面には、エラストマー層18が形成されている。エラストマー層18は、基材層14の凹凸に起因する静電気力の不足を抑制するために形成される。本発明において、エラストマー層18は、紫外線硬化型エラストマーを含む。エラストマー層18は、紫外線硬化型エラストマーのみからなるものでも良く、あるいは、これに加えて、イオン導電剤Bをさらに含むものでも良い。
【0042】
[1.4.1. 材料]
[A. 紫外線硬化型エラストマー]
エラストマー層18は、紫外線硬化型エラストマーを含む。紫外線硬化型エラストマーは、紫外線を用いて硬化させることが可能なものである限りにおいて、特に限定されない。紫外線硬化型エラストマーは、相対的に高い導電性を示すものと、相対的に低い導電性を示すものとがある。エラストマー層18の材料には、いずれを用いても良い。
【0043】
エラストマー層18は、特に、
アリル基、ビニルエーテル基、又は、アクリレート基を末端官能基として有するウレタンプレポリマーと、チオール基を有するポリチオールとを含む原料を前記プライマー層の表面に塗布し、
前記原料からなる塗膜に紫外線を照射し、エンチオール反応を生じさせる
ことにより得られたエラストマーを含むものが好ましい。
アリル基等とチオール基との反応を効果的に行うためには、原料中に光重合開始剤を添加するのが好ましい。
このような方法により得られるエラストマー層18は、非紫外線硬化型のエラストマーと比較して、硬化のための設備のコストが安価である、硬化のための設備を小型化することができる、硬化に要する時間を短縮することができる、などの利点がある。
【0044】
上記以外のエラストマー層18の材料としては、例えば、(メタ)アクリレートオリゴマーと紫外線重合開始剤とを含む組成物などがある。
【0045】
[B. イオン伝導材B]
上述したように、OA用ローラ10を例えば転写ローラに適用する場合、基材層14、プライマー層16及びエラストマー層18には、所定の導電性が必要となる。エラストマー層18を構成する紫外線硬化型エラストマーの材料の最適化、並びに、基材層14及びプライマー層16の最適化(各層の厚さの最適化を含む)のみによりOA用ローラ10に必要とされる導電性が得られる場合、イオン導電剤Bは、必ずしも必要ではない。一方、紫外線硬化型エラストマーの材料の最適化、並びに、基材層14及びプライマー層16の最適化のみによりOA用ローラ10に必要とされる導電性が得られない場合、エラストマー層18にイオン導電剤Bを添加するのが好ましい。
【0046】
本発明において、エラストマー層18に添加されるイオン導電剤Bの材料は、特に限定されない。基材層14がイオン伝導材Aを含む場合、イオン伝導材Bは、イオン伝導材Aと同一の材料であっても良く、あるいは、異なる材料であっても良い。イオン伝導材Bに関するその他の点については、イオン導電剤Aと同様であるので、説明を省略する。
【0047】
[1.4.2. 含有量]
エラストマー層18がイオン導電剤Bを含む場合、イオン導電剤Bの含有量は、特に限定されるものではなく、紫外線硬化型エラストマーの種類、OA用ローラ10の用途などに応じて最適な含有量を選択することができる。
【0048】
一般に、イオン導電剤Bの含有量が少なくなりすぎると、導電性が低下する場合がある。従って、イオン導電剤Bの含有量は、0.05mass%以上が好ましい。
一方、イオン導電剤Bの含有量が過剰になると、エラストマー層18の機械物性が低下する場合がある。従って、イオン導電剤Bの含有量は、10.0mass%以下が好ましい。
【0049】
[1.4.3. 厚さ]
エラストマー層18の厚さは、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な厚さを選択することができる。一般に、エラストマー層18の厚さが薄くなりすぎると、エラストマー層18を硬化させた後、エラストマー層18の表面を研磨加工する際に、エラストマー層18が剥離する場合がある。従って、エラストマー層18の厚さは、0.5mm以上が好ましい。
一方、エラストマー層18の厚さを必要以上に厚くしても、効果に差が無く、実益がない。従って、エラストマー層18の厚さは、5.0mm以下が好ましい。厚さは、さらに好ましくは、4.0mm以下である。
【0050】
[1.5. OC層]
エラストマー層18の表面には、さらにOC層(図示せず)が形成されていても良い。ここで、「OC層」とは、OA用ローラ10に防汚性を持たせることを目的として、エラストマー層18の表面に形成される層(表面塗装層)をいう。
OC層の材料は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な材料を用いることができる。OC層の材料としては、例えば、水系のウレタン塗料などがある。
また、OC層の厚さは、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な厚さを選択することができる。OC層の厚さは、具体的には、0.5μm~40μmが好ましい。
【0051】
[1.6. OA用ローラの導電性(体積抵抗率)]
「体積抵抗率」とは、温度:22℃±3℃、相対湿度:55%±5%、電圧:100Vの条件下でシャフト12-OA用ローラ10の最表面間に電流を流した場合において、シャフト12-OA用ローラ10の最表面間に流れる電流値から算出される値をいう。
OA用ローラ10の体積抵抗率は、各層の組成や厚さにより制御することができる。
【0052】
OA用ローラ10の体積抵抗率は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な値を選択することができる。OA用ローラ10の体積抵抗率は、具体的には、3(logΩ)以上10(logΩ)以下が好ましい。
【0053】
[1.7. 用途]
本発明に係るOA用ローラ10は、種々の用途に用いることができる。本発明に係るOA用ローラ10は、例えば、転写ローラ、帯電ローラ、トナー供給ローラ、現像ローラ、定着ローラ、給紙ローラ、排紙ローラなどに用いることができる。
【0054】
[2. OA用ローラの製造方法]
本発明に係るOA用ローラ10は、
(a)シャフト12の外周面に基材層14を形成し、
(b)基材層14の外周面にプライマー層16を形成し、
(c)プライマー層16の外周面にエラストマー層18を形成し、
(d)必要に応じて、エラストマー層18の外周面にOC層をさらに形成する
ことにより製造することができる。
【0055】
[2.1. 第1工程]
まず、シャフト12の外周面に基材層14を形成する(第1工程)。本発明において、基材層14の形成方法は、特に限定されない。
基材層14の形成方法としては、例えば、
(a)発泡樹脂を含む筒状の発泡体を作製し、発泡体の貫通孔にシャフトを挿入し、発泡体とシャフトとを接着する方法、
(b)円筒形の型の中心にシャフトを立設し、型の内壁面とシャフトとの隙間に発泡樹脂の原料を流し込み、型内で原料を発泡及び硬化させる方法、
などがある。
【0056】
また、顔料及び/又はイオン導電剤Aを含む発泡体の製造方法としては、例えば、
(a)発泡樹脂の原料に予め顔料及び/又はイオン導電剤Aを添加し、原料を発泡及び硬化させる方法、
(b)顔料及びイオン導電剤Aを含まない発泡樹脂の原料を用いて発泡体を作製し、顔料及び/又はイオン導電剤Aを分散させた分散液に発泡体を浸漬し、発泡体を分散液から引き上げ、乾燥させる方法、
などがある。
【0057】
発泡樹脂を作製するための原料の組成は、特に限定されるものではなく、発泡樹脂の種類に応じて、最適な組成を選択することができる。
例えば、発泡樹脂が発泡ポリウレタンからなる場合、ポリオール、イソシアネート、整泡剤、樹脂化触媒、顔料、及び、イオン導電剤Aを所定の比率で配合した原料を用いるのが好ましい。このような原料に不活性ガスを吹き込みながらミキサで混合することにより機械発泡させ、硬化させると、所定量の顔料及びイオン導電剤Aを含む発泡ポリウレタンからなる発泡体を作製することができる。
【0058】
あるいは、ポリオール、イソシアネート、整泡剤、樹脂化触媒、発泡剤、発泡触媒、顔料、及び、イオン導電剤Aを所定の比率で配合した原料を用いても良い。このような原料を型に流し込み、所定の温度に加熱すると、発泡及び硬化が生じ、所定量の顔料及び/又はイオン導電剤Aを含む発泡ポリウレタンからなる発泡体を作製することができる。
【0059】
[2.2. 第2工程]
次に、基材層14の外周面にプライマー層16を形成する。本発明において、プライマー層16の形成方法は、特に限定されない。
プライマー層16の形成方法としては、例えば、
(a)溶媒可溶性のエラストマーを、水、有機溶媒などの溶媒に溶解させ、溶液を基材層14の表面に塗布し、塗膜を乾燥させる方法、
(b)低粘度の液体状のエラストマーを基材層14の表面に塗布し、熱、湿気などにより塗膜を硬化(付加硬化、縮合硬化)させる方法
などがある。
【0060】
[2.3. 第3工程]
次に、プライマー層16の外周面にエラストマー層18を形成する。
エラストマー層18は、具体的には、
(a)紫外線硬化型エラストマーの原料をプライマー層18の表面に塗布し、
(b)塗膜に紫外線を照射し、硬化させる
ことにより作製することができる。
【0061】
エラストマー層18を形成するための原料の組成は、特に限定されるものではなく、紫外線硬化型エラストマーの種類に応じて、最適な組成を選択するのが好ましい。
例えば、エラストマー層18がウレタンプレポリマーとポリチオールとを光重合させることにより得られるエラストマーを含む場合、
(a)アリル基、ビニルエーテル基、又は、アクリレート基を末端官能基として有するウレタンプレポリマー、
(b)チオール基を有するポリチオール、
(c)光重合開始剤、及び、
(d)イオン導電剤B
を所定の比率で配合するのが好ましい。
このような原料をプライマー層16の表面に塗布し、塗膜に紫外線を照射し、硬化させると、エラストマー層18を形成することができる。
【0062】
この場合、アリル基、ビニルエーテル基、又は、アクリレート基を末端官能基として有するウレタンプレポリマーは、ポリオールとイソシアネートから合成されたウレタンプレポリマーに、アリル基、ビニルエーテル基、又は、アクリレート基を有する化合物を付加することにより製造することができる。
ポリチオールとしては、例えば、メルカプトカルボン酸と多価アルコールとのエステル、脂肪酸ポリチオール、芳香族ポリチオールなどがある。
光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、チオキサントン系化合物などがある。
これらを含む原料に紫外線を照射すると、ウレタンプレポリマーとポリチオールとがエンチオール反応を起こし、エラストマーが形成される。
硬化後、円筒研磨機を用いてエラストマー層の表面を研磨し、形状を整える。
【0063】
[4. 第4工程]
次に、必要に応じて、エラストマー層18の表面にOC層(表面塗装層)を形成する。OC層の形成方法は、特に限定されるものではなく、目的に応じて最適な方法を選択することができる。
【0064】
[3. 作用]
図2に、従来のOA用ローラの製造方法の模式図を示す。まず、
図2(A)に示すように、シャフト12の外周面に基材層14を形成する。基材層14は、発泡樹脂14a内に、紫外線を吸収する顔料14bが分散しているものからなる。
次に、
図2(B)に示すように、基材層14の外周面に、直接、紫外線硬化型エラストマーの原料18aを塗布する。基材層14は、発泡樹脂14aを含むので、原料18aの一部は基材層14に浸み込む。
【0065】
この状態から原料18aに紫外線を照射すると、基材層14の上部にある原料18aは紫外線により硬化してエラストマー層18となるが、基材層14とエラストマー層18との界面近傍において、原料18aの硬化不良が生じる。これは、基材層14とエラストマー層18との界面近傍において、顔料14bが紫外線を吸収し、又は、顔料14bが紫外線を遮蔽するために、界面近傍にある原料18aに十分な量の紫外線が照射されないためと考えられる。
【0066】
図3に、本発明に係るOA用ローラの製造方法の模式図を示す。まず、
図3(A)に示すように、シャフト12の外周面に基材層14を形成する。基材層14は、発泡樹脂14a内に紫外線を吸収する顔料14bが分散しているものからなる。
次に、
図3(B)に示すように、基材層14の外周面に、プライマー層の原料16aを塗布する。基材層14は、発泡樹脂14bを含むので、原料16aの一部は基材層14に浸み込む。原料16aを塗布後、溶媒を揮発させ、あるいは、熱又は湿気を作用させると、原料16aが硬化し、プライマー層16が形成される。
【0067】
さらに、
図3(C)に示すように、プライマー層16の外周面に、紫外線硬化型エラストマーの原料18aを塗布する。プライマー層16が実質的に気泡を含まないものである場合、あるいは、プライマー層16の厚さが十分に厚い場合、原料18aがプライマー層16及び基材層14に浸み込むことはない。
この状態から原料18aに紫外線を照射すると、原料18aは紫外線により硬化してエラストマー層18となる。
【0068】
本発明に係るOA用ローラ10は、紫外線を吸収する顔料14bと、発泡樹脂14aとを含む基材層14の外周面に紫外線硬化型エラストマーを含むエラストマー層18を形成する場合において、基材層14とエラストマー層18との間にプライマー層16を介在させている。そのため、紫外線硬化型エラストマーの原料18aの硬化不良が抑制される。これは、基材層14の外周面にプライマー層16を形成することにより、プライマー層16とエラストマー層18との界面近傍において、顔料14bによる紫外線の吸収又は遮蔽が抑制されるためと考えられる。さらに、エラストマー層18及びプライマー層16の全体を熱硬化型エラストマー、湿気硬化型エラストマー等の非紫外線硬化型エラストマーを用いて作製する場合に比べて、硬化時間を短縮することができる。
【実施例0069】
(実施例1~6、比較例1~7)
[1. 試料の作製]
[1.1. 実施例1~6、比較例1~6]
[1.1.1. 基材層の作製]
まず、基材層となる発泡体(スラブ)を作製した。次いで、発泡体をロール1本分の大きさの短冊(シャフトを挿入するための穴が形成されているもの)にカットした。接着剤を付けたシャフトを短冊の穴に挿入し、シャフトと短冊とを接着した。さらに、円筒研磨機を用いて短冊の外周面を研磨し、円筒形の基材層を得た。基材層となる発泡体には、発泡ポリウレタンを用いた。発泡体の作製方法の詳細は、以下の通りである。
【0070】
[A. ENDUR(機械発泡ポリウレタンフォーム)]
ポリオール、イソシアネート、整泡剤、及び、樹脂化触媒を所定の比率で混合した。この原料混合物に、必要に応じて、所定量の顔料及び/又はイオン伝導剤Aをさらに添加した。イオン伝導材Aには、テトラアルキルアンモニウムの過塩素酸塩を用いた。
原料混合物に不活性ガスを吹き込みながらミキサで混合することにより原料混合物を発泡及び硬化させ、発泡体((株)イノアックコーポレーション製、ENDUR相当)を得た。得られた発泡ポリウレタンの密度は12~50pcf(192kg/m3~800kg/m3)、アスカーC硬度は10~50°であった。また、円筒研磨後の基材層の厚みは、3.5~5.5mmであった。
【0071】
[B. UEM-55(スラブウレタンフォームA)]
ポリオール、イソシアネート、整泡剤、水(発泡剤)、樹脂化触媒、及び発泡触媒を所定の比率で混合した。この混合物に、必要に応じて、所定量のイオン伝導材Aをさらに添加した。原料混合物を金型に注入し、発泡させ、発泡体((株)イノアックコーポレーション製、UEM-55相当)を得た。イオン導電剤Aには、テトラアルキルアンモニウムの過塩素酸塩を用いた。
次に、一部の発泡体については、含浸法により顔料を添加した。すなわち、発泡体(スラブ)をシートとし、シートを裁ち加工し、さらに、シートにシャフトを挿入する穴を空けた後、顔料を水に分散させた分散液にシートを浸漬した。所定時間経過後、シートを分散液から引き上げ、乾燥させた。得られた発泡ポリウレタンの密度は50~75kg/m3、FP硬度は40~80°であった。また、円筒研磨後の基材層の厚みは、3.5~5.5mmであった。
【0072】
[C. EP-70(スラブウレタンフォームB)]
(株)イノアックコーポレーション製、EP-70のブロックを40mmにスライス加工した。次いで、得られたシートを幅40mm×長さ370mmに裁ち加工した。さらに、得られた短冊(40mm×40mm×370mm)の一方の端面(40mm×40mmの面)の中央から他方の端面の中央に向かって、φ13mmの穴を形成した。
次に、穴を空けた短冊を、顔料と顔料をウレタンに接着させる成分(バインダー)とを水に分散させた分散液に浸漬し、短冊の気泡内に分散液を含浸させた。その後、短冊を分散液から引き上げ、100℃以上の温度で乾燥させた。
次に、別途用意した金属シャフトにホットメルトを塗布し、これを短冊の穴に挿入した。次いで、シャフトが挿入された短冊を、ホットメルトが溶融する温度以上に加熱した。所定時間加熱後、シャフトが挿入された短冊を室温近傍まで冷却した。
さらに、円筒研磨機を用いて、短冊の外周面を研磨した。円筒研磨後の基材層の厚みは、3.5~5.5mmであった。
【0073】
[1.1.2. プライマー層の作製]
実施例1~6については、基材層の外周面にプライマー層を形成した。プライマー層の原料には、溶剤揮発型のウレタン系プライマー(東ソー(株)製、ニッポラン(登録商標)5230)を用いた。基材層の外周面に所定量のウレタン系プライマーを塗布し、乾燥させた。得られたプライマー層の厚みは、0.2~0.8mmであった。
【0074】
[1.1.3. エラストマー層の作製]
次に、プライマー層の外周面(実施例1~6)、又は、基材層の外周面(比較例1~6)にエラストマー層を形成した。エラストマー層には、紫外線硬化型ポリウレタンエラストマーを用いた。エラストマー層の作製方法の詳細は、以下の通りである。
【0075】
[A. SC-22(UV硬化型ポリウレタンエラストマーA)]
末端官能基としてメタクリル基を有するポリウレタンプレポリマー、イオン導電剤B、ポリチオール、及び、光重合開始剤を所定の比率で混合した。イオン導電剤Bの含有量は、硬化後のエラストマー層の総質量の3.0mass%に相当する量とした。ローラを回転させながら、ドクターブレードを用いてプライマー層の表面又は基材層の表面に原料を塗布し、紫外線を照射して硬化させた。硬化後、円筒研磨機で外周面を研磨し、厚さ2mmのエラストマー層を得た。
【0076】
ポリウレタンプレポリマーには、三井化学株式会社製AN-002と、東ソー株式会社製T-80とから合成されたプレポリマーを用いた。
イオン導電剤Bには、日油株式会社製エレガン LD-204を用いた。
ポリチオールには、SC有機化学株式会社製TMMPを用いた。
光重合開始剤には、IGM RESINS B.V.製OMNIRAD2959を用いた。
【0077】
[B. SC-23(UV硬化型ポリウレタンエラストマーB)]
イオン導電剤Bの含有量を1.0mass%とした以外は、SC-22と同様にして、エラストマー層を形成した。
【0078】
[C. SC-23改(UV硬化型ポリウレタンエラストマーC)]
イオン導電剤Bの含有量を0.1mass%とした以外は、SC-22と同様にして、エラストマー層を形成した。
【0079】
[1.1.4. OC層の作製]
エラストマー層を形成した後、エラストマー層の外周面にOC層(表面塗装)を形成した。OC層は、ヘンケルジャパン製、BONDERITE(登録商標) S-FN T-862A ANを膜厚が5~40μmとなるように塗布し、乾燥させることにより形成した。
【0080】
[1.2. 比較例7]
アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、エピクロロヒドリンゴム、顔料、発泡剤、架橋剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、及び、加工助剤を所定の比率で混合し、原料組成物を得た。得られた原料組成物を押出成形することにより、シャフトの表面に円筒状の成形体(以下、「基材層前駆体」ともいう)を付着させた。
これとは別に、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、加硫助剤、離型剤、加硫剤、加硫促進剤を所定の比率で混合し、原料組成物を得た。原料組成物を押出成形し、円筒状の成形体(以下、「エラストマー層前駆体」ともいう)を得た。
【0081】
円筒状のエラストマー層前駆体を、円筒状のロール成形用金型内にセットした。次いで、エラストマー層前駆体の中に、基材層前駆体が形成されたシャフトを挿入した。この状態でエラストマー層前駆体及び基材層前駆体を160℃で40分間加熱し、原料組成物を架橋及び発泡させた。
冷却後、金型から基材層及びエラストマー層付きシャフトを取り出した。次いで、エラストマー層の外周面を円筒研磨機で研磨し、厚さ2mmのエラストマー層を得た。
さらに、実施例1と同様にして、エラストマー層の表面にOC層を形成した。
【0082】
[2. 試験方法]
[2.1. 体積抵抗率]
基材層を形成した後のローラの体積抵抗率(以下、「基材層の体積抵抗率」ともいう)、エラストマー層を形成した後のローラの体積抵抗率(以下、「エラストマー層の体積抵抗」ともいう率)、及び、エラストマー層の表面にさらにOC層(表面塗装)を形成した後の体積抵抗率(以下、「OC層の体積抵抗率」ともいう)をそれぞれ測定した。なお、プライマー層を形成した後のローラの体積抵抗率は未測定である。また、比較例7の「基材層の体積抵抗値」については、基材層とエラストマー層とを一体形成した後、円筒研磨によりエラストマー層を除去した試料を用いて測定した。測定条件は、温度:22℃±3℃、相対湿度:55%±5%、電圧:100Vとした。
【0083】
[2.2. エラストマー層の硬化の程度及び接着性]
エラストマー層の硬化の程度、及び、接着性を目視で評価した。
【0084】
[3. 結果]
表1及び表2に結果を示す。なお、表1及び表2には、各試料の履歴も併せて示した。
「基材導電性付与」に関し、「○」は顔料又はイオン導電剤Aのいずれを用いても基材層に導電性を付与することが可能であったことを表し、「△」は基材層が黒色に変化する導電剤(すなわち、カーボン)を用いて基材層に導電性を付与することができなかったことを表す。
【0085】
「エラストマー層の硬化」に関し、「○」はエラストマー層が十分に硬化したことを表す。「△」は基材層側の界面においてエラストマー層の硬化が不十分であることを表す。
「エラストマー層の接着性」に関し、「○」はエラストマー層が十分に接着していることを表す。「×」は基材層とエラストマー層との間で剥離が発生していることを表す。
【0086】
「エラストマー層成形時間」に関し、「○」は、5秒~600秒の時間で硬化させることができたことを表し、「×」は、硬化に600秒以上の時間を要したことを表す。
「ローラの導電性能」に関し、「○」はローラの体積抵抗率を基材層の体積抵抗率とエラストマー層の体積抵抗率で調節することができ、ローラの体積抵抗率の調整範囲が広いことを表す。「△」は体積抵抗率の調節範囲が狭いことを表す。
表1及び表2より、以下のことが分かる。
【0087】
(1)比較例3~6は、エラストマー層が十分に硬化しなかった。これは、基材層に含まれるカーボンが紫外線を吸収又は遮断したために、基材層/エラストマー層の界面近傍において、原料が十分に硬化しなかったためと考えられる。
(2)比較例1~2は、エラストマー層が十分に硬化した。しかし、基材層に顔料(カーボン)が含まれていないために、ローラの体積抵抗率の調整が困難であった。
(3)比較例7は、基材層とエラストマー層とを一体形成しているが、架橋及び発泡(すなわち、エラストマー層の形成)に40分という長時間を要した。また、比較例7で得られたローラの復元力は、基材層及びエラストマー層にそれぞれウレタン系の材料を用いたローラのそれに比べて劣っていた。
【0088】
(4)実施例1~6は、いずれも、エラストマー層が十分に硬化した。また、基材層に添加される顔料及びイオン導電剤Aの種類及び量、エラストマー層に添加されるイオン導電剤Bの種類及び量、並びに、各層の厚さを制御することにより、ローラの体積抵抗率を目的とする値に調節することができた。
(5)基材層と紫外線硬化型エラストマー層との間にプライマー層を介在させることにより、基材層の色見に関わらず、基材層と紫外線硬化型エラストマー層とを接着することができた。
【0089】
【0090】
【0091】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。