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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097570
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】階段室の施工方法及び階段室構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/022 20060101AFI20230703BHJP
   E04F 11/02 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
E04F11/022
E04F11/02 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213765
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】飯田 和仁
【テーマコード(参考)】
2E301
【Fターム(参考)】
2E301CC32
2E301CC44
2E301CC45
2E301CC53
2E301CD01
2E301CD02
2E301CD21
2E301DD76
2E301EE02
(57)【要約】
【課題】耐火被覆材を介して躯体に対し階段を固定する場合であっても、強固な固定状態を維持できるようにする。
【解決手段】上下階を接続する階段1を備える階段室SRの施工方法において、階段室SRを構成する躯体の表面に耐火被覆材5を張り付ける張付工程と、耐火被覆材5を補強するための補強プレート6を取り付ける取付工程と、階段1を、躯体に対し、階段1側から耐火被覆材5及び補強プレート6を介して躯体に向かって固定材7を打ち込むことで固定する階段固定工程と、を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下階を接続する階段を備える階段室の施工方法において、
前記階段室を構成する躯体の表面に耐火被覆材を張り付ける張付工程と、
前記耐火被覆材を補強するための補強プレートを取り付ける取付工程と、
前記階段を、前記躯体に対し、前記階段側から前記耐火被覆材及び前記補強プレートを介して前記躯体に向かって固定材を打ち込むことで固定する階段固定工程と、を有することを特徴とする階段室の施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の階段室の施工方法において、
前記耐火被覆材は、複数枚重ねた状態で前記躯体の表面に張り付けられており、
前記補強プレートは、前記複数枚重ねた状態の耐火被覆材同士の間と、前記複数枚重ねた状態の耐火被覆材のうち最も前記階段側に配置される耐火被覆材における前記階段側の面と、の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする階段室の施工方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の階段室の施工方法において、
前記階段を下方から支持するための受材を、前記躯体に対し、前記受材側から前記耐火被覆材及び前記補強プレートを介して前記躯体に向かって固定材を打ち込むことで固定する受材固定工程を有することを特徴とする階段室の施工方法。
【請求項4】
請求項3に記載の階段室の施工方法において、
前記階段を下方から覆う耐火被覆材を、前記受材に対し固定する耐火被覆材固定工程を有することを特徴とする階段室の施工方法。
【請求項5】
上下階を接続する階段を備えた階段室構造であって、
階段室を構成する躯体の表面には耐火被覆材が張り付けられており、
前記階段は、前記躯体に対し、前記階段側から前記耐火被覆材及び補強プレートを介して前記躯体に向かって打ち込まれた固定材によって固定されていることを特徴とする階段室構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段室の施工方法及び階段室構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物が耐火建築物等である場合には、躯体が石膏ボード等の耐火被覆材で覆われている。階段が界壁に隣接する階段構造として、特許文献1には、界壁が、石膏ボードと石膏ボードとの間に不燃材の横架材を備えており、鉄製の階段が、界壁の横架材に対し、界壁の石膏ボードを介して複数のビスによって固定される構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-041311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
石膏ボード等の耐火被覆材は比較的脆い性質を有しているので、ビス等を保持する保持力が弱い。そのため、耐火被覆材を介して階段を躯体にビス留めする方法で、躯体に対し階段を固定する場合には、時間の経過に伴って、階段の重みで、ビスが耐火被覆材から抜け落ちたり緩んだりして、強固な固定状態を維持できないおそれがある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、耐火被覆材を介して躯体に対し階段を固定する場合であっても、強固な固定状態を維持できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、例えば図1図14に示すように、上下階を接続する階段1を備える階段室SRの施工方法において、
前記階段室SRを構成する躯体の表面に耐火被覆材5を張り付ける張付工程と、
前記耐火被覆材5を補強するための補強プレート6を取り付ける取付工程と、
前記階段1を、前記躯体に対し、前記階段1側から前記耐火被覆材5及び前記補強プレート6を介して前記躯体に向かって固定材7を打ち込むことで固定する階段固定工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、階段1を、躯体に対し、階段1側から耐火被覆材5及び補強プレート6を介して躯体に向かって固定材7を打ち込むことで固定するので、固定材7を躯体と補強プレート6との少なくとも2点で支持することができる。したがって、耐火被覆材5を介して階段1を固定する場合であっても、固定材7が抜け落ちたり緩んだりすることを防止できるので、強固な固定状態を維持することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、例えば図1図6図9図14に示すように、請求項1に記載の階段室SRの施工方法において、
前記耐火被覆材5は、複数枚重ねた状態で前記躯体の表面に張り付けられており、
前記補強プレート6は、前記複数枚重ねた状態の耐火被覆材5同士の間と、前記複数枚重ねた状態の耐火被覆材5のうち最も前記階段1側に配置される耐火被覆材5における前記階段1側の面と、の少なくとも一方に設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、補強プレート6は、複数枚重ねた状態の耐火被覆材5同士の間と、複数枚重ねた状態の耐火被覆材5のうち最も階段1側に配置される耐火被覆材5における階段1側の面と、の少なくとも一方に設けられているので、補強プレート6と躯体との間に耐火被覆材5が少なくとも1枚配置されることとなる。したがって、固定材7を支持する点が離れているので、固定材7が抜け落ちたり緩んだりすることを効果的に防止でき、階段1の固定状態として強固な固定状態を維持することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、例えば図1図6図7図9図14に示すように、請求項1又は2に記載の階段室SRの施工方法において、
前記階段1を下方から支持するための受材32,33を、前記躯体に対し、前記受材32,33側から前記耐火被覆材5及び前記補強プレート6を介して前記躯体に向かって固定材8を打ち込むことで固定する受材固定工程を有することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、階段1を下方から支持するための受材32,33を、躯体に対し、受材32,33側から耐火被覆材5及び補強プレート6を介して躯体に向かって固定材8を打ち込むことで固定するので、固定材8を躯体と補強プレート6との少なくとも2点で支持することができる。したがって、耐火被覆材5を介して受材32,33を固定する場合であっても、固定材8が抜け落ちたり緩んだりすることを防止でき、強固な固定状態を維持することができるので、階段1を受材32,33により支持する支持状態として安定的な支持状態を維持することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、例えば図1図6図7図9図14に示すように、請求項3に記載の階段室SRの施工方法において、
前記階段1を下方から覆う耐火被覆材34,35を、前記受材32,33に対し固定する耐火被覆材固定工程を有することを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、階段1を下方から覆う耐火被覆材34,35を、受材32,33に対し固定するので、受材32,33を、階段1を下方から支持するための部材としてだけでなく、耐火被覆材34,35を固定するための部材としても用いることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、例えば図1図14に示すように、上下階を接続する階段1を備えた階段室構造であって、
階段室SRを構成する躯体の表面には耐火被覆材5が張り付けられており、
前記階段1は、前記躯体に対し、前記階段1側から前記耐火被覆材5及び補強プレート6を介して前記躯体に向かって打ち込まれた固定材7によって固定されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、階段1は、躯体に対し、階段1側から耐火被覆材5及び補強プレート6を介して躯体に向かって打ち込まれた固定材7によって固定されているので、固定材7は躯体と補強プレート6との少なくとも2点で支持されている。したがって、耐火被覆材5を介して階段1を固定する場合であっても、固定材7が抜け落ちたり緩んだりすることを防止できるので、強固な固定状態を維持することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐火被覆材を介して躯体に対し階段を固定する場合であっても、強固な固定状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】階段室を示す平面図である。
図2】直階段ユニットを示す斜視図である。
図3】廻り階段ユニットを示す斜視図である。
図4】左側壁(建築用壁パネル)と補強プレートと直階段ユニット(ささら桁)との関係を示す側面図である。
図5】右側壁(建築用壁パネル)と補強プレートと直階段ユニット(ささら桁)との関係を示す側面図である。
図6】補強プレートの配置箇所を示す縦断面図である。
図7】階段(直階段ユニット)と上階の床との関係を示す図である。
図8】左側壁(建築用壁パネル)と補強プレートと直階段ユニット(ささら桁)との関係の変形例を示す側面図である。
図9】補強プレートの配置箇所の変形例を示す縦断面図である。
図10】補強プレートの配置箇所の変形例を示す縦断面図である。
図11】補強プレートの配置箇所の変形例を示す縦断面図である。
図12】補強プレートの配置箇所の変形例を示す縦断面図である。
図13】補強プレートの配置箇所の変形例を示す縦断面図である。
図14】補強プレートの配置箇所の変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0019】
図1等において符号1は、上下階を接続する階段を示す。階段1は、下廻り階段であり、住宅等の建物において階段室SRとして区画されるスペースに配置され、建物の躯体に固定されて設置される。
建物は、壁や床、屋根といった建物の構成要素を予め工場でパネル化しておき、施工現場でこれらのパネルを組み立てて構築するパネル工法で構築されるが、これに限られるものではなく、従来の軸組工法、壁式工法、ツーバイフォー工法等で構築されるものとしてもよい。
また、パネルとは、建築用パネルであり、縦横の框材Aが矩形状に組み立てられて矩形枠が構成され、この矩形枠の内部に補助桟材Bが縦横に組み付けられて枠体が構成され、この枠体の両面もしくは片面に面材Cが貼設されたものであり、内部中空な構造となっている。その内部中空部(面材Cの裏側)には、通常、グラスウールやロックウール等の断熱材が装填される。
【0020】
すなわち、建物の躯体は、本実施形態においては建築用壁パネル2、建築用床パネル3、建築用屋根パネル等の建築用パネルや、複数の建築用壁パネル2間に架け渡された梁4等によって構成されている。そして、躯体を構成する躯体構造材(建築用パネルや梁4等)は、2枚重ねた状態の耐火被覆材5によって被覆されて各部屋(階段室SR等)の壁や床、天井を構成している。
耐火被覆材5としては、例えば強化石膏ボードが用いられているが、その他の種類の耐火被覆材であってもよい。
【0021】
階段1は、複数の階段ユニットを備えるユニット階段である。本実施形態における階段1は、図1に示すように、直階段ユニット10と、廻り階段ユニット20と、を備えており、これら各ユニット10,20が組み合わされて構成されている。
なお、階段1を構成する各ユニット10,20は、全体が、又は一部(一部を除く略全体)が予め工場で製造されている。
【0022】
なお、階段1は、本実施形態においては、直階段ユニット10と当該直階段ユニット10の下端部に連なる廻り階段ユニット20とにより構成される下廻り階段とされているが、これに限られるものではない。すなわち、例えば、複数の直階段ユニットを備えて直階段とされてもよいし、図示しない踊り場ユニットを備えて折り返し階段、かね折れ階段、踊り場付きの直階段、踊り場付き両返し階段、上下踊り場付き折り返し階段とされてもよい。また、折り返し階段やかね折れ階段は、踊り場ユニットではなく、廻り階段ユニット20によるものでもよい。また、廻り階段ユニット20によって上廻り階段や上下廻り階段(上下3段回り付き階段)等を構成してもよい。すなわち、階段1の種類は、特に限定されるものではない。
さらに、階段1は、規格化された以上の各ユニットを自由に組み合わせて形成することが可能となっており、階段1を構成するのに必要なユニットを階段セットとしてセット化してもよい。
また、階段室SRを構成する躯体構造材(建築用パネルや梁4等)の配置や数量は、階段1の種類に応じて適宜変更されるものとする。
【0023】
本実施形態における階段室SRは、互いに対向する一対の壁面W1,W2(壁W1,W2)と、当該一対の壁面W1,W2に直交する他の壁面W3(壁W3)と、を備えている。
一対の壁面W1,W2は、直階段ユニット10の昇降方向に沿って配置されており、一対の壁面W1,W2のうち、一方の壁面W1は階段1を直階段ユニット10の昇降方向下降側(後側)から見た場合において左側に位置し、他方の壁面W2は右側に位置している。そのため、以下の説明では、左側に位置する壁面W1(壁W1)を左側壁面W1(左側壁W1)と称し、右側に位置する壁面W2(壁W2)を右側壁面W2(右側壁W2)と称する。また、他の壁面W3(壁W3)は、直階段ユニット10の昇降方向下降側に位置するので、以下の説明では、下降側壁面W3(下降側壁W3)と称する。
【0024】
左側壁W1は、前後方向に沿って並んだ複数の建築用壁パネル2と、これらの建築用壁パネル2と階段1との間に設けられた2枚重ねた状態の耐火被覆材5,5と、により構成されており、左側壁面W1は、当該耐火被覆材5,5のうち外側の耐火被覆材5の表面(外側の面、すなわちユニット10,20側の面)を指す。すなわち、図1において符号W1は、左側壁面を指している。
同様に、右側壁W2は、前後方向に沿って並んだ複数の建築用壁パネル2と、これらの建築用壁パネル2と階段1との間に設けられた2枚重ねた状態の耐火被覆材5,5と、により構成されており、右側壁面W2は、建築用壁パネル2の左側面に張り付けられた耐火被覆材5,5のうち外側の耐火被覆材5の表面(外側の面、すなわち直階段ユニット10側の面)を指す。すなわち、図1において符号W2は、右側壁面を指している。
【0025】
同様に、下降側壁W3は、左右方向に沿って並んだ複数の建築用壁パネル2と、これらの建築用壁パネル2と階段1との間に設けられた2枚重ねた状態の耐火被覆材5,5と、により構成されており、下降側壁面W3は、当該耐火被覆材5,5のうち外側の耐火被覆材5の表面(外側の面、すなわち廻り階段ユニット20側の面)を指す。すなわち、図1において符号W3は、下降側壁面を指している。
本実施形態においては、右側壁W2が手摺壁とされており、左側壁W1が下降側壁W3と平面視L字状に連結しているが、これに限られるものではない。例えば、左側壁W1が手摺壁とされて、右側壁W2が下降側壁W3と平面視L字状に連結していてもよい。
【0026】
直階段ユニット10は、図2に示すように、当該直階段ユニット10の側板となる左右のささら桁11と、これらささら桁11間に段階的に設けられて踏み面を構成する複数の段板12と、これら複数の段板12の間及び最下段の段板12の下方に設けられた複数の蹴込板13と、を備えている。
ささら桁11には、図4図5に示すように、当該ささら桁11を構成する複数枚の板材を連結して一体化するための連結材11aが設けられている。
直階段ユニット10における複数の段板12は、その奥行方向(前後方向)の寸法が全て同じに設定されている。
複数の蹴込板13は、左右両側のささら桁11における垂直面に固定され、その高さ寸法(上下方向の寸法)が全て同じに設定されている。
【0027】
直階段ユニット10は、左側壁面W1と右側壁面W2との間に設置されている。直階段ユニット10の幅寸法(左右方向の寸法)は、左側壁面W1と右側壁面W2との間の距離(設計上の距離)よりも短い寸法に設定されている。すなわち、直階段ユニット10の幅寸法は、直階段ユニット10を配置するための配置スペースの設計時における幅寸法よりも短く設定されている。これにより、耐火被覆材5の寸法誤差や施工誤差によって、左側壁面W1と右側壁面W2との間の距離(実際の距離)に設計時との誤差が生じた場合であっても、階段室SR内に直階段ユニット10をスムーズに配置できるようになっている。
このように、直階段ユニット10の幅寸法が、直階段ユニット10の配置スペースの設計時における幅寸法よりも短く設定されているため、直階段ユニット10の左側面と耐火被覆材5(左側壁面W1)との間や、直階段ユニット10の右側面と耐火被覆材5(右側壁面W2)との間には隙間(クリアランス)が形成される。
【0028】
また、左側壁面W1及び右側壁面W2には、図4図5に示すように、直階段ユニット10を下方から支持する受材32,33が設けられている。受材32,33のうち第一受材32は、直階段ユニット10の昇降方向に沿って配置されており、直階段ユニット10におけるささら桁11の下面のうちの傾斜面に当接している。また、受材32,33のうち第二受材33は、ささら桁11の下端部に当接している。さらに、受材32,33は、直階段ユニット10を下方から覆う耐火被覆材34,35を設置する際のビス打ちの下地材としても用いられる。
【0029】
廻り階段ユニット20は、図3に示すように、一角(手摺壁側)を中心に扇状に広がるように形成されて段階的に設けられる踏み面を構成する複数の段板22と、これら複数の段板22の間及び最下段の段板22の下方に設けられた複数の蹴込板23と、段板22及び蹴込板23を支持する支持台21と、を備えている。
支持台21は、複数の桟材が組み立てられて複数の段を有するフレーム状に形成された台であり、上向き面に段板22が固定され、垂直面に蹴込板23が固定される。また、支持台21の上端部には、直上に配置されるユニット(本実施形態の場合は直階段ユニット10)を支持するための載置部24が形成されている。
また、廻り階段ユニット20は、手摺壁(本実施形態の場合は右側壁W2)を避けるようにして配置されるため、支持台21が平面視において略L字型に形成されている。複数の段板22における手摺壁側の端部と、複数の蹴込板23における手摺壁側の端部は、手摺壁の端部に合わせて適宜切り欠かれたような状態に形成されている。
【0030】
廻り階段ユニット20における階段室SRの前後方向及び左右方向に沿う平面寸法は、廻り階段ユニット20を配置するための配置スペースの設計時における平面寸法よりも小さく設定されている。これにより、耐火被覆材5の寸法誤差や施工誤差によって、廻り階段ユニット20の配置スペースの平面寸法(実際の平面寸法)に設計時との誤差が生じた場合であっても、階段室SR内に廻り階段ユニット20をスムーズに配置できるようになっている。
このように、廻り階段ユニット20の平面寸法が、廻り階段ユニット20の配置スペースの設計時における平面寸法よりも小さく設定されているため、廻り階段ユニット20の左側面と耐火被覆材5(左側壁面W1)との間や、廻り階段ユニット20の後側面と耐火被覆材5(下降側壁面W3)との間には隙間(クリアランス)が形成される。
【0031】
図6図7に示すように、階段1を構成する各ユニット10,20は上方から2枚重ねた状態の耐火被覆材34,35によって覆われている。すなわち、各ユニット10,20における段板12,22及び蹴込板13,23には、2枚重ねた状態の耐火被覆材34,35が張り付けられている。また、直階段ユニット10は下方から2枚重ねた状態の耐火被覆材34,35によって覆われているとともに、廻り階段ユニット20は前方から2枚重ねた状態の耐火被覆材34,35によって覆われている。これらの耐火被覆材34,35は、当該耐火被覆材34,35の端面が、耐火被覆材5(階段室SRの壁面や、階段室SR(あるいは階段室SRに続く他の部屋)の床面)に当接する寸法に設定されている。すなわち、階段1の防火被覆(耐火被覆材34,35)は、建物の躯体の防火被覆(耐火被覆材5)に隙間なく連続するように設けられる。
【0032】
耐火被覆材34,35としては、例えば強化石膏ボードが用いられているが、その他の種類の耐火被覆材であってもよい。また、耐火被覆材34,35のうち内側(ユニット10,20側)に配置される内側耐火被覆材34の厚さ寸法は、例えば15mmに設定されているが、これに限られるものではない。また、耐火被覆材34,35のうち外側に配置される外側耐火被覆材35の厚さ寸法は、例えば12.5mmに設定されているが、これに限られるものではない。
【0033】
段板12,22及び蹴込板13,23に張り付けられた耐火被覆材34,35のうち外側耐火被覆材35の表面には、防腐合板36が設けられている。また、本実施形態においては、上階の床が、階段1の最上段をなしている。したがって、上階の床を構成する建築用床パネル3の端面(具体的には当該端面に張り付けられた耐火被覆材5,5のうち外側の耐火被覆材5の表面)にも防腐合板36が設けられている。階段1の各段差は全て同じ高さ寸法に設定されているので、上階の床を構成する建築用床パネル3の端面に張り付ける防腐合板36は、直階段ユニット10の蹴込板13に張り付ける防腐合板36と同じ寸法に設定されている。
また、上階の床を構成する建築用床パネル3の上面(具体的には当該上面に張り付けられた耐火被覆材5,5のうち外側の耐火被覆材5の表面)にも防腐合板36が張り付けられている。本実施形態では、直階段ユニット10の段板12に張り付ける防腐合板36と同じ寸法の防腐合板36を、上階の床を構成する建築用床パネル3の上面に設けているが、当該建築用床パネル3の上面に貼り付ける防腐合板36の寸法は適宜変更可能である。
【0034】
防腐合板36同士の継目(水平面に張り付けられた防腐合板36と、垂直面に張り付けられた防腐合板36と、の継目)、防腐合板36と耐火被覆材5との継目(防腐合板36と階段室SRの壁面との継目、防腐合板36と階段室SR(あるいは階段室SRに続く他の部屋)の床面との継目)には、隙間(シーリングポケットP)が設けられている。そして、その隙間には、当該隙間における防水性を向上させるためにシーリング材(図示省略)が充填されている。これにより、階段1は、高い耐火性や防音性を有するだけでなく、高い防水性や防腐性も有しているので、例えば、土足や傘を有する状態で通行され得る共用階段としても使用可能となっている。
なお、例えば階段1が専有階段である場合には、防腐合板36同士の継目や防腐合板36と耐火被覆材5との継目にシーリング材を充填しなくてもよい。また、シーリング材を充填しない場合には、防腐合板36同士の継目や防腐合板36と耐火被覆材5との継目に隙間(シーリングポケットP)を設けなくてもよい。
【0035】
建物の躯体を構成する躯体構造材(建築用パネルや梁4等)は、2枚重ねた状態の耐火被覆材5,5によって覆われている。この2枚重ねた状態の耐火被覆材5,5のうち、階段室SRの左側壁W1を構成する耐火被覆材5,5同士の間と、階段室SRの右側壁W2を構成する耐火被覆材5,5同士の間と、にはそれぞれ複数枚(本実施形態の場合は5枚)の補強プレート6が設けられている。すなわち、直階段ユニット10が固定される壁には、補強プレート6が設けられている。
【0036】
ここで、本実施形態における直階段ユニット10は、階段室SRの床(下階の床)から離間しているので、階段室SRの壁W1,W2には固定されるが、階段室SRの床には固定されない。直階段ユニット10は、当該直階段ユニット10のささら桁11から、壁W1,W2を構成する建築用壁パネル2に向かって、釘やビス等の固定材7を打ち込む(あるいはねじ込む)ことで、階段室SRの壁W1,W2に固定される。したがって、直階段ユニット10を壁W1,W2に固定するための固定材7は、ささら桁11と、壁W1,W2を構成する耐火被覆材5と、壁W1,W2を構成する建築用壁パネル2の面材Cと、を貫通する。
【0037】
また、受材32,33も、階段室SRの床(下階の床)から離間しているので、階段室SRの壁W1,W2には固定されるが、階段室SRの床には固定されない。受材32,33は、当該受材32,33から、壁W1,W2を構成する建築用壁パネル2に向かって、釘やビス等の固定材8を打ち込む(あるいはねじ込む)ことで、階段室SRの壁W1,W2に固定される。したがって、受材32,33を壁W1,W2に固定するための固定材8は、受材32,33と、壁W1,W2を構成する耐火被覆材5と、壁W1,W2を構成する建築用壁パネル2の面材Cと、を貫通する。
【0038】
補強プレート6は、固定材7,8が貫通する位置に設けられている。したがって、図6に示すように、直階段ユニット10を壁W1,W2に固定するための固定材7は、壁W1,W2を構成する耐火被覆材5,5のうち外側の耐火被覆材5を貫通した後に、補強プレート6を貫通し、その後に壁W1,W2を構成する耐火被覆材5,5のうち内側の耐火被覆材5を貫通する。また、受材32,33を壁W1,W2に固定するための固定材8も、壁W1,W2を構成する耐火被覆材5,5のうち外側の耐火被覆材5を貫通した後に、補強プレート6を貫通し、その後に壁W1,W2を構成する耐火被覆材5,5のうち内側の耐火被覆材5を貫通する。これにより、固定材7,8を、補強プレート6と建築用壁パネル2の面材Cとの少なくとも2点で支持することができるので、時間の経過に伴って、直階段ユニット10の重みで、固定材7,8が耐火被覆材5から抜け落ちたり緩んだりすることを防止できるようになっている。
【0039】
直階段ユニット10を右側壁W2に固定するための固定材7は、右側壁W2を構成する建築用壁パネル2の芯材(框材A、補助桟材B)に向かって打ち込まれる。また、受材32,33を右側壁W2に固定するための固定材8も、右側壁W2を構成する建築用壁パネル2の芯材に向かって打ち込まれる。したがって、図5に示すように、右側壁W2に取り付けられた複数の補強プレート6は、右側壁W2を構成する建築用壁パネル2の芯材に対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0040】
また、直階段ユニット10を左側壁W1に固定するための固定材7は、一部(直階段ユニット10の上端部を左側壁W1に固定するための固定材7)を除いて、左側壁W1を構成する建築用壁パネル2の芯材に向かって打ち込まれる。また、受材32,33を左側壁W1に固定するための固定材8も、一部(第一受材32の上端部を左側壁W1に固定するための固定材8)を除いて、左側壁W1を構成する建築用壁パネル2の芯材に向かって打ち込まれる。したがって、図4に示すように、左側壁W1に取り付けられた複数の補強プレート6は、一部(直階段ユニット10の上端部を左側壁W1に固定するための固定材7と、第一受材32の上端部を左側壁W1に固定するための固定材8と、が貫通する補強プレート6)を除いて、左側壁W1を構成する建築用壁パネル2の芯材に対応する位置にそれぞれ設けられている。
【0041】
本実施形態においては、直階段ユニット10の上端部が左側壁W1を構成する建築用壁パネル2の芯材に達していない(芯材と立体交差していない)ので、当該上端部を左側壁W1に固定するための固定材7や、第一受材32の上端部を左側壁W1に固定するための固定材8は、建築用壁パネル2の芯材ではなく、建築用壁パネル2の内部中空部に向かって打ち込まれる。無論、直階段ユニット10の上端部が左側壁W1を構成する建築用壁パネル2の芯材に達している場合(芯材と立体交差している場合)には、当該上端部を左側壁W1に固定するための固定材7(一番上の固定材7)や、第一受材32の上端部を左側壁W1に固定するための固定材8を、当該芯材に向かって打ち込むようにしてもよい。
【0042】
本実施形態においては、補強プレート6として、0.6mmの鋼板を用いている。鋼板を用いることで、0.6mmという薄さでも、耐火被覆材5よりも高い保持力(釘やビス等の固定材7,8を保持する力)を有することが可能となる。
なお、補強プレート6は、鋼板に限られるものではない。補強プレート6は、耐火被覆材5よりも高い保持力を有するものであればよく、例えば、建築用壁パネル2の面材Cと同等又はそれ以上の保持力を有するものが好ましい。
また、補強プレート6の厚さ寸法は、0.6mmに限られるものではない。また、耐火被覆材5に補強プレート6の厚みを吸収するための凹部(すなわち補強プレート6を収容するための凹部)を設けてもよい。本実施形態においては、補強プレート6が薄く、補強プレート6を挟んでも、耐火被覆材5,5の間に隙間が生じない(あるいは隙間が生じたとしても無視できるほど狭い)ので、耐火被覆材5に補強プレート6の厚みを吸収するための凹部を設けていない。
【0043】
一方、本実施形態における廻り階段ユニット20は、階段室SRの床(下階の床)に接している。具体的には、廻り階段ユニット20は、階段室SRの床に載置された状態で、当該廻り階段ユニット20の支持台21が、階段室SRの床を構成する躯体(建築用床パネル3等)に本固定されている。そのため、廻り階段ユニット20を壁W1,W3に固定するための固定材7は、廻り階段ユニット20の重みで、耐火被覆材5から抜け落ちたり緩んだりしない。したがって、本実施形態においては、直階段ユニット10の固定に補強プレート6を用いているが、廻り階段ユニット20の固定には補強プレート6を用いていない。
なお、階段室SRの床に接しないユニット(本実施形態の場合は直階段ユニット10)の固定だけでなく、階段室SRの床に接するユニット(本実施形態の場合は廻り階段ユニット20)の固定にも補強プレート6を用いるようにしてもよい。
【0044】
また、補強プレート6を介して固定するユニットは、階段1の種類に応じて適宜変更されるものとする。例えば、階段1が、直階段ユニット10と当該直階段ユニット10の上端部に連なる廻り階段ユニット20とにより構成される上廻り階段である場合には、廻り階段ユニット20は階段室SRの床から離間して設置されるので、廻り階段ユニット20の固定に補強プレート6を用いる。また、この場合には、例えば図8に示すように、直階段ユニット10は、階段室SRの床に接しているが、接しているのは下端部(昇降方向下降側の下面)のみである。よって、直階段ユニット10の上端部や中央部を壁W1,W2に固定するための固定材7は、時間の経過に伴って、直階段ユニット10の重みで、耐火被覆材5から抜け落ちたり緩んだりするおそれがある。そのため、階段1が上廻り階段である場合には、廻り階段ユニット20の固定だけでなく、直階段ユニット10の固定にも補強プレート6を用いることが好ましい。
【0045】
図8に示す例では、ささら桁11の下端部を壁W1,W2に固定するための固定材7(一番下の固定材7)が打ち込まれる部分には補強プレート6を設けていないが、これに限られるものではない。具体的には、例えば、一番下の固定材7が打ち込まれる部分にも補強プレート6を設けてもよいし、あるいは、一番下の固定材7が打ち込まれる部分に加えてその他の部分(下から二番目の固定材7が打ち込まれる部分等)にも補強プレート6を設けないようにしてもよい。
【0046】
次に、図1図7を参照し、階段室SRの施工方法について説明する。
なお、階段1を構成する直階段ユニット10及び廻り階段ユニット20は、予め工場等で組み立てられた上で施工現場に輸送されるものとする。
現場では、基礎工事が終わった後に、躯体の組立工事が行われる。組立工事において、階段室SRを構成する建築用パネルや梁4等の組み立てが行われる。
【0047】
躯体の組立工事が終わった後に、躯体の表面に耐火被覆材5を張り付ける張付作業が行われる。この張付作業において、階段室SRを構成する躯体の表面に耐火被覆材5を張り付ける張付工程と、補強プレート6を取り付ける取付工程と、が行われる。
張付作業では、まず、躯体(建築用パネルや梁4等)の表面にビスや接着剤又はそれらの併用によって耐火被覆材5(内側の耐火被覆材5)を固定する。次いで、当該耐火被覆材5の表面にビスや接着剤又はそれらの併用によって耐火被覆材5(外側の耐火被覆材5)を固定する。その際、階段室SRの左側壁W1及び右側壁W2においては、建築用壁パネル2の表面に内側の耐火被覆材5を固定した後に、当該内側の耐火被覆材5の表面にビスや接着剤又はそれらの併用によって補強プレート6を固定し、その後に当該内側の耐火被覆材5の表面(補強プレート6が固定されている側の面)に外側の耐火被覆材5を固定する。
ここで、耐火被覆材5は、内側の耐火被覆材5同士の継目と外側の耐火被覆材5同士の継目とが一致しないように配置される。これにより、継目を一致させた場合よりも耐火性や防音性を高めることができる。
【0048】
張付工程及び取付工程が終わった後に、階段室SRにユニット10,20を設置する設置作業が行われる。この設置作業において、階段1(直階段ユニット10)を躯体に対し固定する階段固定工程と、受材32,33を躯体に対し固定する受材固定工程と、が行われる。
設置作業では、まず、階段室SR内に廻り階段ユニット20を配置する。次いで、廻り階段ユニット20を躯体に対し固定する。具体的には、支持台21から耐火被覆材5を介して建築用壁パネル2に向かって固定材7を打ち込むことで、廻り階段ユニット20を壁に対し固定する。また、廻り階段ユニット20を床に対し固定する。
【0049】
続いて、階段室SR内に直階段ユニット10を配置する。具体的には、直階段ユニット10の下端部を、廻り階段ユニット20の載置部24に載せる。
次いで、直階段ユニット10を躯体に対し固定する。具体的には、ささら桁11から耐火被覆材5及び補強プレート6を介して建築用壁パネル2に向かって固定材7を打ち込むことで、直階段ユニット10を壁に対し固定する。
【0050】
続いて、第一受材32を躯体に対し固定する。具体的には、直階段ユニット10のささら桁11の傾斜面に当接するように第一受材32を配置して、第一受材32から耐火被覆材5及び補強プレート6を介して建築用壁パネル2に向かって固定材8を打ち込むことで、第一受材32を壁に対し固定する。
また、第二受材33を躯体に対し固定する。具体的には、直階段ユニット10のささら桁11の下端部に当接するように第二受材33を配置して、第二受材33から耐火被覆材5及び補強プレート6を介して建築用壁パネル2に向かって固定材8を打ち込むことで、第二受材33を壁に対し固定する。
【0051】
ユニット10,20を設置する設置作業が終わった後に、ユニット10,20を耐火被覆材34,35で覆う被覆作業を行う。この被覆作業において、階段1(直階段ユニット10)を下方から覆う耐火被覆材34,35を、受材32,33に対し固定する耐火被覆材固定工程を行う。
その後、階段1の段板12,22及び蹴込板13,23に張り付けられた耐火被覆材34,35のうち外側耐火被覆材35の表面や、上階の床を構成する建築用床パネル3に張り付けられた耐火被覆材5,5のうち外側の耐火被覆材5の表面に、防腐合板36を張り付ける。次いで、防腐合板36同士の継目や、防腐合板36と階段室SRの壁面(耐火被覆材5)との継目、防腐合板36と階段室SRの床面(耐火被覆材5)との継目にシーリング材を充填する。
そして、最後に、階段1の表面(防腐合板36、シーリング材、外側耐火被覆材35等)、階段室SRの壁面(耐火被覆材5)、階段室SRの床面(耐火被覆材5)等に、直接(あるいは下地材を介して)内装仕上げ材を設ける。
【0052】
なお、以上のような階段1を構成する各ユニット10,20は、ささら桁階段とされているが、これに限られるものではなく、側桁階段とされてもよい。また、蹴込板を備えない形態の階段であってもよい。
また、本実施形態においては、2枚重ねた状態の耐火被覆材5,5同士の間に補強プレート6を設けているが、これに限られるものではない。例えば、図9に示すように、2枚重ねた状態の耐火被覆材5,5のうち外側の耐火被覆材5の外側の面(表面)に補強プレート6を設けてもよいし、図10に示すように、2枚重ねた状態の耐火被覆材5,5のうち内側の耐火被覆材5の内側の面に補強プレート6を設けてもよい。
【0053】
あるいは、一つの固定材7に対し複数枚の補強プレート6を設けるようにしてもよい。具体的には、例えば、図11に示すように、2枚重ねた状態の耐火被覆材5,5同士の間と、2枚重ねた状態の耐火被覆材5,5のうち外側の耐火被覆材5の外側の面と、のそれぞれに補強プレート6を設けてもよいし、図12に示すように、2枚重ねた状態の耐火被覆材5,5同士の間と、2枚重ねた状態の耐火被覆材5,5のうち外側の耐火被覆材5の外側の面と、2枚重ねた状態の耐火被覆材5,5のうち内側の耐火被覆材5の内側の面と、のそれぞれに補強プレート6を設けてもよい。
すなわち、2枚重ねた状態の耐火被覆材5,5のうち外側の耐火被覆材5の外側の面と、2枚重ねた状態の耐火被覆材5,5同士の間と、2枚重ねた状態の耐火被覆材5,5のうち内側の耐火被覆材5の内側の面と、のうちの少なくとも1箇所に補強プレート6が設けられていればよい。
【0054】
また、左側壁W1に設ける補強プレート6の位置と、右側壁W2に設ける補強プレート6の位置と、は異なってもよいし、左側壁W1に設ける補強プレート6の枚数と、右側壁W2に設ける補強プレート6の枚数と、は異なってもよい。
具体的には、例えば、左側壁W1においては、2枚重ねた状態の耐火被覆材5,5のうち外側の耐火被覆材5の外側の面と、2枚重ねた状態の耐火被覆材5,5のうち内側の耐火被覆材5の内側の面と、の2箇所に補強プレート6を設けて、右側壁W2においては、2枚重ねた状態の耐火被覆材5,5同士の間の1箇所に補強プレート6を設けるようにしてもよい。
【0055】
また、本実施形態においては、建物の躯体を構成する躯体構造材(建築用パネルや梁4等)を被覆する耐火被覆材5として、厚さ21mmの強化石膏ボードが2枚重ねた状態で用いられているが、これに限られるものではない。すなわち、耐火被覆材5の厚さ寸法は、21mmに限られるものではないし、耐火被覆材5の種類は、強化石膏ボードに限られるものではないし、2枚重ねた状態以外の状態(重ねない(1枚だけ)の状態や3枚以上重ねた状態)で用いてもよい。また、厚さ寸法が異なる耐火被覆材を複数枚重ねた状態で用いてもよいし、異なる種類の耐火被覆材を複数枚重ねた状態で用いてもよい。
例えば耐火被覆材5を重ねない状態で用いる場合には、、図13に示すように耐火被覆材5の外側の面(耐火被覆材5とささら桁11との間)に補強プレート6を設けてもよいし、耐火被覆材5の内側の面(耐火被覆材5と建築用壁パネル2との間)に補強プレート6を設けてもよい。
なお、図6図9図13においては、2枚重ねた状態の建築用壁パネル2によって壁W1,W2が構成されているが、これに限られるものではなく、壁W1,W2を構成する建築用壁パネル2は2枚重ねた状態以外の状態(重ねない(1枚だけ)の状態や3枚以上重ねた状態)の建築用壁パネル2でもよい。また、壁W1を構成する建築用壁パネル2の枚数と、壁W2を構成する建築用壁パネル2の枚数と、を異ならせてもよい。
【0056】
また、本実施形態においては、建築用壁パネル2に張り付けられた耐火被覆材5を補強プレート6によって補強するようにしたが、これに限られるものではなく、建築用壁パネル2以外の躯体に張り付けられた耐火被覆材5を補強プレート6によって補強するようにしてもよい。具体的には、例えば、建築用床パネル3に張り付けられた耐火被覆材5に補強プレート6を設けてもよいし、図14に示すように梁4に張り付けられた耐火被覆材5に補強プレート6を設けてもよい。図14に示す例では、直階段ユニット10は段板支持部材12a(角材等)を備えており、当該段板支持部材12aが、上階の床(建築用床パネル3)を支持する梁4に対し、釘やビス等の固定材によって固定されており、直階段ユニット10の最上段の段板12における梁4側の端部が段板支持部材12aに載った状態で固定されることで、直階段ユニット10が梁4に対して取り付けられている。そして、当該梁4に張り付けられた耐火被覆材5には補強プレート6が設けられており、段板支持部材12aは、梁4に対し、段板支持部材12a側から耐火被覆材5及び補強プレート6を介して梁4に向かって打ち込まれた固定材によって固定されている。
【0057】
本実施形態によれば、以下のような優れた効果を奏する。
本実施形態における階段室SRの施工方法によれば、階段室SRを構成する躯体(建築用パネルや梁4等)の表面に耐火被覆材5を張り付ける張付工程と、耐火被覆材5を補強するための補強プレート6を取り付ける取付工程と、階段1(本実施形態の場合は直階段ユニット10)を、躯体に対し、階段1側から耐火被覆材5及び補強プレート6を介して躯体に向かって固定材7を打ち込むことで固定する階段固定工程と、を有する。具体的には、取付工程では、耐火被覆材5の躯体側の面と階段1側の面との少なくとも一方に、補強プレート6を取り付ける。
したがって、階段1を、躯体に対し、階段1側から耐火被覆材5及び補強プレート6を介して躯体に向かって固定材7を打ち込むことで固定するので、固定材7を躯体と補強プレート6との少なくとも2点で支持することができる。したがって、耐火被覆材5を介して階段1を固定する場合であっても、固定材7が抜け落ちたり緩んだりすることを防止できるので、強固な固定状態を維持することができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、耐火被覆材5は、複数枚重ねた状態で躯体の表面に張り付けられており、補強プレート6は、複数枚重ねた状態の耐火被覆材5同士の間(図6参照)と、複数枚重ねた状態の耐火被覆材5のうち最も階段1側に配置される耐火被覆材5における階段1側の面(図9参照)と、の少なくとも一方に設けられているので、補強プレート6と躯体との間に耐火被覆材5が少なくとも1枚配置されることとなる。したがって、固定材7を支持する点(躯体と補強プレート6)が離れているので、固定材7が抜け落ちたり緩んだりすることを効果的に防止でき、階段1の固定状態として強固な固定状態を維持することができる。
【0059】
特に、図6に示すように、補強プレート6を複数枚重ねた状態の耐火被覆材5同士の間に設ける場合には、補強プレート6が直接火熱に接することがないので、耐火被覆材5が局所的に加熱されること等を防止できる。さらに、階段室SRの壁面(耐火被覆材5)に内装仕上げ材を設けた際に、補強プレート6が張り付けられた部分だけが盛り上がって見栄えが悪くなること等を防止できる。
また、図9に示すように、補強プレート6を複数枚重ねた状態の耐火被覆材5のうち最も階段1側に配置される耐火被覆材5における階段1側の面に設ける場合には、時間の経過に伴って階段1が耐火被覆材5にめり込むこと等を防止できる。
また、図11図12に示すように、複数箇所に補強プレート6を設ける場合には、躯体と補強プレート6,6…との3点以上で固定材7を支持できるので、階段1の固定状態としてより強固な固定状態を維持することができる。
【0060】
また、本実施形態の階段室SRの施工方法によれば、階段1を下方から支持するための受材32,33を、躯体に対し、受材32,33側から耐火被覆材5及び補強プレート6を介して躯体に向かって固定材8を打ち込むことで固定する受材固定工程を有しているので、固定材8を躯体と補強プレート6との少なくとも2点で支持することができる。したがって、耐火被覆材5を介して受材32,33を固定する場合であっても、固定材8が抜け落ちたり緩んだりすることを防止でき、強固な固定状態を維持することができるので、階段1を受材32,33により支持する支持状態として安定的な支持状態を維持することができる。
【0061】
また、本実施形態の階段室SRの施工方法によれば、階段1を下方から覆う耐火被覆材34,35を、受材32,33に対し固定する耐火被覆材固定工程を有しているので、受材32,33を、階段1を下方から支持するための部材としてだけでなく、耐火被覆材34,35を固定するための部材としても用いることができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、階段1の寸法は、階段1の側面と躯体の表面に張り付けられた耐火被覆材5との間に隙間が形成され得る寸法に設定されているので、耐火被覆材5の寸法誤差や施工誤差が生じた場合であっても、階段室SR内に階段1をスムーズに配置することができる。
なお、本実施形態の階段室の施工方法における各工程(特に、階段固定工程、受材固定工程、耐火被覆材固定工程)を行う順序は、上述した順序に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【0063】
また、本実施形態の階段室構造によれば、階段室SRを構成する躯体の表面には耐火被覆材5が張り付けられており、階段1(本実施形態の場合は直階段ユニット10)は、躯体に対し、階段1側から耐火被覆材5及び補強プレート6を介して躯体に向かって打ち込まれた固定材7によって固定されているので、固定材7は躯体と補強プレート6との少なくとも2点で支持されている。したがって、耐火被覆材5を介して階段1を固定する場合であっても、固定材7が抜け落ちたり緩んだりすることを防止できるので、強固な固定状態を維持することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 階段
2 建築用壁パネル(躯体)
3 建築用床パネル(躯体)
4 梁(躯体)
5 耐火被覆材
6 補強プレート
7 固定材
8 固定材
32 第一受材
33 第二受材
34 内側耐火被覆材
35 外側耐火被覆材
SR 階段室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14