(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097575
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】パーキング機構、およびパーキング機構の組立方法
(51)【国際特許分類】
F16H 63/34 20060101AFI20230703BHJP
B60T 1/06 20060101ALI20230703BHJP
F16D 65/28 20060101ALI20230703BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20230703BHJP
F16D 125/52 20120101ALN20230703BHJP
F16D 125/48 20120101ALN20230703BHJP
【FI】
F16H63/34
B60T1/06 G
F16D65/28
F16D121:24
F16D125:52
F16D125:48
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213776
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】松尾 秀明
(72)【発明者】
【氏名】原 三博
(72)【発明者】
【氏名】柚木 壮之
【テーマコード(参考)】
3J058
3J067
【Fターム(参考)】
3J058AB21
3J058BA62
3J058BA67
3J058CC15
3J058FA28
3J067AA21
3J067AB23
3J067DB32
3J067FA57
3J067FA84
3J067FB83
3J067GA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】小型化を実現できるパーキング機構を提供する。
【解決手段】第1軸線J1に沿って延び前記第1軸線周りに回転するマニュアルシャフト71を有するアクチュエータ70と、前記マニュアルシャフトの外周に設けられ前記第1軸線の径方向に沿って延びるフランジ90と、前記フランジに連結される連結部30a、および前記第1軸線と直交する第2軸線J2に沿って延びて前記フランジの動きに沿って前記第2軸線に沿って移動するカムロッド30と、コイルバネ39と、前記コイルバネを介して前記第2軸線に沿って移動するカム35と、噛合部25を有し前記カムの移動に伴って動作する歯止め部材20と、前記噛合部が噛み合う歯部を有するパーキングギヤ10と、を有する。アクチュエータの自己保持トルクをコイルバネの最大圧縮時にマニュアルシャフトに付与されるトルクより大きく設定し、従来の前記マニュアルシャフトの回転位置を決める板バネを廃止する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸線に沿って延び前記第1軸線周りに回転するマニュアルシャフトを有するアクチュエータと、
前記マニュアルシャフトの外周に設けられ前記第1軸線の径方向に沿って延びるフランジと、
前記フランジに連結される連結部、および前記第1軸線と直交する第2軸線に沿って延びて前記フランジの動きに沿って前記第2軸線に沿って移動するロッド本体を有するカムロッドと、
前記ロッド本体に取り付けられるコイルバネと、
前記ロッド本体に取り付けられ前記コイルバネを介して前記ロッド本体の動作が伝わり前記第2軸線に沿って移動するカムと、
噛合部を有し前記カムの移動に伴って動作する歯止め部材と、
前記噛合部が噛み合う歯部を有するパーキングギヤと、を有し、
前記第1軸線の軸方向から見て前記第1軸線から前記第2軸線に仮想的な垂線を設定し、
前記連結部は、前記第1軸線周りを前記垂線に対して±45°の範囲内で移動し、
前記コイルバネのバネ定数をkとし、
前記ロッド本体の可動範囲における前記コイルバネの最大圧縮量をXbとし、
前記第1軸線の軸方向から見て、前記第1軸線と前記連結部との距離をRとし、
前記第1軸線の軸方向から見て、前記垂線と前記連結部とのなす角をθとし、
前記アクチュエータの自己保持トルクをTsとして、以下の式1が成り立つ、
パーキング機構。
【数1】
【請求項2】
前記ロッド本体の先端が挿入されるスリーブを備え、
前記カムロッドは、前記連結部において前記フランジに回転可能に支持され、前記ロッド本体において前記スリーブに支持される、
請求項1に記載のパーキング機構。
【請求項3】
前記アクチュエータは、
前記第1軸線と直交する方向に延びる回転シャフトを有するモータと、
前記回転シャフトの外周に設けられる前記モータに回転させられるウォームギヤと、
前記ウォームギヤと噛み合うウォームホイール、および前記ウォームホイールとともに前記第1軸線と平行な軸線周りに回転する小径ギヤを有するカウンタギヤ部と、
前記マニュアルシャフトの外周面に固定され、前記小径ギヤと噛み合って前記第1軸線周りを回転するアウトプットギヤ部と、を有する、
請求項1又は2に記載のパーキング機構。
【請求項4】
前記アクチュエータの、前記回転シャフトから前記マニュアルシャフトに至る動力伝達経路の減速比は、1:100以上である、
請求項3に記載のパーキング機構。
【請求項5】
前記アクチュエータは、前記モータ、前記ウォームギヤ、前記カウンタギヤ部、および前記アウトプットギヤ部を収容するケースを有し、
前記ケースには、前記回転シャフトの先端を露出させる開口部が設けられ、
前記回転シャフトの先端には、前記回転シャフトを回転させる工具に噛み合う工具接続部が設けられる、
請求項3又は4に記載のパーキング機構。
【請求項6】
前記カムロッドは、前記連結部と前記ロッド本体との間を繋ぐ中継部を有し、
前記連結部は、前記第1軸線の軸方向に沿って軸状に延び、
前記中継部は、前記第1軸線と直交する方向に沿って軸状に延び、
前記フランジは、
前記第1軸線の径方向に沿って延びるフランジ本体と、
前記フランジ本体から前記第1軸線の軸方向に沿って突出する突出部、を有し、
前記突出部は、前記第2軸線の軸方向において前記中継部に対し前記パーキングギヤ側、かつ前記第2軸線の軸方向から見て前記中継部に重なって配置される、
請求項1~5の何れか一項に記載のパーキング機構。
【請求項7】
前記突出部は、前記中継部に対向する対向面に位置し前記中継部の延びる方向に沿って延びる溝部を有する、
請求項6に記載のパーキング機構。
【請求項8】
前記カムロッドは、
前記フランジの前記第1軸線周りの周方向一方側の回転移動に伴い、前記連結部において前記フランジ本体に接触し前記第2軸線に沿って前記パーキングギヤ側へ移動し、
前記フランジの前記第1軸線周りの周方向他方側の回転移動に伴い、前記中継部において前記突出部に接触し前記第2軸線に沿って前記パーキングギヤの反対側へ移動する、
請求項6又は7に記載のパーキング機構。
【請求項9】
前記第1軸線と直交する第4軸線に沿って延び、前記歯止め部材を回転可能に支持するポールシャフトを有する、
請求項1~8の何れか一項に記載のパーキング機構。
【請求項10】
前記パーキング機構を収容するハウジングに設けられ、前記フランジの回転軌跡上で前記フランジに対向する突き当て部材を備える、
請求項1~9の何れか一項に記載のパーキング機構。
【請求項11】
前記コイルバネは、前記噛合部が前記歯部の外周面に押し当てられる状態において、前記最大圧縮量Xbで圧縮される、
請求項1~10の何れか一項に記載のパーキング機構。
【請求項12】
前記第1軸線の軸方向から見た前記第1軸線と前記連結部との距離Rは、前記垂線が延びる方向における前記アクチュエータの寸法より小さい、
請求項1~11の何れか一項に記載のパーキング機構。
【請求項13】
駆動装置に設けられるパーキング機構の組立方法であって、
前記パーキング機構は、
第1軸線に沿って延び前記第1軸線周りに回転するマニュアルシャフトを有するアクチュエータと、
前記マニュアルシャフトの外周に設けられ前記第1軸線の径方向に沿って延びるフランジと、
前記フランジに連結される連結部、前記第1軸線と直交する第2軸線に沿って延びて前記フランジの動きに沿って前記第2軸線に沿って移動するロッド本体、および前記連結部と前記ロッド本体との間を繋ぐ中継部を有するカムロッドと、
前記ロッド本体の先端が挿入されるスリーブと、
前記ロッド本体に取り付けられるコイルバネと、
前記ロッド本体に取り付けられ前記コイルバネを介して前記ロッド本体の動作が伝わり前記第2軸線に沿って移動するカムと、
噛合部を有し前記カムの移動に伴って動作する歯止め部材と、
前記噛合部が噛み合う歯部を有するパーキングギヤと、を有し、
前記フランジは、
前記第1軸線の径方向に沿って延びるフランジ本体と、
前記フランジ本体から第1軸と平行な方向に突出する突出部、を有し、
前記突出部は、前記第2軸線の軸方向において前記中継部に対し前記パーキングギヤ側、かつ前記第2軸線の軸方向から見て前記中継部に重なって配置され、
前記フランジに前記カムロッドを連結するカムロッド連結工程と、
前記スリーブを取り付けるスリーブ取り付け工程と、を有し、
前記スリーブ取り付け工程は、鉛直方向に沿って前記第2軸線を配置した姿勢で行われ、前記突出部によって前記中継部を下側から支持させて前記ロッド本体の先端を前記スリーブに挿入する、
パーキング機構の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーキング機構、およびパーキング機構の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を駆動する駆動装置には、パーキング機構が搭載される。特許文献1には、駆動装置によって制御カムを動作させ、ロックポールの係止爪をパーキングギヤに噛み合わせるパーキングロック装置(パーキング機構に相当)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のパーキング機構では、カム側からの反力によってアクチュエータのマニュアルシャフト(駆動軸)が回転することを抑制するために、マニュアルシャフトの回転位置を決める板バネを設けていた。このため、従来構造のパーキング機構では、部品点数が増加し、装置が大型化するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、小型化を実現できるパーキング機構の提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のパーキング機構の一つの態様は、第1軸線に沿って延び前記第1軸線周りに回転するマニュアルシャフトを有するアクチュエータと、前記マニュアルシャフトの外周に設けられ前記第1軸線の径方向に沿って延びるフランジと、前記フランジに連結される連結部、および前記第1軸線と直交する第2軸線に沿って延びて前記フランジの動きに沿って前記第2軸線に沿って移動するロッド本体を有するカムロッドと、前記ロッド本体に取り付けられるコイルバネと、前記ロッド本体に取り付けられ前記コイルバネを介して前記ロッド本体の動作が伝わり前記第2軸線に沿って移動するカムと、噛合部を有し前記カムの移動に伴って動作する歯止め部材と、前記噛合部が噛み合う歯部を有するパーキングギヤと、を有する。前記第1軸線の軸方向から見て前記第1軸線から前記第2軸線に仮想的な垂線を設定する。前記連結部は、前記第1軸線周りを前記垂線に対して±45°の範囲内で移動する。前記コイルバネのバネ定数をkとする。前記ロッド本体の可動範囲における前記コイルバネの最大圧縮量をXbとする。前記第1軸線の軸方向から見て、前記第1軸線と前記連結部との距離をRとする。前記第1軸線の軸方向から見て、前記垂線と前記連結部とのなす角をθとする。前記アクチュエータの自己保持トルクをTsとして、以下の式1が成り立つ。
【0007】
【発明の効果】
【0008】
本発明の一つの態様によれば、小型化を実現できるパーキング機構を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態の駆動装置を模式的に示す概念図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のパーキング機構の斜視図である。
【
図3】
図3は、一実施形態の駆動部のカムロッドの長さ方向に沿う断面図であり、アンロック状態を示す。
【
図4】
図4は、一実施形態の駆動部のカムロッドの長さ方向に沿う断面図であり、ロック状態を示す。
【
図5】
図5は、一実施形態の駆動部のカムロッドの長さ方向に沿う断面図であり、待機状態を示す。
【
図6】
図6は、一実施形態のパーキングポールおよびパーキングギヤの正面図であり、待機状態を示す。
【
図7】
図7は、一実施形態のパーキング機構の一部を第1軸線の軸方向から見た側面図である。
【
図8】
図8は、一実施形態のパーキング機構の組立方法のフランジ固定工程、カムロッド連結工程、およびスリーブ取り付け工程を説明するための側面図である。
【
図9】
図9は、一実施形態に採用可能な工具接続部の一例を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、一実施形態に採用可能な工具接続部の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、本実施形態の駆動装置1が水平な路面上に位置する図示しない車両に搭載された場合の位置関係を基に、鉛直方向を規定して説明する。また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。
【0011】
各図において、Z軸方向は、鉛直方向である。+Z側は、鉛直方向上側であり、-Z側は、鉛直方向下側である。本実施形態では、鉛直方向上側を単に「上側」と呼び、鉛直方向下側を単に「下側」と呼ぶ。X軸方向は、Z軸方向と直交する方向であって、駆動装置1が搭載される車両前後方向である。本実施形態において、+X側は、車両の前側であり、-X側は、車両の後側である。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向であって、車両の左右方向、すなわち車幅方向である。本実施形態において、+Y側は、車両の左側であり、-Y側は、車両の右側である。Y軸方向は、後述する第3軸線J3の軸方向に相当する。車両前後方向および左右方向は、鉛直方向と直交する水平方向である。本実施形態において、+Y側は、軸方向一方側に相当し、-Y側は、軸方向他方側に相当する。各図に適宜示す第3軸線J3は、Y軸方向、すなわち車両の左右方向に延びる。
【0012】
図1は、駆動装置1を模式的に示す概念図である。本実施形態の駆動装置1は、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、モータを動力源とする車両に搭載され、その動力源として使用される。
【0013】
駆動装置1は、モータ(動力部)2と、減速装置4および差動装置5を含むギヤ部(伝達機構)3と、パーキング機構8と、ハウジング6と、を備える。駆動モータ2は、車両を駆動する。ギヤ部3は、駆動モータ2に接続される。パーキング機構8は、ギヤ部3に取り付けられる。
【0014】
ハウジング6は、駆動モータ2を収容するモータ収容部61と、ギヤ部3およびパーキング機構8を収容するギヤ収容部62と、モータ収容部61とギヤ収容部62との間に設けられる隔壁61cと、を有する。
【0015】
駆動モータ2は、水平面に沿って延びる第3軸線J3を中心として回転する。駆動モータ2は、ロータ2aと、ステータ2cと、を備える。本実施形態において駆動モータ2は、インナーロータ型のモータである。したがって、ステータ2cは、ロータ2aの径方向外側を囲む。
【0016】
ロータ2aは、水平方向に延びる第3軸線J3を中心として回転する。ロータ2aは、第3軸線J3を中心として軸方向に沿って延びるモータシャフト2bを有する。
【0017】
モータシャフト2bは、第3軸線J3を中心として回転する。モータシャフト2bは、ハウジング6のモータ収容部61とギヤ収容部62とに跨って延びる。モータシャフト2bの左側の端部は、ギヤ収容部62の内部に突出する。モータシャフト2bの左側の端部には、ギヤ部3の第1ギヤ41が固定される。
【0018】
ギヤ部3は、ハウジング6のギヤ収容部62に収容される。ギヤ部3は、駆動モータ2に接続される。より詳細には、ギヤ部3は、モータシャフト2bの軸方向一方側で接続される。ギヤ部3は、駆動モータ2の動力を伝達する。ギヤ部3は、減速装置4と、差動装置5と、を有する。
【0019】
減速装置4は、駆動モータ2に接続される。減速装置4は、駆動モータ2の回転速度を減じて、駆動モータ2から出力されるトルクを減速比に応じて増大させる。減速装置4は、駆動モータ2から出力されるトルクを差動装置5へ伝達する。減速装置4は、第1ギヤ41と、第2ギヤ42と、第3ギヤ43と、中間シャフト45と、を有する。すなわち、ギヤ部3は、第1ギヤ41、第2ギヤ42、第3ギヤ43、および中間シャフト45を有する。
【0020】
第1ギヤ41は、モータシャフト2bの左側の端部に固定される。第1ギヤ41は、モータシャフト2bとともに、第3軸線J3周りを回転する。中間シャフト45は、第3軸線J3と平行な第5軸線J5に沿って延びる。中間シャフト45は、第5軸線J5を中心として回転する。第2ギヤ42および第3ギヤ43は、中間シャフト45の外周面に、軸方向に互いに間隔をあけて固定される。第2ギヤ42と第3ギヤ43とは、中間シャフト45を介して互いに接続される。第2ギヤ42は、第1ギヤ41に噛み合う。第2ギヤ42は、第5軸線J5周りを回転する。第3ギヤ43は、第2ギヤ42とともに第5軸線J5周りを回転する。第3ギヤ43は、差動装置5のリングギヤ(第4ギヤ)51と噛み合う。
【0021】
駆動モータ2から出力されるトルクは、モータシャフト2b、第1ギヤ41、第2ギヤ42、中間シャフト45および第3ギヤ43をこの順に介して差動装置5のリングギヤ51へ伝達される。減速装置4の各ギヤのギヤ比およびギヤの個数等は、必要とされる減速比に応じて適宜変更可能である。本実施形態において減速装置4は、各ギヤの軸芯が平行に配置される平行軸歯車タイプの減速機である。
【0022】
差動装置5は、減速装置4を介して駆動モータ2に接続される。差動装置5は、駆動モータ2から出力されるトルクを車両の車輪に伝達するための装置である。差動装置5は、車両の旋回時に、左右の車輪の速度差を吸収しつつ、左右両輪の車軸55に同トルクを伝える。差動装置5は、リングギヤ51と、図示しないギヤハウジングと、図示しない一対のピニオンギヤと、図示しないピニオンシャフトと、図示しない一対のサイドギヤと、を有する。すなわち、ギヤ部3は、リングギヤ51を有する。リングギヤ51は、第3ギヤ43と噛み合い第3軸線J3と平行な第6軸線J6周りを回転する。
【0023】
なお、車軸55は、車両の進行方向に対して直交する方向(すなわち、車両の幅方向)に沿って延びる。したがって、車軸55の延びる方向によって、駆動装置1が搭載された状態における車両の進行方向が推定される。
【0024】
パーキング機構8は、ギヤ部3に設けられ、ギヤ部3の駆動を制限する。パーキング機構8は、アクチュエータ70によって駆動される。パーキング機構8は、動力源であるアクチュエータ70によって、モータシャフト2bの回転が阻止されるロック状態と、モータシャフト2bの回転が許容されるアンロック状態と、の間で切り替えられる。パーキング機構8は、車両のギヤがパーキングである場合に、ロック状態となり、車両のギヤがパーキング以外である場合に、アンロック状態となる。車両のギヤがパーキング以外である場合とは、例えば、車両のギヤがドライブ、ニュートラル、リバースなどである場合を含む。
【0025】
図2は、パーキング機構8の斜視図である。
パーキング機構8は、パーキングギヤ10と、ポールシャフト29と、パーキングポール(歯止め部材)20と、カムロッド30と、カム35と、コイルバネ39と、スリーブ80と、フランジ90と、アクチュエータ70と、を有する。
【0026】
パーキングギヤ10は、モータシャフト2bの外周面に固定される。パーキングギヤ10は、軸方向において、第1ギヤ41と隔壁61cとの間に配置される。
【0027】
本実施形態のパーキングギヤ10は、第3軸線J3を中心とする円環状であり、モータシャフト2bの外周面に嵌合される。パーキングギヤ10は、モータシャフト2bとともに回転する。すなわち、パーキングギヤ10は、車両の車輪と連動して第1ギヤ41とともに第3軸線J3周りを回転する。パーキングギヤ10の外周には、周方向に沿って並ぶ複数の歯部11が設けられる。歯部11は、第3軸線J3の径方向外側に突出する。後述するロック状態において、歯部11は、噛合部25に噛み合う。
【0028】
ポールシャフト29は、第3軸線J3と平行な第4軸線J4に沿って延びる。すなわち、ポールシャフト29は、モータシャフト2bと平行なシャフトである。ポールシャフト29は、パーキングポール20を回転可能に支持する。
【0029】
ポールシャフト29には巻きバネ29aが装着される。巻きバネ29aは、コイル状のバネ本体とバネ本体の両端部から延び出るバネ端部とを有する。巻きバネ29aのバネ端部には、ポールシャフト29が挿入される。巻きバネ29aの一方のバネ端部は、ハウジング6の内側面に設けられるバネ掛け部(図示略)に掛けられる。また、巻きバネ29aの他方のバネ端部は、パーキングポール20に設けられるバネ掛け孔20hに掛けられる。巻きバネ29aは、パーキングポール20に対して、先端をスリーブ80側に退避させる方向の弾性力を加える。
【0030】
パーキングポール20は、パーキングギヤ10の側部に配置される。パーキングポール20は、基端部22と、基端部22から斜め下側に延びるパーキングポール本体部21と、カム接触部23と、噛合部25と、を有する。
【0031】
パーキングポール本体部21は、第3軸線J3の軸方向から見て、パーキングギヤ10とスリーブ80との間に配置される。パーキングポール本体部21は、パーキングギヤ10側を向くギヤ対向面21aと、スリーブ80側を向くスリーブ対向面21bと、を有する。本実施形態において、噛合部25はギヤ対向面21aに位置し、カム接触部23は、スリーブ対向面21bに位置する。カム接触部23は、パーキングポール20の先端部に位置する。噛合部25は、パーキングポール20の長さ方向において、基端部22とカム接触部23との間に位置する。
【0032】
パーキングポール20の基端部22には、第4軸線J4を中心とする支持孔22hが設けられる。支持孔22hには、ポールシャフト29が挿入される。これにより、パーキングポール20は、基端部22においてポールシャフト29に支持され、ポールシャフト29により第4軸線J4周りに回転可能となる。
【0033】
噛合部25は、パーキングポール本体部21のギヤ対向面21aからパーキングギヤ10側に突出する。噛合部25は、パーキングギヤ10の歯部11に対向する。パーキングポール20が、ポールシャフト29回りを回転移動することで、噛合部25は、パーキングギヤ10に対して近接および離間する方向に移動する。
【0034】
パーキングポール20は、ロック状態とアンロック状態と待機状態と、の何れかの状態を取り得る。ロック状態とアンロック状態とは、操作者の操作に伴い相互に移行する。待機状態は、操作者がアンロック状態からロック状態に移行させる操作をした際に、アンロック状態からロック状態に移行する過程で現れる。
【0035】
ロック状態は、噛合部25をパーキングギヤ10に噛み合わせてパーキングギヤ10の回転を阻害する状態である。ロック状態のパーキング機構8において、噛合部25は、パーキングギヤ10の歯部11同士の間に嵌る。
【0036】
アンロック状態は、噛合部25をパーキングギヤ10から離間させてロックを解除しパーキングギヤ10の回転を許容する状態である。アンロック状態のパーキング機構8において、噛合部25は、歯部11の間から第3軸線J3の径方向外側に退避する。
【0037】
待機状態は、
図6に示すように、噛合部25をパーキングギヤ10の歯部11に押し当てて、ロック状態となるのを待機する状態である。待機状態において、パーキングギヤ10が回転し歯部11の隙間と噛合部25とが一致すると、噛合部25が歯部11に噛み合いロック状態に遷移する。
【0038】
カム接触部23は、パーキングポール本体部21のスリーブ対向面21bに配置される。カム接触部23は、スリーブ80の切欠部83の内側に位置する。カム接触部23は、カム35から力を受ける作用部として機能する。パーキングポール20は、カム接触部23においてカム35から力を受けて第4軸線J4周りを回転する。すなわち、パーキングポール20は、カム35の移動に伴って動作する。
【0039】
図3~
図5は、カムロッド30の長さ方向に沿う断面図であり、
図3はアンロック状態を示し、
図4はロック状態を示し、
図5は待機状態を示す。また、
図6は、本実施形態のパーキングポール20およびパーキングギヤ10の正面図であり、待機状態を示す。
【0040】
パーキングポール20のカム接触部23は、カム35の外周面と対向する。カム接触部23は、
図3に示すアンロック状態において、カム35の外周面と離間する。また、カム接触部23は、
図4に示すロック状態、および
図5に示す待機状態において、カム35の外周面と接触する。カム接触部23は、アンロック状態からロック状態への移行に伴い、カム35の動作に合わせて移動する。パーキングポール20は、カム接触部23の移動に伴い第4軸線J4周りを回転する。
【0041】
図2に示すように、第1軸線J1に沿って延びるアクチュエータ70は、モータ79と、ウォームギヤ73と、カウンタギヤ部74と、アウトプットギヤ部75と、マニュアルシャフト71と、ケース72と、回転センサ76と、を有する。本実施形態において、モータ79の動力は、ウォームギヤ73、カウンタギヤ部74、アウトプットギヤ部75、およびマニュアルシャフト71の順で伝達される。
【0042】
モータ79は、第1軸線J1と直交する第7軸線(軸線)J7に沿って延びる回転シャフト79aを有する。回転シャフト79aは、第7軸線J7周りを回転する。モータ79は、回転センサ76による測定値を基に、図示略の制御部によってフィードバック制御される。
【0043】
ウォームギヤ73は、回転シャフト79aの外周面に設けられる。ウォームギヤ73は、回転シャフト79aと一体的に設けられる。しかしながらウォームギヤ73は、回転シャフト79aの外周面に固定される別部材であってもよい。
【0044】
カウンタギヤ部74は、ウォームホイール74aと小径ギヤ74bと軸部74cとを有する。カウンタギヤ部74は、第1軸線J1と平行な第8軸線(軸線)J8を中心とするギヤ部材である。第8軸線J8は、第7軸線J7と直交する。ウォームホイール74a、小径ギヤ74b、および軸部74cは、1つの単一部材の各部であっても互いに固定した別部材であってもよい。
【0045】
カウンタギヤ部74の軸部74cは、第8軸線J8に沿って延びる。ウォームホイール74aは、第8軸線J8を中心とするはすば歯車である。ウォームホイール74aは、ウォームギヤ73と噛み合い、第8軸線J8周りを回転する。小径ギヤ74bは、ウォームギヤ73より小径のギヤである。小径ギヤ74bは第8軸線J8を中心とする平歯車である。小径ギヤ74bは、ウォームホイール74aとともに第8軸線J8周りに回転する。
【0046】
アウトプットギヤ部75は、マニュアルシャフト71の外周面に固定され小径ギヤ74bと噛み合って第1軸線J1周りを回転する。アウトプットギヤ部75は、扇型ギヤ75aと固定筒部75bとを有する。扇型ギヤ75aは、第1軸線J1を中心とする扇状の平歯車である。アウトプットギヤ部75は、扇型ギヤ75aにおいて小径ギヤ74bと噛み合う。固定筒部75bは、第1軸線J1を中心とする筒状である。固定筒部75bには、マニュアルシャフト71が挿入され、マニュアルシャフト71と固定される。
【0047】
ケース72は、モータ79、ウォームギヤ73、カウンタギヤ部74、およびアウトプットギヤ部75を収容する。また、ケース72は、マニュアルシャフト71の基端部分を収容する。マニュアルシャフト71は、ケース72の内外を貫通して延びる。ケース72は、ハウジング6(
図1参照)の外部に配置される。
【0048】
ケース72は、回転シャフト79aの先端79bと対向する対向壁部72aを有する。対向壁部72aには、開口部72wが設けられる。すなわち、ケース72には、開口部72wが設けられる。開口部72wは、対向壁部72aを厚さ方向に貫通する。開口部72wは、回転シャフト79aの先端79bをケース72の外部に露出させる。ケース72には、開口部72wを覆う蓋部(図示略)が取り付けられる。
【0049】
本実施形態によれば、ケース72の開口部72wを開放することで、ケース72を分解することなく作業者が回転シャフト79aの先端79bにアクセスすることができる。これにより、回転シャフト79aの先端79bを回転させ、各ギヤを介してマニュアルシャフト71を駆動することができる。回転シャフト79aを回転させるための先端79bの構造については、
図9、および
図10を基に後段において説明する。
【0050】
マニュアルシャフト71は、第1軸線J1を中心とする円柱状である。マニュアルシャフト71は、アウトプットギヤ部75とともに第1軸線J1周りを回転する。すなわち、マニュアルシャフト71は、モータ79の動力によって第1軸線J1周りに回転する。
【0051】
マニュアルシャフト71は、ハウジング6(
図1参照)の内外に延びる。マニュアルシャフト71は、ハウジング6の内部でフランジ90に接続され、ハウジング6の外部でケース72内に挿入されアウトプットギヤ部75に接続される。
【0052】
図2に示すように、本実施形態のマニュアルシャフト71とポールシャフト29とは互いに直交して延びる。すなわち、ポールシャフト29は、第1軸線J1と直交する第4軸線J4に沿って延びる。本実施形態によれば、マニュアルシャフト71とポールシャフト29とが互いに平行に延びる場合と比較して、シャフト同士を立体的に配置することが可能となり、全体としてパーキング機構8の小型化を図ることができる。
【0053】
ポールシャフト29は、パーキングギヤ10の側方でパーキングギヤ10の回転軸と平行に配置される。したがって、パーキングポール20は、車両の左右方向に延び、マニュアルシャフト71は車両の前後方向に延びる。
【0054】
本実施形態によれば、マニュアルシャフト71とポールシャフト29とが互いに直交して延びることで、マニュアルシャフト71が延びる方向を車両の前後方向とすることができる。これにより、マニュアルシャフト71によって駆動されるフランジ90、およびカムロッド30の駆動方向が車両の左右方向となる。本実施形態によれば、車両の急加速および急停止に伴う慣性力が、フランジ90、およびカムロッド30の動作に影響を及ぼすことを抑制できる。
【0055】
本実施形態において、マニュアルシャフト71は、ポールシャフト29の下側に配置される。このため、ポールシャフト29の下側の領域を、マニュアルシャフト71が通過する領域として有効に利用することができ、パーキング機構8の小型化を図ることができる。
【0056】
回転センサ76は、アウトプットギヤ部75に取り付けられる。回転センサ76は、アウトプットギヤ部75およびマニュアルシャフト71の回転角を測定する。回転センサ76は、モータ79を制御する制御部(図示略)に接続される。
【0057】
本実施形態において、アクチュエータ70の動力伝達経路には、ウォームギヤ73およびウォームホイール74aが配置される。これにより、アクチュエータ70は、自己保持トルクが高められている。ここで、自己保持トルクとは、出力側から入力したトルクに対し、内部機構の回転を抑制できる最大のトルクである。本実施形態のアクチュエータ70において、自己保持トルクは、マニュアルシャフト71に入力した第1軸線J1周りのトルクであり、マニュアルシャフト71が回転を始めるトルクである。
【0058】
ウォームギヤ73およびウォームホイール74aを有する動力伝達経路は、入力側から出力側に向かう動力伝達に伴う損失に対し、出力側から入力側に向かう動力伝達に伴う損失が大きい。このため、アクチュエータ70は、ウォームギヤ73およびウォームホイール74aを有することで、自己保持トルクを高めることができる。すなわち、本実施形態によれば、簡素な構造でアクチュエータ70の自己保持トルクを高めることができる。後段において詳しく述べるが、アクチュエータ70は、十分に大きな自己保持トルクを有することで、カムロッド30から大きな力が付与されてもマニュアルシャフト71の回転角を維持できる。
【0059】
なお、本実施形態では、ウォームギヤ73およびウォームホイール74aを有するアクチュエータ70について説明するが、アクチュエータ70は、本実施形態に限定されない。アクチュエータ70は、ウォームギヤ73およびウォームホイール74aを有していない場合であっても、アクチュエータ70が十分な自己保持トルクを有していれば同様の効果を得ることができる。具体的には、回転シャフト79aからマニュアルシャフト71に至る動力伝達経路の減速比が、1:100以上であれば十分な自己保持トルクを得ることができる。なお、この減速比は、本実施形態のアクチュエータ70も満たしている。
【0060】
フランジ90は、マニュアルシャフト71の外周面に設けられる。本実施形態のフランジ90は、マニュアルシャフト71と別部材でありマニュアルシャフト71の外周面に固定される。しかしながら、フランジ90は、マニュアルシャフト71の一部であってもよい。
【0061】
フランジ90は、第1軸線J1の径方向に沿って延びる。フランジ90は、マニュアルシャフト71とともに第1軸線J1周りに回転する。本実施形態のフランジ90は、第1軸線J1の径方向に沿って延びるフランジ本体91と、フランジ本体91の先端に設けられる突出部92と、を有する。突出部92は、フランジ本体91から第1軸線J1の軸方向に沿って突出する。
【0062】
フランジ本体91は、第1軸線J1と直交する板状である。フランジ本体91には、厚さ方向に貫通する連結孔91hが設けられる。連結孔91hには、カムロッド30の連結部30aが通される。カムロッド30の連結部30aは、連結孔91hを中心として回転可能である。
【0063】
カムロッド30は、連結部30aと、中継部30bと、ロッド本体30cと、を有する。カムロッド30において、連結部30aと中継部30bとの間には第1折曲部31が設けられ、中継部30bとロッド本体30cとの間には第2折曲部32が設けられる。カムロッド30は、第1折曲部31および第2折曲部32において、それぞれ略90°で折り曲げられる。カムロッド30は、第1折曲部31および第2折曲部32において折り曲げられた断面円形の棒状である。
【0064】
連結部30aは、第1軸線J1の軸方向に沿って軸状に延びる。したがって、連結部30aは、マニュアルシャフト71と平行に延びる。連結部30aは、フランジ90の連結孔91hに挿入される。これにより、連結部30aは、フランジ90に対して回転可能に、フランジ90に連結される。すなわち、カムロッド30は、連結部30aにおいてフランジ90に回転可能に支持される。連結部30aの外周には、連結部30aの連結孔91hからの離脱を抑制する突起が設けられる。
【0065】
ロッド本体30cは、第3軸線J3と略平行な第2軸線J2に沿って軸状に延びる。第2軸線J2は、第1軸線J1と直交する。したがって、ロッド本体30cは、連結部30aと直交する方向に延びる。ロッド本体30cは、スリーブ80の内部を通過する。ロッド本体30cは、スリーブ80によってガイドされる。すなわち、カムロッド30は、ロッド本体30cにおいてスリーブ80に支持される。また、カムロッド30は、フランジ90の動き(すなわち、第1軸線J1周りの回転)に伴い第2軸線J2に沿って移動する。なお、アンロック状態においてロッド本体30cは、第2軸線J2に対し若干傾斜する(
図3参照)。
【0066】
中継部30bは、第1軸線J1、および第2軸線J2と直交する方向(本実施形態では上下方向)に沿って軸状に延びる。したがって、中継部30bは、連結部30a、およびロッド本体30cと、それぞれ直交する。中継部30bの上端は連結部30aに接続される。また、中継部30bの下端はロッド本体30cに接続される。中継部30bは、連結部30aとロッド本体30cとの間を繋ぐ。
【0067】
中継部30bは、第3軸線J3の軸方向から見て第3軸線J3側に向かって延びる。中継部30bは、連結部30aとロッド本体30cの上下方向の相対的な位置をずらすために設けられる。中継部30bを第3軸線J3側に向かって延びるように配置することで、連結部30aをロッド本体30cに対し第3軸線J3側に近づけて配置できる。このため、ロッド本体30cに支持されるカム35を最適な位置に配置しつつ、連結部30aに接続されるフランジ90、マニュアルシャフト71およびアクチュエータなどを第3軸線J3側に近づけて配置できる。これにより、パーキング機構8の各部を第3軸線J3の周りに密集して配置することができ、駆動装置1内におけるパーキング機構8の配置スペースを小さくすることができる。
【0068】
図3~
図5に示すように、ロッド本体30cには、コイルバネ39とカム35とキャップ38とが通される。すなわち、コイルバネ39、カム35、およびキャップ38は、ロッド本体30cに取り付けられる。
以下の説明において、ロッド本体30cの中継部30bに接続される側の端部を基端30cbとし、基端の反対側の端部を先端30caと呼ぶ。
【0069】
コイルバネ39は、カム35に対してロッド本体30cの基端30cb側に配置される。ロッド本体30cの基端30cbの外周には、コイルバネの39の内径より大きい突起30ccが設けられる。コイルバネ39は、自然長に対し圧縮された状態で突起30ccとカム35の間に配置される。コイルバネ39は、カム35に対しロッド本体30cの先端30ca側に向かう力を付与する。
【0070】
キャップ38は、ロッド本体30cの先端30caに固定される。キャップ38は、ロッド本体30cにおいて、カム35より先端30ca側に配置される。キャップ38は、カム35の端面に接触する。キャップ38は、カム35がロッド本体30cに対して先端30ca側に移動することを制限する。キャップ38は、カム35がロッド本体30cの先端30caから抜け落ちることを抑制する。
【0071】
カム35は、ロッド本体30cを中心とする環状である。カム35の中央の貫通孔には、ロッド本体30cが挿通される。カム35の貫通孔の内径は、ロッド本体30cの外径より大きい。カム35は、ロッド本体30cの長さ方向においてコイルバネ39とキャップ38との間に挟まれる。コイルバネ39は、カム35の基端30cb側への移動に伴い圧縮される。カム35は、コイルバネ39の反発力より強い基端30cb側に向かう力を受けた場合に、コイルバネ39を圧縮させてロッド本体30cに対して基端30cb側に移動する。
【0072】
カム35は、外周面において、パーキングポール20のカム接触部23に接触する。カム35の外周面には、第1円錐面35aと第2円錐面35bとが設けられる。第1円錐面35aおよび第2円錐面35bは、同軸上に配置される。第1円錐面35aおよび第2円錐面35bは、それぞれ、ロッド本体30cの基端30cb側から先端30ca側に向かうに従い徐々に外径を小さくする円錐状のテーパ面である。第2円錐面35bは、第1円錐面35aに対して先端30ca側に位置する。第1円錐面35aのテーパ角は、第2円錐面35bのテーパ角と比較して十分に小さい。第2円錐面35bのテーパ角は、ロック状態からアンロック状態への移行時に、スリーブ80とカム接触部23との間からカム35が円滑に離脱できる十分な角度とされる。なお、第1円錐面35aは、円錐状ではなく円柱状の円柱面であってもよい。
【0073】
カム35には、コイルバネ39を介してロッド本体30cの動作が伝わる。これにより、カム35は、ロッド本体30cとともに第2軸線に沿って移動する。また、カム35は、外周面においてパーキングポール20のカム接触部23に接触する。カム35は、カムロッド30の動作に伴い移動することでパーキングポール20を動作させる。
【0074】
図3に示すように、アンロック状態のパーキング機構8において、カム35の第2円錐面35bは、パーキングポール20のカム接触部23と、隙間を介して対向する。また、
図4に示すように、ロック状態のパーキング機構8において、カム35は、第1円錐面35aにおいてカム接触部23に接触する。ロック状態とアンロック状態との間でパーキング機構8の状態が切り替わる際に、カム35は、第2円錐面35bにおいてカム接触部23と接触しさらに摺動する。これにより、カム35は、カム接触部23を上側に移動させパーキングポール20を第4軸線J4周りに回転させる。
【0075】
図5に示すように、待機状態のパーキング機構において、カム35は、第2円錐面35bにおいてカム接触部23に接触する。
図6に示すように、待機状態は、噛合部25がパーキングギヤ10の歯部11の外周面に押し当てられる状態である。
図5に示すように、パーキングポール20は、カムロッド30がロック状態の位置に移動しても、カム35が移動できず、カム35がカム接触部23に押し付けられた状態となる。これにより、コイルバネ39がカム35とロッド本体30cの突起30ccとの間で圧縮される。コイルバネ39は、パーキングギヤ10が回転して噛合部25が歯部11の間に噛み合うまで、カム35をカム接触部23に押し当てる。コイルバネ39は、待機状態において最も圧縮される。
【0076】
図4および
図5には、コイルバネ39の自然長さLnを示す。上述したように、コイルバネ39は、圧縮された状態でロッド本体30cに組み付けられる。
図4に示すように、組み付け初期状態のコイルバネ39は、Xaだけ圧縮されて長さLaとされる。また、
図5に示すように、待機状態のコイルバネ39は、最大圧縮量Xbだけ圧縮されて長さLbとされる。すなわち、コイルバネ39は、噛合部25が歯部11の外周面11aに押し当てられる状態(待機状態)において、最大圧縮量Xbで圧縮される。
【0077】
スリーブ80は、第2軸線J2に沿って延びる筒状である。スリーブ80には、ロッド本体30cの先端30caが挿入される。スリーブ80は、ロッド本体30cを囲む筒状である。スリーブ80には、内側面81の一部を径方向外側に開口させる切欠部83が設けられる。スリーブ80は、ハウジング6の内側面に固定される。スリーブ80は、ロッド本体30cおよびカム35の動作をガイドする。
【0078】
図7は、本実施形態のパーキング機構8の一部を第1軸線J1の軸方向から見た側面図である。
図7に示すように、第1軸線J1の軸方向から見て、第1軸線J1から第2軸線J2に仮想的な垂線Pを設定する。垂線Pは、第2軸線J2と直交する。本実施形態において、第1軸線J1、および第2軸線J2は、それぞれ水平方向に沿って延びるため、垂線Pは鉛直方向に延びる。なお、垂線Pは、必ずしも鉛直方向に延びるものでなくてもよい。
【0079】
第1軸線J1の軸方向から見て、第1軸線J1とカムロッド30の連結部30aの中心点とを結ぶ仮想線VLを設定する。連結部30aは、マニュアルシャフト71の回転に伴い第1軸線J1周りを移動する。このため、連結部30aは、フランジ90の動作に伴い第1軸線J1を中心とする仮想円VCに沿って移動する。
【0080】
仮想線VLと垂線Pとのなす角をθとする。すなわち、第1軸線J1の軸方向から見て、垂線Pと連結部30aとのなす角をθとする。角θは、連結部30aの仮想円VCに沿う移動に伴い変化する。連結部30aは、第1軸線J1周りを垂線Pに対して±45°の範囲内で移動する。したがって、角θは、±45°以下の角度である。なお、ここで、連結部30aが移動する範囲(±45°)とは、あくまで最大の範囲であって、連結部30aは、この範囲内のさらに狭い可動範囲内を移動する。
【0081】
第1軸線J1の軸方向から見て、第1軸線J1と連結部30aとの距離をRとする。距離Rは、仮想円VCの半径である。さらに、コイルバネ39のバネ定数をkとする。また、ロッド本体30cの可動範囲におけるコイルバネ39の最大圧縮量をXbとする。さらに、アクチュエータ70の自己保持トルクをTsとする。
【0082】
以上のように、バネ定数k、最大圧縮量Xb、距離R、および角θを設定した場合、本実施形態のアクチュエータ70の自己保持トルクTsとして、以下の式1が成り立つ。
【0083】
【0084】
式1の右辺は、カムロッド30からマニュアルシャフト71に入力され得る最大のトルクである。マニュアルシャフト71は、コイルバネ39が圧縮される場合にカムロッド30からトルクを受ける。したがって、マニュアルシャフト71には、パーキングポール20が待機状態となり、コイルバネ39が最大圧縮量Xbで圧縮される場合に最も大きなトルクが付与される。
【0085】
連結部30aには、コイルバネ39の反力Fspが付与される。反力Fspは、コイルバネ39の最大圧縮量Xbとコイルバネ39のバネ定数kの積として表される。反力Fspは、仮想円VCの接線方向に対して角θをなす。このため、マニュアルシャフト71に付与される最大のトルクは、Fspにcosθを掛け合わせた値(式1の右辺)となる。
【0086】
本実施形態によれば、アクチュエータ70は、カムロッド30からマニュアルシャフト71に入力され得る最大のトルクより大きい自己保持トルクTsを有する。このため、アクチュエータ70は、カムロッド30からトルクを受けても、マニュアルシャフト71を回転させることなく、マニュアルシャフト71の回転角を維持できる。
【0087】
本実施形態のパーキング機構8によれば、マニュアルシャフト71の回転角を位置決めする板バネ等の位置決め構造を必要としない。このため、本実施形態によれば、部品点数を削減することができるのみならず、パーキング機構8の小型化を図ることができる。
【0088】
また、本実施形態のパーキング機構8によれば、板バネ等の位置決め構造を有する場合と比較して、板バネの弾性力に抗してマニュアルシャフト71を回転動作させる必要がなく、アクチュエータ70の省電力化を図ることができる。
【0089】
本実施形態のアクチュエータ70によれば、回転シャフト79aからマニュアルシャフト71に至る動力伝達経路の減速比が、1:100以上である。これにより、上述の自己保持トルクTsを確保している。また、このような大きなが減速比を実現することで、アクチュエータ70がカムロッド30に大きな力を付与できる。
【0090】
パーキングポール20が、ロック状態からアンロック状態に移行する際に、パーキングポール20のカム接触部23から受ける力によって、カム35が噛み込む場合がある。本実施形態によれば、アクチュエータ70がカムロッド30に大きな力を付与できるため、カム35の噛み込みを解消しやすい。また、カム35の噛み込み時にカム35に生じる力は、パーキングギヤ10が高トルクを伝達するシャフトに固定される場合に、大きくなりやすい。本実施形態によれば、カム35の噛み込みを解消し易い構造を有するため、パーキングギヤ10を伝達トルクの大きいシャフト(例えば、中間シャフト45(
図1参照))に固定する構造を採用し易い。
【0091】
図7においてアクチュエータ70のケース72の外径を二点鎖線によって図示する。
図7に示すように、垂線Pが延びる方向(本実施形態では上下方向)におけるアクチュエータ70の寸法を高さ寸法hとする。本実施形態において、第1軸線J1の軸方向から見た第1軸線J1と連結部30aとの距離Rは、アクチュエータの高さ寸法hより小さい。このため、アクチュエータ70の大きさに対して、フランジ90が大型化しすぎることがなく、コンパクトなパーキング機構8を提供できる。
【0092】
本実施形態において、カムロッド30の連結部30aは、第1軸線J1周りを垂線Pに対して±45°の範囲内で移動する。すなわち、角θは、±45°の範囲内の角度である。カムロッド30の第2軸線J2に沿う移動ストロークは、R・sinθで表される。角θの範囲を±45°とすることで、マニュアルシャフト71の回転角に対してカムロッド30の移動ストロークを十分に大きく確保することができる。
【0093】
次に、フランジ90の突出部92の構成についてより具体的に説明する。
図2に示すように、突出部92は、第2軸線J2の軸方向において中継部30bに対しパーキングギヤ10側、かつ第2軸線J2の軸方向から見て中継部30bに重なって配置される。
【0094】
突出部92は、中継部30bに対向する対向面92fを有する。対向面92fは、第2軸線J2の軸方向において隙間を介して中継部30bと対向する。対向面92fには、中継部30bの延びる方向(本実施形態では上下方向)に沿って延びる溝部92gが設けられる。すなわち、突出部92は、対向面92fに位置する溝部92gを有する。なお、本実施形態の突出部92は、板状であるため、溝部92gは切欠状である。
【0095】
ここで、
図7に二点鎖線で示すように、フランジ90に設けられる連結孔191hが、カムロッド30の連結部30aの外周に対して十分に大きい場合を想定する。この場合、カムロッド30は、連結孔191hと連結部30aとのガタ分だけ、フランジ90に対し第2軸線J2に沿って移動可能である。また、連結孔191hと連結部30aとのガタの第2軸線J2に沿う大きさは、中継部30bと突出部92との第2軸線J2に沿う方向の距離より大きい。このため、フランジ90からカムロッド30への力の伝わり方は、フランジ90の回転方向が周方向の何れの方向かで変わる。すなわち、フランジ90が
図7中反時計回りで回転するとき、カムロッド30は連結孔191hの内側面で
図7中右側に押される。一方で、フランジ90が
図7中時計回りで回転するとき、カムロッド30は中継部30bの対向面で
図7中左側に押される。
【0096】
この構成によれば、カムロッド30は、フランジ90の第1軸線J1周りの周方向一方側(
図7において反時計回り)の回転移動に伴い、連結部30aにおいてフランジ本体91に接触し第2軸線J2に沿ってパーキングギヤ10側(
図7において右側)へ移動する。また、カムロッド30は、フランジ90の第1軸線J1周りの周方向他方側(
図7において時計回り)の回転移動に伴い、中継部30bにおいて突出部92に接触し第2軸線J2に沿ってパーキングギヤ10の反対側(
図7において左側)へ移動する。
【0097】
この構成によれば、カムロッド30をパーキングギヤ10側に移動させる場合と、その反対側に移動させる場合とで、フランジ90からカムロッド30に力を伝える作用点に位置を変えることができる。より具体的には、カムロッド30をパーキングギヤ10の反対側(
図7において左側)に移動させる場合、パーキングギヤ10側に移動させる場合よりも、作用点を第1軸線J1から遠くに配置できる。これにより、カムロッド30をパーキングギヤ10の反対側(
図7において左側)に移動させる場合には、小さな回転角でカムロッド30を大きく移動させることが可能となる。一方で、カムロッド30をパーキングギヤ10側(
図7において右側)に移動させる場合には、大きな力でカムロッド30を移動させることが可能となる。
【0098】
また、突出部92は、パーキング機構8の組立方法において利用される。
パーキング機構8の組立方法は、フランジ固定工程、カムロッド連結工程、およびスリーブ取り付け工程を有する。ここでは、主に、これらの各工程について説明する。
【0099】
図2に示すパーキング機構8において、フランジ固定工程、カムロッド連結工程、およびスリーブ取り付け工程を行う前に、予め以下の準備がなされる。
パーキング機構8の組立工程では、まず、アクチュエータ70が組み立てられる。次いでアクチュエータ70をハウジング6(
図1参照)の外側面に固定する。また、ハウジング6の内側面には、ポールシャフト29、およびパーキングポール20が組み付けられ、さらにギヤ部にパーキングギヤ10が組み付けられる。
【0100】
図8は、本実施形態のパーキング機構8の組立方法のフランジ固定工程、カムロッド連結工程、およびスリーブ取り付け工程を説明するための側面図である。なお、
図8には、組立工程における鉛直方向上側を矢印Uで示す。
【0101】
フランジ固定工程、カムロッド連結工程、およびスリーブ取り付け工程は、この順で行われる。上述したように、フランジ固定工程に先立ち、アクチュエータ70がハウジング6に固定されている。このため、アクチュエータ70のマニュアルシャフト71は、ハウジング6の内側面からハウジング6の内側に突出した状態となっている。
【0102】
フランジ固定工程は、マニュアルシャフト71にフランジ90を固定する工程である。フランジ固定工程において作業者は、フランジ90に設けられる挿入孔91aにマニュアルシャフト71を挿入し固定部材95によってこれらを相対的に固定する。
【0103】
カムロッド連結工程は、フランジ90にカムロッド30を連結する工程である。なお、カムロッド連結工程に先立って、ロッド本体30cには、コイルバネ39、カム35、およびキャップ38が組み付けられる。
【0104】
カムロッド連結工程において作業者は、フランジ90に設けられる連結孔91hにカムロッド30の連結部30aを挿入して回転可能に連結する。カムロッドの連結部30aの外周面には突起が設けられ、連結孔91hの内縁には突起と略同形状の切欠が設けられる。作業者は、連結孔91hに連結部30aを挿入する際に、連結孔91hの切欠に連結部30aの突起を合わせて挿入し、連結部30aを回転させる。これにより、連結部30aがフランジ90から離脱することを抑制できる。
【0105】
スリーブ取り付け工程は、スリーブ80を取り付ける工程である。スリーブ取り付け工程は、
図8に示すように、鉛直方向に沿って第2軸線J2を配置した姿勢で行われる。すなわち、スリーブ取り付け工程は、ハウジング6を水平方向から鉛直方向に90°傾けた状態で行われる。
【0106】
スリーブ取り付け工程において、フランジ90の突出部92は、カムロッド30の中継部30bの下側に配置される。スリーブ取り付け工程において、作業者は、突出部92によって中継部30bを下側から支持させてロッド本体30cの先端30caをスリーブ80に挿入する。さらに、作業者は、スリーブ80をハウジング6の内側面に固定する。
【0107】
スリーブ取り付け工程において、中継部30bは、突出部92の溝部92gに収容される。これにより、突出部92は、単に中継部30bを下側から支持するのみではなく、中継部30bを安定してさせることができ、スリーブ取り付け工程において、中継部30bが離脱することを抑制できる。
【0108】
本実施形態によれば、フランジ90に突出部92が設けられることで、組立工程において不安定になり易いカムロッド30を突出部92によって仮保持することができる。これにより、スリーブ80にロッド本体30cの先端30caを挿入する作業を容易に行うことができ、パーキング機構8の組立工程を簡素化できる。
【0109】
なお、上述したフランジ固定工程、およびカムロッド連結工程も、スリーブ取り付け工程と同様の姿勢で行うことが好ましい。これにより、工程の中でハウジング6の姿勢を変える必要がなくなり、工程間のタクトタイムを削減できる。
【0110】
次に、回転センサ76の構成について説明する。
本実施形態のパーキング機構8は、マニュアルシャフト71の回転角について機械的な位置決め機構を有していない。このため、マニュアルシャフト71の回転角の位置決めは、アウトプットギヤ部75に設けられる回転センサ76の測定結果に基づいて電気的に制御される。本実施形態においてアクチュエータ70は、突き当て工程を行うことで回転センサ76の基準値を取得する。回転センサ76は、基準値からの相対的な角度に基づきマニュアルシャフト71の回転角を出力する。
【0111】
図7に示すように、パーキング機構8を収容するハウジング6の内側面には、突き当て部材6aが設けられる。本実施形態の突き当て部材6aは、ハウジング6の内側面に固定されるピン状の部材である。なお、突き当て部材6aは、ハウジング6の内側面の一部であってもよい。
【0112】
突き当て部材6aは、第1軸線J1周りの周方向において、フランジ90の端面91fに対向する。すなわち、突き当て部材6aは、フランジ90の回転軌跡上でフランジ90に対向する。
【0113】
突き当て工程は、フランジ90を突き当て部材6aに突き当てる工程である。フランジ90は、マニュアルシャフト71の回転に伴い突き当て部材6a側に回転させることで、端面91fにおいて突き当て部材6aに接触する。
【0114】
フランジ90が突き当て部材6aに接触することで、フランジ90の回転は制限される。回転センサ76に接続される制御部(図示略)は、回転センサ76の測定値が一定となったところでフランジ90が突き当て部材6aに接触したことを判定し、この値を基準値として記憶する。また、制御部は、基準値を機械的な基準として、マニュアルシャフト71の回転角を制御する。
【0115】
本実施形態によれば、ハウジング6に設けられる突き当て部材6aを用いて、回転センサ76の基準値を導出する。このため、回転センサ76の組み付け精度、および各部材の寸法精度の個体差に関わらず、回転センサ76の測定値を、突き当て部材6aからの回転角を基準として高精度に測定でき、パーキング機構8を安定的に動作させることができる。
【0116】
本実施形態によれば、突き当て部材6aがハウジング6に設けられる。パーキング機構8の各部は、ハウジング6を基準に組み付けられるため、突き当て部材6aをハウジング6に設けて回転センサ76で測定する回転角の基準とすることで、他部材との相対的な位置精度を高め易く、回転センサ76の測定精度を高めることができる。
【0117】
次に、アクチュエータ70の手動操作について説明する。
図2に示すように、本実施形態のアクチュエータ70において、回転シャフト79aの先端79bは、ケース72の開口部72wから露出させられる。作業者は、開口部72wから工具を挿入して、回転シャフト79aを回転させることができる。
【0118】
図9および
図10は、それぞれ回転シャフト79aの先端79bに設けられる工具接続部79c、79dを示す斜視図である。
【0119】
図9に示す工具接続部79cは、回転シャフト79aの先端79bの面に設けられる直線状の凹溝である。この工具接続部79cには、マイナスドライバーが接続可能である。作業者は、マイナスドライバーの先端を、工具接続部79cに噛み合わせて回転シャフト79aを回転させることができる。
【0120】
図10に示す工具接続部79dは、回転シャフト79aに先端79bに設けられるHカットである。この工具接続部79dには、Hカットに噛み合うソケットドライバーが接続可能である。作業者は、ソケットドライバーの先端を、工具接続部79dに噛み合わせて回転シャフト79aを回転させることができる。
【0121】
本実施形態によれば、回転シャフト79aの先端79bには、回転シャフト79aを回転させる工具に噛み合う工具接続部79c、79dが設けられる。本実施形態のアクチュエータ70は、自己保持トルクが大きいために、マニュアルシャフト71を手動で動作させることができない。本実施形態によれば、モータ79の回転シャフト79aを作業者が直接的に回転させることができる。このため、自己保持トルクが大きいアクチュエータ70においても手動でパーキング機構8の状態(ロック状態、又はアンロック状態)を切り替えることができる。
【0122】
加えて、本実施形態によれば、作業者は回転シャフト79aを直接的に回転させるため、小さなトルクでパーキング機構8の状態を切り替えることができる。したがって、工具接続部79c、79dに接続する工具として、ドライバーなどの小型かつ汎用性の高い工具を採用でき、メンテナンス性が高まる。加えて、本実施形態によれば、小型の工具で回転シャフト79aの操作が可能であるため、工具接続部79c、79dに工具をアクセスさせるための開口部72wを小さくし易く、アクチュエータ70の小型化を図ることができる。
【0123】
以上に、本発明の様々な実施形態を説明したが、各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
【0124】
例えば、本実施形態の駆動装置1の動力部は、モータであったが、エンジンであってもよい。また、ギヤ部(伝達機構)の構造は、本実施形態での説明に限定されることがない。
【符号の説明】
【0125】
1…駆動装置、3…ギヤ部、6…ハウジング、6a…突き当て部材、8…パーキング機構、10…パーキングギヤ、11…歯部、11a…外周面、20…パーキングポール(歯止め部材)、25…噛合部、29…ポールシャフト、30…カムロッド、30a…連結部、30b…中継部、30c…ロッド本体、35…カム、39…コイルバネ、70…アクチュエータ、71…マニュアルシャフト、72…ケース、72w…開口部、73…ウォームギヤ、74…カウンタギヤ部、74a…ウォームホイール、74b…小径ギヤ、75…アウトプットギヤ部、79…モータ、79a…回転シャフト、79c,79d…工具接続部、80…スリーブ、90…フランジ、91…フランジ本体、92…突出部、92f…対向面、92g…溝部、J1…第1軸線、J2…第2軸線、J4…第4軸線、J7…第7軸線(軸線)、J8…第8軸線(軸線)、k…バネ定数、P…垂線、R…距離、Ts…自己保持トルク、Xb…最大圧縮量、θ…角