(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097580
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】貨物自動車
(51)【国際特許分類】
B60P 1/00 20060101AFI20230703BHJP
B60P 1/16 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
B60P1/00 C
B60P1/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213783
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002358
【氏名又は名称】新明和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】関根 正博
(57)【要約】
【課題】荷箱のダンプ動作およびスライド動作が可能な貨物自動車において、テールゲートを回動させる作業が容易であり、建機等の車両を荷箱に積み降ろしするにあたってテールゲートが破損しにくく、かつ、両動作に関する積み降ろしの作業効率を向上できるようにすること。
【解決手段】貨物自動車1は、テールゲート15を荷箱10の底板11から起立した閉位置と底板11から後方に延びる開位置との間で回動可能な油圧シリンダ21を備える。スライド動作後であって荷箱10が接地しているときに、油圧シリンダ21がテールゲート15を開位置に回動させることにより、テールゲート15の内側面15Uによって、荷箱10の底板11の上面11Uと連続する通路18が形成される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャシフレームと、
前記シャシフレームに対して傾動可能に設けられたスライドフレームと、
前記スライドフレームにスライド可能に支持された荷箱と、
を備え、前記荷箱と前記スライドフレームとを共に傾動させるダンプ動作と、前記荷箱を前記スライドフレームに対してスライドさせるスライド動作とが可能な貨物自動車であって、
前記荷箱は、底板と、前記底板の後端部に前後に回動可能に連結された根元部を有するテールゲートと、を有し、
前記テールゲートを前記底板から起立した閉位置と前記底板から後方に延びる開位置との間で回動可能なテールゲートアクチュエータを備え、
前記スライド動作後であって前記荷箱が接地しているときに、前記テールゲートアクチュエータが前記テールゲートを前記開位置に回動させることにより、前記テールゲートの内側面によって前記荷箱の前記底板の上面と連続する通路が形成される、貨物自動車。
【請求項2】
前記テールゲートが前記開位置にあるときに、前記荷箱の底板の上面に対して垂直な方向に関して、前記テールゲートの前記根元部の内側面と前記荷箱の底板の上面の後縁とは、同じ位置にある、請求項1に記載の貨物自動車。
【請求項3】
前記テールゲートが前記開位置にあるときに、前記荷箱の底板の上面に対して垂直な方向から見て、前記テールゲートの前記根元部と前記荷箱の底板との間に隙間が形成されていない、請求項1または2に記載の貨物自動車。
【請求項4】
前記テールゲートアクチュエータは、シリンダ本体と前記シリンダ本体に対して摺動可能なロッドとを有する油圧シリンダからなり、
前記シリンダ本体および前記ロッドのうちのいずれか一方は前記荷箱の底板に接続され、他方は前記テールゲートに接続されている、請求項1~3のいずれか一つに記載の貨物自動車。
【請求項5】
前記スライドフレームを傾動させるダンプアクチュエータと、
前記荷箱を前記スライドフレームに対してスライドさせるスライドアクチュエータと、
前記テールゲートアクチュエータ、前記ダンプアクチュエータ、および前記スライドアクチュエータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記スライドアクチュエータの駆動を停止することによって前記荷箱の前記スライドフレームに対するスライドを終了させた後、前記テールゲートが前記閉位置から前記開位置に向けて回動するように前記テールゲートアクチュエータの駆動を開始する制御を実行するように構成されている、請求項1~4のいずれか一つに記載の貨物自動車。
【請求項6】
前記制御装置は、前記テールゲートが前記閉位置から前記開位置に向けて回動するように前記テールゲートアクチュエータの駆動を開始した後、前記スライドフレームが傾動するように前記ダンプアクチュエータの駆動を開始する制御を実行するように構成されている、請求項1~5のいずれか一つに記載の貨物自動車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷箱を傾斜させるダンプ動作と、荷箱を後方にスライドさせて接地させるスライド動作とが可能な貨物自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、荷箱を傾斜させるダンプ動作と、荷箱を後方にスライドさせて接地させるスライド動作とが可能な貨物自動車が知られている。例えば特許文献1に、そのような貨物自動車が記載されている。
【0003】
ダンプ動作およびスライド動作の両動作が可能な従来の貨物自動車は、荷箱の後壁を形成すると共に、回動することによって荷箱を後方に開放するテールゲートを備えている。こうした貨物自動車では、テールゲートは、上端部を中心とした回動、および、下端部を中心とした回動が可能に構成されている。テールゲートの上端部には、荷箱の側壁に手動によって着脱可能な上部金具が設けられ、テールゲートの下端部には、荷箱の底板に着脱可能な下部金具が設けられている。
【0004】
荷箱に積み込まれた土砂等を排出するときには、下部金具を荷箱の底板から開放したうえで、荷箱を傾斜させるダンプ動作を行う。荷箱の傾斜に伴って、テールゲートは上端部を中心として後方に回動する。これにより、テールゲートが開かれ、荷箱に積み込まれた土砂等は後方に排出される。
【0005】
荷箱に建機等の車両を積み込むとき、または、荷箱から車両を降ろすときには、荷箱を後方にスライドさせて接地させるスライド動作を行う。荷箱を後方にスライドさせて接地させた後、上部金具を荷箱の側壁から開放し、テールゲートをその下端部を中心として後方に回動させる。これにより、テールゲートが開かれ、テールゲートは荷箱の底板と地面との間に架け渡される。作業者は、テールゲートを通じて建機等の車両を荷箱に積み込むことができ、また、荷箱から降ろすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の通り、従来の貨物自動車は、土砂等の排出と建機等の積み降ろしの両機能を果たすために、荷箱の両動作を可能な構成としている。特に、土砂等の排出のためにダンプ動作に連動して上部金具を中心にテールゲートが後方回動するとともに、建機等の積み降ろしのために上部金具による固縛を解除して荷箱後方を完全に開放する構成となっている。しかしながら、この両動作が可能ではある中、建機等の車両の積み降ろしの際には、上部金具を荷箱の側壁から開放した後、テールゲートをその下端部を中心として後方に回動させるための手動による作業が必要となる。ところが、テールゲートは比較的重たい部品であるため、その作業は作業者にとって比較的負荷の大きな作業である。また、建機等の車両はテールゲートの上を走行することによって荷箱に積み降ろしされるが、その際に建機等がテールゲートの上部金具を踏みつけてしまい、上部金具を変形または破損させてしまうおそれがあった。こうした場合、テールゲートを通常の起立状態で固縛する固縛力の低下を招き、さらにはダンプ動作時にテールゲートの上端部を支持する支持力の低下も招いて土砂の排出にも影響を及ぼすおそれもあった。また、こうした従来の貨物自動車では、テールゲートをその下端部を中心として回動させたときに、荷箱の底板とテールゲートとの間に、上下の段差および前後の隙間が生じていた。そのため、作業者は、建機等の車両の積み降ろし作業を円滑に行いにくかった。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、荷箱のダンプ動作およびスライド動作が可能な貨物自動車において、テールゲートを回動させる作業が容易であり、建機等の車両を荷箱に積み降ろしするにあたってテールゲートが破損しにくく、かつ、両動作に関する積み降ろしの作業効率を向上できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る貨物自動車は、シャシフレームと、前記シャシフレームに対して傾動可能に設けられたスライドフレームと、前記スライドフレームにスライド可能に支持された荷箱と、を備え、前記荷箱と前記スライドフレームとを共に傾動させるダンプ動作と、前記荷箱を前記スライドフレームに対してスライドさせるスライド動作とが可能な貨物自動車である。前記荷箱は、底板と、前記底板の後端部に前後に回動可能に連結された根元部を有するテールゲートと、を有している。前記貨物自動車は、前記テールゲートを前記底板から起立した閉位置と前記底板から後方に延びる開位置との間で回動可能なテールゲートアクチュエータを備えている。前記スライド動作後であって前記荷箱が接地しているときに、前記テールゲートアクチュエータが前記テールゲートを前記開位置に回動させることにより、前記テールゲートの内側面によって前記荷箱の前記底板の上面と連続する通路が形成される。
【0010】
上記貨物自動車によれば、テールゲートはテールゲートアクチュエータによって駆動され、閉位置と開位置との間を回動する。作業者が手動でテールゲートを回動させる必要が無い。よって、作業者の負荷が軽減される。また、上記貨物自動車によれば、テールゲートの上端部に、荷箱の側壁に着脱可能な上部金具が設けられていない。そのため、建機等の積み降ろしの際に建機等がテールゲート上を走行するときに、上部金具を踏みつけて破損させてしまうことはない。よって、建機等を荷箱に積み降ろしするにあたって、テールゲートは破損しにくい。更に、上記貨物自動車によれば、スライド動作後であって荷箱が接地しているときに、テールゲートアクチュエータがテールゲートを開位置に回動させることにより、テールゲートの内側面によって荷箱の底板の上面と連続する通路が形成される。そのため、作業者は、建機等を当該通路から荷箱の底板に移動させる際、および、荷箱の底板から当該通路に移動させる際に、建機等を円滑に走行させることができる。したがって、作業者は建機等の積み降ろし作業を円滑に行うことができる。
【0011】
前記テールゲートが前記開位置にあるときに、前記荷箱の底板の上面に対して垂直な方向に関して、前記テールゲートの前記根元部の内側面と前記荷箱の底板の上面の後縁とは、同じ位置にあることが好ましい。このことにより、テールゲートの根元部の内側面と荷箱の底板の上面との間に段差が無いため、作業者は建機等の積み降ろし作業をより一層円滑に行うことができる。
【0012】
前記テールゲートが前記開位置にあるときに、前記荷箱の底板の上面に対して垂直な方向から見て、前記テールゲートの前記根元部と前記荷箱の底板との間に隙間が形成されていないことが好ましい。このことにより、作業者は建機等の積み降ろし作業をより一層円滑に行うことができる。
【0013】
前記テールゲートアクチュエータは、シリンダ本体と前記シリンダ本体に対して摺動可能なロッドとを有する油圧シリンダからなっていてもよい。前記シリンダ本体および前記ロッドのうちのいずれか一方は前記荷箱の底板に接続され、他方は前記テールゲートに接続されていてもよい。
【0014】
前記貨物自動車は、前記スライドフレームを傾動させるダンプアクチュエータと、前記荷箱を前記スライドフレームに対してスライドさせるスライドアクチュエータと、前記テールゲートアクチュエータ、前記ダンプアクチュエータ、および前記スライドアクチュエータを制御する制御装置と、を備えていてもよい。前記制御装置は、前記スライドアクチュエータの駆動を停止することによって前記荷箱の前記スライドフレームに対するスライドを終了させた後、前記テールゲートが前記閉位置から前記開位置に向けて回動するように前記テールゲートアクチュエータの駆動を開始する制御を実行するように構成されていてもよい。
【0015】
前記制御装置は、前記テールゲートが前記閉位置から前記開位置に向けて回動するように前記テールゲートアクチュエータの駆動を開始した後、前記スライドフレームが傾動するように前記ダンプアクチュエータの駆動を開始する制御を実行するように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、荷箱のダンプ動作およびスライド動作が可能な貨物自動車において、テールゲートを回動させる作業を容易化することができ、建機等の車両を荷箱に積み降ろしするにあたってテールゲートが破損しにくく、かつ、両動作に関する積み降ろしの作業効率を向上できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】前記貨物自動車のダンプ動作後の側面図である。
【
図3】前記貨物自動車のスライド動作後の側面図である。
【
図4】テールゲートが閉位置にあるときに荷箱の後部の一部を切り欠いて示す側面図である。
【
図5】テールゲートが開位置にあるときに荷箱の後部の一部を切り欠いて示す側面図である。
【
図6】テールゲートが閉位置にあるときの荷箱の一部の背面図である。
【
図7】テールゲートが開位置にあるときに、荷箱の後部の一部を荷箱の底壁に対して垂直な方向から見た図である。
【
図8】貨物自動車の制御システムのブロック図である。
【
図9】荷箱から土砂を排出するときの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】荷箱に建機を積み込むときの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の一形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る貨物自動車1の側面図である。
【0019】
図1に示すように、貨物自動車1は、シャシフレーム5と、シャシフレーム5に支持されたキャブ(運転室)2と、シャシフレーム5に支持されたスライドフレーム8と、スライドフレーム8にスライド可能に支持された荷箱10とを備えている。スライドフレーム8は、車幅方向に延びるヒンジ軸7により、シャシフレーム5の後端部に回動可能に支持されている。なお、シャシフレーム5は、単一のフレームによって構成されていてもよく、複数のフレームによって構成されていてもよい。例えば、シャシフレーム5は、メインフレームとメインフレームに支持されたサブフレームとを有していてもよい。シャシフレーム5には、前輪3および後輪4が支持されている。キャブ2の内部には、図示しない運転席が設けられている。以下の説明では特に断らない限り、前、後、左、右、上、下は、上記運転席に座った運転手から見た前、後、左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。
【0020】
図2に示すように、貨物自動車1は、荷箱10をスライドフレーム8に対してスライドさせずにスライドフレーム8と共に傾動させるダンプ動作が可能である。シャシフレーム5とスライドフレーム8とは、ホイスト機構50によって連結されている。ホイスト機構50は、リフトアーム52と、テンションリンク53と、油圧シリンダ51とを有している。油圧シリンダ51が収縮した状態では、
図1に示すようにスライドフレーム8は水平な状態となり、荷箱10は水平な姿勢を保つ。
図2に示すように、油圧シリンダ51が伸張するとスライドフレーム8の前部が持ち上げられ、スライドフレーム8はヒンジ軸7周りに回動することによって傾斜する。その結果、荷箱10は後ろ下がりに傾斜する。本実施形態では、油圧シリンダ51は、スライドフレーム8を傾動させるダンプアクチュエータを構成している。なお、図示は省略するが、貨物自動車1は、荷箱10がスライドフレーム8に対してスライドしないようにロックするロック機構を備えていてもよい。ロック機構として、従来から貨物自動車に用いられている周知のロック機構を用いることができる。そのようなロック機構を備えている場合、ダンプ動作時には上記ロック機構がONされ、荷箱10のスライドが防止される。
【0021】
図3に示すように、貨物自動車1は、荷箱10をスライドフレーム8に対してスライドさせるスライド動作が可能である。なお、
図3では、ホイスト機構50(
図2参照)の図示は省略している。貨物自動車1は、荷箱10を前後にスライドさせる油圧シリンダ61を備えている。なお、
図1および
図2では、油圧シリンダ61の図示は省略している。油圧シリンダ61は、荷箱10をスライドフレーム8に対してスライドさせるスライドアクチュエータを構成している。油圧シリンダ61の前端部はスライドフレーム8に連結され、油圧シリンダ61の後端部は荷箱10に連結されている。荷箱10を後方にスライドさせる際には、ホイスト機構50によってスライドフレーム8を傾斜させる。また、前記ロック機構をOFFし、荷箱10をスライドフレーム8に対してスライド可能とする。そして、油圧シリンダ61を伸張させることにより、荷箱10を後方に押す。その結果、荷箱10はスライドフレーム8に沿って後方にスライドする。
【0022】
図1に示すように、荷箱10は、底板11と、底板11の前端部から上方に延びる前板12と、底板11の左端部から上方に延びる左側板13と、底板11の右端部から上方に延びる右側板(図示せず)と、底板11の後端部に回動可能に連結されたテールゲート15とを有している。テールゲート15は、底板11の後端部に対して、前後に回動可能に連結されている。また、荷箱10は、底板11の後端部から下方に延びる接地部14を有している。荷箱10が後方にスライドしたときに、接地部14は接地する(すなわち、地面に接触する)ことにより荷箱10を支持する(
図3参照)。
【0023】
図4に示すように、荷箱10は、底板11の後端部に設けられた連結軸16を有している。連結軸16は、底板11の後方に配置されており、車幅方向(言い換えると左右方向)に延びている。テールゲート15は、連結軸16が挿通された筒部15A(
図6参照)と、筒部15Aに固定された板部15Bとを有している。筒部15Aは連結軸16に回動可能に係合している。筒部15Aはテールゲート15の根元部を形成している。テールゲート15の根元部は、連結軸16によって、底板11の後端部に前後に回動可能に連結されている。
【0024】
図4に示すように、テールゲート15が底板11に対して起立した状態では、荷箱10の後方はテールゲート15によって閉じられる。以下、テールゲート15が底板11から起立した位置のことを閉位置と言うこととする。
図5に示すように、テールゲート15が連結軸16周りに後方に回動すると、荷箱10は後方に開かれる。以下、テールゲート15が底板11から後方に延びる位置のことを開位置と言うこととする。なお、開位置は、テールゲート15の内側面15Uが、底板11の上面11Uを後方に延長した延長面11USと一致する位置であってもよく、延長面11USに対して若干傾いた位置(例えば、テールゲート15の内側面15Uと延長面11USとのなす角が15度以内となる位置)であってもよい。
【0025】
図4に示すように、貨物自動車1は油圧シリンダ21を備えている。油圧シリンダ21は、テールゲート15を閉位置と開位置との間で回動可能なテールゲートアクチュエータの一例である。油圧シリンダ21は荷箱10に設けられている。油圧シリンダ21は、シリンダ本体21Aと、シリンダ本体21Aに対して摺動可能なロッド21Bとを有している。ロッド21Bは、シリンダ本体21Aから後方に延びている。ロッド21Bが前後に摺動することにより、油圧シリンダ21は伸縮する。シリンダ本体21Aは、ブラケット22を介して底板11に接続されている。ロッド21Bはブラケット23を介してテールゲート15に接続されている。油圧シリンダ21が伸張すると、テールゲート15は閉位置に移動し、テールゲート15は閉じられる。
図5に示すように、油圧シリンダ21が収縮すると、テールゲート15は開位置に移動し、テールゲート15は開かれる。
【0026】
油圧シリンダ21は、底板11の下方に配置されている。
図6は、荷箱10の左半部の拡大背面図である。図中の符号CLは、車幅方向に関する中央の位置を表す線(中央線)である。油圧シリンダ21は、中央線CLの左方に配置されている。前述した油圧シリンダ61(すなわち、荷箱10を前後にスライドさせる油圧シリンダ61)は、中央線CL上に配置されている。油圧シリンダ21は、油圧シリンダ61よりも左方に配置されており、油圧シリンダ61と干渉しないようになっている。なお、油圧シリンダ61との干渉を避けるために、油圧シリンダ21を油圧シリンダ61よりも右方に配置してもよい。油圧シリンダ61は中央線CLの右方に配置されていてもよい。また、油圧シリンダ21と油圧シリンダ61とが干渉しなければ、油圧シリンダ21を中央線CL上に配置してもよい。本実施形態では、テールゲート15を回動させる油圧シリンダ21の個数は1個であるが、油圧シリンダ21の個数は1個に限られない。貨物自動車1は、複数の油圧シリンダ21を備えていてもよい。
【0027】
本実施形態では
図5に示すように、テールゲート15が開位置にあるときに、荷箱10の底板11の上面(以下、底板上面と言う)11Uと、テールゲート15の内側面15Uとの間には、段差が形成されていない。なお、ここで言う「段差が形成されていない」とは、建機等の車両を円滑に積み降ろしできる程度に段差がないことを意味し、完全に段差がない場合は勿論のこと、30mm以下(好ましくは20mm以下、例えば10mm程度)の僅かな段差がある場合も含まれる。本実施形態では、テールゲート15が開位置にあるときに、荷箱10の底板上面11Uに対して垂直な方向(以下、単に垂直方向と言う)Zに関して、テールゲート15の根元部の内側面15Auと荷箱10の底板上面11Uの後縁11Ubとは同じ位置にある。なお、ここで言う「同じ位置にある」とは、完全に同じ位置にある場合は勿論のこと、垂直方向Zに関して30mm以下(好ましくは20mm以下、例えば10mm程度)の僅かなずれがある場合も含まれる。本実施形態では、テールゲート15が開位置にあるときに、垂直方向Zに関して、筒部15Aの上端と底板上面11Uの後縁11Ubとは、同じ高さに位置する。
【0028】
図7は、テールゲート15が開位置にあるときに、荷箱10の後部の一部を垂直方向Zから見た図である。
図7に示すように、テールゲート15が開位置にあるときに垂直方向Zから見て、テールゲート15の根元部と荷箱10の底板11との間に隙間は形成されていない。テールゲート15が開位置にあるときに垂直方向Zから見て、テールゲート15の筒部15Aと荷箱10の底板11との間に隙間は形成されていない。テールゲート15が開位置にあるときに垂直方向Zから見て、荷箱10の底板11と、テールゲート15の筒部15Aと、テールゲート15の板部15Bとは、隙間無く連続している。
【0029】
図8に示すように、貨物自動車1は、油圧シリンダ21、油圧シリンダ51、および油圧シリンダ61を制御する制御装置30を備えている。図示は省略するが、貨物自動車1は、油圧シリンダ21、油圧シリンダ51、油圧シリンダ61、油圧ポンプ、および複数のソレノイドバルブが組み込まれた油圧回路を備えている。制御装置30は、作業者の入力操作を受け、または、コンピュータプログラムを実行することにより、上記ソレノイドバルブを適宜切り替えて油圧シリンダ21、油圧シリンダ51、および油圧シリンダ61の伸縮動作を制御するように構成されている。
【0030】
次に、貨物自動車1の動作の例について説明する。
【0031】
例えば、荷箱10に積み込まれた土砂を排出する場合には、ダンプ動作が行われる。この場合、
図9に示すように、まずステップS1において、テールゲート15が開かれる。詳しくは、制御装置30は油圧シリンダ21の駆動を開始し、テールゲート15を閉位置から開位置に向けて回動させる。次に、ステップS2において、制御装置30は油圧シリンダ51の駆動を開始し、荷箱10を傾斜させる。なお、ステップS2は、テールゲート15が開位置に到達した後に開始してもよく、開位置に到達する前に開始してもよく、開位置に到達したと同時に開始してもよい。制御装置30は、油圧シリンダ21の駆動停止後に油圧シリンダ51の駆動を開始してもよく、油圧シリンダ21の駆動停止前に油圧シリンダ51の駆動を開始してもよく、油圧シリンダ21の駆動停止と同時に油圧シリンダ51の駆動を開始してもよい。テールゲート15が開かれ、かつ、荷箱10が傾斜することにより(
図2参照)、荷箱10に積み込まれた土砂は後方に排出される(ステップS3)。土砂を排出した後、制御装置30は、油圧シリンダ51を収縮させることにより、荷箱10を傾斜した状態から水平な状態に戻し(ステップS4)、油圧シリンダ21を伸張させることにより、テールゲート15を開位置から閉位置に回動させ、テールゲート15を閉じる(ステップS5)。なお、ステップS5の処理は、ステップS4の処理の終了後に開始してもよく、終了前に開始してもよく、終了と同時に開始してもよい。
【0032】
例えば、荷箱10に建機(例えばパワーショベル)等の車両を積み込む場合には、スライド動作が行われる。この場合、
図10に示すように、荷箱10をスライドフレーム8にロックするロック機構を解除した上で、制御装置30は油圧シリンダ51を駆動し、スライドフレーム8および荷箱10を傾斜させる(ステップS11)。また、制御装置30は、油圧シリンダ61を駆動し、荷箱10を後方にスライドさせる(ステップS12)。なお、ステップS12の処理は、ステップS11の処理の後に開始してもよく、ステップS11の処理が終了する前に開始してもよく、ステップS11の処理の終了と同時に開始してもよい。荷箱10が後方にスライドすると、荷箱10の接地部14が接地し、荷箱10の後部は地面に支持される(
図3参照)。制御装置30は、油圧シリンダ61の駆動を停止した後、油圧シリンダ21の駆動を開始し、テールゲート15を閉位置から開位置に回動させる。すなわち、制御装置30は、スライド動作後であって荷箱10が接地しているときに、油圧シリンダ21を駆動し、テールゲート15を開く。
【0033】
図3に示すように、荷箱10が接地しているときにテールゲート15が開位置に回動すると、テールゲート15の内側面15Uによって、荷箱10の底板11の上面11U(
図5参照)と連続する通路18が形成される。前述したように、テールゲート15が開位置にあるときに、荷箱10の底板上面11Uとテールゲート15の内側面15Uとの間には段差が形成されていない。また、底板上面11Uに対して垂直な方向Zから見て、底板上面11Uとテールゲート15の内側面15Uとの間には隙間が形成されていない。荷箱10の底板上面11Uとテールゲート15の内側面15Uとは、段差および隙間が無く連続している。そのため、荷箱10が接地しているときにテールゲート15が開位置に回動すると、荷箱10の底板11との間に段差および隙間が無い通路18が形成される。作業者は、この通路18を通って、地面から荷箱10の底板11上へ建機を自走させることにより、建機を荷箱10に積み込む(ステップS14)。通路18は荷箱10の底板11との間に段差および隙間が無いので、作業者は建機を荷箱10に円滑に積み込むことができる。
【0034】
建機を荷箱10に積み込んだ後、制御装置30は油圧シリンダ21を駆動することにより、テールゲート15を開位置から閉位置に回動させる。これにより、テールゲート15は閉じられる(ステップS15)。その後、制御装置30は、油圧シリンダ61を駆動することにより荷箱10を前方にスライドさせ(ステップS16)、油圧シリンダ51を駆動することにより荷箱10を水平な状態に戻す(ステップS17)。このようにして、貨物自動車1の荷箱10に建機を積み込むことができる。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る貨物自動車1によれば、テールゲート15を閉位置と開位置との間で回動可能な油圧シリンダ21を備えている。テールゲート15は比較的重たい部品であるが、作業者が手動でテールゲート15を開く必要がないので、作業負荷が軽減される。作業者は、油圧シリンダ21を用いてテールゲート15を回動させることができる。よって、作業者にとって、テールゲート15を回動させる作業は容易である。
【0036】
また、本実施形態に係る貨物自動車1によれば、テールゲート15はその上端部を中心として回動するようには構成されておらず、テールゲート15の上端部には、荷箱10の側壁に着脱可能な上部金具は設けられていない。そのため、建機の積み込みの際に建機がテールゲート15上を走行するときに、上部金具を踏みつけて破損させてしまうことはない。よって、建機を荷箱10に積み降ろしするにあたって、テールゲート15は破損しにくい。
【0037】
更に、本実施形態に係る貨物自動車1によれば、スライド動作の後に荷箱10が接地しているときに、油圧シリンダ21がテールゲート15を開位置に回動させることにより、テールゲート15の内側面15Uによって、荷箱10の底板11の上面11Uと連続する通路18が形成される。作業者は、建機を通路18から荷箱10の底板11上に移動させる際、および、荷箱10の底板11上から通路18に移動させる際に、建機を円滑に走行させることができる。そのため、作業者は、通路18を通じて建機の積み降ろし作業を円滑に行うことができる。
【0038】
本実施形態によれば、テールゲート15を開位置に回動させたときに、テールゲート15の根元部の内側面15Auと荷箱10の底板11の上面11Uとの間に段差が無いため、作業者は建機の積み降ろし作業をより一層円滑に行うことができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、テールゲート15を開位置に回動させたときに、荷箱10の底板11の上面11Uに対して垂直な方向Zから見て、テールゲート15の根元部と荷箱10の底板11との間に隙間が無いため、作業者は建機の積み降ろし作業をより一層円滑に行うことができる。
【0040】
以上、本発明の実施の一形態について説明したが、前述の実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも様々な形態で実施することができる。
【0041】
前記実施形態では、スライド動作時に、スライドフレーム8が傾斜し、傾斜したスライドフレーム8に沿って荷箱10が傾斜した姿勢のままスライドするように構成されている。しかし、荷箱10をスライドさせる構成およびスライド動作の形態は特に限定されない。例えば、他の実施形態として、荷箱10の前端部の下側にローラ(荷箱ローラ)が設けられ、スライドフレーム8に荷箱ローラの通り道が設けられていてもよい。このような実施形態では、スライド動作時にスライドフレーム8は傾斜しない。スライド動作時に油圧シリンダ61(スライドアクチュエータ)を伸張させると、荷箱ローラが上記通り道を通ることにより、荷箱10の前端部が持ち上げられる。これにより、スライドフレーム8を傾斜させることなく、荷箱10を後ろ下がりに傾斜させることができる。このような実施形態でも、荷箱10をスライドフレーム8に沿って後方にスライドさせることにより、荷箱10の後部を接地させることができる。なお、このような実施形態の例として、例えば、特許第6867923号公報に記載された構成を用いることができる。
【0042】
前記実施形態の説明では、スライド動作後であって荷箱10が接地しているときに、テールゲート15を開位置に回動させることによって通路18を形成することとしたが、通路18を形成するタイミングは特に限定されない。スライド動作中または荷箱10が接地していないときに、テールゲート15を開位置に回動させることによって通路18を形成してもよい。
【0043】
図7に示すように、前記実施形態では、テールゲート15の筒部15Aは、テールゲート15の車幅方向の一部に形成されているが、テールゲート15の車幅方向の全体に亘って形成されていてもよい。筒部15Aは、建機等のキャタピラーや車輪等が通る位置に形成されていることが好ましく、テールゲート15の車幅方向のできるだけ広い範囲に亘って形成されていることが好ましいが、特に限定される訳ではない。
【0044】
テールゲートアクチュエータ、ダンプアクチュエータ、およびスライドアクチュエータは、駆動力を発生するものであれば足り、油圧シリンダに限定されない。テールゲートアクチュエータ、ダンプアクチュエータ、およびスライドアクチュエータの少なくとも一つは、例えば、電動モータであってもよい。
【0045】
テールゲート15が開位置にあるときに、荷箱10の底板11の上面11Uに対して垂直な方向Zに関して、テールゲート15の根元部の内側面15Auと荷箱10の底板11の上面11Uの後縁11Ubとは、多少ずれた位置にあってもよい。テールゲート15の内側面15Uと荷箱10の底板11との間に、多少の段差があってもよい。
【0046】
テールゲート15が開位置にあるときに、荷箱10の底板11の上面11Uに対して垂直な方向Zから見て、テールゲート15の根元部と荷箱10の底板11との間に、多少の隙間が形成されていてもよい。
【0047】
テールゲート15の構成は特に限定されない。テールゲート15は筒部15Aを有していなくてもよい。
【0048】
油圧シリンダ21の前後の向きは逆でもよい。前記実施形態では、油圧シリンダ21のシリンダ本体21Aが荷箱10の底板11に接続され、ロッド21Bがテールゲート15に接続されているが、シリンダ本体21Aがテールゲート15に接続され、ロッド21Bが底板11に接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 貨物自動車
5 シャシフレーム
8 スライドフレーム
10 荷箱
11 底板
11U 底板の上面
15 テールゲート
15A 筒部(根元部)
15B 板部
15U テールゲートの内側面
16 連結軸
18 通路
21 油圧シリンダ(テールゲートアクチュエータ)
21A シリンダ本体
21B ロッド
30 制御装置
51 油圧シリンダ(ダンプアクチュエータ)
61 油圧シリンダ(スライドアクチュエータ)