(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097607
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】ガスコンロ
(51)【国際特許分類】
F24C 3/02 20210101AFI20230703BHJP
【FI】
F24C3/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213820
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】中村 悠輔
(57)【要約】
【課題】天板2に開設したバーナ用開口21に臨ませて配置される、内周に炎口31を有する環状の内炎式コンロバーナ3と、調理容器Pの底面に当接して調理容器Pの温度を検出する鍋底温度センサ5とを備えるガスコンロであって、鍋底温度センサ5を囲う遮熱筒を設けなくても、火炎による鍋底温度センサ5の加熱を抑制できるようにする。
【解決手段】内炎式コンロバーナ3を、内周に炎口31を有する環状の上段バーナ部3Uと、上段バーナ部3Uの下側に位置する、内周に炎口31を有する、上段バーナ部3Uと同心の環状の下段バーナ部3Lとで構成する。好ましくは、上段バーナ部3Uと下段バーナ部3Lとの間に空隙32を設ける。また、上段バーナ部3Uと下段バーナ部3Lとを共に燃焼させる状態では、常に、下段バーナ部3Lの火力を上段バーナ部3Uの火力よりも小さくする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板に開設したバーナ用開口に臨ませて配置される、内周に炎口を有する環状の内炎式コンロバーナと、当該内炎式コンロバーナで囲われる中央空間を通して天板の上方に突出し、内炎式コンロバーナで加熱される調理容器の底面に当接して調理容器の温度を検出する鍋底温度センサとを備えるガスコンロにおいて、
内炎式コンロバーナは、内周に炎口を有する環状の上段バーナ部と、上段バーナ部の下側に位置する、内周に炎口を有する、上段バーナ部と同心の環状の下段バーナ部とで構成されることを特徴とするガスコンロ。
【請求項2】
前記上段バーナ部と前記下段バーナ部との間に空隙が設けられることを特徴とする請求項1記載のガスコンロ。
【請求項3】
前記下段バーナ部の内径は、前記上段バーナ部の内径よりも大きいことを特徴とする請求項2記載のガスコンロ。
【請求項4】
前記上段バーナ部と前記下段バーナ部とを共に燃焼させる状態では、常に、下段バーナ部の火力を上段バーナ部の火力よりも小さくすることを特徴とする請求項1~3の何れか1項記載のガスコンロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天板に開設したバーナ用開口に臨ませて配置される、内周に炎口を有する環状の内炎式コンロバーナと、当該内炎式コンロバーナで囲われる中央空間を通して天板の上方に突出し、内炎式コンロバーナで加熱される調理容器の底面に当接して調理容器の温度を検出する鍋底温度センサとを備えるガスコンロに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のガスコンロでは、内炎式コンロバーナの炎口から内方にのびる火炎で鍋底温度センサが加熱され、鍋底温度センサで調理容器の温度を正確に検出できなくなる。そこで、従来、鍋底温度センサを囲う遮熱筒を設け、火炎による鍋底温度センサの加熱を抑制できるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
ここで、鍋底温度センサの遮熱性を高めるには、遮熱筒の上端をできるだけ上方に伸ばす必要がある。然し、これでは、調理容器として底の丸い中華鍋を用いた場合、鍋底の中央部が遮熱筒の上端に乗り上げて、鍋の安定性が損なわれてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-201455号公報
【特許文献2】特開2008-215729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、火炎による鍋底温度センサの加熱を抑制して、且つ、中華鍋を用いた場合の鍋の安定性も確保できるようにしたガスコンロを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、天板に開設したバーナ用開口に臨ませて配置される、内周に炎口を有する環状の内炎式コンロバーナと、当該内炎式コンロバーナで囲われる中央空間を通して天板の上方に突出し、内炎式コンロバーナで加熱される調理容器の底面に当接して調理容器の温度を検出する鍋底温度センサとを備えるガスコンロにおいて、内炎式コンロバーナは、内周に炎口を有する環状の上段バーナ部と、上段バーナ部の下側に位置する、内周に炎口を有する、上段バーナ部と同心の環状の下段バーナ部とで構成されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、下段バーナ部での燃焼により鍋底温度センサの周りにドラフト気流が発生し、このドラフト気流により上段バーナ部の火炎が鍋底温度センサに近付きにくくなる。その結果、鍋底温度センサを囲う遮熱筒を設けなくても、火炎による鍋底温度センサの加熱を抑制できる。そして、遮熱筒を設けずに済むため、中華鍋を用いた場合でも、鍋底の中央部が遮熱筒の上端に乗り上げるようなことはなく、鍋の安定性を確保できる。
【0008】
また、本発明においては、上段バーナ部と下段バーナ部との間に空隙が設けられることが望ましい。これによれば、空隙に流れた空気が下段バーナ部での燃焼により生ずるドラフト気流に引き込まれて、ドラフト気流の径方向幅が広がる。その結果、上段バーナ部の火炎が鍋底温度センサに近付くことを効果的に抑制できる。
【0009】
更に、本発明においては、下段バーナ部の内径を、上段バーナ部の内径よりも大きくし、また、上段バーナ部と下段バーナ部とを共に燃焼させる状態では、常に、下段バーナ部の火力を上段バーナ部の火力よりも小さくすることが望ましい。これによれば、下段バーナ部での燃焼によるドラフト気流の発生場所が径方向外方にずれ、上段バーナ部の火炎が鍋底温度センサに近付くことを一層効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態のガスコンロの要部の切断端面図。
【
図2】実施形態のガスコンロに設けられる内炎式コンロバーナの各火力調節段階における火力を示す折れ線グラフ。
【
図3】本発明の他の実施形態のガスコンロの要部の切断端面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照して、本発明の実施形態のガスコンロは、コンロ本体1の上面を覆う天板2に開設したバーナ用開口21に臨ませて配置される、内周に炎口31を有する環状の内炎式コンロバーナ3を備えている。この内炎式コンロバーナ3は、コンロ本体1に固定のバーナ取付台11上に取付けられている。天板2上には、バーナ用開口21を囲うようにして、環状の五徳枠41に複数の五徳爪42を取付けて成る五徳4が配置されている。そして、五徳4に載置した鍋等の調理容器Pが内炎式コンロバーナ3で加熱されるようにしている。
【0012】
ガスコンロは、更に、内炎式コンロバーナ3で囲われる中央空間を通して天板2の上方に突出する鍋底温度センサ5を備えている。鍋底温度センサ5は、バーナ取付台11にブラケット12を介して立設される上下方向に長手の支持パイプ51の上端部に図外のバネで上方に付勢して支持されている。そして、内炎式コンロバーナ3で加熱される調理容器、即ち、五徳4に載置される調理容器Pの底面に鍋底温度センサ5が当接することで、調理容器Pの温度が検出されるようにしている。鍋底温度センサ5による温度検出信号は、支持パイプ51の下端から導出されるリード線52を介して図外のコントローラに入力される。
【0013】
また、バーナ取付台11には、支持パイプ51を囲う遮熱筒6が取付けられている。また、遮熱筒6の下部を囲うようにして、後述する下段バーナ部3Lの下面に取付けられる皿受枠71で支持される環状の汁受皿7を設けている。尚、遮熱筒6は、鍋底温度センサ5を囲うような高さまではのびていない。従って、五徳4に底の丸い中華鍋を載置した場合でも、鍋底の中央部が遮熱筒6の上端に乗り上げて、鍋の安定性が損なわれてしまうようなことはない。一方、内炎式コンロバーナ3の炎口31から内方にのびる火炎で鍋底温度センサ5が加熱され、鍋底温度センサ5で調理容器Pの温度を正確に検出できなくなる可能性がある。
【0014】
そこで、本実施形態では、内炎式コンロバーナ3を、内周に炎口31を有する環状の上段バーナ部3Uと、上段バーナ部3Uの下側に位置する、内周に炎口31を有する、上段バーナ部3Uと同心の環状の下段バーナ部3Lとで構成している。尚、下段バーナ部3Lは、バーナ取付台11に取付けられている。そして、下段バーナ部3Lの上に、図外のスペーサを介して上段バーナ部3Uを取付け、上段バーナ部3Uと下段バーナ部3Lとの間にスペーサ以外の部分で空隙32が設けられるようにしている。また、上段バーナ部3Uの上には、図外のスペーサを介して二次空気ガイド33が取付けられている。
【0015】
上段バーナ部3Uと下段バーナ部3Lとには、個別にガスが供給される。そして、内炎式コンロバーナ3の火力を最小の「1」から最大の「8」までの8段階に調節可能としている。各火力調節段階において、上段バーナ部3Uの火力は
図2のa線、下段バーナ部3Lの火力は同図b線、上段バーナ部3U及び下段バーナ部3Lの合計火力は同図c線の如く変化する。即ち、「1」~「3」の火力調節段階では、下段バーナ部3Lのみを燃焼させ、「4」~「8」の火力調節段階では、上段バーナ部3Uと下段バーナ部3Lとを共に燃焼させると共に、下段バーナ部3Lの火力を上段バーナ部3Uの火力よりも小さくしている。
【0016】
内炎式コンロバーナ3を、上記の如く上段バーナ部3Uと下段バーナ部3Lとで構成すれば、下段バーナ部3Lでの燃焼により鍋底温度センサ5の周りに
図1に矢印aで示すドラフト気流が発生し、このドラフト気流により上段バーナ部3Uの火炎Fが鍋底温度センサ5に近付きにくくなる。その結果、鍋底温度センサ5を囲う遮熱筒を設けなくても、火炎Fによる鍋底温度センサ5の加熱を抑制できる。更に、上段バーナ部3Uと下段バーナ部3Lとの間の空隙32に流れた空気が
図1に矢印bで示す如く下段バーナ部3Lでの燃焼により生ずるドラフト気流に引き込まれて、ドラフト気流の径方向幅が広がる。その結果、上段バーナ部3Uの火炎Fが鍋底温度センサ5に近付くことを効果的に抑制できる。しかも、上段バーナ部3Uと下段バーナ部3Lとを共に燃焼させる状態(火力調節段階「4」~「8」)では、常に、下段バーナ部3Lの火力を上段バーナ部3Uの火力よりも小さくすることにより、下段バーナ部3Lでの燃焼によるドラフト気流の発生場所が径方向外方にずれ、上段バーナ部3Uの火炎が鍋底温度センサ5に近付くことを一層効果的に抑制できる。
【0017】
尚、上記実施形態では、下段バーナ部3Lの内径が上段バーナ部3Uの内径と同じであるが、
図3に示す実施形態の如く、下段バーナ部3Lの内径DLを上段バーナ部3Uの内径DUより大きくしてもよい。この場合にも、下段バーナ部3Lでの燃焼によるドラフト気流の発生場所が径方向外方にずれ、上段バーナ部3Uの火炎Fが鍋底温度センサ5に近付くことを抑制する効果が高まる。
【0018】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、上段バーナ部3Uと下段バーナ部3Lとの間に空隙32が設けられているが、この空隙を設けずに、下段バーナ部3Lの上に上段バーナ部3Uを密着させることも可能である。
【符号の説明】
【0019】
2…天板、21…バーナ用開口、3…内炎式コンロバーナ、3U…上段バーナ部、3L…下段バーナ部、31…炎口、32…空隙、5…鍋底温度センサ、P…調理容器。