(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097637
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】渡し板部材
(51)【国際特許分類】
B66B 13/28 20060101AFI20230703BHJP
【FI】
B66B13/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213856
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598022956
【氏名又は名称】株式会社大同機械
(74)【代理人】
【識別番号】100154357
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】市村 元
(72)【発明者】
【氏名】松岡 明彦
(72)【発明者】
【氏名】岡田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】落合 康全
【テーマコード(参考)】
3F307
【Fターム(参考)】
3F307CD32
3F307DA21
(57)【要約】
【課題】目的階にエレベーターが到着したときに、エレベーターの床面と躯体の床面とをつなぐことを、より簡易な構成で可能にする。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る渡し板部材10は、下側部分が下開きの扉部材28、28dで開閉される開口部24を有するエレベーター14の渡し板部材であって、前記扉部材の内側に前記扉部材に対して回動可能に設けられた第1板部材16と、前記第1板部材の先端側に設けられた第2板部材18と、前記第1板部材と前記第2板部材との間に設けられた弾性部材20と、前記第1板部材に対して前記第2板部材を係止する係止部材22とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下側部分が下開きの扉部材で開閉される開口部を有するエレベーターの渡し板部材であって、
前記扉部材の内側に前記扉部材に対して回動可能に設けられた第1板部材と、
前記第1板部材の先端側に設けられた第2板部材と、
前記第1板部材と前記第2板部材との間に設けられた弾性部材と、
前記第1板部材に対して前記第2板部材を係止する係止部材と
を備えた、渡し板部材。
【請求項2】
前記弾性部材は板バネである、
請求項1に記載の渡し板部材。
【請求項3】
前記係止部材は、弾性部材を備える、
請求項1又は2に記載の渡し板部材。
【請求項4】
前記第1板部材の表面及び前記第2板部材の表面の少なくとも一方には化粧板が設けられている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の渡し板部材。
【請求項5】
前記第2板部材の先端側に設けられた第3板部材を更に備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の渡し板部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターから躯体の床面に渡される渡し板部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベーターのかごに台車を出入りさせ、荷物の搬送などを行うことが行われている。そのような台車には、一般的に人力で移動させる台車(以下、「一般台車」と称し得る。)と、AGV(Automatic Guided Vehicle:無人搬送車又は無人台車)がある。
【0003】
一般台車及びAGVを含む台車のエレベーターのかご内への出入りのために、エレベーターのかご内と階層床つまりエレベーターが設けられた躯体の床面との間に渡し板をかけることが行われている。例えば特許文献1は、前面の荷物などを積み下ろしするための開口部に扉を有するエレベーターにおいて、自動スライド機構で、エレベーターと躯体の床面との空隙部を受け渡しする踏み板を動かすことを開示する。この自動スライド機構は、エレベーターの前面に沿って鉛直方向に設けられたガイドレールと、このガイドレールに沿ってガイドローラを介して設けられた支持棒と、この支持棒に設けられたエレベーターの開口部の幅と略等しい長さのアングルと、ガイドレールとアングルとに取付けられた踏み板昇降用シリンダーと、このアングルに設けられた踏み板取付用の蝶番と、踏み板を起倒させるためアングルに設けられた踏み板作動用シリンダーとからなっていて、踏み板は前述の蝶番に取付けられている。目的階にエレベーターを停止させると、自動スライド機構は、踏み板昇降用シリンダーを伸ばして踏み板を躯体の床面に合わせた位置に上昇させ、次に踏み板作動用シリンダーを収縮させ踏み板を倒して躯体の床面に接地させる。これにより、扉を開いて積み下ろしを行うことを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の自動スライド機構は、躯体の床面とエレベーターのかごの床面(以下、単に「床面」と称し得る。)が一致したことをセンサーで検出したとき、作動可能なものであり、更に踏み板を接地させるために2つのシリンダーを所定の順序で作動させることが必要である。
【0006】
本発明の目的は、目的階にエレベーターが到着したときに、エレベーターの床面と躯体の床面とをつなぐことを、より簡易な構成で可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様は、
少なくとも下側部分が下開きの扉部材で開閉される開口部を有するエレベーターの渡し板部材であって、
前記扉部材の内側に前記扉部材に対して回動可能に設けられた第1板部材と、
前記第1板部材の先端側に設けられた第2板部材と、
前記第1板部材と前記第2板部材との間に設けられた弾性部材と、
前記第1板部材に対して前記第2板部材を係止する係止部材と
を備えた、渡し板部材
を提供する。
【0008】
好ましくは、前記弾性部材は板バネである。
【0009】
好ましくは、前記係止部材は、弾性部材を備える。
【0010】
好ましくは、前記第1板部材の表面及び前記第2板部材の表面の少なくとも一方には化粧板が設けられている。
【0011】
前記第2板部材の先端側に設けられた第3板部材を更に備えることもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の上記一態様によれば、上記構成を備えるので、目的階にエレベーターが到着したときに、扉部材が開くことで、渡し板部材がその自重で自動的に躯体の床面に倒れかかることができ、簡易な構成でエレベーターの床面と躯体の床面とをつなぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る渡し板部材の平面図である。
【
図2】建築構造物のある階において、
図1の渡し板部材が適用されたエレベーターの内扉が閉まり、渡し板が立ち上がった状態におけるかごの開口部側を見たところを示す立面図である。
【
図3】
図1の渡し板部材のエレベーターへの連結部の断面拡大図である。
【
図4】
図1に示す渡し板部材の一部の断面拡大模式図である。
【
図5】
図2のV-V線に沿ったエレベーターの一部の断面模式図であり、収容状態にある渡し板部材を示す図である。
【
図6】
図2のエレベーターにおいて展開された渡し板部材を示す断面模式図であり、エレベーターの床面に対して躯体の床面の位置がほぼ合っているときの図である。
【
図7】
図2のエレベーターにおいて展開された渡し板部材を示す別の断面模式図であり、エレベーターの床面に対して躯体の床面が下方にずれているときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態を添付図に基づいて説明する。同一の部品(又は構成)には同一の符号を付してあり、それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0015】
一実施形態に係る渡し板部材10を図面に基づいて説明する。
図1は渡し板部材10を示し、
図2は渡し板部材10をエレベーター14に適用したところを示し、
図3は渡し板部材10のエレベーター14のかご12への連結部の拡大図であり、
図4は渡し板部材10の板部材16、18の連結部分の拡大模式図であり、
図5は
図2のV-V線に沿ったエレベーターの一部の断面図であり、収容状態にある渡し板部材10を示し、
図6及び
図7は展開状態にある渡し板部材10を示す図である。
【0016】
一実施形態に係る渡し板部材10は、
図1に示すように、第1板部材16と、第2板部材18と、弾性部材20と、係止部材22とを備える。なお、ここでは1つのエレベーター14における渡し板として1つの渡し板部材10が用いられるが、1つのエレベーター14つまり1つのかご12の渡し板として2つ以上の渡し板部材10が連結されて用いられてもよい。例えば、1つのエレベーターの渡し板として、4枚の渡し板部材10が幅方向に連結されて用いられてもよい。この渡し板部材10は、少なくとも下側部分が下開きの扉部材で開閉される開口部を有するかごを備えるエレベーターに適用されるものである。ここでは、渡し板部材10が適用されるエレベーター14は、その開口部24に、上下開きの扉部材である内扉28を備える。
【0017】
図2は、エレベーター14の外側つまり建築構造物である躯体のある階から、エレベーター14のかご12の開口部24側を見たところを示す図であり、開口部24は外扉26及び内扉28で閉じられている。
図2では、ある階において、乗降可能な位置にかご12は止まっている。エレベーター14のかご12の開口部24には、この開口部24を開閉する内扉28が設けられている。かご12に支持されている内扉28は、建築構造物である躯体の各階の開口部に設けられた外扉26の内側に位置する。外扉26と内扉28は連動するように構成されていて、それぞれ上下開きする構成を備える。扉26、28は、駆動モータを有する駆動装置29により、エレベーター14が躯体の目的階に着いたときに自動で開かれ、別の目的階に移動するときに自動で閉じられるように構成されている。なお、外扉26及び/又は内扉28は手動で開閉するものであってもよい。
図2では、扉26、28はそれぞれ、開くときには上側部分26u、28uは上側に開き(矢印A1)、下側部分26d、28dは下側に開き(矢印A2)、開いている状態から閉じるときには上側部分26u、28uは下側に動き(矢印A1)、下側部分26d、28dは上側に動き(矢印A2)、それにより
図2に示すように上側部分26u、28u及び下側部分26d、28dは協働して開口部24を閉じる。内扉28つまりその下側部分28dは、本開示の扉部材に相当し、扉部材で開閉される開口部24の少なくとも下側部分を開閉する。
【0018】
図2に示すように開口部24が閉じられているとき、渡し板部材10は立ち、上下(鉛直方向)に概ね延びるようになっている。このとき、
図5に示すように、渡し板部材10は内扉28にもたれ、その重みをあずけ、内扉28により支えられている。
【0019】
渡し板部材10の第1板部材16は、内扉28の内側(つまりかご12の内側)に内扉28に対して、特にそれの下側部分28dに対して回動可能に設けられている(例えば
図3、
図5、
図6及び
図7参照)。第1板部材16は、板状であり、基端30側を軸に所定範囲で回動可能に構成されている。基端30には、回動軸31が設けられている。なお、回動軸31は、回動部材の一例であり、蝶番であってもよい。
【0020】
ここで、渡し板部材10のかご12への取り付け箇所の拡大図である
図3を参照する。エレベーター14の開口部24の外側下端部に、つまりエレベーター14のかご12の床面14sが延びる床壁12fの開口部24側の端面部分12eに回動軸31は位置付けられている。このとき、回動軸31のその軸線31A周りの回転を所定範囲に制限するように、制限部材Lが設けられている。ここでは所定範囲は約90°であり、制限部材LはL字状の部材である。これにより、第1板部材16は、
図3に実線で示す床面14sに略平行な状態と、
図3に破線で示す床面14sに略直角に延びる状態とを含む、それらの間の状態をとることが可能になる。
【0021】
第2板部材18は、第1板部材16の先端32側に設けられる。第2板部材18は、板状の部材であり、第1板部材16側の基端34側から先端36側に至るに従い、薄くなるように形成されている。
図4に示すように、第2板部材18の基端34は、第1板部材16の先端32の形状に適合した形状を有する。第1板部材16の先端32は円弧状断面を有するように形作られていて、第2板部材16の基端34は第1板部材16の先端32が嵌まり込むような凹湾曲した円弧状形状を有する。しかし、これら端部32、34の形状はこれに限定されず、他の形状を有してもよい。
【0022】
渡し板部材10は、
図1に示すように、縦方向D1に延びる軸部15を複数有する。軸部15は、主軸部15aと、副軸部15bとを有する。渡し板部材10では、その両脇と中央部に主軸部15aが設けられ、主軸部15a間に6本の副軸部15bが設けられている。これら軸部15(15a、15b)は主に第1板部材16に設けられていて、第2板部材18の基端34にまで延び、それら軸部15a、15bの間に弾性部材20と、係止部材22とが概ね交互に設けられている。なお、主軸部15aと、副軸部15bとは、それぞれ、第1板部材16と第2板部材18との間の箇所で分割されていて、2つの部材からなる。つまり、主軸部15aは、部材15aa、15abを備え、副軸部15bは、部材15ba、15bbを備えて構成されている。これら軸部15(15a、15b)は、渡し板部材10の剛性を所定レベル以上に高めるように設けられ、配置されている。したがって、軸部15の数、寸法、種類等は、渡し板部材10上を走行することが想定されるAGV等の台車又はその重量に応じて設計されるとよい。
【0023】
第2板部材18は、縦方向D1に直交する幅方向D2に延びる板状部材19を縦方向D1に複数連結することで構成されている。前述のように、第2板部材18は第1板部材16側の基端34側から先端36側に至るに従い薄くなるように形成されていて、先端36側に至るに従い薄い板状部材19が用いられている。これら板状部材19はリベット19aで連結されている。なお、渡し板部材10は、幅方向D2がエレベーター14の左右方向又は幅方向D3(上下方向A1、A2に直交する方向)に平行になるように、エレベーター14に設けられる。
【0024】
弾性部材20は、第1板部材16と第2板部材18との間に設けられる。ここでは、
図1に示すように、弾性部材20は、所定の隣り合う副軸部15b間に設けられる。弾性部材20は、ここでは板バネ20sである。弾性部材20の一端は、第1板部材16の先端32に取り付けられ、弾性部材20の他端は、第2板部材18の基端34に位置付けられている。具体的には、弾性部材20の一端は、第1板部材16の先端32の先端32側に開放するスリットに挿入され、弾性部材20の他端は、第2板部材18の基端34の基端34側に開放するスリットに挿入される(
図4から
図7参照)。なお、
図1では、それらスリットを省略して、板バネ20sは表されている。板バネ20sは、第1板部材16にリベット20aで固定され、第2板部材18に対しては固定されず自由に移動可能にされている。板バネ20sは、湾曲した板バネであり、渡し板部材10が躯体の目的階の床面Fsに渡されたとき下側に凸となる向きに第1板部材16と第2板部材18とに間に設けられている(例えば
図6及び
図7参照)。ここでは、1つの渡し板部材10につき、6つの板バネ20sが用いられるが、これは板バネの数及び/又は大きさを限定するものではない。1つの渡し板部材10につき少なくとも1つの板バネが用いられるとよい。なお、弾性部材20は板バネに限定されない。
【0025】
係止部材22は、第1板部材16に対して第2板部材18を係止するように設けられている。係止部材22は、主軸部15aとその隣の副軸部15bとの間、及び、所定の隣り合う副軸部15b間に2つずつ設けられているが、これに限定されず、例えば1つずつ設けられてもよい。また、ここでは、主に板バネ20s間に2本の係止部材22が延びるように係止部材22は設けられている。第1板部材16における係止部材22の設置個所22aは、板状の部分がなく、その厚さ方向に抜けている。係止部材22は、弾性部材38を備える。より具体的には、係止部材22は、第1板部材16と第2板部材18とをつなぐワイヤ40を備え、その一端寄りに弾性部材38としてバネ部材が設けられている。なお、ワイヤ40の途中に弾性部材38が設けられてもよい。係止部材22の配置及び数はこれに限定されない。
【0026】
弾性部材20が設けられて係止部材22で連結された第1板部材16及び第2板部材18の各表面には、
図3及び
図4に示すように、化粧板42、44が設けられている。化粧板42は第1板部材16にリベット等の接合手段により固定され、化粧板44は第2板部材18にリベット等の接合手段により固定されている。化粧板42、44を設けることで、
図3に示すように、渡し板部材10の表面を、エレベーター14の床面14sと実質的に同じ高さに位置付けて延ばすことが容易に可能になる。そして、化粧板42、44を設けることで、第1板部材16の表面及び第2板部材18の表面が滑らかになり、AGVなどの台車のより滑らかな走行が可能になる。化粧板42、44は、第1板部材16と第2板部材18とのいずれか一方にのみ、例えば第1板部材16にのみ設けられてもよい。なお、
図4では、理解を容易にするため化粧板42、44は離して設けられているが、それらの間の隙間は狭いほどよい。
【0027】
図3には、躯体の目的階の床面Fsにかかるように延びる展開状態の渡し板部材10が示され、開いた状態の内扉28の下側部分28dの上端側が表されている。内扉28の下側部分28dが上下方向の矢印A2に沿って上昇することで、内扉28の下側部分28dは上記第1板部材16に直接的に作用し、よって渡し板部材10を
図2及び
図5に示すように立たせることができる。したがって、第1板部材16は所定強度以上の強度を有するとよく、ここでは鉄鋼材料製である。これに対して、第2板部材18は第1板部材16の先端32側に設けられ、回動軸31周りに大きく動かされる。そこで、第2板部材18は軽量化を目的としてここではMg合金製である。なお、第1板部材16は鉄鋼材料以外の金属材料などの種々の材料で作製されてもよく、第2板部材18もMg合金以外の金属材料などの種々の材料で作製されてもよい。
【0028】
また、
図6及び
図7に示すように、渡し板部材10が躯体の目的階の床面Fsにかかっているとき、第1板部材16の先端32は床面Fs上にまで直接的に至るとよい。これにより、エレベーター14のかご12と目的階の床面Fsとの間の隙間Gを、より高強度の第1板部材16で確実に渡すことができる。なお、これは、第1板部材16の先端32が床面Fs上に到達し得ないことを排除するものではない。
【0029】
なお、AGVは概して視野角の狭いセンサーを有し、自律走行する。そのセンサーを用いてのAGVの自律走行で渡し板部材10上を走行可能にするために、渡し板部材10が、
図6及び
図7に示す使用状態のとき、最大で30mm/1000mm(1mで3cmの傾斜)内の傾斜(傾き)を好適に有し続けるように、ここでは第1板部材16の厚さ、第2板部材18の厚さなどは設計されている。
【0030】
上記構成を有する渡し板部材10の動きなどについて、
図2、
図5、
図6及び
図7に基づいて説明する。なお、
図5、
図6及び
図7において外扉26は省略する。
【0031】
エレベーター14では、内扉28が閉じられているとき、
図2及び
図5に示すように、渡し板部材10は内扉28に、特にそれの下側部分28dに寄りかかって立った状態にある。この状態で、エレベーター14が目的階に到着して外扉26が開き、内扉28が開くと、下側部分28dが下方に下がり(矢印A2参照)、渡し板部材10は第1板部材16の基端30の回動軸31周りにその自重で回転し、目的階の床面Fsにかかることができる。
【0032】
渡し板部材10は第1板部材16と第2板部材18とが板バネ20sと係止部材22とで連結されていてその継ぎ目は柔軟に曲がることができる。したがって、
図6に示すようにエレベーター14の床面14sに対して床面Fsが適した高さ位置つまりほぼ同じ高さにある場合だけでなく、
図7に示すようにエレベーター14の床面14sに対して目的階の床面Fsが大きく下方にずれていたとしても、渡し板部材10は床面Fsにかかり、エレベーター14の床面14sと床面Fsとを滑らかにつなぐことができる。したがって、目的階の床面Fsを走行するAGVなどの台車はエレベーター14内に容易に入ることができ、またエレベーター14内の台車は目的階の床面Fsに容易に移動することができる。なお、この渡し板部材10による床面14s、Fs間のつながりは、仮にエレベーター14の床面14sよりも目的階の床面Fsが上方にずれたとしても、成立し得る。
【0033】
そして、エレベーター14の開口部24つまり内扉28及び外扉26が閉じるとき、内扉28の下側部分28dの上昇に伴って、第1板部材16は回動軸31で立つ方向(上下方向の上側)に動かされ、渡し板部材10は内扉28内に収容される。これにより、渡し板部材10は
図2及び
図5に示す状態になる。
【0034】
以上述べたように渡し板部材10は簡易な構成を有し簡易な構成で動かされ、内扉28の開閉に伴って、
図2及び
図5に示す収容状態と、
図6及び
図7に示す展開状態(使用状態)とになることができる。よって、渡し板部材10によれば、目的階にエレベーターが到着したときに、内扉28が開くことで、渡し板部材10がその自重で自動的に躯体の床面Fsに倒れかかることができ、エレベーターの床面と躯体の目的階の床面とを好適につなぐことが可能になる。特に、その際に、板バネ20sと係止部材22とにより第1板部材16と第2板部材18との間の相対的な関係が柔軟に変化することができるので、渡し板部材10と躯体の床面との間の段差をより小さくすることができ、よってエレベーターの床面と躯体の目的階の床面とを台車がより滑らかに走行することが可能になる。
【0035】
なお、上記エレベーター14では、内扉28が予め設けられていた。しかし、本開示の渡し板部材が適用されるエレベーターが内扉28の下側部分28dなどの下開きの扉部材を備えない場合、内扉28も渡し板部材10とともに設けられるとよい。
【0036】
なお、渡し板部材10では、第1板部材16の先端30側に第2板部材18を設けたが、その第2板部材の先端側に更なる板部材(第3板部材)を設けてもよい。この場合、第2板部材と第3板部材との連結は、第1板部材と第2板部材との連結のように、弾性部材20と係止部材22とを用いて行われるとよい。
【0037】
以上、本発明に係る実施形態及びその変形例について説明したが、本発明はそれらに限定されない。本願の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、種々の置換、変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 渡し板部材
14 エレベーター
16 第1板部材
18 第2板部材
20 弾性部材
20s 板バネ
22 係止部材
24 開口部
26 外扉
28 内扉(扉部材)
38 弾性部材
40 ワイヤ